ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

教育基本法の改正12~高等教育

2006-04-30 10:53:04 | 教育
 私は初等中等教育をもって普通教育とし、これが同時に義務教育であると整理し直すとよいと思っている。初等中等教育の上に、高等教育がある。その中に専門教育及び職業教育がある。高等学校における普通科は、教養科と名称を変更する。
 高等教育について、教改委は、以下のような条文を提示案している。

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●教改委案

第十一条(高等教育)
一 高等教育は、高度で専門的な知識を備えた人材の育成を図るとともに、真理の探究を通じて、新たな知見を生み出し、学術の進展や我が国及び国際社会の発展に貢献することを期して行われなければならない。
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 この条文案は、「知識」「知見」「学術の進展」という言葉が並んでおり、高等教育が知識を中心の教育であるかのような規定になっている。内容が偏っており、加筆・修正が必要だと思う。
 まず「高度で専門的な知識を備えた人材」とあるが、これは単に知識だけでなく、「知識と技術」と改めたい。また、ここに「勤労と責任を重んじ、自主的な精神にみち」と補いたい。これは、現行法第一条にある文言である。高等学校まで進学する者が大多数となっている今日、高等教育は一部のためのものではなくなっている。高等教育まで受けた日本人は、国民として、また社会人として一層の自覚を持って、勤労や社会参加をすることが要請される。

 次に、「真理の探究を通じて、新たな知見を生み出し、」とあるが、「知見」は個人が見て知って得た知識である。「知見を得て、」ならわかるが、「知見を生み出し、」は無理がある。「生み出す」に重点を置くなら、「新たな価値を生み出し、」だろう。高校・専門学校なら「知見を得て」、大学・大学院なら「価値を生み出し」だろう。条文の前半に「知識を備えた」とあるので、前者では重複する。後者に修正したい。

 条文の後半は「貢献」する主体が、人材なのか高等教育なのかが、あいまいである。この点は、高等教育全般というより、大学の役割にかかってくる。そちらに移したいと思う。
 駅弁大学などといって増え続けた我が国の大学の数は、他の先進国に比べ、異常なほど多くなっている。それほどまでに教育が盛んに行なわれていながら、成果はどうか。
 教育の成果は、その教育が生み出した人材をもって判断するのみである。現代日本の教育の成果は、20歳を迎えた青年の姿を見れば分かる。基礎学力の身についていない学生が増え、また国民としての自覚が弱く、社会常識も欠く成人が増えている。膨大な時間と費用とエネルギーをかけながら、青年たちの可能性を引き出せていない。
 こうした結果を見据えて、我が国の教育内容・教育制度の全般を見直すことが急務になっていると思う。その見直しをはじめるには、教育基本法をしっかり改正し、根本的な理念・方針を打ち立てることだと思う。大学についても、こういう問題意識に基づいて、条文を新設したい。

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◆ほそかわ案

(高等教育)
第十一条 高等教育は、高度で専門的な知識と技術を備え、勤労と責任を重んじ、自主的な精神にみちた人材の育成を図ることを目的とする。
2 大学は最高学府として、真理の探究を通じて、新たな価値を生み出し、学術の進展や我が国及び国際社会の発展に貢献する人材を養成するための教育及び研究の機関とする。
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 高等教育のうち、職業教育についても、教改委は、新設を提案している。

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●教改委案

第十四条(職業教育)
一 国及び地方公共団体は、国民が個性と能力に応じ、職業に関する知識と技能を身につけることを期し、職業教育の振興に努めるものとする。
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 私は、この案に異論ない。同文なので、これを私案第十ニ条とし、掲載は省略する。

 次に、自公・教改委とも、私立学校に関する条項の新設を提案している。自公案は、内容不明である。教改委案は、以下の通り。

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●教改委案

第十ニ条(私学振興)
一 国及び地方公共団体は、公教育の一翼を担う私立学校の重要性にかんがみ、その振興に努めるものとする。
ニ 私立学校の建学の精神及びその多様性と自主性は尊重されなければならない。
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 私学を振興する主体は、民間である。行政は「振興に努める」のでなく、振興を支援する程度でよいと思う。その文言のみ修正したい。

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◆ほそかわ案

(私学振興)
第十三条 国及び地方公共団体は、公教育の一翼を担う私立学校の重要性にかんがみ、その振興を支援するものとする。
2 私立学校の建学の精神及びその多様性と自主性は尊重されなければならない。
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横田早紀江さん、米下院で証言

2006-04-29 08:25:20 | 国際関係
 わが国は、自国の領土から同胞が連れ去られることを許し、連れ去られた同胞を家族のもとに取り返すことのできないような国になっている。この国を根本から立て直そう、と国民が立ちあがらなければ、奪われた同胞は戻ってこない。そして、この国を根本から立て直さなければ、いつか国民全体が他国に蹂躙される時が来るだろう。

 北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさんは、韓国から拉致された高校生の一人と結婚しているらしい、と数ヶ月前から雑誌等で伝えられていた。
 今月11日、日本政府はDNA鑑定の結果を明らかにし、めぐみさんの夫は、拉致被害者キム・ヨンナムさんである可能性が高いことがわかった。横田家とヨンナム家の交流が行われた。
 韓国は、これまで自国民の拉致被害者に冷淡だったが、今回の鑑定結果を受けて、韓国内で拉致被害者の救援運動が高まり、日韓の両政府が被害者の救援に協力していくことが期待される。

 めぐみさんの母・早紀江さんら拉致被害者家族会と、支援団体「救う会」のメンバーが渡米した。米下院外交委員会の公聴会で証言するためだ。
 早紀江さんは、27日に開かれた公聴会で、証言を行った。この公聴会は、下院外交委の中のアジア太平洋小委員会と人権小委員会の共催で行われた。北朝鮮人権法の実施状況を点検し、今後の米政府の対北朝鮮政策に生かすことを目的としている。早紀江さんのほかに、「救う会」副会長の島田洋一福井県立大教授、韓国人拉致被害者や家族らも証言した。
 米下院の議員だけでなく、アメリカ国民の心に、家族を思う人々の訴えは響いたことと思う。

 ブッシュ大統領が急遽、早紀江さんと面会することとなり、28日、ホワイトハウスで実現した。米大統領が拉致被害者の家族と面会するのは初めてだ。米政権は北朝鮮の人権問題に批判を強めており、面会は拉致問題を極めて重視していることを示すものだ。
 めぐみさんの写真をはさんで面会した大統領は「(拉致問題解決への)働き掛けを強めたい」と述べた。終了後には、「最も心を動かされた会談の一つだった」と語った。

 公聴会を主催したスミス委員長は、拉致問題を7月にロシアのサンクトペテルブルクで開かれる主要国首脳会議(サミット)の優先議題として取り上げるよう、大統領に働きかけることを表明している。拉致問題の解決に向けて、世界が動き出すことを期待したい。

 早紀江さんの証言は、私たち日本人、そして日本の政治家こそが、心底深く受け止めるべき内容だと思う。一人でも多くの人に読んでいただきたく、勝手ながら電脳補完禄Blogから転載させていただく。
http://nyt.trycomp.com:8080/modules/news/

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 本日はこのような貴重な機会を与えて下さったリーチ委員長、スミス委員長を初めとする米国議会の先生方に感謝いたします。
 私は今から29年前、1977年11月に13歳で北朝鮮に拉致された横田めぐみの母、横田早紀江でございます。めぐみが中学校からの下校途中に行方不明になってから、どうしていなくなったのかわからない長い長い二十年間の苦悩の日々を過ごして参りました。めぐみが北朝鮮の工作員によって拉致をされたという情報が入ったのは、1997年のことでした。
 私たちはめぐみが生きていたのだ、すぐにでも会える、という思いで大変喜びました。けれども北朝鮮にいることがわかって、それから9年以上が過ぎたのにまだ救出出来ません。なぜ助けられないのか、悔しくて、悲しくてたまりません。
 金正日は2002年9月の日朝首脳会談で一転して13人だけの拉致を認めました。北朝鮮が拉致した日本人は13人どころではありませんが、彼らは数多くの被害者について、いまだに拉致したことさえ認めていません。拉致の疑いのあるケースは450人以上あります。
 娘めぐみと、本日家族がこの席に来ています田口八重子さん、増元るみ子さん、市川修一さんら8人は死亡と通告されましたが、めぐみの骨とされるものなど北朝鮮が8人の死亡の根拠として提供したものは、日本政府の精査の結果、全て信じるに値しないものでした。
 これは1年半前にニセ遺骨と一緒に日本政府に提供された拉致直後のめぐみの写真です。めぐみは歌の好きな明るい少女でした。この淋しそうな顔見て私たちは思わず写真をなでながら、「めぐみちゃん、こんな所にいたの? どれほど不安だったでしょう。まだ助けてあげられなくてごめんなさい」と話しかけました。
 めぐみの娘、私たちの孫であるキム・ヘギョンさんの存在が明らかになり、今年4月にヘギョンさんの父親が韓国の拉致被害者キム・ヨンナムさんであることがDNA鑑定で証明されました。ヨンナムさんは16歳、高校生で拉致されました。北朝鮮による拉致被害者は日本、韓国だけでなく、中国、タイ、レバノン、フランスなど12ヶ国に及んでいます。
 亡命工作員の証言によると、娘めぐみは工作船の暗い船底に閉じこめられて、「お母さん助けて、お母さん助けて」と壁をかきむしって絶叫し続けて暗い海を運ばれたと言います。
 めぐみたちはまだ元気であちらにいるのです。本当にもう心身疲れ果てておりますけれども、子供達が助けを求めている間は、どんなことがあっても倒れることは出来ません。
 子供達の失われた年月は取り戻せません。世界各国から拉致された全ての被害者たちを助け出し、これからの人生を自由の地で過ごさせてやりたい。ひどい人権侵害に苦しんでいる北朝鮮の人々も助けなくてはなりません。
 世界が心を合わせて、「拉致は許せない。全被害者をすぐ返しなさい。それがないなら経済制裁を発動します」とはっきりと言っていただきたいのです。それが私たち家族の心からのお願いでございます。
 米国議会、政府、国民の皆様のお力添えをお願いします。
 本当に今日はありがとうございました。
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参考資料
・電脳補完録のBlog
http://nyt.trycomp.com:8080/modules/news/
(拉致問題に関する情報を収集)
・拙稿「北朝鮮による拉致とは何か」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08e.htm
(この問題について、もうひとつよくつかめていないと感じる人への手引きです)

教育基本法の改正11~三者連携

2006-04-28 10:25:03 | 教育
 自公案・教改委案とも、学校、家庭、地域の連携に関する条文を新設している。自公案の内容は分からないが、教改委案は、以下のように提示している。

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●教改委案

第八条(学校・家庭・地域の連携と協力)
一 国及び地方公共団体は学校、家庭及び地域社会が相互に緊密な連携と協力を図り、教育の目的達成と教育環境の整備を図るよう努めるものとする。
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 これは重要な提案である。私は異論がない。日本の教育は待ったなしの所に来ている。「親の責任だ」「教師の責任だ」「いや社会の責任だ」などと、責任のなすりあいをしていたのでは、日本の教育は決してよくならない。家庭・学校・地域社会の連携と協力が欠かせない。ただ、語順は、家庭・学校・地域社会が良いと思う。一つの法の中では統一が必要と思う。その点だけを直す。

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◆ほそかわ案

(家庭・学校・地域の連携と協力)
第九条 国及び地方公共団体は家庭、学校及び地域社会が相互に緊密な連携と協力をするよう促し、教育の目的達成と教育環境の整備を図るよう努めるものとする。
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 次に、学校教育の段階及び種類についての条項に移る。教改委は、これに関する条項の新設も提案している。

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●教改委案

第十条(初等中等教育)
一 国は、初等中等教育について全国的に一定水準を確保する責務を有し、内容その他の基本的な事項を定めるとともに、その達成状況の評価を行う。
ニ 地方公共団体は、国の定めた初等中等教育に関する施策を確実に遂行するものとし、更に地域の特性に応じ、独自の基準の制定その他の独自の施策を立案実行することができる。
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 この条文案には、初等中等教育の目的と役割が書いていない。それを明記することが先である。そうであってはじめて、全国的な水準維持等について定めることが生きる。
 教改委の条文案は国と地方公共団体の関係を明確に定め、そのうえで地域の特性を生かす教育を保障している。 教育について、無原則的な地方分権は、国家としての統一を損なう。また地域格差が広がるおそれがある。教改委案は、こうした弊害を防ぐために有効である。
 補足だが、地方分権の動きの中には、日本の統治権を分散し、中央と地方の対立を醸成して、国政を左右しようという意図が見られる。憲法に国防や非常事態の規定がきちんとなされていないまま地方分権を進めると、日本の解体となりかねない。また他国の侵攻を誘発しかねない。教育をこのような政権闘争の手段としてはならない。
 私は、教改委の条文案に賛同する。第一項として私見を加えた案を以下に示す。

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◆ほそかわ案

(初等中等教育)
第十条 初等中等教育は、学校教育の基礎をなすものであり、児童、生徒の発達に応じて、段階的に教育の目的達成をめざすものとする。
2 国は、初等中等教育について全国的に一定水準を確保する責務を有し、内容その他の基本的な事項を定めるとともに、その達成状況の評価を行う。
3 地方公共団体は、国の定めた初等中等教育に関する施策を確実に遂行するものとし、更に地域の特性に応じ、独自の基準の制定その他の独自の施策を立案実行することができる。
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教育基本法の改正10~学校教育

2006-04-27 10:45:29 | 教育
 学校教育について、現行の教育基本法は、以下のように定めている。

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●現行法

第六条(学校教育)
 法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
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 ここに言う「公の性質」だが、学校に限らず、法に定める組織・団体が「公の性質」を持つのは当然である。国が法人格を与えるのは、その対象が、何らかの「公の性質」を持つからだろう。本条は、学校は「公の性質をもつもの」だから、私立ならば、学校法人の資格を取らないと開設できないという規制をかけているだけである。
 もっと重要なこと、学校教育の目的が、この条項には何も書かれていない。これは、欠陥である。国民が税金を納め、国や地方公共団体が学校を作り、親が親の義務として子供を学校に行かせるのは、何のためなのか。その根本のところを定めるべきだろう。規制のことなど、その次ぎの話しである。

 自公案は、「学校教育」「大学」という条項があるようだが、私には内容が分からない。分からない理由は、自公案は条文が公表されていないからである。
 3年間にわたって、秘密会議で協議して議事録も資料も公開しないうえに、最終報告段階になっても条文案を公表せず、要旨だけしか発表しないのが、与党検討会である。ごく一部の者の話し合いで案をつくり、それを一気に成立させてしまおうという目論見だろう。彼らは、デモクラシーを保障する「公開の討論」という根本原則を無視している。その姿勢は、ファシストや極左翼に通じる。
 これは、従来の自民党にはなかった姿勢である。個人独裁的・中央集権的な体質を持つ公明党=創価学会の手法が、影響しているのではないか。創価学会では、ヒトラーの『わが闘争』が参考書とされていると聞く。特殊な団体では、祖国への「愛国心」よりも、排他的な教義や指導者個人への忠誠が優先される。内憂外患の時代に、熱烈な愛国心に燃えて警告・行動した日蓮の意図とは、違うものを感じる。一団体の利益追求が、国の舵取りを左右することになれば、それは日本亡国への道である。
 自民党は、自らの腐敗・堕落で自力では保ちえなくなった政権に固執して、公明党=創価学会との関係を深め、彼らの協力なくして選挙を戦えなくなった。昨年の9・11衆議院選挙による与党大勝は、自民党が公明党と一層一体化を深めた結果である。選挙後は、ますます創価学会の意向に沿うことなしに、小泉自民党は、政権維持・政策実現をできなくなっている。
 その現れの一つが、「愛国心」である。国民の8割が愛国心の教育は必要だと求めているのに、国民のごく一部でしかない創価学会の池田本仏主義者と自民党の取引のために、日本人の愛国心が地に捨てられようとしているのだ。学会に、真に日本を愛する心を持つ人がいるならば、それが正しい道かどうか、よく考えていただきたいと思う。
 
 さて、「学校教育」に関して、教改委は、以下のように提案している。

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●教改委案

第七条(学校教育)
一 法律に定める学校における教育活動は、公の性質をもつ。
二 学校教育は、教育の目的を実現するための中心的な機能を有する。
(三 国及び地方公共団体は、学校教育の重要性にかんがみ、規準が守られ、静謐な学校運営が行われるよう努めるものとする。)
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 第一項は、主語を現行法の「学校」から「学校における教育活動」に改めている。それはよいが、現行法が学校開設に規制をかけていた後半部分を省いたために、何のために第一項を設けるのかあいまいになってしまっている。
 第二項は、学校教育が「教育の目的を実現するための中心的な機能を有する」と定めて、学校教育の役割を盛り込んでいる。学校教育自体の目的は述べていないが、教育の目的全般が、学校教育の目的であることが、わかる。
 続く第三項は、内容が意味不明である。「規準が守られ」た「静謐な」学校運営とは、どういう運営か。学校運営に、政治的な思想的な圧力がかけられたり、妨害が行なわれたりしているという意味か。主旨の分からない文章である。また、学校教育は「中心的な機能を有する」から、こういうことをすると定めるべきだろう。

 失礼ながら、教改委案には、自公案に対し、本気で対抗しようという気迫が足りないのではないか。こうやって、条文を逐一検討してみると、やや意志薄弱と感じられる部分が散見される。自公は、デモクラシーの原則を無視してでも、自分達の意思を実現しようという意志をむき出しにしている。ファシストや極左翼に通じるようなやり方である。それに対抗するには、よほどの覚悟が必要である。
 民間で教育基本法の改正に取り組んでおられる日本の良識を代表する人々には、日本精神を取り戻し、真に日本の再建に資する知恵を振り出していただきたく、強く念願するものである。

 以下に私案を示す。私案第七条で触れた普通教育に関しては、ここでさらに具体的に定める。

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◆ほそかわ案

(学校教育)
第八条 学校教育は、教育の目的を実現するための中心的な機能を有する。
2 国及び地方公共団体は、学童、生徒、学生の健やかな成長に資する良好な環境の整備、振興に努めなければならない。
3 学校における教育活動は、公的な性格をもつものであって、学校は、国または地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
4 国は、普通教育を行なうため、初等及び中等教育を整備する。また、普通教育の成果の上に、個別的部分的な教育を施す専門教育及び職業教育の整備に努めるものとする。
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追記:
 自公案は条文が公表されていないので内容がわからない、手法に問題がある旨を書いたが、その翌日28日にようやく全文が発表された。私は30日に知った。
http://www.sanin-chuo.co.jp/newspack/modules/news/article.php?storyid=306966020
 今後、その内容をもとに、これまで書いてきたことを書き直したい。 

教育基本法の改正9~義務教育

2006-04-26 17:37:19 | 教育
現行法は、第四条に義務教育を定めている。私は、生涯学習、家庭教育、幼児教育、義務教育、学校教育という順番が良いと考えるので、ここで取り扱う。

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●現行法

第四条(義務教育)
 国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
2 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
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 自公案・教改委案は、以下の通り。

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●自公案(要旨)

【義務教育】
 国民は保護する子に、普通教育を受けさせる義務を負う

●教改委案

第九条(義務教育)
一 国は、義務教育に関する権限と責任を有する。
ニ 国民は、教育の目的を達成するため、その保護する子供に一定期間の普通教育を受けさせる義務を負う。
三 義務教育は、これを無償とする。
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 まず普通教育と義務教育という用語の規定を明確にしたほうがよいと思う。これは憲法の規定の不備から来ている。
 普通教育という用語は、初等・中等・高等のそれぞれに用いられており、概念規定が明確でない。普通は、特殊と対比して使われる言葉である。普通教育は、特殊教育にあたる専門教育や職業教育に対比し、国民が一般に受けるべき共通の基礎教育をいう。こうした一般共通の普通教育の上に、個別的部分的な専門教育・職業教育が行なわれる。
 私は、教育基本法においては、初等・中等教育のみを普通教育と呼び、高等学校以上の学校における教育は、専門教育または職業教育としたほうが、よいと思う。

 次に、上記の意味の普通教育は、親または保護者が国民の義務として子供に受けさせなければならないので、これを義務教育ともいう、としたほうが、わかりやすくなると思う。
 教改委案は、第一項で突然、義務教育という言葉を使う。義務教育とは何かは、第二項で述べられる。そうであれば、条項の順序を逆にした方が良い。普通教育について「一定期間」というのは、現行は九年であり、これは引き続き明記すべきだろう。また、第三項の「義務教育は、これを無償とする」という規定は、あらゆる費用を無償とするという拡大解釈を許すおそれがある。

 以下に私案を示す。

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◆ほそかわ案

(義務教育)
第七条 国民は、教育の目的を達成するため、国民一般に共通する基礎教育としての普通教育を、ひとしく受ける権利を有する。
2 国民は、その保護する子供に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
3 国は、前項に定める義務教育に関する権限と責任を有する。
4 国または地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
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自公の改正案に修正を求めよう

2006-04-25 20:41:23 | 教育
 本日の産経新聞朝刊(東京版は12面)に、自公の教育基本法案に修正を要求する全面広告が載った。意見広告主は、日本会議(三好達会長)、民間教育臨調(西澤潤一会長)である。

 表題は、
 「教育基本法改正案  なぜ国民の願いが反映されないのですか? 私たちは、与党(自民党・公明党)案の修正を求めています。」

 内容は、4項目。見出しだけ書くと、次の通り。
 「国民の8割が望んでいるのに、なぜ、『国を愛する心』が盛り込まれないのでしょうか?」
 「宗教界の圧倒的多数も望んでいるのに、なぜ、宗教的情操の涵養が盛り込まれないのでしょうか?」
 「もう不毛な対立はなくしたいのに、なぜ、『不当な支配』の条文が残るのでしょうか?」
 「国の将来を左右する重要法案なのに、なぜ、非公開協議で決められてしまうのでしょうか?」

 広告の中段には、「国民署名数 約362万名」「地方議会決議数 37都道県(都道府県議会は8割を超えました)」「愛国心教育は必要 80.8%(不必要10.4%、不明8.8%」というデータが並ぶ。
 下段には、賛同する各界有識者が100名以上、氏名を連ねている。

 次に、これに関連した動きとして、本日、東京・永田町で、「教育基本法の改正実現をめざす緊急集会」が行われた。私は所用で行かれなかったが、参加した友人から集会の様子を聴くことができ、配付資料の写しをもらった。

 この集会は、産経の広告主と同じ団体が主催したものである。
 今国会で与党の改正案がそのまま成立するおそれがあるなか、断固修正を要求する内容が、具体的な条文案として打ち出されている。それが以下である。

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●愛国心、宗教教育、教育行政の条項の与党案を次のように修正するよう求めます。

一、「愛国心」関連部分

[与党案(教育の目標)]
 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
[修正案]
 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国への理解を深め、国際社会の平和と発展に寄与する心を養うこと。

※修正点
 「他国を尊重し」⇒「他国への理解を深め」
 「態度を養う」⇒「心を養う」

二、「宗教教育」関連部分

[与党案(宗教教育)]
一、宗教に関する寛容の態度および宗教に関する一般的な教養並びに宗教の社会生活における地位は尊重されなければならないこと。
ニ、国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならないこと。
[修正案]
一、宗教に関する寛容の態度および宗教に関する一般的な教養並びに宗教の社会生活における地位は尊重されなければならないこと。
二、宗教的情操は、道徳の根底を支え人格形成の基盤となるものであることにかんがみ、その涵養は教育上特に重視するものとする。
三、国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならないこと。

※修正点
 第二項を追加する

三、「教育行政」関連部分

[与党案(教育行政)]
 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担および相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならないこと。
[修正案]
 教育行政は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、国と地方公共団体との適切な役割分担および相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならないこと。

※修正点
 「教育は、」⇒「教育行政は、」
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 私は、これらの修正案を妥当なものとして支持する。その理由は、22日の日記に書いたので、ご参照願いたい。

教育基本法の改正8~幼児教育

2006-04-24 09:53:46 | 教育
 自公・教改委とも、家庭教育とともに幼児教育の条項を新設することを提案している。重要な提案だと思う。

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●自公案

【幼児期の教育】
 国と地方公共団体は幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備、振興に努めなければならない。

●教改委案

第六条(幼児教育)
一 幼児教育が生涯にわたる人間形成の基礎となる重要性にかんがみ、国及び地方公共団体は、その振興に努めるものとする。
ニ 国は、幼児の心身ともに健やかな発育を期し、幼児教育の大綱的基準を定める。
三 幼児教育は、家庭との緊密な連携を図り、これを助け、かつ補完するものでなければならない。
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 自公案は要旨しかわからないが、これだけだと危険性があると思う。
 男女共同参画社会基本法のもと、急進的なフェミニストと多数の経済人は、乳幼児を持つ母親までも、子供を預けて家庭の外で労働するように仕向けている。そして、国及び地方公共団体に、子育ての社会化、集団化を推進させようとしている。制度的にも配偶者特別控除が廃止され、年金の個人化が勧められている。経済的に追い詰められた女性は、働きに出るしかない。
 自公案の要旨は、若い母親が出産後すぐにでも働きに出るよう、乳幼児の超長時間保育を奨励する解釈を許す余地がある。これは、幼児教育の重要性を考えると、極めて大きな問題である。下手をすると、あらゆる教育が根底から崩されるような破壊的な結果を招く。それゆえ、私は自公案は、これだけでは危険性があると思うのである。
 
 この点、教改委案は、「幼児教育が生涯にわたる人間形成の基礎となる」とし、かつ「家庭との緊密な連携を図り、これを助け、かつ補完する」と明記している。幼児教育の主体は、親または保護者であり、家庭における幼児教育あっての社会的な幼児教育であることが、打ち出されている。自公案より、はるかに優れていると思う。

 ただし、本案の第二項は、説明がないと主旨が分からない。幼児教育について「大綱的基準」を定める必要があるのであれば、生涯教育や家庭教育についても同様だろう。基準の策定は基本法に定めるのではなく、教育振興基本計画に、入れればよいと思う。むしろ、私が喫緊に振興を求めたいのは、「親学」である。この点は、家庭教育の項目に書いたので、ここでは省く。
 以上の考察に基づいて、私案を以下に示す。

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◆ほそかわ案

(幼児教育)
第六条 幼児教育が生涯にわたる人間形成の基礎となる重要性にかんがみ、国及び地方公共団体は、その振興に努めるものとする。
2 幼児教育は、幼児の心身ともに健やかな発育を期し、家庭との緊密な連携を図り、これを助け、かつ補完するものでなければならない。
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教育基本法の改正7~家庭教育

2006-04-23 10:48:18 | 教育
 現行法の構成は、第四条「義務教育」、第五条「男女共学」、第六条「学校教育」、第七条「社会教育」となっている。このあたりの条文は、現代の必要に応じて、大幅に修正・増補しなければならない。

 通信情報革命と高齢化の進展のなかで、生涯学習が促進されている。生涯学習は、教育の目的を国民の一生を通じて達成すべきものとして、基本法に明記したい。
 家庭教育は、現行法では、社会教育の条文にごく簡単にあるのみである。あまりに弱い。独立した条文にして、その重要性を明記しなければならない。幼児教育についても、重要性をうたう必要がある。
 学校教育については、現行法より、もっと具体的に定める必要がある。教育の目的を達成するためには、学校・家庭・地域の連携と協力も盛り込むべきである。
 ほかにもまだまだ基本法に定めておくべき事柄がある。

 このように考えると、現行の基本法は、制定後、数十年間、発展を続けてきた社会と文化の現状から、いかに乖離してしまっているかがわかる。もともと欠陥が多いうえに、旧態依然のまま放置されてきた現行法の内容に愕然とする人が多いのではないか。
 大幅な改正をしないと、日本の教育を改革することはできない。
 
 さて、社会教育の全般について、現行法は以下のように定めている。

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●現行法

第七条(社会教育)
 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。
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 これに対し、自公案・教改委案とも、まず生涯学習についての条文をおく。自公案は、「生涯学習の理念」と「社会教育」という二つの条文をたてているようだが、私はまだその内容を知りえていない。教改委案は、次のように提示している。

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●教改委案

第四条(生涯学習)
一 国及び地方公共団体は、国民が生涯にわたってあまねく学習の機会を得ることが出来るよう、教育機会の整備拡充に努めるものとする。
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 私は、この案に異論ない。同文なので、これを私案第四条として掲載は省略する。

 次に、家庭教育について、自公と教改委は、それぞれ以下のような提案をしている。

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●自公案(要旨)

【家庭教育】
 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する。生活のために必要な習慣を身に付けさせ、自立心を育成、心身の調和の取れた発達を図るよう努めるものとする。

●教改委案

第五条(家庭教育)
一 教育の原点は家庭にあり、親は人生最初の教師であることを自覚し、自らが保護する子供を教育する第一義的責任を有する。
ニ 国及び地方公共団体は、家族の絆を育成及び強化し、家庭教育の充実を図るため適切な支援を行う責務を有する。
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 ともに家庭教育の重要性をしっかり基本法に盛り込もうという意思が伝わってくる。自公案の第一文と、教改委案の第一項第一文は、ほぼ同じ主旨のことを述べている。自公案は、第二文に生活習慣等、家庭でなすべき教育の内容を入れている。教改委案は、第二項に、国及び地方公共団体の責務を定めている。
 私は、これらのすべてが素晴らしい内容だと思う。そのうえで、「しつけ」という言葉を用いて、さらに焦点を明瞭にしたいと思う。
 ここで私が喫緊に振興すべきだと考えるのは、「親学」である。つまり親となり、親として子育てをするための学問・教育である。子供の問題のほとんどは、親に問題がある。子育てに自信がなく、子育てがうまくできない。または子供をつくることに関心が無く、育てることにも関心のない若い人たちが増えている。
 学校教育・社会教育を挙げて、「親学」の振興を真剣に行なうことが、日本の教育の改革、そして日本国の再建に欠かせない。「親学」の振興を、教育基本法に盛り込むことを、私は提案する。

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◆ほそかわ案

(家庭教育)
第五条 教育の原点は家庭にあり、親は子の教育について第一義的責任を有する。父母その他の保護者は、人生最初の教師であることを自覚し、自らが保護する子供に、しつけを行い、生活のために必要な習慣を身に付けさせ、自立心を育成し、心身の調和の取れた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家族の絆を育成及び強化し、家庭教育の充実を図るため適切な支援を行う責務を有する。
3 国及び地方公共団体は、国民の家庭の形成と家庭教育を支援するため、親となり、子育てをするための学問及び教育を振興することに努めるものとする。
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教育基本法、与党に修正を要求

2006-04-22 10:38:39 | 教育
 教育基本法の改正をめぐって、自民党・公明党の与党案に対し、教育基本法改正促進委員会(超党派改正議連・亀井郁夫委員長)、「日本の教育改革」有識者懇談会(民間臨調・西沢潤一会長)、日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長)などが、修正要求を出す構えである。
 19日の産経Webは、以下のように報じている。

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産経Web

●教育基本法改正で修正要求 民間教育臨調など
 自民、民主両党国会議員などでつくる教育基本法改正促進委員会、民間教育臨調、日本会議国会議員懇談会などは19日、国会内で合同総会を開き、「愛国心」を「国を愛する態度を養う」と表現した与党案について「態度」を「心」に変えるなど3点の修正を政府・与党に求めていくことで一致した。
 修正要求はこのほか、与党案から外された「宗教的情操の涵養(かんよう)」の明記と、教科書検定訴訟や国旗国歌反対運動の根拠とされてきた現行法の「教育は、不当な支配に服することなく」について主語を「教育」から「教育行政」に改めることの2点。総会では「『国を愛する態度』では、子供たちに面従腹背を教えるようなもの」(自民党議員)、「『不当な支配』という文言で責め立てられ、自殺した校長がたくさんいる」(現役校長)などの指摘が相次いだ。 (04/19 17:23)
http://www.sankei.co.jp/news/060419/sei080.htm
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 教改委等は独自の改正案を作成しているわけだが、与党に対し、最も重要な点にしぼって修正を要求する方針のようである。
 産経本紙の記事は、「今後、与党国会議員に対する署名運動を行なうことなども検討する」とも伝えている。また、「宗教的情操の盛り込みに反対しているのは、宗教界では創価学会だけ」(日本宗教連盟関係者)という指摘も書かれている。
 また同紙の紙面には、自公の改正案を取りまとめた与党検討会座長・大島理森元文相の談話も掲載されている。上記の修正要求に関して、大島氏は、次のように述べている。

●<要求1:国を愛する「態度」を「心」に変える>に関して
 大島氏:「『国を愛する』の『国』に統治機構を含まないという合意があった」「伝統と文化を受け継ぎ現在われわれが生きている国、日本という意味で『わが』を入れた」

●<要求2:「宗教的情操の涵養」を明記する>に関して
 大島氏:「宗教教育は『宗教に関する一般的な教養』と今までよりも一歩、踏み込んだ書き方で、客観的に宗教の存在を教えることは採り入れられた」

●<要求3:「教育は、不当な支配に服することなく」の主語を「教育」から「教育行政」に改める>に関して
 大島氏:「『不当な支配』では教育の中立性が問題になるが、その根拠を明確に『この法律および他の法律の定めるところにより』と入れた。法律は国権の最高機関で議論して決めるので、個人や一部の労働組合が勝手に『おれたちがやるんだ』ということはできない」

 大島氏の説明は、与党案の妥協的・折衷的な性格をよく表している。私は、与党に上記三点の修正を最低限の要求として出すことを支持する。その理由は以下の通り。

 要求1について、「『国を愛する』の『国』に統治機構を含まない」というのは、政府と国民を切り離してとらえるもので、おかしな考え方である。
 国家には、領土、人民、統治機構の三要素がある。国民はそれらの総体を「国」として理解したうえで、積極的に政治に参加し、国家や社会の発展に努めるよう呼びかけるのが、まっとうな政府である。「『国』に統治機構を含まない」という考え方で作った法律なら、そんな法律を国民が守り従う義務などないというのが道理だろう。大島氏の言葉は、国民の信託を受けて国政を担う政治家の言うことではない。

 要求2について、自公案は現行法第九条に「宗教に関する一般的な教養」という文言を挿入するだけのようである。この文言に続くのは、「尊重されなければならない」である。
 同じく教育上尊重されねばならないとされるのは、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位」である。これらと同格で、「宗教に関する一般的な教養・・・は尊重されなければならない」と表現したのでは、この一文はほとんど意味をなさない。「踏み込んだ書き方」どころではなく、主旨不鮮明な加筆である。たとえば、「教育上、宗教の社会生活における地位が尊重され、宗教に関する寛容の態度及び宗教に関する一般的な教養が培われなければならない」とでも直さないと、ただの言葉の羅列に終わる。
 しかし、「宗教に関する一般的な教養」は教育の場で「宗教的情操の涵養」がなされることによって培われるものであって、「一般的な教養」を言う前に、「宗教的情操の涵養」を条文に盛り込む必要がある。

 要求3について、自公案は「教育は、不当な支配に服することなく」という文言を残すという。その場合、後ろに「この法律および他の法律の定めるところにより」という言葉を続けるから問題がないとはいえない。
 この文言が残る限り、日教組の専横を許してきた現状は、改善されない。日教組は、教育現場への「政府の不当な支配」を排除すると言って、他の法律のいろいろな解釈をひねり出して、従来のように政治闘争を続けるだろう。それでは、我が国の教育は正常化されない。

 私は以上のように考える。それゆえ、与党の教育基本法改正案への上記三点の修正要求は、最低限の要求として、強く求めたい。ただし、これはあくまで最低限の要求である。さらにめざすべきは、現在連載で述べているような方向に改正を進めるべきだと思う。

教育基本法の改正6~機会均等

2006-04-21 10:13:27 | 教育
 現行の教育基本法は、第三条に「教育の機会均等」を定めている。これと教改委案の改正案を以下に記載する。

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●現行法

第三条(教育の機会均等)
 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。

●教改委案

第三条(教育の機会均等)
一 すべて国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける機会が与えられ、人種、信条、性別、身体上若しくは精神上の障害又は社会的身分によって、教育上差別されない。
ニ 国及び地方公共団体は、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて就学困難な者への奨学の方法を講じなければならない。
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 現行法の第一項の前半は、文章が練れていない。その点、教改委案は、こなれていると思う。差別に関する事柄の列記も、これで十分だと思う。
 「性別」に関しては、「男女の区別は、差別である」と言うフェミニストがいる。しかし、「区別は、差別である」と言って区別を否定すると、人種・信条・障害・身分などは、概念自体が意味をなさない。社会的弱者や少数者は、区別をされないと、配慮や保護を受けられなくなる。だから、男女にだけ「区別は差別」というのは、理が通らない。この点、区別を排除するものではないということを、条文に補いたいと思う。

 第二項に関し、教改委案は、「意欲と能力」として「意欲」を補っている。これは妥当だと思う。「就学」は普通、学校に入って学童生徒となることをいう。義務教育は無償とするのだから、対象となるのは高等学校と大学だろう。そうであれば、現行法の「修学」のままでよいと思う。

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◆ほそかわ案

(教育の機会均等)
第三条 すべて国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける機会が与えられ、人種、信条、性別、身体上若しくは精神上の障害または社会的身分によって、教育上差別されない。ただし、これは必要な区別を排除するものではない。
2 国及び地方公共団体は、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者への奨学の方法を講じなければならない。
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 この「教育の機会均等」は、日本国民について国民の権利として保障するものである。国民とは、日本国籍を有する者である。在日外国人は、この条文の対象に含まない。