ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

トッドの移民論と日本27

2010-10-31 07:44:58 | 国際関係
●マグレブ人は非人間扱いされる

 フランスの移民の中で最大の集団をなすのは、マクレブ人である。マグレブ人とは、北アフリカ出身のアラブ系諸民族である。アルジェリア人、チュニジア人、モロッコ人の総称である。
 1990年前後、フランスには約250万人のマグレブ人がいた。フランスの人口は約6000万人ゆえ、その24分の1に当たる。当時、人口約8000万人の統一ドイツのトルコ人が160万人ゆえ、フランスのマグレブ人の多さが分かる。ちなみに現在のわが国の人口を1億2700万人とすると、その24分の1は530万人。現在、日本の外国人登録者数は約200万人ゆえ、その2.65倍に当たる。しかもその530万人が、みなひとつの文化集団だとすると、相当の存在感だろう。
 マグレブ人の人類学的システムは、共同体家族であり、女性の地位の低さと族内婚を特徴とする。内婚制父系共同体家族は、フランスの人類学システムとは、大きく異なる。あまりに違うので、フランス人は、マグレブ人を集団としては受け入れられない。彼らは「人間ではない」として、非人間扱いをする。
 フランスには、平等主義核家族と直系家族という二つの家族型がある。これら二つの家族型には、共通点がある。ひとつは、女性の地位が高いことである。フランスの伝統的な家族制度は、父方の親族と母方の親族の同等性の原則に立っており、双系的である。双系制では、父系制より女性の地位が高い。トッドは直系家族父系制をここでは「否定的双系制」と呼んでいる。もう一つの共通点は、外婚制である。外婚制は、工業化以前の農村ヨーロッパのすべての家族システムの特徴でもあった。トッドはこれらの点をとらえ、双系制と外婚制が「フランス普遍主義の人類学的境界を画する最低限の共通基盤」とする。
 フランス人は普遍主義的だが、移民を受け入れるのは、双系ないし女性の地位がある程度高いことと、外婚制という二つの条件を満たす場合である。この最低限の条件を満たさない集団に対しては、「人間ではない」という見方をする。マグレブ人は、この条件を満たさない。女性の地位が低く、族内婚である。フランス人が要求する最低限の条件の正反対である。そのため、フランス人は彼らを受け入れない。

●二つの普遍主義の出会いが悲劇を生んだ

 フランス人は、自らにとっての普遍的人間の基準を大幅にはみ出す者を、「非人間」とみなす。ところが、マグレブ人の方も別の種類の普遍主義者である。マグレブ人は共同体家族ゆえ、権威と平等を価値とする。フランスは、主に平等主義核家族ゆえ、自由と平等を価値とする。ともに平等を価値とするから、普遍主義である。フランス人が普遍的人間を信じるように、マグレブ人も普遍的人間の存在を信じる。ただし、正反対のタイプの人間像なのだ。フランス人もマグレブ人も、それぞれの普遍主義によって、諸国民を平等とみなす。しかし、自分たちの人間の観念を超えた者に出会うと、「これは人間ではない」と判断する。双方が自分たちの普遍的人間の基準を大幅にはみ出す者を「非人間」とするわけである。ここに二種類の普遍主義の「暗い面」が発動されることになる。
 第2次世界大戦後、フランスの植民地アルジェリアで独立戦争が起こった。アルジェリア人は、マグレブ人である。アルジェリア独立戦争は、1954年から62年まで8年続いた。アルジェリア人の死者は100万人に達した。その悲劇は、正反対の普遍主義がぶつかり合い、互いに相手を非人間扱いし合ったために起こった、とトッドは指摘する。今日でもフランスでは、マグレブ移民への集団的な敵意が存在する。外国人移民の排斥を主張する国民戦線のような政党が力をふるっているのは、その顕著な例である。このようにフランスの普遍主義は、「小さな差異」の範囲外に対しては、差別的である。
 わが国には、フランス革命は人間の平等をうたった理想的な市民革命だと思っている人が多い。そして、フランスは人間平等の国と思っている人がいるが、話はそう単純ではないのである。

 次回に続く。
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尖閣~ビデオを早く全面公開せよ

2010-10-30 11:33:21 | 時事
 尖閣沖中国漁船衝突事件のビデオの公開が、ようやく国会内でごく限定された範囲でされようとしている。私はこれに不満である。政府・民主党に対し、すみやかに国民にビデオを全面公開することを求める。

 衆院予算委員会は、理事懇談会で、11月1日午前8時から衝突時のビデオ映像を視聴することを決めた。国会内で両院予算委員会の与野党の理事、両院予算委員長ら約30人で映像を見る。映像の説明は海上保安庁の長官が行う。入室者は携帯、ビデオ、カメラを持ち込まないようにする、という。
 政府及び民主党執行部は、対中外交、特にAPECへの影響を考慮し、ビデオを公開する範囲を極力限定するよう画策している。しかし、ビデオの内容は、既にそれを見た複数の関係者が、一部明らかにしている。それによると、中国漁船は海上保安庁の巡視船に衝突する際、速度を上げており、衝突を避ける気はなく、故意にぶつけるつもりだったことは明白だという。事実確認のため、ビデオの全面公開を求める国会議員、及び国民の要求は強まっている。
 逮捕時、船長は酒を飲んでいたようだ、と海保の職員が証言した。酒気おび程度かと想っていたら、中国人乗組員14人が、船長は酒を大量に飲んでいたと証言している、と中国当局者が明らかにした。故意に船を衝突させた船長が酩酊状態だったということか。現在限定公開されているビデオには、自分で歩けないほど酔っていた船長の状態は、映像に映っていないらしい。
 この点、私には、腑に落ちない。ビデオは単に衝突の様子のみを取ったものなのか。海保の職員が漁船に乗り込み、船長や乗組員ともみ合いになり、逮捕した過程を撮っていないのか。21日夜、TBSテレビの「NEWS23」が、韓国での中国漁船の取り締まりを取材した映像を流した。翌日の私の日記に書いたが、その映像には、中国人乗組員が、鉄パイプで韓国海洋警察の警官を乱打するシーンが映っていた。だから、私には、尖閣沖衝突事件で、速度を上げて海保の巡視船に衝突した中国漁船の乗組員が、おとなしくわが国の海保職員に従ったとは思えない。故意に船を衝突させたかどうかということの事実確認がまず必要だが、それに次いで、乗組員の行動や船長の態度がどうだったのかの確認も重要である。国会議員は、このTBSの番組を参考資料として視聴してもらいたい。

 関係者にのみ限定公開されたビデオは、わずか6分間だという。ビデオは全体で2時間あるというのに、なぜ録画の全体を公開しないのか。120分のものを6分にしたとは、20分の1にしたということである。意図的に内容をカットした可能性がある。カットされた部分に何があるのか。追跡と衝突はどう行われたのか。逮捕はどう行われたのか。船長の酩酊状態は映っていないのか。これらの確認のために、未編集の全記録を国民に全面公開すべきである。またわが国の政府があくまで編集した映像しか公開しない場合は、中国政府からビデオ自体が改ざんされたものといわれるおそれもある。
 政府・民主党は、尖閣沖中国漁船衝突事件のビデオを、一刻も早く国民に全面公開せよ。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月29日

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101028/crm1010280721001-n1.htm
尖閣ビデオ内容判明 中国漁船、加速して衝突 「故意」裏付け 船長は飲酒か
2010.10.28 07:18

沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオには、中国漁船(166トン)が航行速度を12~13ノット(時速約22~24キロ)ぐらいに上げて海保の巡視船に衝突した様子が映っていることが27日、分かった。ビデオ映像を見た複数の関係者が明らかにした。漁船が衝突時に速度を上げたことなどから、関係者は「衝突を避ける気はなく、故意にぶつけるつもりだったことは明白だ」と指摘している。
 漁船の航行速度をめぐっては、政府は「事件の捜査に関する事柄であり、答弁を差し控えたい」とする答弁書を26日に決定するなど公表を控えてきた。しかし、ビデオ映像からこうした具体的状況の一部が明らかになったことで、与野党からビデオの全面公開を求める声が強まりそうだ。
 海保が撮影したビデオ映像は、漁船に衝突された巡視船「よなくに」(1349トン)と「みずき」(197トン)の船首付近から撮影されたもの。
 映像を見た関係者によると、漁船はよなくにの左後方に衝突した後、漁船の左前方を並走していたみずきに幅寄せするように接近した末、左にかじを切って衝突している。
 漁船がみずきと並走していた際の航行速度は約10ノットだったとみられ、漁船はその後、約12~13ノットに速度を上げてみずきに近づき、「体当たり」しているという。
 漁船の最高速度は通常20ノット程度といい、逃走を図ったにしてはやや低速だった。衝突を避ける場合は減速したり離れたりするはずだが、逆に速度を上げて接近しており、「故意の衝突」を裏付けている。
 一方、映像には映っていないが、海保に公務執行妨害容疑で逮捕された漁船の中国人船長は衝突前、酒を飲んでいたとみられる。捜査関係者は「海保職員が船長を連行する際、酒臭かった」と証言している。
 那覇地検は日中関係を考慮し、勾留(こうりゅう)期限の4日前に船長を処分保留のまま釈放した。すでに釈放から1カ月が経過しているが、まだ処分を出していない。

●産経新聞 平成22年10月28日

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101027/stt1010272051012-n1.htm
尖閣ビデオ 公開意思まるでなしの政府与党 衆院議長は異例の訓示
2010.10.27 20:49

 (略)沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオ映像がようやく国会に提出されたが、政府・民主党には映像を一般公開する姿勢は全くみられない。
 中国がベトナムでの日中首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(横浜APEC)に応じなくなることを恐れたものとみられる。(略)
 もともと中井氏ら民主党や政府には公開する考えはない。平成22年度補正予算案の審議をスムーズに進めるため、しぶしぶ提出に応じたにすぎない。
 「何とか提出は先送りにできないか」。仙谷由人官房長官は野党側に提出を通告した後の26日になってもなお、中井氏に電話で談判。仙谷氏はこれまでも日中関係など外交への配慮を理由に働きかけを重ねていた。ビデオ映像を受け取った中井氏のもとへくれぐれも公開しないよう求めた要望書を届けさせたほどだ。
 だがビデオの非公開は、政治決定プロセスの透明化をうたってきた民主党の従来の主張とは相反する。菅直人首相は1日の所信表明演説で「国民一人ひとりが自分の問題として考える主体的で能動的な外交を展開したい」と高らかに語ったが、もとになる情報が伏せられては考えようもない。(略)

●産経新聞 平成22年10月29日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101028/plc1010281116007-n1.htm
【尖閣ビデオ】自民が全編2時間の提出を要求へ 「改竄の可能性も」
2010.10.28 11:15

 自民党は28日午前、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、政府が国会に提出したビデオ映像は編集され不十分だとして、映像全編の提出を衆院法務委員会で求める方針を決めた。佐藤勉国対委員長代理が記者会見で明らかにした。中国人船長の釈放を判断したとされる那覇地検幹部の国会招致も法務委で求める。
 政府が27日、衆院予算委員会の要求に応じて衆院に提出したビデオ映像は、約6分間とされる。自民党国対幹部は「海上保安庁が撮影した映像は約2時間あるという。誰が編集したかも分からず、改竄(かいざん)された可能性もある」と述べた。(略)

●日テレNEWS24 平成22年10月29日

船長、衝突前に飲酒し泥酔状態 漁船衝突
(日テレNEWS24 - 10月29日 13:25)

 沖縄・尖閣諸島沖で中国の漁船と日本の巡視船が衝突した事件で、漁船の船長が衝突する前に酒を飲み、海上保安官が立ち入った際にも、自分では歩けないほどだったことを中国の当局者が明らかにした。
 中国当局者によると、先月7日、尖閣諸島沖で中国の漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する前、漁船のセン其雄船長(41)が酒を大量に飲んでいたことを、事件の6日後に帰国した乗組員14人が中国政府に証言していたという。
 中国の漁船は午前10時過ぎから11時ごろにかけて相次いで2隻の巡視船に衝突し、午後1時ごろ、海上保安官が漁船に立ち入ったが、漁船の乗組員の証言では、その際、船長はまだ酒に酔っていて、自分で歩けない状態だったという。
 ★セン其雄の「セン」は「擔」のつくり
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関連掲示
・拙稿「尖閣~韓国海洋警察は断固対応」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101022
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構造改革を告発した経済家4

2010-10-30 08:43:24 | 経済
●日本はそれほどの財政危機ではなかった

 財政危機説に基づいて財政健全化をめざし、緊縮財政を行ったのが、橋本政権だった。橋本氏は、1996年1月に自社さ連立政権の首相となり、11月からの自民単独政権でも首相を続けた。山家氏が『偽りの危機 本物の危機』を出したのは97年10月であり、橋本財政改革が行われている真っ最中だった。
 橋本氏は、大蔵省の示す先進国最悪の財政危機という認識に立って、緊縮財政を行った。これに対し、山家氏は、日本の財政について異なる見方を提示した。
 山家氏は、次のように書く。
 「国債と地方債、それに特別会計の資金繰りのために発行される短期国債等をも含めた一般政府の負債残高は1995年末で435兆円である。95年の国内総生産(GDP)は461兆円であったから、日本の政府部門はGDPの94%に当たる負債を抱えていることになる」
 大蔵省や多くの経済学者は、こうしたとらえ方から、わが国の財政危機を強調する。しかし、山家氏は、これに反論する。
 「国も地方も、一方で預金、貸出金、出資金といった金融資産を保有している。外貨準備だけでも20兆円近くの資産がある。また社会保障基金が保有し、運用に回している金融資産残高は1995年末で211兆円に達している。これら政府部門全体の金融資産の残高の合計は、95年末で378兆円である。政府部門の負債残高から金融資産残高を差し引いた数字が日本の政府部門の抱えている純財務残高であり、その額は95年末で57兆円である」と。
 政府には負債だけでなく、金融資産がある。債務と債権の差し引きで見ないと、財政の実態はつかめない。政府の負債のみを言うときの債務は、粗債務という。それに対し、債務と債権の差し引き結果を、純債務という。山家氏の上げる数字でいうと、わが国の政府は、粗債務では435兆円の負債残高を抱えているが、純債務では57兆円に縮小する。粗債務はGDPの94%に上るが、純債務は12%にすぎない。
 財政危機説を説く論者は、「日本の財政赤字は先進国中最悪の状況にある」という表現をしばしば使う。山家氏は、この見方の誤りを明らかにするため、より具体的に述べる。
 「財政赤字を政府部門の赤字として捉えると、その政府部門には社会保障費も含まれる。(略)日本の社会保障基金の収支(フロー)は年間13兆円を超える黒字を出している。その残高(ストック)は200兆円に達している。これを加えたものを財政赤字として捉え、その対GDP比を国際比較してみるとどうか」と問う。
 まずフローの財政赤字の対GDP比である。「社会保障基金について日本と同様の方式を取っている国はアメリカのみである。(略)日本とアメリカの比率を社会保障基金を含んだものに代えてみると、1995年の日本は3.3%となる」。この数字はアメリカの2%以下よりは大きいが、ドイツとほぼ同じくらいの数字である。フランスは4%以上、イギリスは5%以上ゆえ、日本よりも大きい。日本の財政赤字は先進国中最大、とは言えなくなる。
 山家氏は、フローだけでなく、ストックも見る。
 ストックの財政赤字の対GDP比について、社会保障基金の残高その他、一般政府の保有する金融資産残高をその負債残高から差し引いて、政府の純債務残高、いわば純財政赤字残高を算出し、その対GDP比を国際比較する。「1995年の日本は10%である。フランスは35%、イギリスは42%、ドイツは44%、アメリカは50%等々であり、日本の純財政赤字残高は先進国の中で最小ということになる」と山家氏は言う。
 フローの財政赤字は、アメリカに次いで少なく、ストックの純債務は、主要先進国で飛び抜けて少ない。ということは、山家氏の見方によれば、日本の財政は1995年の時点では、非常に健全な状況だったのである。

 次回に続く。
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教育勅語発布から120年

2010-10-29 09:29:25 | 教育
 本年10月30日は、明治23年(1890)10月30日に教育勅語が発布されて120年という記念すべき日に当たる。わが国は、敗戦後GHQの命令により、昭和23年(1948)6月に国会で勅語の排除ないし失効確認が決議された。以来、教育勅語は廃止されたまま顧みられずにきた。そのことが、日本人が日本人本来の精神を見失ってきた一つの原因となっている。私は、教育勅語発布120年にあたり、改めて教育勅語の復権を広く呼びかけたい。

 教育勅語を読んだことのない人は、この機会に読んでみよう。また読んだことはあるが、じっくり内容を確認したことのない人は、この機会に確認してみよう。
 教育の勅語の全文と現代語訳を、マイサイトに挙げてあるので、ご利用願いたい。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02c.htm
 第4章「教育勅語を読んでみよう」
 
 さて、戦後日本の教育は、日本国憲法と教育基本法の下で行われてきた。教育勅語は、西洋文明の摂取に急ぐあまりに、伝統的な道徳を軽視していた風潮に対して、わが国の教育の根本となる理念・目標を打ち出したものだった。それゆえ、教育勅語を否定すれば、必然的に、学校教育から伝統に基づく道徳が欠落し、西欧の模倣追従となる。同時に、家庭での教育も指針を失ってしまう。学校で家庭で道徳的な価値観が喪失され、物事の判断基準が見失われる。まさにそれが、戦後日本において起こった。
 日本国憲法には、日本の歴史・伝統・精神を守ろうという姿勢がない。また、旧教育基本法は日本国憲法の下での教育を定めたゆえ、愛国心・公共心の育成、伝統の尊重、祖先への敬愛、自衛心の涵養などが盛られていなかった。その空隙に教え込まれたのは、外国の思想だった。アメリカ型の民主主義であり、旧ソ連型の共産主義であり、また中国・朝鮮の反日思想である。こうして日本人は、日本の心を失い、独自の精神文化を失ってゆくことになった。そして、日本人は経済的な復興と繁栄を追求するなかで、物質的な豊かさは得たものの精神的な高邁さを失ってしまった。欲望の開放を自由の拡大と錯覚したような、品性のない国民に成り下がってしまったのである。
 教育勅語という支柱をなくした教育が、戦後60年以上も続けられたことによって、教育には甚大な影響が出ている。将来を担う青少年の退廃、堕落は、底知れぬ深刻さを示している。また、家庭が崩壊に向かい、社会は混乱し、国家の溶解が進んでいる。このまま精神的な支柱を見失っていれば、わが国は、亡国の道を歩むだろう。
 そこで私は、教育勅語の復権を呼びかける。
 戦前の教育がすべてよかったわけではない。欠陥もあれば、ゆき過ぎもあっただろう。しかし、その中の良いものもすべて否定してしまっては、精神的な低下が起こるのは当然である。教育勅語には、何千年もかかって培われてきた日本独自の道徳が結晶しているからである。そえゆえ、教育勅語の再評価と復権を行い、その内容のうち、現代に生かせることは、生かしていくべきである。
 
 以下は、教育勅語に関する著書もある大原康男氏の主張。

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●産経新聞 平成22年10月29日

http://sankei.jp.msn.com/life/education/101029/edc1010290311002-n1.htm
【正論】国学院大学教授・大原康男 発布から120年、教育勅語再考を
2010.10.29 03:08

 教育勅語(ちょくご)-正式には「教育ニ関スル勅語」-なんて今さら何だという声が出てくるかもしれない。既に修身教育を停止させていた連合国軍総司令部の命令により昭和23年6月に国会で勅語の排除ないし失効確認が決議され、それ以降、わが国では「天皇絶対主義イデオロギーを国民に注ぎ込み、あの無謀な侵略戦争を導いた元凶」という最大級の負の烙印(らくいん)が押されて久しいからである。
 しかし、戦後教育の欠陥、とりわけ徳育の欠如は“いじめ”や登校拒否、学級崩壊などを生み、また低年齢層の凶悪犯罪や自殺の増加、親殺し、子殺しといったさまざまなモラルハザード現象を蔓延(まんえん)させた。ために、平成18年12月に教育基本法が制定から60年近くもたって全面改正され、「豊かな道徳心」「公共の精神」「伝統と文化の尊重」などが遅まきながら謳(うた)われたのだが、これはほんのささやかな再出発にすぎない。

≪教育基本法とは共存≫
 戦後日本の“神話”に「教育基本法は教育勅語に代わるものとして制定された」というのがある。詳細は紙数の関係で割愛するが、前者の制定は昭和22年3月、後者の廃止は先述の通り翌年の6月。短期間ながら両者が共存し補完関係にあった事実は重要であり、教育勅語について考察する際に無視できないポイントである。この30日は明治23年10月30日に教育勅語が発布されてちょうど120年の記念すべき節目に当たる。この機会に近代日本の教育の根幹とされた勅語の意義を改めて検証することも決して無駄ではあるまい。
 周知のように、近代化を大急ぎで進めた政府の教育政策が西洋偏重、中でも徳育が軽視され、それを深刻に憂慮された明治天皇の意を受けて草案起草の中心となったのが山県有朋内閣の法制局長官、井上毅(こわし)である(近代日本の2つの支柱である明治憲法と教育勅語の双方に関(かか)わった唯一の人物)。
 井上は、立憲主義の立場から君主は国民の良心の自由に干渉してはならないとして、勅語は「政治上の命令」(「勅令」のようなもの)ではなく、「君主の社会的著作」(「御製」のようなもの)として発せられるべきであるとの原則を提示した上で、宗教上の争いを引き起こす「敬天尊神」のような語を使用しない、激しい論争を招く「幽遠深微な哲学上の理論」に立ち入らない、時の政治家の示唆によるものと見られるような「政治上の臭味(くさみ)」を帯びない等々、実に細心かつバランス感覚豊かな構想で起草したのである。

≪バランス配した井上の起草≫
 内容的にも「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ…」に始まる12の徳目も一般に評されているようには儒教色一色でない(例えば、孟子の「五倫」にある「父子に親あり」「長幼に序あり」「夫婦に別あり」と比較すれば明白)。
 また、こんな逸話も伝わっている。徳目の一つ「常ニ国憲ヲ重(おもん)シ国法ニ遵(したが)ヒ」は天皇の大権に制限を加えるものと考えた側近の一人が削除しようとした際に、明治天皇は「いや、あれは必要だ、原文のまま留(とど)めておけ」と指示された。前年に公布された憲法が定める立憲君主のあるべき姿を早くも示されたのである。
 もう一つ注目すべきは、結びにある「朕(ちん)爾(なんじ)臣民ト倶(とも)ニ拳々服膺(けんけんふくよう)シテ…」である。天皇も国民とともに努力するとの趣旨であり、君主から国民への一方的な訓諭ではない点も見逃してはならない。

≪外国人の評価と若者の理解≫
 外国人の評価にも目を向けてみよう。日露戦争の開戦直前にあらかじめ戦争終結の斡旋工作に従事するため派米されていた金子堅太郎(伊藤博文の配下。当時の米大統領のT・ルーズベルトとハーバード大で同窓)によれば、予想外の日本軍の健闘に驚嘆した米国人から「日本の教育はどうなっているか」と問われたので、教育勅語を紹介し、求めに応じて仮訳を示したところ、多くの人々から共感と称賛の声が上がったという。
 時代は遙(はる)かに下るが、私にも似た体験がある。二十数年も昔のことだが、進学校で有名な栄光学園の園長を務め、『日本の父へ』などの著書でも知られるドイツ人のグスタフ・フォス神父から「日本の憲法の前文も歴史や伝統に沿ったものであるべきだ」と言われたので、「具体的には?」と問うたところ、「教育勅語のようなものだ」と即座に答えられて、驚いたことを今も鮮烈に覚えている。
 以上のようなことは各種の講義で語ってきた。ほとんどの受講生は教育勅語には冒頭触れたような悪いイメージを持っていたのだが、私の話を聞いた後では「教育勅語への見方が大きく変わった」と異口同音に感想を述べる。確かに「朕惟(おも)フニ」や「我カ臣民」などの表現に違和感を覚えるのはやむを得ないし、片仮名交じり漢文読み下し調の文体には馴染(なじ)みにくいという難点はあるものの、意見ではなく事実だけをそのまま伝えれば、今の若い世代でも素直に理解できると分かり、ほっとする。もっとも、そう言う私自身も彼らと同じく教育勅語とは無縁の教育を受けてきたのだが…。(おおはら やすお)
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関連掲示
・拙稿「教育勅語を復権しよう」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02c.htm
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構造改革を告発した経済家3

2010-10-28 08:52:32 | 経済
●財政危機説は、政府が唱えた

 先に書いた三つの危機説に対し、もう一つの危機説、財政危機説は違う。財政危機は、確かに存在するからである。ただし、誇張されすぎているーーと山家氏は批判する。その論を次に見ていこう。
 バブル崩壊後の1993年7月、自民党は55年体制以来、38年目にして初めて野に下った。細川護煕氏を首相とする非自民連立政権が成立したが、翌年4月細川首相が突然辞任し、後継の羽田内閣も2ヶ月で退陣。自民党は首班指名選挙で社会党の村山富市氏に投票し、94年6月、自社さ連立政権が誕生した。
 1995年(平成7年)は、戦後50年の年だった。この年は、わが国の重要な節目となる年だった。1月に阪神淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が起こり、8月に村山首相談話が発表された。そしてこの年秋、時の大蔵大臣・武村正義氏は、わが国の財政は危機的状況にあると発表した。各紙はいっせいにこの発表を、「財政危機宣言」と報道した。これが、財政危機説の発端である。
 武村氏は蔵相を退任後、96年6月の『中央公論』に「このままでは国が滅ぶーー私の財政再建論」という論文を寄せた。主旨は、「日本の財政状況は先進国中最悪である。このままでは国が滅ぶ」というものである。そして、96年の後半から97年にかけて、大蔵省(現・財務省)を中心として、日本の財政状況は先進国中最悪という「財政危機」キャンペーンが展開された。
 山家氏は、大蔵省の財政危機説を、データを上げて理論的に批判する。財政危機説は、今日まで政府・財務省の基本的な見解であり、多くの経済学者は同様の見方をしている。しかし、もしその説が誤っていたら、どうだろうか。誤った説からは、誤った政策が作られ、誤った政策を実行すれば、国を誤らせる。山家氏は、菊池英博氏らと同じく、財政危機説の誇張を見抜き、経済政策の軌道修正を訴えた。

●戦後日本財政の展開

 山家氏は、戦後日本の財政について、次のように述べる。
 「戦後日本の財政は、歳入(税収を主体とする)の範囲内に歳出を抑えるという均衡予算主義から出発した。1947年に制定された財政法は、その第4条で『国の歳出は、公債または借入金以外の歳入を以って、その財源としなければならない』と、均衡予算主義の原則を定めている。戦前・戦中の日本が、日本銀行引き受けによる国債を大量に発行することによって戦費をまかない軍事的膨張をとげたことなど、その国債が戦後の激しいインフレーションのもとでほとんど紙くずと化して国民の負担を高めたことなどの苦い経験を踏まえてのことであった。
 もっとも、財政法第4条は、先の文言に続けて『但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の決議を経た金銀の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる』とも定めている」
 山家氏のいう財政の「均衡予算主義」が崩れたのは、1965年度である。昭和40年不況の対応のため、政府は補正予算で歳入補填のため赤字国債を発行した。そして、景気の本格的回復や社会資本の充実を目的に、第4条但し書きによる建設国債が、初めて当初予算に組まれ、発行されたのは、翌1966年度である。
 国債には、建設国債と赤字国債がある。建設国債は、「後々の世代も利用できる種々の社会資本を建設するその見返りに発行されるもの」である。国債を発行して資金を調達し、道路、港湾、上下水道、公共建築物等々を建設する。出来上がったインフラは、出費を負担した世代ばかりでなく、後々の世代も利用でき、恩恵にあずかれる。「考え方としては、後々の世代もその恩恵に浴することのできるものについては、その負担も併せ求めるというのは筋が通っているのではないか」と山家氏は言う。これに対し、赤字国債は、政府が歳入不足を補填するために発行するもので、事務諸経費や人件費等に当てられる。財政上必要な時は、特別立法によって発行される。
 国債の発行額が飛躍的に増加し、かつ建設国債に加えて毎年、特例法を制定して、赤字国債が発行されるようになったのは、第1次石油危機後、不況が深刻化した1975年度からだった。1960年代からの高度経済成長を終えたわが国は、1970年代後半以後も安定成長を続けた。私見によると、日本が1980年代にも安定成長を維持できた理由のひとつは、政府が国債を発行して、国民の預貯金を公共投資に活かし、GDPを拡大してきたことにある。しかし、それによって政府の債務は増える。これをどう評価するかが、財政学における一大テーマとなる。
 単純に考えるとーーー借金は良くない。政府の債務が増えるのは良くない。債務が多いのは、健全ではない。債務を減らし、歳入と歳出の均衡を図らねばならないーーということになる。それが均衡予算主義であり、1995年秋、武村蔵相の「財政危機宣言」を皮切りに「財政危機」キャンペーンが展開されたのは、簡単に言うとこういう考えによる。
 果たして、この考え方は正しいか。山家氏の見方を次回に書く。

 続く。
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インドとの関係拡大を歓迎する

2010-10-27 11:25:10 | 国際関係
 菅直人首相はインドのシン首相と首相官邸と、両国間の経済や貿易の自由化を進める経済連携協定(EPA)の締結で正式に合意した。私は、わが国は中国偏重から脱し、インドとの協力・連携の拡大を急ぐべしと主張してきた。このたびの日印関係の強化を、大変喜ばしく思う。
 昨年9月民主党中心の連立政権となってから、わが国の外交は多方面で迷走している。本年7月菅内閣となるや、韓国・ロシア・中国等との間で、失政を続けている。こうしたなか、インドとの関係は、長期的な外交方針が崩れることなく前進している。菅首相をはじめとする政府中枢に、確かな認識があるとは思えないだけに、日印関の拡大を進めている各界関係者の多大な努力があってのものと思う。

 インドは世界でも最も親日的な国の一つである。日本人は、インド独立の英雄チャンドラ・ボースらを支援し、大東亜戦争のときにはF機関を通じて、民族独立運動を育て、インパール作戦では、インドのために血を流した。インド人は今も日本のお陰で独立が早まったと感謝している。インドの国家指導者は靖国神社に参拝している。戦後、首相となったネールは、東京裁判のインド代表判事にパール博士を任命した。パール博士は、東京裁判の不当性を明らかにし、日本の戦犯容疑者全員の無罪を判決した。インド政府は、当時も今もパール博士の判決を支持しているという。
 かつてピーター・ドラッガーは、「インドへの投資のほうが中国より魅力的である」と予想した。「巨大な軍と農村の余剰を都会の製造業が吸収するという社会構造の変化を中国に望むのは無理だろう」と述べ、「なによりも教育を受けたエンジニア、スペシャリストがインドに大量に育っている」と指摘している。実際、ソフトウェアの開発でインドは世界一となり、IT業界を牽引している。
 インド人の人生観には、深遠な宇宙哲学があり、精神的な価値を重んじる。高い精神性がうかがわれる。自己主張が強くて身勝手なシナ人と違い、穏やかで親和的だ。シナ人のように即物的・拝金的でなく、インド人は物欲や金銭欲だけでは動かないと聞く。商取引でも、順法精神が見られる。当然のことのように約束を破るシナ人とは異なり、まともな付き合いができる。
 そのうえ、インドはデモクラシーの国である。アジア最大の民主主義国家である。わが国と共通の価値観を多く持っている。中国に軍事的脅威を感じるわが国と、地政学的に中国を警戒するインドの提携は、両方にメリットが大きい。ペルシャ湾から南シナ海へのシーレーンの防衛は、中国にとっても重要な課題だが、インドはいざとなったらこれを抑える力を秘めているようである。こうしたインドとの提携は、わが国に有効な外交カードを増やすことになる。
 マンモハン・シン首相は 平成18年12月に来日した際、衆議院で演説を行なった。マスメディアはこの演説の内容を報道しなかったが、インターネットを通じて知られるようになり、日本人に感動を与えた。その国会演説は、私のサイトにも掲載している。

 このたびの日印首脳会談で、日印両国は「戦略的グローバル・パートナーシップ」を今後10年間にわたって拡大、強化していく方針で合意した。わが国は、今後も着実にこの方針を実行すべきである。

 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月26日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101025/plc1010252254013-n1.htm
日印首脳会談、EPA正式合意 レアアース開発協力も
2010.10.25 22:52

 両国はEPAについて早期発効を目指す。今後10年間で双方の貿易総額の94%の関税を段階的に撤廃する。中国に次ぎ人口12億人を超えるインドは今後の人口増、経済成長が見込めるため、政府は連携強化で日本の経済成長にもつなげたいとしている。
 レアアースについては、世界最大の産出国である中国で輸出停滞が続く中、日本政府は埋蔵量世界第5位とされるインドとの連携強化で多角的な資源外交を進める考えだ。日本側はインドを「基本的な価値観を共有する世界最大の民主主義国」(外務省幹部)として重視しており、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で関係が悪化する中国を念頭に、人的交流や安全保障分野も含む幅広い分野で連携を強める方針だ。
 会談では経済連携強化を協議する「日印閣僚級経済対話」の定期的な開催や日本によるインフラ整備支援の着実な推進、査証(ビザ)手続きの緩和などでも合意した。交渉中の原子力協定については早期の妥結に向けて努力することを確認した。

●朝日新聞 平成22年10月26日

http://www.asahi.com/politics/update/1025/TKY201010250410.html
レアアース・EPA・原子力で合意 日印首脳会談
2010年10月25日20時49分
  
 (略)両首脳は、すでに合意している両国間の「戦略的グローバル・パートナーシップ」を今後10年間にわたって拡大、強化していく方針で合意。レアアースの供給協力は、その一環として位置づけられた。インドは世界でも上位の埋蔵国とみられている。
 貿易やサービスを自由化するEPAの締結合意については、日本政府は来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。インドは日本からの輸入額の約90%、日本はインドからの輸入額の約97%にあたる物品について、それぞれ10年かけて関税を撤廃。投資保護や紛争解決の取り決めも盛り込まれ、日本企業のインドへの投資が加速しそうだ。
 また、原子力に力を入れているインドは、今後20基以上の原子力発電所を建設する予定。すでに米国やフランス、ロシアなどと原子力協定を締結しており、日本にも協力を求めている。

●産経新聞 平成22年10月26日

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101025/biz1010252058024-n1.htm?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
【日印EPA】産業界に大きな期待 「競争条件ようやく整う」
2010.10.25 20:56

 (略)今年も8%台の高い成長率が見込まれるインドは、日本の輸出産業に大きな商機をもたらすとの期待が高まっている。しかし、新興国もインドとの関係強化、市場開拓を加速している。日印EPAでようやく競争条件が整うとの見方もあり、日本企業の実力が試される。

■パイプさらに太く
 「間違いなくプラスになる」と歓迎するのは、日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)だ。世界鉄鋼協会によると、インドの2009年の鉄鋼需要は前年比約8%増で10年、11年の予測はともに約14%増と中国を上回る成長が見込まれている。
 国内鉄鋼大手では、新日本製鉄がタタ製鉄と技術協力などで関係を強化し、JFEスチールは現地大手のJSWスチールへの約900億円出資を決めた。日本からの輸入にかかる関税は5~10%だが段階的に引き下げられれば、日印鉄鋼業界のパイプがさらに太くなるのは確実だ。
 インド政府が注力するインフラ整備も日本企業の得意分野だけに期待は高まる。三菱電機は「鉄道や電力網などがEPAの対象になれば、メリットを享受できる」(笹川隆常務執行役)としており、2015年度にインドでの売上高を現状の3倍の750億円に引き上げる計画だ。

■ライバルと対等に
 インドの自動車市場でシェア首位のスズキ関係者は、「ハンディキャップの解消につながる」と話す。自動車部品の関税が撤廃されれば、すでにインドとEPAを結んでいる韓国自動車メーカーと競争条件が対等になるというわけだ。
 全体の8割弱を占める乗用車部門でスズキはシェア4割超と他社を圧倒しているが、9月に韓国の現代自動車が4カ月ぶりに2位になるなど追い上げており、警戒心を募らせていた。
 一方、ソニーなど家電メーカーは、インドと自由貿易協定(FTA)を結んだ東南アジア諸国連合(ASEAN)を輸出拠点としている。日印EPA交渉がもたつく間に手を打っていた格好だ。今回の日印EPAには「すぐに効果が表れるとは考えられない」(関係者)と冷めた見方もあるが、「日印間の貿易自由化が進めば、オペレーションの選択肢が増える」(ソニー)のも事実で、今後の戦略立案に好材料となりそうだ。

■日本市場での競争も
 一方で日本が市場の開放を求められる分野もある。新薬の特許切れ後に同じ成分で製造される安価な後発薬だ。医療費抑制の観点から日本政府は後発薬の普及を後押ししており、コスト競争力に優れたインド企業の日本進出が予想される。
 印ザイダスグループ傘下の日本法人、ザイダスファーマのシャルマ・カイラッシュ・ディープ社長は、「日印の信頼関係が深まることで、日本の医師にインドの後発薬を使ってもらえるようになる」と期待を寄せる。これに対し国内勢は、「後発薬専業メーカーには厳しい」(関係者)と危機感を強めており、業界は戦略の練り直しが迫られそうだ。
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関連掲示
・拙稿「インドへの協力・連携の拡大を~シン首相の国会演説と日印新時代」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12d.htm
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構造改革を告発した経済家2

2010-10-27 08:46:28 | 経済
●山家悠紀夫氏は「偽りの危機」に警鐘を鳴らした

 バブルの崩壊後、約20年間、わが国の経済は停滞状態にある。特に今日まで続くデフレは、1997年に橋本龍太郎内閣が行った政策が発端となった。その当時、わが国で主張されていた構造改革論を、厳しく批判したエコノミストがいる。その一人が、山家(やんべ)悠紀夫氏である。
 山家氏は、1997年10月に『偽りの危機 本物の危機』(東洋経済新報社)を刊行した。山家氏は、本書で、構造改革論を「偽りの危機」を煽るものとして批判し、かえって「本物の危機」を招く恐れがある、と警鐘を鳴らした。橋本内閣下での経済危機を予見するものでもあった。
 山家氏は現在、神戸大学大学院教授だが、以前は銀行マンだった。本書刊行当時、山家氏は第一勧銀総合研究所取締役専務理事だった。第一勧銀は、みずほ銀行の前身である。山家氏は、金融の現場での実務経験をもとに、独自の見方でわが国の財政を見る。そして、通説を覆す主張を展開した。
 山家氏が『偽りの危機 本物の危機』を出した当時、わが国には、日本は経済危機にあるとする説が唱えられていた。
 山家氏によると、「1980年代後半から90年代初めにかけてのいわゆるバブル景気が崩壊してからというもの、とくにその不況が長引くにつれ、この不況は構造不況であるということがいわれはじめた」。それが日本経済の構造危機説である。続いて、「1993年には1ドル100円、さらに95年には1ドル80円という円高が出現すると、それをきっかけに新たに幾つかの日本経済危機説が登場した」。それが空洞化危機説、高コスト危機説、財政危機説である。
 山家氏は本書でこれらの説を検討し、「これらの危機は、実証できない、実在しない、論理的に説明できない、そして誇大化されている」と指摘した。そして、「日本経済が危機と声高に叫ばれるほどの状況にはないとすると、大変な危機であるとの前提のもとに行われつつある諸施策」、具体的には、構造改革のための施策――とりわけその中心に据えられた規制緩和政策――そして財政危機との判断に基づいてなされる財政再建政策について、「これらの対策によりかえって私たちの生活が危機に瀕する恐れがある。いわば『偽りの危機』に対処するためにとられた政策が、『本物の危機』を招く恐れが十分にある」と主張した。その後の日本経済は、不幸にして山家氏の懸念が当たったことを示している。
 こうした山家氏の主張を知るため、まず四つの危機説に対する氏の批判を、順を追って見てみよう。

●実証できない、実在しない、論理的に説明できない

 最初は、構造危機説である。山家氏は、構造危機説は「実証されていない。実証されていないばかりか偽りの説ですらある」と言う。理由は、第一に「今回の日本経済の不況の長さ、そして深さは日本経済の構造に問題があってのことではない。それはバブルの破裂、円高という大きな衝撃が日本経済に与えられたためであり、加えて、天候異変、大震災などの被害も加わったためである。これらの衝撃の影響も薄れていくにつれ、日本経済が不況脱出へと向けて動き出したのがその何よりの証拠である」。すなわち、構造危機説は「偽りの説である」とする。第二に「日本経済の構造自体が、こうした衝撃を受ける下で、そして長期に及んだ不況の下で大きく変化してきている。先に見たのは(註 詳細は省く)、統計で明らかに捉えられるものに限ったが、その他の面でも構造変化が生じているものと思われる。この点でも構造変化を起こさない限り日本経済の先行きは云々という、構造危機説は偽りの説である」と断定する。
 次は、空洞化危機説である。山家氏は、次のように言う。「現在、現実に生じていることは、戦後日本経済の中で生じてきた産業構造の変化、他国に比べてより優れた生産性をもつ産業の台頭による旧来型産業の衰退という、大きな流れの延長線上にあることなのである。現在の日本経済においては、半導体その他資本財産業の著しい勃興が見られる。それら商品の輸出が伸び、その結果として円高が進んでいる。そのために自動車等の輸出環境が厳しくなってきているーーー。それはかつて、繊維産業に生じ、鉄鋼産業に生じたことではないか。言い換えれば、基幹産業は時に応じて、これまで変わってきたし、今も変わりつつあるということである」。それゆえ、「現状は、自由貿易体制の下で、起こるべきことがこれまでと同様に起こっているのであり、こと新しく空洞化危機が発生しているということではない」と判断する。
 次は、高コスト危機説である。高コスト危機説とは「物流、エネルギー、電気通信、金融サービス等々、主としてサービスの分野において、日本の物価は高い(「内外価格差が大きい」)、これらは日本の産業にとってはコストでもあるから、日本経済は高コスト経済である」ととらえ、「この高コスト経済という構造を変えていかないと、国際競争に耐えられなくなって製造業は海外に出ていってしまい、日本経済は脆弱化する」いう説である。しかし、山家氏は「日本経済が高コスト経済であるわけではない。購買力平価よりもかなり高い円相場で換算するから、高コストに見えるだけなのである」と指摘する。そして、「高コスト危機説は、その言うところの高コストを解消させることが新たな高コストを生むという論理矛盾を内包しているのであり、論理上も破たんしている、と言えよう。見かけ上の高コストは日本経済の危機でも何でもない。日本経済の、とくに貿易財産業の生産性の高さの表れ、競争力の強さの証明と見るべきであろう」という見解を述べる。
 構造危機説の背景にあるのは日本経済の長期不況、空洞化危機説の背後にあるのは円高の急激な進展、高コスト危機説の登場を促したのは円高に伴う内外価格差の拡大であった。しかし、これらの三つの危機説は、実証できないか、実在しないか、論理的に説明のできないものである、として山家氏は斥ける。

 次回に続く。
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構造改革を告発した経済家1

2010-10-26 11:05:46 | 経済
●はじめに~ある新自由主義者の「転向」

 2008年9月のリーマンショックによる世界経済危機の後、新自由主義、市場原理主義、グローバリズムへの批判が噴き上がった。日本人のエコノミストの中には、日本的な価値観を評価し、日本が新しい経済社会システムを生み出すべきと唱える人が多くなっている。
 なかでも中谷巌氏は、今やその先頭に立っているとも言える。中谷氏は、1990年代から、わが国に新自由主義・市場原理主義を持ち込んで、政府の政策決定に大きな影響を与えた人物である。小泉=竹中政権の構造改革は、中谷氏なしにはありえなかっただろう。ところが、その中谷が自説の誤りを認めたのだから、多くの人は驚いた。氏は『資本主義はなぜ自壊したのか』(2008年12月刊、集英社インターナショナル)を出し、本書を「懺悔の書」と呼んだ。氏は、本書で新自由主義は「危険思想」であり、グローバル資本主義と市場原理は「悪魔のシステム」だと言う。
 『資本主義はなぜ自壊したのか』は、リーマンショックの3ヵ月後に刊行された。本書は次のように始まる。
 「世界経済は大不況の局面に入った。この混乱が収束するにはおそらく数年にもわたる調整が必要になるだろう。しかし、もっと本質的な問題がある。グローバル資本主義の本質は何かという問題である。それを明確に理解しない限り、我々は将来、何度でも今回と同じ間違いをしでかすに違いないからである。
 グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に、世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境破壊など、人間社会にさまざまな『負の効果』をもたらす主犯人でもある。そして、グローバル資本が『自由』を獲得すればするほど、この傾向は助長される。
 21世紀世界は、グローバル資本という『モンスター』にもっと大きな自由を与えるべきか、それともその行動に一定の歯止めをかけるべきなのか。
 当然のことながら、新自由主義勢力はより大きな『自由』を求める。グローバル資本が自らを増殖させるための最大の栄養剤だからである。しかし、さらなる『自由』を手にしたものは、まさにその『自由』によって身を滅ぼす。結局のところ、規律によって制御されない『自由』の拡大は、資本主義そのものを自壊させることになるだろう」
 中谷氏は、このように世界経済について所論を開陳する。そして日本に論を進める。
 「一時、日本を風靡した『改革なくして成長なし』というスローガンは、財政投融資制度にくさびを打ち込むなど、大きな成果を上げたが、他方、新自由主義の行き過ぎから来る日本社会の劣化をもたらしたように思われる。たとえば、この20年間における『貧困率』の急激な上昇は日本社会にさまざまな歪みをもたらした。あるいは、救急難民や異常犯罪の増加もその『負の効果』に入るかもしれない」
 ここに言うスローガンは、「構造改革なくして成長なし」と、小泉首相が唱えたものである。中谷氏は、このスローガンのもとに、新自由主義・市場原理主義に基づく構造改革を推進した。しかし、その結果を反省した中谷氏は、本書で次のように言う。
 「『改革』は必要だが、その改革は人間を幸せにできなければ意味がない。人を『孤立』させる改革は改革の名に値しない。かつては筆者もその『改革』の一翼を担った経歴を持つ。その意味で本書は自戒の念を込めて書かれた『懺悔の書』でもある。まだ十分な懺悔は出来ていないかもしれないが、世界の情勢が情勢だけに、黙っていることができなくなった。そこで今回、思い切って私の拙い思いを本書の形で上梓させていただくことにした」と。

 小泉=竹中政権の構造改革は、アメリカ発の新自由主義をわが国に本格的に導入したものだった。中谷氏はその新自由主義から「転向」し、いまや新自由主義を厳しく批判する。
 「新自由主義の思想は、私たちが暮らす社会を個人単位に細分化し、その『アトム化』された一人一人の自由を最大限尊重するという思想だから、安心・安全、信頼、平等、連帯などの共同体価値には何の重きも置かない。つまりは人間同士の社会的つながりなど、利益追求という大義の前には解体されてもしょうがないという『危険思想』なのである」。そして、新自由主義に基づく「グローバル資本主義や市場原理」は「本質的に個人と個人のつながりや絆を破壊し、社会的価値の破壊をもたらす『悪魔のシステム』である」と断定する。
 ただし、中谷氏は自らが関わった構造改革を完全に否定するのではない。「私は構造改革そのものを全面否定するようになったわけではない。しかし、格差拡大を助長し、日本社会が大事に育ててきた社会的価値を破壊するようなことを放置する改革には賛成できなくなった。必要な改革はまだまだ残っているけれども、アメリカ後追い型・弱者切捨て型の構造改革には声を大きくして反対する必要があると考えるようになった。その意味においての『転向』である」
 だから「転向」と言っても、180度変わったのではない。中谷氏は、小泉=竹中政権の構造改革の意義は認めつつ、「格差拡大を助長し、日本社会が大事に育ててきた社会的価値を破壊するようなことを放置する改革」「アメリカ後追い型・弱者切捨て型の構造改革」には反対だと言う。そして、中谷氏は本書で、日本的な価値観に基づく日本再生の政策を提言し、今こそ日本発の価値観を世界に伝えるべき、と唱えている。

 私は、中谷氏の「転向」は中途半端であり、氏は新自由主義と構造改革の反省が不徹底であると思う。特に新自由主義と構造改革の経済理論に関する総括がされていないのは、経済学者として、怠慢である。実は、中谷氏がわが国で構造改革を推進していた当時、構造改革路線の問題点や危険性を見抜き、強く警告していたエコノミストがいた。例えば、先に書いた世界的なエコノミスト、宍戸駿太郎氏がそうである。また山家(やんべ)悠紀夫氏、菊池英博氏らも、1990年代後半から新自由主義を批判し、構造改革に異を唱えて、それに替わる政策を提言していた。
 今日わが国の1990年代から2000年代の経済政策を総括し、日本の経済を復活させるうえで、彼らの提言には有効有益なものが多く含まれていると私は思う。本稿は、構造改革を批判するエコノミストのうち、山家悠紀夫氏と菊池英博氏の理論と主張を整理し、検討を行うことを目的とする。
 なお、先の三氏よりさらに早く「正統派ケインズ主義」の立場から、新自由主義を含む「反ケインズ主義」を徹底批判し、「救国の秘策」を建言してきたエコノミストに、丹羽春喜氏がいる。丹羽氏については、本稿の後に書く予定である。

 次回に続く。
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中国で反日デモが拡大、政府批判も

2010-10-25 11:08:11 | 時事
 私は昨日、一昨日と東京赤坂でセミナーを行った。日韓併合百年の菅首相談話、ロシアの対日戦勝記念日、尖閣沖中国漁船衝突事件を通じて、わが国の外交の根本的な問題点を述べ、憲法の改正と国防の整備の必要性を説くという内容である。参加者は老若男女さまざまだが、皆さん関心が高かった。

 わが国の政府の対応で、尖閣沖中国漁船衝突事件は収束しない。中国では反日デモが各地に広がりを見せている。従来、中国における反日デモは、共産党政府が指導する官製デモという性格が強かった。しかし、今回のデモは、政府の管理の枠を越えて拡大しているようである。
 陝西省宝鶏市のデモでは、参加者が反日スローガンを叫ぶ一方で、「官僚腐敗に反対」「住宅価格高騰を抑制しろ」などと政府批判の横断幕も掲げた。また、チベット族が中国語による授業を義務づける教育改革に対して反発し、青海省チベット族居住区で抗議行動が起こり、北京でも学生による抗議行動が行われた。
 民衆の政府への不満や少数民族の抗議が、一部とはいえ行動に現れてきたことは、重要な兆しだろう。これがただちに民主化に発展するとは思えない。逆に、民衆の不満を吸収したファッショ化が進むおそれがある。

 私は、約1年ほど前、拙稿「中国の『大逆流』と民主化のゆくえ」を書いた。シナ系日本人の評論家・石平氏の著書『中国大逆流』及び氏の講演をもとに、中国の現状と将来予想を書いたものである。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12h.htm
 そこに書いた石平氏の見解は、尖閣沖事件と中国反日デモという今日の状況で、いっそう重みを感じるものである。要点を以下に記し、参考に供したい。
 石氏は『中国大逆流』で、中国で「『毛沢東への先祖返り』としての『革命』」が起こる可能性に触れている。これは、社会主義の第二革命に相当する。しかし、石氏は、別の方向に進む可能性がもっと高いと見る。それは、中国共産党のファッショ化の可能性である。
 石氏は、中国共産党が国民に「ナショナリズム的情念」を煽り立て、「愛国主義の旗印」を掲げれば、その下に国民の大半は熱狂的に集結する。中国共産党はそれを操る「術と力」を持っている、と言う。今後、中国経済が崩壊して社会不安が高まり、未曾有の危機に突入したとき、共産党政権は「起死回生の賭け」に打って出る可能性があると石氏は予想する。
 すなわち、対外的な「戦時体制」を作り出す。その中で、経済に対する統制を強化する。「挙国一致団結して民族の敵に立ち向かう」という大義名分の下で、共産党政権の存在意義とその正当性を強く主張する。それによって、党の政権基盤を再び磐石なものとしようと図る。このような「乾坤一擲の賭け」に打って出ることによって、「『経済の成長と繁栄』の上に政権の基盤を置くという小平路線の破綻を補って、中国共産党はまったく別の政権維持戦略への転換を実現できるのである」と石氏は述べている。
 
 中国が、来るべき内部の危機を乗り越えていくために、「対外冒険的な軍国化」の道を歩むとすれば、「日本にとって安全保障上の大問題」である石氏は警告する。軍国主義化した中国の共産党政権が対外的な暴走を始めた場合、矛先は台湾海峡か東シナ海がターゲットになる。経済の崩壊、暴動の激発で、中国国内が収拾のつかない大混乱に陥ってしまった場合、「共産党政権は巨大な軍事力をバックにして一気に台湾併合に動き出す可能性が十分あるし、台湾併合の前哨戦として、尖閣諸島進攻を断行するかもしれない」と石氏は予想する。「国内がどれほどの危機的な状況に陥ったとしても、尖閣諸島か台湾を奪うことさえ出来れば、共産党政権は国民からの熱狂的な支持を受け、一気に局面を打開して危機を乗り越えられる」というのが、その理由である。
 今日、中国では反日デモが各地に拡大を見せているが、これが本格的に拡大し、国内の治安が困難な状況になれば、中国人民解放軍による尖閣侵攻は起こり得る。

 迫り来る危機に対し、日本はどう対応すべきか。石平氏は、次のように述べる。
 「今の日本は、中国国内の動向を左右できるほどの力を持たないから、できることはただ一つ、自らの守りを固めていざという時の『危機』に備えていくことではなかろうか」と石氏は言う。「そのためには、アメリカによって押し付けられた『平和憲法』なるものを一日も早く改正して、自衛隊に国防軍としての名誉と法的地位を与えて国防を強化させ、国家体制を固めておかなければならない。そして、国家と民族の存続を断固として守る意思を示した上で、中国共産党政権に対しては、台湾や尖閣諸島、および東シナ海にたいするいかなる侵略的冒険も、日本国としてけっして許さないという強くメッセージを送り続けるべきであろう」と。

 石氏は、「このような抑制力が十分働くことによって、わが国日本は来るべき中国の内乱や革命に巻き込まれずに済むわけであるが、場合によってはそれが、中国国内の変化によい影響を与える要素となるかもしれない。つまり、日本の抑制力に阻まれて対外的冒険の道を断念した場合、中国共産党政権は今度は、政治改革を含めた国内改革に政権維持の活路を求めるかもしれない。これによって中国の民主化につながる最後の可能性が開かれるのであろう」と。
 石氏は、日本の軍事的抑止力が中国の対外侵攻を阻止しえた場合、それが中国共産党を国内改革に向わせる可能性があることを指摘する。それを共産党による民主化とは言っていない。共産党の国内改革が、人民による民主化につながっていく希望を述べるものだろう。しかし、石氏はこの方向が「中国の正しい方向であり、中国の13億の民にとっての唯一の幸福の道であり、そして隣国日本にとっての最善の結果でもある」と言う。そして「わが国日本がより強くなること、きちんとした国家体制と断固とした国家意思を持つようになること。実はそれこそが何より肝要なのである」と著書『中国大逆流』の結論を述べている。
 上記を読んで関心のある方は、拙稿の全文を閲読願いたい。

 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月18日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101017/chn1010172247013-n1.htm
四川省のデモは社会不満がエスカレートか 政府、制止できず衝撃
2010.10.17 22:41

 中国四川省綿陽市で17日に起きた反日デモが暴徒化し、参加者が商店や車両を襲ったのは、日ごろからうっせきした社会不満が一気に爆発し、破壊行為にエスカレートしたためとみられる。中国政府は外務省の報道局長談話でデモ参加者に自制を呼び掛けて警備も強化したが、暴徒化を制止できず、不満の大きさに衝撃を受けているもようだ。
 綿陽のデモはインターネット上で「中継」されており、中には「学生はまだいいが、一般人が紛れ込んで不満の憂さ晴らしをしている」と警官が語った、との書き込みもある。
 中国で貧富の格差や就職難、官僚の汚職などが大きな社会問題となっており、デモや抗議行動にまざったやじ馬らが憂さ晴らしのため投石などの破壊行為に走り、当局も制止できなくなるのは北京や上海で2005年に起きた反日デモでも共通していた。(共同)

●産経新聞 平成22年10月25日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101024/chn1010241943011-n1.htm
「腐敗反対」「住宅高騰抑制しろ」中国反日デモに政府批判も
2010.10.24 19:39

中国の甘粛省蘭州市と陝西省宝鶏市で24日、それぞれ数百~1000人規模の反日デモがあり、若者らが「釣魚島(尖閣諸島)を守れ」「日本製品ボイコット」などと叫んで市内を行進した。両市ともインターネットで事前にデモが呼び掛けられていた。
 宝鶏のデモでは参加者が反日スローガンを叫ぶ一方で「官僚腐敗に反対」「住宅価格高騰を抑制しろ」などと政府批判の横断幕も掲げており、中国で深刻化している収入格差の拡大や汚職への不満が強いことをあらためて裏付けた。
 ネットで24日の反日デモが呼び掛けられていたのは蘭州、宝鶏のほか江蘇省南京市、湖南省長沙市、湖北省武漢市など。中国当局は反日デモが拡大すれば政府批判や社会不安が広がるのは必至とみて、呼び掛けがあった都市や北京の日本大使館、各地の日本総領事館周辺で引き続き警備を強化していた。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101024/chn1010242042014-n1.htm
中国でチベット族のデモも拡大 中国語教育の強制に反発
2010.10.24 20:40

 【北京=川越一】反日デモが続く中国で、少数民族による政府への抗議デモも広がりをみせている。中国語による授業を義務づける教育改革に対しチベット族が反発し、青海省チベット族居住区で火がついた学生による抗議行動が首都北京にも飛び火した。民族同化をもくろむ当局のいき過ぎた教育改革が、漢族への不信感を増幅させている。
 チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部・ロンドン)によると、青海省黄南チベット族自治州同仁県で19日、民族学校の高校生ら5000人以上がデモ行進し、「民族、言語の平等」を訴えた。20日には同省海南チベット族自治州共和県で学生が街頭に繰り出し、「チベット語を使う自由」を要求。22日には、北京の中央民族大学でも学生がデモを敢行した。
 英BBCによると、24日には黄南チベット族自治州尖扎県で民族学校の生徒に教師も加勢し、総勢1000人以上が教育改革の撤回を求めてデモを強行、治安部隊が出動する事態に発展した。
 発端は9月下旬、青海省が省内の民族学校に、チベット語と英語以外の全教科で中国語(標準語)による授業を行うよう通達したことだった。教科書も中国語で表記する徹底ぶりで、小学校も対象という。
 当局の中国語教育の強化の背景には、中国語が話せないため職に就けないチベット族が少なくないという現状がある。就職難はチベット族と漢族の格差をさらに広げ、それがチベット族の当局に対する不満につながっているのも事実だ。
 しかし、2008年3月、チベット自治区ラサで発生したチベット仏教の僧侶らによる大規模騒乱が示すように、中央政府のチベット政策に対するチベット族の不満、漢族に向けられる嫌悪感は根強い。
 今回の教育改革も、チベット族学生の目には「漢族文化の押しつけ」「民族同化の強要」と映っているようだ。「自由チベット」は中国当局がチベット語の“抹殺”を図っていると主張している。
 同省共産党委員会の強衛書記は21日、黄南チベット族自治州で学生代表と座談会を開き、「学生たちの願いは十分尊重する」と約束した。中国当局が反日デモ同様、教育改革に対するチベット族の抗議デモが、体制批判に転じることについて懸念している状況をうかがわせる。
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■追記

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●産経新聞 平成22年10月27日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101026/chn1010261950008-n1.htm
反日デモの本質は「反体制」 当局は危機感あらわ 重慶デモ抑止できず
2010.10.26 19:49

 (略)24日に陝西省宝鶏市で起きたデモでは、「貧富の格差を縮めよ」「報道の自由を実行せよ」といった政府批判を掲げた横断幕が登場した。さらに、同市では「(台湾総統の)馬英九兄さんを大陸は歓迎する」「多くの党との合作(協力関係)を進めよ」との横断幕も確認された。これは、中台関係改善が進む中で中国の学生が、台湾が戦後歩んだ民主化プロセスに関心をもち、馬政権を支える台湾の中国国民党などと協力し、共産党一党支配に終止符を打つ道に望みを託そうと訴えたものだといえる。(略)
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コメント

デフレ下の超円高を乗り越える積極財政を

2010-10-24 10:20:02 | 経済
 G20財務相・中央銀行総裁会議が閉会し、共同声明を出した。共同声明の主旨は次のとおりと報じられる。

・通貨安競争を自制
・経済の基礎的条件を反映し、為替レートの過度な変動や無秩序な変動を監視
・経常収支の過度の不均衡を削減し、持続可能な水準で維持するための政策を追及
・大規模な不均衡について今後、合意される参考となるガイドラインに照らして評価
・世界経済は回復を続けているが、下ぶれリスクは残っており、国や地域によって異なる
・銀行の新しい自己資本規制の枠組み「バーゼル3」を歓迎
・国際通貨基金は2012年までに、新興国の出資比率を6%以上、拡大

 世界的な通貨安競争は回避された格好だが、各国の利害は激しく対立している。
 アメリカのドル安放置、中国の人民元切り上げ拒否で、円高の圧力が強まる。わが国の政府の為替介入には、各国が反発する。日銀は事実上のゼロ金利政策を取っており、ほとんど打つ手がない。日本は「独り負け」になる可能性がある。
 円は史上最高値を更新することになるだろうという観測がある。1ドル=79円台どころか、ドルの実力からいくと、1ドル=60円くらいまで上がるかもしれない。円高が進めば、輸出品は価格が割高になるから、輸出産業は大打撃を受ける。国際的な競争力を持つ大企業が軒並み収益減少になると、国内の関連産業や関連企業は、あおりを受ける。賃下げ、倒産、失業等、デフレ下での円高昂進は、かつてないほど深刻な影響を日本社会にもたらすだろう。

 わが国はどうすればよいか。海外環境の好転は、ほとんど期待できない。日本は自力で経済を再興し、超円高でも耐えられる力をつけるしかない。それには、大胆な積極財政を打ち、デフレを脱却し、内需拡大を強力に進めることである。わが国には巨大なデフレギャップがある。供給力に対し、需要がひどく少ない。それゆえ、公共投資、減税等の景気刺激策を大規模に実施し、政府が需要を創出する。このように実施しても、デフレギャップが大きいため、インフレになるおそれはない。実質GDPを年率5~10%と拡大していけば、財政赤字は相対的に縮小する。財源は、豊富にある。国内に金融資産は、あり余っている。それを活用する政策を打てば、日本はよみがえる。
 失政を続けてきた政府・財務省は猛省し、これまでの財政理論、会計制度、緊縮財政、金融行政等を抜本的に改め、日本の潜在的成長力をいかんなく発揮できるような理論・制度・政策を採用すべきである。過去10数年間、幾人ものエコノミストが、日本経済を再興する提言をしてきた。政府・財務省はこれを無視し、マスメディアは国民に提言を伝えないできた。その結果、国民が被ってきた損害は計り知れない。この異常な状態を打ち破らなければ、わが国は世界で最も豊かな国になっていながら、自らの富を生かせず、ぼんくらの三代目のように自滅する。
 日本を金融支配するアメリカの圧力を押し返し、日本にゆすりたかる中国の理不尽を跳ね除ける、そういう気概が必要だ。迫り来るデフレ下の超円高に対応するため、政治家・官僚・学者・ジャーナリストは、妄夢から目を覚ませ、そして、日本人の魂を呼び起こせ!

 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月24日

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010231708005-n1.htm
通貨安競争「自制」を明記 数値目標は「参考指針」で決着、G20
2010.10.23 17:07

 【慶州(韓国)=田端素央】韓国・慶州で開かれていた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が23日、共同声明を採択して閉幕した。最大の焦点だった為替問題では、「競争的な通貨切り下げを自制する」と明記し、各国が為替介入などで自国の輸出に有利にする通貨安競争の回避で合意した。
 米韓が提案した経常収支の数値目標の導入は見送ったが、一方の国が黒字をため込む不均衡を是正するため、「経常収支を持続可能な水準で維持する」とし、参考となる指針の作成を打ち出した。
 為替相場については「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映し、より市場原理に基づくシステムに移行する」とし、介入で人民元を割安に抑えている中国などを念頭に、柔軟化を求めた。
 米国などの金融緩和で資金が流入し、自国の通貨高やインフレ圧力につながっていると不満を強める新興国に配慮し、先進国は「為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視する」と明記。これが新興国への資金流入を「軽減させる助けになる」と指摘した。
 中国の巨額の経常黒字と米国の赤字に象徴される不均衡是正のため、「あらゆる政策を追求する」とした。ただ、米国と韓国が提案した、各国が経常収支の黒字額と赤字額を2015年までに国内総生産(GDP)の4%以内に抑制する数値目標は、中国などの反対で調整が難航。声明では、「今後合意される参考となる指針に照らして評価する」との方向性だけを示した。
 世界経済の現状については「脆(ぜい)弱(じゃく)で一様ではないが回復を続けている」とし、下振れリスクが残っていると指摘。主要議題の1つだったIMF改革は、各国に経済力に見合った発言権を付与するため、新興国全体の出資比率を6%以上引き上げることで合意した。
 会議後に会見した野田佳彦財務相は、「一定の合意形成がなされたことを市場にも評価してもらいたい」と述べ、相場安定に期待を示した。今回の議論は11月11、12日にソウルで開催されるG20首脳会合に引き継がれる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010232033014-n2.htm
G20、際立った「対立の構図」 通貨安競争遠い沈静化
2010.10.23 20:30

 【慶州(韓国)=田端素央】23日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、通貨安競争の「自制」で合意したが、内実は逆に「対立の構図」を際立たせた。米国の超金融緩和政策であふれたマネーが新興国に流れ込み、通貨高やインフレ圧力を招き、為替介入などで防衛するという構図は変わらない。そのはざまで手をこまねく日本の円が標的となり、円高がさらに進む懸念がある。
 「今回の合意により、通貨安競争をめぐる論争は終息する」
 議長を務めた韓国の尹増鉉企画財政相は、終了後の会見で高らかに宣言した。
 だが、2日目の討議や水面下の調整は、米国が提案した「数値目標」一色に染まり、激しい駆け引きが繰り広げられた。
 初日は沈黙を守った中国は、「どのようなレベルでも数値目標が入った文書は絶対に受け入れないと突っぱねた」(国際金融筋)という。
 これに対し、米国高官はロイター通信に「合意は無理」と語り、早々に数値目標を取り下げたことを示唆。「人民元の切り上げを迫る揺さぶり」(同)との見方を裏付けた。
 日本政府関係者は「人民元切り上げだけでなく、ドル安容認まで狙った周到な戦略」と、米国がしかけた“爆弾”に舌を巻く。
 経常収支に一定の制限を設ける数値目標は、黒字をため込む中国の輸出を減らすため、人民元の切り上げを促す一方で、赤字国の米国はドル安で輸出を増やしてもかまわないという論理につながる。
 国際金融筋は「来月にソウルで開かれるG20首脳会議に持ち越された」との認識を示しており、米国はあきらめていない。
 通貨安競争は、沈静化にはほど遠いのが実情だ。
 「韓国はこれからも資金の流れを監視し、必要なときには措置をとる」。断続的にウォン安介入を繰り返している尹財政相は、会見後の欧米メディアのインタビューで平然として言ってのけた。
 ガイトナー米財務長官は「強烈な介入で自国通貨を割安にしている新興国は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいた市場決定方法に動くだろう。中国のように」と、名指しで改善を要求。だが、国際エコノミストは、「G20合意を受け、中国が介入を抑制する兆候はまったくない」と指摘する。
 一方で、欧州中央銀行(ECB)幹部は「声明は主要通貨のさらなる安定も求めている」と指摘し、米国のドル全面安を強く非難した。対立の構図は、入り組んでいる。
 国益をむき出しにした為替市場で、各国の“良心”に委ねるような「自制」が抑止効果を持つはずもない。今回の会議でも存在感を示せなかった日本もしたたかさと覚悟が求められる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010232055015-n1.htm
G20声明で黒字国日本に円買い圧力 週明け80円台突破で最高値更新も
2010.10.23 20:52

 外国為替市場では、G20の共同声明が、「世界経済の不均衡」に強い懸念を示したことで、黒字国の日本の円買い圧力が強まり、一段の円高が進むとの見方が出ている。円相場は、G20の様子見で1ドル=81円台前半で推移していたが、1995年に付けた過去最高値の79円75銭に迫る可能性もある。
 市場は声明について、経常収支の数値目標の明記は見送られたものの、「黒字国は通貨高で輸出を減らすことを迫った」(関係者)と受け止めている。また、「介入にも動きづらくなった」(同)との見方もある。
 第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは「人民元高への圧力が強まり、円も連れて上昇。場合によっては円が過去最高値を更新する場面もあり得る」と予想する。
 週明け25日には米中古住宅販売、29日には7~9月期の米国内総生産(GDP)速報値など重要な経済指標の発表を控えている。米国の景気悪化が確認されれば、追加金融緩和の観測が高まり、円買いドル売りが加速。週明けから大荒れの展開となる懸念もぬぐえない。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010232101016-n1.htm
G20合意 円高阻止へ手足縛られた日本 再介入は困難?量的緩和も米が圧倒
2010.10.23 20:58

 【慶州(韓国)=田端素央】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が通貨安競争の「自制」で合意したことで、日本は先月15日に6年半ぶりに踏み切った為替介入の手足を縛られる懸念がある。日銀も4年3カ月ぶりに事実上のゼロ金利を復活させたばかり。米国の追加金融緩和などで一段と円高が進行し、景気の下振れリスクが高まれば、日銀も追加緩和を辞さない構えだが、打つ手は限られる。

■“お墨付き”なし
 「(介入は)過度な変動を抑えるのが目的で、大規模かつ長期に水準を是正するものではない」
 野田佳彦財務相は、G20を通じ、日本の介入への理解を訴えた。共同声明にも「過度の変動や無秩序な動きを監視する」との表現が盛り込まれ、一見すると、介入の“お墨付き”とも受け取れる。
 しかし、これは米国などからの資金流入による通貨高やインフレ圧力に直面している新興国に配慮したもので、先進国である日本は含まれない。
 日本はあくまで「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映し、より市場で決定される」という文言に縛られ、介入による操作は許されない。
 円相場の水準について、国際通貨基金(IMF)は、「中期的なファンダメンタルズにおおむね沿っている」と指摘しており、日本が再介入に踏み切れば、批判は避けられない。
 声明では見送られたが、米国が経常収支の数値目標を持ち出したことも逆風だ。赤字国の米国はドル安による輸出拡大を大義名分としており、黒字国の日本が介入でドル安のじゃまをすれば、日米間の軋(あつ)轢(れき)を招くのは必至だ。

■基金増額も辞せず
 介入という“伝家の宝刀”を封じられれば、円高阻止の手立ては、日銀の金融政策しかない。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は11月3日に、国債の購入拡大による大規模な追加緩和に踏み切るとの観測が強い。
 これに対して、日銀は10月5日にゼロ金利復活を含む「包括緩和」を決定。35兆円の基金のうち5兆円で国債のほか、リスクの高い社債や上場投資信託(ETF)などを買い取ることを打ち出した。
 日銀は「基金の額を積み増すことで、緩和に踏み切ったというシグナルを発信する」(日銀幹部)という、新しいバリエーションを手に入れた。買い取り対象をよりリスクの高い金融資産に広げるという選択肢もある。
 慎重な白川方(まさ)明(あき)総裁は「(基金の活用も)有力な選択肢」と、追加緩和の可能性を隠さない。
 ただ、日銀の包括緩和も、円高の流れを止める効果を発揮していない。日米の緩和合戦は、「マネーの量」を競う展開となっており、「兆円単位の日本に対し、兆ドル単位の量的緩和を繰り出す米国に太刀打ちできない」(市場関係者)ためだ。
 週明け以降、1ドル=80円台を突破するような円高局面に直面しても日本が切れるカードは少ない。
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