カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

知らないコメディアンの暗いコメディ   バットガイ 反抗期の中年男

2015-11-29 | 映画

バットガイ 反抗期の中年男/ジェイソン・ベイトマン監督

 日本でいう中学生までの子供を対象とする単語のスペル当て大会に、中学を中退したという理由で規定内だと言い張って出場した中年男性が、大会主催者や親たちを敵に回しながら勝ち上がっていく。規定の穴をついているということだが、もともと年齢で制限すれば良かっただけのことだったのではないか。まあ、そうでないとお話が成り立たないが、長い単語のスペルをいうというのが難しいことは、英語圏の人間でも同じのようだというのは、なんだが微笑ましいような気もした。単語の多い言語は大変である。物知り大会というか、人間辞書大会ともいえるものかもしれないが、本当にこんな大会があるんだろうか。
 大人が出るというのは、大会のルール的にそもそもインチキなのだが、しかしたとえ大人であっても、この大会にすんなり勝ち抜くにはそれなりの厳しさがあるものと思われる。この主人公の男は、そのようなずる賢いところがあるだけでなく、実際にかなりのスペルを暗記しているかなりの記憶力の持ち主、もしくはその能力の高い人間であるようだ。さらに数々の逆境や嫌がらせも受けるが、それを上回る皮肉やずる賢さを次々に発揮する。年頃の女の子を辱めるやり方だけは、いくら映画とはいえやりすぎで気分が悪くなったが、まあ、そのような嫌悪の対象を皮肉一杯に演じきっている。セックス描写も生々しいし、何というか家庭で楽しむような映画ではないかもしれない。
 しかしながら少年との友情が実は一番のカギになる展開である。ちょっとクサイところが多いのだが、それがある意味でバランスになっているのかもしれない。インド系の頭のいい少年と大会では競い合いながら、夜になると大人の遊びを教えて喜んでいる。悪趣味だが、男と男の友情めいたものが芽生えるということらしい。インド系の少年はずば抜けて頭がいいが、しかし学校ではいじめられているらしい。友達同士で楽しく遊ぶという経験に乏しい感じだ。さらに親も禁欲的な教育を強いているようだ。そのような子供に自由に羽を伸ばさせることが善だとする考え方があちらの国の思想にはあるらしく、この手の作品というのはあんがい多いと思う。そうではあるが、この子供より実際にはこの大人の方が精神的にはずっと子供なのである。それというのもこのインチキ男には心の傷があって、その反抗心がこういう行動をとらせているからなのである。
 ふつうならなんだかそれでもいい気分になんてなれそうもない作品なんだが、この主演の男が監督もしているらしいコメディアンで、日本で人気が無いから地味な感じになっているようだけれど、しかし、このブラックな笑いをもともと得意とするようなコメディに親しんでいるだろう芸風が、土台としてあるのだろうと思う。そういうことがもっとわかるともっと面白いのかもしれない。しかし分からなくてもそこそこ面白いが。
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