ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

今年の10大ニュース

2010-12-30 10:10:38 | 時事
 今年も残り少なくなった。いろいろなことがあった一年だった。私にとっては、国内の出来事では9月の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件、海外の出来事では11月の北朝鮮の砲撃による朝鮮半島の緊張増大が、最も大きなニュースだった。共同通信社による今年の10大ニュースでも、結果は同様だった。
 わが国を取り巻く東アジア情勢は、厳しさを増している。その中で、政治の混迷は、ますます悪化している。来年には衆議院の解散総選挙が行われる可能性が高くなっているが、国民の支持を失っている民主党に代わる政権の受け皿は、なお整っていない。特に危機の時代を導くリーダーシップを持った政治家が、なかなか見いだせない。志ある若い政治家の奮起を期待する。
 来年は、尖閣諸島や朝鮮半島をめぐって、激動の年となるやも知れぬ。この危機を乗り越えるには、日本人が日本精神を取り戻し、一致協力するしかない。日本を愛する人々の心をつなぎ合って、日本を明るく元気にしていきたいものである。
 皆様、よいお年をお迎えください。

 以下は、今年の国内・国際10大ニュースのクリップ。

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http://www.kyodonews.jp/feature/top10/
■共同通信社による2010年10大ニュース

●国内ニュース

【1位】尖閣諸島で中国漁船が巡視船に衝突。ビデオ流出騒ぎも

 沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海内で9月、中国漁船が海上保安部の巡視船に衝突、中国人船長が逮捕された。中国は日本人会社員4人を拘束、レアアース(希土類)の対日輸出を事実上停止、日中首脳会談を拒否するなど関係は悪化。那覇地検は処分保留のまま船長を釈放したが、政治介入との批判も高まった。
 衝突時のビデオ映像は衆参予算委の理事に限定公開されたが、その後、神戸海上保安部の海上保安官が映像をインターネットの動画サイトに投稿。参院では仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議が野党の多数で可決された。

【2位】参院選挙で民主党が大敗。ねじれ国会に

 7月の参院選で民主党が44議席で大敗。自民党は51議席で改選第1党、みんなの党が躍進し10議席を獲得。民主、国民新の連立与党は非改選議席を含めて参院の過半数を割り込み、衆参両院で多数派が異なるねじれ国会に。菅直人首相が唐突に消費税率引き上げに言及したことが有権者の反発を招いた。

【3位】厚労省元局長に無罪判決。特捜検事らを証拠偽造で逮捕

 大阪地裁は9月、郵便制度悪用に絡んで虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた元厚生労働省局長村木厚子被告に無罪を言い渡し、確定した。最高検は事件を担当していた大阪地検特捜部の主任検事がデータを改ざんしたとして証拠隠滅容疑で逮捕。上司の前特捜部長らも逮捕され、検察への信頼が地に落ちた。

【4位】普天間移設で日米合意。迷走の鳩山内閣は辞職し菅内閣誕生

 鳩山由紀夫首相が6月に退陣した。首相が「最低でも県外」と表明していた米軍普天間飛行場(沖縄県)の移設先は迷走を続けた末に名護市辺野古周辺で日米両政府が合意。しかし社民党の連立政権離脱を招き、自らの「政治とカネ」の責任も取った。後継の首相に菅直人副総理・財務相が指名された。

【5位】宮崎県で口蹄疫の被害が拡大。全国を震撼

 家畜伝染病の口蹄疫が4月、宮崎県で確認され、感染は5市6町に拡大。政府は発生地から半径10キロ圏内で感染した牛や豚のほか、感染していないすべての牛や豚もワクチン投与した上で殺処分した。約29万頭が対象となった。

【6位】観測史上最高の猛暑。熱中症多発で死者も

 猛暑が全国を襲った。気象庁によると、6~8月の平均気温は統計を取り始めた1898年以降で最高だった。9月も記録的な残暑となった。熱中症で救急搬送された人は7月が前年同月の3倍、8月が4倍と急増、死亡者も相次いだ。農産物の生育にも影響が出て野菜は値上がり。「今年の漢字」には「暑」が選ばれた。

【7位】小惑星イトカワから「はやぶさ」が帰還

 小惑星探査機「はやぶさ」が6月、7年ぶりに地球に帰還、イトカワの微粒子が回収された。月以外の天体との往復は世界初の快挙。予定から3年遅れの帰還で約60億キロの長旅だった。大気圏突入時に燃え尽きる機体本体の映像が感動を呼んだ。

【8位】所在不明の高齢者が続々と判明。「無縁社会」も深刻に

 東京都足立区で戸籍上111歳の男性の遺体が7月に見つかったのを契機に、全国で所在確認調査が実施され、戸籍上は生きているのに「所在不明」となっている高齢者がいることが次々と分かった。家族や地域との絆が失われ、孤立化が進んでいる現代社会を取材したNHKの番組「無縁社会」も反響を呼び、流行語にも選ばれた。

【9位】ノーベル化学賞に根岸英一、鈴木章両氏

 根岸英一米パデュー大特別教授と鈴木章北海道大名誉教授がノーベル化学賞を受賞した。2種類の有機化合物を結び付ける「クロスカップリング」の新しい方法を開発した業績が認められた。化学賞を日本人が受賞したのは7人、ほかの賞も合わせ計18人。

【10位】15年ぶりの円高水準。政府は市場介入

 米国の金融緩和や経済減速を背景に今夏から円高ドル安が急速に進み、円は1ドル=80円突破寸前まで買われた。政府は9月に円売りドル買いの市場介入を6年半ぶりに実施。円高はデフレ圧力となる上、国内製造業の海外移転が進むことから、雇用悪化も懸念される。

●国際ニュース

【1位】北朝鮮の韓国砲撃などで朝鮮半島緊迫

 韓国海軍の哨戒艦が3月、黄海で沈没し、兵士46人が死亡・行方不明。韓国は北朝鮮魚雷が原因と発表。北朝鮮軍は11月、韓国・延坪島(ヨンピョンド)を砲撃し、韓国軍と砲撃戦に。韓国側は民間人2人と兵士2人が死亡、19人が重軽傷を負った。砲撃戦直後には双方から戦闘機が出撃し、島民の多くが韓国本土に避難。北朝鮮による民間人被害を伴う陸地砲撃は1953年の朝鮮戦争休戦以来初めて。

【2位】チリ鉱山落盤事故。69日ぶり作業員33人全員を救助

 チリ北部コピアポ郊外のサンホセ鉱山で8月5日に落盤事故が起き、作業員33人が地下約700メートルに閉じ込められた。チリ政府は食料などを地下に送るとともに救出用縦穴の掘削を進め、救出用に作ったカプセル「フェニックス(不死鳥)」を使用し10月12~13日の作業で全員を救出した。

【3位】北朝鮮の指導者金正日総書記の後継者に三男、金正恩氏

 正恩氏は9月27日、朝鮮人民軍大将の称号を与えられた。同28日に開かれた朝鮮労働党代表者会で党中央委員に選ばれ、党中央軍事委員会副委員長に就任、後継者に決まった。母親は日本から帰国した高英姫(コ・ヨンヒ)夫人(2004年死去)。祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の若いころによく似た顔立ち。

【4位】中国の国内総生産(GDP)、日本を抜き世界2位の経済大国に

 中国のGDPは07年まで5年連続で2けた成長を記録。金融危機の影響を受けたが、08~09年も9%を超える成長率を維持。10年の成長率は9・9%(中国社会科学院)と予想され、通年で、米国に次ぐ経済大国になるのは確実。ただ、バブル懸念も強まっており、中国政府はインフレ抑制に躍起だ。

【5位】欧州の財政危機。ギリシャからアイルランドに波及

 ギリシャの財政危機に始まり、アイルランドやポルトガル、スペインなど財政難に苦しむユーロ導入国の国債価格が下落し、ユーロの信認を揺るがした。欧州連合(EU)はギリシャ救済を決めたが、不動産バブルの崩壊や金融危機に直撃されたアイルランドへの連鎖を防げなかった。
写真:ギリシャ・アテネの国会近くで、火炎瓶の炎にのみ込まれた警官隊=5月5日(ロイター=共同)

【6位】中国の民主活動家、劉暁波氏にノーベル平和賞

 劉氏は1989年の天安門事件の際の民主化運動に参加。2008年12月、共産党による一党独裁体制の廃止を呼び掛ける「〇八憲章」を発表して拘束され、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けて服役中。10年12月にノルウェー・オスロで授賞式が行われたが、中国政府は劉氏や妻の出席を認めず、74年ぶりに本人、家族ともに不在の式典に。劉氏の受賞は中国の民主化運動への励ましとなったが、中国政府は活動家への監視や取り締まりを強めた。

【7位】米中間選挙で与党、民主党が敗北

 下院(定数435)のうち、共和党242、民主党193となり、民主党は4年ぶりに過半数を割り込んだ。選挙はオバマ大統領への信任投票、12年次期大統領選の前哨戦とみなされる。景気低迷による高い失業率、財政赤字、医療保険改革への批判から、与党が票を減らした。草の根の保守派運動ティーパーティー(茶会)が共和党支持で力を示した。

【8位】通貨安競争が激化。先進国と新興国が対立

 各国は輸出振興のため通貨切り下げを競った。米国は巨額の貿易黒字を持つ中国に人民元切り上げを迫り、米国の金融緩和については、ドル安容認と新興国から批判が集中した。11月、日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)首脳会合は、切り下げ競争を回避する方針を確認した。

【9位】メキシコ湾の油井事故で原油が大量流出

 米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾の石油掘削基地が4月20日に爆発、海底の油井から大量の原油が流出し、海を汚染した。オバマ大統領は米史上「最悪の環境災害」と指摘。流出阻止作業は難航、事故を起こした英石油大手BPは油井に「密閉ぶた」を装着、流出は7月半ばほぼ止まった。

【10位】中国の次期最高指導者に習近平氏

 10月の共産党中央委員会総会決定で、党内序列6位の政治局常務委員で国家副主席の習氏が中央軍事委員会副主席に就任。胡錦濤国家主席の後継者に確定した。53年6月生まれ。副首相を務めた父親は改革派とされ、中国国内には政治体制改革推進への期待感もあるが、手腕や開明度は分からない。
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救国の秘策がある8~丹羽春喜氏

2010-12-29 09:30:32 | 経済
●政策実施で懸念される点は回避できる

 丹羽氏によれば「救国の秘策」を実施すれば多くの効果がある。だが、本当にそんなにうまくいくのかと、懸念が浮かぶだろう。主な懸念として5点について、丹羽氏の主張をまとめてみよう。

①クラウディング・アウト現象は生じず、マンデル=フレミング効果も生じない。
 財政政策の財源調達のために国債の市中消化が行なわれた場合、それによって民間資金が国庫に吸い上げられて金融市場が資金不足状況になり、国内金利の高騰や民間投資の減少が生じる。これをフリードマンは「クラウディング・アウト現象」という。銀行による貸ししぶり、貸しはがしが激化し、かえって景気を悪化させてしまうおそれがある。しかし、「政府の貨幣発行特権」の発動であれば、この現象は生じない。
 クラウディング・アウト現象が生じると、国内金利の高騰が円高を生じさせ、それが輸出の減少と景気回復の挫折をもたらす。これを「マンデル=フレミング効果」と呼ぶ。クラウディング・アウト現象が発生しなければ、マンデル=フレミング効果も発現しない。

②現金はそれほど増えない
 高度経済成長政策が実施されると、大量の紙幣が刷りまくられるのではないかという心配は、「無用」である。GDPの増加額に「マーシャルのk」(マクロ・ベースでの現金通貨流通速度の逆数)と呼ばれる係数を乗じた額として、現金通貨量の増加額は決まる。「マーシャルのk」の値は、だいたい0.08 ~ 0.16である。仮にGDPの水準が100兆円上昇しても、それに伴う現金通貨量の増加額は8~16兆円程度ですむ。心配するほど過大な量にはならない。
 また、現代では、あらゆる取り引きの大部分が電子決済される。それゆえ、「政府の貨幣発行特権」を発動し、政府支出がきわめて巨額に行なわれても、実際に紙幣が増刷されるのは比較的わずかの額ですむ。あとは「電子的な相殺勘定の記帳処理」ですまされる。

③過剰流動性は国債償還で防止できる
 政府の累積債務を削減するために国債の大量償還をすると、「過剰流動性」現象を引き起こすおそれがある。過剰流動性とは、運用対象を見つけられない余裕資金が、だぶつく現象である。それを防止するために、政府ないし日銀が、円高防止をかねて米国等の公債・社債を大量に買い、それとの等価交換で、日本政府発行の既発国債を政府ないし日銀の手元に回収すればよい。国内の投資家たちには代償として米国等の公債・社債を渡す。このようなやり方を適宜に併用すれば、「過剰流動性」問題を発生させずに巨額の既発国債を回収・償還できる。

④円高に打ち勝って円安にできる
 わが国の経済が、政府貨幣発行を財源とするケインズ的政策の断行によって急速に回復し、高度成長軌道に乗りはじめれば、外国の投資家が競ってわが国に投資しようとし、海外から、きわめて大量の資金がわが国に流入し、そのことが非常に大きな円高要因になる懸念がある。しかし、わが政府が③の国債償還方式を実施すれば、外国資金の大量流入による円高圧力に打ち勝って、むしろ、かなりの円安をもたらすことが可能となり、そのことによって、わが国は産業の「空洞化」の悪夢から解放されうる。

⑤歯止めもかけられる
 総需要政策を行なう場合、政策の不十分や、上方あるいは下方への暴走を防止するための「歯止め」が要る。この「歯止め」は、「国民経済予算」の制度を確立することによって行なわれるべきである。「国民経済予算」の制度とは、デフレ・ギャップやインフレ・ギャップを常にモニターしつつ、それに立脚して年々の総需要政策を合理的に国会で審議・決定するという制度である。この制度を確立すれば、歯止めをかけられる。市場経済に「国民経済予算」の方式を結び合わせた制度こそが、「人智のおよぶかぎり、最善の経済システム」である、と丹羽氏は説く。

 以上が、丹羽春喜氏が提唱する「救国の秘策」の概要である。

●実行には、日本人の精神的な団結が必要
 
 デフレ下における積極財政を説くエコノミストは、丹羽氏以外にもいる。私が別稿で紹介した宍戸駿太郎氏、菊池英博氏、三橋貴明氏らがそうである。デフレ下における積極財政を説く点で、丹羽氏と彼らは共通する。最も大きな違いは、財源の調達方法である。宍戸氏、菊池氏、三橋氏らは、主たる財源を国債の発行に求める。丹羽氏は、国債の発行はほぼ限界に来ているとして、財源の調達は政府貨幣の発行によるべしと説く。国債発行と政府貨幣のどちらがよいかという違いである。
 私は、別稿に掲げたた菊池英博氏の「日本復活5ヵ年計画」を注目すべき提案と評価している。しかし、国債の発行を続ける限り、いかに経済成長をし、国民負担率は下がったとしても、利払いはつきまとう。いつかは償還・回収しなければならない。永久債という手もあるが、これも利払いは続く。また永久債の所有者と非所有者の格差が固定される。それゆえ、丹羽氏が提唱する政府が貨幣発行特権を発動して日本経済を再興するという政策は、国債発行にまさる上策だと思う。ただし、この政策は巨大なデフレ・ギャップが存在し、生産能力に余裕のあるうちに実行しないと、実行可能な条件を失う。政府が愚かな政策を続けていると、またとない条件を自ら潰してしまう。
 日本は財政悪化、少子高齢化、人口減少の中で復活をかけた経済政策を行なわなければならない。策を得ず、時を失えば、日本は確実に衰退する。
 起死回生の政策は、既に提案されている。国債の大量発行による積極財政を行うには、国民の精神的な団結を必要とする。政府貨幣の発行は、国債発行の場合以上に、強い団結を要する。日本人が日本精神を取り戻し、国民一丸となって取り組まなければ、世界のどこの国もやったことのない大規模な復興政策は、成功できない。また、国家指導者には、政策への国民の理解を得る努力をし、不退転の決意で政策を断行する強いリーダーシップが求められる。日本人の覚醒と覚悟が、日本の将来を決める。

 次回に続く。
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救国の秘策がある7~丹羽春喜氏

2010-12-28 08:16:10 | 経済
●政策実施の10の効果

 丹羽氏は、「救国の秘策」を実施すれば、さまざまな効果があると主張する。私なりに整理すると、10の効果が挙げられる。

①効果は決定的かつ即効的
 全国民に一律、40万円の臨時ボーナス支給という施策の効果は、「決定的かつ即効的」である。1年半ないし2年のうちに、経済全体への波及効果(乗数効果)をも含めて、100兆円を超える実質GDPの増加が生じる。実質経済成長率が年率10パーセントを超える高度経済成長ができる。

②インフレの心配はない
 わが国は現在、巨大なデフレ・ギャップ(GDPギャップ)があり、生産能力が有り余っている。それゆえ、政府が大規模なケインズ的有効需要拡大政策を実施しても、何の問題もなく、物財やサービスの生産・供給量が増える。
 デフレ・ギャップは生産能力の遊休、総需要の不足の状態、インフレ・ギャップは生産能力の不足、総需要の超過の状態である。デフレ・ギャップとインフレ・ギャップが同時に発生することは、理論上ありえない。それゆえ、現在のわが国では、「インフレ・ギャップの発生によるディマンド・プル型(需要が引っ張る型)の物価上昇が生じるおそれは絶無」である。
 しかも、現行のフロート制(変動為替相場制度)の特性により、貿易収支や国際収支の均衡といった対外均衡も、自動的に保たれる傾向があるから、「ますます安心」できる。

③物価安定のまま高度経済成長ができる
 生産能力の余裕が十二分にあるから、「政府の貨幣発行特権」の発動で財源を調達するケインズ的財政政策で、どんなに大規模な有効需要拡大政策が実施されたとしても、「物価が安定したままの高度経済成長」という、「いわば理想的な経済状況」が実現されうる。

④不自然な歪みを生じない
 わが国の経済システムは、「消費者主権の原理」が貫徹している市場経済体制である。それゆえ、「臨時ボーナス」を与えることによる消費者支出からの景気刺激政策の場合には、構造改革政策など実施しなくとも、消費者支出と商品供給との間に重大なミス・マッチが生じたり、経済構造・産業構造に「不自然・不合理な歪み」が現れる心配はない。

⑤不良資産・不良債権が優良に
 いま不良資産・不良債権などと言われているものも、その大部分が、「たちどころに優良資産・優良債権に一変」してしまう。金融機関破綻問題もたちどころに解消し、中小企業の苦境も救われる。

⑥格差の是正
 GDPおよび国内総需要の伸び率が年率1%内外といった状況は、事実上、ゼロ・サム・ゲームの経済である。それが慢性化した経済では、勝ち組、負け組が生まれ、弱肉強食の状況となる。この状況を脱し、「右肩上がりのポジティブ・サム・ゲーム」に転じ、所得格差、地域格差の問題も解決される。

⑦円安になり産業は対外競争力を回復、空洞化危機を脱却
 大規模な内需拡大政策が実施されれば、過剰流動性の発生を避けながら既発国債償還をするときに必要な政府・日銀による米国等の公債・社債の大量購入の影響とあいまって、円の対ドル交換レート(為替レート)は相当に円安になる。それによって、わが国の産業は自ずと対外競争力を回復することができるから、「空洞化」の危機から容易に脱却しうる。

⑧モラールとモラルの向上
 「豊饒の中の貧困」の矛盾を無為・無策に放置して「人心を倦ましてめきた」ような政治のモラル・ハザード的状況から脱却すると、国民の「モラール(士気、意気)」が高まり、わが国は、まさしく、明治維新の大憲章「五箇の御誓文」にかかげられた「上下心を一にして盛んに経綸を行なう」ような国になる。そうなれば、当然、わが国民の「モラル(道徳、倫理)」も向上し、わが国は全世界の模範となり得る。

⑨アジアや世界にも有益
 わが国が大規模に内需を拡大した場合、わが国は諸外国の産物を今よりずっと大量に輸入するようになる。そのことは、アジア諸国をはじめ全世界の国々の経済にきわめて有益な効果をもたらす。国際経済は共存共栄の「右肩上り」の経済世界となる。

⑩日本経済の再興が世界に共存共栄を実現する
 「フロート制」の下で形成される為替レートには、「ハンディキャップ供与機能」がある。それによって、絶対的に生産性の高い先進工業国と絶対的に生産性の低い後進発展途上国の間でも、貿易が活発に行なわれ、国際分業が成立しうる。わが国が本格的なケインズ的政策の実行によって、完全雇用・完全操業の状態に近づき、「経済と国威の力強い飛躍的興隆」を実現し、主要国もこれにならえば、フロート制のシステムの本来的な機能が働きはじめる。その時こそ、世界の国々は、本当の意味で、国際分業の利益を享受しうるようになる。また、わが国経済の膨大な「生産能力」が、全人類のために真に貢献しうるようになる。それは、まさに「人類文明の黄金時代」の到来となる。

 次回に続く。
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救国の秘策がある6~丹羽春喜氏

2010-12-27 11:31:47 | 経済
●財源を得れば何が出来るか

 丹羽氏は、政府貨幣の発行によって、わが国は高度経済成長と財政再建が同時にできる。日本経済は行き詰まりを脱し、緊急を要する重要国策を実現できる、という。
 具体的には、次のようなことが実施可能である、と丹羽氏は説く。

①高度経済成長ができる
 打ち出の小槌」による政府貨幣の発行を行い、国民に一律、一人当たり40万円程度の「臨時ボーナス」を支給する。その措置によって、わが国民には、「総額55兆円前後の追加所得」が政策的に与えられる。その「波及効果」によって、1年半から2年くらいの間に、100兆円以上の国民所得(ないしGNP、GDP)の増加がもたらされる。これを1回限りではなく、継続的に行う。それによって、わが国は、不況・停滞を完全に脱却して「高度成長経済」を再現しうる。

②政府財政は黒字化する
 高度成長が再現されれば、「政府歳入の所得弾性値」が1.0を大幅に上回るようになる。そのため、政府貨幣の発行による造幣益の収入を勘定に入れなくとも、政府の財政は、「ゆうゆうと黒字化する」ことになる。
 財政の破綻といった問題も、「たちどころに、そして、容易に」解決することができる。

③既発国債の償還ができる
 「打ち出の小槌」財源をフルに活用して、これまでの政府の債務を削減することが可能である。
 丹羽氏は、国の長期債務残高を748兆円とする。これは、財務省推計による平成21年3月末の国家長期債務残高見込み額615兆円に、財政融資資金特別会計に計上見込みの国債残高133兆円を加算した数字である。丹羽氏は、これほどの巨額に達していると憂慮されている既発国債を償還することも、「容易になしうるようになるに違いない」と言う。
 既発国債の回収は、巨額の財源を利用して、政府あるいは日銀が、「円高」の防止もかねて米国等の公債・社債を大量に購入する。次に、その債券との等価交換で、国内の投資家から日本政府発行の既発国債を回収する。その代償として投資家には米国等の公債・社債を渡す。このようにすれば、わが国内の資金市場で過剰なカネのだぶつき(過剰流動性)を生じさせないで、大量の既発国債の回収を進めることができる。丹羽氏は、これを「非常に巧妙で効果的な方策」であると言う。
 「600兆円計画マニフェスト」では、政府の債務を350兆円削減し、約半分に減らすという計画が出されている。

④重要国策を実行できる
 デフレ・ギャップという膨大な生産能力の余裕という「真の財源」を活用すれば、緊急を要する重要国策を実行できる。

ア)完全雇用・完全操業の状態への接近を通じて、全国民の生活水準を大幅に引き上げる。
イ)ハブ空港や森林資源再生のための林道網といった社会資本を整備する。
ウ)代替エネルギー源開発など自然環境の改善のための公共投資を行う。
エ)東アジア情勢を踏まえて、防衛力を拡充する。
オ)国民年金の基礎年金を2倍にする。
カ)国民健康保険の負担料を半額に引き下げる。
キ)所得格差を解消する。
ク)学術・芸術を振興する。
ケ)対外援助を拡大する。

等の政策が実行可能である、と丹羽氏は主張する。
 上記の①高度経済成長、②財政の黒字化、③既発国債の償還、④重要国策の実行ができれば、国民は将来の心配をしなくてもよくなる。丹羽氏は、「当然、わが国の人口は増加傾向を回復しうるであろう」と予測する。
 「打ち出の小槌」財源を活用すれば、こういった良いことずくめの政策を「きわめて容易かつ安全確実に実施できる」と丹羽氏は断言する。

 次回に続く。
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救国の秘策がある5~丹羽春喜氏

2010-12-26 08:54:53 | 経済
●政府紙幣は刷らずに行うスマートで容易な方式

 政府貨幣の発行として、紙幣を大量に印刷すると、トラブルが起こるだろう。まず、現在流通している日銀券と混在すると、お金のやりとりがややこしくなる。銀行のATMは政府紙幣を使えるようにしなければならないだろうし、自動販売機も全部入れ替えになるだろう。費用も手間もかかる。
 丹羽氏は、政府紙幣を印刷することなく、トラブルも起こさずに政府貨幣を発行する「スマートで容易な方式」があると言う。そして、「それを採用・実施することこそが『救国の秘策』のための秘策である」と自説を開陳する。
 その方式とは、「政府貨幣の発行特権」のうち、必要額ぶんの権利を、政府が日銀に売るという方式である。その代金は、日銀券の札束ではなく、日銀が電子信号で政府の口座に振り込んだことにするだけでよい。紙幣を刷りまくる必要はない。「このやり方で、政府は、容易に巨額の財政資金を得ることができる」と言う。こうすれば、政府紙幣を大量に流通させることによる社会的な混乱を避けられる。
 こうして巨額の財政資金を得た政府は、次に何をすればよいのか。丹羽氏は次のように言う。「わが国の社会資本や環境財などはまだまだ不備・劣悪であり、社会保障や防衛力も不十分かつ脆弱であるから、それらを整備・充実するための支出を通じて総需要を拡大し、それによってわが国の経済を不況・停滞から脱却させて興隆に向かわせるというやり方が、本来的には、最も合理的である」。しかし、「残念ながら、現状は、各省庁や地方自治体において、そのための企画・設計などの準備が、あまりにもできていない」。
 そこでどうするか。丹羽氏は、次のアイデアを出す。

●まず全国民に臨時ボーナスを支給する

 わが国の現状で最善の政策は、政府が、「老人から乳児にまでいたるすべてのわが国民に一律、一人当たり40万円程度の『臨時ボーナス』」を支給することである」と丹羽氏は提案する。
 丹羽氏は、平成6年(1994)から、この臨時ボーナスの支給を提案し続けている。この方法は、「減税よりもはるかに大規模に行なうことができ、ずっと公平である」と丹羽氏は言う。
 国民に臨時ボーナスを支給するといっても、紙幣は印刷しない。日銀から市中銀行における国民一人一人の預金口座に電子的に振込む。丹羽氏は、銀行業界に依頼すれば、きわめて容易に実施できるとする。支給の作業のために公務員を増員するなどして、政府機構が肥大化するようなおそれはない。だから、政府機構をスリム化する努力とは矛盾しない。
 臨時ボーナスの支給という政策は、麻生内閣が行った「定額給付金」を思わせる。確かにそれと似たアイデアである。麻生内閣が丹羽氏の提案を参考にしたかどうかは不明である。だが、定額給付金は、金額は一人1万2000円、65歳以上及び18歳以下は2万円に過ぎず、しかも1回限りの給付だった。そして最大の違いは、税金ないし国債が財源だった。だから、結局は、国民ないし政府の負担となる。
 丹羽氏の政策は、金額が一人40万円と額が大きい。1回限りの線香花火のような発想ではない。2~3年ないし数年間、政府が、老人から赤ん坊まで、全国民に一人当たり一律数十万円のボーナスを支給する。大盤振る舞いだが、財源は、政府の貨幣発行特権である。だから、国民にも政府にも負担にならない。
 私見によれば、丹羽氏の政策は、まず国民に臨時ボーナスを支給して、個人消費を拡大する。それによって、景気を力強く振興する。これを数年続ける間に、総合的な成長政策を策定し、大規模な公共投資を実行に移すという意味だろう。臨時ボーナスは、初動としてはよい。しかし、あくまでなすべきことは、政府の主導による積極的な日本の再建と経済成長である。超大型バラマキ政策に終わってはならない。実行する政策体系の企画がなければならない。

 次回に続く。
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トッドの移民論と日本35

2010-12-25 08:47:57 | 国際関係
●トッドは国民国家の理念の重要性を説く

 『移民の運命』の内容を概述したところで、補足的な検討を行ないたい。国民国家と文明の将来についてである。
 現在、フランスという国民国家(ナシオン)は、それを越えるEUという広域共同体の中に統合されようとしている。国民国家の超克、さらには国民国家の解体・解消、こうしたことが、ヨーロッパの向かう方向として漠然と了解されている気配すらある。そのなかでトッドは国民国家的な理念の重要性をあえて主張している。
 トッドは、グローバリゼイションを根底的に批判し、国民国家の役割の強化を主張する。
 『移民の運命』の4年後に出した『経済幻想』で、トッドは、グローバリゼイションは「合理性と効率性の原理」であり、「社会的なもの、宗教的なもの、民族的なもの」を壊し、「個別的具体性を消し去り」「歴史から地域性を剥奪する」とする。トッドによれば、グローバリゼイションは、アメリカが主導してアングロ・サクソン的な価値観を世界に広める動きである。私ならば、アングロ・サクソン=ユダヤ的な価値観と言うところである。
 トッドは本書で、「資本主義は、有効需要の拡大を保護するために、強く積極的な国民国家が介入することを必要としている」とし、グローバリゼイションに対抗するために、国民国家の役割を強調する。「有効需要の拡大」と言うのは、ケインズの総需要管理政策の考え方に立つ財政金融政策の実施を想定しているものだろう。
 「ヨーロッパ主義、世界主義、地方分権、多文化主義等、表面は何の関連もないこれらの現象は、実際には、共通の特徴を持っている。それは、国民レベルの共同的信念の拒否である」とトッドは言う。そして、「国民レベルの共同的信念を衰退させた原因は、経済ではなく、精神の自律的変化にある」「因果関連は、精神を出発点とし、経済に到達する。国民の外部志向が、グローバリゼイションを生むのであり、逆ではない」。「エリートの反国民主義こそが、(略)世界化した資本のあらゆる力をもたらしたのである」と言う。そこからトッドは次のように主張する、「国民に集結された共同意識を取り戻せば、グローバリゼイションという虎を受け入れ可能な国内の猫に変えられるであろう」「もしグローバリゼイションが国民国家を解体しているのではなく、国民国家の自己解体がグローバリゼイションを生み出しているなら、国民国家の再構成はグローバリゼイションの諸問題をなくしていくだろう」と。
 グローバリゼイションが国民国家を解体しているのではなく、国民国家の解体がグローバリゼイションを生んでいる。国民国家の共同的信念を取り戻せば、グローバリゼイションは解消するというのが、トッドの主張である。そして、グローバリゼイションへの対抗のためだけでなく、移民への対応のためにも、トッドは国民国家の役割を高く評価する。その点は、本稿で先に諸所に書いたところである。
 ここでのトッドの主張の核心は、「国民レベルの共同的信念」「国民に集結された共同意識」の回復にある。言い換えれば、それぞれの国での国民精神の復興こそ、グローバリゼイションの強行や移民の増大を制御し、社会の共同性を保持するために、最も必要なものである。わが国であれば、日本精神の復興がこれである。グローバリゼイションによる国家の解体、日本の溶解や、移民の増大による日本の非日本化を防ぎ、国民経済を自主的に成長させる財政金融政策を行い、また日本の社会を日本人が主導して発展させるためには、日本の国民精神、日本精神の復興が必要である。

 次回に続く。
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救国の秘策がある4~丹羽春喜氏

2010-12-24 11:58:26 | 経済


●「救国の秘策」が可能な条件

 前項に丹羽氏の「救国の秘策」の財源調達方法である政府貨幣の発行について書いた。ただし、政府貨幣の大規模な発行は、いつでも可能なことではない。それが可能となるには、条件があると丹羽氏は言う。巨大なデフレ・ギャップが存在し、生産能力に余裕があって、インフレになるおそれがない場合である。それが「救国の秘策」を可能にする条件である。
 わが国の経済では現在、きわめて巨大な規模でデフレ・ギャップが発生して、居座っている。このことを丹羽氏は、明らかにした、
 「デフレ・ギャップ」とは、「需要不足に起因する生産能力の余裕」のことである。「潜在実質GDPと実質GDPの差」、GDPギャップである。需要と供給の差としての「需給ギャップ」とは、違う。需給ギャップであれば、需要に合わせて極力在庫を持たないように生産すれば、小さく抑えられる。わが国の現状は、各企業の努力によって、需給ギャップは非常に小さくなっている。これに対し、GDPギャップは、需要不足によって生じるから、総需要が増えない限り、埋まらない。
 丹羽氏の計測によると、現在の日本経済においては、デフレ・ギャップが、GDPベースで30~40パーセントに達している。すなわち、総需要の不足によって、年間400兆円もの潜在実質GDPが、実現されずに、空しく失われてしまっている。しかも、このデフレ・ギャップという形で失われる潜在GDPは、年々、増大していく傾向にあり、もし現在のような日本経済の低成長状態が続くとすれば、今後の10年間だけでも、失われる潜在GDPの合計額は、5000兆円という天文学的な巨額に達する。
 ところが、内閣府(旧経済企画庁)が発表するデータには、こういう意味でのデフレ・ギャップ(GDPギャップ)は、まったく現れない。丹羽氏は精密な計算によって、データの欺瞞を見破った。そして、旧経済庁・現内閣府は、正しいコンセプトでのデフレ・ギャップの計測を怠り、実情を隠してきた。まったく違うデータを作って、国民を欺いている、と丹羽氏は告発する。山家悠紀夫氏や菊池英博氏が告発したように財務省は粗債務で財政危機を強調することでわが国の経済を危機に陥れたが、その一方で、旧経済庁・現内閣府は丹羽氏が暴露したこのような欺瞞を行ってきたのである。
 丹羽氏は、1970年代からわが国には巨大なデフレ・ギャップが存在しており、それゆえにケインズ理論に基づく政府貨幣の発行が可能であることを明らかにした。
 丹羽氏は言う。「巨大なデフレ・ギャップが存在しているということは、厖大な生産能力の余裕が有るということを意味している」「このデフレ・ギャップという膨大な生産能力の余裕は、わが国の社会にとっての『真の財源』である」と。
 巨大なデフレ・ギャップが存在し、生産能力に余裕があって、インフレになる恐れがない時は、財源調達は政府貨幣の発行によるのがよいーーノーベル賞級の経済学者が幾人もそう唱えてきた。ただし、現代においてそれを実行した国はない。条件が整わなかったからである。ところが、今日の日本では、その条件がそろっている。そのことを丹羽氏は明らかにしたと主張する。
 丹羽氏は、独自の計測によって、デフレ・ギャップの存在を、グラフに表現している。上に掲載したグラフは、1970年を「完全雇用・完全操業」の状態とし、その状態を継続していた場合のGDPを、線で表す。これが潜在GDPであり、低め、中くらい、高めの三本の線で表す。グラフの一番下の線は、実際のGDPの推移を表す。つまり実質GDPである。右端の2008年の場合、1990年価格評価で見ると、「中」のケースだと、潜在GDPは979兆円であるのに対し、実質GDPは537兆円。つまり差し引き、442兆円もの富が実現されずに失われているわけである。これは、実現可能なGDPの約45%にもなる。それだけ、日本の生産能力は遊んでいるのである。原因は、需要不足に他ならないと丹羽氏は言うのである。

 次回に続く。
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救国の秘策がある3~丹羽春喜氏

2010-12-23 08:45:13 | 経済
●秘策の財源調達方法

 「お金がなかったら、刷ればいいんだよ」―――まるで小学生の言うことのようである。だが、政府貨幣の発行は、まっとうな経済学の理論に基づくものである。
 古来、政府が財政収入を得る道としては、(イ)租税徴収、(ロ)国債発行、(ハ)通貨発行の三つの手段がある。丹羽氏は、現在の日本では、この(イ)と(ロ)は「ほぼ限界にきている」。それゆえ、(ハ)の通貨発行によるべきである、と言う。
 租税徴収については、税金のほか国民健康保険料、年金等を合わせると、国民にはかなりの負担になっている。国債については、丹羽氏は、すでに発行残高は膨大な額に達しており、国債のさらなる発行を財源とすると、「姑息かつ規模過小」に陥ると見る。(註 ただし、政府の粗債務から金融資産を引いた純債務で見ると、2007年末で日本の純債務は289兆円。粗債務のおよそ3分の1) そこで、丹羽氏が提唱するのが、政府貨幣の発行である。
 そもそも政府貨幣とは何か。お金には、2種類ある。紙幣と硬貨である。お札には「日本銀行券」と書いてある。政府が発行しているお金ではない。日本銀行が出している。硬貨は、政府が発行している。政府は、記念貨幣や政府紙幣を出すことができる。これらをまとめて、「政府貨幣」という。
 「日銀券」と「政府貨幣」には、大きな違いがある。丹羽氏は、この点について、次のように説明する。日銀券は銀行券であるから、日銀という銀行が振り出した手形や小切手と同じ「借金の証文」である。それゆえ、日銀券が発行されると、日銀の会計では、その額だけ日銀の借金(負債)が増えたという勘定になる。ところが「政府貨幣」の発行額は、政府の負債にはならない。硬貨や政府紙幣の発行益(「造幣益」)は、国家財政の正真正銘の収入となる。利子の支払いや担保は不要であり、元本を返済する必要もない。将来世代の負担にも、ならない。だから、「政府貨幣」を発行すれば、政府の負担にならず、国民にも負担をかけずに、巨額の財政財源が得られる。  「政府貨幣」の発行は無制限に認められていて、数百兆円、数千兆円の発行も可能である。つまり、政府は、埋蔵金とは規模の違う「無限大の無形金融資産の『打ち出の小槌』」を持っている、と丹羽氏は言う。
 政府貨幣の発行は、奇策、禁じ手のように思われよう。ところが実は、ケインズ経済学の理論に基づくまっとうな政策なのである。ノーベル経済学賞受賞者のポール・サミュエルソンは、小泉首相にこのアイデアを提唱した。同じくジョセフ・スティグリッツも、平成15年(2003)年4月、わが国の財務省に招かれた際の講演で政府発行通貨の有効性を述べている。
 また、わが国には、政府貨幣発行の大成功例がある。明治維新の開始期に発行された太政官札(だじょうかんさつ)である。坂本竜馬と由利公正が、新政府の財源として、太政官札の発行を決めた。太政官札という政府貨幣の発行なくして、資金難の明治政府が立ち行くことはできなかった。文明開化、富国強兵、殖産興業へと進む明治維新の成功は、政府貨幣の発行によるものだった。
 こうしたノーベル賞級の経済学者の主張や歴史的事例を見れば、政府貨幣の発行は、奇策でも禁じ手でもないことがわかるだろう。
 ただし、政府貨幣の大規模な発行をできるには、必要な条件がある。その点を次回に書く。

 次回に続く。
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救国の秘策がある2~丹羽春喜氏

2010-12-22 11:12:13 | 経済
●「救国の秘策」とは

 丹羽氏の「救国の秘策」とは、「税金でも国債でもなく、また紙幣を刷りまくるわけでもなく、国民にはまったく負担をかけない方式で、新規の追加的な国家財政財源を確保して、わが国の財政を再建し、景気を回復させて経済を逞しい右肩上がりの成長軌道に乗せる」という政策である。
 基本的な考え方は、ケインズの理論に基づく財政出動による大規模な内需拡大政策である。丹羽氏が独創的なのは、財源の調達方法である。政策を行うための資金は、増税でも国債の増発でもなく、政府貨幣の発行によって調達する。
 政府には、貨幣を発行する権限がある。これを「政府の貨幣発行特権」という。政府貨幣の発行は、現行法のもとで可能ある。「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年、法律第42号)で、明白に認められている。丹羽氏は、政府がこの貨幣発行特権を発動すれば、いくらでも資金は調達できるという。政府は、無限の無形金融資産を持っている。丹羽氏は、これを「打ち出の小槌」と呼ぶ。
 「打ち出の小槌」とは、七福神の大黒様の持つ小槌で、打てば何でも自分の願うものが出るという不思議な小槌である。丹羽氏は、現在の日本は、この「打ち出の小槌」のように使うことのできる財源があるという。
 それは、巨大なデフレ・ギャップの存在による。言い換えると、生産能力の余裕である。丹羽氏の計算では、わが国では現在、毎年400兆円にも上る実質GDPがむなしく失われている。10年間では、5000兆円にも上る。これが「真の財源」であり、生産能力に余裕がある以上、これを財源にして、政府貨幣を発行することができると言う。
 この「打ち出の小槌」のような財源を使って「大規模な内需拡大型の財政政策を発動し、日本経済をめざましく興隆させていけばよい」というのが、丹羽氏の説く「救国の秘策」である。

●政府貨幣の発行による600兆円で日本を再興する

 丹羽氏の「救国の秘策」による政策案の最新版は、「600兆円計画マニフェスト」と題されている。平成18年(2006)9月、安倍内閣の経済政策担当者に宛てた提言であり、著書『政府貨幣特権を発動せよ。』(紫翆会出版、平成21年(2009)1月刊)に修正版が掲載されている。
 600兆円とは、誰しも驚く巨額である。だが、わが国には、それだけの金額を調達し得る財源があると丹羽氏は言う。100兆円といわれる国家埋蔵金どころではない。事実上、無限の無形金融資産を、わが国の政府は持っていると言う。
 「600兆円計画マニフェスト」の政策の要点は次のとおり。

① 国民にまったく負担をかけない新規財政財源を数百兆円確保!
② 国の負債の大量償還! 国の負債を半減!
③ 3~5年間250兆円を投入、年率5パーセント以上の経済成長率を10年!
④ 年金アップ! 社会保障の画期的充実! 防衛力も整備!
⑤ デフレやインフレを防ぐ真の「歯止め」の確立!

 600兆円の新規財源は、国(政府)がきわめて巨額(事実上は無限)に所有している無形金融資産のうちの650兆円ぶんを、50兆円値引きし、600兆円の代価で政府が日銀に売ることによって調達する。そうすることによって、日銀の資産内容もいちじるしく改善される。わが国の金融システムや信用秩序を確固としたものとすることにも役立つ。
 600兆円のうちの250兆円程度を、3~5年間に投入して、大々的な総需要拡大政策を実施し、わが国の経済を一挙に再生・再興させる。
 残りの350兆円を用いて、国の長期債務残高の半分に近い350兆円を、数年のあいだに償還する。経済成長の回復にともなう税収の大幅な増加とあいまって、わが国家財政を根本的に再建するというものである。
 すなわち、

 650兆円=50兆円(日銀)+250兆円(公共投資)+350兆円(国債償還)

という内訳である。
 丹羽氏は、この「600兆円計画マニフェスト」は、ケインズの「乗数効果」が健在で、「有効需要の原理」がゆるぎなく作用しているわが国の経済では、「きわめて簡単・確実、かつ、安全・容易に達成しうる」と言う。
 「有効需要の原理」とは、社会全体の有効需要の大きさが産出量や雇用量を決定するという理論であり、経済学に「ケインズ革命」と呼ばれる改革をもたらしたものである。「有効需要」は、実際の貨幣の支出に裏付けられた需要をいう。「乗数効果」は、ケインズ理論の支柱の一つ。需要の増大は、消費を中心にした他の需要を誘発することにより、最終的に当初の需要増以上にGNPを増加させることをいう。
 丹羽氏は、ケインズ理論を発展させたケインズ主義の経済理論を駆使してわが国の経済の実態を把握し、そこから「救国の秘策」を立案・提示している。

 次回に続く。
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小沢一郎氏を証人喚問すべし

2010-12-21 13:06:43 | 小沢
 小沢一郎氏は、10月4日に検察審議会の2回目の議決により、強制起訴されることになった。その後、民主党は小沢氏を国会に招致することも、離党勧告をすることもなく、もたもたした状態を続けた。尖閣諸島沖中国船衝突事件の対応等で政権への支持率が急落するなか、ようやく岡田幹事長が小沢氏に衆院政治倫理審査会に出席するよう求めたが、拒否された。最後に昨20日菅首相が小沢氏と官邸で会談し、政倫審への自発的な出席を要請したが、小沢氏は拒否。政倫審が招致を議決しても出席しないと明言したという。
 今朝の全国紙は4紙とも社説に、小沢氏の国家招致問題を書いた。読売・産経・朝日は、もはや証人喚問しかないという主張で、ほぼ一致。毎日はトーンが低く、政倫審の議決を求めるだけで、証人喚問は求めていない。下記のごとくである。

 読売新聞「本人が衆院政治倫理審査会への出席をこれだけ強く拒否している以上、残された手段は証人喚問しかあるまい」「重要なのは、小沢氏の国会での説明を実現することだ。民主党は法的拘束力のある証人喚問に同意すべきである」
 産経新聞「「一兵卒」にいつまで振り回されるのか。民主党は証人喚問を決断して自浄能力を発揮するしかあるまい」「首相は「政治とカネ」にけじめをつけるため、必要な政治判断を示さなければ、国民の民主党への不信は払拭できないことを認識すべきである」
 朝日新聞「菅首相と党執行部は、より強い姿勢で小沢氏に対さなければならない。当面、政倫審への出席を求める議決を目指すとしても、小沢氏があくまで出ないという以上は法的拘束力のある証人喚問を実現しなければなるまい」
 毎日新聞「政倫審を招集し、招致の議決を急ぐことが、政党としての意思表示の第一歩だ。小沢氏側近議員たちの抵抗や自民党から「アリバイ的議決」との批判もあろうが、粛々として対処すべきだ。国内外で難問山積の折、日本の政治のノド元に突き刺さるトゲは早く抜くべきだ」
 
 毎日のスタンスは、民主党執行部に近く、読売・産経・朝日のスタンスは自民党中心の野党に近い。
 政治家には、法的責任のほかに、政治的責任、道義的責任がある。小沢氏が司法の場で裁かれるだけでなく、国会で責任を問われるのは当然である。
 民主党執行部が、小沢氏の問題を政倫審に招致することで、けじめをつけられると考えているとすれば、大間違いである。政倫審には強制力はないし、そこで発言しても偽証罪に問われない。鳩山前首相は自身の「政治とカネ」の問題で政倫審が招致を議決したが、出席しなかった。小沢氏も同様の行動をすることは、はなから予想されたことである。
 政治家の倫理を正し、国民の信頼を回復するには、証人喚問の実現以外ない。民主党は小沢氏に離党勧告をし、拒否すれば除名にしたうえで、証人喚問を行うのが、政党としてのあるべき姿である。それのできない政党に政権を担う資格はない。

 以下は、全国紙4紙の社説。

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●読売新聞 平成22年12月21日

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101220-OYT1T01124.htm
小沢氏国会招致 実現には証人喚問しかない(12月21日付・読売社説)

 本人が衆院政治倫理審査会への出席をこれだけ強く拒否している以上、残された手段は証人喚問しかあるまい。
 菅首相が民主党の小沢一郎元代表と会談し、自発的に政倫審に出席するよう要請した。小沢氏は、これを拒否したうえ、政倫審が招致を議決しても出席しないと明言した。政倫審の議決には法的拘束力がない。
 小沢氏は、近く政治資金規正法違反で強制起訴されるため、政倫審に出席する「合理的な理由はない」とする文書を首相に示した。文書は「政倫審の審査は立法府の自律的な機能で、司法府への介入を避ける」べきだとしている。
 この三権分立を盾にするかのような主張は全く筋が通らない。
 小沢氏の政倫審での発言が、司法の判断に影響することはあるまい。「司法府への介入」の点では、小沢氏が検察審査会を「秘密のベールに閉ざされている」などと批判したことの方が問題だろう。
 小沢氏の出席拒否にこそ、「合理的な理由はない」のである。
 岡田幹事長らが指摘しているように、政治家には、裁判での法的責任以外に、国民に説明するという政治的責任がある。小沢氏も一時は、「国会の決定には従う」と言明していたはずだ。
 政党の執行部が国会招致を求めながら、所属議員が今回ほど徹底抗戦した例はほとんどない。結局、小沢氏の主張は、身勝手な保身の論理と言わざるを得ない。
 首相と小沢氏の会談の決裂を受け、民主党は対応を協議したが、結論を持ち越した。民主党の一連の対応には問題が多い。
 菅・小沢会談はセレモニーの色彩が強い。党執行部にすれば、手順を尽くして、小沢氏の国会招致に努力している姿勢を演出したかったのだろうが、国民にはコップの中の争いとしか見えない。
 臨時国会中に政倫審で議決すべきだったのに、党内対立を恐れて年末まで先送りしてきたのは、党執行部の優柔不断さが原因だ。
 さらに疑問なのは、小沢氏が政倫審の議決を無視した場合の対応を決めかねていることだ。政倫審で議決さえすれば、民主党として責任を果たしたと考えているのだとすれば、甘過ぎる。
 「クリーンな政治の実現」が「国民の強い要望」かつ、「私自身の政治活動の原点」と語った首相の所信表明演説は何だったのか。
 重要なのは、小沢氏の国会での説明を実現することだ。民主党は法的拘束力のある証人喚問に同意すべきである。
(2010年12月21日01時30分 読売新聞)

●産経新聞 平成22年12月21日

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101221/stt1012210214006-n1.htm
【主張】菅・小沢会談 もはや証人喚問しかない
2010.12.21 02:14

 「一兵卒」にいつまで振り回されるのか。民主党は証人喚問を決断して自浄能力を発揮するしかあるまい。
 菅直人首相が官邸で小沢一郎元代表と約1時間半会談し、「政治とカネ」の問題をめぐり政治倫理審査会への自発的な出席を要請したものの、小沢氏が拒否したことから決裂した。
 首相は「党としての方向性を決めなくてはならなくなる」と、政倫審での議決に移らざるを得ない考えも伝えたが、小沢氏は「議決があっても出ない」と答えた。
 当事者である小沢氏が拒否する以上、強制力を持たない政倫審の開催はもはや困難だ。そのあと民主党役員会は、政倫審議決を決めることなく、27日の役員会まで意思決定を持ち越した。茶番劇が続いている。
 小沢氏は9月の党代表選で菅首相に敗れた際、「一兵卒として民主党政権を成功させるために頑張りたい」と述べたが、その場限りの発言だったようだ。
 小沢氏はまた、検察審査会の起訴議決の後、「国会が決めれば従う」と国会招致に応じる考えを表明していた。首相は会談でそれを指摘したが、小沢氏は強制起訴による裁判が近づいていることを理由に出席できないと主張した。
 自民党など野党は、偽証罪を伴う証人喚問が疑惑解明に必要だと主張している。また、小沢氏が政倫審に出席しないことを見越し、「アリバイ作りの片棒を担ぐつもりはない」と、政倫審での議決には加わらない構えだ。
 民主党役員会でも証人喚問の必要性を指摘する意見があったという。岡田克也幹事長は記者会見で、証人喚問は「なるべく避けたい」と述べたが、疑惑解明に消極的な姿勢としか映らない。
 小沢氏は首相との会談で、最近の地方選で民主党が惨敗していることなどに関して「政治とカネ以外の影響の方が大きいのではないか」と主張したという。国民の信を失い、説明責任も果たさない小沢氏が政権を批判しても説得力をもたない。その一方で、自衛隊を「暴力装置」と呼び、問責決議を可決された仙谷由人官房長官の責任に首相は頬かぶりしている。
 首相は「政治とカネ」にけじめをつけるため、必要な政治判断を示さなければ、国民の民主党への不信は払拭できないことを認識すべきである。

●朝日新聞 平成22年12月21日

http://www.asahi.com/paper/editorial.html
小沢氏拒否―執行部は強い姿勢で臨め

 民主党の小沢一郎元代表が菅直人首相に対し、自らの政治とカネの問題について、衆院政治倫理審査会での説明を拒否する考えを伝えた。
 予想されたこととはいえ、その重い政治責任を果たそうとしない小沢氏のかたくなさに驚く。
 もう時間を浪費してはいられない。菅首相と党執行部は、より強い姿勢で小沢氏に対さなければならない。
 当面、政倫審への出席を求める議決を目指すとしても、小沢氏があくまで出ないという以上は法的拘束力のある証人喚問を実現しなければなるまい。
 小沢氏は首相の説得を拒んだ理由に、近く強制起訴され、裁判が始まることを挙げた。
 もとより、法廷で「潔白」を訴え、刑事責任のないことを主張するのは、小沢氏に与えられた権利である。
 しかし、法的責任と、政治家が負うべき政治責任とはおのずから異なる。あまりに当然のことを小沢氏に対し、繰り返し指摘しなければならないのは極めて残念だ。
 有権者によって選挙され、政治権力を信託された政治家は、「国民代表」としての政治責任を負う。これは近代国家の統治原理の核にある考え方である。
 立法権を委ねられ、それを行使する国会議員は、単に法律を守っていればそれでいいという立場にはない。
 例えば、長く続く政治とカネの問題をどう解決するのか、政治資金の不透明さをどう解消していくのか。そうした問題に立法府の一員として取り組むべき政治家が、自ら疑惑を招いてしまったとあれば、国会で説明するのは当たり前すぎることだろう。
 思えば小沢氏には、自身の政治責任に自覚的と見られたときもあった。
 2004年には国民年金への未加入を理由に党代表選立候補を見送った。法的には問題ないとしながら、「年金制度改革を国民に理解してもらわなければならない立場」だと言い、政治責任をとったのだった。
 しかし、いかんせん、その政治責任に対する姿勢は著しく一貫性を欠く。
 今年6月の鳩山由紀夫前首相との「ダブル辞任」直後の党代表選出馬。そして今回。かつて政治改革推進の立役者だったとは思えない判断である。
 小沢氏は昨年の総選挙の立候補予定者91人に約4億5千万円を配ったが、その原資に旧新生党の資金を充てていたことが明らかになっている。税金も受ける政党の資金を個人の政治資金として配ってよいのか、小沢氏の説明を聞いてみたい。
 小沢氏の問題にけりをつけなければ、来年早々の通常国会は動くまい。差し迫った多くの政策課題にも手がつけられない。菅首相と民主党執行部に与えられた時間は少ない。

●毎日新聞 平成22年12月21日

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20101221k0000m070128000c.html
社説:政倫審出席拒否 小沢氏招致の議決急げ

 残念というより、情けないというべきだろう。
 衆院政治倫理審査会に民主党の小沢一郎元代表の自発的な出席を求める菅直人首相の説得は不調に終わった。1時間半にわたる2人だけの会談で、小沢氏は拒絶を貫いた。この際は、政倫審での議決による招致の手続きに入るしかないだろう。年明け通常国会で、この問題が、国政の重要問題の審議の妨げにならないよう、菅執行部には腰を据えての取り組みを望みたい。
 首相が会談後に明らかにしたところによると、小沢氏は先に岡田克也幹事長あてに提出した文書を読み上げ出席を拒否、国会が決めればいつでも出る、としたかつての小沢発言を首相が持ち出し、「(議決の)手続きを取れば出るのか」とただしたところ、これも拒絶した。さらに、小沢氏は国会運営の手詰まりについて、政治とカネ以外の影響の方が大きいのではないか、と述べ、暗に現執行部の野党対策を批判した。
 臨時国会運営の見通しの悪さ、閣僚失言の数々は確かにあった。ただ小沢氏にそう言う資格があるのか。
 先の岡田氏への文書は、出席拒否の理由として、すでに強制起訴される身となり国会での審査は裁判の妨げになる、との理屈をあげている。立法府が司法に介入すべきではない、という小沢氏らしい論法だ。
 だが、この局面で国会が小沢氏に望んでいるのは、法や論理ではなくそれ以前の倫理である。億単位の政治資金を動かし、政治資金規正法違反の虚偽記載で秘書らが起訴された問題で、当の政治家が、自らが所属する国会の場において、求められればそれなりの釈明をする、あるいは、身の潔白を進んで証明する、ということは、最低限のモラルと考える。
 わからないのは、小沢氏がなぜかたくなに出席を拒むのかだ。何度も記者会見に応じ、東京佐川急便事件では証人喚問にも出たことのある小沢氏には小さな譲歩のはずである。菅政権を追い込むカードにしているとすれば、一兵卒として菅政権を支える、との発言は撤回すべきだろう。
 いずれにせよ、通常国会は菅政権が残る力を振り絞って取り組まなければ乗り切れない。ここで、小沢問題が再び障害になるような愚はおかしてはならない。政権与党として政治とカネ問題への最低限の自浄能力があることを国民に示すべきだ。
 政倫審を招集し、招致の議決を急ぐことが、政党としての意思表示の第一歩だ。小沢氏側近議員たちの抵抗や自民党から「アリバイ的議決」との批判もあろうが、粛々として対処すべきだ。国内外で難問山積の折、日本の政治のノド元に突き刺さるトゲは早く抜くべきだ。
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関連掲示
・拙稿「小沢氏には最低の倫理もない」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101010
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