ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

「不都合な真実」を知ったら1

2007-04-30 09:34:17 | 地球環境
 これからアメリカの元副大統領アル・ゴアの映画及び著書『不都合な真実』について、書きたいと思う。この映画・書籍は、地球温暖化の危機を伝え、行動を呼びかけるものである。極めて重要なメッセージなので、趣旨を把握して参考にしたいと思う。10回くらいになる。
 最初は、前置き。

●人類の地球意識のめざめ

 人類が、地球環境の危機を認識し、取り組みを始めたのは、まだそう古いことではない。
 人類が、地球というこの惑星を自らの住まいと自覚したのは、宇宙から撮影した一枚の写真による。昭和43年(1968)12月24日、アポロ8号が撮った宇宙に浮かぶ、青く輝く地球の写真だ。この写真が世界中に報道されたことによって、人々は、はじめて「地球意識」とでもいうべき新しい意識を持つようになった。
 翌44年(1969)7月20日、人類史上初めて、有人宇宙船が月に着陸し、アメリカのアポロ11号の乗り組み員が、月面に降り立った。まさに歴史的な瞬間だった。私は、その時の衛星中継をテレビで目撃した世代だ。高校1年生、15歳の時だった。
 以後、地球環境を考える運動や、宇宙や地球を意識した文化運動、自然回帰の生活運動等が、先進国を中心に叢生した。地球に「ガイア」という名前をつけ、地球を意識を持った存在のようにとらえる考え方も広がった。

 アル・ゴアは、昭和23年(1948)生まれ。アポロの月面着陸の時には、21歳だったことになる。昭和40年(1965)にハーハーバード大学に入学し、政治学を専攻した。在学中の昭和43年(1968)、ゴアは、ロジャー・レヴェル教授から、地球の大気中の二酸化炭素の濃度を観測したデータを見せられた。レヴェルの測定は、地球温暖化の原因を解明する先駆的な研究だった。宇宙飛行士が宇宙空間から撮った初めての地球の写真を持ち帰ったその年に、ゴアは、地球の異変を知ったわけである。

●地球環境危機の認識

 地球環境の問題、地球規模の環境問題について、人類が最初に国際会議を開いたのは、昭和47年(1972)だった。その年の6月、ストックホルムで、国連人間環境会議が開催された。この会議の報告に基づくテレビ番組が、NHKで放送された。18歳の私はそれを見て、人類がかつてない問題に直面していることを知った。
 この会議には、114か国が参加した。キャッチフレーズは、「かけがえのない地球 (Only One Earth)」。バーバラ・ウォードとルネ・デュボスが、地球と人類の文明の危機を伝える報告をした。このかけがえのない地球を守るために「人間環境宣言」及び「環境国際行動計画」が採択された。109項目の行動計画が採択された。会議の初日だった6月5日は、「世界環境デー」と決められた。しかし、その後も人類は、地球環境や人口・エネルギー・食糧等の問題に、十分有効な取り組みをできていない。

 国連人間環境会議が開かれた同じ年、ローマ・クラブの依頼により、マサチューセッツ工科大学(MIT)内にドネラ・H・メドウズ、デニス・L・メドウズ、ヨルゲン・ランダースの3人を中心とする研究プロジェクトが設けられた。彼らは、コンピューターを駆使して、21世紀の世界の人口および産業の成長を予測し、研究発表を行なった。これが、『成長の限界』(ダイヤモンド社)である。
 本書は、西洋近代文明が目指すべき価値としてきた「成長」という概念に、反省を投げかけ、大きな反響を呼んだ。私もほどなく翻訳で読んだ。本書は、あらゆる分野からデータを集め、システム思考に基いて総合的に地球の状態を把握し、考えられるいくつかのシナリオを提示していた。具体的な政策と行動を求める問題提起の書だった。

●私の問題関心

 10代の終わりころから、人類社会の危機を意識し、苦悩していた私は、昭和51年(1976)に、大塚寛一先生の教えに出会った。それまで、私は、当時影響を受けていた共産主義の総括を中心に、西洋近代文明の克服とそれによる危機の解決の道を模索していた。大塚先生の教えと実証に触れたことで、私は、文明の根本的な転換をなし得る原理があることを知った。
 以来、私は、現代の人類にとっての最大の課題は、世界平和の実現と、地球環境の保全だと考えている。その課題を達成するには、日本に重要な役割があるとも認識している。
 地球環境を考える人には、国家や民族を否定し、地球市民として生きるという人がいる。そういう人の政治意識は、ほとんど左翼と変わらない。しかし、現実の世界は、さまざまな国家が並存している国際社会である。地球環境の問題も、個人や民間団体の活動は、規模が限られている。地球的な環境危機を改善するには、国際社会の単位である国家が主体とならなければ、大規模な動きはできない。

 西洋物質文明の中核をなすアメリカや、唯物的な共産主義の支配している中国が、人類社会を大調和の方向に導けるとは、思えない。日本には、人と人、人と自然が調和して生きる精神が伝わってきている。その精神が、21世紀人類の衰亡か飛躍かの岐路において、大きな役割を果すと私は思う。
 日本を再建し、日本文明の持つ潜在力を発揮することが、世界平和の実現と地球環境の保全の鍵となると私は考える。
 それゆえ、環境保全そのものの運動よりも、日本の再建を通じた人類文明の転換に、私の関心の要がある。この点は、30数年来変わらない。現在も同様である。ゴアの『不都合な真実』についても、この観点から書く。

 次回に続く。

「昭和の日」に日本を思う

2007-04-29 12:13:28 | 日本精神
●昭和という時代を振り返る

 明治時代の日本人は、日本精神を中心として一致団結していた。だから、6億のシナや3億のロシアに勝つことができた。ところが、日本人は、それ以後、段々、日本本来の特質を忘れ、一にも欧米、二にも欧米という考えにとらわれてしまった。大正の初めごろから、さかんに外来思想をとり入れ、それを中心に動いてきた。外来思想とは英米の資本主義、自由主義がそうだし、共産主義も入ってきた。その結果、本来の日本精神がないがしろにされ、政治家も日本の本質がわからなくなってしまった。

 日清・日露戦争に勝った後、アジアは安定し、自分から攻めて行かなければ他から攻撃されるような心配がなくなった。そうなると次第に、政治家が国のことよりも、自分の利益にとらわれて、腐敗・堕落していった。その政界の腐敗ぶりを見かねて、軍人が政治に口を出すようになった。明治天皇は、「軍人は政治に関与してはならない」という勅諭を出しておられるが、軍人がそのお言葉に背き、政治に介入するようになった。そして、青年将校などが、時の政府を倒せばなんとかなると考えて、5・15事件、2・26事件を起こした。また海外では、軍部が満州事変を起こし、支那事変にいたると、シナで泥沼のような戦いに引きずり込まれていった。

 当時、わが国では盛んに日本精神が唱えられていた。しかし、大塚寛一先生は、当時の学者や文化人等が唱える日本精神は、本来の日本精神からはずれてきていると見ておられた。そして、昭和14年9月11日、「大日本精神」と題した建白書の送付を開始された。先生は、独伊と結ぶ三国同盟に反対し、対米英開戦に反対・警告された。奥様の国恵夫人が先生の書いたものを編集・印刷・発行された。毎回千余の建白書を、時の指導層に送り続けた。開戦すれば、日本は大敗を喫し、新型爆弾が投下され、大都市は焦土と化すと予言された。しかし、時の指導層はその建言を受け入れなかった。
 そして、ヒットラーやムッソリーニ等の覇道をまねた東条英機が、遂に英米と開戦した。そのため、日本は建国以来はじめての敗戦を喫してしまった。
 昭和天皇は、三国同盟に反対され、英米との開戦を避けるよう強く願われていた。当時の軍部は、明治天皇の遺勅に反し、昭和天皇の御心に背いて暴走した。

 戦後は、日本精神そのものが間違っているように教育している。しかし、日本精神が悪いのではない。指導者が日本精神を踏み外したのである。
 戦後の日本は、いま述べたことを根本的に反省して、再出発すべきだった。しかし、その反省をせずに進んできていることに気づかねばならない。

●昭和の残課題を達成し、日本の役割を果たす

 本日は、初めての「昭和の日」である。この日は、昭和という激動と復興の時代を振り返る意義ある日である。それとともに昭和の残課題を確認し、その課題の遂行に心を新たにする日でありたい。
 私は、残課題の最大のものは、日本人が日本精神を取り戻すことであると考える。自己本来の精神を失った国民・民族は、21世紀の世界で存立・繁栄を保てない。
 まず日本精神を取り戻し、具体的には三つの課題を成し遂げる必要がある。それは、憲法の改正、教育の再生、皇室制度の復活・強化である。これらは、安倍政権が「戦後レジュームからの脱却」と掲げている目標の中心部分と重なる。これら三課題を達成してこそ、経済・外交・安全保障・家庭・脱少子化等の分野でも改善が可能となる。
 これらは、本来昭和の時代になすべきことだった。今、この平成の時代に早期になし終えるべき課題である。

 世界全体で見れば、21世紀の人類の課題は、世界平和の実現と地球環境の保全である。わが国は、これらの地球的課題において、中核的な役割を担う立場にある。
 課題の成就には、時限が見えてきている。前者のタイムスケールは、米中対決であり、後者のタイムスケールは、地球温暖化である。

 米中対決は、2020年代半ばから30年代以降に現実的な可能性が高まる。その時、台湾・東シナ海の覇権をめぐる戦いに、わが国は直面することになるだろう。これは、わが国の存立・興亡に関わる事態となる違いない。
 また、地球温暖化は、NASAゴッダード宇宙研究所のハンセン博士は、人類の努力によって地球温暖化を阻止するには、時間はあと10年しかないと警告する。2010年代半ばが分水嶺となるだろう。イギリス政府に気候変動が経済に及ぼす影響について報告したスターン博士も、温室効果ガスの削減対策を実行しないと、世界の平均気温が2度Cを超えるのは、2035年と予測する。
 これらの米中対決による世界核戦争の危機、地球温暖化による大洪水の危機を乗り越えて初めて、持続可能な人類社会、物心調和・共存共栄の新文明をこの地上に実現できるだろう。

 日本人は、日本精神を取り戻し、日本の再建を進め、世界平和の実現と地球環境保存に最善を尽くすべきである。その努力は、自国を生かし、また人類を善導するための努力となると思う。

4月28日~今日は何の日?

2007-04-27 11:18:50 | 日本精神
 4月29日は、今年から「昭和の日」となった。長年にわたる「昭和の日」実現運動が実ったものである。
 この運動とともに、4月28日を「主権回復記念日」にしようという運動が行なわれてきた。発起人は拓殖大学日本文化研究所所長の井尻千男(かずお)氏、東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏、明治大学名誉教授の入江隆則氏のお三方である。運動が始まってから、本年で11年目になる。

●主権回復記念日に、と言う趣旨

 氏等の呼びかけ文によると、昭和20年8月15日は終戦の日ではない。その日に終わったとされるのは、彼我の間の戦闘状態にすぎない。「法的現実としての真の終戦の日は、軍事占領から完全に解放された昭和27年4月28日である」。4月28日は、わが国とその敵国であった連合国との間に結ばれた平和条約が効力を発生した日付である。「従って国際法的に本来の意味での大東亜戦争終戦の日である」。また同時に、「それまで旧敵国支配下の被占領国であった我が国が晴れて独立自存の国家主権の回復を認められた日付」である。「その日、我が国は、連合国による被占領状態が解消し、国家主権を回復した」のである。

 ところが、日本国民は、わが国の終戦手続き中の最重要案件であった国家主権の回復を、それにふさわしく認識し自覚しなかった。そして、「この重要な日を50年近くの年月、然るべく記念することをせずに」「歴史的記念の日の日付」を「忘却」している。そして、「毎年8月15日のめぐり来るたびに、東京裁判の判決趣旨そのままに、過ぐる戦争への反省と謝罪を口にし、5月3日ともなれば占領軍即席の占領基本法たる1946年憲法への恭順を誓う」。こういうことを繰り返している。そのため、政府も国民も、ますます主権国家としての認識を欠き、主権意識の自覚を欠いている。それは、講和条約の締結によって、被占領状態が終ると共に、戦後処理は基本的に終結したという認識を欠くためである。
 それゆえ、氏等によると、記念すべきは8月15日ではなく、4月28日である。8月15日は、敗戦による戦闘状態の終結と軍事占領時代の開始の日である。これに対し、4月28日は、連合国との講和条約が発効し、被占領状態の終結と独立の国家主権の回復の日だからである。そして、氏等は、「主権意識の再生と高揚」を推し進め、4月28日を、アメリカにおける独立記念日に当たるような国家的な記念日に制定しようと唱えている。

●主権の全面的回復をめざして

 次に、私の意見を述べたい。

 主権回復記念日運動を進める方々が、主権とその回復の重要性を指摘していることには、異論がない。私は、その主張によって蒙を開かれ、また、この運動を支持する者である。ただし、名称と意義付けは、今のままでは一部の人には混乱を与え、多くの人には中途半端な印象を与えると思う。この運動を広く、国民に知ってもらい、拡大発展させるためには、事実認識をより明確にする必要がある。
 私は、4月28日は「主権回復記念日」ではなく、「主権回復開始の日」と改称し、日本人がいまだ成し遂げていない課題を確認する日とすることを主張する。なぜなら、わが国は、昭和27年4月28日に、独立自存の国家主権を完全には回復し得ていなかったし、55年後の現在も今なおそうだからである。

 日本は、戦後、マッカーサーの占領政策=日本弱体化政策による改変をされ、憲法を押し付けられた。その状態のままで、講和条約が発効した。この時、回復した主権は、限定的であった。GHQ製の憲法は、国際法に違反して制定された占領基本法とでもいうべきものである。これによって、国家主権の重要要素をなす国防権は、大きく制限された。この憲法の改正を成し遂げるまで、わが国は、占領基本法としての憲法を押し頂いている状態である。また、領土権は、ソ連によって北方領土を不法占拠され、米国によって奄美大島・小笠原諸島・沖縄を統治されていた。歴史解釈や教育・信教に関する権利は、形式的には回復したものの、占領期間に大きく破壊・歪曲されたままである。
 それゆえ、昭和27年4月28日における「国家主権の回復」とは、部分的限定的回復に過ぎない。この日は、そこから全面的回復に向かうためのスタートとなった日であって、それ以上ではない。憲法を改正して自主憲法を制定すること、自力で自国の国防を行う国軍を持つこと、不法占拠されている領土を回復することである。これらを成し遂げてはじめて、「国家主権の確立」と言える。周辺国による歴史教育や靖国神社首相参拝等への内政干渉をしりぞける外交も、そのうえで初めて真に有効なものとなる。

 このように考えると、現在の「主権回復記念日運動」は、その名称及び4月28日の意義付けにおいて、一部の人には混乱を与え、多くの人には中途半端な印象を与えると思う。4月28日は主権回復記念日ではなく、主権の部分的回復を祝うとともに、主権の全面的回復の課題を確認し、主権の確立を決意する日とすべきと思う。

●戦後体制からの脱却を

 昨年10月成立した安倍政権は、「戦後レジュームからの脱却」を掲げている。戦後体制から脱却するには、主権を全面的に回復しなければならない。
 昨年12月、教育基本法が改正された。これはその一環である。次は、憲法の改正である。憲法の改正こそが、主権回復の最大の課題である。また、皇室制度の回復・強化が、これと深く関連した課題として実現されねばならない。また、主権を侵害されている領土である北方領土の返還という課題がある。
 こうした課題を確認する中で、「4月28日」という日の持つ重要性を、日本国民の一人でも多くの人に知っていただきたいと思う。

久保田信之先生の「祝う会」

2007-04-26 21:40:31 | 日本精神
 久保田信之先生という方がいる。久保田氏は、今春、学習院女子大学を定年で退任された。退任後の「新しい出発を祝う会」に招かれ、昨25日、東京目白にある椿山荘(ちんざんそう)に行ってきた。

 久保田氏は、教育学・教育哲学がご専門だが、日本学を講じ、多くの学生に人生の指針を与えてこられた。アジア太平洋学会の代表理事でもある。李登輝前台湾総統との交際が深く、日本李登輝学校修学院の院長として、李登輝氏の思想を学ぶ勉強会を主催されてきた。
 会場の演台中央に、李登輝氏が久保田氏に贈った直筆の書が掲げてあった。「誠実自然」と書いてある。今年3月に学生達を連れて台湾に行った際、李登輝氏から贈られたという。

 久保田氏の下では、青年学生が集って、李登輝氏の説く日本精神・武士道を学んでいると聞く。一昨年11月26日そうした若者たちが東京大学の駒場キャンパスで行ったシンポジウムを聴きに行った際、久保田氏と面識を得た。直接お会いするのは、それ以来だが、先生のほうで覚えておられて、受付で私に声をかけてくださった。
 さすがは、教育者である。人を育てる感化力を持つ人物は、相手の名前を覚え、自分から声をかけるものである。

●出会い
 
 このたびの「祝う会」では、いろいろな方々とお会いできた。

 来賓として最初にスピーチをされたのは、拓殖大学元総長の小田村四郎氏。日本会議副会長、日本李登輝友の会会長。今回初めて、ご挨拶できた。大塚寛一先生が提唱された日本精神復興促進運動について説明した。
 小田村四郎氏は、実兄の故・小田村寅二郎氏((社)国民文化研究会前理事長、亜細亜大学元教授)とともに、日本再建のために活動されてきた。「昭和の日」の実現にも尽力された。私は、天下国家のために行動する、真の学者と尊敬している。曾祖母の兄が、吉田松陰だという。

 次にスピーチをされたのは、駐日中華民国(台湾)大使に相当する台北駐日経済文化代表処代表の 許世楷氏。流暢な日本語。歴史学者・憲法学者として著名。麻生外相の唱える「自由と繁栄の弧」の諸国で、最も重要なのは、日本と台湾の関係だという。
 他にも台湾関係の方が多数来ていた。

 次に、登壇したのは、参議院議員の有村治子(ありむら・はるこ)氏。出かける前、日本会議の機関誌「日本の息吹」5月号に、有村氏の写真・プロフィールが載っているのをたまたま目にしていた。遠目だが、見た瞬間にわかった。このような場で会うとは思わなかった。早速、挨拶。
 有村氏は、若いママさん議員。家庭・教育・少子化の問題等に取り組んでいるという。当方も近年、家庭・教育の問題に力を入れて講演等をしていることを説明。先月は、中條高徳先生、金美齢先生とフォーラムで、家庭教育のことを語り合ったとお話しすると、「中條先生は、私の後援会長をしてくださっているんですよ!」と有村氏。これには驚いた。縁とは、こういうもの。
 有村氏は、素晴らしい情熱、発想、そして行動力を持っている。後で調べたら、中條先生は、有村議員の全国の後援会連合の会長をされていた。意気に感じてのことだろう。
http://www.arimura.tv/

 一緒に参加したA子さんが、大学で教わったA先生に引き合わせてくれた。A氏は、海外生活が長く、外から日本を見て、日本に伝わるものをどうやったら説明でき、伝えられるかと考えていた。ある時、磯部忠正氏の『日本人の信仰心』(講談社現代新書)を読んで、こういう風に説明ができるのかと感銘を受けた。この本を使って説明すると、外国人に日本の心がよく伝わったと言う。
 私も読んで感銘を受けた本だ。日本人の感性を深く感じ取り、それを論理的に表現している。A氏に、わが師・大塚寛一先生と磯部氏の長年の親交を話すと、驚いておられた。学習院の院長をした磯部氏は、大塚先生を深く尊敬していたのである。

 他にも、いろいろな方との出会いができた。

 久保田氏が最後に挨拶をされた中で、氏が台湾人・蔡焜燦(さいこんさん)氏とは、長いお付き合いであることを知った。蔡氏が『台湾人と日本精神』を書いた際に、協力したらしい。出版元の日本教文社としては、珍しくベストセラーになり、凄い反響が起こった。すると出版社の都合で、出版停止になった。久保田氏は、これに憤って訴訟を起こしたが、残念ながら、願っていた結果にはならなかった。その後、小学館が文庫にした。それでまた売れて読まれているのだという。
 日本教文社が社告で出版停止を発表した際、納得できない読者多数から抗議の声が上がった。私もその一人で、経緯をインターネットに書いた。「日本人よ、胸を張りなさい」と呼びかけたこの名著を埋もれさせてはならないと、出版人に再発行を求めた。程なく小学館文庫から出たのは、久保田氏らの尽力があったことを、このたび初めて知った。

 久保田先生のますますのご健勝とご活躍を祈念するとともに、先生の御人徳によって、新たな出会いをいただけたことを感謝申し上げたい。
 帰り際、先生が「教育とは、人と人のつながりだ」と言ってくださった。至言だと思う。

●修学院

 修学院の関係者の方ともお話しできた。若い方々が集って真摯に学習されているのは、すばらしいことである。是非、継続・発展していただきたいと願う。

 同校の「学則」は、開校の「目的・趣旨」を以下(抜粋)のように記している。
 「敗戦と共に、自虐的歴史観からか『過去の否定』『伝統文化の軽視』が為され、西洋近代の個人主義を範とすることによってのみ『新日本建設』が可能となるとの思い込みが主流を占めてしまった。その結果、日本文化が最も軽蔑してきた『私利私欲・私情に流される未熟な人間』が巷に溢れたのである。一刻の猶予もない。この過ちに気付き、鍛錬・訓練を重んじ『主体性豊かな日本人』を育成しなければならない。すでに同様の問題意識から『道徳再武装』に向けての啓蒙運動を展開している『台湾李登輝学校』と姉妹関係を形成・発展させながら、着実な運動をすることを本学院の目的とする」
 主たる教材としては、新渡戸稲造の『BUSHIDOU』と李登輝氏の『武士道・解題』(小学館)が使用される。講師陣には久保田信之氏のほか、「日本の精神文化に関し研鑚を深めて」いる多数の研究者・実践家が当たっているという。

 ミクシイにも、コミュニティがある。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=214352

温室効果ガスの削減合意に期待

2007-04-25 11:26:10 | 地球環境
 地球温暖化は、これまでのあらゆる環境破壊よりも深刻な、最大の問題になっている。温暖化を防止するには、アメリカを変えなければならない。アル・ゴアは、講演や映画で粘り強く訴えている。今年に入ってブッシュ政権の政策に、ようやく変化が現れてきた。こうしたとき、ブッシュ大統領と首脳会談を行う安倍首相が、この問題で積極的にブッシュ大統領に働きかける姿勢を示しているのは、非常に喜ばしい。是非、安倍首相には、日本の代表として、世界人類を益する日米合意をなせるように頑張ってほしい。
 以下は、今朝の関連ニュース。

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●産経新聞 平成19年4月25日号

http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070425/shs070425000.htm
日米首脳会談、温暖化防止声明へ 米大統領の姿勢に変化

 安倍晋三首相とブッシュ米大統領が、27日夜(米東部時間同日午前)にキャンプデービッドで予定される首脳会談で、国際社会は2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量の半減を目指す-とすることで合意する見通しとなった。会談後に、合意を盛り込んだ共同声明を発表する方向で最終調整している。ポスト「京都議定書」となる2013年以降の地球温暖化対策に関する新たな国際的な枠組みをにらんだもので、省エネルギーを含む環境分野での共同技術研究もうたう。
 先進国の温室効果ガス排出量削減を取り決めた京都議定書は、来年から12年までの5年間に、90年比で先進国全体で少なくとも5%のCO2などを削減することを義務付けている。「中国など排出量の多い途上国が参加しておらず、不公平だ」として京都議定書を離脱したブッシュ大統領が今回、温室効果ガス排出量の削減を盛り込む共同声明に応じることは、姿勢の変化をうかがわせるものだ。
 温暖化対策は、今年6月の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)で議論され、来年夏に北海道・洞爺湖地域で首脳会合が開かれるサミットでは、京都議定書後の13年以降の国際的な枠組みづくりが主要議題となる。安倍首相は、国際社会の温暖化対策の実効性を高めるために、米国を新たな枠組みへ引き入れることを狙う。米国との連携により、温暖化対策で先行する欧州連合(EU)を牽制(けんせい)し、交渉における主導権を確保する思惑もある。
 ブッシュ大統領は今年1月の一般教書演説で、温暖化対策に対するそれまでの消極的な対応を改め、エネルギー対策の観点からも、向こう10年間の国内のガソリン消費を20%削減する目標を打ち出している。
 また、地球温暖化の危機を警告した映画「不都合な真実」でアカデミー賞ドキュメンタリー映画賞を受賞した民主党のゴア前副大統領が3月、上下両院の公聴会に出席。ブッシュ政権に、ポスト京都議定書の国際的な枠組みづくりに積極的に取り組むよう提言するなど、民主党優位の議会で環境問題への取り組みを促す動きが活発化していいる。
 一方、安倍首相は「米国、中国、インドが入らない枠組みは意味がない。そうした国も入った枠組みをつくっていくうえで、日本は中心的な役割を果たしたい」と意欲的だ。「日本がもつ環境技術を米国と共同研究していくことになれば、米国も経済成長と相反するものではない。そういう観点からも、ぜひ(ブッシュ大統領と)話をしたい」としている。
(2007/04/25 03:37)
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 首相は「米国、中国、インドが入らない枠組みは意味がない。そうした国も入った枠組みをつくっていくうえで、日本は中心的な役割を果たしたい」と意欲的だという。
 その通り。それができるのは、日本しかない。日本国及び日本文明の役割である。
 「日本がもつ環境技術を米国と共同研究していくことになれば、米国も経済成長と相反するものではない。そういう観点からも、ぜひ(ブッシュ大統領と)話をしたい」としているという。
 日本人は、自然と調和する心と、調和のための技術を米中印等の国々に発信・提供すべきである。安倍首相の外交を、心から応援したい。

「昭和の日」に向けて

2007-04-24 09:51:47 | 歴史
 トップページのプロフィール写真を替えました。以前の写真は、6年ほど前のもので、現況(?)と合わなくなった気がするので、最近のものにしました。

 「日米印の戦略的協力の強化を」という拙稿を、私のサイトに挙げました。以下のページの項目18にあります。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12.htm

●「昭和の日」に向けて

 今年から、4月29日は「みどりの日」から「昭和の日」に、5月4日は「国民の休日」から「みどりの日」に変わりました。
 「昭和の日」は「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。」と祝日法に、規定されています。もともとは、昭和天皇のお誕生日でした。
 昭和という時代は、日本の歴史の中で最も濃厚な時代です。昭和の日本は、昭和天皇の存在抜きに振り返ることができません。旧稿ですが、昭和天皇について書いたものがありますので、ご参考に供します。

 以下のページの項目18~27。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/j-mind10.htm

■18「民の父母」たらんとして
■19 独伊との同盟に反対
■20 開戦を止め得なかったのは
■21 国民を思った終戦の御聖断
■22 御聖断に込められた願い
■23 戦後の原点「終戦の詔勅」
■24 マッカーサーは感動した
■25 天皇が国民の飢えを救った
■26 御巡幸が国民を力づけた
■27 外国要人も感銘を受けた

日米印の戦略的協力の強化を2

2007-04-23 10:44:07 | 国際関係
 昨年(平成18年)3月、ブッシュ米大統領は、インドのシン首相と民生用の核開発分野で協力を行うという協定に合意した。このことは、インドを米露中英仏に加えて、6番目の核保有国として認知したことになる。核の時代に突入して以後、第2次世界大戦の戦勝国であり、かつ国連安全保障理事会の常任理事国5カ国が、核を独占する体制が確立された。アメリカは、従来、核の寡占体制を維持し、核不拡散政策を取ってきたが、インドの認知によって、この政策を転換したことを意味する。
 しかも、ブッシュ大統領とシン首相は、米印間の「戦略的パートナーシップ」の拡大にも合意した。「戦略(ストラテジー)」は、もともと軍事用語だが、現在では、ある目標を達成するために立案された総合的な行動計画をいう。「パートナーシップ」は、提携・共同・協力を意味する。「パートナー」は、協力者・協調国を意味する。

 ブッシュ大統領は、平成13年には、「中国はアメリカの戦略的パートナーではない」と明言した。この度、ブッシュ大統領は、インドを「同じ価値観を共有するパートナー」と呼んだ。インドを「世界最大のデモクラシー国家」とたたえ、「世界最古のデモクラシー国家」であるアメリカとの協力関係の深化・拡大を呼びかけた。また、インドを「21世紀のアメリカの当然のパートナーである」とし、「両国はグローバルな指導国だ。われわれに達成できないことはない」と述べた。ブッシュ大統領は「今日の合意は歴史的なものだ」と成果を強調し、シン首相も「両国のパートナーシップに制限はない」と意義を語った。
 米印両国は、強大化する中国に向けて、政治・経済・軍事にわたる協力関係を強化することを、アピールしたものと見られる。アメリカ側には、中国と連携を深めているロシアやイランへの牽制の意図もあるだろう。

●依存的な日本と自主的なインド

 わが国は、このようなアメリカの世界戦略の展開に応じて、インドに対し、積極的な外交を行なうことになったものと思う。結果として、わが国自体にとって、非常によい動きとなった。
 わが国は、中国との経済関係が深い。その中国でトラブルが多く、そのうえ中国経済は先行きが危ぶまれている。他の国々へのシフトを進めなければならない。また、わが国は、アメリカ以上に中国から軍事的脅威を受けている。シーレーン諸国との関係を深める中国に対抗しなければ、中東からの石油を安全に確保できなくなる。こうした時、インドの存在は重要だが、日本単独でインドに接近することは出来ない。ブッシュ政権がインド重視に転換したことで、わが国は、有利な条件を手にしたと思う。

 マンモハン・シン首相の国会演説は、確かに日本人に感動を与えている。ただし、インドも一筋縄でいくような国ではない。
 インドは、非同盟諸国の指導国として独自の外交をしてきた誇り高い国である。ロシアとは旧ソ連時代から関係が深く、最新鋭兵器を購入している。今月24日からは合同演習を行なう。また、中国との間も、一方では対抗し、一方では連携するという関係を取っている。インドは、中央アジアの共同安全保障の仕組みである上海協力機構に加盟し、中国・ロシアと同盟関係に入った。このように、インドはインドとして、自分の意思で、したたかな外交を行なっているのである。

 わが国は、この点、アメリカへの依存が強いが、アメリカは、大統領が変われば、世界戦略も変わる国である。ブッシュ大統領は、日本とともにインドを重視し、中国に対抗する政策を行なっているが、政権が交代すれば、反日親中の政策に転換するかもしれない。
 仮にそうなっても、わが国は、中国に対して、歴史認識や靖国参拝等で、自主的な態度を明確にしなければならない。そうした主体的な外交のためには、有効なカードの一つとして、インドとの連携・協力を拡大していくべきである。

 去る3月13日、安倍首相は、オーストラリアのハワード首相と、日豪共同宣言を発表した。共同宣言は、国際社会とアジア太平洋地域の「自由と繁栄」に向けて、日豪両国が貢献することを表明した。
 両国は、安保分野の協力と経済関係の拡大を2本柱に「包括的な戦略的関係(リレイションシップ)」の強化を目指している。この動きもまたアメリカの世界戦略に対応したものと思うが、これもアメリカの国益への奉仕ではなく、わが国の国益の実現のために生かしたいものである。
 インドに対するにも、オーストラリアに対するにも、主体的な戦略をもって行動することが必要である。

●わが国は、主体的な戦略を

 共産中国が猛烈な勢いで軍拡を進め、海軍力を強化して、本格的に太平洋に乗り出そうとしている。わが国にとってはもちろん、アジア太平洋の国々にとって、大きな脅威である。
 これに対し、自由とデモクラシーの価値を共有する日米印豪が、安全保障で連携・協力を強めることは、重要な動きだと思う。この国際的な協力関係を、東南アジア諸国などのアジア太平洋諸国に広げていけば、中国・北朝鮮・ロシア・イラン等の軍事行動への抑止力を高められるだろう。逆に、日米印豪の側に引き付ける力が弱ければ、中国を中心とした体制に、アジア太平洋諸国の多数がなびくだろう。その場合、インドもロシアやイランとともに、中国の側に付くかもしれない。国際関係、各国の戦略とはそういうものである。

 それゆえ、重要なのは、わが国が独自の世界戦略を構築することである。わが国にとって、アメリカは最も重要な国だ。日米同盟は、21世紀においても基軸である。だが、だからと言って、わが国がアメリカの属国・属州のごとく、政治的・金融的・軍事的に従属し続けることは、独立主権国家としての自己否定である。
 早期に憲法を改正して国防を整備するととともに、主体的な戦略を立て、アジア太平洋地域に新しい集団安全保障体制を創出することが、わが国にとって、死活に関わる課題であると思う。
 
 最後になるが、もう一つ重要なことがある。21世紀の安全保障は、地球環境の問題を含めて考えなければならない。世界の132国が京都議定書を批准している。日本とインドは、批准している。しかし、アメリカとオーストラリアは批准していない。中国・ロシアどころか、北朝鮮さえ批准しているのに、である。
 わが国は、地球規模の集団安全保障のために、「戦略的パートナー」であるアメリカとオーストラリアに対し、京都議定書の批准を求め、地球的(グローバル)な協力関係の質を高めていく役割も持っていると思う。(了)

関連掲示
・拙稿「中国の日本併合を防ぐには」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12a.htm
・拙稿「インドへの協力・連携の拡大を~シン首相の国会演説と日印新時代」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12d.htm

日米印の戦略的協力の強化を1

2007-04-22 09:42:55 | 国際関係
 日本とインドの連携・協力の拡大は、日本が独自に行なっていることではなく、アメリカの世界戦略と深く結びついた動きだと思う。その点について補足したい。

●アメリカの世界戦略の変化

 昨年(平成18年)3月、ブッシュ大統領が、インドを訪問した。ブッシュは、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドに、民生用の核開発分野で協力を行うという協定に合意し、「戦略的パートナーシップ」の拡大等にも合意した。その年の12月、安倍首相が、来日したインドのマンモハン・シン首相と、「戦略的パートナーシップ」を結ぶ共同声明を発表した。これは、アメリカの動きに連動した外交だと私は思う。
 今年(平成19年)3月には、安倍首相は、オーストラリアのハワード首相と、安全保障を中心とする日豪共同宣言を発表した。これも当然、アメリカとの連携が基礎にある。
 今月(4月)16日、わが国の海上自衛隊は、米印両海軍との間で初の3カ国による親善訓練を実施した。この防衛交流には、海軍力を増強し海洋進出を図る中国を牽制する狙いがあるだろう。当然、わが国が主導した訓練ではなく、アメリカが主導したはずである。日米印の合同訓練は、わが国が、アメリカの世界戦略の変化に応じて、外交・安全保障を展開していることの一つの現れだと思う。

 ブッシュ政権は、ここ数年、次ぎの三つに重点を置いて、外交と軍事を行なっていると思う。

(1)9・11以後のテロリズムへの対応
(2)イラクへの対応
(3)中国への対応

 アメリカが最も重視しているのは、中東政策である。石油・エネルギー政策といってもいい。アメリカは、宗教的・人脈的理由から、イスラエルを強力に支持している。同時にアメリカは、中東の石油をできるだけ有利な形で確保したいわけで、事情は複雑だ。
 そうしたなかで仕掛けたのが、イラク戦争だったが、形だけ終結はしたものの泥沼化している。米国内での政府批判が高まっている。アラブ諸国との関係は難しくなり、反米的な諸国の反発も強まっている。

 アメリカは、世界情勢に対応するために、世界規模でトランスフォーメイション(軍隊の配置転換)を行っている。米軍の大半を米国本土に引き揚げ、必要なときは本土から世界各地に出撃する態勢を取るという布陣に切り換えている。
 このような世界戦略の変化は、9・11以後のテロリズムとの戦争という従来の国家を単位とした戦争とは異なる戦いへの構えである。
 さらに、これは、米中が冷戦の時代に入ったための構えでもある。中国は、急速に軍事力を増大し、共産主義でありながらファシズム的な思想と行動を露にしている。中国は、世界各地で資源・エネルギーの確保に躍起になり、世界規模で米中の主導権争いが行なわれている。とりわけ米中両軍が対峙しているのが、東アジアだ。台湾をめぐる緊張関係は、わが国に厳しい意思決定を迫っている。

●インドの重要性の増大

 こうした状況において、アメリカにとってのインドの重要性が増したのだろう。インドは、IT産業を中心に、目覚しい経済成長を続けている。今後、人口や経済力で中国を抜くと予測されている。しかも、インドは、核兵器を保有している。インドが昭和49年(1974)に核実験を行ったのは、中国に対抗するためだった。インドが核を持つと、パキスタンも核を開発した。インドもパキスタンもNPTに加盟していないから、ルール違反ではない。両国は、平成10年(1998)に核保有を公式に宣言した。
 また、インドがイランと友好関係を持っていることも、アメリカには重要なのだろう。イランは、アメリカが支持するイスラエルに対抗するために、核開発を行なっている。アメリカは、イランを押さえ込みたいのだが、イランと戦えば苦戦は必至である。対決は避けたい。インドをアメリカの側に引き寄せ、インドからイランに核技術が流出することを、防ぎたいところだろう。
 それゆえ、インドは、アラブ諸国や中国との関係に重大課題を抱えるアメリカにとって、経済的にも軍事的・政治的にも、重要な存在になったのだと私は思う。

 次回に続く。

インド・シン首相の国会演説3

2007-04-19 10:01:02 | 国際関係
 インドは、人類史上、どこも経験したことのない発展の仕方をしようとしている。まずハイテクのITが先行し、ひどく遅れていたインフラや製造業が後から伸びるというIT主導の成長パターンである。これを企画し、推進しているのが、マンモハン・シン首相とその政権である。
 インドは、これまで弱点だった道路、港湾、電力、空港、通信などのインフラの整備と製造業に力を入れている。これは、日本や日本の企業にとって、大きなビジネス・チャンスである。しかし、日本は国も企業も、インドの重要性を深く理解し、積極的に行動できていなかった。欧米や韓国に大きく後れを取っている。
 こうした時期に、マンモハン・シン首相が日本を訪れ、衆議院で演説をした。その内容は、昨日掲載した。21世紀の日本・アジア・世界を考える時、日本人に戦略的な視野と思考を促す、非常に重要な演説だと思う。
 残念ながら、その演説がマスメディアでは報道されていないのである。衆議院のサイトにも文章としては掲載されていない。外務省のサイトにも掲載されていない。安倍首相とシン首相は、共同声明を発表したのだから、行政やマスメディアは、相手国首相の国会演説の内容を国民に知らせ、日本とインドのパートナーシップの意義を、周知すべきだろう。

●安倍・シン両首相による共同声明

 安倍首相とシン首相による共同声明は、「『日印戦略的グローバル・パートナーシップ』に向けた共同声明」と題して、外務省のサイトにその骨子が掲載されている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/india/visit/0612_gps_ks.html
 この声明は、「安倍総理とシン首相は、両国がアジアで最も発展した民主主義国及びアジア最大の民主主義国として、アジアと世界の平和と安定に積極的な役割を果たさなければならないこと、地域的・世界的な挑戦に対応する責任と能力を有することを認識し、日印関係を更なる高みへと引き上げるため、「戦略的グローバル・パートナーシップ」の構築を決意した」という前置きで始まる。
 「政治、防衛、安全保障における協力」「包括的な経済パートナーシップ」「科学技術イニシアティブ」「国民交流」「地域的・国際的協力」の5項目にわたり、さまざまな合意事項が掲載されている。どれもじゅうようだが、二国間関係で基礎となるのは経済だから、その項目のみ見ると、以下の点が合意された。

(1)経済連携協定(EPA)交渉を速やかに開始することを決定。およそ2年のうちの可能な限り早期に交渉を実質的に終了させることを目指すことを確認。
(2)インド側は、インドが円借款の最大の受取国であることを評価。日本側は、インドが引き続きODAの重点国であることを確認。
(3)日本企業の対印投資促進のためのインフラ整備、インド製造業の強化のための人材育成等を内容とする「経済パートナーシップ・イニシアティブ(SEPI)」を発表。
(4)インド幹線貨物鉄道輸送力強化計画に関するJICAの開発調査の中間報告提出を歓迎。
(5)インド情報技術大学(IIIT)への協力を確認。
(6)スズキ、ホンダ、日産、三井物産のプロジェクトのような日本からインドへの主要な投資プロジェクトを歓迎。
(7)日印両国のビジネスリーダーから構成される「ビジネスリーダーズ・フォーラム」の立ち上げを表明。両首脳はフォーラムに助言する上級代表も指名。
(8)ハイテク貿易を円滑化し、輸出管理制度に関する事項を扱うための協議メカニズムを立ち上げることを決定。
(9)閣僚級の日印エネルギー対話の開始を確認。都市開発、情報通信技術、知的財産等の分野における協力を確認。

 私としては、単なる経済的利益の追求ではなく、自然環境との調和に基づく「持続可能な社会」を目指した協力を追求してほしいと思う。日本とインドには、東洋文明の伝統を踏まえて、21世紀の世界で、新しい文明のモデルを創造する責務があると思う。

●アジア全体、地球全体を視野に入れた戦略を

 シン首相は安倍総理に対し、来年中の訪印を招請し、安倍総理はこの招請を受け入れた。日本は、インドという新たな戦略的なパートナーと本格的な付き合いを始めた。このことは、日本は、中国に対して、インドというカードを持つことを意味することでもある。
 共産中国とインドは、対照的である。――反日的な中国と、親日的なインド。共産主義の中国と、デモクラシーのインド。日本のODAに感謝するどころかゆすりたかりのようにする中国と、日本の援助に感謝するインド。約束無視・権利侵害を平気でする中国と、国際的な商慣習を守るインド。核ミサイルを日本に向けて恫喝する中国と、シーレーンの防衛に協力を求めるインド。国内に多くの矛盾が高まり崩壊の可能性のある中国と、若々しい成長力をもったインド等。
 中国の政治的・経済的重要性は言うまでもないが、日本人としての誇りを捨ててまで、目先の利益のために、共産党に媚び、おもねることはない。インドという良き友との付き合いを深めながら、共産中国との関係は主体的に調整していけば良い。

 共産中国と同じく北朝鮮や現在の韓国政府も、反日的・侮日的である。現在の経済や外交、領土、安全保障等の国家間問題を有利にするために、歴史認識や歴史教育、靖国参拝等の問題を持ち出し、執拗にわが国を批判している。
 日本人は、これらの国々をもって、アジア全体的であるかのように錯覚しやすい。しかし、これらの「特定アジア」の国々が例外なのであって、それ以外の国は、日本に敬意と感謝を示し、日本の協力を要望している。インド以外にも、台湾、東南アジア諸国、オ-ストラリア、トルコ、アラブ諸国等、親日的・友好的な国々の方が、はるかに多い。
 政治家・官僚・財界人・マスコミ人は、アジア全体、地球全体を視野に入れ、21世紀の世界で、日本はどう生き抜き、また世界に貢献すべきか。戦略的に考え、行動すべきだと思う。(了)