ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

尖閣~ビデオを早く全面公開せよ

2010-10-30 11:33:21 | 時事
 尖閣沖中国漁船衝突事件のビデオの公開が、ようやく国会内でごく限定された範囲でされようとしている。私はこれに不満である。政府・民主党に対し、すみやかに国民にビデオを全面公開することを求める。

 衆院予算委員会は、理事懇談会で、11月1日午前8時から衝突時のビデオ映像を視聴することを決めた。国会内で両院予算委員会の与野党の理事、両院予算委員長ら約30人で映像を見る。映像の説明は海上保安庁の長官が行う。入室者は携帯、ビデオ、カメラを持ち込まないようにする、という。
 政府及び民主党執行部は、対中外交、特にAPECへの影響を考慮し、ビデオを公開する範囲を極力限定するよう画策している。しかし、ビデオの内容は、既にそれを見た複数の関係者が、一部明らかにしている。それによると、中国漁船は海上保安庁の巡視船に衝突する際、速度を上げており、衝突を避ける気はなく、故意にぶつけるつもりだったことは明白だという。事実確認のため、ビデオの全面公開を求める国会議員、及び国民の要求は強まっている。
 逮捕時、船長は酒を飲んでいたようだ、と海保の職員が証言した。酒気おび程度かと想っていたら、中国人乗組員14人が、船長は酒を大量に飲んでいたと証言している、と中国当局者が明らかにした。故意に船を衝突させた船長が酩酊状態だったということか。現在限定公開されているビデオには、自分で歩けないほど酔っていた船長の状態は、映像に映っていないらしい。
 この点、私には、腑に落ちない。ビデオは単に衝突の様子のみを取ったものなのか。海保の職員が漁船に乗り込み、船長や乗組員ともみ合いになり、逮捕した過程を撮っていないのか。21日夜、TBSテレビの「NEWS23」が、韓国での中国漁船の取り締まりを取材した映像を流した。翌日の私の日記に書いたが、その映像には、中国人乗組員が、鉄パイプで韓国海洋警察の警官を乱打するシーンが映っていた。だから、私には、尖閣沖衝突事件で、速度を上げて海保の巡視船に衝突した中国漁船の乗組員が、おとなしくわが国の海保職員に従ったとは思えない。故意に船を衝突させたかどうかということの事実確認がまず必要だが、それに次いで、乗組員の行動や船長の態度がどうだったのかの確認も重要である。国会議員は、このTBSの番組を参考資料として視聴してもらいたい。

 関係者にのみ限定公開されたビデオは、わずか6分間だという。ビデオは全体で2時間あるというのに、なぜ録画の全体を公開しないのか。120分のものを6分にしたとは、20分の1にしたということである。意図的に内容をカットした可能性がある。カットされた部分に何があるのか。追跡と衝突はどう行われたのか。逮捕はどう行われたのか。船長の酩酊状態は映っていないのか。これらの確認のために、未編集の全記録を国民に全面公開すべきである。またわが国の政府があくまで編集した映像しか公開しない場合は、中国政府からビデオ自体が改ざんされたものといわれるおそれもある。
 政府・民主党は、尖閣沖中国漁船衝突事件のビデオを、一刻も早く国民に全面公開せよ。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月29日

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101028/crm1010280721001-n1.htm
尖閣ビデオ内容判明 中国漁船、加速して衝突 「故意」裏付け 船長は飲酒か
2010.10.28 07:18

沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオには、中国漁船(166トン)が航行速度を12~13ノット(時速約22~24キロ)ぐらいに上げて海保の巡視船に衝突した様子が映っていることが27日、分かった。ビデオ映像を見た複数の関係者が明らかにした。漁船が衝突時に速度を上げたことなどから、関係者は「衝突を避ける気はなく、故意にぶつけるつもりだったことは明白だ」と指摘している。
 漁船の航行速度をめぐっては、政府は「事件の捜査に関する事柄であり、答弁を差し控えたい」とする答弁書を26日に決定するなど公表を控えてきた。しかし、ビデオ映像からこうした具体的状況の一部が明らかになったことで、与野党からビデオの全面公開を求める声が強まりそうだ。
 海保が撮影したビデオ映像は、漁船に衝突された巡視船「よなくに」(1349トン)と「みずき」(197トン)の船首付近から撮影されたもの。
 映像を見た関係者によると、漁船はよなくにの左後方に衝突した後、漁船の左前方を並走していたみずきに幅寄せするように接近した末、左にかじを切って衝突している。
 漁船がみずきと並走していた際の航行速度は約10ノットだったとみられ、漁船はその後、約12~13ノットに速度を上げてみずきに近づき、「体当たり」しているという。
 漁船の最高速度は通常20ノット程度といい、逃走を図ったにしてはやや低速だった。衝突を避ける場合は減速したり離れたりするはずだが、逆に速度を上げて接近しており、「故意の衝突」を裏付けている。
 一方、映像には映っていないが、海保に公務執行妨害容疑で逮捕された漁船の中国人船長は衝突前、酒を飲んでいたとみられる。捜査関係者は「海保職員が船長を連行する際、酒臭かった」と証言している。
 那覇地検は日中関係を考慮し、勾留(こうりゅう)期限の4日前に船長を処分保留のまま釈放した。すでに釈放から1カ月が経過しているが、まだ処分を出していない。

●産経新聞 平成22年10月28日

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101027/stt1010272051012-n1.htm
尖閣ビデオ 公開意思まるでなしの政府与党 衆院議長は異例の訓示
2010.10.27 20:49

 (略)沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオ映像がようやく国会に提出されたが、政府・民主党には映像を一般公開する姿勢は全くみられない。
 中国がベトナムでの日中首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(横浜APEC)に応じなくなることを恐れたものとみられる。(略)
 もともと中井氏ら民主党や政府には公開する考えはない。平成22年度補正予算案の審議をスムーズに進めるため、しぶしぶ提出に応じたにすぎない。
 「何とか提出は先送りにできないか」。仙谷由人官房長官は野党側に提出を通告した後の26日になってもなお、中井氏に電話で談判。仙谷氏はこれまでも日中関係など外交への配慮を理由に働きかけを重ねていた。ビデオ映像を受け取った中井氏のもとへくれぐれも公開しないよう求めた要望書を届けさせたほどだ。
 だがビデオの非公開は、政治決定プロセスの透明化をうたってきた民主党の従来の主張とは相反する。菅直人首相は1日の所信表明演説で「国民一人ひとりが自分の問題として考える主体的で能動的な外交を展開したい」と高らかに語ったが、もとになる情報が伏せられては考えようもない。(略)

●産経新聞 平成22年10月29日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101028/plc1010281116007-n1.htm
【尖閣ビデオ】自民が全編2時間の提出を要求へ 「改竄の可能性も」
2010.10.28 11:15

 自民党は28日午前、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、政府が国会に提出したビデオ映像は編集され不十分だとして、映像全編の提出を衆院法務委員会で求める方針を決めた。佐藤勉国対委員長代理が記者会見で明らかにした。中国人船長の釈放を判断したとされる那覇地検幹部の国会招致も法務委で求める。
 政府が27日、衆院予算委員会の要求に応じて衆院に提出したビデオ映像は、約6分間とされる。自民党国対幹部は「海上保安庁が撮影した映像は約2時間あるという。誰が編集したかも分からず、改竄(かいざん)された可能性もある」と述べた。(略)

●日テレNEWS24 平成22年10月29日

船長、衝突前に飲酒し泥酔状態 漁船衝突
(日テレNEWS24 - 10月29日 13:25)

 沖縄・尖閣諸島沖で中国の漁船と日本の巡視船が衝突した事件で、漁船の船長が衝突する前に酒を飲み、海上保安官が立ち入った際にも、自分では歩けないほどだったことを中国の当局者が明らかにした。
 中国当局者によると、先月7日、尖閣諸島沖で中国の漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する前、漁船のセン其雄船長(41)が酒を大量に飲んでいたことを、事件の6日後に帰国した乗組員14人が中国政府に証言していたという。
 中国の漁船は午前10時過ぎから11時ごろにかけて相次いで2隻の巡視船に衝突し、午後1時ごろ、海上保安官が漁船に立ち入ったが、漁船の乗組員の証言では、その際、船長はまだ酒に酔っていて、自分で歩けない状態だったという。
 ★セン其雄の「セン」は「擔」のつくり
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関連掲示
・拙稿「尖閣~韓国海洋警察は断固対応」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101022

構造改革を告発した経済家4

2010-10-30 08:43:24 | 経済
●日本はそれほどの財政危機ではなかった

 財政危機説に基づいて財政健全化をめざし、緊縮財政を行ったのが、橋本政権だった。橋本氏は、1996年1月に自社さ連立政権の首相となり、11月からの自民単独政権でも首相を続けた。山家氏が『偽りの危機 本物の危機』を出したのは97年10月であり、橋本財政改革が行われている真っ最中だった。
 橋本氏は、大蔵省の示す先進国最悪の財政危機という認識に立って、緊縮財政を行った。これに対し、山家氏は、日本の財政について異なる見方を提示した。
 山家氏は、次のように書く。
 「国債と地方債、それに特別会計の資金繰りのために発行される短期国債等をも含めた一般政府の負債残高は1995年末で435兆円である。95年の国内総生産(GDP)は461兆円であったから、日本の政府部門はGDPの94%に当たる負債を抱えていることになる」
 大蔵省や多くの経済学者は、こうしたとらえ方から、わが国の財政危機を強調する。しかし、山家氏は、これに反論する。
 「国も地方も、一方で預金、貸出金、出資金といった金融資産を保有している。外貨準備だけでも20兆円近くの資産がある。また社会保障基金が保有し、運用に回している金融資産残高は1995年末で211兆円に達している。これら政府部門全体の金融資産の残高の合計は、95年末で378兆円である。政府部門の負債残高から金融資産残高を差し引いた数字が日本の政府部門の抱えている純財務残高であり、その額は95年末で57兆円である」と。
 政府には負債だけでなく、金融資産がある。債務と債権の差し引きで見ないと、財政の実態はつかめない。政府の負債のみを言うときの債務は、粗債務という。それに対し、債務と債権の差し引き結果を、純債務という。山家氏の上げる数字でいうと、わが国の政府は、粗債務では435兆円の負債残高を抱えているが、純債務では57兆円に縮小する。粗債務はGDPの94%に上るが、純債務は12%にすぎない。
 財政危機説を説く論者は、「日本の財政赤字は先進国中最悪の状況にある」という表現をしばしば使う。山家氏は、この見方の誤りを明らかにするため、より具体的に述べる。
 「財政赤字を政府部門の赤字として捉えると、その政府部門には社会保障費も含まれる。(略)日本の社会保障基金の収支(フロー)は年間13兆円を超える黒字を出している。その残高(ストック)は200兆円に達している。これを加えたものを財政赤字として捉え、その対GDP比を国際比較してみるとどうか」と問う。
 まずフローの財政赤字の対GDP比である。「社会保障基金について日本と同様の方式を取っている国はアメリカのみである。(略)日本とアメリカの比率を社会保障基金を含んだものに代えてみると、1995年の日本は3.3%となる」。この数字はアメリカの2%以下よりは大きいが、ドイツとほぼ同じくらいの数字である。フランスは4%以上、イギリスは5%以上ゆえ、日本よりも大きい。日本の財政赤字は先進国中最大、とは言えなくなる。
 山家氏は、フローだけでなく、ストックも見る。
 ストックの財政赤字の対GDP比について、社会保障基金の残高その他、一般政府の保有する金融資産残高をその負債残高から差し引いて、政府の純債務残高、いわば純財政赤字残高を算出し、その対GDP比を国際比較する。「1995年の日本は10%である。フランスは35%、イギリスは42%、ドイツは44%、アメリカは50%等々であり、日本の純財政赤字残高は先進国の中で最小ということになる」と山家氏は言う。
 フローの財政赤字は、アメリカに次いで少なく、ストックの純債務は、主要先進国で飛び抜けて少ない。ということは、山家氏の見方によれば、日本の財政は1995年の時点では、非常に健全な状況だったのである。

 次回に続く。