東京電力・勝俣恒久会長が記者会見で初めて1~4号機の廃炉を明言した。日本政府は事故発生直後、米国の協力申し出を断っていた。3月11日、東日本大震災発生約1時間後、ルース駐日大使は首相官邸に電話し、全面支援意思を伝えた。また翌日、米政府は米軍の出動を正式に申し入れたが、日本政府はその申し出を断った。官邸も東京電力も事態の重大性を感知できず、自分たちの手で収拾できると軽く考えていたのだろう。
米側の提案は廃炉を前提にしたものだった。今週号の週刊文春(4月7日号)が詳細を書いている。米政府が考えている唯一の対処方法は、米軍の特殊部隊によって、原発を外からコンクリートで封じ込める案である。空から天井つきコンクリートのフレームを降ろし、外壁を作る。コンクリートや鉛を投下するといった案である。ルート米政府はその準備をしており、具体的な作戦計画も設備もあるという。
最初から廃炉を前提とすれば、事故解決の戦略と見とおしが立つ。廃炉戦略であれば、水素爆発や汚染水などによる事態の拡大・悪化を免れた可能性は高い。米政府の申し出を拒んだのは、戦略的思考のない政府、経営利益に固執する東電の体質だろう。非常事態宣言を発せず、東電に廃炉を指導できない政府。いまごろ廃炉、しかも6機のうち4機のみの廃炉を言う東電。ともに指導陣は、即刻姿勢を改めるべきである。
大阪大学大学院の山口彰教授によると、日本は原子力の技術は高いが、危機管理、アクシデント・マネジメントのノウハウに欠ける。アメリカは1979年のスリーマイル島原発事故の経験がある。ヨ-ロッパは1986年のチェリブイリ事故への対処の経験がある。わが国は、危機管理の意識・技術が弱いので、米欧諸国に協力を求め、人類の英知を結集して、事故解決にあたるべきである。東電の協力要請により、フランスから原子力企業アレバの最高経営責任者が来日するなど、国際的な協力体制が強化されてきたのは、事故解決への前進となることと思う。
わが国では汚染水をタンカーで回収する案、特殊な布で仮設建屋で覆う案、遠隔操作のロボットを使用する案等が検討されている。もはや福島原発事故は、日本国内の問題ではない。全世界的な問題である。現在の人類が持つ能力・技術をすべて投入して、原発事故の解決策を決め、それを断行することに期待する。
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●産経新聞 平成23年3月30日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110331/amr11033100040000-n1.htm
【放射能漏れ】
米非公式に原発管理全面支援を打診 官邸は返答せず“主導権”に警戒感?
2011.3.30 23:59
【ワシントン=佐々木類】東日本大地震に伴う福島第1原発の事故発生からまもなく、米政府が非公式に、原子炉冷却を含む原発の制御に全面的に協力すると日本政府に申し入れていたことが日米外交筋の話で分かった。日本政府と東京電力の初期対応に対する不信から、原発の被害封じ込めを米側が主導しようという事実上の意思表示となったが、日本側からの返事はなかったという。
同筋によると、1、4号機に続き3号機も損傷の恐れが出てきた震災発生から数日後の3月中旬、複数の米政府関係者が、原子炉の冷却と事故後の福島第1原発の被害管理に関する全面的な支援を非公式に日本側に申し入れてきた。
申し入れは外交ルートを通じて日本政府に伝えられたが、首相官邸から米政府への返事はなかったという。その背景について同筋は「原発事故管理の“主導権”が米側に移ることに日本政府が抱いた警戒感があった」と指摘している。
米国の打診は、日本における放射能被害の拡大を懸念すると同時に、カリフォルニアなど米本土西海岸へ放射性物質が上陸する危険を重視したものだった。
一方、イランによるテロ支援活動に詳しい米ノンフィクション作家、ケン・ティンマーマン氏は自身のブログで「11日夜(米国時間)から12日未明にかけて行われたホワイトハウスの会議で、原子炉冷却のため大型発電機の空輸が決まったが、日本政府が提案を拒否した」という米政府高官の話を紹介した。
原子炉の冷却をめぐっては実際、クリントン国務長官が11日に公の席で「日本に冷却剤を空輸した」と発言し、その後国務省が否定した経緯がある。
枝野幸男官房長官は18日、「米政府が原子炉冷却に関する技術的支援を申し入れたのを日本政府が断った」という一部報道に「少なくとも政府、官邸としてそうした事実は全く認識していない」と否定した。
●朝日新聞 平成23年3月30日
http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY201103290495_01.html
東京電力福島第一原発で、建屋が吹き飛んだ1、3、4号機に、特殊な布をかぶせて放射性物質の飛散を防ぐ策を菅内閣が検討している。原子炉を安定して冷却するための電源復旧などに向けた作業環境を確保するためだ。タービン建屋地下に漏れ出した高濃度の放射能を含む汚染水の対策には、汚染水をタンカーで回収する案も出ている。東電の作業は難航しており、より大がかりな計画が必要との認識だ。
関係者が朝日新聞社の取材に明らかにした。二つの対策は、放射性物質が原子炉から出続けていることで、原子炉の冷却作業がうまく
進まなくなったため、急きょ出てきた。自然環境に大量の放射性物質をまき散らせていることへのあせりもある。
大気への飛散対策では、まず1~4号機の建物内に付着している放射性物質に、特別な塗料を吹き付けて、閉じこめる。
次に、原子炉建屋の上部を失っている1、3、4号機の壊れた部分を、特殊な布製の仮設建屋で覆う。密閉すると再び水素爆発が起きる危険性が出てくるため、フィルター付きの換気設備を取り付けることも検討している。
タンカーで回収する方法は、強い放射性物質を含む汚染水の存在が、電線敷設やポンプなど各機器の復旧など、原子炉を冷やすために
必要な作業の妨げになっていることや、水量が増え海にあふれ出る危険性が指摘され始めたため、首相官邸を中心に28日に浮上した。
具体的には、第一原発の港湾部に空のタンカーを横付けし、2号機などに大量にたまっている放射性物質で汚染された水をポンプなどを
使って移す案が出された。
ただし、国土交通省などから、大型のタンカーをつけられる岸壁施設が整備されていない、など慎重な意見が出た。ポンプで水を移す際の作業員の安全が確保できない、といった反対意見も広がった。菅内閣はこのほかにも、厳しい放射線環境下で人間が作業することには限界があるため、ロボットを使ったり、機材をリモコンで操作したりするなどの対応も、産業界や米国と連携して考えている。
第一原発の事故問題などを担当する首相補佐官に任命された馬淵澄夫・前国土交通相が、細野豪志・首相補佐官とともにチームをつくり、対策を練り始めた。
対策チームには関係省庁や原子力安全委員会などの関係機関、東京電力、原発設備に関係する電機メーカー、ゼネコンなどが入っている。米国からも原子力規制委員会が参加している。
チームは「遮蔽(しゃへい)」「リモートコントロール」「燃料取り出し・移送」の三つの班に分かれ、検討作業を進めている。
「燃料取り出し・移送」班は、建屋が倒壊した場合、どうやって破損した燃料を取り出し、どこに運ぶかを検討している。
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米側の提案は廃炉を前提にしたものだった。今週号の週刊文春(4月7日号)が詳細を書いている。米政府が考えている唯一の対処方法は、米軍の特殊部隊によって、原発を外からコンクリートで封じ込める案である。空から天井つきコンクリートのフレームを降ろし、外壁を作る。コンクリートや鉛を投下するといった案である。ルート米政府はその準備をしており、具体的な作戦計画も設備もあるという。
最初から廃炉を前提とすれば、事故解決の戦略と見とおしが立つ。廃炉戦略であれば、水素爆発や汚染水などによる事態の拡大・悪化を免れた可能性は高い。米政府の申し出を拒んだのは、戦略的思考のない政府、経営利益に固執する東電の体質だろう。非常事態宣言を発せず、東電に廃炉を指導できない政府。いまごろ廃炉、しかも6機のうち4機のみの廃炉を言う東電。ともに指導陣は、即刻姿勢を改めるべきである。
大阪大学大学院の山口彰教授によると、日本は原子力の技術は高いが、危機管理、アクシデント・マネジメントのノウハウに欠ける。アメリカは1979年のスリーマイル島原発事故の経験がある。ヨ-ロッパは1986年のチェリブイリ事故への対処の経験がある。わが国は、危機管理の意識・技術が弱いので、米欧諸国に協力を求め、人類の英知を結集して、事故解決にあたるべきである。東電の協力要請により、フランスから原子力企業アレバの最高経営責任者が来日するなど、国際的な協力体制が強化されてきたのは、事故解決への前進となることと思う。
わが国では汚染水をタンカーで回収する案、特殊な布で仮設建屋で覆う案、遠隔操作のロボットを使用する案等が検討されている。もはや福島原発事故は、日本国内の問題ではない。全世界的な問題である。現在の人類が持つ能力・技術をすべて投入して、原発事故の解決策を決め、それを断行することに期待する。
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●産経新聞 平成23年3月30日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110331/amr11033100040000-n1.htm
【放射能漏れ】
米非公式に原発管理全面支援を打診 官邸は返答せず“主導権”に警戒感?
2011.3.30 23:59
【ワシントン=佐々木類】東日本大地震に伴う福島第1原発の事故発生からまもなく、米政府が非公式に、原子炉冷却を含む原発の制御に全面的に協力すると日本政府に申し入れていたことが日米外交筋の話で分かった。日本政府と東京電力の初期対応に対する不信から、原発の被害封じ込めを米側が主導しようという事実上の意思表示となったが、日本側からの返事はなかったという。
同筋によると、1、4号機に続き3号機も損傷の恐れが出てきた震災発生から数日後の3月中旬、複数の米政府関係者が、原子炉の冷却と事故後の福島第1原発の被害管理に関する全面的な支援を非公式に日本側に申し入れてきた。
申し入れは外交ルートを通じて日本政府に伝えられたが、首相官邸から米政府への返事はなかったという。その背景について同筋は「原発事故管理の“主導権”が米側に移ることに日本政府が抱いた警戒感があった」と指摘している。
米国の打診は、日本における放射能被害の拡大を懸念すると同時に、カリフォルニアなど米本土西海岸へ放射性物質が上陸する危険を重視したものだった。
一方、イランによるテロ支援活動に詳しい米ノンフィクション作家、ケン・ティンマーマン氏は自身のブログで「11日夜(米国時間)から12日未明にかけて行われたホワイトハウスの会議で、原子炉冷却のため大型発電機の空輸が決まったが、日本政府が提案を拒否した」という米政府高官の話を紹介した。
原子炉の冷却をめぐっては実際、クリントン国務長官が11日に公の席で「日本に冷却剤を空輸した」と発言し、その後国務省が否定した経緯がある。
枝野幸男官房長官は18日、「米政府が原子炉冷却に関する技術的支援を申し入れたのを日本政府が断った」という一部報道に「少なくとも政府、官邸としてそうした事実は全く認識していない」と否定した。
●朝日新聞 平成23年3月30日
http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY201103290495_01.html
東京電力福島第一原発で、建屋が吹き飛んだ1、3、4号機に、特殊な布をかぶせて放射性物質の飛散を防ぐ策を菅内閣が検討している。原子炉を安定して冷却するための電源復旧などに向けた作業環境を確保するためだ。タービン建屋地下に漏れ出した高濃度の放射能を含む汚染水の対策には、汚染水をタンカーで回収する案も出ている。東電の作業は難航しており、より大がかりな計画が必要との認識だ。
関係者が朝日新聞社の取材に明らかにした。二つの対策は、放射性物質が原子炉から出続けていることで、原子炉の冷却作業がうまく
進まなくなったため、急きょ出てきた。自然環境に大量の放射性物質をまき散らせていることへのあせりもある。
大気への飛散対策では、まず1~4号機の建物内に付着している放射性物質に、特別な塗料を吹き付けて、閉じこめる。
次に、原子炉建屋の上部を失っている1、3、4号機の壊れた部分を、特殊な布製の仮設建屋で覆う。密閉すると再び水素爆発が起きる危険性が出てくるため、フィルター付きの換気設備を取り付けることも検討している。
タンカーで回収する方法は、強い放射性物質を含む汚染水の存在が、電線敷設やポンプなど各機器の復旧など、原子炉を冷やすために
必要な作業の妨げになっていることや、水量が増え海にあふれ出る危険性が指摘され始めたため、首相官邸を中心に28日に浮上した。
具体的には、第一原発の港湾部に空のタンカーを横付けし、2号機などに大量にたまっている放射性物質で汚染された水をポンプなどを
使って移す案が出された。
ただし、国土交通省などから、大型のタンカーをつけられる岸壁施設が整備されていない、など慎重な意見が出た。ポンプで水を移す際の作業員の安全が確保できない、といった反対意見も広がった。菅内閣はこのほかにも、厳しい放射線環境下で人間が作業することには限界があるため、ロボットを使ったり、機材をリモコンで操作したりするなどの対応も、産業界や米国と連携して考えている。
第一原発の事故問題などを担当する首相補佐官に任命された馬淵澄夫・前国土交通相が、細野豪志・首相補佐官とともにチームをつくり、対策を練り始めた。
対策チームには関係省庁や原子力安全委員会などの関係機関、東京電力、原発設備に関係する電機メーカー、ゼネコンなどが入っている。米国からも原子力規制委員会が参加している。
チームは「遮蔽(しゃへい)」「リモートコントロール」「燃料取り出し・移送」の三つの班に分かれ、検討作業を進めている。
「燃料取り出し・移送」班は、建屋が倒壊した場合、どうやって破損した燃料を取り出し、どこに運ぶかを検討している。
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