ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

米下院が対日慰安婦決議を採択

2007-07-31 10:45:28 | 歴史
 アメリカ下院で、わが国の慰安婦問題を非難する決議案が採択された。5月26日、下院外交委員会で同決議案が採択され、今月中に下院本会議でも採択される見込みだった。参議院選挙への影響を避けるため、選挙後に採択が行なわれたという。

 安倍首相及び今後の国家指導者は、事実を無視した決議に圧されて、公式な謝罪声明など出してはならない。逆に、これを機会に、わが国の名誉と誇りを損ねている河野談話を訂正し、事実調査と学術研究に基づく新たな政府見解を準備・発表すべきである。そして、わが国政府は、これまでの姿勢を改め、米国に事実を知らせ、同盟国の中にある誤解を解く努力を行うべきである。
 詳しくは、以下に私見を書いたので、ここでは繰り返さない。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20070704

 民主党にも、慰安婦問題や南京事件は、事実を検証すべきという議員が少数ながらいる。3月9日に発足した同党の議連「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」に参加している議員が、19名。6月14日、ワシントン・ポスト紙への反論広告に名を連ねた議員が、13名。これらのどちらかに参加している議員は、21名となる。数的には、民主党の国会議員224名のうち10分の1弱にあたる。民主党の中では、事実を尊重する歴史認識を持った政治家といえるだろう。

 今後、慰安婦問題及び南京事件に関し、わが国の誇りと名誉を守るために、党派を超えて、粘り強い究明と外交に努力してもらいたいと思う。
 以下は、米下院の採決を伝える報道のクリップ。

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●産経新聞 平成19年7月31日付

http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070731/usa070731001.htm
慰安婦決議案採択 米下院

 【ワシントン=有元隆志】米下院は30日の本会議で、慰安婦問題に関する対日非難決議案を採択した。決議に法的拘束力はないが、日本政府に公式謝罪を求めている。決議案の共同提案者は下院議員総数435人のうち167人に上ったものの、決議案が採決された際に本会議場にいたのは、わずか10人程度。発声による投票の結果、出席者から異論は出なかったため採択された。
 ペロシ議長ら下院指導部は、参院選に影響を与えることを避けるため、採決の日程を選挙後の30日に設定した。上院には提出されていない。
 この日、ラントス外交委員長(民主党)が趣旨説明を行った後、決議提案者のホンダ下院議員(民主)らが演説した。共和党からもロスレイティネン外交委筆頭理事らが賛成演説を行った。反対演説はなかった。
 ホンダ議員は採択後の記者会見で、「決議は日本政府に対し、公式で明確な謝罪を慰安婦に行うよう求める強いメッセージだ」と述べ、日本政府の公式謝罪を求めた。
 慰安婦問題をめぐっては、安倍晋三首相が4月末に訪米した際、ペロシ議長ら議会指導者との会談で、「人間として首相として心から同情している。そういう状況に置かれたことに申し訳ない思いだ」と語った。
 ブッシュ大統領は首脳会談後の共同記者会見で、「首相の謝罪を受け入れる」と首相の対応に理解を示しており、日米政府間では事実上解決済みとなっている。
 これまで慰安婦決議案は4回提出され、昨年秋には外交委で可決されたものの、本会議では採決されず廃案になった。
 一方、下院外交委員会は31日、アジア・太平洋地域の安定強化や、テロとの戦いにおける日本の役割について謝意を示す決議案を採決する。ラントス委員長やホンダ議員も共同提案者となっている。慰安婦決議で日本非難をしたため、日本への謝意を示すことでバランスをとるねらいがあるとみられる。
(2007/07/31 09:15)

●朝日新聞のサイト

http://www.asahi.com/international/update/0731/TKY200707310019.html
米下院が従軍慰安婦決議を採択
2007年07月31日09時11分

 米下院は30日の本会議で、従軍慰安婦問題について日本の首相が公式に謝罪するよう求める決議を採択した。同様の決議案は01年から4回提出され、いずれも廃案になっていたが、民主党主導の議会で安倍首相の発言に対する反発が広がり、初めて本会議で採択された。法的拘束力はないものの、採択の阻止を働きかけてきた安倍政権の失敗は明らかで、参院選の敗北に追い打ちをかける形となった。
 下院外交委員会は6月26日に39対2の大差で決議案を可決。本会議でも3分の2以上の賛成が見込まれたことから、今回の採決は発声投票で行われた。出席議員から異議は出なかった。
 決議は、旧日本軍が若い女性に性的な奴隷状態を強制した歴史的な責任を日本政府が「明確な形で公式に」認め、日本の首相が謝罪声明を出すよう求める内容。1月末に日系のマイク・ホンダ議員(民主)が提出した。
 日本政府は「これまで謝罪しており、決議案は不必要で、事実と異なる」と訴えた。だが、安倍首相は3月1日、軍当局の関与と「強制性」を認めた93年の「河野官房長官談話」に関連して「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実ではないか。定義が変わったことを前提に考えなければならない」と発言。自民党内に河野談話を見直す動きもあり、従来の日本政府の謝罪に留保をつけ、修正しようとする発言と受け取られた。
 決議案の共同提案者は下院(定数435)のうち民主、共和両党の167人に達した。そのうち142人は安倍首相の3月1日の発言後に共同提案者となっている。安倍首相は4月下旬の訪米時にペロシ下院議長(民主)やブッシュ大統領らを前に謝罪を表明。一時は沈静化したが、日本の国会議員らが6月14日付の米紙ワシントン・ポストに、決議案は「現実の意図的な歪曲(わい・きょく)だ」とする意見広告を出し、議会内の反発が再燃した。
 ホンダ議員は30日、決議の採択後に議会内で会見し、「この決議は日本の人々を責めているのではない。日本政府の過去に対する姿勢の問題だ。安倍首相が私たちの言葉に耳を傾けることを期待している」と語った。
 下院指導部は参院選への影響を避けるため、本会議採決を選挙後に先送りし、日程の公表も投開票後にするなど配慮を見せていた。日米関係への悪影響を懸念する声もあり、31日の下院外交委員会では日米同盟の重要性を評価する決議案も採決される予定だ。
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関連掲示
・拙稿「慰安婦問題は、虚偽と誤解に満ちている」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12f.htm

与党惨敗、民主が参院第1党に

2007-07-30 19:50:17 | 時事
 7・29参議院選挙は、自民党の歴史的大敗となった。党派別の獲得議席数は、与党が自民37、公明9、ほか1の計47に対し、野党は民主60、他党8、ほか6の計74という大差である。
 なぜここまでの惨敗になったか。私は、その原因は、小泉政権にさかのぼると思う。

●小泉=竹中政権の負の遺産

 昨年、安倍政権が誕生して間もない10月の半ば、舛添要一氏の講演を聴いた。舛添氏は、自分が参議院自民党の選挙対策責任者だと語り、今回の参議院選挙の予想を述べた。現状では自民党が負けるのは明らかで、どこまでの議席減で抑えられるかだと語った。参議院選挙で過半数を割れば、各委員会の委員長を野党が多く占め、法案が通らなくなる。それで政局が不安定になると、衆議院の解散総選挙になる。そうなったとき、いま与党が勝つことは難しい、と舛添氏は述べた。
 このことは、7月23日の日記に書いたが、どうして舛添氏がそう見ていたか、その理由はそこには書かなかった。

 舛添氏が述べた理由を書くと、小泉政権のもと、社会に格差が拡大し、地方から強い反発が出ている。それが今後、選挙に出るということだった。
 私のいう「経済優先的保守」が、政権の中枢を占めたのが、小泉内閣だった。小泉首相と竹中大臣は、弱肉強食の市場原理主義による政策を強行した。その結果、大都市と地方の格差、富裕層と低所得層の格差が拡大した。
 安倍首相は、小泉内閣の官房長官を務め、小泉氏の事実上の指名によって、政権を継承した。それは、小泉=竹中政権の負の遺産をそのまま引き継いだものだった。
 その負の遺産は、地方と低所得層による反発という形で、次の国政選挙に現れると、舛添氏は非常に懸念していた。その国政選挙こそ、今回の参議院選挙にほかならない。

 安倍政権は、格差の是正、弱者の救済の方向に政策を転じつつあったが、負の遺産は、容易に解消できるものではなかった。私は、以上の点が、自民党の最大の敗因だと思う。
 こうした原因に加えて、安倍政権は人事の失敗が続いた。柳沢厚生労働大臣の「産む機械」発言、松岡農水大臣の金銭疑惑と自殺、閣僚の事務費問題、久間防衛大臣の「しょうがない」発言、赤城農水大臣の「大丈夫、たいしたことない」発言等、小泉=竹中政治への反発に加えて、安倍政権に対する信頼・期待を損なう出来事が続いた。
 そのうえ、年金に関するデータのミス・消失が、国民多数の生活不安を膨張させた。年金問題については、安倍政権で表ざたになったものの実際には、もっと早くから事務の失態は分かっていたようだ。少なくとも小泉前首相の時代には、近いうちにこの問題が噴出することを中枢部は知っていたと見られる。
 小泉=竹中政権の負の遺産に加えて、こうした要因が重なり、今回の参議院選挙は、昨年秋に予想されていた以上に、自民党にとって厳しい結果となったものと思う。自民党には、これに大いに反省してもらい、「伝統尊重的保守」を中心として出直しを期待したい。

●民主党躍進の今こそ、その実態を知るべき

 今回の参院選において、民主党は「生活が第一」というキャッチフレーズで、国民多数をひきつけた。選挙の策士・小沢代表は、年金問題への国民の怒りや不満が政府与党に向くように、世論を誘導した。マスメディアも、盛んに同方向での報道をした。小沢代表の地方一人区に重点を置いた遊説も、自民党の弱点を突いた。
 民主党に投票した人々の多くは、自民党に嫌気が差し、民主党による政治の変化に期待したのだろう。しかし、民主党という政党の実態を知れば、本当に政権を委ねられる政党ではないことが理解できるだろう。
 この点は、7月26日の日記をご参考に願いたい。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=510132281&owner_id=525191

●生活の基盤である国家社会の問題を考えよう。

 小泉=竹中政権が強行した市場原理主義政策は、実はわが国の「経済優先的保守」や日本経団連が独自に考えて行なったものではない。アメリカのブッシュ政権及び巨大財閥からの強烈な圧力によって、やらざるをえない状況に追い込まれて行なったものである。
 日本長期信用銀行の破綻と新生銀行としての再生、りそな銀行の事実上の国有化、UFJ銀行の経営悪化とUFJに融資を受けていたダイエー等の破綻等の背後には、日本を金融的に従属させ、日本国民から富を吸い上げる構造を強化しようとするアメリカ政財界の意思が貫かれている。そして、この一連の対日経済戦争の最大の標的が、郵政公社なのである。

 国民の個人資産1400兆円の約4分の1を占める郵便貯金・簡易保険の345兆円を市場に吐き出させて、これを奪い取ろうとするのが、アメリカ主導による郵政民営化である。今年の10月からいよいよ民営化が開始されるが、現在の法律を改正しなければ、おそらく数年のうちに、アメリカ政財界の目論見が現実のものとなるだろう。郵貯・簡保の資産は、年金の200兆円と併せて、日本国民の虎の子ともいえる財産だが、いまのままでは、いいようにむしりとられるおそれがある。

 さらに、これもアメリカ政財界の圧力で本年5月に解禁になった三角合併によるM&Aの手が、日本の企業を襲っている。昨年、からくも1年間の施行延期をしたことにより、ある程度、企業の防衛体制が取られているようだ。しかし、わが国を代表する超優良企業であっても、ハゲタカファンドの集中攻撃を受けたなら、厳しい状態に追い込まれるだろう。

 小泉=竹中政権の従米売国政策、言い換えるとアメリカ政財界による日本への金融支配政策の結果が出てくるのは、まだまだこれからである。
 中国・北朝鮮と安全保障の問題、今後のアメリカ・韓国・台湾の選挙の影響等、話しを広げるときりがないので、ここでやめるが、わが国は、かつてなく厳しい国際環境に耐え、乗り切っていく政治を確立しないと、興廃にかかわる地点に立っている。こうした時に国論が分裂し、政情が不安定になり、国家としての意思決定が滞ることは、避けたいところである。
 国民は、自分の私的な生活のことだけでなく、個人生活の基盤となる国家社会の在り方、日本の針路について大いに関心を高め、啓発し合っていくべきと思う。

本日は参議院選挙

2007-07-29 10:23:07 | 時事
 今日の日本では、政治が混迷し、国民の政治不信や政治への無関心が広がっている。そのため、選挙においては投票を棄権する人々が増え、投票率が非常に低い。
 本日は、参議院の通常選挙である。もしこの日記を読んでいる方で、まだ投票に行っていない方は、パソコンを止めて、選挙に行こう。
 自らの選挙権を無駄にすることなく、是非有効に行使していただきたいものである。

●投票の心構え

 国の興亡盛衰は、政治家の善し悪しにより決まる。また、政治家の善し悪しは、国民の投票いかんによって決まる。それゆえ、私たちは、自分の一票が、政治家の善し悪しを決め、さらに日本の興亡盛衰をも決定するものであることを自覚したい。
 総理大臣の一票も、一国民の自分の一票も、同じ価値がある。軽卒に投じてはならないと思う。
 投票をするに際しては、候補者の人物や、またどういう主張や政策を唱えているかを、よく見て判断する必要がある。
 本来、政治家の役割は、国家国民がより良くなるように導くことにある。自己の名誉心や権力欲によって、政治的な見識や自信を持たない者が選挙に出て、自分の名前を連呼し、国民に票をねだるようなことをやっているのは、政治を腐敗堕落させるものである。
 ましてや政党が、票集めのために、有名人やタレントに立候補を求め、その知名度や人気を利用するのは、政党としての価値を自ら貶める愚行である。

 特に参議院の場合、任期は6年で、その間に解散はない。これだけ長期間、国政を委ねるということは、候補者には、一時的な世相や時局でものを判断するのではなく、国家の根幹に関わる問題への考察力や、国家の将来に関わる長期的な視野が求められる。そのような能力・見識・経験を持った人物が選ばれるべきが、「良識の府」であることを期待される参議院なのである。
 全国の有権者が、参議院にふさわしい人物を一人でも多く選出なさるよう期待したい。

●参議院の新たな位置づけ

 今日、参議院は、二院制の一方の府として果すべき特徴を失い、第2衆議院のような様相を呈している。実際、立候補者の中にも、衆議院で駄目だったから参議院でというような行動を取る者がいる。
 これは、参議院の位置づけが明確でないことにもよる。憲法を改正する際、もし二院制を維持するのであれば、参議院をどういう機能のものにするかは、一つの検討点である。
 新憲法において、参議院をどのように位置づけるべきか、以下に私案を示す。

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◆新憲法のほそかわ私案より

(参議院の組織)
第六十九条 参議院は、広域別に比例代表制により選挙される議員及び推鷹制により選任される議員で組織する。
2 広域別に選挙される議員の定数は、衆議院議員の定員の五分の三以上とし、法律で定める。
3 現職の内閣総理大臣及び両議院の議長、及びそれらの経験者で構成する参議院議員推薦会議は、法律の定めるところにより、学識経験者の中から、参議院議員を推薦によつて選任する。
4 推薦制による議員の定数は、広域別に選挙される議員の定数の三分の一以下とし、法律で定める。

(参議院の任期)
第七十条 参議院議員の任期は、六年とする。
2 三年ごとに、議員の半数を改選する。
3 推薦制によって選任される議員は、就任後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に、国民審査に付されるものとする。

(両議院の役割)
第七十一条 条約案および国家予算案は、衆議院が先議権を持つ。これらは衆議院による決議後、参議院で否決された場合、衆議院による再決議により法案は成立する。但し、再決議は国会休会期間中を除き六十日を経なければならない。
2 参議院は、国家決算案及び複数年にわたって継続して国費を支出する予算案に関して、先議権及び優先議決権を有する。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08h.htm
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 組織については、一部推薦制の推薦対象を学識経験者とする案である。これにより、参議院を「良識の府」とする可能性が開かれることを期待する。
 議員の定数については、例えば、衆議院議員を200名とすれば、参議院の広域比例代表制による議員が120名、推薦制による議員は40名となる。
 任期について、第3項は推薦制による議員に対する国民の判断の権利を保障する機会として、国民審査を行なう。
 役割については、両議院の議員は、選出方法は異なれども、根本的には国民全体を代表することを明記したうえで、参議院に独自の権限を与えるという案である。

 今回選出される参議院議員は、おそらく戦後初の憲法改正案を審議することになるだろう。その時、参議院の役割についても審議する立場となる。参議院の役割について、自ら考え、立案・上程できるような人物が、一人でも多く選出されることを希望する。

参議院選挙を前にして寸感5

2007-07-27 13:05:43 | 時事
●国民新党の選挙戦術への疑問

 国民新党は、民主党と選挙協力をしている。今年3月に、綿貫民輔代表が民主党代表の小沢一郎氏と参議院選挙における選挙協力を確認し、互いの候補を推薦し合うことを発表した。目的は、自公の議席を過半数割れに持ち込み、次段階で与党から政権を奪うことにある。
 先日、夜のテレビニュースで、小沢氏と亀井静香代表代行が記者会見に臨み、談笑しているのを見た。選挙という数の戦いにおいては、大義は隠れ、合従連衡の術策がまかり通る。改めて政治家として節操のない姿に苦笑を禁じえない。
 
 一昨年の9・11衆議院選挙は、郵政民営化の是非を巡って争われた。この時、郵政民営化がアメリカの要望に応じて行なう売国的な政策であることをよく理解し、信念をもって反対した政治家は、ごく少なかった。
 私の知る限り、平沼赳夫氏、亀井静香氏、亀井久興氏、小林興起氏、小泉龍司氏らである。彼らは、郵政民営化の焦点は、郵便事業ではなく、郵便貯金と簡易保険であることを理解していた。当時の郵政民営化法案がそのまま成立すれば、国民の貴重な財産である郵便貯金・簡易保険の計345兆円の資産が、やがてアメリカの銀行・保険会社に食い物にされることは、明らかであり、これは日本の国益と国民の利益に反すると判断して、郵政民営化に反対したのが、彼らであったと私は評価している。
 これに比べ、綿貫民輔氏は、富山県に本社のあるトナミ運輸の経営者上がりで、郵便事業が民営化されると自社が郵便局から請け負っている仕事が減るという私的な理由で、郵政民営化に反対したものと思う。そこで、先ほどの政治家たちとは区別して私は考えている。

 9・11衆議院選挙では、自民党とマスメディア多数は、民営化賛成派=善玉、反対派=悪玉というマンガ的なイメージを国民に広報した。大多数の国民は、そのイメージを植えつけられて、郵政民営化の実現に駆り立てられた。その結果、この選挙は、自民党の歴史的大勝となった。当時の小泉首相は、反対派に圧力をかけ、反対派は公認せず、党からも追い出した。
 この時に生まれた政党の一つが、国民新党である。もし国民新党に集う政治家が、その時の信念を貫く意思を堅持していれば、民主党と選挙協力という術策は取らないだろう。基本的な国家構想が大きく異なるからである。

 先ほどの郵政民営化反対の政治家のうち、平沼赳夫氏、小泉龍司氏は現在無所属、綿貫民輔氏、亀井静香氏、亀井久興氏、小林興起氏は国民政党。小泉氏と小林氏は、落選したので議員ではない。小林氏は、今回の参院選に比例区で出ている。

●政治家は大義を貫いて、国民を啓発せよ

 私は、わが国に必要なのは、議席と数の確保に汲々として、大義を曲げるような政治屋、政治業者ではなく、どこまでも大義を貫き、国民を啓発し続ける指導者だと思う。
 櫻井よしこ氏も、政治家にそのような指導者であることを求めている人のひとりのようである。先日引いた産経新聞の連載「2007参院選 何たる選挙戦」の今朝の記事は、櫻井氏の意見を掲載している。共感することが多いの以下にクリップする。

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●産経新聞 平成19年7月27日付

http://www.sankei.co.jp/seiji/senkyo/070727/snk000.htm
【2007参院選】何たる選挙戦(4)首相の理念 継続が大事

 安倍晋三首相は、明治時代以来続いてきた官僚主導の政治を国民に取り戻すという意義ある政策を実行に移してきた。そのひとつが、先の国会で成立した公務員制度改革関連法である。また、集団的自衛権の行使についても、これまでは内閣法制局の解釈によって手足を縛られていたが、これを見直す検討を始めた。

 一部の知識人やメディアは安倍首相に「ネオコン的」「強権的」「右翼的」などといった形容詞でレッテルを張る。だが、改正教育基本法、国民投票法といった国家の屋台骨を作る部分だけでなく、安倍首相はこれまでの政権が背を向けてきた中国残留日本人孤児の国家賠償訴訟で和解したり、薬害肝炎訴訟で和解の意思を示すなど「優しさ」「思いやり」を感じさせる政策も実行している。残念ながらこうした高い評価を与えていい政策が参院選で争点になっていない。

 年金問題は国民の国家への信頼感を受け止めきれなかったという意味で大事な問題ではある。だが、今回選ばれる参院議員の任期は6年間ある。その任期の中では、憲法改正が非常に重要なテーマになるだろう。そうした論点を抜きにして、年金制度などの技術論だけで参院議員を選ぶのはあまりにも残念だ。

 漠然とした空気の中で安倍首相、安倍政権批判が渦巻いている。年金問題、故松岡利勝前農水相の自殺や事務所費問題、果ては赤城徳彦農水相の「絆創膏(ばんそうこう)問題」といった事柄で、ムードができている。安倍政権は信頼できないという空気が蔓延(まんえん)し、本質的な議論がなされることが少なくなっている。

 このような形で安倍首相が批判される一因は、人事の拙(まず)さであろう。小泉純一郎前首相も人脈が狭く、「人を知らない人だ」「勉強していない人だ」と思ったが、安倍首相はそれ以上ではないか。

 首相の「人事力」の不足が、閣僚のスキャンダルなどの些末(さまつ)な問題を引き起こし、本来評価されるべき政策、法案を通してきた実績がつまらない形で帳消しにされている。

 首相が参院選後に政権を維持するのであれば、有力なアドバイザーを置くことが必要だ。首相と価値観を共有し、加えて世の中のことがもう少し分かる人材を脇に置かなければいけない。はっきり言って、今のままの人事力では政権はもたないだろう。どんなに良い理想を持っていても、内閣や党の要に、上手に人材を配置できなければ、それを実現するのは無理だ。

 参院選で、年金に議論が集中しているのは、国民にとって切実であるとともに、民主党が選挙戦の争点に年金問題を設定し、それを朝日新聞をはじめとする一部メディアがあおった面はある。しかし、安倍首相・自民党も憲法改正でなく、年金を最大の争点にした。6年間の任期で解散がない参院議員を選ぶ選挙では外交や安全保障など、国家の基本的な問題を考えなければいけないのに、それを問い続ける覚悟がない。争点を年金にしたのは首相のある種の弱さの反映ではないか。

 首相には、堅固な価値観を貫くことが政治的強さにつながることを認識してほしい。

 たとえば、北朝鮮は安倍首相の失脚を願っているが、それは、安倍政権は歴代政権で唯一、北朝鮮が恐れた政権だということだ。対北政策で決して揺らがなかったからこそ、ようやく金正日政権から、軽んじられない政権になったことを忘れてはならない。

 これらも含めて、有権者が安倍首相の実績を総合的に正当に判断して、それでも信頼できないとするのであれば、首相は甘んじて受けるしかない。しかし、閣僚スキャンダルや年金問題だけをみて、投票するのは全体像を見失っている。

 私は、安倍政権が続いてほしいと考えるが、大事なのは首相が掲げた理念、価値観、憲法改正による自立した国家を目指すといった考えが継続されることだ。安倍首相の継続を好ましいと思いつつも、万一の場合、まだ52歳なのだから、一度、退陣し、強靭(きょうじん)なる精神を身につけてから再チャレンジするというほどの余裕を持ってほしい。(ジャーナリスト・櫻井よしこ氏 談)

(2007/07/27 07:48)
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 「首相には、堅固な価値観を貫くことが政治的強さにつながることを認識してほしい。」
 「大事なのは首相が掲げた理念、価値観、憲法改正による自立した国家を目指すといった考えが継続されることだ。」

 こうした櫻井氏の意見は、安倍首相のみならず、わが国を再生・発展させようと考える政治家のすべてにしっかり受け止めてほしい言葉だと思う。郵政民営化に反対し、それぞれの道を選んだ政治家にも傾聴してほしい言葉である。

参議院選挙を前にして寸感4

2007-07-26 20:13:49 | 時事
 私には支持政党はない。選挙は人物で選ぶ。
 自民党は腐敗した政党であり、大改革を要すると思っている。米ソ冷戦の終焉と55年体制の崩壊後、自民党は自己改革出来ないまま惰性で来てしまった。小泉前首相は、その改革に取り組んだかのように見られているが、実際にやったのは、わが国の伝統を尊重し、またアメリカに対して国益を守ろうとする勢力を押さえ込み、その一部を追放したことだった。
 安倍晋三氏は、その小泉政権の官房長官を務めた。首相に就任してからは、伝統尊重的保守の姿勢を明確にして、戦後体制からの脱却に取り組んでいる。しかし、自民党の腐敗した体質を変えることのないまま憲法改正、教育再生、国防充実等を進めようとしているため、大きく進もうとすればするほど、恥部があらわになり、政権がダッチロールし始めている。

●民主党とは、いかなる政党か

 55年体制において自民党に対峙していた社会党は、ソ連圏の崩壊と共に解体した。その後、保守・中道・左翼が集合離散を繰り返した結果、民主党が結成され、今日に至っている。今回の参議院選挙では、民主党が躍進し、野党が参議院の過半数を取る可能性が高いと見られている。9・11衆議院選挙では、事前の予想に反して敗れた民主党だが、参議院で伸びれば、次の衆議院選挙は、政権が射程に入っている。

 では一体、民主党とは、どういう政党か。日本の舵取りを任せられる政党なのか。

 民主党には、自民党出身の保守系政治家がいて、自民党に対抗する二大政党のようなイメージを与えている。このイメージで見ると、民主党は、旧民社党や旧社会党右派を保守の方に引き込んで、中道・左翼の全体を保守化させたところに成立した政党と考えられる。自民党を厳しく批判する若手の保守系政治家は、アンチ自民で戦うために民主党から出馬する。無所属では選挙に勝てないとなると、民主党しかないのだろう。そうした若い保守系の政治家の存在も、民主党の二大政党的なイメージをかもし出している。
 しかし、実態は、代表・副代表等の上層部に保守系の有名政治家がいるものの、下層部は主に労働組合を支持母体としているのが、民主党である。表面はアンチ自民党の保守・リベラル、中身は旧民社党・旧社会党系を主とした民主社会主義・社会民主主義である。
 ちなみに、比例代表の当選者を見ると、ほとんどが労働組合の組織票による。電力総連・電機連合・情報労連・JR総連・UIゼンセン同盟・自動車総連・自治労・JAM(機械・金属労組)等。
 とりわけ、日教組と解放同盟が支持団体に入っていることが重要だと私は思う。そのため、民主党は日教組と解放同盟の思想・運動を受け入れ、日教組の反日自虐教育・ジェンダーフリー教育・過激な性教育を容認し、解放同盟が目指す人権擁護法の成立を図る政党なのである。

 政党は、政治家個々の人気だけでは、選挙に勝てない。勝敗は、組織票をどれだけ確保しているかにかかっている。民主党は労働組合・左翼団体の組織票にのっかっている。
 この点から見ると、民主党とは、いわゆる冷戦の終焉と我が国の55年体制の崩壊後に、旧社会党が生き延びるために民社党・自民党の一部を取り込み、アンチ自民の一点で糾合し、保守の装いのもとに労働運動・左翼運動を行っている政党である。
 当然、その歴史観、国家観、人権論は、労働組合・左翼団体のものと近くなる。個々の党員によって個人的な考えの違いはあろうが、全体としては、「誇りある歴史教育」や首相の靖国参拝に反対、外国人参政権や人権擁護法案に賛成ということになる。それは、上記のような構造によっていると思う。
 それゆえ、私は民主党は、日本の舵取りを任せられる政党ではないと思う。民主党政権は、国家溶解・日本沈没の執行人となると思う。

●民主党は、日本の政党としての一線を超えた

 民主党は、今回の参議院選挙で、一線を超えた。それは、わずか1年7ヶ月前に帰化したばかりの元在日コリアンを比例区の候補に立てたことである。その候補は、金政玉氏。キム・ジョン・オクというコリアン・ネームで、日本の国政選挙に出ている。見逃せないのは、キム氏は、在日本大韓民国民団(民団)の職員だということである。
 民団は、在日韓国人の権利のために活動しているだけでなく、彼らの祖国・韓国の国益のために活動している団体である。その職員が日本に帰化し、国政に参画すれば、日本の国益よりも韓国の国益、日本国民の権利よりも在日韓国人の権利のために行動するだろう。

 民主党は、こういう人物を比例区の候補者に立てている。私は、民主党は一線を超えたと断定する。一線を超えたとは、日本の主権や国益を守るという日本の政党として守るべき絶対線を超え出たということである。日本の政党でありながら、日本の主権や国益を守り、日本国民全体の利益を追求するよりも、周辺諸国や周辺諸国民の利益のために行動するような政党に変貌しつつあるということである。
 以下は、民主党が、帰化間もない民団職員を、公認候補をしたことを伝える記事のクリップ。

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●朝日新聞のサイト

http://megalodon.jp/?url=http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news.php%3fk_id%3d36000310707100001&date=20070710150655
下関出身 在日コリアン2世が挑戦
2007年07月10日

 下関市の在日コリアンにとって、今回の参院選はこれまでにない選挙になりそうだ。同市出身の在日2世で日本国籍を取得した金政玉(キム・ジョン・オク)氏(51)が民主党公認で比例区に立候補するからだ。(山下知子)

 金氏は3歳の時にポリオ(小児まひ)で足が不自由になった。下関市立の小中学校を経て県立防府養護学校で学び、就職のため上京。現在は障害者団体の事務局次長と在日本大韓民国民団の職員を兼ねている。05年12月に日本国籍を取得した。参院選では、障害者差別禁止法の制定と定住外国人の地方参政権獲得を訴えるという。
 下関市内で韓国物品店を営む丁美沙枝さん(64)は、市内に住む金氏の姉(61)らを通じて同氏の主張を知り、応援している。韓国籍で、選挙権はないが「選挙を通じ、我々の思いや考えを日本社会に知ってもらいたい」と願う。
 地方参政権の獲得は、民団にとっても目標の一つ。県地方本部の李相福団長は「日本で生まれ育ち、日本人と同じように税金を払っている。義務ばかりで権利がないのはおかしい」と話す。
 在日コリアンの国会議員としては04年の参院選比例区で当選した民主党の白真勲(はく・しん・くん)参院議員(48)がいるが、通称名や日本語読みの氏名でではなく、本名のまま立候補するのは金氏が初めてという。民団県地方本部の幹部は「在日差別は根強く残る。その状況を打破するきっかけになれば」と話している。
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 補足として、私は、外国人が日本に帰化し、日本の政治に参画すること自体には、反対ではない。上記のケースにようなケースにおいて、帰化した在日コリアンが国政に出て、他の在日同胞に帰化を進め、日本国民として日本の主権・国益に貢献することを推進するのであれば、否定しない。

 外国人参政権問題の全般については、以下をご参照のこと。

 拙稿「外国人参政権より、日本国籍取得を」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion03f.htm

 次に、帰化人については、帰化後、地方自治及び国政の参政権を得るのは、一定の期間後と規定する必要があると思う。最低3年は置くべきだろう。その間、納税、遵法等の義務を果たしていることを条件につける。
 また帰化人は、国会議員にはなれるが、内閣総理大臣にはなれないことを、憲法に明記すべきだと考えている。以下はその私案である。

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◆新憲法のほそかわ私案より

(内閣総理大臣の資格)
第九十六条 内閣総理大臣は、出生によって日本国民たる者で、年齢満四十歳に達した者のうちから指名しなければならない。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08h.htm
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参議院選挙を前にして寸感3

2007-07-25 11:12:00 | 時事
■参議院選挙を前にして寸感3

 参議院選挙を前にして、各紙盛んに報道している。中でも産経新聞は、一面トップに「【2007参院選】何たる選挙戦」と題した特集を載せている。
 普通、一面であっても左角や下段に配置するような連載を、いきなりトップに持ってくるのは、産経新聞社が今回の選挙に日本の危機を見ているからだろう。一面の左角には「やばいぞ日本」という連載がある。その表題と参院選特集の「何たる選挙」という題名が、ガーンと響き合っている。

 参院選特集の記事は、記者たちの署名記事である。本日は、古森義久氏。ワシントン駐在の編集特別委員・論説委員である。アメリカの日本研究者たちは、参院選をどう見ているか。彼らの発言には、悔しいが同感するところが多かった。以下にクリップする。

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●産経 平成19年7月25日付
http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070725/skk070725000.htm

【2007参院選】何たる選挙戦(2)「醜聞・年金だけの争点は恥だ」

 「今回の参院選は、日本が今後国際的にどんな役割を果たすべきか、安倍晋三首相が示したビジョンへの賛否が問われるべきだと思っていたら、一連のスキャンダルと年金制度の管理ミスだけが争点のようになってしまった。これはシェーム(恥)だと思う」
 今の選挙のキャンペーンを「恥」という激しい言葉で評したのは、米国の若手日本研究学者マイケル・オースリン氏である。米国大手紙への7月上旬の寄稿だった。
 エール大学の准教授から首都の主要シンクタンクAEIの日本政治・外交専門の研究員となり、2週間前にワシントンに居を移したばかりの同氏は30代後半だが、日本側でおなじみの米国の日本専門家たちに比べれば、ずっと若い。とはいえ日本とのかかわりは大学卒業後すぐに日本政府の外国語指導助手招請の「JETプログラム」に参加して、兵庫県で2年を過ごし、数年後にはフルブライト留学で東京へ。そのまた後に神戸大学での研究と、長く、深い。
 そのオースリン氏をAEIに訪ね、改めて問うと、いかにもこの世代の日本研究者らしい知日度の高さと従来の枠からの脱却を思わせる解説がはね返ってきた。
 「宮崎県に住む日本人の妻の両親とよく話すので、年金問題の重要性もよくわかります。しかし、米国のスカートの背後から足を踏み出すという意味の『戦後レジーム(体制)からの脱却』を戦後生まれの若い安倍首相が唱えたいまの日本は、まさに歴史的な分岐点にあると思う。日米同盟をどうするか。中国の拡張にどう対応するか。憲法9条や防衛政策をどうするか。世界にどう貢献するか。今後の30年ほどの国の進路を決めるエキサイティングな時期でしょう。そんな時の国政選挙なのに醜聞と年金だけ、というのはあまりに残念という意味で『恥』と評したのです」
 ワシントンの戦略国際研究センター(CSIS)研究員でオースリン氏と同じ世代の日本の政治・安保の専門家ニック・セーチェーニ氏は「どの国の選挙でも主要な争点は国内問題になりがちですが」と前置きしながらも、「いまの日本は日米関係の在り方一つとっても、どんな政策が適切なのか、さらに国際的により大きな役割をどう果たすか、非常に重要な課題に直面しているのに、参院選では目先の問題にのみ込まれた観です」と、類似した失望をにじませた。
 ただし、今後誰が首相になっても、そうした対外的な重要課題からは逃れられないだろうという。
 米国のマスコミの参院選に対する関心もきわめて低い。大手紙誌で日本の今の選挙戦を詳しく報道や論評した記事はごく少数である。
 その理由について、日本の安保政策などを長年研究してきた60代のベテラン学者、国防大学国家安全保障研究所のジム・プリシュタップ上級研究員は「選挙戦が、米国側でも関心の深い日本の長期の外交戦略、つまり北朝鮮の核武装や中国の勢力拡大への対処法などを論じず、スキャンダルだけが大きく投射され、もっぱら安倍首相への信任投票となったからでしょう」とみる。
 プリシュタップ氏はそして、安倍首相自身も憲法や安保という論題を、公明党の反応などに懸念して正面から後退させた一方、民主党も党内の政策見解一致がないために、安保や外交を論じたくないのだろうという考察を述べた。
 この点、オースリン氏は次のように語る。
 「民主党も政権の獲得を真剣に考えるならば、世界における日本というビジョンを大きく描かねばならないが、代表の小沢一郎氏は『永遠の革命家』という感じです。いつも闘いを挑むけれども、自分自身がどんな政策を有しているのか、不明という意味です」
 一方、オースリン氏によれば、安倍氏は「より強い日本、より自信ある日本」を目標に、民主主義や市場経済を基盤とし、安保努力の増強や日米同盟の強化を目指すという点で、是非は別にしても、政策の方向は明確だという。
 そうした政策目標は、これまた是非は別にして、日本という国家の在り方、そして日本国民の生き方の根幹にかかわる選択であろう。
 だがその是非が少しも論じられない日本の参院選の現状を、オースリン氏は「恥」という言葉で率直に批判したのだった。(ワシントン 古森義久)
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 上記の日本研究者が所属する研究所は、アメリカの国策に影響力を持つシンクタンク。
 AEIは、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所。もとは伝統的な保守系だが、今はネオコン派の一大拠点。
 戦略国際研究センター(CSIS)は、リベラル系。ネオコン派の牙城。ブッシュ政権に多大な影響を与えている。
 アメリカ国防大学国家安全保障研究所(INSS)は、超党派のレポートを出している。アーミテージ報告もここから出たもの。


参議院選挙を前にして寸感2

2007-07-24 12:38:26 | 時事
 安倍政権は「美しい国・日本」を目指して「戦後体制からの脱却」を掲げ、憲法改正、教育再生、国防充実等、国家の根幹に関わる課題に取り組んできた。そして、安倍首相は、今回の参議院選挙では、憲法改正を争点に打ち出したいと語っていた。ところが、首相が任命した大臣の不祥事が続き、さらに年金の5千万件を超えるデータのミスが露呈し、国民的な大問題となっている。
 ここにいたり、国民の関心は、国家根幹の問題よりも、自分の生活に直結する問題に向き、参議院選挙の争点は、年金問題に収斂しつつある。自民党は、責任をもって年金の支払を行なうと言うが、現実的な実行可能性は疑われる。民主党は、生活が第一と、国民の私的利害を強調する戦術をとっている。もし本当に年金問題を問うのであれば、社保庁の歴代長官や職員の責任という問題がある。常識的に考えられないほどずさんな事務、問題を放置してきた公務員の職務怠慢や無責任体質が追及されねばならない。民主党は、自治労が支持母体の一つである。小沢党首がこの点に触れずに、政府与党への攻撃を行なうのは、国民を欺くものである。本来は、自民党・民主党が協力して、年金問題の解決と公務員改革を推進すべきものである。
 ここで、自民党が大敗し、次の衆議院選挙で政権交代が行なわれれば、「戦後体制からの脱却」は挫折し、改憲は遠のき、教育再生は日教組の抵抗を許すだろう。そして、外国人地方参政権など国家の溶解につながる危険性のある法案が上程されることになるだろう。それゆえ、今回の参議院選挙は、日本の将来に関わる重大な選択の機会となる。
こうした状況をよく捉えていると私が感じたのが、憲法学者の百地章日大教授の一文である。
以下はその記事のクリップ。

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●産経新聞 平成19年7月20日付

【正論】百地章 憲法問題こそ参院選の焦点
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/68368/

■この選挙が改憲の成否決することも

≪「年金選挙」への疑問≫
 参院選も中盤を迎え、争点はやや変化してきたが、依然「年金選挙」の様相を呈している。一昨年の郵政解散では、郵政民営化問題が唯一の争点とされ、シングル・イシュー選挙の弊害が厳しく批判されたはずであった。それにもかかわらず、今回も同じ過ちを繰り返そうとするのか。
 もちろん年金問題は国民の切実な関心事であり、これが参院選の争点の一つとされるのは当然である。しかし、解散がなく、長期間国会に議席を有する参議院議員に託すべき事柄は、年金問題だけではあるまい。
 そもそも、年金問題発生の主原因が、自治労に支えられた社会保険庁の「親方日の丸」的体質にあったことは、先の検証委員会中間報告が示すとおりである。であればこそ安倍内閣は旧国鉄と同様、社会保険庁を解体し、民営化によって抜本的解決を目指した。
 民主党がこの「宙に浮いた年金」問題を国会で取り上げ、解決のきっかけを作った功績は大きい。しかし、その民主党の現職参議院議員や候補者の中には、5人もの自治労幹部(現・元)がいる。民主党が社保庁を解体する改革関連法案に反対したのは、これが理由なのであろうか。

≪隣国の軍事的脅威思え≫
 参院選の最大の争点とは何か。それは参議院にふさわしい国家の根幹にかかわる長期的課題、例えば憲法改正、外交、防衛、教育などといったテーマである。
 憲法改正国民投票法の成立によって、憲法改正問題は全く新しい局面に突入した。3年後には国会によって憲法改正の発議がなされる可能性が出てきたからである。参議院議員の任期は6年あり、今回選出される議員の任期中に憲法改正の発議がなされる可能性はかなり高い。その際、参議院に憲法改正問題を託すに足る人材を確保できているかどうかは、文字通り国の命運を決する。
 各党のマニフェストを見ると、自民党は155の約束のトップに「新憲法制定の推進」をあげているが、7つの重点課題の中では、最後尾に置かれてしまった。これに対して、年金と共に、憲法9条改正反対を前面に打ち出しているのが、共産党と社民党である。安倍晋三総理の主張する「戦後レジームからの脱却」の中心課題は憲法改正のはずである。なぜこの問題をもっと積極的に取り上げないのか。
 現在、憲法改正を支持する国民は、各種世論調査でほぼ過半数を占めているが、ここ数年で改憲支持の国民は約1割(『日経新聞』)から2割(『読売新聞』)も減少してしまった。これは護憲派の巻き返しによるものであろう。もし今回の参院選で護憲派が3分の1以上の議席を占めることになれば、当分、改憲の発議は行えなくなる。
 実は、昭和27年の講和独立前後から、憲法9条改正の機運が一挙に高まったことがあった。この時、護憲派はいち早く学者・文化人を中心に「平和憲法擁護の会」を立ち上げ、さらに組合やマスメディアまで巻き込んで「憲法擁護国民連合」を結成している。そして憲法改正反対の国民運動を展開し、昭和30年2月の衆院選と翌31年7月の参院選において、3分の1以上の護憲勢力を確保することに成功した。そのため、自主憲法制定を掲げて行われた昭和30年11月の保守合同(自民党の結成)も結果的には遅きに失し、結局、憲法改正は実現できなかった。
 それ故、もし同じ轍(てつ)を踏み、今回の参院選で改憲勢力が後退すれば、憲法改正の機会は大きく遠のく。増大する中国や北朝鮮の軍事的脅威を前にして、果たしてそれで良いのか。

≪外国人参政権問題争点に≫
 加えて、国の根幹にかかわる憲法問題として各党に聞きたいのは、外国人参政権問題である。近年永住外国人に対して地方参政権を付与すべきだとする意見もある。しかし参政権問題の本質は、運命共同体としての国家のかじ取りを外国人に委ねてしまっても良いのかということにある。国政と地方政治が切り離せない以上、これは地方参政権についてもいえる。
 この問題について、民主党は結党時の「基本政策」に「定住外国人の地方参政権の早期実現」を掲げ、小沢一郎代表や鳩山由紀夫幹事長らも外国人参政権に賛成している。一方、これに強く反対してきたのは自民党の安倍総裁や、彼が復党させた衛藤晟一氏らであった。
 政権選択選挙などといった声も聞かれる以上、この問題についてもきちんとした論議を行うべきではなかろうか。(ももち あきら=日本大学教授)
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参議院選挙を前にして寸感

2007-07-23 13:51:36 | 時事
 今回の参議院選挙は、自民党の大敗が予想されている。
 昨年、安倍政権が誕生して間もない10月の半ば、舛添要一氏の講演を聴いた。舛添氏は、自分が参議院自民党の選挙対策責任者だと語り、今回の参議院選挙の予想を述べた。現状では自民党が負けるのは明らかで、どこまでの議席減で抑えられるかだと語った。参議院選挙で過半数を割れば、各委員会の委員長を野党が多く占め、法案が通らなくなる。それで政局が不安定になると、衆議院の解散総選挙になる。そうなったとき、いま与党が勝つことは難しい、と舛添氏は述べた。

 その後、安倍政権は、選挙には不利なことが続いている。柳沢厚生労働大臣の「産む機械」発言、松岡農水大臣の金銭疑惑と自殺、国民的大問題となった年金問題等々。
 数週間前、産経新聞の一面に、舛添氏の参議院選挙の予想が乗った。一人区は4勝25敗だと言う。参議院自民党の選挙対策責任者の言葉として、私は非常に重みを感じた。
 選挙は水物ゆえ、結果がどうなるか分からないが、自民党には、きわめて厳しい選挙になることは間違いない。

 MIXIの愛国的な人達が集うコミュニティで、ここのところにわかに維新政党新風という団体が注目を集めている。
 私は、日本精神の復興を呼びかけている者だが、この団体の存在には、10年ほど前から注目している。基本的な考えに、共感するところが少なくない。しかし、同党が最近、ネットブロガーの瀬戸弘幸氏と連携し、瀬戸氏が選挙に候補者として出るにいたって、懸念を感じている。

 瀬戸氏は『ヒトラー思想のススメ 自然と人類を救済するナチス・ヒトラー世界観の120%肯定論』(展転社)という著書があり、ナチスを礼賛している。氏自身のオフィシャルサイトの「思想と行動」に、次のようにある。
 「ナチスやヒトラーを礼賛する思想の持ち主であり、1991年に国家社会主義者同盟を設立。国家社会主義日本労働者党の山田一成らと結託する。同盟の宣伝を目的として、鉤十字をあしらったアジビラを大量に貼り出したため、警察からマークされてガサ入れを被ったり、『週刊プレイボーイ』等の一般メディアで紹介されたりするなどして、少なからぬ社会的反応を呼び起こした。」
http://zzz.co.jp/move.html
 また、氏のブログ「極右評論」には、ナチス・ヒトラーを礼賛する意見が掲載されている。
http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/cat_1449891.html

 真の日本精神は、ナチズムとは決して相容れないものである。わが国は、日独伊三国同盟を結び、世界制覇をたくらむヒトラーの謀略に乗せられた。時の指導層は、本来の日本精神から外れて、西洋の思想であるファシズムを模倣し、国の針路を誤まった。
 このたび政見放送で、新風の魚谷代表が瀬戸氏と二人三脚で政見を述べているのを見たが、こうして新風が瀬戸氏と一体となった活動を行なっていくならば、真の日本精神から遠ざかっていくと思う。

 わが国の再建のために、最も必要なことは、日本精神を復興し、国民が真の日本精神に目覚めることであると私は思う。
 政権を担う政党が、欧米のリベラル・デモクラシーを党是としてわが国の伝統・文化・国柄を軽んじ、外国への従属に甘んじ、また利権や談合によって腐敗した体質を改められなければ、日本の軌道を照らし、国を導くことはできない。
 また、既成政党以外の団体も、本来の日本精神を根底に持って活動するのでなければ、国の在り方を変える真の変革の力にはなれないと思う。

 ここ数ヶ月の国の混迷、また今後予想される迷走を憂え、日本を精神的なところから立て直すことが、ますます重要になっていると私は思うのである。

脱少子化のまとめ

2007-07-23 10:06:29 | 少子化
 脱少子化について書いたものをまとめて、私のサイトに掲載しました。
 通して読んでみたい方がおられましたら、以下へどうぞ。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02k.htm
 「脱少子化は、命と心の復活から」

 なお、7月8日に行なわれた「脱少子化フォーラム」に関するテレビ放送は、予定が延期になっています。
 29日21:00から東京MXテレビが、「東京少子化事情」を主題に、助産師の石村さんを取り上げる番組を放送予定でしたが、その日は参議院選挙の速報番組に替わりました。
 次週順延と思いますが、放送日がわかりましたら、お知らせします。

脱少子化は命と心の復活から9

2007-07-22 08:50:18 | 少子化
 最終回。

●憲法から変える

 日本の再建と脱少子化は一体の課題である。日本の運命と将来が懸かった重大な課題である。
 この課題への取り組みを成功させるには、国の根本を定める憲法から改めることが不可欠。
 憲法に、日本の歴史・文化・伝統を表現し、愛国心・伝統の尊重・公共心等を盛る。さらに、家族に関する条項を新設する。

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◆新憲法~ほそかわ私案より

(家庭の運営と保護)
第三十九条 家庭は、社会を構成する自然かつ最も基本的な単位である。何人も、各自、その属する家庭の運営に責任を負う。
2 親は、子に対する扶養および教育の義務を負う。子は親に対する孝養に努めるものとする。
3 政府は、家庭を尊重し、家族・母性・子供を保護するものとする。

(婚姻に関する基本原則)
第四十条 男女は互いの長所を認め合い、互いの短所を補い合って、社会の維持及び発展を担う。健常な成年国民は、家族を形成し、子孫を生み育て、教育を施し、生命と文化の継承に努めるものとする。
2 国の行政・立法機関は、次代を担う国民の育成のために、男女の結婚を奨励し、夫婦の子育てを支援する責務を負う。
3 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の信頼と協力により、維持されなければならない。
4 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、人格の尊厳、両性の権利の平等、家庭の保護に立脚して、制定されなければならない。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08h.htm
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 こうした家族条項を盛った新憲法のもとに、教育基本法と男女共同参画社会基本法を改正し、そのうえで現在の少子化対策基本法を練り直さなければならないと思う。

7.最も必要なのは、日本精神を取り戻すこと

●脱少子化をはじめ、日本の再建・発展は日本精神の復興から

 以上、生命に基礎を置いた考え方、行き方への転換、そしてそのうえで行なうべき脱少子化の方策を述べてきた。これらの転換及び方策の立案・実行に当たって、最も必要なのは、日本人が先祖から受け継いできた日本人の精神、日本精神を取り戻すことである。
 日本人は、家庭にあっては、親は子供を愛情を持って育ててきた。子どもは親に感謝して年をとっても大切にする。夫婦は互いの特徴を認め合って、欠点を補い合って和を大切にする。祖先を敬い、子孫の幸福を願って生活する。そういう生活をしてきた。また社会にあっては、互いに助け合い、共存共栄を心がける。また自然と調和し、自然環境を壊さないように工夫して生活してきた。こうした日本人の生き方の中には、宇宙の根本法則に従って生きる生き方があった。
 日本精神を取り戻すことは、脱少子化のために根本的に必要なことであり、さらにわが国の家庭・教育・政治・経済・外交等、さまざまな問題を改善するために、不可欠のことである。各自の中に眠る日本精神を発揚し、若い人々が多く結婚をし、家族が協力して子供を産む喜びを体験でき、安心して子育てのできるような国家社会をめざしていこう。(了)

参考資料
・「平成18年版 少子化社会白書」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2006/18webhonpen/index.html
・金子勇著『少子化する高齢社会』(NHKブックス)
・湯沢雍彦編著『少子化をのりこえたデンマーク』(朝日選書)
・林道義著『家族の復権』(中公新書)