ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

毒ギョーザで政権は揺らぐ

2008-02-29 11:44:45 | 時事
 中国製ギョーザの中毒事件は、共産党が支配する中国という国がどういう国かを、日本の国民が知る機会になったと思う。それとともに、日本という国がどういう状態にあるかを知る機会にもなっていると思う。

 昨28日中国公安当局は、記者会見で、初めて公式を発表した。独自に行なった実験の結果らしきものをもとに、殺虫剤が「中国国内で混入された可能性は極めて小さい」と述べて、事実上、中国での混入を否定した。日本の警察は、未開封のギョーザからメタミドホスが検出されたことなどから、中国側で混入した可能性が高いと判断している。メタミドホスは、日本では一般に使用されておらず、入手は困難だ。中国側は、責任が日本側にあるかのように強硬な姿勢を示すことで、事件の揉み消しを図っているのだろう。
 その狙いの一つは、国内向けには、中国国民に日本での混入の可能性を疑わせることで、社会不安を抑え、政府・体制への不満を日本に向けさせること。国外向けには、北京五輪を前に、中国食品の安全を強調し、また輸出への影響をとどめることだろう。しかし、環境破壊による中国の空気や水、食の汚染は、世界に知れ渡っている。アメリカでは、中国製玩具の有毒性が問題になり、中国製品への見方が厳しくなっている。共産党流の情報統制やプロパガンダは、国際社会では通用しない。中国社会の実態は、隠しおおせるものではない。

 こうした中で、中国公安省がギョーザ事件で中国国内での毒物混入に否定的な見方を示したことについて、福田康夫首相は、次のように述べたと報じられる。
 「(中国の)捜査当局の発表は日本と共同して、しっかり調査したいということを言っていたんじゃないですかね。非常に前向きですね。中国も原因を調査し、その責任をはっきりさせたいという気持ちは十分に持っていると思う」と指摘した。
 「非常に前向き」とは、よく言ったものである。中国側のどこが前向きなのか。「責任をはっきりさせたいという気持ちは十分」と言うが、どこにその気持ちが現れているのか。
 首相の発言は、一国の最高指導者として誠に無責任である。自国民の食の安全と健康の保持より、中国共産党への媚びへつらいに気持ちが向いている。この発言は、政権への支持率をいっそう下げるだろう。お粗末過ぎる。慨嘆に堪えない。朝食に毒ギョーザを食べたわけではないが、めまいがして、吐き気がしそうなほどである。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成20年2月28日付

http://sankei.jp.msn.com/world/china/080228/chn0802282045009-n1.htm
ギョーザ中毒事件 中国公安当局 中国での混入否定「可能性極めて小さい」
2008.2.28 20:47
 【北京=野口東秀】中国公安省刑事偵査局の余新民副局長は28日、北京で記者会見し、中国製ギョーザ中毒事件は「人為的な個別事件」と断定した上で、中毒の原因となった殺虫剤メタミドホスが「中国国内で混入された可能性は極めて小さい」と発表した。また、同副局長は日本の警察に日本の現場への立ち会いや証拠物の提供を申し入れたが、同意を得られないとして「深い遺憾」を表明。「両国の警察は協力を強める責任がある。必ず真相を解明する必要がある」と述べた。
 公安省がこの事件で会見し、公式見解を出したのは初めて。日本の警察当局は、未開封のギョーザからメタミドホスが検出されたことなどから、中国側で混入した可能性が高いと判断したが、こうした日本側の鑑定を明確に否定した形だ。
 余副局長は会見で、ギョーザを製造した「天洋食品」の工場従業員ら55人を調べたが「疑わしい人物は見つからなかった」と説明。原材料や生産、輸送過程でも異常はなかったと表明した。
 さらに、独自に実験を行った結果として、ギョーザの袋の外側からメタミドホスが内側に浸透することが確認されたことを表明、「密封された製品内からメタミドホスが検出されたことで中国国内の混入を裏付けることにはならない」と主張した。日本側が成分分析で「メタミドホスは国外で製造された」と判断していることにも反論した。
 また、日本の業者から中国側に提供された袋を調べたところ、袋の表裏両面からメタミドホスが検出されたという。
 会見に同席した公安省物証鑑定センターの王桂強・副主任は、「袋の内側より外側に多くメタミドホスが検出されており、浸透した可能性がある」と述べた。
 記者会見は、国家品質監督検査検疫総局の魏伝忠・副局長と共同で行われた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080228/plc0802282105011-n1.htm
ギョーザ事件 日本は中国に真相究明求める
2008.2.28 21:06
 福田康夫首相は28日夜、中国製ギョーザの中毒事件で、中国公安省が中国国内での毒物混入に否定的な見方を示したことについて「(中国の)捜査当局の発表は日本と共同して、しっかり調査したいということを言っていたんじゃないですかね。非常に前向きですね。中国も原因を調査し、その責任をはっきりさせたいという気持ちは十分に持っていると思う」と指摘した。
 ただ、あいまいな幕引きは、首相が看板に据える「消費者重視」路線が揺らぎかねず、自民党からは「首相が強い姿勢で中国に臨まないと、世論がさらに政権に厳しい目を向ける」(閣僚経験者)との声も漏れている。また、4月に予定されている胡錦濤国家主席の来日に影を落とす可能性もあり、日本政府は今後も外交ルートを通じて中国側に冷静な真相究明を求めていく方針だ。
 町村信孝官房長官は28日午後の記者会見で「胡主席の来日が成功したといえるよう努力する必要があると認識してもらいたい」と中国側の一層の努力を求めた。中国側が日本の捜査協力に不満を示していることにも「日本が依頼した資料が出てきていないこともある」と反論した。
 政府内には「中国公安省は日本側が針小棒大に騒いでいると思っている」(外務省筋)との見方がある。政府高官も28日、「中国指導部は胡主席訪日への影響を懸念しているが、現場レベルでは役所のメンツにとらわれている」と指摘した。

●読売新聞 平成20年2月29日付

ギョーザ事件の中国側見解、泉国家公安委員長「理解しがたい」
(読売新聞 - 02月29日 11:33)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=419692&media_id=20

 泉国家公安委員長は29日の閣議後記者会見で、中国公安省が中国製冷凍ギョーザによる中毒事件をめぐって、日本側の捜査結果と正反対の見解を示したことについて、「予期せぬ出来事だった。問題解決にはプラスにならない」と述べ、中国側の対応を批判した。
 泉公安委員長は「信頼関係の上で情報交換してきただけに理解しがたい」などと不快感を示し、改めて、過去に中国国内で発生した有機リン系殺虫剤「メタミドホス」を使った事件の捜査資料などを提供するよう中国側に呼びかけた。
 警察庁が中国側に渡した鑑定結果などの詳しいデータについては「中国側も検証すべき点があるならすればいい」と話し、「科学的に事実に基づいて事件を解明するのが警察の立場。政治的な配慮がされるべきではない」と強調した。
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櫻井よし子氏らがシンクタンク

2008-02-27 19:35:04 | 時事
 ジャーナリストの櫻井よし子氏が代表を務める民間のシンクタンクが昨年12月に設立されたという。私は、寡聞にして、つい今しがた知ったばかりである。
 このシンクタンクは、「国家基本問題研究所」(国基研・JINF)という。サイトに掲載された「設立について」には、「私たちは、連綿とつづく日本文明を誇りとし、かつ、広い国際的視野に立って、日本の在り方を再考しようとするものです。同時に、国際情勢の大変化に対応するため、社会の各分野で機能不全に陥りつつある日本を再生していきたいと思います。」と書いてある。

 企業の研究所や、個人的な研究団体はいろいろあるが、国基研は、政治家、学者、ジャーナリスト、評論家、実業家、拉致問題の運動家等、保守系の幅広く多彩な人士が集っている。
 理事長は櫻井氏、副理事長は田久保忠衛氏。理事は、石原慎太郎氏、稲田朋美氏、中條高徳氏、平沼赳夫氏、松原仁氏、屋山太郎氏ら。評議員長は井尻千男氏、副評議員長は梅澤昇平氏。評議員は、荒木和博氏、工藤美代子氏、すぎやまこういち氏、平松茂雄氏ら。企画委員は、高畑勝彦氏、遠藤浩一氏、島田洋一氏ら。
 わが国の政治家、官僚、学者、マスコミに対してはもちろんのこと、外国の政府や学者、ジャーナリストに対しても、日本の立場や日本人の精神を伝え、論戦を通じて理解と共感を勝ち取っていくような動きを期待できる錚錚たる顔ぶれだと思う。
 今後の国基研の活動に注目したい。

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●産経新聞 平成20年1月21日付

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080121/plc0801211956005-n1.htm
櫻井よしこ氏らのシンクタンク始動 北朝鮮テロ支援指定国家解除反対で提言
2008.1.21 19:56

 日本が直面する基本問題を見つめ、独立自尊の国家建設への寄与を目指し、昨年12月に発足した民間のシンクタンク、「国家基本問題研究所」(理事長・ジャーナリストの櫻井よしこ氏)が21日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見を開き、活動を本格スタートさせた。この日は第1回提言として、米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除について、「日本の米国に対する信頼を損ねる」などと反対する提言を発表した。
 提言は(1)米政府は、拉致問題の解決のないままテロ支援国家指定を解除すべきでない(2)米議会は、指定の解除に厳格な条件を課す法案を採択すべきだ(3)日本政府と国会は、米政府と議会に対し、指定解除は日本の米国に対する信頼を損ねることを説明し、解除反対の意思を明確に伝えるべきだ-の3点。日本の衆参両院議員と米国の上下両院議員の全員、米国の有力シンクタンクなどにも提言を送付している。
 会見で企画委員の島田洋一福井県立大教授は、昨年11月に拉致被害者家族らと訪米した際、米政府元高官から「ライス国務長官やヒル国務次官補はブッシュ大統領に『安倍晋三前首相は拉致問題にこだわりが強いが、福田康夫首相はそうではない。指定解除しても(日米関係が)シリアスになることはない』とアドバイスしていた」と聞いたエピソードを明かした。

●国家基本問題研究所のサイトより

http://jinf.jp/
国家基本問題研究所(国基研・JINF)の設立について

 私たちは現在の日本に言い知れぬ危機感を抱いております。緊張感と不安定の度を増す国際情勢とは裏腹に、戦後体制から脱却しようという志は揺らぎ、国民の関心はもっぱら当面の問題に偏っているように見受けられます。平成十九年夏の参議院議員選挙では、憲法改正等、国の基本的な問題が置き去りにされ その結果は国家としての重大な欠陥を露呈するものとなりました。
 日本国憲法に象徴される戦後体制はもはや国際社会の変化に対応できず、ようやく憲法改正問題が日程に上がってきました。しかし、敗戦の後遺症はあまりにも深刻で、その克服には、今なお、時間がかかると思われます。「歴史認識」問題は近隣諸国だけでなく、同盟国の米国との間にも存在します。教育は、学力低下や徳育の喪失もさることながら、その根底となるべき国家意識の欠如こそ重大な問題であります。国防を担う自衛隊は「普通の民主主義国」の軍隊と程遠いのが現状です。
 「普通の民主主義国」としての条件を欠落させたまま我が国が現在に至っている原因は、政治家が見識を欠き、官僚機構が常に問題解決を先送りする陋習を変えず、その場凌ぎに終始してきたことにあります 加えて国民の意識にも問題があったものと考えられます。
 私たちは、連綿とつづく日本文明を誇りとし、かつ、広い国際的視野に立って、日本の在り方を再考しようとするものです。同時に、国際情勢の大変化に対応するため、社会の各分野で機能不全に陥りつつある日本を再生していきたいと思います。
 そこで国家が直面する基本問題を見詰め直そうとの見地から、国家基本問題研究所(国基研・JINF)を設立いたしました。
 私たちは、あらゆる点で自由な純民間の研究所として、独立自尊の国家の構築に一役買いたいと念じております。私たちはまた、日本に真のあるべき姿を取り戻し、21世紀の国際社会に大きく貢献したいという気概をもつものであります。
 この趣旨に御賛同いただき、御理解をいただければ幸いに存じます。御協力を賜りますようお願い申し上げます。

代表     櫻井よしこ
副代表    田久保忠衛

●櫻井よし子氏のブログ

「私たちはなぜ「国基研」を作ったか」
http://yoshiko-sakurai.jp/index.php/archives/668

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危険なり、人権擁護法案

2008-02-24 10:14:07 | 時事
 国会で、再び人権擁護法案が浮上しつつある。この法案は、その核心をなす「人権侵害」という概念が曖昧である。そこに非常な危険性がある。さらに言うと「人権」という概念自体が、まだ十分な根拠付けのされていない概念であり、これを無制限に拡張すると憲法の法秩序を内部から破壊するものになりかねない。
 人権擁護法案が「人権侵害」とするのは「不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」である。また、人権侵害とは「人種等を理由としてする不当な差別的扱い」だとする。「人種等」とは「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向をいう」と定義している。
 では、どういう行為を「差別」とし、「不当」だと判断するのか。どういう内容・程度を基準として「侵害」とするのか。同法案は解釈次第によって、特定の思想を持つ人々や団体の利益が過大に擁護され、大多数の国民の自由と権利が侵害されるおそれがある。
 人権擁護法案では、法務省の外局として人権委員会なるものが設置される。人権委員会は5人で構成され、ここが「人権侵害」であるか否かを判断する。また、地域における人権擁護の推進を図るために、人権委員会に人権擁護委員を置く。その数は全国で2万人とする。
 この法案の禁じる「不当な差別的言動」とは「相手を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの」である。「畏怖」「困惑」「著しく不快」の判断基準は、「人権侵害」「差別的言動」をされたと訴え出た「被害者」の側にある。
 人権侵害をしたとみなされた人は、公的機関によって「出頭」が命じられ、「捜査」「家宅捜索」「押収」が行われる。またそれを拒否すれば、多額の「罰金」が科せられる。これではまるで、思想警察だ。
 何をもって「差別」とするか、また「差別助長行為」というかは、裁判でも見解が分かれている極めて難しい問題のようだ。それを厳格な審査を行う司法ではなく、行政機関である人権委員会が判断して、国民生活に介入するのは公権力の暴走を許す。
 「人権侵害」の定義が曖昧であるので、そのための「情報収集」「調査」「救済」「予防」は、特定の利害・目的のために利用される危険性もある。
 「人権擁護法案」は、独立主権国家において、国法の秩序を内部から破壊する悪法だと私は考える。日本国民の良識を結集して、同法案を廃案に追い込もう。

 最近の国会や司法の動向を踏まえた日本大学教授・百地章氏の主張が、産経新聞の「正論」に載った。参考になるものとして以下に転載する。

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●産経新聞 平成20年

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080219/trd0802190242000-n1.htm
【正論】日本大学教授・百地章 自由社会を否定する危険性
2008.2.19 02:42

 ■人権擁護法案の国会提出を許すな
 ≪目を疑う「憲法違反」≫
 福田内閣の誕生以来恐れていた事態が、現実のものとなろうとしている。いうまでもなく、人権擁護法案の国会提出がそれである。推進論者の古賀誠選挙対策委員長らは、力ずくでも法律を制定しようとしており、昨年暮れに開かれた自民党の第1回人権問題等調査会で二階俊博総務会長は、最終的には多数決で押し切る旨発言している。
 しかしながら、この法案は(1)憲法違反、(2)人権擁護推進審議会答申からの逸脱、それに(3)人権侵害の実態無視、といった重大な問題をはらんでおり、到底これを認めるわけにはいかない。
 まず、この法案が憲法違反であることは、以前(平成17・4・8)本欄でも指摘したとおりである。法案では「人権」や「人権侵害」の定義を明確にしないまま、いわば「一切の人権侵害」を禁止しており、規制の対象は「侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動」で「相手方を畏怖(いふ)させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの」から、その「おそれのある者」にまで及ぶ。
 そして人権侵害の告発があれば直ちに、なくても職権で必要な調査が開始される。これでは言論の自由は保障されない。
 それ故、このように曖昧(あいまい)不明確な基準のもと行政権力が言論活動を規制し事前抑制まで行うのは、表現の自由を保障した憲法21条に違反する。
 しかもこれを取り締まる「人権委員会」は、裁判所の令状なしに出頭要請、質問、文書の提出などを強制し、立ち入り検査まで強行できるのだから、令状主義を保障した憲法35条にも違反する。
 ≪「答申」からの逸脱≫
 次に、本法案は「簡易・迅速・柔軟な救済」を行うにふさわしい「行政による人権救済制度」の整備を求めた平成13年の人権擁護推進審議会の答申「人権救済制度の在り方について」を踏まえて立案されたことになっているが、これから大きく逸脱している。
 というのは、答申では「あらゆる人権侵害」を対象とする救済手段としては「相談、あっせん、指導等」の「強制的要素を伴わない専ら任意的な手法」にとどめ、調査を伴う「積極的救済」はあくまで「自主的解決が困難な状況にある被害者」を救済する場合に限定しているからである。
 しかも「積極的救済」の対象とされる人権侵害については、「差別や虐待の範囲をできるだけ明確に定める必要がある」とし、「裁判所の令状を要するような直接的な強制を含む強い調査権限まで認めるべきでない」と明記している。
 にもかかわらず、法案ではあらゆる人権侵害を「調査」の対象とした上、侮辱などの「不当な差別的言動」で単に「相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせる」場合まで「令状」なしの強制的な出頭要請、質問、文書提出、立ち入り検査権を認めている。
 これは答申の趣旨を歪曲(わいきょく)するものといえよう。
 ≪「人権侵害」の実態は?≫
 さらに、救済の前提とされる「人権侵害」の実態だが、わが国にこれほど強力な行政権力を行使しなければ救済できない人権侵害や差別が、実際に存在するのか。この点の検証なしに法律を制定するのは、本末転倒であろう。
 ところが推進派の古賀氏らは「差別に泣いている人たちがいる」というだけで、実態を明らかにしようとしない。また、法務省の統計をみても、例えば平成17年度の場合、「人権侵犯事件」として処理した件数は約2万4000件もあるが、「侵犯事実の不存在・不明確」を含め、そのほとんど(99%)は現在の法務局や人権擁護委員による「援助」「調整」「説示」等で解決しており、特に重大・悪質な事案に関し文書をもって是正を求める「勧告」はわずか2件、刑事訴訟法に基づく「告発」はたった1件にすぎなかった。それ故、このような法律が本当に必要なのか、そのこと自体に疑義がある。
 この点、「虐待」についていえば、配偶者暴力、高齢者・児童虐待などの救済のため、すでに「ストーカー規制法」(平成12年)「児童虐待防止法」(同)「配偶者暴力防止法」(同13年)「高齢者虐待防止法」(同17年)などの法律が制定されており、その適切な運用によって問題の解決は可能であろう。残る主要課題は、刑務所等の公務員による人権侵害の救済であるが、これも個別法の制定で足りると思われる。
 したがって、自由社会を否定しかねないこの危険極まりない人権擁護法案の国会提出は、何としてでも阻止しなければならない。(ももち あきら)
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親学なくして、徳育はならず

2008-02-22 18:31:43 | 教育
 文部科学省は18日、「子供の発達と徳育に関する調査研究」のための有識者会議を新年度に設置し、指導法などを検討することを決めた。乳幼児の教育も対象に加え、発達段階に応じた道徳教育のあり方などを幅広く論議する考えだと報じられている。
 これは、大変良いことである。ただし、いくら徳育の研究をし、学校や社会で実行しても、親の教育、再教育をしないと、徳育は成功しない。

 近年、わが国の公共道徳は、急速に崩壊しつつある。戦後約60年、個人の自由と権利を強調して責任と義務を軽視した現行憲法と、その憲法の精神に基づく教育を行うための旧教育基本法のもとで、わが国の教育は道徳教育を欠いたままきてしまった。

 青少年の道徳心・公共心を育てることを怠ってきた結果、自己中心・利己主義が横行している。私利私欲が自由や人権という言葉で粉飾される。そういう世代が親となり、まともな子育てができずに周囲に迷惑をかけるのみならず、子供が食べている給食費を支払わずに、開き直っている。その大人の態度がまた他の純真な子供たちに悪影響を及ぼす。
 ここで私が喫緊に振興すべきだと考えるのが、親学である。つまり親となり、親として子育てをするための学問・教育である。
子供の問題のほとんどは、親に問題がある。子育てに自信がなく、子育てがうまくできない。または子供をつくることに関心が無く、育てることにも関心のない若い人たちが増えている。 学校教育・社会教育を挙げて、親学の振興を真剣に行なうことが、日本の教育の改革、そして日本国の再建に欠かせない。

 私は、教育再生会議が家庭教育の重要性、親の責任と役割の大きさを掘り下げ、報告書に積極的な形で表現するよう強く要望してきたが、1月31日に出された教育再生会議の最終報告では、親学という文言は消滅した。替わりに「親の学び」というあいまいな言葉が使われている。マスコミや世論の抵抗を恐れた政治家・官僚が抑えたのだろう。そのため、徳育をうたっていながら、一番肝心の親のあり方という核心的な問題を避けた形になっている。これでは、全国の親に真剣に訴えるものとはならない。
 徳育の研究・実践は必要だ。大いに進めてもらいたい。しかし、親学の振興なくして、徳育は成功しない。このことに、政治家・官僚・教育者・有識者の方々に、是非気づいていただきたいと思う。

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●産経新聞 平成20年2月18日付

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080218/edc0802182249001-n1.htm
社会全体での徳育研究 文科省が有識者会議設置へ
2008.2.18 22:49
 家庭の教育力低下や子供たちの生活・社会体験不足で集団生活できない小学生が増えるなど学校現場が悩むなか、文部科学省は18日、家庭などとの連携を含めた「子供の発達と徳育に関する調査研究」のための有識者会議を新年度に設置し、指導法などを検討することを決めた。学齢に達していない乳幼児の教育も対象に加え、発達段階に応じた道徳教育のあり方などを幅広く論議する考えだ。
 道徳教育をめぐって学校教育では新しい学習指導要領で指導充実が盛り込まれた。しかし、「学校の授業が形式化して実効性が上がっていない」「学年が上がるにつれて反応が悪い」などの問題点が指摘されている。
 さらに小学校に入学したての新入生が集団生活になじめず、教室内で騒いで授業が成立しない「小1プロブレム」も問題化している。インターネット上の掲示板に悪口を書き込む「ネットいじめ」も相次ぎ、時代に対応した新たな教育が求められている。
 「突然、切れる子供」などについて過去に文科省が脳科学などの見地からまとめた報告では、(1)対人関係能力や社会的適応能力の育成には親子の適切な「愛着」形成が重要(2)喜怒哀楽の源となる人間の「情動」は5歳ごろまでに原型が形成される(3)感受性の発達は8歳ごろをピークに20歳ごろまで続く-などを指摘。乳幼児教育の重要性は高まっており、政府の教育再生会議も「親学」の必要性を訴えていた。
 自治体では家庭教育を重視し、「1歳児までは集団ではなく家庭で子育てしてほしい」との方針から保育園でゼロ歳児保育を行わず、事情がある家庭に「保育ママ」を派遣している所もある。
 中央教育審議会は、1月にまとめた答申で「社会全体で子供たちの生活習慣の確立、規範意識の醸成、道徳的価値観の形成などを推進していくための具体的な諸方策については今後、別途検討を深める」と提言。教育再生会議も、同月の最終報告で「徳育を新たな枠組みで『教科化』し、『社会総がかり』で徳のある人間を育てる」よう求めていた。
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関連掲示
・拙稿「「親学」を学ぼう、広めよう」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02j.htm
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学習指導要領案に改善要求を2

2008-02-21 10:03:25 | 教育
 新しい学習指導要領案について、日本教育再生機構(八木秀次理事長)も改善要求を出している。日本教育再生機構は、安倍政権が設けた教育再生会議とは違う。同会議は本年1月末に最終報告を出して解散した。日本教育再生機構は、民間の団体で、醜い内紛を繰り広げた「新しい歴史教科書をつくる会」から出た人たちが作ったもの。いまや日本教育再生機構の方が多くの支持を得ている。

 日本教育再生機構は、2月15日、小学校中学校学習指導要領の改訂案について、以下のような談話を発表した。
 「改正された教育基本法・学校教育法の理念や目標がほとんど反映されていない。伝統文化の重視は掲げられたが、抽象的な言葉ばかりが並び具体性に欠け、国語の古典などについても例示がない。中学歴史では明治憲法により「アジアで唯一の立憲制の国家が成立」との文言も消え、大きく後退した。公民では、領土問題で尖閣諸島や竹島の記述がなく、裁判員制度はあっても自衛隊は登場しない。「ゆとり教育」からの転換も不十分である。もっと多くの関係者で議論を重ねる必要があり、改訂は3月末の期限にこだわるべきではない。」

 続いて18日には、日本教育再生機構は、詳細な「見解」を発表した。今後、多くの人々の意見をふまえて、文科省に要望書を正式に提出するという。
 以下は、その「見解」の要旨である。

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■項目(抜粋)

○全体的な構成として

1. 恣意的な解釈から、上位法(教育基本法・学校教育法など)が下位法(学習指導要領)によって骨抜きにされている。こうした文科省の違法・越権行為は政治問題化する恐れがある

2.「到達目標」を示しておらず、下部機構が上位法(教育基本法・学校教育法など)や文部科学大臣の「諮問」などを、ネグレクト(否定・無視)している

3.「ゆとり脱却」は不十分であり、「新しい学力観(新学力観)」「児童(子供)中心主義」「絶対評価」なども見直されていない

4.教育再生会議の提言や国民世論の動向も無視されている

5.「ゆとり」の「実施」は急いだのに、「脱却」は遅れている。早期の全体の見直しと完全実施が求められ、改訂は3月末の期限にこだわるべきではない

6.「伝統文化の尊重」は例示がなく、具体性に欠け、実効性が疑われる

7.「皇室への理解・敬愛」について改善されていない

○各教科等の問題として

8.中学校社会科歴史的分野については問題が多い。大きく後退している。

9.領土問題では、北方領土は出てくるが尖閣諸島、竹島が出てこない。これは文部科学大臣の答弁にも反している

10.裁判員制度は出てくるが、自衛隊は登場しない。拉致問題にも言及がなく、国旗・国歌の指導、国の祝日の意義等の取扱いについても疑問がある

11.中学公民では「生活⇒経済⇒政治」との評判の悪い順序が未だ改善されていない。また、構造改革の否定ともとれる記述があり、政治迎合的にすぎる

12.基礎学力回復のために、国語は読解力の強化に重点を置くべきで、「表現重視・偏重」はあらためるべき

13.男女の健全な役割分担、勤労や奉仕の重要性について記し、日本の優れた伝統文化を継受・発展させる視点を強化し、「特別活動」には名所旧跡の訪問などについて明記すること

14.道徳の記述は、とくに抽象度が高く、具体性に欠け、行き過ぎた「価値相対主義」のワナに陥っている

15.道徳副読本の国庫補助は、教科化を見送る文科省の「言い訳」であり、教育界の利権構造や組合支配をさらに保護・助長する恐れがある
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 上記「見解」の全文は、以下に掲載されている。上記の項目のうち、関心のある部分だけでも読んでみることをお勧めしたい。
http://www.kyoiku-saisei.jp/network/sem2002s.html
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学習指導要領案の改善要求を1

2008-02-20 12:27:02 | 教育
 新しい学習指導要領案は、文部科学省のサイトに掲載されている。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/080216.htm
 私は、検討する時間がもてないでいたところ、友人から、学習指導要領案の問題点と要望を書いた日本会議のメールマガジンが、転送されてきた。参考になると思うので、そのまま掲載させていただく。

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「愛国心」「宗教」「国歌」「領土」「自衛隊」等「学習指導要領」の改善を

次期「学習指導要領案」に全国から要望を!

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●文科省「次期学習指導要領」案(2/15公表)に新教育基本本法の趣旨は反映されず    

 2月15日、文科省は「次期学習指導要領」案を公表しました。前号の国民運動 通信で報告したように、私たちは1月の中教審の答申を踏まえ、新たに告示される 学習指導要領に関して文科省に要望を出しましたが、返ってきたのはほとんど「 ゼロ回答」でした。
 今回の案は今後十年の学校教育を規定し、教科書執筆の基準となるものですが 、新教育基本法に明記された「目標達成型」の改正はなく、「愛国心」、「公共の精神」、「宗教に関する教養」など新たに盛り込まれた理念がほとんど反映されていません。具体的には、「国旗国歌」、「領土」、「天皇」、「神話」、「建国」、「防衛」、「祝祭日」、「近代の戦争に関する認識」、「戦没者追悼」など、我が国の国柄や主権に関わる観点での大幅な改訂がほとんどなされていません。

●自民党内にも「国旗・国歌」「領土」「宗教」「愛国心」などの内容に抗議の声     

 指導要領案公表に先立って行われた自民党文教制度調査会(2/15午前開催)において、文科省側は党の了承を取り付けようとしましたが、議員より「国歌は歌えるように指導すべき」「道徳の教科化はどうなったのか」「愛国心を育む人物教育が大切だ」等、意見が続出しました。
 これを受けて日本会議国会議員懇談会の萩生田事務局長や衛藤教育刷新委員会委員長が、文科省案を承諾できない旨を強く主張し、指導要領改訂問題については再度会合を開催することとなりました。実のところ、文科省側は今回の指導要領案の提示を以って確定と考えていたようですが、有志議員の発言により、修正の可能性が生まれてきています。
 国会議員懇談会の平沼会長も「これでは何のために教育基本法を改正したのかわからない」と発言されており、今後は、改善すべきポイントを絞り込んで、国会議員・民間双方より要望活動を展開する必要があります。

 ※「改善点10のポイント」→別紙ご参照下さい

●学習指導要領改定案について皆さんのご意見を文科省に寄せて下さい

 政府は1ヶ月間の意見公募(パブリックコメント)の後、3月末に告示を予定しています。修正に残された期間はわずかです。愛国心や国旗・国歌、自衛隊、戦没者追悼などを盛り込むよう、皆さんの意見をどんどんお願いします。

※パブリックコメント例文→別紙ご参照下さい

パブリックコメントの概要

意見募集期間 2月16日(土)~3月16日(日)
意見の提出先
(1)電子メール kyokyo@mext.go.jp
        文部科学省のホームページより
(2)郵送の場合 100-8985東京都千代田区霞ヶ関3-2-2
文部科学省初等中等教育局教育課程科教育課程企画室宛
(3)FAXの場合 03‐6734‐3734
<注意事項>
①意見の提出方法:件名、氏名(団体名)、性別、年齢、職業、住所、電話番号を記入
②判別のため、意見を寄せる指導要領について「小学校学習指導要領案について」「中学校学習指導要領案について」「幼稚園教育要領案について」のいずれかの件名(タイトル)を記入して下さい。
③電子メールの場合は、添付ファイルではなく、本文に意見を記入して下さい。
④複数の論点の意見を寄せる場合は、1メール1意見、1枚1意見としてください。
⑤意見が1000字を超える場合は要旨を付けてください。
⑥意見に対する個別の回答、電話での受け付けは行っていません。 

■次期「学習指導要領」案の改善点10のポイント
※2/15公表案に対して、本会ではその改善点を以下のようにまとめました。なお、次期「学習指導要領」案の全文は文部科学省ホームページをご覧下さい。

①【達成目標】児童生徒が必ず身に付ける「達成目標」としての性格を明確にする。
②【愛国心】「国を愛する心」の涵養を指導要領の総則に規定する。
③【国旗国歌】国歌を斉唱できるように指導する義務が教師にあることを規定するとともに、国旗国歌に対して敬意を表すよう規定する。
④【建国神話】日本の建国の由来を理解させ、神話の学習を充実させる規定とする。
⑤【皇  室】歴史における天皇と国民のつながりを理解させるよう規定する。
⑥【領土領海】我が国の領土・領海の範囲、我が国の立場を理解させるよう規定する。
⑦【国  防】国防の意義と自衛隊の役割を理解させるよう規定する。
⑧【宗教教養】我が国において宗教が果たしてきた役割を理解させるよう規定する。
⑨【宗教情操】先哲の伝記、言葉を通して宗教的な情操を涵養するよう規定する。
⑩【祝  日】すべての国民の祝日の由来と意義を理解させる規定とする。

■文科省に意見を送ろう! 改善要望の例文

■改善点1 「達成目標型」の例文
○「学習指導要領が、必ず実施される仕組みを作ってください」○「教職員組合による偏向教育が行われないような制度にして欲しい」○「指導要領が確実に行われたか、チェックして欲しい」○「指導要領を踏まえない教師を処分してください」○「指導要領の内容を身に付けさせるのは教師の義務です」

■改善点2 「愛国心」の例文
○「国語では物語などを使って、愛国心が養われるようにしてください」○「音楽の目標に愛国心養成を入れてください」○「唱歌の指導を重視して、日本の歴史や文化に対する愛情を育んでほしい」

■改善点3 「国旗・国歌」の例文
○「日の丸や君が代の歴史や意味を、小さいときから必ず教えてください」○「国旗・国歌に対する礼儀作法を身につけさせること」○「スポーツ大会などでは国歌を斉唱することをしっかり教えて欲しい」○「卒業式や入学式では、必ず起立、斉唱するようにしてください」○「起立、斉唱しない教師はしっかり処分すること」

■改善点4 「建国神話」の例文
○「神武建国を教えること」○「神話は、民族の大切な物語、神話には古代の人たちの理想が込められています」○「天皇に対する敬意を持たせるためには、神話から一系の国柄を教える必要があります」○「古事記や日本書紀の原典に触れて、古代の息吹を感じさせてください」

■改善点5 「皇室」の例文
○「昭和天皇の事績を教えること」○「国語で歴代の天皇の和歌を紹介して皇室の和歌の伝統を教えて欲しい」○「天皇陛下がなされている祭祀や公務の意味を理解させてください」○「今の天皇陛下が125代目であることがわかるよう、天皇家の系図を教科書に載せること」○「天皇の祈りのご精神を教えなければ、天皇の本質は理解されません」

■改善点6 「領土領海」の例文
○「竹島が不法に占拠されていることを理解させること」○「日本の領土領海が脅かされていることはしっかり教えること」○「領土を理解させるためには、領土問題の歴史を教えて理論武装しないと負けてしまいます」

■改善点7 「国防・自衛隊」の例文
○「何故、自衛隊とはっきり書けないのですか」○「自衛隊が世界で評価されていると、教科書に書くべきです」○「国を守る気概を育んでください」

■改善点8 「宗教に関する教養」の例文
○「神道が指導要領に出てこないのはおかしい」○「歴史の中で宗教が果たしてきた役割はきちんと教えるべきです」○「国際化の時代、宗教に対する理解は大切です。主な宗教の特徴や成り立ち、考え方を教えてください」○「宗教に対してタブー視しすぎです。信仰を強制してはいけませんが、宗教についての教養は養ってください」○「日本ほど宗教対立が少ない国はありません。日本の宗教風土の特徴を教えるべきです」○「歴史や地理での文化財の学習では宗教的な背景についても教えるべきです」

■改善点9 「宗教的情操」の例文
○「国語でも宗教教材を通じた情操教育が必要だ」○「聖人、先人の伝記や文章を歴史や国語で取り上げてください」○「吉田松陰や西郷隆盛の文章を教えて、子供たちに志を持たせてください」○「日本人としての誇り、人間としての生き方を学べる国語教科書を作ってください」

■改善点10 「国民の祝祭日」の例文
○「祝祭日を教えることが国民としての教養につながります」○「祝日の多くは皇室に関連しています。祝日の由来や歴史をしっかり教えてください」○「建国記念の日や、天皇誕生日についても歴史的な背景を理解させるべきだ」○「祝祭日の前に、学校で校長先生がその意味を訓示する必要があります」
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日本史の必修化を支持する

2008-02-19 10:14:10 | 教育
 新学習指導要領案のうち、高校用はまだ発表されていないのだが、日本史の必修化は見送ることが決定されている。これに対し、神奈川県教育委員会は14日、県立高校全校で日本史に関する科目を必修化すると発表した。都道府県立高校の全校で日本史に関する科目を必修化するのは全国初となる。私は、高校では日本史を必修にすべきと考えているので、神奈川県の決定を支持するとともに、この動きが全国に広がることを期待する。
 学習指導要領では、「学校設定科目」というものを独自に設けることが認められている。神奈川県は、この規定を活用し、郷土史を学ぶ科目と、日本を中心に近現代史を総合的に学ぶ科目を新設して、これら2科目と日本史のいずれかを必ず選択することにした。 実は、平成18年9月、神奈川県教育長の提案で、首都圏の1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)の教育長が連名で、高校での日本史必修化を求める要望書を文部科学大臣に提出した。その後、関東地方知事会も、19年11月同趣旨の要望書を文科相に提出した。要望の趣旨は、以下のようなものである。
 現行の高校学習指導要領では、世界史が必履修科目、日本史・地理が選択必履修科目となっている。次代を担う子どもたちが、国際社会の中で日本人としての自覚をもち主体的に生きていく上で必要な資質や能力等を育成することは、極めて重要である。その基盤として、我が国の歴史や文化、伝統に対する理解を深め尊重する教育が求められている。それゆえ、新学習指導要領において「高等学校における日本史必修化」を検討することを要望する、というのが、その趣旨である。
 私は、この要望の趣旨に全く賛同する。わが国には、自国の歴史や文化、伝統を知らない若者が多い。学校でしっかり教わっていないからである。歴史・文化・伝統のことは、拙稿でいろいろ書いてきたが、自国の歴史や文化、伝統を知らなければ、自分のアイデンティティを深く自覚することができない。青年期にある人が、日本史を学ぶことは、自分のアイデンティティを確立する上でも重要なのである。

 アイデンティティとは、「Aは、Aである」という同一性のことを言う。特に「自分は○○である」という自己同一性のことを、アイデンティティという。
 人は「自分は何であるか」と、自分に対して問いかける。その問いの答えとして、自分は「○○の子」であるとか、「○○の妻」であるとか、「○○会社の社員」であるとか、「○○国民」であるとか、「○○教徒」であるとか、「人間」であるとかという風に、いろいろな自己規定が可能である。これは、アイデンティティには、階層があるということである。
 アイデンティティの階層には、家族的アイデンティティ、社会的アイデンティティ、職業的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、国民的アイデンティティ、宗教的アイデンティティ、文明的アイデンティティ、人類的アイデンティティ等がある。これは、自分がさまざまな集団に所属しているということを意味してもいる。アイデンティティとは、自分が何らかの集団に所属しているという客観的事実と、それを基盤とした自己意識のあり方の関係なのである。

 いくつかの階層をなす重層的なアイデンティティの中で、私は、今日、民族的または国民的アイデンティティが非常に重要だと考える。私たちは、国際社会に生きているからである。古代や中世、近世の人々、私たちの先祖にとっては、一族や村、藩への帰属が、大きな意味を持っていた。しかし、現代人は、そうした血縁的地縁的な集団よりも、遥かに広い広がりを持った社会の中で生活している。外国人との会話や異なる文明との接触において、自分が日本人であることに気づき、日本人である自分を意識することが、自己認識において大きな意味を持つことが多い。だから、現代人にとっては、民族的または国民的アイデンティティなくしては、自己を深く自覚することが出来なくなっているのである。
 そもそも「自分は○○である」というアイデンティティは、言葉による認識である。「自分は○○である」ということを、日本人は日本語で考え、日本語で表現する。自分を認識する。「自分は何であるか」「自分は○○である」という思考を日本語で行っているところに、日本語で考える者としてのアイデンティティがある。使用言語と問いの構造を離れて、自己は認識されない。周囲の環境や世界、自分の身体や、自己の連続性なども、すべて言葉で認識される。その言葉は特定の言語である。そして、私たちは、既に特定の言語・日本語によってつくられた自分なのである。
 それゆえ、言語を継承・教育している家族と民族、言語によって統括されている文化の歴史と伝統を自覚することが、自分のアイデンティティの確立には、欠かすことができない。そして、日本人が国際社会で活躍できるには、自分が日本人であるというアイデンティティを胸にしっかり持ってこそ可能であり、日本人ならではの国際貢献も可能になるのである。

 大多数の日本人の場合、民族と国民が一致する。また日本は一国一文明である。そのため、民族的アイデンティティと国民的アイデンティティと文明的アイデンティティが一致する。ここで民族とはエスニック・グループ、国民とはネイションを指す。日本人は、民族的・国民的・文明的というアイデンティティが一致するので、この三層一致のアイデンティティが確立されないと、自己の形成に大きな欠落を生じる。
 この民族的・国民的・文明的というアイデンティティの確立において、重要なのが歴史の学習である。民族とは何かという問題は、定義が難しいのだが、私は、民族とは、共通の自己意識を持つ集団だと考える。民族を分ける要素には、人種、言語、文化、宗教、国籍等の要素があるが、どれも決定的なものはない。その中で、最も支配的な要素は、先祖・歴史・運命をともにしてきたという集団意識だと思う。つまり、自分たちは先祖・歴史・運命をともにしているという意識の有無が、他の集団との最も強い違いとなる。そして、先祖・歴史・運命をともにしているという意識を形成するものが、歴史教育なのである。
 自分たちの発祥、由来、その後の来歴、苦難と栄光、誇りと屈辱。そうしたものを、認識・表現し、教え受け継ぐところに、集団の意識、共通の自己意識が形成される。だから、歴史教育は大切なのである。
 また、その歴史を認識・表現・教育・継承するのは、共通の言語で行われる。そして、この歴史を認識・表現・教育・継承するときにもちいられる言語は、各個人が「自分とは何か」を考え、表現する言語でもある。その言語を教える国語教育と、その言語で先祖・歴史・運命をともにしているという意識をはぐくむ歴史教育には、ここに深い結びつきがある。

 高校での日本史必修化を主張する神奈川県の松沢成文知事は、「しっかりした日本人、国際人の育成に日本史は不可欠」と言う。その通りである。その理由を、日本人のアイデンティティの問題と結びつけるとき、より重要性に重みを増すと思う。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成20年2月14日付

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080214/edc0802142237002-n1.htm
神奈川の県立校で「日本史」必修に
2008.2.14 22:36
 神奈川県教育委員会は14日、平成25年度をめどに、県立高校全校で日本史に関する科目を必修化すると発表した。学習指導要領で独自に設けることが認められている「学校設定科目」を活用し、県の郷土史を学ぶ科目と、日本を中心に国内外の近現代史を総合的に学習する科目の2つを新設して、これら2科目と日本史のいずれかを必ず選択するようにする。都道府県立高校の全校で日本史に関する科目を必修化するのは全国初。
 県教委は、日本史の必修化を国に要望していたが、実現しないため独自で踏み切ることにした。県教育長は「国や他の都道府県に影響を与えることができれば」と話した。
 県教委は今後、有識者などの検討会を設け、新設2科目の教材や、教員向けの指導書を2年間かけて作成。22年度から2科目の履修を一部高校で試行した上で、県の規則に基づき県立全校に設置を義務付ける計画。新学習指導要領が実施されるとみられる25年度をめどに履修を義務付ける。
 地理を選択した場合は、既存の「日本史A」「日本史B」、新設2科目の計4科目の中から、少なくとも1科目を必ず選択することになる。
 松沢成文神奈川県知事の話「(必修化で)愛国心や郷土愛がはぐくまれると思う。しっかりした日本人、国際人の育成に日本史は不可欠。県教委の判断を評価したい」

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080217/edc0802170301000-n1.htm
【主張】「日本史」必修 歴史が好きになる教育を
2008.2.17 03:01
 神奈川県教育委員会が、県立高校で「日本史」を必修科目にする。国や郷土の歴史を学ぶ重要性は高まっており、県教委の独自の試みを評価したい。
 学習指導要領では平成元年改定で高校は世界史が必修になった。日本史、地理はどちらかを履修すればいい。小中学校の歴史が日本史中心で、高校では国際化に対応し、世界の歴史を広く学ばせようというねらいからだ。
 だが自国の歴史を学ぶ日本史が必修でないことには異論があった。神奈川県では約3割の高校生が日本史を学ばずに卒業するという。
 指導要領改定で中央教育審議会の論議のなかでも、世界史派、日本史派のほか、世界史・日本史を組み合わせた「総合歴史」のような新科目が必要だとの提案もでた。
 しかし中教審は今回の指導要領改定の答申で日本史必修化は見送ったため、神奈川県教委は平成25年度をめどに世界史必修に加え、日本史か、県の郷土史などの新科目を必修にする。
 同県の松沢成文知事が「しっかりした日本人、国際人の育成に日本史は不可欠」というように、国際化のなかでこそ国の歴史や文化を学び、日本人として自覚をはぐくむ教育が求められている。外国人との交流で自国について聞かれても情報発信できない事態は残念なことだ。
 必修増が生徒の負担増につながるとの意見に対し、文部科学相経験者の町村信孝官房長官は「負担が増えずに学力は向上しない。社会人の基礎を身につけさせるという県の判断であれば尊重すべきだ」とも述べている。
 日本史必修でもっとも懸念されるのは指導内容だ。近現代史を中心に、ことさら日本を悪者にする自虐史観や教師が歴史観を押しつけるような授業がある。歴史が嫌いになるだけだ。
 また年号などの暗記だけでは関心がわかない。学力テストでは明治維新の人物の業績などを知らない子供たちが多いという残念な結果もある。先人の業績に夢や感動を覚えるような面白い授業をする教師は少ない。
 神奈川県教委は課題学習など授業も工夫するという。他の教委を含め、小中学校から歴史が好きになるよう見直す契機にもしてもらいたい。
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新学習指導要領案を評価する

2008-02-18 09:35:49 | 教育
 文部科学省は15日、30年ぶりに新学習指導要領案を公表した。公表されたのは、幼稚園用・小学校用・中学校用である。教科書改定を伴う完全な実施は、小学校で平成23年度、中学校で24年度からとなる。教育基本法の改正後、初めての改定なので、改正基本法の規定がどれくらい指導要領に反映されるか、関心を呼ぶところである。
 新聞報道によると、基本的には「生きる力」の育成という理念は変えずに、授業時間、学習内容を増やす方針である。現行の指導要領は、ゆとり教育を打ち出し、学習内容を約3割も減らした失策だったが、新指導要領案は、明らかにゆとり教育からの転換を、具体的にプログラム化している。また、言語活動、理数教育、伝統・文化の教育、道徳教育、体験活動、外国語教育の充実を6つの柱としている。私が評価したいのは、教育基本法の改正で教育の理念に盛り込まれた「伝統・文化の尊重」「公共の精神」を、各教科・科目に反映させようとしている点である。私は、小中学校では、道徳教育、国語教育、音楽教育を重視すべきと主張する者だが、新指導要領案は「伝統・文化の尊重」「公共の精神」という理念の実現につき、道徳・国語・音楽においては、なかなか工夫がされているようである。

 道徳教育は、教科化は見送られたものの、新指導要領案は、全教科で一体的に行うことを明確化した。また、道徳教育推進の中心となる道徳教育推進教師を新設し、全教師が連携して取り組むものとする。先人の生き方を新たに追加。偉人伝のような感動できる教材を活用させるという。道徳教育推進教師は、校長や教頭が自らするのが良いだろう。
 小学校国語では、桃太郎・金太郎・浦島太郎などのおとぎ話や、古文・漢文の音読などを取り入れるという。これは、大変良い方針だ。私は学力の基礎は、国語力だと思う。読み書きを通じて国語力が養われないと、ものごとを理解し、考え、表現し、伝達することはうまくできない。コミュニケーションと人格形成の基礎となるのが、国語力である。外国語にしても国語力がないと、本当に使える力はつかない。その国語力を養ううえで、おとぎ話や古文・漢文は、不可欠の教材である。
 音楽教育では、小学では、文部省唱歌などの歌唱共通教材の曲数を、各学年で1曲ずつ増やす。中学では、「赤とんぼ」「荒城の月」「早春賦」「夏の思い出」「花」「花の街」「浜辺の歌」の歌唱教材7曲を復活する。こういう美しい日本語の歌を教えることは、言語能力や感性の育成となる。また親や祖父母と一緒に歌える歌を持つことは、家族や世代間のコミュニケーションにも大切である。歌によって、日本の心が自然に伝わっていく。音楽には、そういう偉大な力がある。
 その他、低落おぞましい理数系の学力の回復には、基本の重視、基本的な計算・訓練の強化が必要だが、新指導要領案はその方向に転換していると思う。外国語教育については、私は小学校での英語教育は必要ないという考えなので、新指導要領案のこの部分はなくてよいと思っている。外国語の早期教育については、それよりまず国語力をしっかり養成すること、外国語は中学校からすればよい、実際に生活で使われている実用的な英語を聴く、話すを徹底的にやってから、読み書き文法をやるのがよいという考え方である。
 時間があるときに、新指導要領案を詳しく読んで検討したいと思う。
 以下は報道のクリップ

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●産経新聞 平成20年2月15日付

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080215/edc0802151724003-n1.htm
新学習指導要領案改定の主なポイント(要旨)

 【国語】「言語力育成」の中核を担う。
 小学では記録、報告、解説などの言語活動を充実。ことわざ、故事成語、伝説、古文・漢文の音読など古典も重視する。漢字を読む機会も拡充。「ちょう戦」のような交ぜ書きを廃止し、学年別の漢字配当表以外には振り仮名をつける。
 中学では詩歌や物語の制作(2年)、報道される情報を比較するメディアリテラシー(3年)を復活させる。
 【社会】小学では4年で47都道府県の名称と位置を初めて追加。5年で世界の大陸と主な海洋、国の名称と位置、5、6年で縄文時代など狩猟採集生活を復活させる。世界遺産、国宝や重要文化財など伝統文化も重視する。
 中学では、現代史を重視。地理は現在、国内2、3地域、外国2、3カ国程度の調べ学習としていたのを、全国・全世界の地域的特色を学ぶ。
 【算数・数学】基礎基本の定着に向けて複数学年で指導内容を重複させる「反復指導」を採用。小学では台形の面積、小数点第2位や3けた×2けたの掛け算を復活。中学では、高校に移行した解の公式や、球の表面積、体積を戻す。
 【理科】小中で学習内容の一貫性を重視。選択項目を廃止する。
 小学では、選択だった火山噴火と地震による土地の変化の選択を必修化。中学ではイオン、日本の天気、遺伝の規則性、電力量などを高校から戻す。
 【音楽】邦楽指導を充実させる。小学では、文部省唱歌などの歌唱共通教材の曲数を各学年で1曲ずつ増加。中学では「赤とんぼ」「荒城の月」「早春賦」「夏の思い出」「花」「花の街」「浜辺の歌」の歌唱教材7曲を復活、各学年で1曲以上歌う。民謡、長唄など伝統的な歌唱指導も重視する。
 【技術・家庭】食育重視の観点から、小学で5大栄養素を復活。中学では、アニメーションなどのデジタル作品の設計・製作を新たに必修化。作物栽培か飼育のいずれかも学ばせる。浴衣などの和服の着方を扱う。
 【保健体育】運動習慣の二極化や体力低下に対処し、体つくり運動を小学1~4年でも行う。中学1、2年で選択必修の武道とダンスは男女ともに必修化し、伝統、礼儀作法を学ぶ。性教育では小中の総則で「発達の段階を考慮して」と明記。過激な性教育への歯止め規定を新設する。
 【外国語】小学5、6年で外国語活動を必修化。副教材「英語ノート」を作成、DVDなどの教材も活用しながらコミュニケーション能力を養成。中学では、授業時間を週4時間に増加。指導語数を1200語程度(現行900語程度)に増やす一方、必修単語は廃止した。教材の題材例にわが国の伝統文化や自然科学を追加した。
 【道徳】全教科で一体的に行うことを明確化。道徳教育推進の中心となる道徳教育推進教師を新設し全教師が連携して取り組む。先人の生き方を新たに追加。偉人伝のような感動できる教材を活用させる。
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コメント

米大統領選の日本への影響2

2008-02-16 09:54:56 | 国際関係
 前回、アメリカ大統領選挙の有力候補者の東アジア政策について書いた。本当は、日本人にとって最も関心を向けるべき点である。繰り返しになるが、ヒラリーは最も親中的で、日本にはやや敵対的、オバマも親中的だが、日本への関心は低いようで、政策がまだ明確でない。マケインは、日米同盟を重視している。日米豪印4カ国による「安全保障パートナーシップ」の構想を明らかにし、日本人拉致問題にも関心を示している。
 新聞・テレビの多くは、各候補者が東アジアや日本に対してどういう政策を持っているかについて、国民に知らしめようとしていない。ほとんど唯一の例外が、産経新聞である。産経は、アメリカの政治・外交・安全保障問題に詳しい学者・ジャーナリストの記事を2本、ここ1週間ほどの間に掲載した。貴重な内容なので、後ほどクリップしておく。

 その記事は、後に引用することにして、アメリカの外交・安全保障政策について、私見を書いておきたい。
 ブッシュ政権は、9・11に何らかの形で関与し、それに続いてアフガン=イラク戦争を計画的に実行した。これは、ネオコンの強硬派が政権をリードしたためである。スコウクロフトなどの安全保障の専門家は、イラク戦争に反対した。これは、アメリカ外交政策に伝統的な現実主義の観点からの反対だった。ブッシュ政権がネオコンに牛耳られた要因の一つは、イスラエル・ロビーが強い影響力をふるったからである。
 21世紀のアメリカは、道を誤った。アメリカが進むべき道は、中東では現実主義の路線を取り、イスラエルとパレスチナの和平を主導し、台頭する中国を牽制して日本との同盟を強化し、自由主義諸国との提携を広げることにあった、と私は考えている。今日においても、アメリカの指導者は、このような政策に転換しないと、世界における信頼を回復することは出来ないだろう。

 私は今日のアメリカの指導者は、世界的な外交・安全保障に関して三つの政策を取るべきだと考える。

①イラクからの早期撤退
②イスラエルとの一体性からの離脱
③日本との提携強化、中国への牽制

 ①はヒラリー、オバマが唱えている。③はマケインが唱えている。二者択一のようだが、①と③は、両方同時に実行可能な政策である。
 ①については、マケインは解決を模索しつつも、増派を主張している。仮にそうしたとしても、②を実行しないと、中東問題全体の改善にはならないだろう。
 ②については、ヒラリー、オバマ、マケインともイスラエル支持を明言している。現在のアメリカでは、政治家は、イスラエル・ロビーの後押しなしには大統領選挙に出られず、イスラエル・ロビーに敵視されれば政治活動そのものが危うくなるのである。アメリカの抱えた重大な病がここにある。この点を真に認識する指導者がアメリカに登場しない限り、アメリカと世界の混迷は続くだろう。

 以下は、マケインに関する記事のクリップの続き。

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●産経新聞 平成20年2月25日付

http://sankei.jp.msn.com/world/america/080215/amr0802150321001-n1.htm
【正論】米大統領選挙 杏林大学客員教授・田久保忠衛
2008.2.15 03:21

■レーガンの遺産を受け継ぐ

■対日、東アジア外交不安な民主候補

≪マケインのバックボーン≫
 米大統領選挙の候補者選びは、4年ごとのお祭り騒ぎの中でも今回はとりわけ熱気を孕んで展開され、どうやら共和党のマケイン候補と民主党のオバマ、クリントン両候補のいずれかが11月に一騎打ちを演じる様相を呈してきた。日本に限ったことではないが、何となく次期米政権は民主党で、米国史上初の黒人あるいは女性大統領を期待するような雰囲気が漂い始めているように見受ける。
 ただ、冷戦を崩壊させるうえで偉大な役を演じたのは共和党のレーガン大統領であり、1981年の彼の政権発足以後、民主党政権はクリントンの8年だけで、あとは共和党が政権を維持する。それを貫く「レーガン保守主義」を見逃してはいささか均衡を欠く見方になると思う。共和党の指名獲得を確実なものにしたマケイン候補は党内保守派グループの保守政治行動会議(CPAC)で、党を一本にまとめるのはイラク戦争と国際テロリストによる脅威だと述べた。
 その際、自身が尊敬するレーガンの「政党は基本となる信条を代表するもので、議席の増とか政治的な便宜のための妥協はいけない」との言葉を引用した。カンザス州でマケイン候補に圧勝したハッカビー候補は自らを1976年の大統領予備選でフォード大統領に敗れたときのレーガンになぞらえ、「当時の彼は党の異端だったが、いま人々はロナルド・レーガンを敬愛している」と述べて大きな拍手を得ている。

≪麻生プランに理解示す≫
 クリントン政権下の1996年に『フォーリン・アフェアーズ』誌が、当時新保守主義の論者として鳴らしたウィリアム・クリストル、ロバート・ケーガン両氏による「新レーガン型外交政策に向けて」と題する一文を巻頭論文扱いで掲載した。冷戦後の新しい国際秩序の形成に米国が果たすべき指導的役割を曖昧(あいまい)にしたクリントン政権に痛棒を加える一方で、キッシンジャー氏流の力の均衡を基にした現実主義外交論から一歩も抜け出られない保守派を嘲(あざけ)ったこの文章からは知的衝撃を受けたのを思いだす。
 両氏は、フォードとの争いに敗れたレーガンが「外交政策に道義性を」を看板に4年後の大統領選に勝利を収め、ソ連を「悪の帝国」と決めつけて、ついに冷戦に勝利を収めた偉業を讃(たた)え、レーガン外交をいま一度、と訴えたのである。米外交政策は国防を強化し、同盟関係を強め、道徳的な原則を貫徹することによって指導性を強めなければならない、との主張である。この論文はブッシュ政権を生む原動力的役割を果たした。ブッシュ政権は9・11テロに直面し、従来の通常戦争のほか国際テロリストとの戦いという新しい使命を帯びて大きな潮流に乗ってきたと考える。
 マケイン候補は国内政策ではリベラルだとの批判を受けているが、外交・防衛に関してはレーガン主義の継承者である。同候補は昨年5月にフーバー研究所で演説し、世界的な規模で「民主主義国連盟」をつくりたいと提唱した。ソマリアなどで事実上無力化した国連を補うのだ、と説明している。
 外交に道義性やイデオロギーを込めているのはレーガンだけでなく、ブッシュ外交の系譜でもある。安倍前政権で麻生前外相は「自由と繁栄の弧」を唱えたが、当然ながらマケイン候補は歓迎の拍手を送っている。中国や北朝鮮には距離を置き、台湾を重視する姿勢は最近のブッシュ政権と違う。

≪国際秩序転換の可能性≫
 クリントン、オバマ両候補のこれまでの言動から外交・防衛の新しい哲学は伝わってこない。イラク戦争に対するマケイン候補の態度は不変だが、オバマ候補は最初の攻撃から反対だ。クリントン候補は最初は賛成、あとは撤兵論に変わっている。「世界的大国」としての日本に期待するマケイン候補と対照的に、クリントン候補は中国を「今世紀における最も重要な二国間関係だ」と断言し、オバマ候補は「力をつけつつある大国(中国)として責任を果たせるよう勇気づける」とエールを送った。自分の署名入りの文章に関するかぎりは両者とも日本に無関心といっていい。
 米中関係のわずかな変化でも、日本、韓国、台湾その他に及ぶ影響は小さくはなく、国際秩序は変わると思う。民主党政権が登場したときに日本はどう対応したらいいのか。レーガン保守主義の潮の流れが変わるかどうかの瞬間が夏に迫っているというのに、この国の政治家たちは政局がらみの争いに没頭している。競馬の観客のつもりで大統領選を楽しんでいるのだろうか。(たくぼ ただえ)

●産経新聞 平成20年2月9日付

http://sankei.jp.msn.com/world/america/080209/amr0802090044000-n1.htm
【緯度経度】 マケイン氏 日本観の軌跡 

ワシントン・古森義久

 米国大統領選の共和党指名候補には事実上、ジョン・マケイン上院議員が確定してしまったようだ。
 マケイン議員といえば、ベトナムについて熱をこめて話してくれたことをまず思いだす。私がワシントン特派員として二度目の赴任をしてまもなくの1989年秋ごろからのことだった。
マケイン氏もその2年前に上院議員になったばかりだったが、ベトナム戦争中に5年半も捕虜となり、北ベトナム側のあの手この手のむごい尋問にも屈しなかったことで「戦争ヒーロー」として知られていた。
私自身もベトナムで4年近くを過ごしていたのでマケイン議員にベトナムについての見解を聞く会見を申し込んだ。すぐ応じてくれて、こちらが驚くほど時間をたっぷりかけ、ベトナム戦争の「大義」などを語った。以後、何度も会見には応じてくれた。その過程でマケイン議員は日本や日米同盟にも強い関心を抱いていることがわかった。
 当時のマケイン氏が述べた日本観や日米同盟観からすれば、今回の大統領選で発表した外交政策での日本に関する見解もごく自然にみえる。安倍晋三前首相の推進した「価値観外交」や「自由と繁栄の弧」への賛同、そして日米同盟の強化も、マケイン氏のそのころ主張と同じ範疇(はんちゅう)といえそうなのだ。
 当時、上院軍事委員会のメンバーとして活動していたマケイン氏は、日米貿易摩擦が激化するなかで米国議会にあいついで出された日本を標的とする一連の貿易関連法案にはすべて反対していた。
自衛隊のFSX(次期支援戦闘機)の問題でも、議会の対日強硬派による「日本たたき」の動きを厳しく非難していた。その理由は明らかに安全保障面での米国にとっての日本の効用を重視するからだった。
 ソ連共産党体制の崩壊が明白となった1990年6月、日本側の一部に「ソ連の軍事脅威がなくなれば、米国は日米安保条約を必要としなくなる」という観測が生まれたことを提起すると、マケイン議員は次のように答えものだった。
 「ソ連の脅威が減っても、なくなっても、米国の政権は共和党、民主党の別なく日米安全保障の利害合致の基本的枠組みは絶対に保持すべきだと考えるだろう。議会の貿易問題での対日強硬派でさえ『日米安保は要らない』という意見はまったく持っていない」
 「アジアにはソ連の脅威以外にも日米防衛協力を必要とする不安定や変動の要因が多い。中東やペルシャ湾での異変、朝鮮半島の危機、そして中国の動向などがそれだ」
 だからマケイン議員は日本に対し日米同盟の強化策としての防衛の増強や負担の増加を強く求めた。このころ日本に在日米軍経費の全額を負担することを要求する法案を提出していた。イラクのフセイン政権のクウェート軍事占領への対抗策としての米国主導の湾岸戦争が起きると、マケイン議員は日本の具体的な貢献を求め、なんの行動もとらない日本を激しく批判した。
 「フセインの侵略を阻止する必要は欧州の同盟国も、ソ連も、アラブ諸国も認識し、米国の行動への支援を明確にしているのに、日本だけがその決意が不明だ。日本政府の形だけの支援表明は世界中の軽蔑(けいべつ)と、米国の敵愾(てきがい)心の対象以外のなにものでもない」
 「日本が米国の友邦であること、世界各国との経済的相互依存を続けることを欲するならば、国際国家にふさわしい姿勢をとらねばならない。世界でも最も柔軟な憲法の陰に逃げこんだり、少数の海運労働者の抗議を口実にしたりして、なんの行動をとらないままでいることはもうできない」
 このへんの日本への期待表明となると、「穏健派」という描写が当てはまるとは思えない。
 しかし、当時も日本が防衛力強化の措置をとることや、自衛隊を海外に送り出すことには、「軍国主義の復活」という類の反対論が日米両国の一部にあった。
この点にはマケイン氏は次のように答えていた。
 「日本の軍事大国化説や軍国主義復活説には根拠がない。むしろ逆に私は日本の消極的平和主義の方が問題だと思っている」
 この言葉は当時もいまも、ニューヨーク・タイムズの日本論評社説に象徴されるような日本不信や日本警戒の路線とはコントラストを描く。日本は日米同盟の強化にも、自国の「普通の安全保障」の整備にも、国際社会への安保貢献にも、もっと具体的な行動をとってほしい、という思考だろう。
 もし日本がこうした期待に応じられないという場合のマケイン議員の批判はきっとまた鋭く、険しい言辞となるだろう。「穏健」というイメージとはおよそ異なる姿勢が予測されるのである。
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米大統領選の日本への影響1

2008-02-15 10:37:36 | 国際関係
 アメリカ大統領選挙は、昨年来、民主党の圧倒的優勢が伝えられ、ヒラリー・クリントンが次期大統領の最有力候補と見られてきた。しかし、バラク・オバマが急速にヒラリーを追い上げ、2月5日のスーパーチューズデイではほぼ互角と成り、オバマがやや有利という形勢になってきている。ヒラリーとオバマの激しい接戦の結果は、8月まで持ち越されることになるかもしれない。
 共和党の候補は、ジョン・マケインが他の候補を大きくリードしており、指名を受けるのは確実と見られている。党としては、民主党への劣勢は変わっていない。共和党の候補に勝機があるとすれば、一つは、民主党の大統領候補戦が長引いて党内で消耗し、本番の大統領選挙への準備が滞った場合だろう。
 わが国のマスコミは、ヒラリーとオバマの戦いを連日のように報道している。初の女性大統領の誕生か、それとも初の黒人大統領の誕生か、確かに今回の候補戦は大衆の耳目を引く。これらの候補がどのような政策を掲げており、それが実行されるようになった場合、わが国にはどういう影響が予想されるか、それが大事なのだが、そういう報道は少ない。
 アメリカにどういう政策を持った大統領が立つか、わが国には大きな影響がある。アメリカ国内の問題である雇用、福祉、医療、年金、教育、人権等に関する政策は、わが国への影響は少ない。直接影響があるのは、外交、貿易、安全保障、環境に関する政策である。中でもイラク戦争をどうするか、地球温暖化にどう取り組むかが、今日の2大課題である。
 イラク戦争については、オバマは最初から一貫して反対、ヒラリーは最初賛成だったが途中から反対、マケインはブッシュ政権の政策を基本的には支持し、政策の改善を図ろうとしている。この点では、オバマ・ヒラリーとマケインの政策は、強く対立している。
 地球温暖化への取組みには、オバマとヒラリーは積極的だが、マケインも共和党の上院議員としては最も積極的な政策を主張してきたことで知られる。彼らのうちどの候補が大統領になっても、ブッシュ政権より、ずっと積極的な政策が推進されるだろう。

 もう一点、わが国にとって重要なことは、東アジア政策である。この点では、ヒラリーは最も親中的で、日本にはやや敵対的ですらある。オバマも親中的だが、日本への関心は低いようで、どういう政策をしようとしているか、まだ明確でない。いずれにしても、民主党大統領になった時は、わが国は、米中の狭間で厳しい立場に立たされるだろう。
 これに対し、マケインは、台頭する中国への対処を重要課題と位置付けて、日米同盟を重視している。彼の陣営にはアーミテージ元国務副長官、グリーン前国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長ら知日派も加わっている。
 マケインは、日米とオーストラリア、インドの4カ国による「安全保障パートナーシップ」を構築する構想を明らかにしている。その構想は、わが国の安倍前首相の価値観外交や麻生前外相の「自由と繁栄の弧」の構想に通じるものである。また、マケインは、有力大統領候補の中でただ一人、日本人の拉致事件に触れ、北朝鮮との交渉で弾道ミサイルの問題に加え、拉致事件も考慮に入れると言明している。
 日本人としては、日本を重視し、中国の危険性を知り、拉致問題にも強い関心を持った大統領候補の主張に、もっと注目すべきだろう。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成20年2月8日付

http://sankei.jp.msn.com/world/america/080208/amr0802081952022-n1.htm
マケイン氏、保守派取り込み、党内結束急ぐ
2008.2.8 19:52
 【ワシントン=山本秀也】(略)マケイン上院議員は(略)、ワシントン市内での保守系会合で演説、「党内をまとめ(本選挙という)11月の大勝負に備えることが責務だ」と述べて、党の強力な支持基盤のひとつである保守派の理解と協力を訴えた。不法移民問題などの内政でマケイン氏を色眼鏡でみる一部の強硬保守派を取り込んで挙党態勢を作ることは、氏にとって待ったなしの課題といえる。
 (略)マケイン氏は「私の選挙活動は保守の原則を基盤とする」と語るなど、「保守本流の一角」であることを繰り返し強調した。これは、保守派が「踏み絵」としている移民や同性婚などの問題で、党内にくすぶる自らへの批判を意識したものだ。これらの問題にこだわる社会政策上の保守派は今回の予備選ではロムニー氏らを支えてきており、この日の演説でも、マケイン氏が移民問題に触れると非難の声が上がった。
 こうした不満を抑え、党内結束を図るイメージ戦略として、マケイン氏は自らを「レーガン革命の兵卒」と呼ぶなど、1980年代に保守の黄金時代を築いた故レーガン元大統領に言及し、「小さな政府」「減税」「強い軍隊」といったレーガン主義の旗印を掲げ、継承者を自任してみせた。
 外交・安全保障政策ではまぎれもない保守派のマケイン氏も、同性婚などの社会政策上の問題ではリベラルとも見なされることが少なくない。
 同氏が講演で、イラク問題など得意の安保政策で強い姿勢を打ち出して民主党候補との違いを鮮明にしたのも、「リベラル」との印象を薄める狙いでもあったといえる。
 「クリントン、オバマ両上院議員は、政治の都合で作られるいい加減な時刻表に沿ってイラクからの撤兵を図る。その結果、人々の災禍が無視され、わが国の安全が脅かされよう」と訴え、盛んな拍手を浴びていた。
 これに対して、バージニア州を遊説中だったクリントン氏は「マケイン政策では経済、防衛政策など、これまでと同じになる」と反発していた。

●産経新聞 平成20年2月8日付

http://sankei.jp.msn.com/world/america/080208/amr0802082001024-n1.htm
マケイン氏共和党候補に ロムニー氏撤退でほぼ確定
2008.2.8 20:01
 【ワシントン=有元隆志】 マケイン氏は(略)、民主党の予備選候補、クリントン、オバマ両上院議員が唱えるイラク駐留米軍の段階的撤退論を批判し、共和党の結束の重要性を訴えた。(略)
 マケイン氏は演説で、「小さな政府」「減税路線」「強固な防衛」を掲げ、イラクからの段階的撤退論を「政治的ご都合主義」と切り捨て、撤退については現地司令官の判断を尊重するとした。
 「クリントン、オバマ両氏は核の野望を持つイランの脅威を認識していない」とも語り、イランの核問題にも厳しく対処することを強調した。
 アジア政策には触れなかったものの、昨年末の米外交専門誌フォーリン・アフェアーズでの論文では、台頭する中国への対処を「重要課題」と位置付けて日米同盟重視姿勢を示し、日米とオーストラリア、インドの4カ国による「安全保障パートナーシップ」を構築する構想も明らかにした。
 有力大統領候補の中では唯一、日本人拉致事件に触れ、北朝鮮との交渉で弾道ミサイルの問題に加え、拉致事件も考慮に入れると言明している。(略)
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