ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

憲法第9条は改正すべし2

2007-08-31 10:10:52 | 憲法
●前文は、英文草案の翻訳・微修正

 前回、憲法前文の内容を一部引用した。現行憲法は、基本的にGHQが英文で作った草案を英訳し、GHQの検閲・管理のもとに若干の修正を加えたものである。だから、立法者の意思を知るには、現行憲法の英文とマッカーサー草案を比較する必要がある。
 繰り返しの引用になるが、前文には、日本国憲法は、①「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」して制定され、日本国民は、②「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚」し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とし、また、③「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」と書かれている。

 これらの部分につき、現行憲法の英文をマッカーサー草案と比較してみよう。比較のために、番号を振っておいた。

 マッカーサーは、GHQのアメリカ人に、日本国民に成りすませ、日本国民を詐称して、英文で草案を書かせた。それを日本の外務官僚に和訳させた。その翻訳草案を日本の国会に審議させ、そこで出た修正案は、英訳させたものを読んで承認したのである。

①「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」

マッカーサー草案
 We, the Japanese People, … resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, …

現行憲法の英文
 We, the Japanese people … resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, ….

 一箇所大文字を小文字にした以外、完全に一致する。

②「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚」し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

マッカーサー草案
 Desiring peace for all time and fully conscious of the high ideals controlling human relationship now stirring mankind, we have determined to rely for our security and survival upon the justice and good faith of the peace-loving peoples of the world.

現行憲法の英文
 We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world.

 主語を「日本国民」と明示し、いくつかの単語を換えている。for our security and survival が preserve our security and existence となり、rely upon が trust in となっているが、趣旨は同じである。修正は、意味をより強くしている。

③「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」

マッカーサー草案
 We hold that no people is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all peoples who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other peoples.

現行憲法の英文
 We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations.

 hold が believe、people が nationに変わっているだけで、趣旨は完全に一致する。

 現行憲法は、GHQによって押し付けられたものであり、真に日本人が作った憲法ではない。その理由は、上記の対照だけで十分明らかだろう。納得の行かない人は、同じやり方で、憲法の全文を比較して見ると良い。
 こうして作られた前文との関係の下、第2章「戦争の放棄」に第9条が、GHQの意思と管理と承認によって定められている。

参考資料
・憲法の原文・英文等を掲載したサイト
http://homepage3.nifty.com/constitution/materials.html

憲法第9条は改正すべし1

2007-08-30 11:15:00 | 憲法
 8月15日に放送されたNHKスペシャル「日本の、これから」は、憲法第9条を主題としたものだった。
安倍首相は、憲法改正を政策目標に掲げ、国民投票法を制定した。国民投票法は、憲法改正を3年間は凍結する内容になっている。その期間に、安倍首相は、集団的自衛権の行使について、従来の政府解釈を見直し、一定の枠内での行使を可能とすることを図っている。焦点は、来る11月1日に期限が来るテロ対策特別措置法を延長するか、終了するかだ。
 憲法、国防、集団的自衛権は、日本のこれからにとって極めて重要な案件であり、国民が真剣に考え、議論すべき事柄となっている。こうした問題状況において、今回のNHKの番組は、非常にタイムリーな企画だったと思う。
 
●私の基本的な考え

 番組の中で、私は市民の一人として、大意次のような発言をした。
 「憲法第9条は、改正する必要がある。第9条は、『戦争の放棄』という題名の章に置かれた条項だが、憲法に定めるべきものは安全保障である。現在の憲法は、国家の主権を制限する内容となっているから、これを改正しなければならない」
 「なぜ日本は、アメリカのアフガン侵攻やイラク戦争で、付き従わざるを得ないのか。わが国の憲法は、自力で国を守るだけのものを持てないようになっている。国民は、自らを守る技術も訓練も持っていない。いま他国に攻められたら、若者の7割は『逃げる』と答えている。そうなった時、女性や子供や高齢者を誰が守るのか」
 「私は、憲法を改正して、国防を充実させ、国民が自らを守る体制を整えて、初めてアメリカにNoも言える、政策に選択肢を持てるようになる、と思う」
 「アメリカ軍を矛(ほこ)とし、自衛隊を盾とする仕組みになっていることに問題がある。小林よしのりさんが北朝鮮の問題があるから、アフガンやイラクに出て行かざるを得ないと言った。北朝鮮がミサイルを撃てば、10分で東京に着弾する。そういう国際社会の厳しい現実をみていかねばならない」
 「自分の国のありようを自分たちの意思で決め、自分の国を自分たちで守り、そのうえで国際社会において責任ある役割を果す。そのために、日本人の精神を大切にしたい」

 こららは、討論の流れの中で発言したものであり、限られた時間で述べたことだが、こうした発言は、私の憲法及び安全保障に関する考えに基づくものである。

 私は、現行憲法は、GHQによって押し付けられたものであり、真に日本人が作った憲法ではないと考える。戦後、占領期間を経て、独立と主権を回復した後、日本国民は、この憲法を改正し、日本人自らの手で自国の憲法をつくらねばならなかったと考える。それが、60年以上もの間、放置されてきたことに、わが国の根本問題がある。国家、社会、企業。地域、家庭等に現れている様々な危機の根本に、憲法の影響がある。
 このように考える私にとって、憲法の問題は、第9条に限らない。前文からはじまって、日本人自身が全体を徹底的に検討し、新しい日本の憲法をつくらなければならないからである。

 番組の第1部冒頭で簡単に述べたが、第9条は、「戦争の放棄」という題名の章に置かれた条項である。だが、憲法に定めるべきものは安全保障である。安全保障の内容として、戦争や戦力に関する規定を置くのでなくてはならない。新憲法には、現在の「戦争の放棄」に替わって、「安全保障」という章を設け、独立主権国家の安全保障に必要なことを定める必要がある。最も重要なことは、国家の自然権としての自衛権を確認し、国民が自ら自国を守る意思を示し、そのうえで、国際社会においてわが国はどうあろうとするかを、明らかにすることである。これが私の憲法及び安全保障に関する基本的な考えである。
 このような考えの下に、これから、憲法、国防、集団的自衛権について考えてみたい。まず憲法第9条について、私見を述べたい。

●第9条を論じるなら前文から

 今回のNHKの番組は、焦点を第9条に絞っていた。第9条は、前文の内容と深い関係がある。番組製作者は、そこまで問題を掘り下げ、論点を広げることを制していた。しかし、前文から論じなければ、本当は第9条を論じられない。

 前文には、日本国憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」して制定され、日本国民は、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚」し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書かれている。
 また、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」と書かれている。

 こうした内容を含む前文を起案したのは、日本人ではない。GHQ民生局の一員であるアメリカ軍人ハッシー海軍中佐である。

 いま要約した前半の趣旨を具体化するために、現行憲法は、第2章「戦争の放棄」に第9条を定めているものである。前文は、わが国が第2次世界大戦において、「政府の行為」によって「戦争の惨禍」を起こした侵略国であると認め、「平和を愛する諸国民」つまり連合国の「公正と信義に信頼」して、「われらの安全と生存を保持しようと決意した」として、占領下の従属・被保護を認める内容となっている。
 同時に、注目すべきは、後半の引用で、「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする」とある部分である。ここには、わが国が独立回復後は、主権を維持し、他国と対等の関係に立つことを目指しうることが盛られている。当然そこには、独立主権国家として、自国の軍備をどうするかという課題を孕んでいたわけである。

 先のNHKの番組は、第9条に論点を絞り、前文と第9条の関係へと議論を掘り下げようとしなかった。そのため、内容の浅いものとなっていた。

 次回に続く。

脱少子化を語る7

2007-08-28 08:51:28 | 少子化
司会: 細川さん、精神の部分がいかに大切かというところを教育も含めてお話しいただきたい。 

細川: 少子化に限って言うと、これを改善するにはもっと根本的なことから日本人の考え方を変えていかなくてはいけないと強く思う。
 あまりに個人中心の考えに偏り過ぎてしまって、自分さえ楽しく満足できる生活ができればいいというような考えになっているのではないかと思うわけだ。家族も夫は夫、妻は妻、家族それぞれが個人であって個性を大切にする方に行き過ぎてしまうと個人個人がバラバラの世の中になってしまうのではないか。
 自分が受け継いできた命を次の世代に受け渡していく。そこに自分の役割があることを考える必要があると思う。
 先祖があって親があり、親があって自分がある。自分は次に子供を生み育て子孫の発展・繁栄を願っていくという人間としての根本的な考え方を取り戻すことが必要ではないか。
 若い世代の方々にいろいろな場で語って、理解してもらうことが大事だと思う。
 今非常に深刻に思っているのはしつけだ。若い女性の方は家庭から出て働く方が多い。しかし親が家庭にいて、子供に十分接する時間がないとしつけはうまくいなかい。しっかりとした精神、ものの考え方、社会のルール、人間としての誇り、そういうものを持った子供を育てていかなかったら、世の中は良くならない。
 産む喜び、育てる喜びとともに子供たちにしつけをして、ちゃんと自分の足で自立して生きていけるしっかりした心を持った子供を育てていく。そういうことも併せて考えていただけたらありがたいと思う。

司会: いろいろなことが含まれている中で産む喜びにつながってくるのだなということが分かってきたが、江藤先生はどのようにお考えになるか。

江藤: 一人ひとりの気持ちの中にその答えはあるかなというのをすごく感じた。何か自分が何でもできてしまうという感覚を間違って持っているような感じがするので、自分の力を超える何かに自分は生かされているという感覚だとか感謝する気持ちがすごく大切になってきて、まずは自分の周りから、そこから日本は良くなっていくのではないかと思う。

司会: 萩原先生はいかがか。これまで、いろいろなことが社会的にリンクして、精神的なことも非常に大切な中で家庭出産に結びついているのだと先生方がおっしゃっているが。

萩原: あえて言うと、教育の側面をしっかりやりたいと思う。教育再生の中で親教育というと、そんなことはほっといてくれという話になる。ところが私自身も含めて親教育というものは社会に助けてもらった面もあるのだ。
 社会教育の一環としてお父さんこうしたらいいのよ、お母さんこうしたらいいのよということを教えた方がいい。愛情をかけておくと子供にそれが伝わってその子はお父さん、お母さんを尊敬する。その辺を私はぜひ国としてやっていきたい。そういう環境を保育園、幼稚園、小学校そして医療現場、福祉現場を通じてやっていきたいと思う。

司会: 次に佐々木先生はいかがか。

佐々木: 今私が思っていることは、人のために一個くらいいいことを、毎日のように積み重ねれば、それで少しくらいは私も変われるかなと、それで日本も少しくらい良くなるかなと、今はそのように思っている。

司会: それでは主催者の立場から石村さん、どうぞ。

石村: 立派なお話を聞かせていただき本当にその通りだと思った。ぜひ皆さん家庭出産を目指せるように自分の体調を整えていただきたいと思う。それには家族と仲良くし、調和を保って良い家庭をつくっていただきたいと思う。

司会: またこういう機会をつくりまして、いろいろな方々と討議を重ねてまいりたいと思う。皆さん、この国を良くするためにご協力をお願いします。
 本日はありがとうございました。(了)


脱少子化を語る6

2007-08-27 10:24:27 | 少子化
司会: 佐々木先生も実はこういうお考えをお持ちで、調和ということが少子化を切り抜けられるのかもしれないなというお話をされていたが。

佐々木: 今の世の中は、人のことはどうでもいい、自分のことだけでいいということがまかり通っている。すべての根本にはそういうことを直さなくては駄目だと思っている。
 去年のこのフォーラムのときに、祖先に対して手を合わせることをしてはどうかと私は言った。
 祖先に対して手を合わせるという敬虔な心があれば家庭が変わるだろうと思う。
 敬虔な心がある人たちはするけれども、家族中、全く敬虔な心がない人たちは、いくらお盆になっても遊びに行くだけで、手を合わせることはしない。
 ではどうすればいいのかということだけれども、この会のような草の根的にやっているいろいろな集まりをたくさん開いて、そこでみんなが教わったことをうちに持って帰って、周りに広げればいいのではないかと思っている。 

司会: 今の世の中がすべてお金の価値観で動いてしまっていて、人格のバランスが崩れてしまっている。
 戦後教育の影響もあるだろうけれども、そういったことが少子化に限らず、他にも考えられないような事件に結びついているような気がしてならない。
 ここで石村さんにお聞きしたいが、文化的なものや自然のことが必要だと、こういったことがあると健やかな子供が産まれてくるというお話を聞いたが、実体験としてどうか。

石村: とても大事なことだと思う。佐々木先生も人格者ですから、家庭でお産をしたいという方をよほどのことがない限りは許可してくださる。
 うちの助産所は最初は36週からでもいいでしょうと言っていたが、すぐには体を治せないのでだんだん早くしまして、今は28週に下げた。
 なぜそれをするかというと、だんなさんが頻繁に一緒に検診をしてくださると必ずだんなさんがいるときにお産になるし、安産になる。男の人の不安がないということがとても大事なことだと思う。
 中には出張ですなんていう間に陣痛が始まっちゃう人がいるが、行ってきてくださいと言う。
 「大丈夫です。だんなさんがいないうちは産まれませんよ」って言うと本当に産まれない。それで出産までに4日くらいかかる。四日もかかると私も体力の限界だ。
 私の体力の限界はあなたの病院行きよってこのごろは言う。そのときに「最後だけど神様に祈ってみる」と言う。
 私がお参りさせてもらっている神霊教のお祈りをさせてもらいましょうというと、大概だんなさんが一緒にしてくれる。すると、皆さんそれからすぐに産まれる。子供のことを思って神様に祈るということがどんなに大事なことなのかはいつも体験することだ。
 日本は遠い昔から産婆さんが家族を励まし、常にそばに付き添ってお産をしてきた。だから家族の絆は強いし、調和の精神はたっぷり、このことをいつの間にか忘れてしまっている。 

司会: 皆さんのお話を聞いていると、いかに精神的なことが重要なのかが分かる。
 3月に名古屋で「明けゆく世界フォーラム」があって、アサヒビール名誉顧問の中條高先生、元台湾総統府国策顧問の金美齢先生、細川さんに登壇していただいた。
 これまで物質科学の文明と精神科学の文明が発達してきたが、物質科学の方が発展し続けて精神文化をなくしてしまい、そのバランスが崩れてしまったから、このような時代に突入しているというお話だった。
 少子化の問題もそうだが、家族の中でも人は人、自分は自分という形になっている結果から、いろいろなことが起きているのかなと思う。
 子供の問題にしてもみんなの子供というような意識がない中で、人の子供だからいいだろうと、うちの子供はかわいい、かわいいと育てて、そういった教育の問題とかがすべてリンクして今の日本が出来上がっていると思う。

 次回に続く。


脱少子化を語る5

2007-08-26 16:41:57 | 少子化
司会: 佐々木先生は助産婦石村の嘱託医をされているそうだが、医者の立場から見てどう感じているか。 

佐々木: 私は嘱託医である一方で、病院にも勤めているので両方の立場がある。家庭出産をするか、しないかというのは言ってみればポリシーの差のようなところがある。だからうまくいけば、家庭出産は非常にメリットが大きいと思う。
 石村さんも言っていたが、この人は安産しそうかどうかは分かる。一言で言うと、いい人は必ずいいお産をする。
 お産というのは人生の集大成のようなところがあって、それまで積み重ねてきたすべてが出る。今まで楽な生活ばかり送ってきた人が、分娩のときだけ、自然のお産をしたいというのは虫がよすぎると思う。

司会: 医学者の立場から、人格者でないといいお産はできないという言葉を聞けるとは思わなかった。江藤先生このお話を聞いていかがか。

江藤: 意外にも佐々木先生もそう思っていたのだと驚いた。(笑)
 前に経験したことで、だいたい子宮は十センチで全開大といわれるが、8センチのところで「もう私は駄目だ、陣痛に耐えられない」といった方が4センチくらいまで縮んでしまったことがあった。
 お母さんの「産まなくちゃ、私が産むぞ」という強い気持ちがすごく大切だなと思う。
 それと、その気持ちを支えるのはお父さんだ。「大丈夫、大丈夫」といって太っ腹に構えているお父さんの存在がとても大切だと思う。

司会: 両方のお医者さまからこういうお話を頂くと、いかに人格的なことが重要なのかということが分かる。
 萩原先生もいいお産をされたということで、いままでの話を聞いてどのように思われるか。

萩原: ひとつは、娘にお前が産まれたときはこうだったよと話す。もう何十回も話している。自分で一生懸命苦労した経験というのは、間違いなく子供に伝わる。
 それが家族の絆になっていくのだと思う。少子化の問題というのは、もっと男性が頑張らないと駄目だ。女性に責任を転嫁することが多いが、半分は男性の責任だから。
 そこのところを自覚して、自分の子供を持つことを誇りに思うような社会でなければいけないと思う。これは日本精神の根本、世界精神の根本だと思う。お産とか育児について男性がもっと役割を果たして、その喜びを感じられるような社会にしたいと思う。
 それが日本の少子化を救うし、人間というものを立ち直らせる大きなポイントになると思う。

司会: 細川さんは、いかがか。

細川: 本当に萩原先生のおっしゃる通りだと思う。人間には男女があって、それぞれ役割が違う。子供を産むということは、女の人しかできない。
 人間の場合は子供を産めば、一人前になるには十数年かかる。幼いうちは、母親は子供に付きっきりで、世話をしなくてはいけない。これは動物の世界で見れば、敵から最も襲われやすい状況だ。その状態の母子を男は守っていかなくてはいけない。今でいえば、仕事をして家族を支える。そういう役割があると思う。
 男女がそれぞれの特徴を認め合って、調和していくところに、子供も生まれるし、いい子育てもできる。それが家族の絆の一番の根本であって、親子のつながり、夫婦のつながり、あるいは先祖や子孫とのつながりというものも、夫婦の和があってこそのものではないか。
 日本人が昔から大切にしてきた心を取り戻して、人生に生かしていくことが大事ではないかと思う。

 次回に続く。


脱少子化を語る4

2007-08-25 09:37:47 | 少子化
司会: ここで家庭出産、自然分娩がいかに大切であるのかを石村さんにお聞きしたい。

石村: 男の人が祈ったり、願ったり、応援したりすることが、すごく効果がある。お産においてもだんなさんが必死になって、赤ちゃんに産まれておいでと言ったときには安産になる。昔はずっと家庭で出産していた。今もできないわけがない。家族の力を借りて温かい雰囲気の中で子供を迎えたいというのが当助産所のモットーになっている。
 生まれたときから家族の中で、柔らかい雰囲気の中にいれば、素直な子が育つのではないかと私は思う。男の人の祈りは、すごく強い。
 安産する人、しない人は何となく分かる。たとえお父さんが海外出張の多い人でも、出産のときには絶対日本にいると思う。だから「海外出張していても平気ですよ」って、いつも言っている。あなたがいつも赤ちゃんのこととお母さんのことを思っていれば、そのときに産まれてくる。それが今、百パーセントそうなっている。心が通じるっていうか「今日、お父さんがいるときに産まれなくっちゃ」と思うらしくて、陣痛を起こすのだ。本当に健気だと思う。

司会: 助産所を開設してからこれまでかかわってきた出産はどれくらいあるか。

石村: 開設してから十年になる。年間では、最初のころは25件くらいだったが、今では50~60件になった。
 先ほど江藤先生が言っていたように、丁寧に見てあげると、おそらくこれくらいがリミットだと分かる。
 不安のないようにして、安産で産まれてくるように導くことが私たちの役目だと思っている。ただ、それがうまくいかないこともあって、「ごめんなさいね」と言うこともある。現代の人たちは体力がないのだ。

司会: 10年間では何件になるか。

石村: 訪れた人の数は、400件くらいで、出産は300件。

司会: 苦労されたことや、これはうまくいったなと感じたことなどは。

石村: 喜びの方が大きい。
 どんなに時間がかかったとしても、自然に産まれたということは、お母さんとお父さんの自信につながる。
 だからその後の育児にとても良い。そういう努力が、これから日本人を変えていくと思う。
 私はいつも「お産がうまくいかなかったり、逆子になったりするのはご主人の責任ですよ」と言う。奥さんを不安にさせないのが、夫の役目。

司会: 細川さんも二人のお子さんが産まれるときに、実際に立ち会ったと聴いたが。 

細川: 私には子供が二人いる。妻が出産するとき、たまたま二度とも立ち会いができた。私の場合は家庭出産ではなく、二度とも助産所で出産した。
 一度目のときは、杉並の助産院だった。さっき祈りという話が出たが、男の方は、妻が出産といっても何もできることがないから、もうあと願うのは神様しかいないので、妻と心を合わせてお祈りをした。それでいろいろ姿勢を変えながら、妻が子供を産もうとして、最後は分娩台の横に私が腰掛けて、妻が後ろから私の肩に体を預けて立ち膝で出産した。
 私はへその緒を切らせてもらった。あのときの光景はありありと覚えている。きれいで透き通るようなへその緒を、真っさらなはさみで切らせてもらったあの感動は、何とも言えないものだった。
 妻もそのとき先生から「静かで痛みに強いですね。よくコントロールできています」と驚かれた。やはり夫婦で協力し合ったことが良かったのだと思う。自然で楽なお産ができた。
 二度目は、埼玉県の助産院で出産をした。このときは、また違ったやり方で、私が何か直接手を貸すのではなかった。助産師さんが妻の体をさすっている間、私といろいろな話をして、妻をリラックスさせるというような環境だった。産まれた子供がとても元気なので、先生から「元気ハツラツですね」と言われたのが忘れられない。
 二人とも健やかに成長して、本当に感謝にたえない。私自身も父親としての責任を感じるとともに、社会の中で自分ができることはないか、単に自分の子供の親としてだけではなく、他の子供たちを含めて、大人としてできることはないかと、強く感じるようになった。教育や家庭、しつけの問題からさまざまな事柄について、各地で講演しているのは、こうした体験に裏付けられたものでもある。

 次回に続く。

脱少子化を語る3

2007-08-24 08:52:33 | 少子化
司会: 萩原先生、政府としては、きちっとした病院とか、妊婦さんに対応できるシステムづくりとか、社会保障とか、いろいろと対応しなければならないと思うが、その点はいかがか。

萩原: 政府としてもこの問題についてはかなり気合が入っているので、来年、再来年に向けて、例えば医療費の改定であるとか、その作業の中で、産科とか婦人科とかを含めて間違いなく手厚い方向に行くと思う。
 細川さんがおっしゃったように、根底にある人間の自然な働きを残した形になるのか、別途考えなければならないというのが私どもの立場である。人間としての喜びを感じる、お産、子育てというものに結びつくような医療にしていかないと、最終的にもたないと思う。

司会: 萩原先生の奥様は外国でご出産されたという体験談をお聞きして、日本とアメリカではこんなに違うのだと思ったが、そのことについてお聞かせください。

萩原: 最初の子供は女の子で、アメリカで生まれた。安くするということもあってラマーズ法で産んだのだ。医者や看護師から見ると非常に簡単な分娩だ。医者や看護師が分娩室にいたのは二分くらい。ずっと私しかいない。妻がギャーと叫んだり、痛いと言ったりしているので、「痛いと言ってます」と言うと「だんなさん、しっかりしなさい」と言われた。(笑)
 「あなたが押さえなさい」「はい、分かりました」ということで、最後の最後は私一人ですよ。産まれても「はい出ましたよ。あなたのお子さんですね。間違いないですね」と言われ、じっと見たら、首が短いとか、指が短いとか、そっくり。間違いなかった。
 次の息子は日本の東大病院で生まれた。今はだいぶ変わったが、当時はお父さんは来てはいけないと言われた。邪魔だということだ。でも非常に手厚く看護してくれる。
 日本と比べてアメリカは、苦しくなったら呼ぶことができるが、そうじゃなかったら、ほっとかれる。
 うちの妻の場合は三日だったけれど、横にいたお母さんは産んですぐ立ち上がって、挨拶して三時間後にいなくなった。出産したらその日のうちに退院しちゃう。びっくりした。
 しかし、そういう形でやっているアメリカの医療というのは、確かに見るべき点がある。
 問題がなければ良いわけで、問題がないように一生懸命に頑張って良い医療をつくることが大切だと思う。

司会: 子供が少なくなって、日本は子供を産むときから非常に過保護になっているような気がしてならないが、江藤先生はどう感じか。

江藤: 少しずつ状況が変わってきているとは思う。私もついこの間、アメリカのお産を見学してきた。助産師の数が極端に少なく、また医師も少ないのだが、その分、ナースがたくさんいる。日本では助産師がずっと付いているけれど、ナースが付いていて正常な分娩になると、助産師を呼んできてお産に入る。
 異常の場合は助産師と産婦人科医が一緒になってマネイジングという形になってお産になる。今では割合、看護師が付いていると思う。
 やはりお産のところで、手を掛けるのはとても大切だと思った。不安と痛みと緊張というのは、必ず悪の連鎖を生むので、そこから薬はたくさん使っている。萩原先生の場合は使っていないかもしれないが、七十五%の人が使っている。

萩原: その通りなのだが、そのときの基本方針というのは、お父さんがその役をしなさいということだった。
 「不安と痛みと緊張を和らげる役割はあなたができるのだから、あなたがやるんです」と言われて、それはそうかなと思った。
 確かに精神的な負担とか痛みはあるんだろうが、だれが受け止めるかというと、医者でもない看護師でもない、本当のところ受け止められるのは、あなたじゃないですか、と言っているのだ。

江藤: もう一人デューラーという、日本でいうと助産師みたいな人がいる。免許はないが、お産の経験があって、女性にずっと付き添って背中をさすってあげたり、抱きしめてあげたりする役割の方がいる。

 次回に続く。


脱少子化を語る2

2007-08-23 08:52:52 | 少子化
司会: 今は子供を産みたくても病院がない時代、産科医がいない時代と聞くが、佐々木先生、産婦人科の現状はいかがか。

佐々木: 少子化であっても、産む人はいるわけで、それを支えているのが助産師さんであり、産科医である。産科を取り扱う医師はすごいスピードで減っている。少子化をはるかに上回るスピードで減っている。地方であるほど、それがひどい。
 例えば私が今、勤めている病院は茨城にあるが、近隣の病院で一人の女医さんが妊娠をしてしまった。そのためにお産を取り扱う件数が年間900件だったのを500件に制限したいと言ってきた。また反対側にあるちょっと離れた病院では、そこを開業されていた先生が年を取ったために、お産をやめたいと言ってきた。
 そこはだいたい年間200~300件だった。そうすると年間700人がそこの病院からあふれるわけである。一つの病院ではとても受けきれる数ではない。
 私の勤めている病院は二人の医師が働いていて、年間700件ある。もし私が過労で倒れたら、一人の医者で行う。一人で700の分娩に立ち会えるかというとできない。ということは一人倒れたらアウトなのだ。一つの病院が倒れると、それを支えなければならない病院がまた倒れてしまうのだ。
 東京も例外ではない。墨田区の墨東病院が年間1500件だったのが、400~500件しか扱わなくなった。約1000人が宙に浮いている。ものすごく危険な状態であるということをご理解いただきたい。

司会: この状況をどう政府は対応していくのか、萩原先生、何か対応策はあるか。

萩原: 医師不足、看護師不足という問題は明確に分かっている。今回の参議院選挙の公約にもその対応策がきちっと入っている。
 私が生まれたのは昭和31年。私のちょっと前の世代というのは基本的には家で出産していた。
 そういうところから見ると、産科医療がどっちの方向を向いているのか。人間の持っている力を助長する方に向いているのか、人間の持っている力なんか関係ない、おれたちがやるんだと考えているのか、どっちの方向で医療しているのかということもきちんと抑えていかなければならないと思う。

司会: 江藤先生、じかに現場をご覧になって病院の現状、先生方の現状をどのようにお感じか。

江藤: 直接病院で働いているわけではなく、学生の実習を病院にお願いしている立場なのだが、私が行っている病院で産婦人科のお医者さんがやめるとか、お産で休むという場合、その地域はベッドタウンでお産が多い所なのに、お産をお断りする電話を掛けられたというのを聞いて、今はどこも同じように大変な状況になっているのだと思う。

司会: 細川さん、脱少子化と日本精神復興促進運動は、どうつながるのか。

細川: 日本精神復興促進運動を提唱したのは、大一先生という方である。
 大先生は日本の文化や伝統の中に素晴らしいものがある。それが戦後失われてしまっているので、ぜひ取り戻すべきだと説いている。また、大先生は宇宙にはすべてのものを貫いている法則があって、人間もまた自然の法則に沿って生きていくときに健康で、また幸せに暮らせる。そういうことを説いている。
 そこでお産の問題と絡んでくるのだが、お産の場合も、女性の体にはもともと自然な形でちゃんと楽に出産ができるような働きが備わっている。それをうまく引き出すことができれば、もっと自然で楽なお産ができるはずである。
 ところが、現代人はお産というと陣痛で苦しむもの、危険なもの、女性の大厄と考えるようになってしまった。そこのところをもっと人間の本来の命の働きに目を向けて、その生命力を生かして、自然でしかも楽なお産ができるように目指していく。その道を大先生は説いている。
 石村さんは、自然なお産の手助けをしており、出産の現場から脱少子化を訴えている。日本精神復興促進運動本部はその趣旨に賛同して、本日のフォーラムを後援している。

参考資料
・大塚寛一先生について
http://www.nsfs.jp/sousai_sousai.htm

 次回に続く。

脱少子化を語る1

2007-08-22 18:11:35 | 少子化
 去る7月8日、東京・深川の江戸資料館小劇場で、「脱・少子化フォーラム2007~産む喜びを」が行なわれた。
 このフォーラムは、江東区で助産師をしている石村あさ子さんが所長をしている「助産婦石村」が主催したもの。
 石村さんは、家庭出産を行なっている助産師で、その活動は、毎日新聞、主婦の友社の雑誌、NHKテレビ等で紹介されてきた。ここのところ、東京都が広報に使っているMXテレビが石村さんを取材し、番組を制作している。フォーラムにも取材に来た。放送は、二回に分けて行なわれる。予定は下記の通り。

 日 時:9月2日、9月9日(日) 21:00~21:30
 番組名:「東京BOY~東京少子化事情」
 出演者:テリー伊藤、浅草キッド、松村邦洋ら
 視聴可能区域:東京及びその近郊
 チャンネル:9チャンネル又は5チャンネル
 再放送:土・日の夜23:00時から。

 「東京BOY」には、石原慎太郎都知事もよく出演する。
 今回放送予定の番組では、「脱・少子化フォーラム」についても多少流れるらしい。

●脱少子化を語るパネル・ディスカッション

 「脱・少子化フォーラム」の概要は、7月9日から4回に分けて私のブログに掲載した。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20070709
 このたびは、その際、詳細を紹介できなかったパネル・ディスカッションの内容を掲載する。

 パネリストは、衆議院議員・萩原誠司氏、総合守谷第一病院副院長・佐々木純一氏、聖路加看護大学実践開発研究センター准教授の江藤宏美氏、助産婦石村所長の石村あさ子氏、それに私・細川一彦。ファシリテイターは、(社)日本青年会議所特別会員の武藤誠晃氏。
 以下は、録音に基いて、発言の大意をまとめたもの。7回になる予定。

武藤ファシリテイター(以下、司会): 昨年度の出生率は1・32。統計的には2・08以上ないと人口は維持できない。間違いなく日本の人口は減っている。2025年の日本の人口は、1億人くらいになると言われている。パネリストの皆さんは、少子化の現状をどうお考えか。

石村: イメージとして国家の衰退、税収の減少が考えられる。

佐々木: 少子化と騒いでいるが、本当に少子化がまずいのか、ちゃんと考えているのか。日本人はどうも右へ倣(なら)えして同じことを言う傾向がある。地球温暖化も叫ばれていて、人間の数も多ければいいということではない。地球上に人類だけがこんなにはびこっていいのだろうかと私は考える。

萩原: 子供をつくるとか、育てるとか、恵まれるとか、そういうことに対してすごくいいことだとか、感謝するとか、有り難いという気持ちが必要であって、そういうものが残ってあるところで安定すればいいのかなと思う。もし、それがなくて少子化になっているとしたら大問題。心の問題とか家族間の問題とか、それをまず根底から考えた方がよいと思う。

江藤: 子供が少なくなると、一人の子供にお父さん、お母さん、父方のおじいちゃん、おばあちゃん、母方のおじいちゃん、おばあちゃんが付くと、一人に六人だから、大事に育てられると思う半面、甘やかされるのではないかなという思いが浮かんでくる。

細川: 去年から日本の人口は減り出したが、これからますます高齢者が増えていく中で、どんどん少なくなっていく子供たちがその高齢者を支えていく世の中に変わっていく。だから、ここで今日のテーマである「脱少子化」ということを真剣に考えて、若い人たちが結婚して子供を生んで育てて安心して暮らせる世の中をつくっていかないといけないと思う。

 次回に続く。

護憲論の矛盾と北朝鮮の脅威2

2007-08-21 22:56:49 | 国際関係
●北朝鮮元高官の証言をどう取るか

 北朝鮮元高官の林一男氏の証言に対し、番組のゲストがいろいろなコメントを述べた。私の印象に残った点をメモに基いて記す。

 林氏のいう核弾頭の小型化について、石破茂元防衛庁長官は、大意次のように述べた
 「かなり速い速度で進展しつつある。北朝鮮が昨年10月に行なった核実験をあらゆる点から検討すれば、小型化にある程度成功した可能性は捨てきれない。
 北朝鮮は、ミサイルを日本海に向けて6発連射したが、精度は低くとも、核搭載であれば精度は関係ない。核でなく、生物化学兵器を使う可能性もある。わが国は国民保護法を作ったが、MDは100%確実ではない。シェルターを作ったり、避難訓練をする必要があるが、マスコミはそういうことを取り上げない」

 私が思うに、サリンやVXガスなど、北朝鮮は金日成の時代から、開発・保有している。オウム真理教は、北朝鮮から、サリンの原料を入手していた可能性が高い。サティアンなるアジトには、朝鮮語で書かれた原料の袋が置かれていた。
 この平成7年の地下鉄サリン事件の後も、また平成10年のテポドン三陸沖着弾事件の後も、国民を守るための核シェルターの設置や防毒マスクの配付等は、進んでいない。それゆえ、石破氏の指摘は重要である。喫緊に必要なのは、国民自身、国を守ることが自分や家族や友を守ることだという意識に目覚めることである。

 林氏は、北朝鮮は高濃縮ウラン(HEU)を利用した核開発を行なっていると言うが、これについて、ゲストは次のように述べた。
 石破氏は、「その可能性があるという前提で、防衛政策を考えねばならない。米国の目的は核拡散の防止だが、北朝鮮は問題を小出しにして時間を稼ぐ戦略を取っている」と言う。黒田勝弘産経新聞ソウル支局長は、「北朝鮮は寧辺の核施設の無能力化を受け入れたのは、(HEUを)別に持っているからだという考え方が基本的に必要だ」と語り、武貞秀士防衛研究所統括研究官も、「北朝鮮がHEU型核兵器開発を温存するための大戦略があるという前提で交渉したほうがいい。アメリカは、ある程度分かっているはずだ」と述べた。

 私が思うに、アメリカは、イラク問題で行き詰まっている。9・11というなぞの多い事件をきっかけにして突入した戦争に対し、米国民の疑問は強まっている。
 アメリカには、イラクに加えて北朝鮮とも戦う力は、現在ない。こうした中で本年2月、ブッシュ大統領は突然、北朝鮮と話し合いを行った。「絶対に二国間交渉をしない」と言っていたヒル国務次官補が、北朝鮮と協定を結んだ。協定は、北朝鮮の核兵器を棚上げしたまま、援助を与えるというものだった。
 こうした外交は、わが国の頭越しに行なわれた。アメリカは、アメリカの国益で動いているのであって、同盟国のわが国を無視した外交を平気で行なうのである。それが、国際社会の現実である。自国の安全と生存は、自らで保持するという意志と備えをしっかり持たなければ、他国の意思や力に振り回されるばかりである。そのことを深く自覚したいと思う。

 さて、林一男氏は、番組の証言の中で次ぎのような趣旨のことも述べた。
 「核の放棄に関して、金正日と軍部に対立が起こっている。軍部が反発したのは、拉致問題がきっかけだ。拉致問題がきっかけで、対立が起こった。軍部が金正日に反発するのは、初めてのことだ。金正日は核開発を隠してしようとしている。軍部はこれに反発し、公表してやろうとしている。側近中の側近の呉克烈が反発の中心。金正日はショックを受けている。」

 呉克烈氏は、朝鮮労働党の作戦部長、大将、党中央軍事委員、党中央委員。
 この林氏の証言に対し、黒田氏は、「金正日と軍部は一体だ。対立していると見せかけ、軍部の台頭を防ぐには、国際社会は金正日を支援した方がいいという謀略宣伝をしているものだろう」と述べた。武貞氏は、「(林氏は)偽せ情報を言わされている可能性もある。本人が意識していてもいなくとも」と語った。
 私にはよくわからないが、これまでにも軍部が金正日を暗殺しようと試みて失敗した事件があったり、軍部には中国寄りの勢力があったり、金正日の後継者を巡って指導層にいくつかの対立があったりすると言うから、金正日と軍部は「一体だ」と断言できるかどうかには疑問がある。
 ただ、ほとんど実態が分からず、情報が統制管理されている国で、既に核兵器を保有し、小型化・移動化・多弾頭化が進められている可能性があり、わが国がそのミサイルの標的になっているという現実を、日本人はもっと切実に認識すべきだと思う。

●日本の活路を開くには

 さて、NHKのテレビ番組「日本の、これから」に出演した際、私が北朝鮮のミサイルのことを述べたことから、たまたま19日に見た別のテレビ番組「報道2001」の内容とそれへの感想を書いてきた。ここでは、北朝鮮とは比べ物にならぬほど強大な核大国・中国の脅威については触れないが、わが国が今日直面している東アジアの危機をまっとうに認識すれば、護憲論の矛盾は、際立つばかりである。
 60年以上前のシナや朝鮮半島や、沖縄・広島・長崎等のことも重要である。しかし、この現在、ただいまの日本のことは、もっとはるかに重要である。

 先のNHKの番組の最後にて、出演した市民は、「憲法第9条を考える時に、何を大切にしたいか」という問いへの答えを、各自ボードに書いた。私は「日本人の精神」と書いた。幸い三宅アナウンサーに指名されたので、私がそのように書いた理由を述べた。
 「自分の国のありようを自分たちの意思で決め、自分の国を自分たちで守り、そして国際社会で責任ある役割を果す。そのために、日本人の精神を大切にしていくべきだと思う」と。

 日本人が日本精神を取り戻し、憲法を改正し、国を再建して、今日の危機に立ち向かうことによってのみ、日本の活路は開けると私は思う。(了)

関連掲示
・テレビ番組でも本稿でも直接触れていない中国の核の脅威については、以下の拙稿をご参照下さい。
 「中国の日本併合を防ぐには」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12a.htm
 「核大国化した中国、備えを怠る日本~日中戦後のあゆみ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12c.htm