ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユーロの危機3~ドイツ次第の状況

2012-01-31 08:50:06 | 経済(ユーロ)
 ユーロ圏の諸国は欧州債務危機を解決しようと、協議を重ねている。参加国に財政均衡を義務付ける財政協定、重債務国を支援する欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充、創設が予定されている欧州安定メカニズム(ESM)の支援能力拡大といった安全網拡充、ユーロ圏全体で共同債を発行して資金を調達し、財政健全国が財政悪化国を支える「ユーロ債」構想等が方策として議論されている。
 これらのうち、財政協定は3月のEU首脳会議で署名し、平成25年(2013)の発効を目指している。内容は、協定違反国に対して最大でGDPの0.1%の制裁金を科す、毎年度の構造的財政赤字をGDP比0.5%未満に抑えることを憲法などに明記する、法整備を怠るとEU司法裁判所の判断に基づき制裁金を科すなどの案が伝えられる。
 協定案は英国を除くEU加盟26か国が概ね合意しており、実現するだろう。だが、資金の提供や共同債の発行のように、自国が他国を助けるために負担を増やすことは、簡単に引き受けられる話ではない。助けると言っても、フランスは国債を格下げされ、イタリアはIMF監視下、スペインは失業率20%、特に若者は40%とEUで最悪。多少優良な国は経済規模が小さく、大きな手助けにはならない。危機対応を支えられる唯一の国は、事実上ドイツだけである。
 そのドイツは、メルケル首相が財政規律の強化と金融取引課税の導入を主張し、自らの負担が増す安全網拡充や共同債の導入は拒み続けている。ドイツの世論も首相を支持している。ドイツの国民は、ギリシャなど放漫財政の国をなぜ自分たちが助けねばならないのか、と否定的な意見が多い。メルケル首相に、ドイツ国民を他国の債務危機を救うために自己犠牲的な献身を訴え、説得できるだけの主張があるようには見えない。またもしメルケル首相が積極支援を打ち出したら、支持率は低下し、政権は不安定になるだろう。
 EU諸国は、統一ヨーロッパという理想にとらわれ、また市場の機能への期待を膨らませすぎて、資本の論理と国家の論理の違い、市場経済と国民経済の違いを軽く考えてしまったのだろう。私は、統一ヨーロッパの実現には懐疑的で拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」にそのことを書いたが、ヨーロッパ人が統合を試みるなら、範囲をヨーロッパ先進国クラブに止めて時間をかけて統一機構を確立し、その後に参加国を厳選して増やした方が、よかっただろう。また経済については、統一通貨の創設を急がず、各国経済の統合を深く進めてから、通貨統合を進めた方がよかっただろう。ドイツ・フランスとギリシャ・ポルトガルでは、経済格差が大きく、一つの通貨で結びつけるのは、土台無理がある。ロスチャイルド家やビルダーバーグ・クラブに参加する欧州の所有者集団・経営者集団に方針があるか分からないが、国家間の位相で見る限り、欧州債務危機が多国的に進行するなか、ドイツがどこまで耐え堪え得るか、ドイツ次第の状況と思われる。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成24年1月24日

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120124-00000097-san-bus_all
財政協定厳格化を協議 欧州財務相会合 ギリシャ問題も議論
産経新聞 1月24日(火)7時55分配信

 【ベルリン=宮下日出男】ユーロ圏17カ国の財務相は23日、ブリュッセルで会合を開き、参加国に財政均衡を義務付ける財政協定をめぐり協議した。最終草案には協定違反国に対し最大で国内総生産(GDP)の0・1%の制裁金を科すことを盛り込み協定の厳格化を図る。会合では、重債務国への支援網の拡充やギリシャの債務削減も議論。ただ、小出しの対策を示すにとどまれば、市場の不信感が高まるのは避けられない。
 財政協定は、30日の欧州連合(EU)首脳会議での合意をへて、3月の署名を目指す。最低12カ国が批准すれば、2013年から発効する見通しだ。
 草案では、毎年度の構造的財政赤字をGDP比0・5%未満に抑えることを憲法などに明記するよう参加国に義務づける。
 また、法整備を怠ると、EU司法裁判所の判断に基づき制裁金を科し、制裁金は、今年7月に創設される恒久的な安全網、欧州安定メカニズム(ESM)に払い込まれるようにする。ESMの支援を受けられるのは、財政協定参加国に限定する方向だ。
 会合ではこのほか、重債務国を支援する欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充についても話し合う。EUは昨年10月、支援能力を4400億ユーロ(約44兆円)から増やすことで合意。ただ、負担増を嫌うドイツの反対が強く、「大きな進展はないだろう」(金融筋)とみられている。
 ギリシャの債務削減をめぐる民間投資家との交渉についても協議。ギリシャ政府はそれをふまえ、再度、民間側と交渉する。
 ただ、この交渉も難航する可能性がある。EUなどによる追加支援は、ギリシャ政府と債権者の合意が前提。一方、ギリシャは3月20日に約145億ユーロの国債償還を控える。
 合意できず追加支援が得られなければ、債務不履行(デフォルト)懸念が強まる。
 EUは各国の世論に配慮して危機対応を“漸進主義”で進めてきた。これに対し危機収束への市場の落胆や不安が募れば、ユーロの売り圧力が再び高まり「対円で年内に1ユーロ=80円台までユーロ安が進む恐れがある」(エコノミスト)との声があがる。

●産経新聞 平成24年1月27日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120127/erp12012720590005-n1.htm
【欧州債務危機】
安全網拡充、動かぬドイツ 財政規律強化を優先 
2012.1.27 20:58

 【ベルリン=宮下日出男】欧州債務危機の打開に向け、ドイツに一層の貢献を求める圧力が強まる中、財政規律強化を優先させるメルケル首相はユーロ圏諸国に対する財政支援に消極姿勢を崩さない。頑固な首相をドイツの世論も後押ししている。30日の欧州連合(EU)首脳会議を目前に世界がしびれを切らす中、欧州一の経済大国が動く気配はまだみられない。
 「経常赤字国が緊縮策をとるなら、経常黒字国がユーロを支えなければならない」。キャメロン英首相は26日、スイスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で強調した。欧州諸国への輸出で稼ぐドイツへの当てつけであるのは明らかだった。
 フランスが国債の最上級格付けを失って以降、危機対応を支えられる唯一の国は事実上ドイツだけになった。7月に創設予定の欧州安定メカニズム(ESM)の支援能力拡大といった安全網拡充にドイツの支援は欠かせない。
 しかし、ドイツは財政規律の強化と金融取引課税の導入という“引き締め策”を主張する一方、自国の負担が増す安全網拡充やユーロ共同債の導入は拒み続けている。メルケル首相と二人三脚で歩んできたサルコジ仏大統領は、4月の大統領選を控え国内の支持率が低迷し、欧州危機対応への指導力にも陰りがみえる。
そうした中、ドイツへの圧力強化の流れを決定的にしたのは国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事だ。メルケル氏と22日に今年2度目の会談を行い、翌23日のベルリンでの講演では、欧州危機が第二次世界大戦前のような世界的不況を招く恐れを指摘し、「財政的ゆとりのある国が支援すべきだ」と主張した。
 著名投資家ジョージ・ソロス氏もダボス会議での講演で、ドイツの政策は「(デフレが債務膨張に連鎖する)『債務スパイラル』を招く」と警告した。
 しかし、メルケル氏は25日のダボスでの演説で、安全網拡充に「信頼性はいつまで続くのか」「守れない約束はしてはならない」と改めて否定的な見解を表明。26日には、30日のEU首脳会議の中心テーマは財政規律強化の財政協定と成長・雇用対策になるとの見通しを語り、安全網拡充策が示される見込みは薄い。
 ドイツ国民には、自国の堅調な経済は過去の低迷時に改革を断行した結果との認識から「放漫財政の国をなぜ助けるのか」との疑問が根強い。最近の世論調査では、メルケル氏の仕事ぶりを評価する意見が過去約2年間で最高の73%に上った。独メディアは、ドイツへの圧力に対し「首相一人が全員を助けられるとの幻想を抱かせるだけだ」(ミュンヘナー・メルクア紙)とも伝えている。
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ユーロの危機2~サルコジの再選危し

2012-01-30 09:40:42 | 経済(ユーロ)
 4月22日にフランスの大統領選挙がある。フランスはドイツと並ぶEUの中核国家であり、ヨーロッパの経済危機の中で積極的にリーダーシップを発揮している。その大統領が、ニコラ・サルコジである。ユーロの信用不安が深刻化するなか、大統領選でサルコジは苦戦の模様であり、再選がなるかどうか注目される。
 サルコジはユダヤ人を母に持つハンガリー移民2世である。2007年にフランス大統領になった。移民の子でユダヤ系の大統領の誕生は、多民族化するヨーロッパを象徴する出来事だった。
 サルコジは新保守主義者、新自由主義者で、自由競争を重視する。伝統的な保守のド・ゴール主義と違い、親米的でブッシュ子政権の政策とは親和性が高かった。その一方、移民政策では自身が移民2世でありながら、フランスのナショナリズムを堅持している。
 もともと統一通貨ユーロは、各国が通貨発行権を放棄し、独自の金融政策をできなくなるところに無理がある。ここまでユーロを維持してきたのは、フランスとドイツの協調による。また、サルコジの手腕によるところが少なくないだろう。
 「ニューズウイーク」日本語版2010年5月14日号によると、スペインの全国紙パイスが、サルコジの発言を聞いたというスペインのホセ・ルイス・サパテロ首相の話を匿名の情報源から聞いたとして引用し、それをさらに英ガーディアン紙が引用したという。
 スペインのパイス紙は、ギリシャに対する1100億ユーロの支援を決定した昨年5月7日のEU首脳会議で、フランスのサルコジ大統領が驚くべき脅しに訴えたと伝えた。同月12日にサパテロが、自ら率いる社会労働党幹部の集まりで脅しの詳細を明かしたという。
 パイスの情報源によれば、サルコジは「すべての国がギリシャ支援のために譲歩」することを要求。協力が得られなければ「ユーロ圏の一員であることを考え直す」と言ったという。「サルコジは拳でテーブルを叩き、ユーロを離脱すると脅した」と、サパテロとの会合に出席したある社会労働党幹部は言う。「ドイツのアンゲラ・メルケル首相はそれで折れざるを得なくなり、ギリシャ支援の合意ができた」と
 サパテロとの会合に出席した別の情報源はパイス紙に、「フランスとイタリアとスペインはドイツに対して共同戦線を張った。そしてサルコジは、(欧州統合に力を合わせてきた)仏独枢軸の解消も辞さないと迫った」と言う。さらに別の会合出席者は、サルコジはこうも言ったという。「この大事なときに連帯責任を負えない欧州なら、ユーロを維持する意味はない」と。
 CNNによると、サルコジは昨年5月27日、地元テレビのインタビューで、2001年にギリシャのユーロ圏加入を認めたのは「過ち」だったと発言。当時、ギリシャが示したのは実態にそぐわない数字であり、同国経済はユーロ圏加入の準備が整っていなかったというのがその理由だ。「われわれは今、そのつけを払わされている」とサルコジ大統領は述べた。またブルームバーグによると、昨年12月31日サルコジは、ラジオ・テレビ演説で、「欧州共通通貨ユーロが終われば、欧州の終わりを示唆する」と述べたという。
 サルコジは、大きな葛藤を抱えながら、ユーロを守ろうとしている。だが、ギリシャの財政危機に続くイタリア、スペイン等の財政危機は、ユーロの信用不安を増大している。ユーロの下落は、サルコジの支持率の低下を招いている。本年に入って、格付け会社S&Pがフランス国債の格付けを最上級のトリプルAから下げた。それによって、サルコジの再選は一層厳しいものとなりつつある。
 大統領選挙の世論調査では、サルコジは、社会党のフランソワ・オランドにリードを許している。オランドは昨年逮捕された社会党の有力候補ストロスカーンに代わっての出馬だが、支持率を伸ばしている。最近の仏調査機関の調査結果では、オランド30%、サルコジは前回から2.5ポイント減の23.5%と、差が拡大した。一方、ユーロ離脱、フラン復活、保護主義政策、移民制限等を唱える国民戦線の女性党首娘のマリーヌ・ル・ペンが、17%の支持を集めたという。
 仮にオランドが勝った場合、社会党はEU創設の礎を築き「欧州統合の父」と呼ばれるミッテラン元大統領以来、欧州統合を進めてきた政党だから、統合方針に変わりはない。だが、サルコジの新自由主義的な政策を否定して社会民主主義的な政策を推進するから、ヨーロッパにおけるフランスの外交は変するだろう。それがドイツとの関係や各国の財務危機への対応、ユーロの信用維持、さらにはEUの結束にどのように波及するか。フランス大統領選の行方は、ヨーロッパはもちろん、日本・世界に影響を与えるものとなるだろう。
 以下は関連する報道記事。

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●ニューズウイーク・ジャパン 平成22年5月17日

http://www.newsweekjapan.jp/foreignpolicy/2010/05/post-124.php
サルコジ「ユーロ離脱」の脅しは本物か
2010年05月17日(月)15時53分
 
 確かにそれは、ニコラ・サルコジ仏大統領の発言を聞いたというスペインのホセ・ルイス・サパテロ首相の話を、スペインの全国紙パイスが匿名の情報源から聞いたとして引用し、それをさらに英ガーディアン紙が引用したという信憑性に欠ける話だ。それでも、欧州中央銀行(ECB)を驚かせるには十分過ぎた。
 スペインのパイス紙は、ギリシャに対する1100億ユーロの支援を決定した5月7日のEU首脳会議で、フランスのサルコジ大統領が驚くべき脅しに訴えたと伝えた。5月12日にサパテロが、自ら率いる社会労働党幹部の集まりで脅しの詳細を明かしたという。
 パイスが引用したある情報源によれば、サルコジは「すべての国がギリシャ支援のために譲歩」することを要求。協力が得られなければ「ユーロ圏の一員であることを考え直す」と言ったという。「サルコジは拳でテーブルを叩き、ユーロを離脱すると脅した」と、サパテロとの会合に出席したある社会労働党幹部は言う。「ドイツのアンゲラ・メルケル首相はそれで折れざるを得なくなり、ギリシャ支援の合意ができた」
 サパテロとの会合に出席した別の情報源はパイス紙に、「フランスとイタリアとスペインはドイツに対して共同戦線を張った。そしてサルコジは、(欧州統合に力を合わせてきた)仏独枢軸の解消も辞さないと迫った」
 さらに別の会合出席者によれば、サルコジはこうも言ったという。「この大事なときに連帯責任を負えない欧州なら、ユーロを維持する意味はない」
 ユーロは5月14日、ドルに対して18カ月ぶりの安値をつけた。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年05月14日(金)11時19分更新]

●産経新聞 平成24年1月3日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120103/erp12010307010002-n1.htm
【2012選挙イヤー(2)】
仏 債務危機で問われる舵取り 社会党勝利なら「脱原発依存」
2012.1.3 07:00

 4月のフランス大統領選は再選を目指すニコラ・サルコジ大統領(56)と、ミッテラン元大統領以来17年ぶりの政権奪回を狙う最大野党、社会党の候補、フランソワ・オランド前第1書記(57)の2人を軸にした戦いとなる見通しだ。ドイツのメルケル首相と並ぶ欧州のリーダーとして、深刻な債務危機に対処する指導力が問われる。「脱原発依存」を掲げるオランド氏が勝てば、原発大国のあり方に影響も出そうだ。
 極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(43)らもすでに出馬表明し、サルコジ氏も近く正式表明するとみられる。
 サルコジ氏は昨年、カダフィ政権崩壊に導いたリビアの軍事介入を主導した。債務危機対応では、しばしばメルケル首相に譲歩しながら「メルコジ」と呼ばれる結束を重視し、昨年末には英国を除く欧州連合(EU)加盟国との間で財政規律強化を求める協定合意をとりまとめた。
 ただ、欧州では抜本対策を迫る市場と過度の負担に反発する国民とのはざまに指導者らが陥り、政権交代や政権崩壊が相次ぐ。現職に厳しい情勢はフランスも同様で、長期国債が最上級の格付けを失いかねないなど危機が迫る中、世論調査ではサルコジ氏がオランド氏の後(こう)塵(じん)を拝している。
 一方のオランド氏は、2017年までの財政均衡を公約に掲げるなど財政再建を目指す姿勢はサルコジ氏と同じだが、財政協定を見直す考えを示し、ドイツが反対する「ユーロ共同債」導入などを主張。政権交代で仏独協調に乱れが生じれば、欧州全体の危機対応に影響する恐れもある。
ただし、国内には、「欧州のドイツ化」に対する危機感もある。オランド氏は「調整型」と評される一方、指導力には疑問の声もあり、欧州外交を主導する交渉能力も問われる。
 一方、社会党は環境保護政党「ヨーロッパエコロジー・緑の党」と、電力の原発依存度を現在の75%から50%に下げ、58基の原子炉のうち24基を25年までに閉鎖することで合意した。政権交代は他国の原発政策にも影響を及ぼしかねない。
(ベルリン 宮下日出男)

●朝日新聞 平成24年1月20日

http://www.asahi.com/international/update/0115/TKY201201150299.html
仏大統領選、右翼政党に勢い 国債格下げで脱ユーロ主張

 13日に発表された米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によるフランス国債の格下げが、2大政党が政権を争う4月の仏大統領選を揺さぶり、対立を先鋭化させている。ただし両党ともユーロ圏の再建を目指す立場は同じ。勢いづくのは「脱ユーロ」を主張する右翼政党だ。
 「(最高位の格付けの)『AAA』を守るというサルコジ氏の闘いは敗北に終わった。(負けたのは)フランスそのものではない」。政権交代をめざす最大野党・社会党のオランド候補は14日、パリの選挙事務所でこう語った。
 これにサルコジ氏再選を後押しするフィヨン首相がかみついた。15日付の仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュのインタビューで「歳出増と増税しかない(社会党の)選挙公約を格付け会社がどう評価するか見ものだ」と皮肉った。サルコジ政権が近く、労働時間の短縮の見直しなど、ドイツ並みの競争力を取り戻す施策を矢継ぎ早に打ち出すことを示唆した。
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ユーロの危機1~エモットの予測

2012-01-29 08:44:24 | 経済(ユーロ)
 ヨーロッパでは、ギリシャの財政危機に始まり、アイルランドやポルトガル、スペインなど財政難に苦しむユーロ導入国の国債価格が下落している。EU第3の経済規模を持つイタリアが財政危機に陥り、昨年11月IMFの監視下に入った。今年1月13日米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、ドイツとともにEUの二本柱をなすフランスの国債の格下げを発表した。一方のドイツは、自国の負担が増す安全網拡充やユーロ共同債の導入を拒み続けている。欧州債務危機が深刻化し、出口の見えないなか、ユーロの信用不安が世界的に強まっている。
 ユーロが作られる前、ヨーロッパの各国は通貨の発行権を持ち、各国の中央銀行が自国の通貨の発行量や金利の調整を行っていた。ところが、ユーロを採用した国では、実質的に、自国の意思だけでは通貨政策・金利政策を決定できなくなった。
 ユーロ採用国は、財政政策を自国の判断で行う権限は持っている。国債発行、政府支出拡大等を行うことができる。ただし、毎年の財政赤字をGDPの3%以下に抑え、公的財務残高をGDPの60%以下に抑えなければならない。その枠内で財政政策を行うとしても、財政政策は本来、金融政策と連動しなければならない。ところが、各国は金融政策については権限を持たない。ECB(欧州中央銀行)に委ねている。
 こうした構造的な問題を抱えているため、EUでは加盟国の中に財政危機に陥った国が出た場合、多くの国に影響が広がる。2008年(平成20年)のリーマン・ショックは、発信源のアメリカ以上にヨーロッパ諸国に大きな打撃を与えた。アメリカのサブプライムローンやCDS等を多量に買って保有する銀行・金融機関が多かったからである。ユーロ採用国は世界経済危機による深刻な状態から抜け出ようとしているが、自国の判断で金融政策を行えないため、有効な景気対策を打てない。 なによりEU最大の工業力と経済力を持つドイツが、このジレンマに陥っている。今日のドイツ経済は、中国に似た典型的な外需依存型経済である。そのため、経済危機による世界的な不況、需要の収縮によって、ドイツは深刻な打撃を受けた。だが、ドイツは自国の通貨政策・金利政策で対処することができない。EU・ユーロ圏の国々と運命をともにするしかない。これは独自の通貨をやめたことによる大きな弊害である。そしてドイツの工業力・経済力が低下するならば、EUも全体として失速することを免れない
 これから2月にはイタリア、3月にはギリシャ、4月にはスペインで国債の大量償還があり、欧州債務問題は一つのヤマ場を迎える。ユーロの信用不安が深刻化しているヨーロッパが、これを乗り切れるかどうか。リーマン・ショック以上の世界的な経済危機が発生した場合、わが国にもその影響は必至である。
 EUとユーロについてさまざまな専門家が予測を述べているが、わが国でも著名なイギリスのエコノミスト、ビル・エモット氏は、「ギリシャは今後6カ月以内にデフォルト(債務不履行)に追い込まれ、ユーロ圏を離脱しなければならなくなる。他の重債務国に危機が広がるのを防ぐため、同時にドイツがユーロ共同債導入に応じるだろう」と予測する。フランスの大統領選挙に言及し、「問題は4~5月の仏大統領選で再選を目指すサルコジ大統領への影響だ。危機を抱えたまま選挙を迎えるのか、その前に抜本的な対策をとるのか。大統領の思惑を考えると3月に起きてもおかしくない」と語っていることが注目される。
 以下は、エモット氏へのインタビュー記事。

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●産経新聞 平成24年1月21日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120121/erp12012119460004-n1.htm
ビル・エモット氏が大胆予測「3月にもギリシャはデフォルト、ユーロ共同債導入」
2012.1.21 19:44

 【ロンドン=木村正人】日本のバブル崩壊を予測、その後も日本をウオッチする英誌エコノミスト前編集長、ビル・エモット氏が日本と似た問題を抱えるイタリアのドキュメンタリー映画制作にかかわっている。同国の財政破綻が懸念される中、本紙とのインタビューで「今年3月にもギリシャは欧州単一通貨ユーロ圏離脱に追い込まれる」と大胆に予測した。一問一答は次の通り。

--今年中にギリシャがデフォルトする可能性は
 「ギリシャは今後6カ月以内にデフォルト(債務不履行)に追い込まれ、ユーロ圏を離脱しなければならなくなる。他の重債務国に危機が広がるのを防ぐため、同時にドイツがユーロ共同債導入に応じるだろう」

--いつ起きるのか
 「問題は4~5月の仏大統領選で再選を目指すサルコジ大統領への影響だ。危機を抱えたまま選挙を迎えるのか、その前に抜本的な対策をとるのか。大統領の思惑を考えると3月に起きてもおかしくない」

--新著『フォルツァ(頑張れ)、イタリア』を出版するなど同国に強い関心を持っているのは
 「日本に似ていることに加え、メディアを支配する億万長者のベルルスコーニ前首相に興味があった。イタリアは1960~70年代に日本に次ぐ経済成長を遂げたが、90年以降、経済は停滞し、“失われた20年”を経験した。イタリアを代表する資本家が政治を担う問題点を探りたかった」

--イタリアも日本も政府債務が膨らんでいる
 「イタリアでは戦後、キリスト教民主党による事実上の一党支配、日本でも自民党支配が続き、有権者は政権を選択できなかった。有権者は票の見返りとして政治家に橋や道路、鉄道、空港の建設を求めた」

--経済学者のモンティ首相にイタリアの未来がかかっている
 「英国のサッチャー元首相は改革に5~6年を要した。モンティ氏には1年しか与えられていない。自由化を進め、政府債務を減らせれば経済が復活する可能性はあるが、非常に難しい。ギリシャ問題が資金調達費用を押し上げている」

--日本の野田政権も消費税増税を掲げて財政再建に取り組んでいるが
 「モンティ首相のように消費税増税とともに経済成長を実現させる経済自由化の両面作戦が必要だ。成長戦略を欠いたままでは収支黒字化に失敗するだろう」
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ホルムズ海峡封鎖を抑止せよ

2012-01-28 09:28:32 | 国際関係
 昨年11月、国際原子力機関(IAEA)事務局長はイランの核開発に関する最新報告を発表した。イランの核物質が平和利用のためとは言い切れないと語り、核起爆装置を開発していた事実も明言している。
 イランは度重なる国連安全保障理事会の制裁決議を無視し、ウラン濃縮活動をやめない。欧米諸国が制裁の動きを強めると、イランはホルムズ海峡の封鎖を辞さないと再三公言している。ホルムズ海峡は、世界の原油の4割がそこを通る原油輸送の大動脈である。イラン、イラク、クエート、サウジアラビア、カタール、オマーン、バーレーン、アラブ首長国連邦の原油の多くが、ホルムズ海峡を通って世界に輸出されている。ここが封鎖されたら、原油の供給に重大な影響が出る。イランは米空母が湾岸に回航したら軍事行動を取るとも述べ、実際、海峡で軍事演習も行っている。イランが海峡封鎖を行った場合、アメリカの国防長官パネッタとデンプシー統合参謀本部議長は、実力で封鎖を解除すると発表している。
 米欧はイランを核開発断念に追い込もうとしている。EUはイランに対して、厳しい姿勢を崩さず、イランからの原油の輸入を全面的に停止した。わが国は米欧から協力を求められ、歩調を合わせているが、原油の全輸入量の約1割をイランに依存しているので、サウジアラビアなど湾岸産油国等、代替供給先を確保しなければならない。
 イランが制裁に対して譲歩せず、ホルムズ海峡を封鎖した場合、アメリカとイランの戦争となる。軍事的には、アメリカが海軍力で優勢ゆえ、比較的短期間で鎮圧される可能性が高い。だが、イランが米軍基地への報復、イスラエル本土へのミサイル攻撃、湾岸諸国の油田や製油所の爆撃・爆破等へとエスカレートすると、新たな中東戦争に発展する恐れがある。
 また、イスラエルがイランに攻撃を仕掛ける可能性もある。イランの核開発に最も脅威を感じているのはイスラエルだからである。イランが聖都コム近郊の地下格納庫に「核開発事業の製造物」を移動してしまうと、核開発の進捗状況を追跡できなくなる。その前に叩こうとイスラエルが動くかもしれない。
 イラン原油の最大の輸入国は、中国である。中国はイランの原油輸出量の22%を占める。米欧日がイランに対して厳しい姿勢を取っても、中国は米国の要請に協力せず、イランからの原油輸入量を変えなければ、制裁の効果は減少する。それどころか中国はイランから原油代金の値引き交渉を行っている。最大40%の値引きを引き出すのではないかという見方もある。したたかなこと、このうえない。
 ホルムズ海峡封鎖の実施ないし中東戦争の勃発となれば、わが国への影響は甚大である。わが国が輸入している原油の約8割は、ホルムズ海峡を通っている。また世界的に石油価格が高騰する。また、財政危機の国々は深刻な影響を受け、さらなる財政悪化、その世界経済への波及ということも考えられる。東日本大震災・タイ大洪水等で深い打撃を受けているわが国にとって、新たなオイル・ショックはかつてなく手痛いものとなる。国際社会の一員として協力し、ホルムズ海峡封鎖を抑止なければならない。
 以下は報道記事のクリップ。

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●産経新聞 平成24年1月8日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120108/mds12010823280004-n1.htm
原油禁輸ならホルムズ海峡封鎖 イラン指導部 地下ウラン濃縮施設も近く本格稼働
2012.1.8 23:24

 【カイロ=大内清】AP通信によると、イランの有力紙ホラサンは8日、同国指導部の親衛隊的性格を持つ革命防衛隊幹部の話として、イラン産原油の輸出に制裁が科された場合、中東の主要な原油輸送ルートであるホルムズ海峡の封鎖を命じることを指導部が決めた、と伝えた。実際に同海峡が封鎖されれば世界の原油供給にとり大きな打撃となるだけに、イランと米欧との緊張が高まるのは必至だ。
 イラン産原油をめぐっては、欧州連合(EU)が今月、禁輸措置に踏み切ることで原則合意し、イラン側が反発を強めていた。
 一方、同国のアバシ原子力庁長官は同日までに、首都テヘラン南方のコム郊外フォルドウの地下に建設中のウラン濃縮施設が近く本格稼働すると述べた。すでに濃縮活動が始まったとの報道もあるが真偽は不明。
 同施設は、イスラエルなどからの攻撃に備え、中部ナタンツの濃縮ウラン製造機能の一部を移転して地下深くに建設されているもので、イランの核兵器開発を疑う米欧などが建設中止を求めている。イランとしては一連の報道を通じて強硬姿勢を示し、米欧に揺さぶりをかける狙いがあるとみられる。

●産経新聞 平成24年1月16日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120116/mds12011608210003-n1.htm
【環球異見】
ホルムズ海峡封鎖問題
2012.1.16 08:19

 イランの核問題をめぐって欧米諸国が制裁の動きを強める中、イランが原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡封鎖の可能性に言及した。イランの核科学者が何者かに爆殺される事件も起き、緊張が高まっているが、世界の原油供給を混乱させることは過去のイラクの例からも「致命的なミス」(汎アラブ紙)であり、海峡封鎖に踏み切ればイランは手痛い報復を受けるとの見方が支配的だ。

▼ウォールストリート・ジャーナル(米国)

■海軍力から封鎖は困難
 4日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、現役の米海軍大佐と安全保障の専門家が共同で寄せた記事を掲載し、イランの海軍力を考慮すれば、ホルムズ海峡の封鎖は困難と指摘した。海峡封鎖は「水を飲むくらいに簡単」と豪語したイラン海軍高官の言葉を引き合いに「実際にはバケツの水の一気飲み」に等しいと切り捨てている。
 記事の執筆者はブラドリー・ラッセル大佐と米シンクタンク、外交問題評議会のマックス・ブート上級研究員。
 2人はイランが過去にもホルムズ海峡の封鎖を策謀しながら「惨めな失敗」に終わってきたと指摘。
イラン・イラク戦争中の1988年4月には、米ミサイルフリゲート艦が、イラン側が仕掛けた機雷に接触して損傷。米軍は報復として6隻の艦船を投入し、2カ所の原油採掘施設を攻撃、イランの高速艇少なくとも3隻を撃沈している。
 記事は、その後にイランが新型対艦巡航ミサイルを導入するなど、戦力を増強しているとはいえ、とても「米国や域内の同盟国にはかなわない」と分析する。
 米海軍は空母2隻をアラビア海周辺に展開済みで、攻撃ヘリなどを艦載した強襲揚陸艦も派遣可能。バーレーンなどに航空基地があり、米国や同盟国はイラン海軍を「圧倒的な兵力で破壊できる」と指摘した。
 戦力的に劣勢のイランは機雷や小型高速艇、小型潜水艦、対艦巡航ミサイルを使った非対称戦を挑んでくる可能性が高いが、「比較的短期」での鎮圧が可能との見方を崩さない。
 何より、海峡封鎖に乗り出せば「核兵器計画という最も価値ある財産が米国の報復対象になるリスクを負う」と、核施設攻撃の可能性が高まれば、イランは威嚇行動を慎むだろうと予測している。(ワシントン 犬塚陽介)

▼アルハヤート(汎アラブ紙)

■イラクと同じ失敗の道?
 汎アラブ紙アルハヤートは12日付の解説記事で、ホルムズ海峡封鎖をちらつかせるイランのアフマディネジャド政権は、1991年の湾岸戦争で多国籍軍に敗れたイラクと同じ失敗をしようとしている、と論じた。
 同記事は、90年にクウェートに侵攻したイラクのフセイン政権(当時)には、崩壊に向かっていたソ連の影響力低下に伴い、中東での勢力を伸ばしたいとの意図があった、と分析する。
 その上で、現在ではイランが、「イラクやアフガニスタンからの米軍撤退で生じる湾岸地域での『(力の)空白』を埋められると信じている」と指摘、ホルムズ海峡を封鎖するなどとしているのは、「域内で超大国として振る舞おう」との野心の表れだと断じる。
 また記事は、当時のフセイン政権は、クウェートの主権を侵害しただけでなく、原油供給を混乱させて世界の経済・安全保障を脅かすという「致命的なミス」を犯し、アラブ諸国を含む国際社会からの強力な反撃を受けた-と強調。
 イランが、世界で最も重要な原油供給ルートであるホルムズ海峡を封鎖すれば、国際社会から同様の反応を引き起こすことになるだろうと予測している。
 さらに、イランが今月、首都テヘラン南方のコム郊外フォルドゥの地下に建設されたウラン濃縮施設を稼働させるなど、核問題で非妥協的な姿勢を強めていることは、対イラン制裁に慎重なロシアにさえも懸念を与えている、という。
 一方、9日付の同紙は、仮に同海峡が封鎖され米国などが軍事行動に出た場合、イランは「湾岸産油国を不安定化させるための工作を強化するだろう」との専門家の見解を紹介。このため「湾岸地域ではどの国も戦争を望んでいない」のが本音だと分析している。(カイロ 大内清)

●ブルームバーグ 平成24年1月13日

http://www.sankeibiz.jp/business/news/120113/bsk1201130505004-n1.htm
中国、制裁拒否で漁夫の利 イラン原油「最大40%値引き要求」
2012.1.13 05:00

 欧米がイランの核開発に対する制裁措置としてイラン産原油の輸入停止や削減を主要国に働きかけるなか、最大の利益を得るのは中国となりそうだ。石油関係の専門家は、他国が米国の要請に協力するなか、中国だけは応じず、逆にイランから原油代金の値引きなど好条件の契約を引き出すとみている。
 仏ソシエテ・ジェネラルの石油市場調査責任者、マイケル・ウィトナー氏は「イランに対する制裁は中国の交渉カードを強くする」と指摘。米シンクタンク民主主義防衛財団(FDD)のイランエネルギープロジェクト担当ディレクター、マーク・デュボヴィッツ氏は「中国は唯一の買い手となれば最大40%の値引きを要求する」と試算する。
 一方の米国は、世界供給量の2割に上る原油が通過するホルムズ海峡の上空や海上の監視費用の大半を負担している。
 デニス・ブレア前米国家情報長官は、米国に次いで世界2位の石油輸入国である中国が「一セントたりとも負担せずにホルムズ海峡を通る航路の保護を享受する」との見方を示した。同氏は「ホルムズ海峡の治安維持は、米国にコストを押しつけ中国に恩恵をもたらす」と述べた。(略)
 香港中文大学のウィリー・ラム非常勤教授(歴史学)は「オバマ政権が外交・軍事の軸足をアジア太平洋へと移しているとはいえ、中東での米国の影響力の弱体化は中国の長年の方針だ。中国は主要同盟国の一つとみているイランからの石油輸入を削減する可能性はない」と指摘した。(ブルームバーグ Indira A.R.Lakshmanan)
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関連掲示
・拙稿「北朝鮮と連携したイランの核」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/4b82b8b2793b94ef15ee7a278d40290e
コメント

最高裁の国旗国歌判決に疑問

2012-01-27 08:48:04 | 時事
 最高裁が国旗掲揚、国歌斉唱を拒む教員への処分に基準を示した。校長が起立を命じた職務命令については昨年5月以降、最高裁が合憲との結論を出している。今回判決が下された3件の訴訟では、戒告処分・停職処分に裁量権の逸脱、乱用があったかどうかが争点だった。最高裁第1小法廷は「戒告処分までは基本的に懲戒権者の裁量の範囲」との初判断を示す一方、「減給以上の処分を選択することは、事案の性質などを踏まえた慎重な考慮が必要」と指摘した。そして、過去に国旗を引きずり降ろす妨害と不起立などで計5回の懲戒処分を受けていた女性教諭の停職3カ月の処分は妥当としたが、不起立のみで計3回の処分を受けていた女性教諭の停職1カ月の処分は取り消された。
 私は、後者の取り消し判決に疑問を覚える。民間の企業・団体であれば、同じ案件で2度戒告処分を受けている者が3度も同じことを繰り返せば、その時点でより厳しい処分をするのが普通だろう。先の女性教諭は、4度目に停職1か月の処分をしたものゆえ、民間の感覚では厳しすぎるとは言えない。むしろ教諭は公立学校の教員であり、教育公務員である。公務員はより厳しく対処すべきである。公務員が国旗掲揚・国歌掲揚を拒み、それがどうしても嫌なら公務員を辞めばよいのである。今回の最高裁判決は、この判決に関しては国民多数の感覚とは、ずれた判断だと思う。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成24年1月17日

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120117/trl12011700300000-n1.htm
教育に悪影響、批判も 国旗国歌訴訟 積極的妨害は厳罰可能
2012.1.17 00:26

 国旗掲揚、国歌斉唱を拒む教員への処分に、最高裁が基準を示した。処分回数で一律に重い処分を科す行為は違法とする一方、教師の積極的な妨害は停職も妥当とする判断。橋下徹大阪市長が成立を目指す教育基本条例案の論議にも影響を及ぼしそうだ。
 今回の最高裁判決では、減給以上の懲戒処分をする際には処分権者に「慎重な考慮」を求め、一部処分の取り消しを命じた。しかし、処分権者の都教委幹部は「十分慎重に考慮して下した」と不満をにじませ、識者からは「国旗国歌の教育に悪影響を与える判決」と批判の声も上がった。
 判決では、停職3カ月の女性教諭と停職1カ月の女性教諭との間で明暗が分かれた。3カ月の女性は過去に、国旗を引きずり降ろす妨害と不起立などで計5回の懲戒処分を受けていたが、1カ月の女性は不起立のみで計3回の処分。悪質性の観点から「停職期間の長短にかかわらず、重すぎる」として、1カ月の女性の処分は取り消された。
 都教委幹部は「処分に当たっては十分慎重に考慮し、だからこそ処分期間にも差を付けた」と判決に不満げな表情を見せた。
 判決は、悪質性の判断基準として、式典で教員が起立しないことが、学校の儀式的行事の秩序や雰囲気を損なうことを認めながらも、「積極的な妨害ではなく、物理的に式次第の遂行を妨げるものではない」と指摘。しかし、教育評論家の石井昌浩氏は「積極的だろうが消極的だろうが妨害行為に変わりはなく、校長が不起立教員に対して、適切な指導ができなくなる恐れがある」と懸念。「極端な話、教員が全員起立しなかった場合も『消極的妨害』なのか」と疑問を呈す。
東京都内のある教育長も「判決は卒業・入学式での国旗掲揚と国歌斉唱が教育課程という認識が欠けている。教員は児童生徒に国旗掲揚と国歌斉唱を指導する立場であり、来賓が起立しないのとは重みが違う」と判決を批判した。(略)
 最高裁判決は、職務命令違反をめぐる東京都教育委員会の懲戒権について慎重な対応を求める一方、悪質な妨害行為などがある場合には、減給や停職処分も妥当とする基準を示した。
 懲戒処分をめぐっては、行政に広い裁量権が認められてきた。最高裁は昭和52年、神戸税関懲戒処分事件の訴訟で「懲戒権者は原因、動機、性質、態様や処分歴など、諸般の事情を考慮して処分を決定し、その処分が社会通念上著しく妥当を欠いた場合は違法」との判例を示している。
今回の判決もこの判例に基づき、不起立行為の性質などを判断した。しかし、不起立行為を「式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう」と指摘する一方で、「式典の進行にどの程度の混乱をもたらしたかは評価が困難」とするなど、その位置づけは明確に定まっていない。
 減給以上の処分に慎重な判断を求めたのは、戒告処分と比べて、教職員が受ける職務上、給与上の処分による不利益が大きいためだ。判決では、学校の秩序保持などの必要性と、不利益の内容との均衡を保つ観点から、「停職や減給とする相当性を基礎付ける具体的事情が必要」と高い“ハードル”を設けた。(略)

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120117/trl12011703360001-n1.htm
【主張】
国旗国歌判決 悪質違反は厳しく処分を
2012.1.17 03:36

 最高裁で学校行事での国旗国歌をめぐる3件の判決が下された。国歌斉唱の際、起立しなかった教師に対する東京都の処分を不当とした2審判決を破棄するなど、大筋で妥当な判断である。しかし一方で、停職や減給を行き過ぎとした一部判断には疑問が残る。
 3判決では、国旗国歌への指導や教師への職務命令について昨年5月以降の最高裁判決を踏襲し、改めて合憲と判断した。そのうえで懲戒処分のうち最も軽い「戒告」に問題はなく、昨年3月、教職員約170人への戒告処分の取り消しを命じた2審・東京高裁判決を破棄し、処分を有効とした。当然である。
 ところが戒告よりも重い「停職」や「減給」などについては裁量権の逸脱を一部認め、処分の取り消しを命じた。国旗の引き下ろしやゼッケンの着用、文書配布といった積極的な妨害や抗議行動などがない場合、停職や減給処分まで科すのは違法という判断だ。教育委員会に抑制的で慎重な対応を求めたといえる。
 だが、停職処分が取り消された教師は過去2年間で3回、不起立により処分を受けている。積極的な妨害はしていないといっても、校長による再三の指導や処分にも一向に耳を貸さず改めなかった。判決がこうした実態を踏まえなかった点は残念だ。
 指導を無視し続けた結果、処分が重くなっていったのは当然である。そもそも卒業式など厳粛な式典の雰囲気を壊し、児童生徒に及ぼす悪影響を考えると、停職1カ月の処分はむしろ妥当で、「公務員は身分が守られ過ぎている」と感じる国民は多いだろう。
 大阪府では再三の職務命令にも従わない教職員について、処分を明確にする条例が検討されている。処分に高いハードルを課す今回の最高裁判決によって、条例化の作業自体が停滞する恐れもある。さらに各地の教育委員会が処分をためらい、見て見ぬふりをしている教育界の悪弊が一層強まることも危惧される。
 国旗や国歌を大切にするのは国民の素養だ。子供たちにも、きちんと教えなければならない。ところが学校では、長年にわたって国旗や国歌を政治闘争や裁判闘争の道具とする教師勢力がおり、さまざまな弊害がもたらされてきた。教育委員会には、さらなる毅然(きぜん)とした対応を求めたい。
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コメント

朝鮮学校補助金、都は予算カット

2012-01-26 10:21:17 | 時事
 東京都は、石原知事の査定で、平成24年度予算に朝鮮学校への補助金を計上しないことを決めた。石原氏は1月6日の定例会見で、「反日教育をして、われわれの同胞を拉致するために手助けしていた、そういう組織が、それに連脈のある教育をこれからもするなら、援助するいわれはない」などと発言していた。
 都は昨年末、朝鮮学校側に対し、北朝鮮による拉致事件についての見解や教育内容を質問し、歴史関係の教科書や副読本を含む教材の提出などを求めたが、その調査の進捗に関わらず、予算は計上しないという判断である。私は、この判断を支持する。英断である。東京都にならい、他の自治体も厳しく対応すべきである。また文部科学省に対し、都が調査している事項だけでなく、朝鮮学校の財務状況や朝鮮総連との関係等を含めて徹底的に調査し、朝鮮学校の実態把握を行うよう要望する。
 以下は関連する報道記事。

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●読売新聞 平成24年1月17日

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120117-OYT8T00590.htm
朝鮮学校補助金、来年度予算に計上せず…東京都

 東京都は16日、都内の朝鮮学校への補助金を来年度当初予算に計上しない方針を固めた。
 都は補助金支出の妥当性を判断するための調査を行っているが、計上しない理由について「調査結果が出ていないため」としている。
 都の朝鮮学校への補助金支出は1995年度に始まり、2009年度までに都内10校に計約4億7000万円を支出した。しかし10年11月に北朝鮮が韓国・延坪島(ヨンピョンド)を砲撃したことなどを受け、10、11年度はそれぞれ約2300万円を計上した上で「保留」にしている。
 朝鮮学校の「教育内容や政治的中立性に疑問がある」として先月始めた調査では、都内の朝鮮学校を運営する学校法人「東京朝鮮学園」(北区)に使用している歴史教科書などを都に提出するよう通知した。
(2012年1月17日 読売新聞)

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120118/edc12011803140001-n1.htm
【主張】
朝鮮学校補助金 国や地方も東京都に続け
2012.1.18 03:14

 東京都は平成24年度予算で朝鮮学校への補助金を計上しないことを決めた。日本人拉致事件や教育内容に関する調査を開始したばかりであることから、従来の「凍結」扱いよりも一歩踏み込んだ措置となった。
 大切な公金を支出する判断の前提として学校の実態を正確に把握することは不可欠だ。都の判断は妥当といえる。国と地方で同様の厳正な対応の広がりを期待したい。
 朝鮮学校の教育内容や学校運営には多くの疑問や疑念がある。
 東京都では昨年、「反日教育」「拉致事件」に関する教育内容に加えて、財務や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係も調査の必要があるとして、歴史関係の教科書や副読本を含む教材提出などを求めた。こうした状況を踏まえ、石原慎太郎知事の査定で今回の決定になったという。
 同じような観点から、宮城県や千葉県、埼玉県、三重県なども補助金を凍結している。福岡県も予算額を大幅に削減した。
 朝鮮学校を国の高校無償化の適用対象とするか否かの問題でも、22の道県議会が適用に反対する意見書や請願を採択している。
 こうした自治体が増えている背景には、朝鮮学校の実態がつかみにくく、学校の説明を額面通りに受け止められない事情がある。
 形式的ともいえる調査で補助金を出した神奈川県や支出を続ける愛知県、兵庫県のような自治体もあるが、国民の血税を投入するなら、中途半端な調査で済ますことは許されまい。各道府県も東京都のように厳正に対応すべきだ。
 昨年末の金正日総書記の追悼式では朝鮮総連が児童生徒の動員指令を出し、学校施設で式典を行った例もあった。本国や朝鮮総連の政治的思惑に子供や学校を組み込んでいるのは極めて問題だ。
 北朝鮮では金正恩体制への移行過程にあり、今後も新指導者崇拝や思想教育の強化が図られよう。補助金を求める前に、不明朗な教育や学校運営を抜本的に改め、透明化することが必須といえる。
 国による無償化問題も同じだ。政府は朝鮮学校の審査を凍結したが、菅直人首相が辞任直前の昨夏、審査を再開させ、国民の疑念を深めた。内閣改造で就任した平野博文文部科学相は「厳正に審査している。判断を待ちたい」と述べたが、禍根を残さぬためにも慎重かつ入念な判断を求めたい。
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コメント

靖国合祀、国が主導という新資料

2012-01-25 08:54:43 | 靖国問題
 戦争犯罪に問われた軍人の靖国神社への合祀は、国が主導し、先に地方の護国神社で合祀が進められていたことを示す新たな資料が出てきたという。まずそれを伝える記事を引用する。

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●朝日新聞 平成24年1月24日号

http://www.asahi.com/national/update/0121/TKY201201200767.html
靖国戦犯合祀、国が主導 地方の神社から先行

 戦争犯罪に問われた軍人らの靖国神社への合祀(ごうし)について、旧厚生省が日本の独立回復翌年の1953年に、公的援護制度の拡充などに応じて順を追って無理なく進める、との方針を決めていたことが同省の内部資料でわかった。方針に沿って、先に地方の護国神社での合祀を目指すとの記述もあり、朝日新聞が調べたところ、6カ所でA級戦犯3人を含む先行合祀の記録が残っていた。
 天皇や閣僚の参拝や、戦争責任をめぐる議論を起こしてきたA級戦犯合祀の原点となる方針が、独立回復に際して政府内で練られていたことになる。
 政府は従来、国会答弁などで、戦犯合祀は「靖国の判断」とし、宗教行為である合祀には関与しておらず、政教分離を定めた憲法に反しないとの姿勢を強調してきた。だが、今回の文書で、終戦までと同様、政府が合祀という靖国の根幹領域に立ち入って方針を定め、戦犯合祀の環境をつくり上げたことがわかった。(略)
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 この記事によると、これまで政府は靖国神社が独自に合祀を判断したと答弁してきたが、誤りまたは偽りだったことになる。私は上記の記事から、独立回復直後の旧厚生省はまともな考えで行政事務を進めていたと理解するが、朝日新聞は、政府が「戦犯」合祀を進めたと批判するために書いているのだろう。旧厚生省の資料を見て内容を検討する必要がある。

 元「A級戦犯」合祀の経緯については、拙稿「冨田メモの徹底検証」の「補説1 靖国問題と元『A級戦犯』合祀の経緯」等に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08k.htm
 戦後も、靖国神社に誰を祀るかということには厚生省がかかわってきた。選考は厚生省(現・厚生労働省)・都道府県が行い、靖国神社が祭神として合祀するかどうかを決定する仕方で、官民一体の共同作業が行われた。
 昭和34年(1959)に最初の元戦犯の合祀が行われた。まずBC級の人々からだった。「A級戦犯」とされた14人については、昭和53年秋季例大祭前日の霊璽奉安祭で合祀された。この合祀が、一般に知られたのは翌54年4月19日の新聞報道だった。わが国では元「A級戦犯」の合祀が定着していたが、昭和60年に突如として始まった中国の批判によって、問題にされるようになった。
 戦後、靖国神社に合祀される人の基準は、法律に根拠がある。国会が制定した戦没者遺族援護法及び恩給法とその関連法が、関係法である。国会は、昭和28年8月、いわゆる戦争犯罪人は国内法的には犯罪者ではなく、法務死者とみなすことを決議した。それによって、国は、元戦犯の遺族にも年金を支払うなどを行ってきた。行政府は、立法府がつくった法律に基づいて、行政事務を行なう。管轄官庁は、厚生省(現厚生労働省)だった。
 今回、旧厚生省の内部資料で新たに分かったというのは、同省は昭和28年に公的援護制度の拡充などに応じて順を追って無理なく進める、との方針を決めていた。そして34年の最初の元戦犯合祀にいたったという点だろう。

 戦後、厚生省は、日本遺族会からの「戦没者靖国合祀」の要望によって、戦没者の靖国神社への合祀に協力する事業を行なった。この事業は、合祀事務協力事業と呼ばれる。担当部局は、引揚援護局(当時)だった。
 厚生省引揚援護局は、戦傷病者戦没者遺族等援護法と恩給法の適用を受ける戦没者の名簿を作成し、その名簿を靖国神社に提出した。昭和31年から46年まで、名簿提出が続けられた。
 この名簿は、引揚援護局の課長名による通知として送られた。その通知が「祭神名票」と呼ばれる。
 靖国神社は「祭神名票」をもとに、その年に合祀する人々の名簿を作成する。それが「霊璽簿(れいじぼ)」である。この作成の際、もう一つ「上奏簿」を作成する。一定の書式に則って奉書に墨で清書し、絹の表紙でとじたものだという。上奏簿とは、天皇に上奏するための名簿である。
 靖国神社は戦前も戦後も、毎年合祀の前には必ず上奏簿を作成して、上奏簿を宮内庁にお届けし、天皇に上奏してきたという。戦前は、祭神の合祀は天皇の裁可を受けた。戦後も、上奏が慣例として行われた。
 「祭神名票」は、国会が制定した法律を基準として行政当局が合祀されるべき人を選定し、書面として作成したものである。靖国神社は「祭神名票」を受け、それをもとに合祀者の名簿を作る。靖国神社は、「祭神名票」に載っていない人を、独自に合祀するのではない。

 昭和41年、厚生省から靖国神社に祭神名票が提出された。その中に、14柱の元「A級戦犯」の名前が含まれていた。そもそも祭神名票の提出は、事務次官らの承諾を得ずに行われ、元軍人が多かった援護局の独断だったという説がある。しかし、援護局の課長名で出だされた通知は公式文書であり、民間団体は国からの通知として受理する。
 こういう事務に何か問題があれば、厚生省で業務の改善がされるなり、国会で法律が改正されるなりしたはずである。実際には、31年からずっと同じように通知が出されていた。41年の通知も同様にされた。

 靖国神社による元戦犯の合祀は、厚生省が提出した名簿に基づくものであり、厚生省の名簿は、国会の決議や諸外国の承認を踏まえて作成されたものである。だから、靖国神社が元「A級戦犯」を「戦争による公務死亡者」として合祀したことは、法律に基づき、行政の通知に従って実行したものである。このこと自体は、靖国神社が批判を受ける立場にない。
 元「A級戦犯」の合祀を不適当と言う者は、厚生省の名簿への記載、さらにその元になっている国会決議を批判すべきであろう。そこまでしないで分祀・新施設等をいう政治家は、国民を欺くものである。

 先に引用した朝日新聞の記事は、戦争犯罪に問われた軍人らの靖国神社への合祀について、旧厚生省が日本の独立回復翌年の昭和28年(1953)に、公的援護制度の拡充などに応じて順を追って無理なく進める、との方針を決めていたという。この決定は、昭和28年8月に、国会がいわゆる戦争犯罪人は国内法的には犯罪者ではなく、法務死者とみなすことを決議したことによるものだろう。旧厚生省の資料には、その方針に沿って、先に地方の護国神社での合祀を目指すとの記述もあり、朝日新聞が調べたところ、6カ所でA級戦犯3人を含む先行合祀の記録が残っているという。先行合祀は、国会決議に沿った行政事務の一環と考えられる。
 朝日の記事は、「『A級戦犯』合祀の原点となる方針が、独立回復に際して政府内で練られていたことになる」と書いているが、この方針は、国会決議に基づくものであって、政府当局として当然の動きである。また「今回の文書で、終戦までと同様、政府が合祀という靖国の根幹領域に立ち入って方針を定め、戦犯合祀の環境をつくり上げたことがわかった」とも書いている。その文書を読んでみないとわからない部分があるが、先に合祀の経緯を書いたように、合祀は官民一体の共同作業として進められたものである。問題は、政府が元戦犯の靖国合祀を主導したことではなく、昭和60年以降、中国から筋違いの批判を受けて、歴代首相が参拝を自粛したり、政府が誤りまたは偽りの答弁をしてきたことにあるのである。

関連掲示
・拙稿「冨田メモの徹底検証」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08k.htm
 目次から「補説1 靖国問題と元『A級戦犯』合祀の経緯」
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女性宮家4~彬子様のご発言

2012-01-24 09:11:46 | 皇室
 寛仁親王家の長女・彬子(あきこ)女王殿下は、毎日新聞社の単独取材に応じて、女性宮家創設の動きに関して発言された。皇族女子のご発言として注目される。女王とは、天皇の曽孫以下の世代の女性皇族の称号である。
 彬子様は、「今の議論は女性宮家を創設するかしないか(のみ)になっているような気がして、そこには違和感があると申しますか……。男系で続いている旧皇族にお戻りいただくとか、現在ある宮家をご養子として継承していただくとか、他に選択肢もあるのではないかと思います。女性宮家の議論だけが先行しているように感じられます」と述べておられる。
 成人の女性皇族が、旧皇族の皇籍復帰と旧皇族からの養子等の選択肢があると発言されたことは、大きな意味がある。政府・宮内庁は、当事者のご発言として、よく傾聴すべきである。
 以下は関連する報道記事。

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●毎日新聞 2012年1月7日

http://mainichi.jp/select/wadai/koushitsu/news/20120107k0000m040108000c.html
寛仁親王家長女・彬子さま:「女性宮家」早い決着を

 政府が検討作業に入った「女性宮家問題」などに関し、寛仁親王家の長女彬子(あきこ)女王殿下(30)が毎日新聞の単独インタビューに応じ、「お国の決定に任せるしかないが、決めるのであれば早く決めていただきたい」などと思いを語った。彬子さまは未婚の女性皇族8人のうち最年長で、皇族がこの問題について考えを示したのは初めて。
 彬子さまは、日本美術史を専攻し、英国オックスフォード大で女性皇族としては初めて博士号を取得。現在、立命館大衣笠総合研究機構でポストドクトラルフェロー(博士研究員)を務めている。
 皇室典範は、女性皇族は皇族以外と結婚した場合、皇族の身分を離れると規定しており、このままでは皇族が極端に減ってしまうため、野田政権は年明けと共に、結婚後も皇族にとどまる女性宮家制度の本格的な検討を始めた。
 彬子さまはインタビューで、国(政府・国会)に任せるしかないと政治的発言に関し控える姿勢を示しつつ、戦後に皇族の身分から離れた旧皇族の復帰案もあることを指摘。「今の議論は女性宮家を創設するかしないか(のみ)になっているような気がして、そこには違和感がある」と戸惑いを語った。
 また、結婚して民間人になるという前提で教育されてきたことを挙げ、「その前提が大きく変わるかもしれないというので、私自身落ち着かない状態です」と心境を吐露した。そして、結婚適齢期の女性皇族が増えることに関し「お相手の方の将来にも関わってくる問題です」として女性宮家問題の早期決着を望んだ。
 一方、皇室の将来については「国民のみなさまが皇室をどのように見ておられるか」「国民のみなさまが残したいと思われているか」にかかっているとし、自身が結婚後も皇族にとどまることについては「結婚後も公務をすることに抵抗はありません」と語った。【大久保和夫、川崎桂吾】

◇解説 将来設計を左右 十分な考慮を
 政府が改正を検討する皇室典範は、対象を広く一般化した他の法律とは違い、天皇陛下と皇族の23人の立場などを規定したものだ。
 女性宮家制度は、独身女性皇族の今後の生き方や将来設計を直接左右する。典範の改正時期によっては「姉が一般人なのに妹は結婚しても皇族」という差が出る恐れもある。宮家を作る女性皇族の範囲をどうするかという問題もある。
 皇族は選挙権もなく、政治的言動は控えており、彬子さまも質問ごとに熟慮しながら、国の決定に任せるしかないと自らの立場を強調した。制度上は「意向の確認・反映」が必要事項ではないとしても、典範改正に際しては「若い女性たちの人生を変える」という事実を踏まえた十分な考慮が必要だ。
 一方で、国民の理解も欠かせない。2月からの有識者ヒアリングについては、国民に皇室の課題について理解を深めてもらうためにもオープンにして判断の素材を提供すべきだろう。【大久保和夫】

http://mainichi.jp/select/opinion/approach/news/20120107ddm004070141000c.html

急接近:彬子さま 典範改正に向けた女性皇族自身の思いとは?

<KEY PERSON INTERVIEW>
 女性宮家創設を視野に入れた皇室典範改正の動きが急浮上したことで、女性皇族の存在がクローズアップされてきた。どんな生活を送り、どのような活動をされているのか。寛仁親王家の長女彬子(あきこ)女王殿下(30)に聞いた。【聞き手・大久保和夫、川崎桂吾、写真・大西岳彦】

◇落ち着かぬ、任せるしか--寛仁親王家の長女・彬子さま(30)

--現在、どのような生活を送られているのですか。
◆ 研究員として論文を書いたり、研究発表したり、ということが主な仕事です。最近は月に1、2回、講演や研究発表の機会をいただいています。

--昨年12月には、勤務先の立命館大で「文化財の現在・過去・未来」国際シンポジウムをプロデュースされましたね。
◆ 前年に引き続いての開催で、漆器、竹工芸など伝統の技を継承する人にも話していただきました。文化財を残していくためには今何かしなければならないという認識は、みなさん、共通しています。しかし、異業種・異分野間で協力してこの問題に取り組もうとする動きはあまり見られません。そこで市民の方々と共に考えていくプラットホーム(基盤となる環境)のようなものを作りたいと思って、企画しました。一般の方たちから反応が返ってきたことはうれしかったですし、ありがたかったですね。

--一方で皇室の公務があり、シンポの直前にも外交団の鴨場(かもば)接待が2回ありました。
◆ 鴨場接待はさまざまな国の方たちとお目にかかることができ、とても勉強になります。ただ、どうしても時間が足りなくなるので、移動する新幹線の車中で原稿などを書いています。

--皇族女性として初めて博士号を取得されましたが、研究活動に関心を持った経緯は。
◆ 祖父(古代オリエント史研究で知られる三笠宮さま)の影響だと思います。幼稚園の頃から私の質問に三つくらい資料を出して、「ここにはこう書いてある。ここではこうだ。だから僕はこう思う」というふうに説明してくださいました。研究とはこのようにするものだと、子ども心に感じていたと思います。
 そして、初めての英国留学中のことですが、日本に関する質問が全部私に回ってきて、自分がいかに日本を知らないかに気付かされました。浮世絵一つとっても、外国人と日本人の視線は違います。日本美術に最初に出合った外国人たちがどう見ていたのかということが、論文のテーマにつながっていきました。

--留学中のご様子は。
◆ 寮生活で食事は自炊していました。料理は論文を書いている時のよい気分転換でした。「プリンセス」としてではなく、日本から来た「アキコさん」として偏見なく付き合っていただきました。世界各国に友人ができたので、自分の狭い世界が広がったような気がいたします。

--皇族ということを自覚されたのはいつごろでしょうか。
◆ 幼稚園の頃ですね。周りの子は電車で通っていましたが私は車でした。(皇宮警察の)側衛がお母さんたちに交じって迎えにきてくれて。「彬子ちゃんはお父さんがたくさんいていいね」と言われていました(笑い)。

--「女性宮家」創設の動きはどう受け止めていますか。
◆ お国の決定に任せるしかないと思っています。一方で、今の議論は女性宮家を創設するかしないか(のみ)になっているような気がして、そこには違和感があると申しますか……。男系で続いている旧皇族にお戻りいただくとか、現在ある宮家をご養子として継承していただくとか、他に選択肢もあるのではないかと思います。女性宮家の議論だけが先行しているように感じられます。

--将来は皇室を離れることを前提に生活されてきました。
◆ 「お前たちは結婚したら民間人だから」と、子どもの頃から父に言われてきましたが、その前提が大きく変わるかもしれないというので、私自身、落ち着かない状態です。

◇研究と公務、どちらも

--現行の皇室典範のままでは皇族が極端に減るという問題についてはどうお考えですか。
◆ それは国民のみなさまがどのように皇室を見ておられるかということにつながってくるのではないかと思います。皇族の私がどうすべきかを申し上げるのではなく、国民のみなさまが残したいと思われるのであれば、自然と残っていくのではないでしょうか。こういった流れがあって初めて、将来を見据えた皇室典範の改正も議論されるべきだと思います。

--立場が定まらないと、ご結婚にも踏み切れない、ということはありますでしょうか。
◆ 私は、結婚後も公務をすることに抵抗はありませんが、女性宮家創設はお相手の方の将来にも関わってくる問題ですので、決めるのであれば早く決めていただきたい。今は、子どもたちに日本の伝統文化に自然と親しんでもらうような寺子屋のようなことができないかと考えています。ただ、成人後に留学を5年間させていただきましたので、その分を公務でお返しできたらと思っています。研究と公務のどちらかを優先するというわけではなく、どちらも100%が目標です。
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■ことば
◇女性皇族
 天皇の娘と孫にあたる「内親王」は現在、皇太子家の長女愛子さま(10)、秋篠宮家の眞子さま(20)、佳子さま(17)の3人。天皇の曽孫以下の世代は「女王」で、寛仁親王家の彬子さま(30)、瑶子さま(28)、高円宮家の承子さま(25)、典子さま(23)、絢子さま(21)の5人がいる。
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■人物略歴
◇あきこさま
 学習院大を卒業後、英国オックスフォード大に留学。大英博物館の日本美術収集などに関する論文で博士号を取得した。09年10月から京都市の立命館大衣笠総合研究機構に勤務。
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関連掲示
・三笠宮寛仁殿下のご発言(『文芸春秋』平成18年2月号による)
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/dc3ed005398c892986f7855c29f76f83

■追記

 本稿を含む「天皇と国柄」に関する拙稿は、下記に掲載しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion05.htm
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女性宮家3~大原康男氏の指摘

2012-01-23 08:46:02 | 皇室
 皇室制度及び皇位継承の問題について、皇室の伝統を踏まえて的確な意見を述べてきたのが、国学院大学教授の大原康男氏である。
 大原氏は昨年12月16日の産経新聞のインタビュー記事で、女性宮家に関する見解を述べた。大原氏は、政府の女性宮家創設案について、「女系天皇導入を裏口から入って実現させようとするもので、実に巧妙な議論の立て方だ」と看破している。また、「本来は正面から、男系の維持を原則とした皇位継承か、わが国の歴史上いまだかつてない女系天皇という考えを導入するかの議論をまずすべきだ。今回のように皇位継承には触れず、女性宮家についてだけ論じるのは、問題の取り上げ方が本末転倒だと言わざるをえない」と、問題の核心を指摘している。
 大原氏は、平成17年5月31日第六回「皇室典範に関する有識者会議」で参考意見を述べた。その際に提出された資料は、皇室制度皇位継承の問題を考える際に有益なものである。大原氏の上記発言の記事とともに掲載する。

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●産経新聞 平成23年12月16日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/111216/imp11121607240001-n3.htm
【金曜討論】
「女性宮家」
2011.12.16 07:18

≪大原康男氏≫

女系天皇につながる恐れ

--女性宮家構想をどうみる?
 「表向きは天皇陛下のご公務をお助けするため皇族の人数を確保する必要があり、そのためには適齢期の女性皇族に宮家の当主になっていただこう…とのことで国民の耳に入りやすい話だが、実際は女系天皇導入を裏口から入って実現させようとするもので、実に巧妙な議論の立て方だ」

皇位継承の議論が先

--女性宮家の創設には反対ということか
 「本来は正面から、男系の維持を原則とした皇位継承か、わが国の歴史上いまだかつてない女系天皇という考えを導入するかの議論をまずすべきだ。今回のように皇位継承には触れず、女性宮家についてだけ論じるのは、問題の取り上げ方が本末転倒だと言わざるをえない」

--これまで男系維持を主張されてきた
「昭和22年にGHQの経済的圧力によって皇籍離脱を余儀なくされた旧皇族の方々の子孫で適切な方に皇族の身分を取得し、宮家を設立していただければ安定した皇族の確保につながる。皇籍を取得された方がすぐ皇位につくわけでもなく、時間がたつにつれて見識や風格も培われることだろう」

--小泉政権下での有識者会議で、旧皇族の皇籍復帰は「60年近くたっており、国民の理解が得られにくい」と片づけられた
 「過去の例をみると、直系でなく傍系による皇位継承は全体の45%(56方)に及んでいる。皇籍を離脱された方が復帰して、さらに即位した例も2例ある。また、今の皇后陛下のように、民間から入られて永年、皇室になじまれ、敬愛の対象になっている方もおられる現実を考えるべきだ」

--女性宮家の問題点は?
 「民間出身の配偶者の地位や呼称はどうするのか。お子さまが生まれた場合、女系皇族ということになるが、皇位継承権はどうするのか。女系天皇を認める、というところまで突き進むことになる」

--女性宮家構想の背景に、未婚の女性皇族方が結婚適齢期を迎えられていることがある
 「それは何年も前に分かっていたことでこの間、適切な提言をしてこなかったのは宮内庁の怠慢。反省の弁があって当然だろう」

宮家の拡充は必要

--皇室典範改正の必要性は?
「このままでは悠仁親王の代には他に皇族がいなくなることも考えられる。宮家の拡充は必要だが、典範そのものの改正ではなく時限立法で対処するのが適切だ」

--その際に皇族方のご意見を反映させるべきか
 「現在も皇室会議という制度があり、皇族お二方が議員になっておられる。この皇室会議を通して皇族方のご意見も聞くべきだ」

●平成17年5月31日第六回「皇室典範に関する有識者会議」に提出された大原康男氏の資料

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/dai6/6gijisidai.html
皇室典範の改正について〈メモ〉 大原康男

【一】わが国における皇位継承の歴史
一、男系主義で一貫しており、そのことが国民統合の権威の源泉となっているという認識が広く共有されてきたこと。
二、直系─嫡系が理想だが、それが困難になった場合には傍系・庶系によって補ったこと。そのために、いわゆる猶子制度が活用されたり、世襲親王家が創建されたり、傍系から継承された天皇に直系の皇女を配されたりするなど、さまざまな工夫がなされたこと。
三、過去に十代八方おられた女帝は例外的な存在で、すべて男系。ご在位中は独身で、外国に見られる「皇配殿下」のような存在は皆無であったこと。
四、譲位(生前退位)が頻繁に行なわれたことで、摂関政治や院政といった変則的な政体が生まれたり、政争による廃位すらなされ、皇位継承の不安定にもつながったこと。
五、総じていえば、何回かあった皇統の危機に際しては当時の人々が叡智を出し合ってその都度事態を克服したこと。

【二】明治皇室典範の制定
一、成文による皇位継承のルールが確立していなかったため、皇位継承に混乱・対立・不安定が生ずる要因が内在し、時にはそのための流血の悲史が彩られたことに鑑み、確固とした皇位継承法を初めて明文で制定。
二、井上毅(法案起草の中心)の三原則
①わが国の歴史・伝統を踏まえたものであること。
②当時の国情や人情に照らして妥当なものであること。
③当時のヨー口ッパ先進諸国にも通じる普遍性を有するものであること。
三、主たる内容
①男系の男子に限定(第一条)
②直系・長系・嫡系・近親優先(第二~第八条)
③退位の禁止(第十条)
④皇族の養子の禁止(第四十二条)
⑤天皇・皇族以外の者と結婚した皇族女子の皇籍離脱(第四十四条)
⑥皇籍離脱した者の皇籍復帰の禁止(明治四十年皇室典範増補 第六条)
四、現典範も②の庶系による皇位継承の容認、④に天皇の養子の禁止が加えられたこと以外は旧典範をほぼ踏襲。

【三】皇位継承規定の改正について
一、男系主義の歴史的重みを十分に認識し、女帝(女系容認型)に関する議論に入る前に男系維持のための方策を講ずること。
①旧皇族の皇籍復帰の可能性を検討すること。
②皇族の養子制度を検討すること。
二、わが国にとって未曾有の女帝(女系容認型)導入がもたらす重大な意味を正しく理解するとともに、女帝支持の世論の動向と一部の女系容認論の背景にある危険性を慎重に見極めること。
三、喫緊の課題である宮家存続の対策を講ずること。それは一で述べた男系維持の観点からのものであること。

【四】皇室典範の改正規定の問題性

一、旧典範の改正 憲法と対等の法として議会は関与せず、皇族会議と枢密顧問の諮詢による。
二、現典範の改正 一法律に過ぎず、国会の単純な議決による。皇室のご意向を反映させる回路がない。

(参 考)

一、皇位継承の系統別一覧表
    嫡 系      庶 系  計
直系 四一方      二七方  六八方( 五五%)
傍系 二八方      二八方  五六方( 四五%)
 計 六九方(五六%) 五五方(四四%) 一二四方(一〇〇%)
(帝国学士院編『帝室制度史』第三巻)

*嫡系の中には皇后(中宮)所出でなくても、皇后(中宮)の実子とされた方も含まれる。

二、傍系による皇位継承で直系の皇女を皇后に迎えた例
・継体天皇(第二十六代)の皇后は仁賢天皇(第二十四代)の皇女・手白香皇女(たしちかのひめみこ)。
・光格天皇(第百十九代)の中宮は後桃園天皇(第百十八代)の皇女・欣子内親王。

三、女帝即位の事由
①外戚の権勢によるもの
 推古天皇(第三十三代)、
 孝謙・称徳天皇(第四十六・四十八代)。
②皇嗣の成長を待つための一時的な攝位
 皇極・齊明天皇(第三十五・三十七代)、
 元明天皇(第四十三代)、
 元正天皇(第四十四代)、
 明正天皇(第百九代)、
 後桜町天皇(第百十七代)。
③皇位継承の紛争を避けるため
 持統天皇(第四十一代)
(国立国会図書館蔵「佐藤達夫関係文書」)

四、譲位による皇位継承
百二十四代のうち五十四代。その中には廃帝など異例な譲位が四例ある(前掲『帝室制度史』第三巻)。

五、戦後の皇籍離脱(昭和二十二年十一宮家、五十一方)
①連合国軍による軍事占領下という異常な時代状況下にあって、皇室財産の国庫編入、高額の財産税課税、宮内省機構の大幅縮小というGHQの占領政策による異例の措置。
②竹田宮・北白川宮・朝春宮・東久邇宮の四宮家
・竹田宮恒久王(初代)の妃は明治天皇の第六皇女・昌子内親王。
・北白川宮成久王(四代)の妃は明治天皇の第七皇女・房子内親王。
・朝香宮鳩彦王(初代)の妃は明治天皇の第八皇女・允子(のぶこ)内親王。
・東久遷宮稔彦王(初代)の妃は明治天皇の第九皇女・聡子(としこ)内親王。盛厚王(二代)の妃は昭和天皇の第一皇女・成子内親王。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コメント (6)

女性宮家2~園部逸夫氏の画策

2012-01-22 08:31:57 | 皇室
 野田政権は女性宮家創設案による皇室典範の改正に当たり、園部逸夫氏を内閣官房参与にすると報じられる。園部氏は筑波大学教授や最高裁判事を歴任した法律家である法律家である。小泉内閣の皇室典範に関する有識者会議の座長代理を務めた。有識者会議の報告書は、女系天皇・女性天皇の容認を一つの柱としていた。報告書の内容は、園部氏が平成14年4月に出版した『皇室法概論』そのままと専門家から指摘されている。
 有識者会議の本当の中心は、古川貞ニ郎前官房副長官と園部氏だった。古川氏は羽毛田宮内庁長官とは厚生省時代の上司と部下であり、古川氏が羽毛田氏を宮内庁のトップにすえた。このグループが、小泉内閣以前から女系天皇・女性天皇容認案の準備に関わり、政権政党の違いに関わらず、政治家に素案を吹き込んでいるものだろう。
 園部氏は、共産党系のオンブズマン運動や住民訴訟を拡大合法化する法制度づくりで、原告適格性の拡大に努め、自衛隊・米軍基地反対闘争などに尽力し、偏向教科書を象徴する家永教科書裁判では、家永三郎氏に与する発言をしていたこともある。そして、最高裁判事時代には、平成7年に外国人参政権に関する最高裁判決で傍論を書いた。もともと左翼的な思想を持った人間が、傍論を書いたのである。それによって園部氏は、外国人参政権付与の運動を活発化する道を開いた。
 野田政権は、新たなメンバーによる有識者会議を設立せず、元有識者会議の中心人物である園部氏を内閣官房参与にする。政権与党の交代にかかわらず、園部氏らは陰で女系天皇・女性天皇への道を推し進めてきているものと思われる。その中心的な人物を参与とし首相らが助言を聴くということは、政府が有識者会議が打ち出した女系天皇・女性天皇容認に向いていることを意味する。
 日本の伝統を破壊し、国柄を毀損ずる画策を絶対阻止しなければならない。
 以下は関連する報道記事。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120107/imp12010702430000-n1.htm
【主張】
女性宮家 また初めに結論ありきか
2012.1.7 02:43

 2月から政府内で皇室典範改正に向けた本格的な議論が始まる。野田佳彦政権はテーマを「女性宮家」創設に絞り、皇位継承と切り離して検討する方針とされる。
 しかし、女性宮家だけを増やしても、男系で維持されてきた皇位の安定的な継承には必ずしもつながらない。将来、「女性宮家」から「女系天皇」が現れる可能性もあり、皇統の歴史を根底から否定することにもなりかねない。旧皇族の皇籍復帰を含めた幅広い議論を改めて求めたい。
 旧皇族は昭和22年、連合国軍総司令部(GHQ)の方針で皇籍離脱を余儀なくされた東久邇(ひがしくに)、北白川、竹田など11の宮家である。その後も、「菊栄(きくえい)親睦会」を通じて皇室との交流が続いている。旧宮家の中には未婚の男性もいる。その皇籍復帰こそ、男系の皇位継承を確保するための有意義な方法といえる。
 野田政権は今回、小泉純一郎内閣の平成16年末に設置された「皇室典範に関する有識者会議」のような審議機関を設けず、識者から個別にヒアリングを行う予定だ。小泉内閣時代に論点整理が終わっているとの認識からだが、この認識は極めて疑問である。
有識者会議は1年足らずで「女性・女系天皇容認」「男女を問わず長子優先の皇位継承」「女性宮家創設」などを骨子とする結論を出した。だが、その後、見つかった政府の極秘文書により、「初めに結論ありき」の議論だったことが明白になった。論点整理など全く終わっていない。
 新たな有識者会議設置の是非はともかく、当時の議論を白紙に戻したうえで、皇位継承問題も含めて一から検討し直すべきだ。
 野田政権は、小泉内閣時代の有識者会議の座長代理を務めた園部逸夫・元最高裁判事を内閣官房参与に任命し、助言を求めることにしている。園部氏は16年の参院憲法調査会でも「女性天皇を認めることが最もふさわしい」と述べ、有識者会議で女性・女系天皇容認論をリードした識者とされる。適切な人選とは思えない。
 「初めに結論ありき」の議論が蒸し返されないよう、国民の監視が改めて必要である。
 皇室の姿は時代に応じて変わってきているが、変わらないものもある。その一つが、男系で維持されてきた皇統の歴史である。この歴史を大切にしたい。
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関連掲示
・拙稿「女系継承容認論の迷妄――田中卓氏の「諫言」に反論する」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion05c.htm
 園部氏が中心的役割を果たした小泉政権の有識者会議についても記述
コメント (6)