ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

人権124~国民国家の出現とイギリス

2014-11-29 08:51:30 | 人権
●西欧における国民国家の出現と普及

 西欧における国家の変遷は、1648年のウェストファリア条約を一つの転換点とする。1648年以前の西欧における国家は、封建国家(feudal state)だった。領土は封建所領が錯綜しており、明確な境界線を欠いていた。人民は領民(people)であり、その多くは、国家への帰属意識を持っていなかった。統治機構は、国王や領主の政府、聖職者等の教会機構が併存していた。一定の統治権はあるが、主権ではなかった。身分制秩序による支配集団が統治し、複数のエスニック・グループが併存していた。
 ウェストファリア条約によって、主権国家(sovereign state)が出現した。経済的には封建制に基づく封建国家だが、それが法制度上、主権を持つと認められた。それぞれの主権国家は、国境で区切られた領土を持ち、領域内の人民は、その国家に所属する国民(nation)となった。ただし、形式的な存在だった。統治機構は、領域において主権を行使する国王の政府となった。絶対王政が行われた。
 封建的主権国家から、国民国家(nation-state)が登場した。17世紀末、イギリスで市民革命を通じて、最初の国民国家が形成された。次いで、18世紀後半にイギリスから独立したアメリカ、またイギリスに学んだフランスで国民国家が形成された。市民階級が参加した政府によって、国民(nation)の実質化が進んだ。統治機構は、主権を行使する政府であり、君民共治または国民主権となった。権力に参与する主要なエスニック・グループが、神話・歴史的記憶に基づく集団意識の形成や言語・文化等の均一化を進めた。だが、ほとんどの国で、複数のエスニック・グループが併存していた。
 国民国家は、資本主義の経済組織を領土内に統合することに成功した。国内の分業に基づく生産・消費・流通・金融の組織化を進めた。それによって、生産力と軍事力を飛躍的に増大させた。19世紀初頭のナポレオン戦争を通じて、国民国家の威力を見た国々が、広く国民国家を模倣するようになった。富と権力、生産力と軍事力を獲得して、先進諸国に対抗するためである。それによって19世紀後半から20世紀前半にかけて、国民国家の形態が世界の範例となった。

●イギリスにおける国民国家の形成

 次に、国民国家の形成と発展を、イギリスから主な事例を順にたどって、人権との関係を見ていきたい。
 国民国家について、通説では、フランス市民革命によって身分制社会が解体され、革命の理念を継承したナポレオン・ボナパルトが、自由かつ平等な国民の結合による国民国家を打ち立てたとされる。19世紀初頭、フランスに生まれた国民国家は、単一の法体系と政治体制、固有の領土、共通の民族・文化を持つ。政府は国民に対して徴兵を行い、課税権を行使できる。こうした国民国家は、従来の絶対王政国家とは比較にならないほど強力な軍事力を発揮した。その軍事的機能は、ナポレオンの軍事行動によって実証された。そこで、ヨーロッパ各国は、フランスに対抗するため、次々と国民国家へと移行したというわけである。
 しかし、破竹の勢いのナポレオンを打ち破ったのは、イギリスだった。このことに注目したい。フランスより前にイギリスで17世紀末に国民国家が成立していた。イギリスへの対抗において、アメリカ・フランス等の諸国に国民国家が形成され、普及していったと私は考える。西欧の大陸諸国に対し、大ブリテン島のイギリスは市民革命や産業革命だけでなく、国民国家の確立においても、先駆的だったのである。
 イギリスは、ノルマン・コンクェストによる征服国家である。ゲルマン人の一派であるノルマン人が、1066年にフランスから渡ってイングランドを征服した。これによって、ノルマン人の集団がイングランドの支配的なエスニック・グループとなった。基本的には、このグループがイングランドのエスニックな核となった。12世紀以降、言語上の借用、結婚、官僚への取り立て等によって、被支配集団であるアングロ・サクソン、デーンとの間に人的交流や文化的な融合が進んだ。
 第6章に書いたように、イングランドでは1265年に身分制議会が制定されて以来、議会を通じて国王を中心とする臣民の集団という意識が発達し、エスニックな集団としての意識が形成され、この封建的な身分制議会が、市民革命を経て国民の議会に変化していく。中世の英仏は、王家が血族も所領も不可分の関係にあったが、1339年から百年戦争を戦い、最後はヘンリー5世がイングランドを勝利に導いた。こうした対外戦争と精神的または英雄的な指導者が集団意識の核になった。14世紀後半には、言語上の融合が進み、第7章に書いたように、ウィクリフが聖書の英訳を企て、宗教改革の先駆となった。自国語で聖書を読むことは、ネイションの基礎となる言語共同体の発達を促した。また、14世紀末には『カンタベリー物語』の著者チョーサーによって中世英語が完成された。こうした政治的・社会的・言語的・文化的な変化によって、イングランドでは、将来ネイションを構成するエスニックな要素が十分発達していた。これに加えて、宗教的にはカトリックからの自立が行われた。16世紀チューダー朝のヘンリー8世は、離婚を認めないカトリック教会の教皇と対立して国教会を作り、1534年に自ら首長となってローマ教会を離脱した。国民国家の形成への道において、この宗教的自立は重要な意味を持った。イングランドの住民の多数は、カトリックから国教会に替わることで、エスニックな集団意識を強めた。精神的な中心はローマ法王ではなく、宗教的な首長でもある自国の国王となっていった。
 大ブリテン島は、ヨーロッパ大陸から海で隔てられており、ドイツ30年戦争の混乱に巻き込まれなかった。1648年のウェストファリア条約によって、大ブリテン島の諸国家も法理論上、主権国家となった。この時点で、大ブリテン島とアイルランド島には、イングランド、スコットランド、アイルランドという3つの封建制的主権国家が併存していた。これらはそれぞれ独自のエスニック・グループが支配する主権国家だった。

 次回に続く。
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慰安婦問題を徹底的に追及せよ~山田宏氏3

2014-11-28 09:38:49 | 慰安婦
 私は、本年8月15日、靖国神社境内で行われた第28回戦没者追悼中央国民集会で、山田氏の講演を聴いた。
 山田氏の父は、末期の海軍予備学生で航空隊員だった。昭和20年(1945)8月15日、厚木基地で終戦を迎えた。昼に昭和天皇による終戦の玉音放送があった。その日の午前中も、厚木基地から特攻隊が飛びたち、帰らぬ人となった。もし山田氏の父がその時に出撃していたら、息子の山田氏は生まれていない。山田氏は、そのことを父から聴かされて、育った。そして、自分や今日の日本があるのは、国のために尊い命を捧げた人たちがいたからだと、深く感謝している。
 山田氏は、以前東京都杉並区の区長をしていた。区長をしていた11年の間、毎年成人式に出席し、新成人に挨拶をした。その際、毎回20歳で散華した特攻隊員の遺書を読んで聞かせた。本年8月15日の講演でもその話があった。同じ趣旨の話が、ネット上に載っている。平成22年(2010)の成人式について、山田氏が書いた文章である。

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●新成人に伝えたいこと
2010.01.11

 今年の杉並区の成人式も、ほぼ厳粛に終わりました。杉並区の成人式は、国歌斉唱、区長挨拶、そして区議会議長の祝辞と簡素な式典ですが、毎年全国で荒れる成人式が報道される中、杉並区の成人式は静かに終了してきました。
 私の挨拶は、毎年だいたい同じ内容です。まず成人式を節目に、立派な大人として責任を果たしてほしいと述べ、そのためにまず両親への感謝から始めてほしいと話します。
 「今日家に帰ったらまずご両親ご家族に、『ありがとう』と一言言ってほしい。ご両親には、この20年間さまざま心配や苦労があったと思う。だけど『ありがとう』の一言でご両親はきっと喜びで一杯になります」次に「ご両親やご家族だけではなく、こうやって皆さんが幸せな成人式を迎えることができるのは、もっと多くの人々のお陰でもあることも知ってほしい」と話し、そして「去年も、10年前にも、そして65年前にも、皆さんと同じ新成人がいましたが、今日は65年前の20歳の方の遺書を読みます」と述べ、靖国神社に納められている「英霊の言の葉」の中から、20歳で戦死された方の一葉の遺書を読むのです。

 たとえば今年は、次の遺書を読ませていただきました。
 「父よ、母よ、弟よ、妹よ、そして永い間育んでくれた町よ学校よ、さようなら。本当にありがとう。 こんな我が儘者をよくもまあ本当にありがとう。僕はもっともっといつまでも皆と楽しく暮らしたいんだ。愉快に勉強し皆にうんとご恩返しをしなければならないんだ。(中略)然し僕はこんなにも幸福な家族の一員である前に、日本人であることを忘れてはならないと思うんだ。
 日本人、日本人、自分の血の中には三千年の間受け継がれてきた先祖の息吹が脈打っているんだ。永遠に栄えあれ、祖国日本。みなさん、さようなら。
元気で征きます」(塚本太郎。太平洋方面で戦死。享年22歳)

 国歌斉唱の時にはガヤガヤしていた会場も、私の話が進み、遺書を読ませていただく段になると、シーンとなっていきます。ハンカチで目を押さえている女性もいます。そして私は、「新成人の皆さんが、こんなきれいな着物を着て、乾杯して美味しいものが食べられるのも、こういった方々の尊い犠牲があってこそと、今日は心にしっかり留めて、この方々の分まで立派な大人になり、立派な日本をつくる責任が皆さんにはあることを自覚してほしいのです」と結んで、話を終えます。
 この時、ほとんどの成人の背筋がピンと伸びたのを、私は演壇から毎年感じます。
 私が「英霊の言の葉」を読んで挨拶することを快く思わない政治グループは、毎年のように「区長が戦争礼賛。特攻隊賛美のあいさつをした」とアジビラを配りますが、戦争礼賛でも特攻隊賛美でもないことは、成人式に出席した人で普通の感覚があれば、誰でもわかると思います。
 私が新成人に伝えたい本意は、「みなさんの貴重ないのち。亡くなったその人たちの分まで立派に生きてほしい」という願い以外、何ものでもないのですから。現に、毎年、翌日以降にいただく出席者の方々からのメールでは、「遺書を聞いて、これまでいい加減な生き方をしていた自分を恥ずかしく思った。これから立派な大人になろうと思います」といった感想が、何通も送られてくるのです。
 こんな成人式があることも知ってほしいと思います」
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 本年8月15日の講演では、大意次のような話もあった。山田区長が出る成人式では、若者がシーンとなって静かに話を聞くということが評判になった。それを聞いた政治評論家の三宅久之氏が、ある時、山田氏に何も告げずに成人式の会場に行った。そして本当に新成人がシーンとなって話を聴くのに驚いた三宅氏が、山田氏に電話をしてきた。「山田君、本当だね」と。

 私は、思う。山田氏は、自分や今日の日本があるのは、国のために尊い命を捧げた人たちがいたからだと心から感謝しているからこそ、先人・先輩の名誉を貶める慰安婦問題でのいわれのない非難を許せないのだ、と。山田氏の場合は、父が海軍予備学生で航空隊員だったという個人的な事情はある。だが、そうした事情のあるなしにかかわらず、また世代のいかんにかかわらず、自分や今日の日本があるのは、国のために尊い命を捧げた人たちがいたからだということを心から思うならば、根拠のない慰安婦問題で、自分の父親や祖父たちの名誉を貶められることは、許せないはずである。
 自民党は根本的に態度を改め、河野洋平氏を国会に招致し、河野談話に関する事情を確認し、根拠のない談話を撤回すべきである。政府は慰安婦問題に関する国際広報体制を整備し、積極的に発信すべきである。またクマラスワミ報告書への反論文書を内外に公開すべきである。日本人の誇り、自信、絆を取り戻すために、慰安婦問題は、解決しなければならない。虚偽の慰安婦をテコの支点として、日本の自虐的な歴史を反転させることができる。
 アベノミクスで経済の再建・成長が出来たとしても、魂を失った日本であれば、いずれ衰退に陥る。経済だけではなく、精神の立て直しが重要である。経済の再建・成長は、日本人の精神的な向上のための必要条件の整備であって、目的そのものではない。国政を付託されている政治家には、そのことを肝に銘じてもらいたいものである。(了)

関連掲示
・拙稿「慰安婦問題3~石原信雄氏が「裏取りなし」と証言、グレンデールでは提訴へ」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/134d8ae28f17646d22077a175d94d847
・拙稿「河野談話の検証結果を受け、国会は河野洋平氏を招致すべし」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc3bef1bd68b2e241e7ebbc1a71b2180
・拙稿「韓国の反日的な慰安婦戦略は破綻する」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12q.htm
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慰安婦問題を徹底的に追及せよ~山田宏氏2

2014-11-26 08:56:46 | 慰安婦
 続いて、10月20日付の産経新聞のインタビュー記事で、山田氏は、慰安婦問題の国際広報は外務省ではなく、「官房長官の下に『対外広報局』という『歴史戦』に備える部隊をつくり、トップダウンでやらせるべき」と提案する。

 「河野談話は強制性を一定程度認めました。では認めた強制性とは何か。確かにだまされたり、誘拐されたりというケースはごく一部ありました。しかし、これは日本国政府や軍は全く関与しない。むしろ取り締まる側でした。これらの行為は民間の悪質な業者によって行われ、彼女たちの運命にもちろん同情すべきことはあります。だが、国や軍が強制したわけではありません。
 『広義の強制性』はあったという議論もありますが、『日本軍や日本政府が強制に関与したことはない』とはっきり主張すべきです。誘拐とか甘言は悪質な民間業者がやったわけで、当時の新聞は、日本の官憲や警察がそういう悪質業者を『取り締まって捕まえた』という記事ばかりです。強制した側に立っていたわけではないことを証明すればいい。
 親に売られたなどの悲惨な運命をたどった人たちも中にはいました。だが自ら応募して行った人もたくさんいるのです。
 インドネシアでオランダ人女性が慰安婦になった話があります。あれは強制した将校が上官から厳しく叱責されました。軍法会議にかかる者がいたことは残念ですが、彼らは軍法に反する違法な行為を行ったのです。責任がないとは言わないが、組織的にやったというのとは全く違うと説明すべきです。
 米国に対しては、ビルマ(現ミャンマー)で働いていた朝鮮人慰安婦に対する1944(昭和19)年の米軍の実態調査の報告書があります。彼女たちは強制連行の犠牲者でも、性奴隷でもなかったことが明確にされました。これを米国の議員に配って読んでもらうのが一番です。
 そのように外務省は作戦を転換しなければいけないのですが、今までの積み重ねがあるので、おいそれとは動かないでしょう。官房長官の下に『対外広報局』という『歴史戦』に備える部隊をつくり、トップダウンでやらせるべきです。
 そして、政府は慰安婦に関する適切な日本の論文をどんどん翻訳し、海外の日本研究者や図書館、影響力があるジャーナリストに送るべきです。きちんと社会問題を英訳できる翻訳家も養成する必要がある。今は日本の主張を海外に伝播(でんぱ)する手段を国家として欠いています。
 また、海外の日本研究者のために歴史的な一次資料をインターネット上に全て公開し、慰安婦問題を検証してもらえばいい。村山富市内閣が主導し、平成13年になって設置された『アジア歴史資料センター』はほとんど動いていない。検索で『慰安婦』と入れたら8件しか出てこなかった。しかも出てくるのは『伍長が慰安婦が好きで好きでたまらなくて、部隊を離れて追いかけていったからケシカラン』というものでした。まずは慰安婦に関わる防衛省、外務省、国立図書館が所蔵する歴史資料を全部整理し、世界中から検索できるようにし、一次資料に誰でもコンタクトできる基盤をつくる必要があります」

 私は、山田氏の上記の提案に賛成である。次に、山田氏は、クマラスワミ報告書に対する日本の反論文書を公開すべきと主張する。

 「『奴隷狩り』と虚偽の証言をした吉田氏の著作などを多用し、慰安婦を強制連行された『性奴隷』と認定した1996(平成8)年の国連の『クマラスワミ報告書』に対する日本の反論文書が非公開になっています。すでに英語になっており、きちんとオープンにしていくべきです。
 反論文書を入手し、外務省に『国会で質問するから本物かどうか答えてくれ』と聞いたら、『答えられません』ときた。本物かどうか私にだけに言ってくれと言ったら『本物だが、本物とは答えられない。公開していないことになっているから』と言っていました。
 これは是非公開すべきです。『謝って』『よけて』という従来の対応ではいけません。米国の議員が何か言ってきても『これを読んでください。どっちが正当か』と伝える。朴大統領就任後の韓国の状況を見れば、まともな国ではないとだんだん分かってきている。そういう意味では今は攻め時だと思うし、なし崩し的にやる必要があります」

 反論文書の公開は、急がねばならない。

 山田氏は、次世代の党幹事長として、10月23日、慰安婦問題に関する河野洋平元官房長官談話が強制連行を認めたものではないことや、強制連行はなかったことを確認するための国会決議案を、会期中の臨時国会に提出する考えを明らかにした。山田氏は「自民党内にも同じような声がある。原案を作って、賛同を求めていく」と述べた。
 国会決議は全会一致を要するので容易ではないが、こうした決議案を出して国会で議論を起こすことは有意義である。決議案を出す以上は、国民の耳目を引き、世論を動かすような議論を巻き起こさねばならない。
 山田氏らは、10月30日の衆院予算委員会への河野元官房長官と木村朝日新聞社長(当時)の参考人招致を求めたが、10月23日自民党の反対で結局実現に至らなかった。河野氏については「犯罪でもないのに元国会議員を招致した前例はない」、木村氏は「『誤報』で報道機関を招致すれば、報道機関を委縮させる可能性がある」などというのが、自民党の理由である。
 長年腐敗堕落を続け、一度政権から転落した自民党は、多少は反省をして、国民の支持を取り戻し、24年12月に安倍総裁のもと政権に復帰したと思われるが、根本的なところが変わっていない。河野談話については、日本人の名誉と誇りよりも、党内事情を優先している。このままでは、真に国政を託せる政党足り得ない。河野洋平氏の国会招致は、なんとしても実現しなければならない。朝日新聞の責任者、清田治史元記者、植村隆元記者の招致も同様である。自民党内で日本人の精神を持っている国会議員は、党の改革に立ち上がるべきある。

 次回に続く。
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慰安婦問題を徹底的に追及せよ~山田宏氏1

2014-11-25 09:26:51 | 慰安婦
 12月14日に衆議院総選挙が行われる。私はアベノミクスについては基本的に支持するが、自民党には強い不満も持っている。不満の一つは、慰安婦問題に関する姿勢である。河野談話に関して河野洋平氏を国会に招致しようとせず、朝日新聞の関係者も招致しようとしない。国際社会に対して、誤解を解こうとしても、河野談話をそのままにしているのでは、有効な対応はできない。この慰安婦問題に最も積極的に取り組み、特に河野談話について正当な意見を述べている政治家の一人が、山田宏衆議院議員である。自民党の政治家は氏を見習うべきである。



 山田氏は日本維新の会の分裂後、平沼赳夫氏らとともに次世代の党を創設し、現在同党の幹事長をしている。山田氏は、旧日本維新の会の「歴史問題検証プロジェクト・チーム」のメンバーとして、本年2月20日、衆院予算委員会で河野談話の問題点を追及し、国会に石原元官房副長官を参考人として呼んで質問し、重要な証言を引き出した。
 山田氏は、同委員会で慰安婦問題について質問し、米グレンデール市の慰安婦像にそばに設置された碑文に、20万人の女性が「自宅」から強制連行され、「性奴隷」にされたという表現があることを示し、問題の重大性を明らかにした。また、聞き取り調査の資料公表を政府に求めた。政府は「個人情報保護」を盾に資料の公表には慎重な態度だが、氏名を隠すなり、偽名にするなりすれば済むことである。
 山田氏は、参考人として招致された河野談話作成当時の官房副長官、石原信雄氏に質問を行った。石原氏は、河野談話について関し、国会で初めて証言した。証言は、NHKテレビで全国中継された。
 石原氏は、談話作成にあたり、事実関係を明らかにするため関係省庁に資料調査を要請したが、「女性たちを強制的に(慰安婦に)従事させるという種の文書は発見できなかった」と説明し、「米国の図書館まで行ったが、女性たちを強制的に集めたことを客観的に裏付けるデータは見つからなかった」とも述べた。韓国側の強い要求で行われた元慰安婦16人の聞き取り調査については、「事実関係の裏付け調査は行われていない」と明言し、「当時の状況として、裏付け調査をこちらが要求するような雰囲気ではなかった」と語った。また、談話作成の過程で韓国側に文案を提示し、韓国側の要求を入れたことに関し、「私は承知していないが、この種のものをまとめる段階で、何らかの事務的なすり合わせはあったのかもしれない。作成過程で意見のすり合わせは当然行われたと推定される」との見解を示した。河野談話に対しては「慰安婦の募集は主として業者が行い、その過程で官憲や軍が関わった可能性があるという表現になっている」と述べ、「日本政府や日本軍の直接的な指示で慰安婦を募集したことを認めたわけではない」と強調した。事務方のトップだった人物が、国会でこのような証言を行ったことの意味は極めて重い。
 石原氏の証言を受けて、菅義偉官房長官は、元慰安婦の聞き取り調査を検証するかどうか検討することを表明した。その後、政府は専門家チームを作って、河野談話に関する検証を行った。6月20日検証結果を明らかにする報告書が公表された。菅官房長官は、報告書の出された6月20日の記者会見で、韓国側へ報告書の概要を伝えたことを明らかにした上で、「談話を見直さないという政府の立場に何ら変わりはない」と述べた。
 山田氏は、検証報告書について、裏付けとなる資料の添付が不十分だと指摘し、「単なる『日本側の主張』で片付けられてしまう可能性がある。国際社会に証拠を示さなければならない」と述べた。検証の根拠となった資料が明示されていないとして、再検証を求めた。
 根拠資料のうち、特に元慰安婦の聞き取り調査資料は、早急に公開されなければならない。聞き取り調査資料は、元慰安婦の名前、出身地、生年すら不明確なものであると報じられている。政府は、外国人元慰安婦の「人権」より、日本国民に対して説明責任を果たす義務がある。自民党は、身内の責任問題に甘い。河野氏は、河野談話を出した後、党の総裁や衆議院議長を務めた。そうした河野氏を守ろうとしている。だが、自民党は、河野談話を擁護することによって、日本を「性奴隷国家」に貶めてきたのである。そのことを猛省し、根本的に態度を改めなければ、自民党の真の再生は不可能である。

 さて、山田氏は、10月20日付の産経新聞のインタビュー記事で、慰安婦問題について、次のように述べた。
http://www.sankei.com/politics/news/141020/plt1410200007-n1.html
 「朝日新聞は慰安婦報道を訂正しましたが、慰安婦問題自体はまだ終わっていません。平成5年8月の河野洋平官房長官談話が取り消されなければならない。自民党の萩生田光一総裁特別補佐は『上塗りするような新しい談話で事実上、否定する』との考えでしょうが、新たな談話で違った考えを出せば、国際社会は上塗りしたというよりも対立したものとしてとらえる可能性があり、あまり功を奏しません。
 9月に訪米し、共和、民主両党の親日派議員と会いました。(略)『慰安婦の問題に新たな展開がある。完全に根拠のないものだと考えている。是非理解してくれ』と言うと、『でも日本の首相は何度も謝っているじゃないか。謝っている対象があるんだろ? その対象がなかったと君らは今になって言うのか?』と言ってきました。
 旧日本軍は慰安婦を強制連行したのか、しなかったのか。政府が根拠にしたのは吉田清治氏の証言でもなければ、慰安婦の証言でもありません。河野さんが談話発表のときの記者会見で、談話の内容を『強制連行』と間違った形で意図的に発した。その結果、河野談話が強制連行を認めたものだと国際的に認知され、強制連行について謝る羽目になりました。
 やはり河野さんが『記者会見での発言は間違っていた』『根拠のないものだった』とはっきり言わないと、河野談話の否定にはなりません。
 なぜ河野さんは強制連行を認める発言をしたのか。想像するに、河野さんの善意であれば、『これで終わるのだから』と韓国におもねった。悪意であれば、何か韓国と取引をした可能性があるかないかを調べる必要があります。いずれにせよ間違ったことをわざと仰ったと思います。
 河野さんは『強制連行』と発言した根拠を出せるわけがありません。どこにもないのですから。ある自民党議員から『河野さんを国会に呼んでも“自分は正当だ”と主張したら逆効果になるのではないか』と言われましたが、『何を弱気を言っている。自民党もだらしない。僕が河野さんをねじり伏せる』と反論しましたよ。
 河野さんを国会に呼んで『強制連行は否定ですね?』と問い詰め、『この場で否定する。間違っていた』と答えたら、かなりの部分が消えます。それは言ってもらわなければいけない。
 7月に河野さんに国会での説明を求める手紙を送りましたが、返事も何もありません。僕はかつて河野さんが立ち上げた新自由クラブから東京都議会に出ました。河野さんをよく知っています。だからこそ仁義を切って考えを伝えようと手紙を書きましたが、返事がないのでこれからは堂々とやります」

 自民党は、日本の名誉回復より党内事情を優先するこれまでの誤った態度を改め、河野洋平氏らを国会招致すべきである。その際、山田氏にはぜひ河野氏への質問をしてもらいたいものである。
 
 次回に続く。
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今回の衆院選は、官僚主導の政治を脱却する好機

2014-11-23 08:51:50 | 時事
 11月21日衆議院が解散された。12月2日公示で、14日投開票が行われる。安倍首相は、今回の解散は「アベノミクス解散だ」とし、「私たちの経済政策が間違っているか、正しいのか。本当に他に選択肢があるのかを国民に問いたい」と語った。
 私は、今回の解散総選挙の経緯・目的・結果予測の分析について、11月19~20日に書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/77fdf78f6c2de6003f4cd3abf85782a6
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/0a24568959198cae84566369748d2615
 そこに書いた私の視点から見て傾聴すべき見解を述べているのが、評論家の屋山太郎氏である。屋山氏は、11月21日の産経新聞に次のように書いた。
 「安倍首相の解散は、表面だけをみると、消費税10%への引き上げをやるかやらないかだけを問う、一見、安易な政治行動のように見える。しかし、実態は中選挙区制選挙の時代から続く、官僚主導の政治形態を終わらせるかどうかの重大な節目になる選挙である」と。
 屋山氏によると、安倍首相はアベノミクスを軌道にのせるには、あと3年程度の時間が必要だと判断している。これに対して、財務省は「財政再建」を重視し、「予定通りの引き上げ」に固執して増税を迫る根回しを行った。だが、7~9月期の実質GDPは年率換算1・6%減、2期連続のマイナス成長となった。  「ここで消費税の2%引き上げを行えば、景気が底割れしかねないと恐れた。この現実をみながら、なお消費税再引き上げを主張する議論に対抗するには、『民意に問うしかない』と安倍首相は考えた」と屋山氏は見る。
 この見方を裏付ける情報が流れている。財務省が予定通り税率再引き上げを実施するよう固執し、自民党議員に「ご説明」に回った。これに対し官邸サイドは、「増税容認」で固めてしまおうとする動きだとして激怒、安倍晋三首相が衆院解散・総選挙を決意した遠因となった、と。
 もともと消費増税は、日本をデフレに陥れた責任を取ろうとせず、自らの失策を覆い隠して、増税によって権力を維持しようとする財務官僚が、政治家に吹き込んだ政策である。民主党・野田政権のもと、自民・公明・民主は財務官僚に誘導されて、3党合意を行い、消費増税法を成立させた。
 安倍氏は、もともと積極的な増税論者ではない。むしろ、約2年前に次のように語っていた。
 「財務省の財政規律に重点を置き過ぎた、あの姿勢も、やはりちょっと違っているのではないかと気がついたのです」「旧大蔵省、財務省というと専門家集団で政策にくわしいという固定観念があるんですが、事実をずっと見てくると、むしろ肝心なところで政策を誤っているんではないかという疑念が芽生えてきます。安倍政権のとき、平成19年の予算編成では54兆円くらい税収があったんです。これは成長の成果です。もしあの段階でデフレから脱却していれば、これは一気にプライマリーバランスの黒字が出るまでいったんではないかと思うわけです」
 そして、安倍氏は、財務省は進めようとするデフレ下での増税は間違いと断定していた。
 「景気はまだまだ厳しいでしょう。これから財政出動しますが、デフレ下で増税をするので、景気を冷やしていく危険性もある。よりデフレが進んでいく危険性もあるでしょう。これは明らかに間違っています」と。(「現代ビジネス」2012.11.29付)
 私は、総理大臣になった安倍氏は、この時の考えを貫くべきだったと思っている。3党合意にしばられ、財務省に同調する政治家との力関係から、本年4月に消費税を8%に上げた結果、増税はアベノミクスの効果を減少させる負の要因となっている。そのことが経済指標にはっきり出ているのに、財務官僚はなお政治家に迫って自らの策謀を実現しようとしている。安倍氏や菅官房長官等が激怒するのは、当然だろう。
 屋山氏は、「官僚主導の政治形態を払拭できるかが最重要課題だ。政権基盤をさらに安定化し、アベノミクスをより強固なものとできるか注目したい」と書いている。「官僚主導の政治形態を払拭できるか」――ここに今回の選挙の重大課題があることは間違いない。
 以下は、屋山氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成26年11月21日

http://www.sankei.com/column/news/141121/clm1411210001-n1.html
2014.11.21 05:03更新
【正論】
官僚主導の体制改めるチャンス 評論家・屋山太郎

 衆院が解散され、安倍晋三政権2年間の信任が問われる。
 安倍首相の解散は、表面だけをみると、消費税10%への引き上げをやるかやらないかだけを問う、一見、安易な政治行動のように見える。しかし、実態は中選挙区制選挙の時代から続く、官僚主導の政治形態を終わらせるかどうかの重大な節目になる選挙である。安倍首相が衆院解散の決意に至ったきっかけは、消費税導入について、財務省と党内の財務省応援団との対立が収まらないとみたからだ。

≪「民意に問う」と判断≫
 安倍首相はアベノミクスを軌道にのせるには、あと3年程度の時間が必要だと判断している。これに対して、財務省は「財政再建」を重視し、「予定通りの引き上げ」に固執した。
 財務官僚の根回しのすごさは政権中枢を担った人なら誰もが知っている。その財務省が本気になって予定通りの増税を迫ってきた。
 閣内では麻生太郎財務相、党内では野田毅税制調査会長、二階俊博総務会長らが財務省の側にまわった。
 官僚が議会を動かす力を持つに至ったのは、中選挙区制度の産物である。業界と結びついて議員に金の工面をすることで多くの便宜を図り、権限を発揮するという考え方がいまも強く残っており、政権公約さえも否定する。こういう発想や行動が、公約を掲げて信を問うという政党政治を妨げている要因となっている。
 15年にわたるデフレや不況が続いたのは、財務省とそれに操られてきた政治家の責任だ。これに対して安倍首相は、これまでの路線を打ち破ったアベノミクスで大成功を収めたのである。
 ただし、その道のりはまだ半分だ。5%から8%への消費増税の重みに、経済は耐え切れていない。7~9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は年率換算で1・6%減となり、2期連続のマイナス成長となった。ここで消費税の2%引き上げを行えば、景気が底割れしかねないと恐れた。
 この現実をみながら、なお消費税再引き上げを主張する議論に対抗するには、「民意に問うしかない」と安倍首相は考えた。かつて小泉純一郎首相は一枚看板の郵政改革法案が参議院で否決されたとき、「民意を聞いてみたい」と衆院の解散に打って出て大勝した。

≪画期的に変わった外交政策≫
 安倍首相が信を問うきっかけになったのは消費増税問題だが、安倍政治によって画期的に変えられたのは、外交・安保政策である。集団的自衛権の行使容認の決定により日米同盟を強化する一方で、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を展開し、2年足らずの間で50カ国以上を歴訪。積極的平和主義を推し進めた。
 これまで戦後の日本外交は、どの国とも「良好な関係」を保ちたいというもので、三木武夫首相(当時)は等距離外交、福田赳夫首相(同)は全方位外交を説いた。特に中国に対しては日中国交正常化以降、“中国土下座外交”ともいうべき外交が展開された。
 ある政治評論家から、第1次安倍政権ができる直前、「この人は善い政治家だが、中国が嫌うだろうから他の人が良い」というのを聞いて、私はがくぜんとしたことがある。
 冷戦中、ソ連の意向をおもんばかってフィンランドは常にソ連寄りの首相を選んだという。
 中国は1歩譲れば、次に2歩譲ることを強要する。日本の首相は占領終了後、30年以上も靖国神社に参拝してきた。ところが中曽根康弘首相の時代に公式参拝をめぐって日本国内がもめると「参拝するな」と押し込んできた。
 今も首相の靖国神社不参拝を主張し、さらに沖縄県・尖閣諸島が中国領であると言い張っている。

≪欧米メディアの高い評価≫
 中国に対して原則を譲れば果てしなく押し込まれる。こうした中国の傍若無人の態度には、東南アジアの国々も辟易(へきえき)している。
 その中で、安倍首相は日中首脳会談を実現し、戦略的互恵関係の再構築を確認した。「中国を押さえ込むためのキックオフ」(産経新聞)とも指摘されている。
 安倍外交の戦略の第1は、中国に軍事的に負けないように日米安保体制を強化する。第2は東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携し、中国の膨張を防ぐこと。第3が豪州、さらにはインドとの準軍事同盟関係を築くことだ。
 安倍首相就任当初、アメリカの新聞に「右翼政権」などと書かれたが、米欧メディアの評価はいま、格段に上がっている。安倍外交の成功を象徴しているといえるだろう。
 安倍政権には消費税引き上げを先送りした後の経済動向や、原発の再稼働問題、安全保障政策など、重い課題がのしかかってくる。選挙に勝利し、それにどう対処できるかが焦点となる。
 官僚主導の政治形態を払拭できるかが最重要課題だ。政権基盤をさらに安定化し、アベノミクスをより強固なものとできるか注目したい。(ややま たろう)
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関連掲示
・拙稿「アベノミクスの金融政策を指南~浜田宏一氏」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion13t.htm
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人権123~ネイション形成の必要条件

2014-11-22 12:49:01 | 人権
●ネイション形成の必要条件

 アンダーソンは、著書『想像の共同体』で、ネイションを「イメージとして心に描かれた想像の共同体」であると定義し、「それは、本来的に限定され、かつ主権的なものとして想像される」と述べた。これが「想像の共同体」論である。アンダーソンは、ある人間の集合は、共通の言語を持つ人間集団だと考えられるようになったからこそ、主権を持つ共同体だと想像されるようになったと説く。萱野稔人氏はこの説を支持し、著書『ナショナリズムは悪なのか』で、この説の根拠を「人間の間での意思決定が言語によってなされるから」だとし、「ネイションの形成にとって一義的なのは言語の共通性」であり、ネイションは「あくまでも言語の共通性にもとづいて想像される」と説く。
 これに対し、スミスは言語を決定的とすることに異論を述べる。そして、ネイションの形成にはエスニックな核として、神話や歴史的記憶が必要だと説く。私は、言語は重要だが、言語の共通性は絶対必要な条件ではないと考える。スイス、カナダ等、多言語国家が存在するという事実は、アンダーソンや萱野氏への反証となる。集団的自己意識の形成は、多言語国家においても可能である。国民に共通する意識をつくるための核があれば、多言語の集団においても、意識形成はできる。スミスのいう神話や歴史的記憶が、その核となり得るものである。
 スミスは、ネイションの起源を近代以前のエスニックな要素に求めている。理由は、(1)西欧では エスニックな核を土台としてネイションが形成されたこと、(2)それがモデルとなって世界中に広がったこと、また(3)そうしたエスニックな核を持たない集団がネイションの形成を目指す時には、歴史と文化を持つ共同体という神話や象徴をあえて「創造」しなくてはならなかったことーーである。
 私は、スミスの説くエスニックな核の必要性に同意する者だが、さらに重要な、ネイションの形成の第一の要素があると考える。それは、権力である。ネイションの形成において、言語よりも、また神話・歴史的記憶よりも重要な条件は、権力の形成である。集団を形成する権力が先にあり、権力によって一定の領域を統治すれば、その後にその領域に住む人民に一個の国民としての集団意識を持たせることが可能である。実際まず政治権力による領域の支配が行われ、次に、その領域内で権力による住民の統合や文化的な同化が行われた例が多くある。
 集団的自己意識は、権力のもとで、後から形成し得る。その時に必要なのが、神話・歴史的記憶というエスニックな核である。自己意識形成には、言語の共通性が有利であることは言うまでもない。だが、言語は共通していても、集団を結びつける物語がないと、集団の意識は分裂しさえする。逆に、エスニックな核がしっかりしていれば、言語は必ずしも共通でなくとも、行政で公用語が機能すれば、国民の統合ができる。
 なお、集団的自己意識を形成する際の核は、エスニックな神話・歴史的記憶でなく、何らかの思想であってもよい。権力を以て国民に思想を教育・宣伝し、またその思想を表す公用語を教育することによって、国民の実質化を進めることができる。
 それゆえ、私は、ネイションの形成に必要な条件は、必要度の高い順に、(1)権力、(2)神話・歴史的記憶または思想、(3)言語となると考える。権力を見落とし、神話・歴史的記憶のみで思想を評価しなかったり、言語を絶対必要条件としたりするのは、欠陥のある見方である。
 権力の形成は、エスニック・グループ以外の集団でもなし得る。自らの政府を持ち、主権・領土・国民の3要素を持つ政治組織としての国家を作ろうとする集団は、エスニック・グル―プのみではない。政治団体・思想団体・宗教団体等、何かの集団が政府を持とうとし、政府を持ち国家を建設したら、その集団が統合する社会は、ネイションとなる。
 こうした何らかの集団が、政府の樹立を目指し、ネイションを形成しようとする運動と、エスニック・グループがネイションを目指す運動とに共通するものーーそれは、集団による権力の獲得・拡大の運動である。集団による権力の獲得・拡大が強く妨げられる場合、そこに実力のぶつかり合いが起こる。その大規模なものが、戦争である。国家間の戦争であれ、独立をめぐる戦争であれ、戦争は集団の権利をかけた実力の行使である。集団は他の集団または他の国家との戦いの中で、共同性が強まる。単なる言語的・文化的・経済的な共同体ではなく、興亡盛衰をかけた運命共同体となる。
 ここで人権について述べると、人権は、単に国内において革命や政治参加によって発達しただけでなく、対立・抗争し合う諸国民との戦いを通じて、主に国民の権利として発達した。諸国民は、それぞれの権利をかけて戦った。その過程で国民の権利が獲得・拡大された。その権利を普遍的な理念で表現する場合に、人権と呼んできたのである。
 エスニック・グループとネイションについて書いたが、これら双方に関係するものに、ナショナリズムがある。ナショナリズムについて検討するには、先に国民国家の形成・発展について歴史的かつ理論的に述べることが必要である。そこで次に、国民国家について書くことにする。

 次回に続く。
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衆議院総選挙~安倍首相の決意と野党一本化の動きが激突2

2014-11-20 09:51:19 | 時事
●先行的な選挙結果予測は自民に厳しい

 週刊文春11月13日号は、「12・14総選挙緊急予測」を載せた。予測記事を書くに当たり、文春は同誌のメルマガ読者を対象にアンケートを実施した。どの政党の候補者に投票するかを問うもので、1126人が回答した。結果は自民約53%、共産9.1%、民主8.5%、維新7.8%、次世代7.2%。他党は2%以下だった。
 記事は、基本的には「一強多弱」だが、前回の衆院選と比較して、二つのトレンド変化があるとし、「自民党への追い風が前回ほどではないこと」「維新の党を巡る状況の変化」を挙げる。
 今回の予測のポイントは、「民主、維新、みんなの党、生活の党の4党が候補を一本化する野党結集の成否が獲得議席を左右する」という点にあるという。
 そして、三つのケースを示す。現状は、自民党295議席、自民党・公明党合計で326議席である。
 第1のケースは、野党候補の一本化が出来なかった場合、自民は258議席、自公で289議席。野党候補の惜敗率80以上と仮定したもの。自民は37議席、自公でも同議席減らす。ただし、維新への追い風がやんだ大阪で、自公が議席を増やせば、300議席超もありうるとする。大阪は、橋下徹共同代表(大阪市長)、松井一郎幹事長(大阪府知事)が国政選挙に出るかどうかが、注目されよう。
 第2のケースは、野党結集が実現し、自民党に逆風が吹かない場合。自民は257議席、自公で288議席。第1のケースとほとんど同じ結果となる。野党4党の合計惜敗率は140%以上と仮定している。惜敗率とは、小選挙区における当選者の得票数に対する落選候補者の得票数の割合をいう。
 第3のケースは、野党結集が実現し、自民党に逆風が吹いた場合。自民は232議席。自公で263議席。現有から自民は63議席、自公でも同議席減らす。自公で過半数は維持できるが、自民は単独過半数を失う。野党4党の合計惜敗率は120%以上と仮定している。
 3つのケースを比較すると、今回の選挙で野党一本化ができれば、自民は過半数割れの232議席。野党分裂なら258議席。自民党はどのケースでも議席を減らすという予測である。
野党4党が結集しても、それだけでは与党が大負けすることはないが、野党が結集し、その上に自民党に逆風吹いた時に、与党は大敗する。逆風とは、記事によると、「今回の解散がスキャンダル隠しと批判を浴びたり、また実質賃金が上がらないなどアベノミクスの負の側面に有権者の関心が集まる」事態を意味する。
 記事の予測では、民主党が第1のケースは現有より25議席増の81議席へ、第2のケースは80議席へ、第3のケースは68議席増の94議席へ。維新の党が第1のケースは現有より6議席増の48議席へ、第2のケースは51議席へ、第3のケースは56議席へ。みんなの党は、第1、2のケースは現状とほぼ変わらないが、第3のケースは5議席増の13議席へ。他の政党は、どのケースでも現状とほぼ変わらない。それゆえ、野党4党の結集で利益を得るのは、民主と維新ということになる。

 次に、もう一つ別の予測について記す。11月12日のZAKZAKに載った記事によるものである。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20141112/plt1411121140001-n1.htm
 記事は、政治評論家の小林吉弥氏の予測を載せている。小林氏の予測によると、自民、公明与党で過半数(238議席以上)は維持するが、大幅に議席を減らす。現有の326議席から最大で62議席減らす。野党の選挙協力が進んだ場合、自民党は235議席にとどまり、単独過半数は維持できない。小林氏はいう。「景気回復の実感がないなか、国民の多くは『再増税の先送りは当然』と考えており、先送りを決めても選挙での追い風にはならない。12年の衆院選のような自公の圧勝にはならない」と。また小林氏は「民主党、維新の党、みんなの党、生活の党は、ドタバタにはなるだろうが、必ず選挙協力に入る。ただ、旗振り役がいないことと、時間不足がネックなので、どのくらいの選挙区で候補者調整ができるかは完全には読めない。野党第1党の民主、第2党の維新が約30選挙区で競合しており、どこまで調整が進むかが焦点となる」という。
 協力が順調に進んだ場合、民主党(現有議席56)は90議席に躍進する。他の3党も、維新(同42)が40議席、みんな(同8)が10議席、生活(同7)が8議席を獲得し、ほぼ現状勢力を維持できる見通しという。
 小林氏は、2年前の衆院総選挙の3週間ほど前の予測で、自民は220議席。単独過半数にとどかず、自公で248議席の過半数、民主99議席、維新60議席と、自民に厳しく、民主・維新に甘い見方をしていた。結果は、自民党が294議席で圧勝し、単独で絶対安定多数を超えた。民主党は57議席と惨敗した。日本維新の会(当時)は54議席だった。今回も小林氏は、自民に厳しく、民主に甘い予測をしている。
 当時、週刊文春は、政治広報システム研究所代表の久保田正志氏と同誌取材班による予測で、自民244議席で単独過半数、自公で270議席の絶対安定多数、民主86議席、維新64議席と書いた。小林氏より、実際の結果に近い予測をした。

 今回の衆院総選挙について、1か月前の段階での2つの予測について書いた。予測は予測である。また1か月の間に、どういう風が吹き、世論がどう変わるか分からない。

●安倍首相は日本再建の決意を訴え、国民は賢明な選択を

 先に引いた2つの先行的な選挙予測は、ともに民主党が大幅に議席を伸ばすと予想している。だが、消費増税を決めたのは、民主党政権だった。民主党は、尖閣奪取をもくろむ中国に対し、友愛の幻想を振るまいた。東日本大震災の対応で無能力をさらし、国民を不安のどん底に陥れた。今国会では法案審議よりも、うちわやSMバーなどのスキャンダルによる与党攻撃に終始した。アベノミクスを超える代替案を示していない。こうした政党になお期待を寄せる国民がどれだけいるだろうか。民主党が大幅に議席を伸ばすという予測は、はなはだ疑問である。
 みんなの党の議席が伸びるという予測も示されたが、同党は渡辺喜美氏を中核とする政党である。同氏が不正献金の疑惑に「熊手を買った」というわけのわからぬ説明をして、信用を失った。その渡辺氏との意見対立から江田憲司氏が維新の党に移り、渡辺氏が代表を辞任し、迷走を続けた果てに、今や解党に向かっている。個々ばらばらに民主、維新等へ合流するだろう。
 今回の選挙戦で一大焦点となりそうな大阪については、仮に橋下氏と松井氏がともに小選挙区で立候補した場合、大阪の市長と府知事がそろって責任業務を投げ出して国政に出るような政党を支持する有権者がどれだけいるだろうか。橋下氏について、私は政治家としての資質や政策の立案・遂行能力を疑ってきたが、彼に過剰な期待を寄せる風は、既に吹き止んでいる。
 だが、多くのマスメディアは、これから安倍政権を引きずりおろそうと、ネガティブ・キャンペーンを行い、有権者の意識を操作しようとするだろう。

 安倍首相に勝算はあるのか。勝算がないなら、解散総選挙は、やらないだろう。いまやって、議席を減らすような選挙なら、敢えてするのは自傷行為でしかない。首相は9月の内閣改造で一部人事で失敗した。就任後、初めての目立った判断ミスだった。ここで軌道を修正し、的確な判断力を取り戻す必要がある。
 私としては、消費増税先送りによるデフレ脱却優先は当然であり、財務省の策謀に加担したり、踊らされているような政治家は、この機会に一掃したいものである。与党の議席獲得目標は絶対安定多数となる266議席以上と伝えられる。わが国現下の最大の課題は憲法の改正と考えるので、政党を超えて、衆院3分の2以上へと改憲勢力の伸長を期待する。
 この点に関しては、産経新聞の阿比留瑠比記者が、19日付の記事で次のように書いた。
 「安倍晋三首相が消費税再増税を先延ばしし、衆院解散・総選挙の断行を決めたのは、大目標である憲法改正に向け、できるだけ議席を失わずに済むタイミングは今だと考えたからだ。『憲法改正を考えると、自民党の衆院議席を20~30議席も減らさずに、現在の294議席を可能な限り維持できるタイミングを計りたい。まさに勝負だ』 首相側近は10月下旬、周囲にこう語っていた。憲法改正の発議には、衆参両院で3分の2以上の賛成が必要となる。あと2年余りの衆院任期中に、必ず選挙を迎えなくてはならないのだから、議席確保に有利な時期を選ぶのも当然である」と。
 安倍首相の最大のテーマは、憲法改正である。安倍首相が解散権を発動するとき、憲法改正のための議席確保を考えないはずはない。集団的自衛権の限定的行使、安全保障のダイヤモンド構想等を進めながら、まずデフレを脱却し、最大テーマの憲法改正を成し遂げる。それが安倍氏の計画だろう。
 今回の総選挙は、安倍首相が日本再建の決意を国民に共有化しえるかどうか、またこれを阻もうとする野党の一本化の成否が結果に大きく影響するに違いない。単に安倍政権の命運だけでなく、日本の命運の掛かった選挙となるだろう。国民は、そのことを自覚し、30年、50年後の日本と世界を見据えて、賢明な選択をしたいものである。(了)
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衆議院総選挙~安倍首相の決意と野党一本化の動きが激突1

2014-11-19 10:23:28 | 時事
●衆院解散総選挙への経緯と目的

 安倍首相は、11月18日、衆議院を21日に解散する意向を表明した。来年10月に予定された消費税率10%への再引き上げを先送りする判断について、国民の信を問う。首相は平成29年(2017)4月まで「18カ月間延期する」と表明するとともに、「18カ月後さらに延期することはないとはっきり断言する」とも述べた。衆院選は、12月2日公示、14日投開票の日程で行われる。

 解散総選挙を決めた最終的な判断材料は、内閣府が11月17日発表した今年7~9月期のGDP速報値だろう。実質で前期比0.4%減、年率換算で1.6%減となった。マイナス成長は2四半期連続で、民間予測平均の年率2%前後の増加を大きく下回った。安倍首相はこの結果を見て、「残念ながらいい数字ではない。デフレ脱却のチャンスを手放すわけにはいかない」と述べた。そして、これを最後の判断材料として、衆院解散総選挙を決めたものと見られる。
 GDP1.6%減という数字について、アベノミクスそのものの失敗と批判する見方があるが、これは、正しくない。アベノミクスは株価を大幅に押し上げているように、確かな効果を生んでいる。マイナス成長からプラスに転じた。失業率は3%台に下がり、大卒・高卒の就職内定率は上り、個人消費は拡大している。失敗したのは、本年4月の消費増税である。デフレ脱却がまだこれからという段階で増税を行ったことが、アベノミクスの効果を減少させているのである。税率を上げてなかったら、実質賃金は増え、個人消費がもっと伸びて、GDPは上昇したに違いない。安倍首相は、もともと積極的な消費増税論者ではない。財務省が誘導した自民・民主・公明の3党合意による消費増税法にしばられて、増税を実施した。その点において失敗したのである。ここでの次善策は、次の消費増税を先送りし、デフレ脱却を優先、そして完遂すること。これによって、財務省官僚の影響力を奪い、彼らに同調している政治家や御用学者等を駆逐することである。

 安倍首相は、解散表明で消費増税の再延期はないと明言した。これは、消費税増税法の景気判断条項を削除するという意思である。同法は付則第18条に景気判断条項を設けているが、これは努力目標である。私は、これを実施条件とにして、名目3%程度、実質2%程度の経済成長率をきっちり実現しない限り、増税を実施しないといしたほうがよいと考える。単に景気判断条項を削除することにすると、内外の経済状況がどうであれ、2年半後には必ず税率を上げるという決定になる。単に一人の政治家の決意表明で済む話ではなく、国民が一致団結し、必ずデフレを脱却し、実質GDP2%を実現するという決死の覚悟が必要である。安倍首相は、単に増税先延ばしを問うのではなく、増税ではなくデフレ脱却を優先課題とし、国民的努力でデフレを脱却しようと国民に訴え、そのことについて信を問うべきである。

 さて、今回の解散総選挙は、11月に入ってにわかに解散の風が吹き出し、中旬の首相外遊中に風速が増し、にわかに決まったかのように語ってきた評論家やジャーナリストが多いが、その見方は皮相である。ジャーナリストで作家の長谷川幸洋氏は、10月22日の時点で早くも解散総選挙の可能性を指摘していた。長谷川氏の記事によると、同日午後のニッポン放送『ザ・ボイス?そこまで言うか』で初めてその可能性を指摘した。その後、『現代ビジネス』や『週刊ポスト』、『たかじんのそこまで言って委員会』等のテレビ番組で一貫して「増税先送りから解散総選挙へ」というシナリオを、氏は強調してきた。
 『現代ビジネス』10月24日の記事で、長谷川氏は次のように書いた。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40887?page=7

 「増税凍結法案成立後、12月14日衆院総選挙も

 自民党内は増税賛成派と反対派の双方が会合を開いて、騒がしくなってきたが、私は急速に悪化してきた景気の現状をみると、もはや増税先送りは必至とみる。そこで11月17日の速報値で判断するとなると、臨時国会は11月30日までなので会期中である。
 国会が開かれているときに増税の判断をするとなると、これは大きな話になる。ずばり言おう。安倍政権は衆院解散を考え始めたのではないか。多くの人は『来年10月の再増税は決まった話』と思っているので、増税先送りならサプライズ、しかも前向きのサプライズになる。そこで衆院解散に打って出る。こういう話ではないか。
 これから先の政治課題を考えると、原発再稼働とか集団的自衛権行使の法制化とか重たい話ばかりである。それも内閣支持率が上がる方向ではなく、どちらかといえば下がる方向の話だ。11月16日には厳しい戦いと伝えられる沖縄県知事選もある。明るい話はサプライズの増税先送りくらいなのだ。(略)
 11月17日は先負、19日は大安、12月の日曜日はというと、7日が先勝、14日は友引、21日は先負、28日は大安である。となると増税凍結法案を成立させた後、11月19日の大安で解散、12月14日の友引あたりが投票日か。28日もありうるが、まさに年末で忙しい。14日なら、ぎりぎり来年度の予算編成作業にも間に合うだろう」と。
 
 多くのメディアや政治評論家は、今回の総選挙は大義名分がなく、安倍首相の自己都合による選挙だという。だが、上記の長谷川氏の観測を踏まえると、「増税先送りとデフレ脱却の優先」について、国民の信を問う選挙となるだろう。自民党は、2年前の総選挙で、来年10月の消費増税を公約に掲げていたから、その公約を変える以上、選挙で民意を問うことは、総選挙の大義となり得る。安倍首相は、民主主義の基本として筋を通そうと考えているわけである。
 長谷川氏は、『現代ビジネス』11月14日号で、次のように言う。
 「なぜ安倍政権は増税を止めようとしているのか。これが政局の出発点である。それは景気が悪いからだ。景気が悪いのに増税すれば、景気は一層、悪くなる。それで法人税をはじめ税収が減る。すると、せっかく増税しても肝心の税収が増えず、財政再建という本来の目標は達成できない。それどころか、政権の大目標であるデフレ脱却も遠のいてしまう。だから増税先送りなのである」
 「いくら首相でも法律で決まっている増税を『私はやめます』と言ってみたって、凍結法案を可決成立させなければ、増税は止まらない。しかも、そもそも増税を決めたのは自民党を含めた3党合意だった。だから解散なのだ。3党合意で決めた増税を安倍政権がチャラにするために、あらためて国民の声を聞く。(略)いまの自民・公明連立政権は3党合意による増税路線を訴えて前回総選挙で勝った。同じ連立政権が増税路線を修正するなら、もう一度、国民の声を聞かなければおかしい」と。
 なお、長谷川氏は、債務賞を批判し、増税による財政再建に反対している。「財務省は国の財政を家計になぞらえて『月収40万円の家計の毎月の借金が35万円』などと危機をあおる。だが、国と家計には決定的な違いがある。(略)国は永遠に続くので、借金が永遠に続いても何も問題はない。問題は借金の規模なのだ。国の大きさに比べて借金が年々膨らみ続けていれば、財政は健全といえない。逆に減っていれば、健全と判断する」(週刊ポスト2012年2月10日号)というのが持論である。財政についてこのような理解を以て、安倍首相の政策判断を観測しているから、上記のような分析をなし得るものと思う。

 安倍首相は、18日自公で過半数を取れなかったら退陣すると公言した。国民は、選挙における選択において、単に経済政策だけでなく、安倍政権がこの2年進めてきた外交・安全保障・教育再建等を含めて、総合的に評価・判断する必要がある。選択肢は、安倍政権か民主党中心の政権しかない。安倍氏を日本の指導者として信任するか、鳩山氏・菅氏・野田氏を継ぐ海江田氏に国を委ねるかの選択になる。
 今回の衆院総選挙について、最も早く予測記事を出したのは、週刊文春である。文春は11月13日号で、「12・14総選挙緊急予測」と題して結果を予測した。「解散の大義名分は消費増税の先送りだ」と書いている。その点が、長谷川氏の見方と一致する。こういう見方をしていたから、早期に予測記事を打ったのだろう。
 その予測内容については、次回書く。
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沖縄に辺野古反対派知事。国民は西南の守りを固めよう

2014-11-17 10:06:55 | 時事
 11月16日の沖縄知事選は、苦戦を伝えられていた現職の仲井真弘多氏が敗れ、前那覇市長の翁長雄志氏が当選した。わが国の国家安全保障及び米・中との国際関係は、沖縄を巡って厳しい事態に直面することになった。
 仲井真氏は、米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設するための政府の埋め立て申請を承認していた。移設予定地は市街地から遠く、騒音や事故の危険性が現状よりずっと小さい。沖縄全体の基地負担を大幅に軽減でき、また米軍の抑止力も維持できるから、現実的な唯一の方法である。自民、次世代は仲井真氏を推薦したが、公明、民主は自主投票という方針だった。翁長氏は辺野古移設反対派であり、保守の一部と共産、社民、過激派等の支持を受けた。「新辺野古基地は絶対に造らせない」と訴え、県外移設を主張している。その主張には、現実性がない。



 今後、政府は計画どおり辺野古移設を推進するだろうが、工期の遅れや反対運動の激化が予想される。だが、国防・外交は国家全体の問題であり、政府の専管事項である。地方自治体の首長や一部勢力の反対で、国民全体の国益が損なわれてはならない。移設が滞ると、2022年度以降とされる米軍基地の返還は実現せず、沖縄県民にとっても、現在の危険な状態が長期的に継続する恐れがある。
 今回の知事選をここ数年の経緯及び直近の状況に照らしてみてみると、まず平成22年9月の尖閣沖中国船衝突事件以後、中国の尖閣諸島への軍事的圧力が高まっている。中国の沖縄への思想的な工作が続けられている。知事選は、そうした中で行われた。また、本年9月から小笠原諸島・伊豆諸島周辺の海域に、中国のサンゴ密漁船が多数出没している状況での選挙だった。中国は11月10~11日APECでの日中首脳会談の開催条件として、尖閣諸島をめぐる領土問題が存在するとわが国に認めさせようとした。そのために、多数の密漁船の来襲を利用したものと見られる。翁長氏に投票した沖縄県民は、こうしたここ数年及び現在の状況をよく把握できていないようである。その最大の原因は、左翼的・親中的に偏向した沖縄のメディアによる意識操作ではないか。

 わが国は、今回改めて直面した厳しい事態において、中国に対し、西南の守りをしっかり固めなければ、ならない。現状は、領海を侵犯してサンゴを密漁する漁船に対してすら、警備が手薄な状態である。



 だが、海上保安庁職員は、その中で懸命な対応をしている。中国サンゴ密漁船に対して、海上保安庁は黙っていなかった。特殊警備隊SSTが出動していたことを、「週刊文春」が伝えている。私は、日本国民として、海保SST出動を支持する。
 人口わずか約2万人程度のパラオ共和国でさえ、平成24年(2012)3月30日、警察が違法操業をしていた中国漁船に対して警告を発し、逃亡を図った中国人を銃撃し1名を射殺している。本年10月10日、韓国海洋警察は、違法操業の中国漁船を取締り、中国人船長を1名射殺した。これが独立主権国家の普通の対応である。
 マスメディアは、下記のことを大いに報道すべきである。

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●週刊文春web

中国サンゴ密漁船に海上保安庁特殊部隊SSTが出動していた!
2014.11.12 18:00

 小笠原諸島周辺の日本領海でサンゴを密漁する中国漁船に対し、海上保安庁の特殊警備隊SSTが出動していたことが、「週刊文春」の取材で明らかになった。



 10月5日早朝に命令を受けたSSTは、大阪基地からヘリコプターで緊急出動。小笠原諸島近海で警備中だった大型巡視船「しきしま」に着艦し、短時間のブリーフィングを受けた後、再度ヘリコプターで出動。密漁を行う中国漁船の真上からロープを伝って降下すると、軽機関拳銃を構えて船内に突入、包丁やモリなどで激しく抵抗する中国漁民を制圧し、横須賀へ連行した。
 1996年に創設されたSSTは、海上保安庁内でも極秘扱いの特殊部隊であり、部隊の編成や装備、隊員の氏名などは一切が非公開。今回の緊急出動についても、海上保安庁からは公表されていない。
 今般のSST出動に関する「週刊文春」の取材に対し、海上保安庁広報室は、「具体的な運用にかかわることについては回答を差し控えさせて頂いております」とした。

 以下略、全文はソースへ
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4544
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 この記事が伝えるのは、10月5日におけるSST出動である。出動を目撃した人の証言が伝えられている。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24903250
 だが、10月5日の後も、中国密漁船は多数来襲している。SSTは継続して出動しているのか。出動していなかったとしたら、政府・国交相が抑えたのかもしれない。平成22年9月7日の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の時は、海上保安官が動画をインターネット上に掲示し、責任を問われた。今回の密漁は、実害において、4年前の事件の比ではない。録画があるはずである。政府は、海上保安官を包丁やモリで攻撃する中国人や、出動した特殊警備隊員の行動など、動画を公開してほしいものである。

 中国サンゴ密漁船の対応は、既に海保には手に負えない状態になっている。海保は、中国によって、尖閣と小笠原の二正面作戦を強いられている。尖閣諸島の領海警備に十数隻の大型巡視船を振り向けているため、小笠原諸島沖に出せる巡視船は限られる。現状わずか4隻の巡視船では、広大な小笠原諸島・伊豆諸島周辺の海域に来る多数の中国密漁船に対応しきれない。このままでは、「宝石サンゴ」とも呼ばれる貴重な赤サンゴは、採り尽くされる。単にサンゴを取られるだけではない。その海域が事実上、中国の領海のようになってしまう。
 中国は、太平洋西部で海洋覇権を確立しようとしている。第一列島線・第二列島線という概念を用いて、対米戦力展開の目標ラインを構築しようとしている。第一列島線は、九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるライン。第二列島線は、伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るラインである。中国海軍は、第二列島線を2020年までに完成させ、2040~2050年までに西太平洋、インド洋で米海軍に対抗できる海軍を建設する計画を進めている。
 中国サンゴ密漁船の来襲をこうした中国の戦略計画に重ね合わせると、漁船団は、第2列島線を攪乱し、米軍の接近阻止・領域拒否を目指した動きと見られる。大量の漁船を使って対象国に揺さぶりをかけるのは、中国の常套手段である。遠洋航海の漁船は中国当局の管理下にある。偽装された漁船に、海上民兵が乗り込んでいる可能性は高い。
 わが国は、戦略的な観点から、海上警備行動を発令すべき時にある。海上警備行動は、海保だけで対応できない場合に、自衛隊が出動して海上での人命・財産保護や治安維持に当たるものである。過去に3度発令されたことがある。海保と海自が機動的に連携して、日本の海を守り、同時に太平洋の平和維持に貢献する体制を整えるべきである。そして、尖閣・沖縄を含む西南の守りを、しっかり固めていかなければならない。

関連掲示
・拙稿「普天間飛行場を辺野古へ~『沖縄県民の会』が署名活動」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/0fbb2810577a6bf94f0d315d2561f598
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人権122~ネイションとエスニック・グループの違い

2014-11-16 09:42:31 | 人権
●ネイションとエスニック・グループの違い

 次に、ネイションとは何か、またネイションとエスニック・グループの違いは何かを検討する。
 アンソニー・スミスは、ネイションを「歴史上の領域、共通の神話と歴史的記憶、大衆的・公的な文化、全構成員に共通の経済、共通の法的権利・義務を共有する、特定の名前のある人間集団」であると定義する。また、エスニック・グループ、彼のいうネイションの原型となったエスニック共同体あるいはエスニーの属性を6つ挙げていた。繰り返しになるが、(1)集団に固有の名前、(2)共通の祖先に関する神話、(3)歴史的記憶の共有、(4)一つまたは複数の際立った集団独自の共通文化の要素、(5)特定の「故国」との心理的結びつき、(6)集団を構成する人口の主な部分に連帯感があることーーである。
 スミスの所論において、ネイションにあってエスニーにない要素、及び逆にネイションにあってエスニーにない要素を見てみよう。
 まずネイションにあってエスニーにない要素は、「歴史上の領域」「全構成員に共通の経済」「共通の法的権利義務」である。このうち、「歴史上の領域」について、スミスは「エスニーの場合は、領域との結びつきが歴史的、象徴的なものに過ぎない可能性があるのに対し、ネイションの場合、この結びつきは物理的、現実的なものとなる。その意味でネイションは領域を持つ」と述べている。これは、ネイションは必ず物理的・現実的な領域を持つが、エスニック・グループの方にも物理的・現実的な領域を持つものがあることを意味する。共同体、部族国家、部族連合国家、前近代的な国家・帝国等がそれである。スミスは「エスニック国家」という用語も使っており、これは国家であるから当然、領域を持つ。エスニック共同体がエスニック国家となり、エスニック国家がネイションの国家、すなわち国民国家となる場合には、もともと統治する領域が継承されていく。次に、「全構成員に共通の経済」「共通の法的権利・義務」については、エスニック・グループにも、その集団における経済活動があり、また法的な権利と義務の固有の体系がある。
 逆にエスニーにあってネイションにない要素は、「特定の『故国』との心理的結びつき」「連帯感」である。「特定の『故国』との心理的結びつき」については、ネイションにも過去の国家や帝国の復活を目指すものがある。「連帯感」については、構成員の間にまったく連帯感が存在しないネイションは考えにくい。
 このように考察すると、上記のスミスの所論では、ネイションとエスニーの違いが明確にはなっていないことが分かる。むしろ、私が注目するのは、上記の所論とは別に、スミスがエスニック共同体を「文化的な共同体」とし、ネイションを「文化的かつ政治的な共同体」とする点である。ここにこそ、これらの違いが浮かび上がる。
 先に書いたように、私は、エスニック・グループを単なる文化共同体ではなく、文化的かつ政治的な共同体と捉える。多くのエスニック共同体には、族長・首長・国王等がいて政治権力を所有し、一定の制度や慣習のもとに統治が行われている。領域の境界線は近代国家の国境のように明確ではないが、共同体は一定の空間に居住・占住するか、空間を専用的に利用する。動物におけるなわばり(テリトリー)に比せられる。エスニック国家は当然、国家ゆえに政治的である。ただし、領域は明確ではなく、そこにおける統治権は限定的である。一方、ネイションは統治領域が国境で区切られて明確であり、また主権としての政治権力を持つ。それゆえ、ネイションとエスニック・グループとの違いは、文化的か政治的かにあるのではなく、後者の場合、統治権は西洋の国際社会で各領域内の最高統治権とされる主権とは認められていないことである。この一点にこそ、ネイションとエスニック・グループの最も重要な違いがある。
 ただし、主権の観念は統治権のあり方を表すに過ぎない。主権とはまず教皇権、皇帝権に対する主権であり、最初は国王権だった。国王の主権は、また他の国王や封建領主に対する主権だった。一定の領域内で最高の統治権であり、実力を独占した組織の持つ権力である。ウェストファリア体制以前の国家は、エスニックな国家だったが、国王や封建領主は領域の人民を統治し、領域を支配したり課税や使役を行ったりするための政府または統治機構を持っていた。すでに14、15世紀から近代的な専門的官僚制が発達し、また軍隊を保有していた。ウェストファリア体制になった時点で、ドイツにおける約300のすべての諸侯国の主権が保障された。この条約に西欧の66カ国が調印し、それらの諸国の国王の主権が制度的に認められた。エスニック共同体及びエスニック国家の持つ統治権と、ネイションの国家の持つ主権との違いは、法制度上の観念の違いである。
 ネイションについては、エスニック・グループのうち主権国家の建設を目指す集団をネイションと呼ぶ説と、主権国家を建設して国民となった集団をネイションと呼ぶ説がある。前者の考えの場合、国民には別の概念が必要になる。しばしばこれが「ピープル(people)」とされるが、ピープルは国民以外に、「人民」「民衆」「住民」等に使う言葉なので、一義的に国民すなわち国家の総構成員、国籍保有者の総体に特定することはできない。私は、後者の考えを取る。主権国家建設を目指しているが、独自の政府や主権によって統治する領域を持っていない集団は、ネイションではない。エスニック・グループであると区別する。
 ネイションを目指すエスニック・グループは、他の主権国家に対抗し得る統治権を得ようとする。すなわち主権の獲得を目指す。近代的な主権としての統治権の獲得を目指す点が、前近代的なエスニック・グループと異なる。
 エスニック・グループが主権を持つ政府を樹立した時点で、その国家の所属員の集団をネイションという。ネイションは、主権を行使する独自の政府を持つ人間集団である。政府を樹立する前の集団は、ネイションではなく、ネイションを目指すエスニック・グループと区別すべきだろう。

 次回に続く。
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