長いこと年賀状だけの縁だった鍵本景子さんから、紙芝居のお知らせもらった。
鍵本さんは、北新宿の野口三千三先生の体操教室に参加されていた。
そのころ今再放送中のNHK朝ドラ「ひらり」の主人公の姉・みのり役で出演されていた女優さんである。
「早蕨」特別号「野口三千三先生を偲ぶ」を丁寧に読んで、嬉しくなる感想をもらった。
そのメールに、第12回「かぎもと景子さんの”紙芝居”「おきなわ 島のこえ」のことが添付されていた。
久しぶり 会いたい!
そう思った私は、25日(日)小平市鷹の台の喫茶店を訪ねて紙芝居を見せてもらった。
気を衒わず、淡々と、お母さんが子供に読みきかせるように。
あたたかな朗読に好感が持てた。
実際にもいいお母さんになられたのだろう、きっと。
紙芝居の絵が素晴らしい!
丸木俊 丸木位里 「ヌチドゥ タカラ〈いのちこそ たから〉」
丸木夫妻が平和への祈りを込めた絵本を、著作権継承者の丸木ひさ子さんのご好意で紙芝居に使わせてもらえるようになった、と。
想像だけれど、鍵本さんはどれほどの誠意と熱意を持って、ひさ子にお願いしたことだろう。
彼女の紙芝居を通した表現は、ひそやかで たおやかで やさしいのだけれど、ひめられた一途な思いは揺るぎない。
私は半ば打ちのめされた。
そうだ、原爆の図が展示されている「丸木美術館」を訪ねよう。
善は急げ、とばかりに東武東上線の小川行きに飛び乗ったのは今朝のこと。
池袋から一時間。
着いた森林公園駅からタクシーに乗って10数分。
豊かな自然の中にその美術館は佇んでいた。
展示室に一歩入ると、巨大な絵のエネルギーに呼吸が止まる。
丸木夫妻って、日本が産んだすごい画家さんだ。
どれほどの執念を燃やして筆を走らせたのだろう。
痛み 苦しみ 悔しさ
数えきれないほどの死者が夫妻にとりすがって描かせた絵だ。
来てよかった。
訪ねてよかった。
言葉にならない犠牲を思うと、息が苦しくなる。
一部屋 一部屋を目を凝らして見て回った。
画題
「灯籠流し」 お母さん お父さん 文字が描かれている。
「署名」 原爆やめよ、水爆やめよ、戦争やめよ。
東京・杉並のお母さんたちの叫び 声なき声が声となり、署名が集まっていく。
ここまできて、ようやく息を大きく吐き、たっぷり息を吸うことができた。
外に出て、私は 美術館に手を合わせた。
館内とは打って変わった夏の自然が私を迎えてくれた。
丸木夫妻はここに住っていたという
緑蔭のもと腰掛けたベンチからの眺め
鳥が囀る
風が樹木の間をぬう
夏の匂い
この心地よさ
平和はそうたやすいものではないことを思いしらされた。
戦争を鋭い感性で苦しみながら描きとめた人がいて、後に生きる人間にただ事でない現実を突きつけてくれる。
覚醒する。
景子さん 生の声で 静かに語り 紙芝居の紙を一枚一枚丁寧にめくる行為を続けてほしい。
比企丘陵の自然の中で、ふたたびあなたの思いを受け止めています。
ありがとう。
景子さんのおかげです。学芸員の方が伝記お書きになっているんですね。読んでみたいです。