寒い朝。
白の割烹着に前掛けをかけ、頭は祭りの際にいただく紺の豆絞りに赤の文字で「祭」とかかれた手ぬぐいをキリッと縛って、小正月を前にお正月の飾りを片付けた。
まず、玄関を入った正面からは、福島保さんの「江戸独楽」と江戸錦凧と孫次凧。
蔵の扉の脇にある乳房の形をした漆喰のまんなかにL字形の鉄がささっている所からは、作家のねじめ正一さんのお父上から戴いた「蛸の凧」。
座敷の床の間からは、正月にかける掛け軸と香炉。
それぞれ傷まないように梱包をして、すべてが片付くのには、2時間以上もかかる。
黙々と片付けながら、今年一年の無事を改めて祈る。
赤・青・緑・紫・茶・白・金・黒・唐金。
独楽・凧・掛け軸に使われているそれぞれの色。
我が家のお正月の色は、江戸の色に彩られていて華やかだった。
片付けられた空間を見直すと、ガランとしてちょっと寂しい。
いつものように黒い鉄と柔らかなトーンの木が組み合わさったコート掛けを置き、小ぶりの木製椅子を一脚そのそばに置く。
「なんとなく色気がなくなったなぁ~」
ため息まじりにつぶやくと、正月気分が一気に削がれていく。
「これでよし」
ぽんぽん、と手を打って、終了。
玄関から外に出て、曇りの空のもと、葉をすっかり落とした落葉樹・すこし色が薄い常緑樹の盆栽に挨拶をする。
「どのくらい水を差し上げましょうか」
ちょっとおどけて、お伺いをたてる。
鉢のなかの土の乾き具合を見ながら水遣りをすると、思いなしか木々がイキイキ見違える。
仕事の間隙をぬって、朝にこうしたことをするのは、はじめは調子が出なくても、終わったときの気持ちよさは、結構いける感覚がある。
2006年、本格的な始動開始である。