まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第17回四国八十八所めぐり~石鎚山下山

2018年05月21日 | 四国八十八ヶ所
石鎚山の登山を終え、昼食もすませて12時を回ったところで下山開始とする。空も晴れていて、周りの景色を見ることができたし、頂上社でお勤めもできた。風が強かったのでそう長い時間滞在しなかったが、ともかく無事に上ることができたことに感謝である。今からなら15時17分発の帰りのバスに乗ることができるだろう。

で、ここから下山だが、上りの時よりもスリルというのを感じる。先ほど、崖に架けられた片側しか手すりのない階段を通ってきたが、下りは手すりのない方を歩かなければならない。上りの時は上を見ればよかったのだが、今度はいやでも下が崖の下が見えてしまう。もし落ちたら・・などと余計なことを考えてしまう。

また、下りは膝に痛みが走ってもいけないので、先に金剛杖を突いて着地点を確保しながら下りる。最近は杖の扱いにも慣れたのか足が慣れたのかはわからないが、膝の後ろが痛くなることもなくなった(徳島の20番鶴林寺~21番太龍寺を歩いた時には、最後には膝の後ろに電気が走る症状が出て、もしそれ以上長距離を歩けと言われたら無理だったかな・・ということもあった)。ただその分慎重になるせいか、ペースは思ったほど上がらない。そのうちに後から下りて来る人がピタリとついてくるので、少し広いところでは休憩を兼ねて道を譲ったりもする。

鎖場まで下りてきた。空いているのでちょっと足をかけてみようかとも思ったが、やはりいいかなとそのまま進む。鎖といっても登山靴がすっぽり入るくらいの大きさの輪がある。

この後は階段を踏み外さないよう、黙々と下山して行く形になる。景色も巻き戻しとなるため周りの写真もあまり撮っていない。これが縦走という形で他に抜けるのならまだ変化もあったと思う。石鎚山の場合なら、面河石小屋の方向に抜け、便が合えばバスで久万高原に出ることができる。途中には45番の岩屋寺があるあのエリアだ。修験者や弘法大師などは山岳修行でそうしたルートも抜けていったとされている。

午後からもそれなりの数の「お上りさん」とすれ違ううちに、八丁坂の鞍部に着く。ということは、ここから最後、成就社までの約1キロの上りである。山頂から2キロ以上急勾配を階段や自然の道で下って来た後だけに、このダラダラした上りがやけにしんどく感じる。そこを何とか耐えて、初めにくぐった神門に到着する。ここまで2時間かかった。

神門で振り返って山の方向に一礼し、改めて成就社の拝殿、そして見返り遥拝殿で手を合わせる。この「成就社」、元々は冬に石鎚山が雪に埋もれる時季も坊さんが留守を預かって祈祷を行ったりしていたことから「常住」と呼ばれていたが、明治の神仏分離の影響で奥前神寺と成就社に分離した・・というのは前の記事にも書いた。ここで「成就」という名前がついたのは、修験道の開祖の役行者にまつわる伝説がある。

役行者その昔石鎚山頂を目指した時、崖に阻まれてどうしても到達できなかった(今のように鎖場や階段があるわけではない)。力尽きて下山しようとこの地に着いた時、一心に斧を研いでいる白髪の老人に出会った。なぜ斧を研いでいるのか尋ねると、「この斧を研いで針にする」という言葉が返ってきた。役行者はこの言葉に感銘し、再び修行を続け、ついに石鎚山頂を開いたという。この白髪の老人が実は石鎚大神で、役行者がこの地で「私の願いが成就した」として祠を建て、開くことができた石鎚山のほうを見返って拝んだという。「成就」にはそういう意味合いがあり、下山してから改めて拝むのもいわれがあるとしている。

しばらく土産物店の前で休憩し、ロープウェイの山上成就駅まで戻る。ちょうど下りの便を待つ人で行列ができている。運行間隔を縮めての運行であるが、下りも満員である。バスの時間まで30分あまりあるが、このタイミングで下りてきてよかったと思う。バス停に向かうと順番が前のほうで、帰りは座って移動できそうだ。

バス停のところの土産物店の主人らしいのが並んでいる下山者に「バスの券持ってますか?」と尋ねて回る。伊予西条駅まではちょうど1000円なのだが、この店で乗車券を販売している。「先に買ってたら降りる時楽ですよ。最近、外国の方も増えていて、出口で混むことが多い」とのことなので1枚購入する。また、「2時間前のバスに乗り遅れて店で2時間過ごした客が3人いるので、先に乗せてほしい」とのお願いもある。

バスを待つ間に、麓の駐車場に停めていたクルマが次々に出て行く。バスももう少し本数があればと思う。

少し先の西ノ川で折り返したバスがやって来た。無事に着席し、加茂川の流れや黒瀬湖に沿って下りの道を走る。途中の横峰登山口からは、横峰寺参りを終えたらしい客も何人か乗ってきた。

16時すぎに伊予西条駅に到着。前日、横峰寺から香園寺まで回って戻ったのと同じような時間である。ともかくは3泊目となるエクストールインホテルに戻り、うちぬき水を使った浴場に入る。

さて、この旅最後、また愛媛県の札所めぐりの最後の夜だが、夜の八十八所はどうするか。前の2晩はいずれも焼鳥だったので、魚料理も入れたくなった。そこで入ったのは・・駅前の魚民。はい、全国チェーンの。駅近くに焼鳥以外でぜひとも入りたいという店が見つからず、安定の店ということで。全席個室というのも落ち着く。

静岡名物のイベントメニューがあり、高知ではなく焼津のカツオのたたきや、静岡の黒はんぺんを焼いたのにしらすを乗せた一品などいただく。鯛の造りは、瀬戸内産ということにしておこう。その中でカツオのたたきはたれ、塩の両方が楽しめたし、他のメニューもまずまず良かった。

日程は翌日6日もある。伊予西条16時台発の特急~新幹線乗り継ぎの指定席を持っており、日中はほぼまるまる動ける。一方で、八十八所は川之江の三角寺までお参りしており、次は香川の観音寺シリーズである。他にも近隣でどこかに行こうと思えば行けるのだが、さてどうしようか・・・。
コメント