◆日本経済の当面の見透し
宍戸氏の講演の大意要約を続ける。
「ここで、いったい日本経済はどの程度成長能力があるかという問題に移る。もう少し需要をさらに喚起したらどうなるかについて述べたい。
現在、GDP の8 %、40兆円くらいの需給ギャップがある。即ち、40兆円の需要を喚起しても、インフレなき成長が十分にできるということである。90年代後半以降、公共投資の伸びはマイナスとなり、GDPの成長もゼロ、あるいは1%近く低下した。これは、十分に復活させる余地がある。
次に、税の自然増収は、成長率が上がれば上がるほど、よりはやいスピードをもつ傾向がある。逆も真で、成長が下がれば税収はより急速に減少する傾向がある。
一般政府の純債務は、GNPの比率で考えると、金融債権に対して金融債務を差し引きした純差額では現在1.3くらい、つまりGNP の1.3倍くらいある。これが順調な経済成長を遂げると、後で見るように、1.1くらいまでに低下する。これは、実験的に出てくる結果である。またこれはアメリカがやったのと同じくらいの結果である。アメリカは公共投資主導よりむしろIT主導と住宅投資で成功した。日本も住宅投資促進をやってもいい。
この財政政策を支援するため、日本銀行は、買いオペレーションを通じて国債を市場で消化しやすい形で、支援すべきである。これは『アコモデイティング・フィジカルポリシー』(順応的財政政策)と言っているものである。つまり財政政策を支援する金融と結合した財政金融政策である。
円安を伴う拡大型マクロ経済政策で、税の自然増収は一段と加速する。この興味ある財政政策のパラドドックス重要であり、1990年代のアメリカがよい例なのである」
◆レオンチェフ=ケインズ型モデルが示す二つの選択肢
「このためのモデル分析を行った。レオンチェフ型の80部門業連関モデルにマクロモデルを結合して、いろいろなシミュレーションをやってみた。われわれのモデルは、方程式が約4000本入っている。
レオンチェフ=ケインズ型モデルは、80部門の時系列の産業関連表とマクロの国民経済計算をベースに、レオンチェフ型の構造分析とケインズ型のマクロモデルを総合し、構造分析に耐えられるマクロ計量分析、即ち多部門の動学計量モデルで、人口と労働力の変動から生産や雇用や価格を含む産業構造上の変化を始めとする財政・金融・証券・為替レートを含めた総合的な政策分析のための年次モデルである。表2『7年目のシナリオ比較』と図1『標準シナリオからの乖離率』(註 PDFを参照)に示すように東北アジア諸国のマクロモデルともこのモデルは結合している。この結果を示した要約が、ケース1とケース2である」
次の表1.1は、『2つの選択肢:準デフレ型成長VS正常活性型経済成長』を記すものである。
1.前提条件
case 1 # case 2
―――――――――――――――――――――――
実質公共投資: 0% # 14.0-10.0%
5年累積: 170 兆円 # 330 兆円
民間住宅と設備投資への金融支援: ゼロ # GDPの約2%
―――――――――――――――――――――――
2.結果
case1 # case 2
―――――――――――――――――――――――
実質GDP(%): 1 # 4
実質GDP(兆円): 568 # 697
住宅投資(%): 18 # 35
設備投資(兆円): 92 # 130
インフレ率(GDPデフレ-タ-)(%): -0.5 # 0.1
失業率(%): 5.6 # 3.8
経常収支(B$) : 593 # 304
政府純債務比率(%): 1.32 # 1.14
プライマリー・バランス(%): -4.3 # -8.3
GDP稼働率(%): 85.4 # 100.6
為替レート(¥/$): 83.9 # 108.3
―――――――――――――――――――――――
ケース1は、小泉型の政策が今後5年間続くケースである。ケース2は、公共投資を14% 前後にまで加速させ、あと1%くらいの勢いでスピードがだんだん減速していくケースである。それぞれのケースの5年後の結果予測が、各項目の数字である。左の数字がケース1の場合、右の数字がケース2場合である。二つの数字の間に、区別のために#を入れた。
積極財政政策を取って、公共投資を5年間にわたり実質14~10%の伸びで拡大した場合、デフレを脱却し、実質GDPは700兆円近くに拡大するという結果となっている。詳しくは、宍戸氏自身の解説を次回記す。
次回に続く。
宍戸氏の講演の大意要約を続ける。
「ここで、いったい日本経済はどの程度成長能力があるかという問題に移る。もう少し需要をさらに喚起したらどうなるかについて述べたい。
現在、GDP の8 %、40兆円くらいの需給ギャップがある。即ち、40兆円の需要を喚起しても、インフレなき成長が十分にできるということである。90年代後半以降、公共投資の伸びはマイナスとなり、GDPの成長もゼロ、あるいは1%近く低下した。これは、十分に復活させる余地がある。
次に、税の自然増収は、成長率が上がれば上がるほど、よりはやいスピードをもつ傾向がある。逆も真で、成長が下がれば税収はより急速に減少する傾向がある。
一般政府の純債務は、GNPの比率で考えると、金融債権に対して金融債務を差し引きした純差額では現在1.3くらい、つまりGNP の1.3倍くらいある。これが順調な経済成長を遂げると、後で見るように、1.1くらいまでに低下する。これは、実験的に出てくる結果である。またこれはアメリカがやったのと同じくらいの結果である。アメリカは公共投資主導よりむしろIT主導と住宅投資で成功した。日本も住宅投資促進をやってもいい。
この財政政策を支援するため、日本銀行は、買いオペレーションを通じて国債を市場で消化しやすい形で、支援すべきである。これは『アコモデイティング・フィジカルポリシー』(順応的財政政策)と言っているものである。つまり財政政策を支援する金融と結合した財政金融政策である。
円安を伴う拡大型マクロ経済政策で、税の自然増収は一段と加速する。この興味ある財政政策のパラドドックス重要であり、1990年代のアメリカがよい例なのである」
◆レオンチェフ=ケインズ型モデルが示す二つの選択肢
「このためのモデル分析を行った。レオンチェフ型の80部門業連関モデルにマクロモデルを結合して、いろいろなシミュレーションをやってみた。われわれのモデルは、方程式が約4000本入っている。
レオンチェフ=ケインズ型モデルは、80部門の時系列の産業関連表とマクロの国民経済計算をベースに、レオンチェフ型の構造分析とケインズ型のマクロモデルを総合し、構造分析に耐えられるマクロ計量分析、即ち多部門の動学計量モデルで、人口と労働力の変動から生産や雇用や価格を含む産業構造上の変化を始めとする財政・金融・証券・為替レートを含めた総合的な政策分析のための年次モデルである。表2『7年目のシナリオ比較』と図1『標準シナリオからの乖離率』(註 PDFを参照)に示すように東北アジア諸国のマクロモデルともこのモデルは結合している。この結果を示した要約が、ケース1とケース2である」
次の表1.1は、『2つの選択肢:準デフレ型成長VS正常活性型経済成長』を記すものである。
1.前提条件
case 1 # case 2
―――――――――――――――――――――――
実質公共投資: 0% # 14.0-10.0%
5年累積: 170 兆円 # 330 兆円
民間住宅と設備投資への金融支援: ゼロ # GDPの約2%
―――――――――――――――――――――――
2.結果
case1 # case 2
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実質GDP(%): 1 # 4
実質GDP(兆円): 568 # 697
住宅投資(%): 18 # 35
設備投資(兆円): 92 # 130
インフレ率(GDPデフレ-タ-)(%): -0.5 # 0.1
失業率(%): 5.6 # 3.8
経常収支(B$) : 593 # 304
政府純債務比率(%): 1.32 # 1.14
プライマリー・バランス(%): -4.3 # -8.3
GDP稼働率(%): 85.4 # 100.6
為替レート(¥/$): 83.9 # 108.3
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ケース1は、小泉型の政策が今後5年間続くケースである。ケース2は、公共投資を14% 前後にまで加速させ、あと1%くらいの勢いでスピードがだんだん減速していくケースである。それぞれのケースの5年後の結果予測が、各項目の数字である。左の数字がケース1の場合、右の数字がケース2場合である。二つの数字の間に、区別のために#を入れた。
積極財政政策を取って、公共投資を5年間にわたり実質14~10%の伸びで拡大した場合、デフレを脱却し、実質GDPは700兆円近くに拡大するという結果となっている。詳しくは、宍戸氏自身の解説を次回記す。
次回に続く。