ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

デフレ下の超円高を乗り越える積極財政を

2010-10-24 10:20:02 | 経済
 G20財務相・中央銀行総裁会議が閉会し、共同声明を出した。共同声明の主旨は次のとおりと報じられる。

・通貨安競争を自制
・経済の基礎的条件を反映し、為替レートの過度な変動や無秩序な変動を監視
・経常収支の過度の不均衡を削減し、持続可能な水準で維持するための政策を追及
・大規模な不均衡について今後、合意される参考となるガイドラインに照らして評価
・世界経済は回復を続けているが、下ぶれリスクは残っており、国や地域によって異なる
・銀行の新しい自己資本規制の枠組み「バーゼル3」を歓迎
・国際通貨基金は2012年までに、新興国の出資比率を6%以上、拡大

 世界的な通貨安競争は回避された格好だが、各国の利害は激しく対立している。
 アメリカのドル安放置、中国の人民元切り上げ拒否で、円高の圧力が強まる。わが国の政府の為替介入には、各国が反発する。日銀は事実上のゼロ金利政策を取っており、ほとんど打つ手がない。日本は「独り負け」になる可能性がある。
 円は史上最高値を更新することになるだろうという観測がある。1ドル=79円台どころか、ドルの実力からいくと、1ドル=60円くらいまで上がるかもしれない。円高が進めば、輸出品は価格が割高になるから、輸出産業は大打撃を受ける。国際的な競争力を持つ大企業が軒並み収益減少になると、国内の関連産業や関連企業は、あおりを受ける。賃下げ、倒産、失業等、デフレ下での円高昂進は、かつてないほど深刻な影響を日本社会にもたらすだろう。

 わが国はどうすればよいか。海外環境の好転は、ほとんど期待できない。日本は自力で経済を再興し、超円高でも耐えられる力をつけるしかない。それには、大胆な積極財政を打ち、デフレを脱却し、内需拡大を強力に進めることである。わが国には巨大なデフレギャップがある。供給力に対し、需要がひどく少ない。それゆえ、公共投資、減税等の景気刺激策を大規模に実施し、政府が需要を創出する。このように実施しても、デフレギャップが大きいため、インフレになるおそれはない。実質GDPを年率5~10%と拡大していけば、財政赤字は相対的に縮小する。財源は、豊富にある。国内に金融資産は、あり余っている。それを活用する政策を打てば、日本はよみがえる。
 失政を続けてきた政府・財務省は猛省し、これまでの財政理論、会計制度、緊縮財政、金融行政等を抜本的に改め、日本の潜在的成長力をいかんなく発揮できるような理論・制度・政策を採用すべきである。過去10数年間、幾人ものエコノミストが、日本経済を再興する提言をしてきた。政府・財務省はこれを無視し、マスメディアは国民に提言を伝えないできた。その結果、国民が被ってきた損害は計り知れない。この異常な状態を打ち破らなければ、わが国は世界で最も豊かな国になっていながら、自らの富を生かせず、ぼんくらの三代目のように自滅する。
 日本を金融支配するアメリカの圧力を押し返し、日本にゆすりたかる中国の理不尽を跳ね除ける、そういう気概が必要だ。迫り来るデフレ下の超円高に対応するため、政治家・官僚・学者・ジャーナリストは、妄夢から目を覚ませ、そして、日本人の魂を呼び起こせ!

 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月24日

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010231708005-n1.htm
通貨安競争「自制」を明記 数値目標は「参考指針」で決着、G20
2010.10.23 17:07

 【慶州(韓国)=田端素央】韓国・慶州で開かれていた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が23日、共同声明を採択して閉幕した。最大の焦点だった為替問題では、「競争的な通貨切り下げを自制する」と明記し、各国が為替介入などで自国の輸出に有利にする通貨安競争の回避で合意した。
 米韓が提案した経常収支の数値目標の導入は見送ったが、一方の国が黒字をため込む不均衡を是正するため、「経常収支を持続可能な水準で維持する」とし、参考となる指針の作成を打ち出した。
 為替相場については「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映し、より市場原理に基づくシステムに移行する」とし、介入で人民元を割安に抑えている中国などを念頭に、柔軟化を求めた。
 米国などの金融緩和で資金が流入し、自国の通貨高やインフレ圧力につながっていると不満を強める新興国に配慮し、先進国は「為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視する」と明記。これが新興国への資金流入を「軽減させる助けになる」と指摘した。
 中国の巨額の経常黒字と米国の赤字に象徴される不均衡是正のため、「あらゆる政策を追求する」とした。ただ、米国と韓国が提案した、各国が経常収支の黒字額と赤字額を2015年までに国内総生産(GDP)の4%以内に抑制する数値目標は、中国などの反対で調整が難航。声明では、「今後合意される参考となる指針に照らして評価する」との方向性だけを示した。
 世界経済の現状については「脆(ぜい)弱(じゃく)で一様ではないが回復を続けている」とし、下振れリスクが残っていると指摘。主要議題の1つだったIMF改革は、各国に経済力に見合った発言権を付与するため、新興国全体の出資比率を6%以上引き上げることで合意した。
 会議後に会見した野田佳彦財務相は、「一定の合意形成がなされたことを市場にも評価してもらいたい」と述べ、相場安定に期待を示した。今回の議論は11月11、12日にソウルで開催されるG20首脳会合に引き継がれる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010232033014-n2.htm
G20、際立った「対立の構図」 通貨安競争遠い沈静化
2010.10.23 20:30

 【慶州(韓国)=田端素央】23日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、通貨安競争の「自制」で合意したが、内実は逆に「対立の構図」を際立たせた。米国の超金融緩和政策であふれたマネーが新興国に流れ込み、通貨高やインフレ圧力を招き、為替介入などで防衛するという構図は変わらない。そのはざまで手をこまねく日本の円が標的となり、円高がさらに進む懸念がある。
 「今回の合意により、通貨安競争をめぐる論争は終息する」
 議長を務めた韓国の尹増鉉企画財政相は、終了後の会見で高らかに宣言した。
 だが、2日目の討議や水面下の調整は、米国が提案した「数値目標」一色に染まり、激しい駆け引きが繰り広げられた。
 初日は沈黙を守った中国は、「どのようなレベルでも数値目標が入った文書は絶対に受け入れないと突っぱねた」(国際金融筋)という。
 これに対し、米国高官はロイター通信に「合意は無理」と語り、早々に数値目標を取り下げたことを示唆。「人民元の切り上げを迫る揺さぶり」(同)との見方を裏付けた。
 日本政府関係者は「人民元切り上げだけでなく、ドル安容認まで狙った周到な戦略」と、米国がしかけた“爆弾”に舌を巻く。
 経常収支に一定の制限を設ける数値目標は、黒字をため込む中国の輸出を減らすため、人民元の切り上げを促す一方で、赤字国の米国はドル安で輸出を増やしてもかまわないという論理につながる。
 国際金融筋は「来月にソウルで開かれるG20首脳会議に持ち越された」との認識を示しており、米国はあきらめていない。
 通貨安競争は、沈静化にはほど遠いのが実情だ。
 「韓国はこれからも資金の流れを監視し、必要なときには措置をとる」。断続的にウォン安介入を繰り返している尹財政相は、会見後の欧米メディアのインタビューで平然として言ってのけた。
 ガイトナー米財務長官は「強烈な介入で自国通貨を割安にしている新興国は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいた市場決定方法に動くだろう。中国のように」と、名指しで改善を要求。だが、国際エコノミストは、「G20合意を受け、中国が介入を抑制する兆候はまったくない」と指摘する。
 一方で、欧州中央銀行(ECB)幹部は「声明は主要通貨のさらなる安定も求めている」と指摘し、米国のドル全面安を強く非難した。対立の構図は、入り組んでいる。
 国益をむき出しにした為替市場で、各国の“良心”に委ねるような「自制」が抑止効果を持つはずもない。今回の会議でも存在感を示せなかった日本もしたたかさと覚悟が求められる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010232055015-n1.htm
G20声明で黒字国日本に円買い圧力 週明け80円台突破で最高値更新も
2010.10.23 20:52

 外国為替市場では、G20の共同声明が、「世界経済の不均衡」に強い懸念を示したことで、黒字国の日本の円買い圧力が強まり、一段の円高が進むとの見方が出ている。円相場は、G20の様子見で1ドル=81円台前半で推移していたが、1995年に付けた過去最高値の79円75銭に迫る可能性もある。
 市場は声明について、経常収支の数値目標の明記は見送られたものの、「黒字国は通貨高で輸出を減らすことを迫った」(関係者)と受け止めている。また、「介入にも動きづらくなった」(同)との見方もある。
 第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは「人民元高への圧力が強まり、円も連れて上昇。場合によっては円が過去最高値を更新する場面もあり得る」と予想する。
 週明け25日には米中古住宅販売、29日には7~9月期の米国内総生産(GDP)速報値など重要な経済指標の発表を控えている。米国の景気悪化が確認されれば、追加金融緩和の観測が高まり、円買いドル売りが加速。週明けから大荒れの展開となる懸念もぬぐえない。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101023/fnc1010232101016-n1.htm
G20合意 円高阻止へ手足縛られた日本 再介入は困難?量的緩和も米が圧倒
2010.10.23 20:58

 【慶州(韓国)=田端素央】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が通貨安競争の「自制」で合意したことで、日本は先月15日に6年半ぶりに踏み切った為替介入の手足を縛られる懸念がある。日銀も4年3カ月ぶりに事実上のゼロ金利を復活させたばかり。米国の追加金融緩和などで一段と円高が進行し、景気の下振れリスクが高まれば、日銀も追加緩和を辞さない構えだが、打つ手は限られる。

■“お墨付き”なし
 「(介入は)過度な変動を抑えるのが目的で、大規模かつ長期に水準を是正するものではない」
 野田佳彦財務相は、G20を通じ、日本の介入への理解を訴えた。共同声明にも「過度の変動や無秩序な動きを監視する」との表現が盛り込まれ、一見すると、介入の“お墨付き”とも受け取れる。
 しかし、これは米国などからの資金流入による通貨高やインフレ圧力に直面している新興国に配慮したもので、先進国である日本は含まれない。
 日本はあくまで「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映し、より市場で決定される」という文言に縛られ、介入による操作は許されない。
 円相場の水準について、国際通貨基金(IMF)は、「中期的なファンダメンタルズにおおむね沿っている」と指摘しており、日本が再介入に踏み切れば、批判は避けられない。
 声明では見送られたが、米国が経常収支の数値目標を持ち出したことも逆風だ。赤字国の米国はドル安による輸出拡大を大義名分としており、黒字国の日本が介入でドル安のじゃまをすれば、日米間の軋(あつ)轢(れき)を招くのは必至だ。

■基金増額も辞せず
 介入という“伝家の宝刀”を封じられれば、円高阻止の手立ては、日銀の金融政策しかない。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は11月3日に、国債の購入拡大による大規模な追加緩和に踏み切るとの観測が強い。
 これに対して、日銀は10月5日にゼロ金利復活を含む「包括緩和」を決定。35兆円の基金のうち5兆円で国債のほか、リスクの高い社債や上場投資信託(ETF)などを買い取ることを打ち出した。
 日銀は「基金の額を積み増すことで、緩和に踏み切ったというシグナルを発信する」(日銀幹部)という、新しいバリエーションを手に入れた。買い取り対象をよりリスクの高い金融資産に広げるという選択肢もある。
 慎重な白川方(まさ)明(あき)総裁は「(基金の活用も)有力な選択肢」と、追加緩和の可能性を隠さない。
 ただ、日銀の包括緩和も、円高の流れを止める効果を発揮していない。日米の緩和合戦は、「マネーの量」を競う展開となっており、「兆円単位の日本に対し、兆ドル単位の量的緩和を繰り出す米国に太刀打ちできない」(市場関係者)ためだ。
 週明け以降、1ドル=80円台を突破するような円高局面に直面しても日本が切れるカードは少ない。
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