ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユダヤ132~アメリカの政治とユダヤ・ロビー

2017-11-30 09:12:25 | ユダヤ的価値観
●アメリカの政治とユダヤ・ロビー
 
 今日、アメリカでは、ユダヤ・ロビーが最大のロビー団体となり、アメリカの外交政策に強い影響を与えている。ユダヤ・ロビーとは、ユダヤ系米国人が、イスラエルを宗教的な信仰によって擁護するキリスト教右派等と連携して、米国の政治・外交をユダヤ人社会やイスラエルに有利なものにしようとして政府・議会・政治家に働きかける団体である。
 ユダヤ人ロビイストは、豊富な資金と積極的な働きかけにより、アメリカの政策をイスラエルに有利なものへと誘導している。そして、アメリカ=イスラエル連合を確固としたものすることに成功している。
 これに対し、アメリカ国民の中から、合衆国政府はアメリカの国益よりもイスラエルの国益を優先しているという批判が上がっている。なかでも高名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトによる『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(2007年刊行)は、言論界に一石を投じた。著者たちは、ユダヤ・ロビーではなく、イスラエル・ロビーという用語を使う。前者は、ロビー活動の主体がユダヤ人集団であることを端的に表すが、後者は、イスラエルの利益を追求する団体であることを強調する。
 ミアシャイマーとウォルトは、イスラエル・ロビーの強い影響力により、アメリカの政策論議は合衆国の長期的安全保障を損なう方向に向かっていると主張する。また、イスラエル・ロビーの団体は、イスラエルの極右政党リクードに近い団体・個人で構成されていると指摘する。他の団体・個人との境界線は曖昧で、多くの学者、シンクタンク、政治活動委員会、ネオコン・グループ、キリスト教団体等がロビー活動を支援しているという。
 イスラエル・ロビー、私の用語によれば、ユダヤ・ロビーは、非常に大きな成果を上げている。具体的には、たとえば、アメリカ政府は政権が共和党・民主党の違いに関わらず、イスラエルに大規模な無償の軍事援助を行っている。アメリカ政府が世界各国に行う経済・軍事援助は、その約5分の1が世界人口の0.1%程度にすぎないイスラエルに送られている。2006年の時点で、イスラエルは約30億ドルを受給した。この金額は、一国としては最高額だった。2007年から10年間、毎年30億ドル、合計300億ドルの援助が続けられている。
 一般の国は、アメリカ政府からの援助金を年4分割して与えられる。ところが、イスラエルだけは、会計年度の初めに一括して援助金を受給する。その援助金のうち当面、使用しない分は連邦準備銀行へ直接預金され、年利8%の利子を稼ぐことが許されている。イスラエルはこの特権を享受する唯一の国である。
 これに加えて、毎年、約5億ドルのイスラエル国債がアメリカ国内で購入されている。イスラエル国債は米国国債より利率が低く、格付けもBBBと低い。それにもかかわらず、全米3000以上の大小の銀行が購入している。これは、もしイスラエル国債の購入を拒めば、地元のユダヤ人富豪たちが預金を他の銀行に移すことを恐れるからと見られる。
 国連安全保障理事会でイスラエルに不利な提案が出されると、アメリカ政府は必ず拒否権を発動している。イスラエル非難の国連安保理決議に対して、1982年以来、実に32回(2006年現在)も拒否権を発動して、イスラエルを擁護し続けている。イスラエル・パレスチナ問題においては、イスラエル側に立って関与しており、アラブ諸国の批判や反発を受けている。
 米国では2004年10月に、反ユダヤ主義監視法が成立した。同法は、世界各地で頻発する反ユダヤ主義をアメリカ政府が監視し、適切な対応を取ることを定めたものである。米国務省内に、反ユダヤ主義に対処する特別部局の設置を定めている。イスラエルではなく米国の国家機関が反ユダヤ主義に世界的に対処するというのである。米国は、今やそれほどまでに、ユダヤ人及びイスラエルの強い影響下にあることがわかる。
 こうしたアメリカとイスラエルの特殊な関係は、アメリカのユダヤ・ロビーの活動が生み出しているものである。

 次回に続く。
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「中国:習思想が党規約に明記、独裁体制を確立し、野望追及へ」をアップ

2017-11-29 09:19:19 | 国際関係
 ブログとMIXIに連載した中国の最新動向に関する拙稿を編集して、マイサイトに掲載しました。通してお読みになりたい方は、下記へどうぞ。

■中国:習思想が党規約に明記、独裁体制を確立し、野望追及へ
http://khosokawa.sakura.ne.jp/
 右上の「NEW」の題目をクリック
または
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12.htm
 目次からB43へ
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中国:習思想を党規約に明記、独裁体制の確立へ3

2017-11-28 08:52:42 | 国際関係
有識者の見方

 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、産経新聞10月2日付に、大意次のように書いた。
 習氏の演説は、「軍事強国と専制政治に走る姿を明らかにした。3時間余の演説で習氏は世界一流の軍事大国化を掲げ、中国共産党の絶対的支配に党員も国民も従うことを求めた。宗教にさえも『中国化』と『社会主義社会』への適応を要求した。チベット人がチベット仏教の学びを禁止され、毛沢東語録の学習を強いられている現状を、さらに広げるというのか」と。
http://www.sankei.com/column/news/171024/clm1710240007-n1.html
 同じく11月6日付には、次のように書いた。
 「『中国の特色ある社会主義』の下、各民族は『ザクロの実のように寄り集ま』り、宗教は『中国化』され『社会主義社会への適応』を求められる。文化も社会主義イデオロギーに導かれ、社会主義の『核心的価値観』が人々の心にぴったりはまり(アイデンティティーとなり)、行動・習慣に自然に反映されるよう、家庭、子供に至るまで教育を徹底させる。かくして『愛国主義、集団主義、社会主義』の教育が一層強化されるというのだ」と。
http://www.sankei.com/politics/news/171106/plt1711060014-n2.html
 櫻井氏は、10月2日付の続く部分で、「習氏は『偉大なる中華民族の復興』を謳い、『中華民族は世界の諸民族のなかにそびえ立つだろう』とし、『人類運命共同体』の構築を提唱した。これからの中国を読み解く上での重要な言葉となるであろう人類運命共同体構想は『世界制覇宣言』と同義語かと思う。人類は皆、中国の下で中国主導の運命共同体の一員として生きることを要求されるのか」と問いかけた。
 また、11月6日の続く部分に、次のように書いた。
 「建国100年の2049年までに社会主義現代化国家を完成させて、中華民族が世界の諸民族の中にそびえ立ち、軍も世界一流となる。力をつけた中国は国際社会を『人類運命共同体』へと導くそうだ。中国共産党の『核心的価値観』が基本になるような運命共同体は願い下げだが、習氏の野望は止まらない」と。
 このように見る櫻井氏は、11月上旬に行われたトランプ米大統領のアジア歴訪について、次のように述べた。「中国に中長期的支配を許すのか、それとも米国主導の世界を守り得るのか。トランプ米大統領のアジア歴訪は世界の潮流を決する重要な旅となる。日本にとっては、これまでで最善といわれる現在の日米関係を継続できるのか、それとも中国重視で、米国が中国の切望する新型大国関係に傾くかの岐路にも見える」と。
 次にシナ系日本人評論家の石平氏は、産経新聞11月2日付に、大意次のような見解を載せた。
 今回の共産党大会を通じて「毛沢東時代晩期を特徴づける終身独裁・個人崇拝・側近政治などのあしき伝統が一気に復活してしまい、中国共産党政権は40年前に先祖返りした格好だ。その原因は、習氏という指導者の強い権力志向以外に、2000年代に入ってから中国共産党政権が直面している存続の危機が背景にある。
 鄧小平の改革開放路線以来、中国は経済的に大きな成功を収めた一方で、貧富の格差の拡大、腐敗の蔓延、環境の破壊など、深刻な問題が起こり、国民の不平不満は高まる一方だ。胡錦濤政権時代の末期、暴動・騒動事件が全国で年間18万件も起きていたことは、まさにそのような危機的状況の表れであろう。
 5年前に習政権が誕生すると、党内の腐敗摘発を強力に進めて国民の不平不満を和らげようとする一方で、毛沢東時代に開発したあらゆる統制手段を持ち出して反体制運動に厳しい弾圧を加え、全国民の思想統制を強化してきた。
 終身独裁・個人崇拝・側近政治を特徴とする毛沢東政治が復活してきたのもやはり、危機に面したときの中国共産党政権の、自己保存本能による先祖返りであろう」
 「鄧小平時代、毛沢東政治の弊害に対する反省から、中国共産党は『指導者終身制』の廃止や集団的指導体制の導入などさまざまな政治改革を試みてきたが、今の習政権の下でそれらが全部ひっくり返され、政治スタイルは一気に40年前に逆戻りしたわけである。中国国民は再び、かつての暗黒時代を体験しなければならないのか、心配でならない」と。
http://www.sankei.com/column/news/171102/clm1711020005-n1.html

●日本はどう対応すべきか

 わが国は今、北朝鮮の核とミサイル開発によって、戦後かつてない危機に直面している。しかし、日本にとってさらに深刻な脅威は、北朝鮮の背後に存在する中国である。
 日本人は、日本にとっても世界にとっても、中国こそ最大の脅威であるという確かな認識を持つことが必要である。中国は、北朝鮮よりはるかに早く、昭和39年(1964年4)10月に最初の核実験を行っている。そして、昭和45年(1970年)4月、人工衛星の打ち上げに成功し、日本を射程に収めるIRBMの技術を取得した。それは、わが国が非核三原則を国家の方針とした約2年後のことだった。
 中国の朱成虎空軍少将の名は、その危険思想とともに、世界に知られている。朱は、中国人民解放軍の最高学府である国防大学の防務学院長という立場にある。人民解放軍の「健軍の父」と呼ばれる朱徳元帥の孫だという。
 朱少将は、平成17年(2005)7月14日、香港駐在の外国人記者大陸訪問団との会見の席で、次のような発言をした。
 「米国がミサイルや誘導兵器で中国の領土を攻撃するなら、中国は核兵器で反撃せざるを得ない」「中国の領土には、中国軍の艦艇や戦闘機も含まれる」「中国は西安以東の都市の全てが破壊されることを覚悟しており」「米国も当然西海岸の100以上、もしくは200以上、さらにはもっと多くの都市が中国によって破壊されることを覚悟しなければならない」
 朱成虎は、さらに次のように語っている。
 「人口問題を解決するには、核戦争が最も有効にして手っ取り早い方法だ」「もし我々が被導的でなく主導的に出撃すれば、計画的に全面核戦争に出れば、情勢はきわめて有利である。(略)政府はすべての幻想を捨て、あらゆる力を集中して核兵器を増やし、10年以内に地球人口の半分以上を消滅できるようにしなければならない。(略)人口をもっと増やし、そして計画的に周辺諸国に浸透させるべきだ。(略)全面核戦争が起こったら、周辺諸国に疎開した人口の半分と、農村に疎開した人口の半分があるから、他国に比べて多くが生き残ることができる」「歴史は必ず私の所説の正しさを証明してくれる。(略)核大戦のなかで、我々は百余年来の重荷を下ろし、世界のすべてが得られる。中華民族は必ず核大戦のなかで、本当の復興を得られる」と。
 朱成虎の核戦略思想は、毛沢東思想を継承するものであり、またその発展である。核大国化した中国において、核先制攻撃戦略や核戦争生き残り戦略が唱えられていることは、単にわが国のみならず、世界人類にとって存亡に関わる極めて重大な事柄である。
 私は、こうした朱成虎の核戦略思想が現在の中国人民解放軍の戦略の柱となっており、それが習思想の柱ともなっていると考えている。
 こうした中国に対して、わが国は、日米の「希望の同盟」をがっちりと固め、抑止力を高めて、アジアと世界の平和と安全を維持すべきである。また、それには、自由と協調の理念を共有するアジア太平洋諸国、インド、欧州等の国々と手を結び、中国の危険な野望を打ち砕かねばならない。(了)
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ユダヤ131~今日の米国ユダヤ人の政治力

2017-11-26 08:51:43 | ユダヤ的価値観
今日の米国ユダヤ人の政治力

 アメリカのユダヤ人は、政治的には、リベラルと保守の二つに大きく分かれる。大まかに言って、リベラル(修正自由主義者)は多数派であり、民主党を支持し、イスラエルの中道左派である労働党を支援している。保守は在米ユダヤ人の5分の1ほどの少数派で、共和党を支持し、イスラエルの右派であるリクードかカディマを支援している。保守は正統派ユダヤ教徒を中心とし、巨大勢力であるキリスト教右派と連携している。保守の中には、自由至上主義者(リバータリアン)や新保守主義者(ネオコン)もいる。
 このような政治的多様性を示すアメリカのユダヤ人だが、彼らの大多数に共通しているのは、親イスラエルの感情・思想を持つことである。そして、アメリカのユダヤ人団体の多くはイスラエルと結託して、アメリカという国家がイスラエルにとって有利な政策・行動を行うように、強力に働きかけている。ユダヤ系米国人には、政治・経済・科学・文化・芸術・教育等で活躍している知識人や有力者が多く、社会的な影響力がある。彼らの活動によって強固なアメリカ=イスラエル連合が築かれ、またそのもとで、アメリカのユダヤ人は強力な政治力を発揮している。
 佐藤唯行は、著書『アメリカ・ユダヤ人の政治力』で、20世紀の後半以降、ユダヤ人がアメリカで類まれな政治力を振るってきた理由を8つ挙げている。
 (1)財力、(2)重点特化の戦術、(3)格別に高い政治関心、(4)人材の育成とリクルート・システム、(5)政治家予備軍としての法曹集団に占める高い占有率、(6)ユダヤ人団体のネットワークと広報・宣伝活動、(7)抜群の投票率、(8)大統領選挙の勝敗を左右する大州に人口が集中――である。
 佐藤は、他の著書でもこの点について書いている。それも踏まえて、彼の見方の概要を書く。
ユダヤ人の政治力が彼らの強大な経済力に拠っていることは明らかである。彼らの経済力については、先の項目に書いたが、ユダヤ人社会の財力は、過去半世紀の間に大幅に増えている。民主党の政治資金のおよそ60%をユダヤ人が提供している。共和党においても35%は超えている。ユダヤ・マネーなくして大統領選挙、連邦議会選挙等を戦い抜くことは不可能になっている。
 票田としてのユダヤ人のパワーは、ユダヤ人口が長期的に漸減している中で、ゆるやかな衰えを見せている。しかし、選挙資金調達者としての彼らのパワーは、過去半世紀の間衰えることなく増大の一途をたどってきた。莫大な選挙資金を集めるユダヤ人大富豪たちのネットワークと彼らの発言力こそが、ユダヤ人の政治力を生み出す源泉となっている。
 ユダヤ人は、政治的要求を絞り込み、そこに持てる力を集中して投入することによって、戦略的に行動し、政治的影響力を見事に発揮している。
 ユダヤ人は、政治に対する過度といえるまでの関心を示す。タルムードは学識ある者が公的活動へ参加することを推奨しており、政治への関心は伝統的にユダヤ知識人の宗教的情熱の表れだった。
 ユダヤ人社会には、高い政治意識を持った若者たちを政治の世界へリクルートし、彼らを将来の人材として育成するシステムが存在する。また、ユダヤ人は古くから法曹の世界へ大量に進出し、高い占有率を持つ。法曹集団が有力政治家の人材輩出源となっている。
 ユダヤ人口が減少しているにもかかわらず、彼らの政治力はむしろ増大している。2009年の時点で、ユダヤ議員団は上院の13%を占めた。定数100人のうち13人である。下院には6.9%となる30人の議員がいた。うち8人がカリフォルニア州の選出だった。これは、ハリウッドの娯楽・メディア産業のユダヤ人大富豪が献金する潤沢なユダヤ・マネーによっている。ハリウッドは、ウォール街と並ぶ民主党の2大集金源の一つである。
 アメリカには、政治的メッセージを発信・伝達する全国的なユダヤ人団体のネットワークがある。また、世論に影響を及ぼす広報・宣伝活動のスキルと能力の高いスタッフとボランティアがいる。
 ユダヤ人の政治意識は高く、投票率は他のいかなるエスニック・グループ(民族的集団)よりも、はるかに高い。全米平均の2倍近い90%前後に達している。
 ユダヤ人は大統領選挙の勝敗を左右する大州に多く住んでいる。人口の約81%が都市化・産業化の進んだ9つの州に集中している。ニューヨーク州やカリフォルニア州等がそれである。50州に割り当てられた選挙人団のうち、その9州の持ち分は38%を占めている。
 こうしたことによって、ユダヤ人は20世紀の後半のアメリカにおいて、類まれな政治力を発揮できている、と佐藤は説いている。これも卓見だと思う。

 次回に続く。
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中国:習思想を党規約に明記、独裁体制の確立へ2

2017-11-25 09:10:54 | 国際関係
●後継者を置かず指導体制を長期化か

 習近平は当初、「習近平思想」という文言を盛り込む画策をしたと伝えられる。これは、党内に個人崇拝への反発があり、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」、シナ語で「習近平新時代中国特色社会主義思想」とすることで妥協した。
 習主席は、党大会の閉幕演説で、党規約を「学習し、順守し、徹底し、擁護する」よう求めた。大会終了後の10月30日、党規約の全文が公開されるや、国内の大学などで習思想の研究センターや学習会が相次いで設立されているという。
 習思想はまだ形成途中である。習主席は、2022年開催の次期党大会までに新たな内容を提示し、体系的な思想を構築して、「習近平思想」の文言を党規約に明記することを目指すと見られる。
 党があらゆる面で指導し、社会主義の核心的価値を堅持するという習思想の実態は、習近平という個人に権力を集中するものである。内政、外交、軍事、経済、民生等のあらゆる政策を一人の権力者が決定し、推進する体制が実現することが予想される。こうした習主席を「皇帝」にたとえる見方が出ている。
 10月25日、中国共産党第19期中央委員会第1回総会において、新たな最高指導部メンバーである政治局常務委員が選出された。江沢民、胡錦濤の時代には、最高指導者は2期10年務めた後に次世代の後継者に権力を移譲することが慣例となっていた。だが、今回、政治局常務委員に、習主席の後継者となるべき50代の人物は一人も選出されなかった。このことから、習主席は2022年の次回党大会でも引退せずに、最高権力者の座に居続ける積りと見られる。今回の党大会で誕生した新しい政治局には、習主席のかつての部下・同級生・幼なじみを多数入れ、党の指導部を自分の側近で固めた。「習家軍」(習家の兵隊)と呼ばれる彼らが中心となって、習主席を毛沢東と並ぶ偉大なる指導者として偶像化する動きが広がっていると見られる。
 習主席は、「反腐敗闘争」という名の権力闘争で反対勢力を駆逐することに成功し、権力基盤を強固に固め、政敵が容易に攻略できない長期的な指導体制を打ち立てつつある。
 習主席は、現在64歳である。中国共産党は、2021年に創設100年を迎える。翌22年、習主席は、69歳。さらに5年、10年あるいはそれ以上の期間にわたって、権力の座に居続けることすらも可能だろう。2020年代から40年代にかけて、習皇帝が中華帝国に君臨し、世界の諸民族を足元に従えるという悪夢のような未来が展開する恐れがある。

●中国の野望~2040年代までの侵攻計画

 習主席は、共産党大会の閉幕演説で、党大会の決定は「中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に重要な役割を果たす」と強調した。
 南シナ海での人工島の建設・軍事基地化を「成果」と自賛し、「海洋強国の加速」を打ち出した。これによって、アジア太平洋地域で、膨張主義が露骨さを増すだろう。東シナ海・南シナ海での中国公船の活動は頻度と勢いを増し、国際法規を無視する海洋権益の獲得が進められるだろう。中国の悲願である台湾統一のための動きも油断できない。
 また、党規約には、「一帯一路」の推進も盛り込まれた。ユーラシア大陸の東から西へ、西太平洋からインド洋、地中海へと現代版シルクロード経済圏構想を実現して、中国共産党の価値観に有利となる経済覇権を築き上げようとするものである。この構想が日米欧主導の国際秩序への対抗であることは明白である。
 党規約には、米国と並ぶ「強国」を21世紀半ばまでに建設すると目標が盛られた。習主席は、今世紀半ばまでに米軍に比肩する「世界一流の軍隊」を築くと宣言した。これは、AIIB等によって世界的に経済的影響力を強める中国が、経済と軍事の両面で米国に並ぶ「強国」を目指すという決意の表れだろう。さらに米国に取って代わって、中国が世界で中心的役割を果たす世界一強大な国家になろうとする、果てしない野望がうかがえる。そのトップであり続けることが、習近平の願望だろう。
 今年10月、米国で出版された『The Chinese Invasion Threat: Taiwan's Defense and American Strategy in Asia(中国侵略の脅威~台湾防衛とアメリカのアジア戦略)』が、習近平指導部が準備を進めている「計画」を暴露した。著者は、イアン・イーストン。米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」で、アジア・太平洋地域の戦略問題を専門とする研究員である。
http://project2049.net/who_we_are_easton.html
 中国人民解放軍の内部教材などを基に本書を著したイーストンは、「世界の火薬庫の中で最も戦争が起きる可能性が高いのが台湾だ」と強調する。「中国は2020年までに台湾侵攻の準備を終える」と指摘し、早ければ3年後に中台戦争が勃発する可能性があると示唆しているとのことである。
 これに符合することとして、10月24日に閉幕した中国共産党大会で、習近平主席は「3つの歴史的任務の達成」を宣言し、「現代化建設」「世界平和の維持と共同発展の促進」とともに「祖国統一の完成」すなわち台湾統一を歴史的任務の一つに掲げた。
 党大会終了後、北京市内で開かれた政府系シンクタンクが主催するシンポジウムで、軍所属の研究者が「中国近未来の6つの戦争」と題する発表をしたと伝えられる。その研究者は、習近平指導部が隠してきた、中国が主権を主張する領土を奪還するための2050年までの予定表を発表した。それによると、台湾統一の時期は2020~25年でイーストンの指摘と一致する。また、習近平は東シナ海や南シナ海、インド、ロシアとの国境周辺などにも版図を広げる心づもりであり、予定表では、尖閣諸島を奪取する時期は2040~45年とされているとのことである。
 中国共産党が党規約に、米国と並ぶ「強国」を21世紀半ばまでに建設するという目標を盛り、習主席は今世紀半ばまでに米軍に比肩する「世界一流の軍隊」を築くと宣言したのは、単なる内部充実的な富国強兵政策でなく、台湾統一、尖閣奪取等の侵攻作戦を対外的に実施する意思があってのものであることを、われわれはしっかり理解する必要がある。

 次回に続く。
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ユダヤ130~今日の米国ユダヤ人の経済力(続き)

2017-11-24 08:55:03 | ユダヤ的価値観
●今日の米国ユダヤ人の経済力(続き)

 20世紀は、映画の時代の始まりであった。アメリカの映画産業の多くは、ユダヤ人に組織された。20世紀初頭、多数の映画製作会社が設立されたが、やがて8大会社に統合された。そのうち、ユニバーサル、20世紀フォックス、パラマウント、ワーナー・ブラザーズ、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、コロンビアの6社は、事実上ユダヤ人が設立したものだった。
 映画のプロデューサー、ディレクターにもユダヤ人が多い。ジョージ・ワシントン大学の政治学助教授ロバート・リクターの調査結果によると、1965年から82年の間に大手映画会社の中で働いていたプロデューサー、ディレクターの62%が、ユダヤ教を宗教とする家庭で、ユダヤ人として育てられた人物だった。
 映画は娯楽の手段であるとともに、情報を広める手段でもある。映画の内容には、映画会社の所有者や製作者のメッセージと価値観が込められている。ハリウッドは、大衆に手軽な娯楽を提供しつつ、娯楽を通じて見る者に、彼らの思想を吹き込んでもいる。映画は、アメリカ=ユダヤ文化の世界的な宣伝・普及に一役買ってきたと言えるだろう。
 次に、生活用品に話を移そう。アメリカの大規模製造業は、伝統的にWASPが支配してきた。また、アメリカでは、国際石油資本はアラブ産油国との友好を重んじ、ユダヤ人を雇用から排除し続けてきた。そうした中で、小規模な製造業や流通業は、ユダヤ人が進出できる分野だった。
 化粧品業界は、小資本のユダヤ移民の企業家が成功し得る産業だった。レブロン社、ヘレナ・ルビンシュタイン社、マックス・ファクター社、エスティ・ローダー社等は、ユダヤ人が創業者主である。世界最大の蒸留酒メーカーのシーグラム社は、ユダヤ人が創業したカナダの酒造メーカーである。アメリカの禁酒法時代に、カナダで酒造することで莫大な富を形成した。バービー人形で有名な世界的玩具会社のマテル社は、ユダヤ人が設立した。ユダヤ人は、百貨店や通信販売などで流通にも才能を発揮してきたが、大量小売業でも、ホームデポ、トイザラス等を生み出している。
 20世紀後半は、情報革命の時代となった。情報革命は、18世紀の産業革命以上に、人間の生活・文化・社会を大きく変えた。コンピュータの動作原理を考案した「コンピュータの父」ジョン・フォン・ノイマン博士は、ユダヤ人だった。ノイマンは第2次世界大戦のさなか、新しい計算システムをプログラムした近代コンピュータのひな形を開発した。また、サイバネティクスの創始者ノーバート・ウィーナーも、ユダヤ人だった。ウィーナーは通信工学と制御工学の総合の他、ロボティクスやオートメーションなどでも画期的な研究を行った。
 1990年代から、アメリカにおけるユダヤ人の最新事業は、情報通信産業に集中している。ビル・クリントン政権では、シリコンバレーを中心とした情報通信産業によって、世界を巻き込む情報革命構想が作られた。副大統領アル・ゴアの情報スーパーハイウェイ構想は、それに乗っかったものといわれる。
 情報テクノロジーの分野では、基幹OSで世界を席巻するのが、マイクロソフト社である。ビル・ゲイツはユダヤ人ではないが、彼の右腕として同社のCEO(最高経営責任者)を務めたスティーブン・バルマーは、ユダヤ人である。またパソコン・ハードの雄、デル社の創業会長マイケル・デル、ソフトウェア・データベースをリードするオラクル社の創業会長ラリー・エリソンも、ユダヤ人である。情報化社会でもユダヤ系企業は、その中枢を抑えている。
 21世紀は、飢餓の時代になるという予測がある。人口の爆発的な増大、農地を含む自然環境の悪化、肉を中心とした食生活への変化、世界的な経済格差の拡大等が、その原因である。こうした中で、食糧を制する者が世界を制するとさえ、見られている。世界の穀物市場を事実上支配しているのは、五大穀物メジャーである。かつてはカーギル社、ブンゲ社、ルイ・ドレフェス社、コンチネンタル・グレイン社、アンドレ・ガーナック社が五大穀物商社に数えられた。カーギルを除き、すべてユダヤ系資本だった。またすべて同族企業であり、株式も非公開だった。五大穀物メジャーは現在、コンチネンタル・グレイン社、アンドレ・ガーナック社が抜け、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社(ADM)、グレンコア社が加えられる。そのうち、ADMとカーギルが双璧であり、ともにアメリカに本拠を持つ。現在も、アメリカのユダヤ人が食糧ビジネスの相当部分を握っていると見られる。
 佐藤唯行は、著書『アメリカ・ユダヤ人の経済力』で、ユダヤ人企業家がアメリカで成功した理由を6つ挙げている。
 (1)教育を重視する宗教的・歴史的伝統、(2)中世以来、都市生活で蓄積された商工業の技術、(3)出稼ぎ的意識が少なく永住志向、(4)歴史的に育まれた倹約精神、(5)マージナルマン(周辺人)の視点、(6)祖国なき民が生み出した国際的な同族ネットワークーー――である。
 佐藤は、他の著書でもこの点について書いている。彼の見方の概要を書く。
 古来、ユダヤ教徒にとって無学は最も恥とされた。無学のためにユダヤ教の聖典を読めないことは罪であり、来世では永遠の罰が定められていると信じられてきた。そのため前近代のヨーロッパで、ユダヤ人の識字率は例外的に高かった。識字率の高さは、英語の習得を容易にした。
中世以来、多くのユダヤ人は商工業の中心である都市に暮し、商工業の技術を蓄積してきた。そのことが、20世紀のアメリカで急速に進展した都市化・産業化の流れに、うまく適応することを可能にした。
 ユダヤ人は他の移民と異なり、アメリカで是非とも成功する、という不退転の覚悟を秘めた永住志向の移民だった。そのことがユダヤ移民の企業家を成功に導いた。
 歴史的に贅沢な暮らしから排斥されてきたユダヤ人家庭では、倹約精神が育まれた。倹約精神は、初期の不動産投資や零細な事業を起こす際に大きな助けとなった。
 ユダヤ人は、歴史的に、社会の周辺部から中心部を批判的に観察する姿勢を身に着け、多くの人々が疑わない常識の裏側を見抜く能力を育んだ。このマージナルマンの視点が、ユダヤ人の創造力の源となった。
 祖国を失ったユダヤ人は、国家をあてにすることができなかった。国家の枠組みを超えた同族間の結びつき、世界中に張り巡らされた人的ネットワークを拠り所とするしかなかった。そうした体験から、近代国民国家の枠組みを越え、国際的な視野でビジネス・チャンスをとらえる視点が育まれた。
 こうしたことによって、ユダヤ人企業家はアメリカで成功し得たと、佐藤は説いている。具体的かつ網羅的な優れた分析だと思う。

 次回に続く。
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ユダヤ129~今日の米国ユダヤ人の経済力

2017-11-22 08:53:24 | ユダヤ的価値観
●今日の米国ユダヤ人の経済力

 イスラエルに強い影響を与え、また逆に強い影響を受けてもいるのが、衰退しつつある超大国アメリカである。次に、アメリカのユダヤ人について、その経済力・政治力・ロビー活動等について書く。
 アメリカは今日、イスラエル以外では最大のユダヤ人人口を持つ国家である。アメリカには、527.5万人(2010年現在)のユダヤ人がいる。彼らは、ユダヤ系アメリカ人である。ユダヤ系アメリカ人は、ドイツ系アメリカ人、アイルランド系アメリカ人、イタリア系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人等と同じく、エスニック・グループの一つである。
 ユダヤ人は全米の人口の1.7%にすぎないが、金融・報道・法曹・科学・教育・芸術等で優秀な能力を発揮している。アメリカのユダヤ人の6~7割は、経済的・文化的・通信広報的な中心であるニューヨークに住む。ニューヨークの人口の3~4割はユダヤ人といわれ、「ジューヨーク」というあだ名があるほどである。
 ユダヤ人といっても、彼らは多様である。1830年代以降を中心にドイツから来たユダヤ人と、19世紀後半以降にロシアや東欧から来たユダヤ人では、生活文化が異なっていた。ユダヤ教の信仰についても、正統派・超正統派に対して改革派がおり、その中間の保守派もいる。正統派・超正統派はユダヤ教の信仰を厳格に守っているが、改革派は資本主義社会に順応し、積極的に経済活動を行う。また広義のユダヤ人には、ユダヤ教徒だけでなく、キリスト教徒や唯物論者もいる。政治的には、民主党を支持するリベラルな者が多いが、共和党を支持する保守的な者もいる。古典的自由主義の自由至上主義者(リバータリアン)や新保守主義者(ネオ・コンサーバティスト)すなわちネオコンもいる。決してアメリカのユダヤ人は、一枚岩ではない。
 そうしたアメリカのユダヤ人が、今日アメリカの支配集団と融合し、アメリカという国家の政治・経済・外交・安全保障等に強い影響力を振るうようになっているのは、なんといっても彼らの経済的な能力の高さによる。また、彼らの経済能力の高さが、アメリカからユダヤ的価値観が世界に広がっている要因の一つになっている。
 20世紀前半にかけては、大英帝国が世界を席巻した。イギリスの資本主義及び帝国主義は、アングロ・サクソン=ユダヤ文化の産物であり、そこにはユダヤ的価値観が実現されていた。アングロ・サクソン=ユダヤ文化は、アメリカでさらに独自の要素を加えたアメリカ=ユダヤ文化として発達した。このアメリカ=ユダヤ文化の核心的要素に、ユダヤ的価値観がある。ヨーロッパの伝統から離れた新大陸の社会で、物質中心・金銭中心、現世志向、自己中心の考え方、対立・闘争の論理、自然を物質化し、自然の征服・支配を行う思想は、一層極端へと推し進められた。そして、第2次世界大戦後、超大国となったアメリカの文化が世界に広がった。同時にそこに融合しているユダヤ文化、そしてユダヤ的価値観が地球規模で浸透してきている。
 第2次世界大戦後、アメリカのユダヤ人の経済活動は、戦前・戦中の発展を土台として、大きく飛躍した。アメリカのユダヤ人の経済力については、佐藤唯行の著書『アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか』『アメリカ・ユダヤ人の経済力』等に詳しい。
 2006年(平成18年)現在、総人口の2%弱にすぎぬアメリカ・ユダヤ人が、全米トップ100人の大富豪の中で、32人を占めていた。ここでの大富豪は、個人資産25億ドル以上の者を言う。
 大富豪のリストに挙がったユダヤ人には、次の者たちがいる。マイケル・デル(デル社)、ラリー・エリソン(オラクル社)、スティーブン・バルマー(マイクロソフト社会長)、サーゲイ・ブリン(グーグル社)、サムナー・レッドストーン(ヴァイアコム社)、サミュエル・ニューハウス2世&ドナルド・ニューハウス(ニューハウス社)、ジョージ・ソロス(クオンタム・ファンド)、ロナルド・ペレルマン(レブロン社)、マイケル・ブルームバーグ(ブルームバーグL.P.)、ラルフ・ローレン(ポロ・ラルフ・ローレン社)、モーリス・グリンバーグ(AIG)、エドガー・ブロンフマン1世(シーグラム社)、レナード・ローダー(エスティ・ローダー社)、スチーブン・スピルバーグ(映画監督)等である。
 佐藤によると、現代アメリカ・ユダヤ人の資産形成において、第一の源泉となったのは、一般に想像されているように、金融、証券、為替取引によってではなく、不動産投資だった。今日のユダヤ人大富豪のうち約半分が不動産の開発・投資により資産を形成した。雑誌『フォーブス』は毎年世界の長者番付・企業番付を掲載しているが、歴史学者E・S・シャピロによると、1980年代前半のフォーブス番付に登場したすべてのユダヤ人を検証した結果、彼らのうち約半分が、第2次大戦後の不動産ブームで、不動産の開発・投資により資産を形成した。不動産業は、多額の設備投資が必要なく、卸業・小売業のように仕入れた商品の在庫を常に抱え込むリスクを負う必要がない。それゆえ、ユダヤ人は事業がしやすい。
 次にユダヤ人の大富豪層が資産形成を行っていくうえで、不動産事業に次ぐ重要な事業となったのは、マスメディアだった。
 ユダヤ人にとって情報は、自らの安全保障に不可欠の要素である。ユダヤ人は情報そのものを貴重な財産と見るから、積極的にメディア産業に乗り出した。
 ネイサン・ロスチャイルドは、通信網のない19世紀初頭の時代に伝書鳩と飛脚を駆使して、為替相場の仕手戦に勝利を勝ち取った。19世紀の中ごろまでに、ユダヤ人は新聞社などの通信産業に進出していた。ドイツ系ユダヤ人ポール・ジュリアス・ロイターは、イギリスで1849年にロイター通信社(現トムソン・ロイター)を設立し、やがて全世界に広がる通信網を作り上げた。
 アメリカにおいては、1896年にニューヨーク・タイムズ(NYT)をユダヤ人アドルフ・オックスが買収した。オックスの死後は、娘婿のアーサー・ヘイズ・サルツバーガーとその子孫により、代々所有され続けている。NYTは、米国民の中で強い影響力を持つ者たちが主要な情報源として読む新聞であるため、アメリカで最も影響力を持つ新聞と評価されている。論調はリベラルであり、特にユダヤ人リベラル派の代弁紙となっている。読者の3分の1はユダヤ人が占めているとされる。
 ほかにワシントンポスト(WP)、ウォールストリートジャーナル(WJ)、ニューヨークポスト(NP)等が、ユダヤ人の築いた有力紙である。政治経済の雑誌も、タイム(TM)、ニューズウィーク(NW)、USニューズ・アンド・ワールド・リポート(USNWR)の三大高級誌やフォーチュン等、ユダヤ人が創業したり、所有したりしてきた紙の媒体は数多くある。こうした媒体を通じて、情報や主張を流通させることで、ユダヤ人の指導層はアメリカの大衆を誘導し、世論を操作することを可能にしている。
 主に趣味や娯楽に関わる大衆向けのメディアでも、ユダヤ人が目立つ。1985年に『フォーブス』が発表した長者番付によると、ユダヤ人大富豪20傑のうち、首位はニューハウス兄弟だった。ニューハウス社の創業者サミュエル・ニューハウスは、ロシア系ユダヤ移民2世で、大衆紙の帝王となった。雑誌にも手を広げ、ニューハウス社は『ヴォーグ』『グラマー』『マドモアゼル』『ハウス・アンド・ガーデン』を含む一流雑誌を30近くも所有する。
 マスメディアは、20世紀前半から電波の時代に入った。ここでもユダヤ人の活躍が目覚ましい。アメリカでは、ラジオ・ネットワークが組織された1920年代後半から、CBSとNBCの2社が電波を支配した。CBSの創業者は、ユダヤ人ウィリアム・ペイリーで、創業社主として所有・経営の両面から同社を支配してきた。NBCはRCAの子会社だった。RCAは、エレクトロニクス事業を中心とする企業である。その子会社のNBCは、ロシア系ユダヤ人のデイヴィッド・サーノフが育て上げた。サーノフは「テレビ放送の父」と呼ばれる。
 アメリカでは、CBS、NBCにABCを加えて、三大テレビ・ネットワークと呼ばれてきた。ABCは、1943年にNBCのラジオ・ネットワークから独立する形で創立された。創業者は、エドワード・ノーブルらで、1948年からテレビ放送を開始した。こうしたテレビ局のニュース解説者の大半が、親イスラエル的な発言をしている。
 現在は三大ネットワークに、FOXを加えて、四大ネットワークということが多い。FOXは、1996年にニューズ・コーポレーションが設立したニュース専門放送局である。ユダヤ人のメディア王ルパート・マ―ドィックが買収したことで、ユダヤ人所有のメディアとなった。オーストラリア生まれのマードックは、猛烈な勢いでイギリスのマスメディアを買収し、さらにアメリカに進出した。有力な新聞・雑誌を押さえ、FOXも買収した。
 マードックの背後にはロスチャイルド家がいる。彼とロスチャイルド家を結ぶ人物にアーウィン・ステルザーがいる。ステルザーは、ニューヨークで投資銀行と金融経済顧問をかねるロスチャイルド社の代表である。彼が経営するロスチャイルド社の親会社は、世界金融界の頂点に立つロンドン・ロスチャイルド銀行である。ステルザーは、マードックの「最も重要な資金面の後ろ盾」となっていると広瀬隆は言う。
 マードックのメディア買収は、ロスチャイルド家の対米戦略の一環と考えられる。メディアを使って、自己に有利になるように、アメリカの世論に影響を与えることができるからである。FOXは保守的で共和党寄りの論調が特徴だが、2010年に英ガーディアン社が行った米国の世論調査では、回答者の過半数が最も信頼できるニュース放送網としてFOXニュースを挙げた。2位はCNNで39%だった。
 アメリカの主要なマスメディアには、ユダヤ人が多く勤務してもいる。1999年の調査によると、3大高級紙(NYT、WP、WJ)、三大高級誌(TM、NW、USNWR)、当時の3大テレビ・ネットワーク(CBS、NBC、ABC)で働く全従業員の27%が、ユダヤ人もしくはユダヤ系の出自で占められていた。さらに主要メディアの幹部クラスになると、ユダヤ人の占有率は一段と高まる。例えば、1979年に、ABCのプロデューサーとエディターは、実に58%がユダヤ人だったとされる。こうした傾向は、現在まで変わっていないと見られる。アメリカのユダヤ人は、主要なメディアを所有し、またそのメディアを通じて、自分たちのものの見方や価値観をアメリカの大衆に、さらに世界に発信しているのである。

 次回に続く。
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中国:習思想を党規約に明記、独裁体制の確立へ1

2017-11-21 09:33:03 | 国際関係
●習近平主席の指導体制が確立

 中国共産党の第19回党大会は10月24日、習近平総書記兼国家主席の名前を冠した思想を「行動指針」として党規約に盛り込む改正案を承認して閉幕した。
 毛沢東思想、鄧小平理論と並んで新たな行動指針とされたものを、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」という。いわば「習思想」である。
 習思想が党規約に明記されたことで、習近平は毛沢東、鄧小平に次ぐ権威を確立した。これによって、従来の集団指導体制を脱し、習核心の独裁体制に踏み出したと見られる。権力集中が格段と進むことが、確実である。
 習主席は、閉幕演説で、党大会の決定は「中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に重要な役割を果たす」と述べた。また、21世紀半ばまでに米軍に比肩する「世界一流の軍隊」を築き、米国と並ぶ「強国」を建設するという目標を掲げた。そして、「中華民族は世界の諸民族のなかにそびえ立つだろう」と言う展望を示し、「人類運命共同体」の構築を提唱した。
 習主席は、長期的な指導体制を固め、自分が中心となって、今世紀半ばまでに中国が世界を支配するという野望を打ち出したわけである。

●党規約を大幅に改正
 
 従来、中国共産党の規約には、党の基本方針を定めた総則に、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論が行動指針として規定されていた。このたび、これらに加えて習思想が行動指針として明記された。指導者の任期中に、その思想や理論が行動指針とされたのは、毛沢東以来である。その点では、習近平は鄧小平を越え、毛沢東と並んだと見ることもできる。
 習思想は、党があらゆる面で指導し、社会主義の核心的価値を堅持するという思想である。新たな党規約では、従来、党の指導は「主に政治、思想と組織の指導」だとしていた表現を、「『党政軍民学』と『東西南北中』の一切を党が指導する」と書き換え、党の統制強化が打ち出された。その方針のもと、改正箇所は100カ所以上に及ぶと伝えられる。
 改正によって、党の人民解放軍などに対する「指導」という文言の前に「絶対的な」との表現が追加された。また「習近平の強軍思想を貫徹する」との文言も加えられた。
 もともと権力基盤の弱かった習近平は、軍との結びつきを強め、軍を背景にして権力を強化してきた。中国では、党が軍の上に立つ。また軍は、人民解放軍という名称ではあるが、国家の軍ではなく、党の軍である。上記の改正は、党が軍の上に立つことを強調している反面で、新たな習指導体制では、従来以上に軍の存在感が増すことを示唆しているだろう。
 新たな党規約は、「反腐敗闘争のさらなる推進」も掲げた。習近平は、最高権力者の地位に就いた5年前から、腐敗撲滅という名目で、江沢民、胡錦濤の両長老に連なる政敵を排除してきた。これをさらに徹底する方針と理解できる。
 新たな党規約は、党が実現すべき目標として習主席が掲げる「中華民族の偉大な復興という中国の夢」を明記した。習主席は、共産党大会の閉幕演説で、党大会の決定は、この「夢の実現に重要な役割を果たす」と自賛した。この「中国の夢」を追求する戦略の一部が、「一帯一路」構想である。大陸では中国からヨーロッパまでをつなぎ、海洋では東シナ海からインド洋、地中海までをつなぐ。陸の「一帯」と海の「一路」を同時に進め、中国の覇権を拡大する構想である。
 これらの規約改正を含む習思想の主な柱は、経済、政治、文化、社会、エコロジー文明の建設を総合的に進める「五位一体」と、「小康社会の建設」「改革の深化」「法による政治」「党の綱紀粛正」を全面的に進める「四つの全面」などとなっている。これらは胡錦濤前指導部時代に出された理念を軸にしたもので、習思想の特徴は、党の統制強化による富国強兵・覇権拡大にある。
 私は、2006年に掲示した拙稿「現代中国をどう見るか~ファシズム的共産主義の脅威」に、中国の共産主義は「ファシズム的共産主義」に変貌しつつあると書いた・

 「社会主義的全体主義が、私有財産制を認め、資本主義的要素を多く取り入れれば、資本主義的全体主義に近づく。資本主義的全体主義をファシズムと言うならば、現在の中国は、共産主義がファシズムに変質しつつあると見られる。とりわけ、対外戦略は、ナチス・ドイツに似た思想と行動を表している。
 現在の中国は、かつてのソ連以上に、もっとナチス・ドイツに似てきているのである。『社会主義市場経済』という原理的に矛盾した言い方にならえば、このファシズム化しつつある共産主義を、『ファシズム的共産主義』と呼ぶことが出来るだろう。ファシズムそのものではない。マルクス=レーニン主義を掲げている以上、いかに変質してもなお共産主義である」と。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion07.htm
 目次から10へ

 このような私の見方に立つと、この度打ち出された習思想は、中国のファシズム的共産主義を明確な戦略のもとにより鮮明なものにしたものである。

 次回に続く。
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ユダヤ128~21世紀のロスチャイルド家(続き)

2017-11-19 08:44:28 | ユダヤ的価値観
●21世紀のロスチャイルド家(続き)

 今日の放射性物質の利用は、マリ・キュリーがラジウムを発見したことに始まる。そのラジウムの製造所を、いち早くパリ家のアンリ・ロスチャイルドが造った。
 大戦中、フランスがナチス・ドイツに占領されると、シャルル・ドゴール将軍はロンドンに逃れた。ドゴールは、イギリスのチャーチル同様、ロスチャイルド家に忠実だった。自由フランス軍やレジスタンスを指揮して、ドイツからフランスを解放すると、原子力庁を創設し、マリ・キュリーの息子フレデリック・ジョリオ=キュリーを初代長官とした。原子力庁は、ロスチャイルド家のウラン支配を前提に創られたものだった。公的な機関でありながら、「幹部には自由な活動が認められる」と政令に定めていた。ドゴールとともに原子力開発を進めたのが、ユダヤ人の死の商人マルセル・ダッソーと、パリ家の5代目当主ギイ・ロスチャイルドだった。
 原子力庁の実働部隊のリーダーには、ベラルトン・ゴールドシュミットが任命された。ゴールドシュミット家は、ドイツ・フランクフルトのロスチャイルド家と婚姻関係を結ぶことによって、同家の後を継いでいる。ベラルトンは、パリのキュリー研究所の出身で、米国のマンハッタン計画に関与した。またアンソニー・ロスチャイルドがカナダのウラン鉱山の土地買収を行う際にも貢献した。ベラルトンは、原子力庁の化学部門を担当し、ウランの精製と濃縮などを指揮した。こうして、今日のヨーロッパ原子力産業の骨格がほとんどロスチャイルド家の手でつくられた。フランスは、原子力発電の最先端の技術を持ち、日本と全ヨーロッパから放射性廃棄物を集め、その処理を行っている。
 アメリカもウランの主な資源国である。アメリカの西部では、1950年代からユタ州を中心に広大なウラン鉱が次々と発見され、カリフォルニア、コロラド、ネバタなどの各州でウランが掘り出された。そこにユタ・インターナショナルを根城とするアメリカのウラン・カルテルが誕生した。このカルテルは、銅山業者のケネコットと非鉄金属で世界一のアサルコが支配するものである。これらの2社の役員を占めてきたのは、ロスチャイルド家グループの鉱山王グッケンハイム家だった。グッケンハイム家は、アメリカ・ロスチャイルド家のヴィクター・ロスチャイルドの娘アイリーン・ロスチャイルドと婚姻関係を結んでいる。それゆえ、アメリカのウラン・カルテルもロスチャイルド家の傘下にある。
 こうして、ロスチャイルド家とそのグループは、世界のウランの大部分を掌中にしている。そのことは、多くの国は核兵器の製造や原子力発電所の建設・維持を行うために、ロスチャイルド家とそのグループの意思に沿わねばならないことを意味する。なお、ロスチャイルド家の最大のライバルと見られるロックフェラー家は、ウラン関連では、原子力発電所の建設に深く関わっている。
 ところで、アメリカのビル・クリントン政権で副大統領だったアル・ゴアは、ウラン産業と関係のある人物である。父親が旧ソ連に利権を持つユダヤ人の政商アーマンド・ハマーの企業であるオクシデンタル石油の副社長であり、ウラン鉱山を所有する子会社オクシデンタル・ミネラルズの経営に関与していたことによる。ゴアは2000年の米国大統領選挙でブッシュ子に敗れた後、地球環境保全を訴える著書『不都合な真実』を書いて、世界的にその主張が知られた。映画にもなった。彼の地球環境保全運動は、単なるエコロジーではなく、環境保全ビジネスである。また、彼は、ロスチャイルド家に連なる人物である。娘カレナは、ロスチャイルド家の米国代理人ジェイコブ・シフの曾孫アンドリュー・N・シフと結婚している。
 この項目の結びに、ロスチャイルド家とロックフェラー家の財力・勢力の比較について再度、述べておきたい。両家の関係について、ロスチャイルド家が今も圧倒的な力を持つという見方と、ロスチャイルド家は衰退し、今やロックフェラー家が大きく優勢だという見方がある。だが、比較するには、両家の資産が公開されていなければならないが、そういうデータは見いだせない。それゆえ、どちらの見方も主観的な意見にとどまっている。正確なデータがない以上、断定的な主張はできない。ただし、私は、次のことは言えると思う。一つは、第2次世界大戦後、エネルギーの主力が石油になったことで、もともと石油産業が基盤のロックフェラー家が大きく成長したこと。またロスチャイルド家の拠って立つイギリスが凋落し、ロックフェラー家の拠って立つアメリカが超大国になったこと。これらによって、相対的にロスチャイルド家が減勢し、ロックフェラー家が増勢していると言えるだろう。また、ロスチャイルド家を中心としたユダヤ系金融資本は、その資金力を駆使して巻き返しを進めてきていると見られる。
 ロスチャイルド家とロックフェラー家という両家の関係は、全くの対立関係ではなく、様々な分野で競争しつつ、連携もしているという関係だろう。その連携の部分とは、アメリカ=イスラエル連合であり、国際連合であり、アメリカの連邦準備制度であり、国際通貨基金であり、またアメリカの外交問題評議会であり、ビルダーバーグ・クラブ等であり、それらを通じた世界統一市場、世界統一政府の建設を目指す運動である。

 次回に続く。
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平成6年の危機~日本は混迷、米朝は対決寸前

2017-11-18 08:54:02 | 時事
 平成6年(1994年)4月、突然、細川護煕首相が退陣しました。殿様が政治に嫌気をさして、政権を投げ出したーーというのが通説ですが、日本新党の旗揚げから細川氏の近くにいた現都知事・小池百合子氏は「細川首相退陣の引き金は『北朝鮮有事』だった」と述べていました。

 麗澤大学教授の八木秀次氏が、このたびあらためて小池氏の見解に注目しています。

 「1994年2月、日米包括協議のために訪米していた細川首相は、米国政府高官からある懸念を告げられた。当時も北朝鮮情勢は『第1次核危機』として緊迫化していたが、朝鮮半島情勢に関する情報を日本と共有するに当たって、細川政権の武村正義官房長官から北朝鮮に情報が流れるのではないかという不安があるというのだ。事実上の更迭を求めるものだった。
 細川首相は帰国後、内閣改造の意向を表明したが、武村氏と社会党の村山富市委員長の猛烈な抵抗にあう。結局、同年4月、細川首相は自ら退陣することとなった。
 この時、細川首相は『北朝鮮が暴発すれば、今の体制では何もできない。ここは私が身を捨てることで、社会党を斬らなければダメなんです。それで地殻変動を起こすしかないんです』と語ったという。」
http://www.sankei.com/politi…/…/171110/plt1711100001-n1.html

 おそらくそういうことがあったのでしょう。

 細川内閣は、非自民連立政権でした。事のきっかけは、平成5年(1993)7月の衆議院総選挙で、自民党は単独過半数に達しなかったことです。55年体制の成立後、自民党は、38年目にして初めて野に下ったのです。ここで、新生党・新党さきがけ・日本新党・社会党・公明党等の8党による非自民連立政権が誕生しました。当時日本新党の代表だった細川氏を首相に担いで、非自民連立政権を実現したのは、小沢一郎氏でした。
 小沢氏は平成元年(1989)、47歳にして自民党の幹事長になり、田中角栄・金丸信の秘蔵っ子として、総裁候補にまで挙がったものの、金丸失脚後、経世会の跡目争いに敗れて自民党を離党し、新生党を結成しました。この時、反小沢の急先鋒だったのが、野中広務氏です。小沢氏は、自民党の崩壊を目指して野党を結集し、非自民連立政権を実現しました。反自民であれば社会党とでも公明党とでも組むというのが、小沢氏の手法でした。

 平成6年(1994年)4月、細川首相が突然の退陣。その後の展開を見るとーー後継首相は小沢氏の盟友、新生党の羽田孜氏となりました。しかし、与党第一党の社会党が連立政権から離脱したため、羽田内閣は少数与党政権に転落し、わずか2ヶ月で総辞職しました。同年6月、自社さ連立による村山内閣が誕生。今度は、自民党が政権返り咲きのために社会党と結託しました。社会党が再び与党になり、左翼政党の委員長が首相になるというとんでもない展開でした。自民党の最高実力者となっていた野中氏は、小沢氏に対抗して社会党と組むという無節操な術策を取ったのです。そのため、自民党は結党の精神を失い、権力の座を維持すること自体を目的とする政治集団に堕落しました。日本の混迷は、底知れないものとなっていました。

 しかも、この時日本の置かれていた状況は、現在(2017年11月)の北朝鮮をめぐる危機に比較されるべき、厳しい状況だったのです。
 平成6年(1994年)当時、アメリカは、ビル・クリントン政権でした。北朝鮮は、昭和63年(1988年)から核開発を行っていた模様で、平成5年(1993年)国際原子力機関(IAEA)による核査察実施を拒否し、核拡散防止条約(NPT)からの離脱を宣言しました。もし国連安保理が制裁に踏み切るなら「戦争行為」と見なすと通告してきました。
 こうしたなか、平成6年2月クリントン=細川日米首脳会談が行われ、北朝鮮有事が協議されました。小池氏が事情を伝えているところです。この教義で、日本はもし朝鮮半島有事になったらなにもできないことが明らかにました。ここで細川首相が4月に退陣したのです。

 日本の政権が揺れ動くなかで、5月、北朝鮮の原子炉から8千本の使用済み燃料棒が取り出されました。そこに含まれるプルトニウムは、5~6個の原爆を製造できる量に相当しました。これに対し、クリントン大統領は、国連安保理で北朝鮮を制裁する動議を出しましたが、北朝鮮は強硬姿勢を変えず、「ソウルを火の海にする」と恫喝してきました。
 クリントンは6月、5万人の米軍兵力と400機の戦闘機を韓国に送り込む計画に着手しました。当時の高官たちは「クリントンは寧辺の核施設を空爆することも辞さない構えだった」と証言しています。第2次朝鮮戦争の危機が高まりました。こういう状況で、わが国では、同月村山を首班とする自社さ連立内閣が樹立されたのですから、当時の日本人の平和ボケは、実に深刻な状態でした。

 クリントンは北朝鮮に圧力をかける一方で、カーター元大統領を北朝鮮に派遣し、交渉を行いました。その話し合いをもとに米朝協議が行われ、戦争の危機は回避されました。
 この年10月、北の核開発の凍結に関する「米朝枠組み合意」が締結されました。しかし、北朝鮮はその後、極秘に核開発を進めていたのです。平成8年(1996年)の時点で、北朝鮮はプルトニウム使用の核爆弾5個を保有していたことが、北の政府高官の証言でわかりました。そして、北の核開発は今日のレベルにまで進んできたのです。

 これはイフの話ですが、当時日本がもっとしっかりしていたらーー北朝鮮への情報漏えい等ーー米国が北朝鮮に侵攻し、核開発施設を叩き潰し、体制に変化をもたらしたかもしれないと思います。今日のような水準にまで北朝鮮の軍事力増強を許してしまってから対応するのは、23年前に比べて、何倍何十倍にも困難な課題になっていると思います。

 補足として、精神科学的な視点で見ると、平成6年4~5月にかけて日本の政治の動揺と軌を一にしたように重大な事件が発生しました。その事件の余波が続くなか、翌年1月関西で阪神淡路大震災、3月東京で地下鉄サリン事件が起こりました。戦後50年の年でした。
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