カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

恐怖の報酬

2011-10-27 | 映画
恐怖の報酬/アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督

 今の感覚で観ると、ちょっととっつきにくいかもしれない。長いし、まとまりがあるともいえない。本当に撮影してるんだよな、というようなライブ感もあるが、一方でこれはわざとらしいというのも結構ある。ニトロがそんなに危ないのなら、そもそもトラックでは無理だろう、という疑問もあるし…。
 しかしながら、そういうのをひっくるめても結構よく出来ているのは確かだ。貧困のけだるさや、駆け引きの緊張感もなかなかである。怪しいながら、貧困から抜け出せない閉塞感と、石油会社の一攫千金話に命を掛ける動機も理解できる。男たちの対立や、友人の選び方には何となく釈然としないものを感じるが、そういう話もひっくるめて、いろいろ伏線の変化を楽しむことも可能だ。結果的に人物像が後半になってがらりと変わる印象があり、そういう物語の意外性も、なかなか面白いのだった。
 ただ、結果的に執拗ないじめの末に友人をなぶり殺しにしてしまうという展開もあるわけで、これは何だかどうなのか? と考えさせられてしまった。そういう葛藤というのが物語を盛り上げているのも確かだし、今の時代からの視点からこういうものがつくられなくなったということもあるわけだが、そういう人間の残酷さを描く時代性というものも考えさせられるのかもしれない。このような貧困世界も、当時の人にはあんがい身近に理解できたのではなかろうか。映画というのは難しいものである。
 とはいえ、現実には現代社会においても、国によってはこのような状況は日常であるのかもしれない。むしろそのようなものが見えなくなってしまっているからこそ、素直に物語にのめり込めなくなっているのではあるまいか。そうして、そういう人たちが僕らの生活を陰で支えているということでもあるわけで、見えなくしている構造的なものがあるのかもしれない。普段は陰謀というものはあんまり信用していないが、ひょっとするとそういう背景もあぶり出したかったのかもしれないのであった。
コメント
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