カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

恋愛にはドラマが必要   恋人たちの食卓

2014-06-05 | 映画

恋人たちの食卓/アン・リー監督

 観たことがあるはずなんだが再度。もちろん見事に忘れていて、ちゃんと楽しめた。最初から料理の素晴らしい場面が多くて引き込まれるが、そういうのは客の興味を引くための演出で、つまるところ女たちを中心とする恋愛エピソード・ドラマである。妻に先立たれた料理人の父一人に三人姉妹の子供のそれぞれの恋愛が、群像劇として描かれる。いろいろ仕掛けがあって重層的に楽しめるのみならず、不思議なことに大どんでん返しもあったりしてそれなりに驚く。恋愛にはドラマがつきものだが、まさに人の数だけドラマがある。それも意外な人が意外な恋愛をすることになるから面白いわけで、そういうあるある感も楽しみの一つかもしれない。
 三人姉妹だから年齢が違うので、そういう恋愛をする背景が違う。また高校教師、キャリアウーマン、女子大生という立場だから、周りにいる男達が当然違う。それぞれに苦しんだりいい思いをしたりするのだが、恋愛感情だけでなく、人間関係の複雑な絡みようもなかなかの見所になる。それにしてもこれに性格的なことが絡むのだから、恋愛後に結婚ということになったりすると、また家族のありようも変わっていく。最初に父の作った料理を囲んであれこれ悩んでいた娘たちの境遇が、ラストになるとまったく違ったものへと変貌を遂げる。このコントラストが見事であって、父親が偉大な料理人だという特殊性はあるにせよ、家族のあり方そのものについても考えさせられる内容なのではなかろうか。
 どのお話も面白いのだが、いろいろ心配しなくてもとりあえず皆片付いてしまうのだから、ハッピーである。映画とは関係ないことだが、これがこれですまないというか、恋愛自体が成就しない人もいるだろうこともあるわけで、それではお話が面白くなくなるかもしれないけれど、そういう問題のことも考えてしまうのだった。それは悲劇として最悪かもしれないが、実際に三人姉妹プラス男一人だと、そういうケースくらいあっても当然という気がする。実際にところ長女がそういう境遇に陥ってしまっている感じはあったが、強引にとんでもない方法で解決してしまう。女の力は凄いということになるが、やはり事件があってのことだったことも確かである。振られるのは恐ろしいことだが、しかしその傷を負う恐怖のために行動を起こせない女性は数多いのではないか(男だってそうだけど)。その一歩が踏み出せるきっかけのためには、やはりそれなりのドラマが必要だということなのかもしれない。
コメント
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