ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

韓国がベトナム戦争で慰安所を経営

2015-04-30 10:08:35 | 国際関係
 韓国では、朝鮮戦争時代、韓国軍は慰安婦を組織し、朝鮮戦争後は政府が売春業を主導した。このことは、韓国慶南大学の客員教授・キム・ギオク(金貴玉)氏が明らかにしており、米軍慰安婦について、国会の委員会で議員が朴正煕元大統領署名の公文書を提示して質問している。韓国政府は慰安婦たちを直接管理し、米軍相手に性労働をさせ、ドルを稼がせていた。このことは、拙稿「戦後韓国の慰安婦制度こそ、真の国際人権問題」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12s.htm
 また、ク・スジョン氏は、ベトナム戦争に参戦した韓国軍による大虐殺や現地婦女子への性的暴行を報告している。強姦されたり売春婦にされたりした女性が産んだ「ライダイハン」と呼ばれる混血児が大きな社会問題になっている。このことは、拙稿「韓国が認めないベトナムでの残虐非道」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12t.htm
 韓国では、政府が直接経営し、慰安婦を管理する施設を持っていたのだから、韓国軍兵士が30万人も派兵されたベトナム戦争においても、現地で慰安所を開設していただろうことが容易に想像される。そのことを伝える証言は多数あった。
 このたび決定的な証拠となる文書が米国で発見された。TBSの山口敬之ワシントン支局長(当時)が発見したもので、週刊文春(4月2日号)に発表された。
 この文書は米軍からベトナム駐留韓国軍最高司令官、蔡命新将軍に宛てたもので、1969年ごろの通報と見られる。韓国陸軍幹部らによる米紙幣や米軍票などの不正操作事件を説明した文書で、調査対象の一つとして「トルコ風呂」が登場する。米軍は、これを「韓国軍による韓国兵専用の福祉センター(Welfare Center=慰安所)」と断定した。また、その証拠として韓国軍のスー・ユンウォン大佐の署名入りの書類を挙げた。ベトナム人女性が売春婦とされていた。
 韓国軍がベトナムで慰安所経営に関与していたことが、公文書として確認されたのは初めてである。旧日本軍の慰安婦を問題としてきた韓国に、大きな衝撃を与えている。
 この文書については、ZAKZAK3月31日付が詳しく書いている。その記事を以下に掲載する。

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●ZAKZAK 平成27年3月31日

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150331/frn1503311140001-n1.htm

朴政権に衝撃「ベトナムに韓国軍慰安所」 TBS支局長『文春』でスクープ執筆

 韓国に炸裂した、超ド級スクープの展開が注目されている。26日発売の『週刊文春』が、米国の公文書などから、韓国軍がベトナム戦争中にサイゴン(現ホーチミン)に「慰安所」を設けていた証拠を発見したとリポートしているのだが、朴槿恵(パク・クネ)大統領や韓国政府、韓国メディアが目立った反応をしていないのだ。絶妙のタイミングで発表された、米紙による安倍晋三首相のインタビュー。韓国は「慰安婦=日本の性奴隷」という事実無根の誹謗中傷を流しているが、どう抗弁するのか。
 「このリポートは、慰安婦問題の大きな突破口になる可能性がある」
 慰安婦問題を徹底追及してきた、拓殖大学の藤岡信勝客員教授はこう語る。その解説は後述するとして、衝撃リポートの概要は以下の通りだ。
 筆者は、TBSワシントン支局長の山口敬之氏。赴任直前の2013年、外交関係者から「韓国軍がベトナムで慰安所を経営していた情報がある」と聞き、赴任後、ワシントン市内などの公文書館や、各地の米軍基地付属の図書館や資料館を訪ねて、関連する文書を精査したという。
 結果、サイゴン市の米軍司令部から、同市の韓国軍司令部に送られた書簡に、以下のような記述があったことが判明した。
 《(同市中心部の「トルコ風呂」という施設で)売春行為が行われていて、ベトナム人女性が働かされている》《この施設は、韓国軍による、韓国兵専用の慰安所である》
 米軍側は書簡で、韓国軍の施設と断定した根拠として、韓国軍大佐の署名入り書類に「韓国軍による韓国兵専用の慰安所である」と示されていたことなどを挙げていたという。
さらに、山口支局長は、ベトナム戦争を戦った元米軍海兵隊幹部へのインタビューの結果、(1)韓国軍の慰安所は確かにサイゴン市にあった(2)サイゴン市内にはさらに大きい別の慰安所もあった(3)これらの施設は内部が多くのブロックに分かれていて、1区画に20人前後のベトナム人女性が働かされていた-などの証言を得たとしている。
 まさに、足で稼いだ歴史的スクープといえる。
 韓国は、現在の朴大統領の父、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代の1964年、ベトナム戦争に参戦。73年までの8年間で、延べ約32万人を派兵した。「最精鋭部隊を投入した」と伝えられてきたが、北岡正敏、俊明兄弟が現地調査のうえで執筆した『韓国の大量虐殺事件を告発する-ベトナム戦争「参戦韓国軍」の真実』(展転社)は、膨大な民間人虐殺やレイプが行われたと指摘している。
 さらに、文春のリポートのようにベトナム人女性の慰安所まで設置していたとなると、韓国軍の本質・姿勢が問われることになる。慰安婦がどういう経緯で慰安所に連れてこられたのか、給料などが支払われていたのかなどは不明で、今後の取材・調査が注目される。
 朝日新聞が大誤報を認めたことで、日本の慰安婦問題の核心である「強制連行=性奴隷」は崩壊した。だが、朴大統領は「(慰安婦問題は)必ず解決すべき歴史的課題だ」などと、筋違いな要求を日本側に突きつけ続けている。
 今回のリポートが、慰安婦問題に与える影響について、前出の藤岡氏は次のように指摘する。
 「韓国軍は朝鮮戦争の際、性的サービス提供を業務とする女性部隊を編成していたとされ、ベトナムに軍直営慰安所を設けていたとしても、まったく不思議ではない。慰安婦問題をめぐり、朴大統領は日本政府に筋違いの要求を繰り返しているが、これで日本を非難する道理は完全になくなった。まずは、自国軍による他国の女性への人権侵害の実態を徹底調査すべきだ」
 『ディス・イズ・コリア』(産経新聞出版)がベストセラーになっているジャーナリストの室谷克実氏も「意義あるリポートだ。米国の公文書から発覚したのだから、韓国も言い逃れできないはずだ」と強調する。
 くしくも、文春報道の翌27日、米紙ワシントン・ポストは、安倍首相のインタビュー記事を掲載した。
 同紙によると、安倍首相は、慰安婦が「人身売買(ヒューマン・トラフィッキング)の犠牲となり、筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験されたことを思うと、心が痛む」と発言。さらに、「女性の人権が侵害された」「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」と語ったという。
 「人身売買」という表現を使った理由について、政府高官は「特別な意味はない」としながら、「人身売買には日本語の意味として強制連行は含まれない」と指摘している。米軍が1944年10月、ビルマ(現ミャンマー)で朝鮮人慰安婦20人を尋問した調書でも、「慰安婦は強制ではなく雇用されていた」と記されている。
 なぜ、TBS記者による衝撃スクープが、同局で報道されず、他社の媒体に掲載されたのか。夕刊フジの取材に対し、TBSは「社内のやり取りについては、従来よりお答えしておりません」と文書で回答した。

●週刊文春

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150402-00004979-sbunshun-int
「韓国軍慰安所」 山口レポートが米に広げた波紋
週刊文春 4月2日(木)18時1分配信

 TBSワシントン支局長・山口敬之氏による本誌前号の調査報道「韓国軍にベトナム人慰安婦がいた!」が、ワシントンのアメリカ政府当局者やアジア専門家たちの間で波紋を広げている。
 3月26日の国務省記者会見で「米国立公文書館の文書がベトナム駐留の韓国軍が売春宿を運営していたことを証したという日本からの報道を知っているか」という質問が出た。ラトケ報道官は「知っている」と答えた。「この事例は人身売買だが、調査する意図はないか」「この問題で韓国政府と協議するか」などという関連質問も出た。報道官は確かな答えは与えなかったが、「韓国軍の慰安婦問題」が米側の国政の場で知られる結果となったのは確かだ。
 さらに、本誌報道は同26日、ワシントンのアジア関連ニュースレターの「ネルソン・リポート」でもほぼ全文の英訳が掲載された。同リポートは民主党リベラル派の活動家、クリス・ネルソン氏がアジアのニュースや評論を流すネット・サービスで、米側のアジア問題関係者らが購読し、投稿する。歴史問題では中韓両国の主張を優先して、日本を糾弾することが多い。
 そんな「ネルソン・リポート」が山口氏の調査報道を全文掲載したのは、その重みゆえだろう。ネルソン氏はこの報道が事実ならば「韓国側の偽善や二重基準が証される」と述べたが、同時に「この報道で日韓の歴史戦争はより醜くなる」とも記している。
 これに対して翌27日、慰安婦問題での長年の日本叩きで知られるコネチカット大学のアレクシス・ダデン教授が同リポートに「韓国も同じことをしていたという主張は日本の悪事を帳消しにはしない」という意見を寄せてきた。同教授は同リポートが本誌報道を紹介することがそもそもおかしいとも示唆していた。
 ダデン女史は安倍首相を「悪漢」とののしり、菅官房長官の言辞を「ペテン」と呼ぶほどの反日だ。今年1月には米紙「ニューヨーク・タイムズ」に「尖閣諸島も竹島も北方領土も国際的には日本の領土ではなく、安倍政権がその領有権を主張するのは危険な膨張主義」とまで書いている。そんな人物をたじたじとさせただけでも山口氏の調査報道の意義は大きいといえよう。
<週刊文春2015年4月9日号『THIS WEEK 国際』より>
古森 義久(在米ジャーナリスト)
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 さて、山口氏は、歴史的な大スクープをしたのだが、TBSは山口氏を15日間の出席停止処分とし、4月23日付でTBSワシントン支局長の任を解き、営業局ローカルタイム営業部への異動を命じた。山口氏は、フェイスブックに「この異動と懲戒処分に際しては、私の週刊文春への寄稿内容ではなく、寄稿に至る手続きが問題とされました。見解の相違はありますが、今回の懲戒処分がTBSの報道姿勢に直接リンクするものではない事は、ご理解をいただけたらと思います」と書いている。
 だが、ローカルタイム営業部とは関東ローカルの番組を扱う部署とのことゆえ、報道の第一線で活躍していた海外支局長を配属するのは、明らかに左遷である。TBSは在日韓国人を多く採用し、それらの社員が管理職に多く就いていると伝えられる。韓国寄りのTBSの報道姿勢では報道できない重大な事実を敢然と別の媒体で発表した山口氏に対し、記者の立場から外して営業職に移すことで、TBSは同社の記者として報道することをできなくしたのだろう。
 4月28日、訪米した安倍総理はオバマ大統領と歴史的な日米首脳会談を行った。山口氏は、翌29日フェイスブックに次のように書いた。
 「2001年の第一次小泉内閣発足以降、私は全ての日米首脳会談を何らかの形で取材し、原稿を書き、解説をして来ました。今回も、戦後70周年という節目の年に行われる歴史的首脳会談をどう伝えるか、ワシントン支局長として半年前から様々な準備を進めていました。ところが、記者廃業を宣告された今、このニュースをテレビで見ています。包丁なくした料理人。カメラを盗られたカメラマン。ペンを折られたジャーナリスト。こういう状況に置かれた時に、何を考えどう行動するか。何と闘い誰を赦すか。じっくり考えてます」と。

 「記者廃業を宣告された」「ペンを折られたジャーナリスト」――山口氏は、こう書いている。それが配属転換の意味である。
 山口氏には、これにめげずに、今後もジャーナリストとして活躍できる道に進んでほしいものである。

拉致問題:4・26「最終決戦のとき、不退転の決意で全員救出を!」国民大集会

2015-04-29 09:34:18 | 国際関係
 4月26日、「最終決戦のとき、不退転の決意で全員救出を!」国民大集会を日比谷公会堂が開催された。日米首脳会談に臨む訪米前の安倍総理が、羽田に政府専用機を待機させ、会場に駆けつけてあいさつし、全員救出の決意を語った。
 集会の模様は、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」のサイトに、録画が掲載されている。
http://www.sukuukai.jp/
 14:11から安倍総理のあいさつが、約6分収録されている。

 当日の参加者全員で採択した決議を以下に掲載する。
http://www.sukuukai.jp/mailnews/item_4699.html

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決 議 

 本日私たちは「最終決戦のとき!不退転の決意で全員救出を!国民大集会」を開催した。昨年私たちは、再開された日朝協議で全ての拉致被害者の帰還が実現することを願い、「今年こそ結果を!」との運動方針で必死の運動を展開した。しかし、今に至るも、一人の被害者の帰還も実現していない。結果が出ていない。心の底からの強い怒りを感じる。

 拉致被害者は厳格な管理下に置かれているから、あらためて調査など必要はない。金正恩に全員帰還させるという決断をさせれば問題は解決する。昨年の日朝協議は、その決断の確認なしに合意を結び、制裁の一部を解除したという欠陥があった。そのため、ずるずると時間稼ぎを許してしまった。
 ただし、北朝鮮が制裁と国際連携の圧力で外貨枯渇と国際孤立に追い込まれ、日本に接近をせざるを得なくなったことは、解決に向けた足がかりと言える。制裁が効果を上げた結果、北朝鮮の外貨枯渇は深刻化し、苦し紛れの朝鮮総連を使った松茸不正輸出も摘発された。国連総会は拉致を含む北朝鮮の人権侵害を「人道に対する罪」と認め、責任者の刑事訴追を求める決議案を圧倒的多数で可決した。
 今年に入り北朝鮮は、拉致以外の調査報告を伝達したいと言ってきたが、政府は拉致最優先の原則を守り、それを拒否した。そこで彼らは「政府間対話が出来なくなっている」と脅してきたが、わが国は「拉致問題を解決しないと北朝鮮は未来を描くことが困難だと認識させる」と答えて、それをしりぞけた。
 生きている人を再び「死亡」などとウソの通報をすることは許されない、全ての拉致被害者を返せ、それ以外にどのような報告書を出してきても、制裁解除や人道支援などは絶対あり得ない、と北朝鮮の指導部に明確に伝えなければならない。
私たちは次のことを強く求める。

1.北朝鮮は、拉致以外の調査結果を先に出すことや、再度死亡通告するなど姑息な時間稼ぎを止め、全ての拉致被害者をすぐに返せ。
2.政府は犯人との被害者救出交渉だという原則を守り、最優先で全ての被害者を取り戻せ。全ての被害者の帰還まで制裁緩和や人道支援をしないと北朝鮮にはっきり伝えよ。
3.国際社会は拉致を含む北朝鮮人権侵害問題の解決のため具体的に行動せよ。

平成27年4月26日
「最終決戦のとき!不退転の決意で全員救出を!国民大集会」参加者一同
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関連掲示
・拙稿「北朝鮮による拉致とは何か」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08e.htm#_top
・拙稿「北朝鮮が拉致再調査でまた約束破り」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/5debe16efa02b7cbe6b1d796ce564d14
・拙稿「北朝鮮『人権侵害』批判を金正恩批判へ」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/c1725fc1a31bb73e3c4575dc8069f217

4・28政府主催の主権回復記念式典の再開を

2015-04-27 08:53:30 | 時事
 わが国は、敗戦後、約6年8か月という現代世界史上、異例に長い占領期間を経て、昭和27年(1952)4月28日、晴れて独立を回復した。この4月28日を「主権回復記念日」にしようという運動が、平成9年から続けられている。今年でまる18年になる。
 この運動の発起人は拓殖大学名誉教授の井尻千男(かずお)氏、東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏、明治大学名誉教授の入江隆則氏の三氏である。私は、この運動を知った平成11年より微力ながら国民同胞の啓発に努めてきた賛同者の一人である。
 主権回復記念日運動は、年々賛同者が増えてきた。賛同の輪は、国会議員の間にも広がり、平成23年8月、自民党の「4月28日を主権回復記念日にする議員連盟」(野田毅会長)は、4月28日を祝日にする祝日法改正案を衆院に提出し、サンフランシスコ講和条約発効60周年にあたる24年からの施行を目指したが、これは実現しなかった。その後、まずは式典を定例化することから始めようという取り組みがされ、25年4月28日に政府は「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を開催した。式典は天皇・皇后両陛下がご出席され、ご退出の際には聖寿万歳の三唱がされた。これは昭和27年当年の催しから60年の空白を置いて初めての開催だった。
 この一昨年の政府主催「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」は、この年限りの開催の予定だと伝えられた。昨平成26年は、政府による記念式典第2回は開催されなかった。そのため、60年目の年にできなかったことを、1年遅れで行っただけということとなっている。本年も政府主催の記念式典は行われない。
 だが、そもそも4月28日の重要性を啓発する運動の目的は、この日を「主権回復記念日」にし、また国民の祝日にして、毎年意義ある行事や活動をしようというところにある。その主旨を再度確認し、政府主催の式典を再開し、祝日化を推進すべきである。
 小堀氏らが「主幹回復記念日」を提唱した当時の呼びかけ文によると、昭和20年8月15日は終戦の日ではない。その日に終わったとされるのは、彼我の間の戦闘状態にすぎない。「法的現実としての真の終戦の日は、軍事占領から完全に解放された昭和27年4月28日である」。4月28日は、わが国とその敵国であった連合国との間に結ばれた平和条約が効力を発生した日付である。「従って国際法的に本来の意味での大東亜戦争終戦の日である」。また同時に、「それまで旧敵国支配下の被占領国であった我が国が晴れて独立自存の国家主権の回復を認められた日付」である。「その日、我が国は、連合国による被占領状態が解消し、国家主権を回復した」のである。
 ところが、日本国民は、わが国の終戦手続き中の最重要案件であった国家主権の回復を、それにふさわしく認識し自覚しなかった。そして、この重要な日を然るべく記念することをせずに、「歴史的記念の日の日付」を「忘却」している。そして、「毎年8月15日のめぐり来るたびに、東京裁判の判決趣旨そのままに、過ぐる戦争への反省と謝罪を口にし、5月3日ともなれば占領軍即席の占領基本法たる1946年憲法への恭順を誓う」。こういうことを繰り返している。そのため、政府も国民も、ますます主権国家としての認識を欠き、主権意識の自覚を欠いている。それは、講和条約の締結によって、被占領状態が終ると共に、戦後処理は基本的に終結したという認識を欠くためである。
 それゆえ、小堀氏らによると、国民が記念すべき日は8月15日ではなく、4月28日である。8月15日は、敗戦による戦闘状態の終結と軍事占領時代の開始の日である。これに対し、4月28日は、連合国との講和条約が発効し、被占領状態の終結と独立の国家主権の回復の日だからである。そして、氏等は、「主権意識の再生と高揚」を推し進め、4月28日を、アメリカにおける独立記念日に当たるような国家的な記念日に制定しようと唱えているのである。
 私は、主権回復記念日運動を進める方々が、主権とその回復の重要性を指摘していることには、異論がない。ただし、名称と意義付けは、今のままでは一部の人には混乱を与え、多くの人には中途半端な印象を与えると思う。昭和27年4月28日における「国家主権の回復」とは、部分的限定的回復に過ぎない。この日は、そこから全面的回復に向かうためのスタートとなった日であって、それ以上ではない。
 憲法を改正して自主憲法を制定すること、自力で自国の国防を行う国軍を持つこと、不法占拠されている領土を回復すること。これらを成し遂げてはじめて、「国家主権の確立」と言える。4月28日は主権の回復をし終えたことを記念する日ではなく、主権の部分的回復を祝うとともに、主権の全面的回復という課題を確認し、主権の確立を決意する日とすべきと思う。一昨年の政府主催の式典を一回だけに終わらせず、4月28日の意義を国民に知らしめ、国民の祝日である国家的な記念日とする運動を推進すべきである。
 今月23日主権回復記念日運動の提唱者の一人、小堀桂一郎氏が産経新聞の「正論」に、主権回復記念日運動に関する寄稿をした。参考に転載する。

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●産経新聞 平成27年4月23日

http://www.sankei.com/column/news/150423/clm1504230001-n1.html
2015.4.23 05:02更新
【正論】
国家主権意識の真の再生を願う 東京大学名誉教授・小堀桂一郎

 大東亜戦争停戦から70年の記念年である本年は、本紙の紙面で見ても、年頭から何かとその記念的意味が話題となつてをり、歴史的回顧とその再検討を試みる諸種の企画の充実ぶりに、国民一般の現代史への関心の深さが窺(うかが)はれる。
 あの戦争の国際法上の真の意味での終戦であつた昭和27年4月28日の対連合国平和条約発効の日から数へるならば、米軍による軍事占領から我が国が解放されてより63年が経過し、やがて数日後にその記念日を迎へることになる。

《主権回復記念日の意義広め》
 一昨年、平成25年のこの記念日には、政府は自らの主唱により、「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を憲政記念館で開催、天皇・皇后両陛下の臨御を仰いで盛大な祝典を挙行した。これは昭和27年当年の催しから60年の空白を置いて初めての開催であり、この記念日の意味を重視する民間有志一統は、政府のこの壮挙を深く多としたものであつた。
 然(しか)しながら昨平成26年には、一統の期待に背いて、政府による記念式典第2回の開催といふことはなく、この日の歴史的意義を広く国民に想起してもらふべき記念集会の開催は、再び民間の一任意団体たる「主権回復記念日国民集会実行委員会」のみに委ねられた形で了(おわ)つてしまつた。
 それのみならず、平成23年8月には、自民党の若手議員達が中核となつて結成した「4月28日を主権回復記念日にする議員連盟」が、祝日法の一部改正といふ形を以てこの記念日の法制化を議会に提案する、といふ具体的な動きまで見えてゐたものであつたが、いつかその動きは影が薄くなり、聲(こえ)も細くなつてしまつた様である。
 もちろんこの記念日の法制化は既に度々述べたことだが、一つの方便に過ぎず、之を以て目指してゐる本来の目標は、独立主権国家の尊厳といふ意識の確立であり、それは現政権が最大の政策目標として掲げてゐる「戦後体制からの脱却・日本を取り戻す」といふ国民運動の思想的大前提である。

《拉致問題解決に欠かせぬ視点》
 現に国際関係の上での多事多難の状況に迫られながら、国内に於(お)いては、自主憲法の制定といふ正に70年来の国家的懸案をここ2年ほどの内には実現したいとの要請が急速に高まりつつある。この目標達成のためには、右に言ふ大前提としての国家主権の確立といふ理念が国民の意思統一の核として共有されてゐなければならない。
 更に、これも全国民にとつての焦眉の課題である、被拉致同胞を一人残らず救出・奪還するための北朝鮮との交渉について思ひを及ぼしてみよう。元来我が国の領海領土内に不法に侵入し、無辜(むこ)の住民を暴力沙汰を以て誘拐するといふ行為自体が、人権の蹂躙(じゅうりん)であると同時に、重大なる国家主権への侵害である。従来我が国の当路者の間には、被害者の個人的不運と不幸といふ観点が先に立つて、国家主権への侵害といふ厳しい認識が欠けてゐた如(ごと)くである。
 この意味での事態の重大性への認識が不十分である時、我が不運なる被拉致同胞に向けられてゐる国際社会の同情と支援の気運にすらも、当事者たる日本国政府が不熱心でゐるとの不利な印象を与へかねない。この問題については、人道問題であるより以前に、国家主権の侵害事例として重大視する視点が是非必要である。

《教科書にみた改善の希望》
 国民の主権意識の向上については、明るい展望がないわけでもない。それは去る4月7日の紙面が報じてゐる、来年から使用される中学校教科書の検定結果についての報告である。地理・歴史・公民の各教科書に於いて、島根県の竹島、沖縄県の尖閣諸島が我が国固有の領土である、との歴史的・学問的に「正しい」記述が倍増し、ほぼ全点が偏向記述の是正に向けて舵を切つたと言ふ。自衛隊の災害派遣及び国際貢献についても、それが高い評価を受けてゐる現実を記述し、更には又従来とかく軽視されてゐた皇室の御動静、例へば災害地へのお見舞ひ等、国民との交流の在り方についての記述も充実してきてゐる由である。
 筆者は未だ現物を披見する機会を得てゐないが、教科書が皇室の行事等の叙述に敬称・敬語を以てすべきことを基礎的知識として教へておくならば、それだけでもそれは既に道徳教育の初歩たり得ると考へてゐる。その点でも今回確認された改善の方向には希望が持てると思ふ。
 以上、中学校教科書の是正が成りつつあるとの報道に接して気がついたのは「やればできる」の俚諺(りげん)の含む妙味である。
 国民一般に於ける国家主権意識の十全なる復活・再生は、眼に映る現象としては未だならずの感を否めない。然し、長い間極めて困難と思はれてゐた初等・中等教科書の偏向是正がどうやら緒に就いたと見える頃日、例へば靖國神社の存在と性格についての多年の誤解と偏見を払拭することも決して不可能ではない。いはゆる歴史戦を戦ひ抜くための条件作りも、辛抱強く続けてゆけばやがては黎明(れいめい)を迎へることができるであらう。(こぼり けいいちろう)
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人権145~西と東のナショナリズム

2015-04-26 08:47:27 | 人権
●西/東とシビック/エスニックという分け方
 
 次にナショナリズムの類型について述べる。はじめに代表的な論者の類型論を検討し、その後に私の所論を提示する。
 ナショナリズムの先駆的な研究をした歴史学者のハンス・コーンは、ナショナリズムを「西(West)のナショナリズム」と「東(East)のナショナリズム」に分けた。
 コーンの「西」は、イギリス、アメリカ、フランス、オランダ、スイス等の西欧世界を意味し、「東」はドイツを含む東欧、中欧、アジア等の西欧以外の世界を意味する。
 コーンによると、西のナショナリズムは、17世紀イギリスのピューリタン革命で始まったもので、個人の自由を尊重し、また合理的である。それが、フランスの1789年市民革命と1848年二月革命を通じて、東欧、中欧に波及した。東のナショナリズムは、個人の尊厳よりも集団の権力を強調し、また非合理的である。西のナショナリズムは市民階級による政治的運動として始まったが、東のナショナリズムは学者や詩人による文化的運動として始まった。ドイツを含む東欧、中欧では、市民階級がまだ成長しておらず、政治的発言力が弱かったからである。
 このように説いたコーンの西/東という分類は、コーンに続く研究者に強い影響を与えた。ナショナリズム論の論者の多くは、この分類を継承している。私は、西/東という地理的な名称による分け方は、空間的でわかりやすいが、西/東の分岐点がはっきりしないし、特徴を端的に示していない弱点があると思う。
 アンソニー・スミスは、西/東という分類に別の要素を加えている。スミスは、ネイションを「市民的・領域的なネイション」と「エスニック・系譜的ネイション」に分ける。「市民的・領域的なネイション・モデル」は「西欧型」ともいう。この型は、「ある種のナショナリズム運動」すなわち「独立以前における反植民地運動、独立以後における統合運動」を生み出す傾向があるとする。他方、「エスニック・系譜的なネイション・モデル」は、ドイツを中心とした「東欧型」ともいう。この型は、「独立以前は分離主義的あるいはディアスポラ的な運動」、「独立以後は領土回復主義あるいは『汎』運動」を生み出す傾向があるとする。スミスは、この「類型論」によって「多くのナショナリズムの基本的論理が捉えられる」と述べている。
 スミスは、こうしたネイションの類型論をもとに、ナショナリズムの分類を行い、ナショナリズムを「領域的ナショナリズム」と「エスニック・ナショナリズム」に分ける。「領域的ナショナリズム」は、「市民的・領域的ネイション」に対応する。「エスニック・ナショナリズム」は「エスニック・系譜的なネイション」に対応する。
 スミスは、これらについて独立以前、独立以後という分け方をしているので、その主旨を示すと、スミスは、領域的ナショナリズムの独立以前の型として、反植民地型ナショナリズムを挙げる。「まず外国の統治者を追放し、ついで旧植民地を新しいステート・ネイションに置き換えようとする」ものである。独立以後の型としては、統合型ナショナリズムを挙げる。「しばしば異なるエスニック集団を結合して新しい政治共同体に統合し、また旧植民地国家から新しい「領域的ネイション」を作り出そうとする」ものである。
 スミスの領域的なナショナリズムとエスニックなナショナリズムという分け方は、地理的な西/東と異なり、思想・運動の特徴を表現できている。ただし、前者はシビック(市民的)なナショナリズムと呼んだ方が、性格の対比が明瞭になる。そこでこれをシビックなナショナリズムとすると、シビック/エスニックという対になる。私見を述べるため、家族型の理論を加えると、自由至上の価値観を持つ絶対核家族のイギリス、アメリカと、自由・平等の価値観を持つ平等主義核家族のフランスは、自由を価値とする個人主義が強く、これをシビックなナショナリズムと見ることができる。これに対し、権利・不平等の価値観を持つ直系家族のドイツ、日本、権威・平等の価値観を持つ共同体家族のロシアでは、権威を価値とする集団主義が強く、これをエスニックなナショナリズムと見ることができる。
 次に、スミスは、エスニック・ナショナリズムには、独立以前の型として、分離型とディアスポラ型があるとする。これらは「より大きな政治的単位から分離し、あるいは分離したうえで指定されたエスニックの故国に結集し、その場に新しい政治的『エスノ・ネイション』を創設する」ものだという。「エスノ・ネイション」は、エスニックなネイションを一語にしたものである。スミスは、独立以後の型には、民族回復型と「汎」型のナショナリズムがあるとする。これらは「『エスノ・ネイション』の現在の境界線の外側にいるエスニックの『同族者』と彼らが居住する土地を包含したり、また文化的にもエスニック的にも近似性の高いエスノ・ナショナル諸国の連合を通じて、さらにもっと大きな一つの『エスノ・ナショナル』国家を形成することによって拡張しようとする」ものだという。このうち、スミスのいう「汎」型として、汎ゲルマン主義や汎スラブ主義、汎アメリカ主義等が挙げられよう。

 次回に続く。

AIIB「悪い高利貸」から借りると未来を失う、と安倍総理

2015-04-24 08:54:43 | 経済
 4月21日付の日本経済新聞によると、安倍晋三首相は20日のBSフジ番組で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を「悪い高利貸からお金を借りた企業は、その場しのぎとしても未来を失ってしまう」とけん制した。組織運営を問題視した形で「参加を表明している主要7カ国(G7)も基本的に同じ懸念を持っている」とも指摘したという。
 「悪い高利貸し」とは、AIIBを主導する中国をいうものだろう。私は、3月31日の日記に次のように書いた。
 「中国はADBを補完するためにAIIBをつくるというが、中国はADBから135億ドル(1兆6千億円)もの融資を受けている。これは、ADBの融資資金額の残高25.3%を占める巨額である。わが国は中国に、まず融資金を即刻返済してからにして下さい、と督促請求してはどうか」
 「ADBは低金利融資だが、AIIBは高金利融資である。伝えられるところでは、AIIBから融資を受ける国は、人民元を1年借りて5%、10年物なら年20%の高い利子を払わねばならないようである。ADBの場合は、ドルで1年借りて0.256%、10年物の金利は0.665%である。大手銀行で借りられない者が、消費者金融に手を出すのに似ていないか。我が国の代表的なサラ金は現在、年利4.5%~18%くらいである。年20%の利子を払って人民元を借りてインフラ工事をして、確実に返せる国がどれだけあるだろうか」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/73178800e44adced9844b7f8bb04cd1e
 中国がやろうとしていることは、銀行(ADB)から金を借りて返さず、その金で高利貸し(AIIB)を始めるようなものである。安倍首相は「悪い高利貸」と言った。そして「悪い高利貸からお金を借りた企業は、その場しのぎとしても未来を失ってしまう」と言った。その通りなのである。

 さて、AIIBについては、「バスに乗り遅れるな」とばかりに、日本も早く参加すべきだという人がいる。「バスに乗り遅れるな」という言葉は、戦前の我が国で日独伊三国同盟の推進派が唱えた言葉だ。昭和15年(1940)、ナチス・ドイツがフランスを破って破竹の勢いを見せると、勝ち馬に乗れとばかりに、陸軍等から「バスに乗り遅れるな」という声が高まった。ヒトラーの野望を見破ることが出来ず、バスに乗ったがゆえに、わが国は米英を敵に回してしまった。
 双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏は、AIIBについて「『バスに乗り遅れるな』は論外である。筆者には、いかにも変な所へ連れて行かれそうなバスに見えるのだが」と書いている。
 吉崎氏は、日本がAIIBに飛びつくべきではない道義的な理由として、「開発・援助に対する姿勢が日中ではまるで違っている。今までの方針を簡単に変更していいのだろうか」と述べる。日本はADBの「筆頭株主になり、歴代総裁を送り込んできたが、だからといってその立場を都合よく利用したわけではない」「日本の商社がADBで商売を取ったという話を聞いたことがない。それくらい日本の開発・援助に対する姿勢は公明正大で、狭い意味での「国益」を追求するものではなかった」と吉崎氏は言う。
 また、AIIB参加に慎重になるべき現実的な理由として、「世銀やADBなどの機関は、おしなべて『AAA』(トリプルエー)の格付けを有している」「これに対し、新設のAIIBの格付けがどの程度になるかは分からない。が、約半分を中国が拠出するのだとしたら、常識的に考えて中国のソブリン格付けと同程度になるのであろう。つまり資金調達コストにおいて、ADBなどに対して劣後することになる」と書いている。
 吉崎氏が挙げる道義的な理由も現実的な理由も考えずに、「バスに乗り遅れるな」というような安易な考えで、行き先もわからないようなバスに闇雲に乗るべきではない。
 以下は、吉崎氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成27年4月22日

http://www.sankei.com/column/news/150422/clm1504220001-n1.html
2015.4.22 05:02更新
【正論】
世評と異なるインフラ銀の不安 双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦

 中国主導で設立を目指しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)で、創設メンバー国が57カ国で確定した。3月に英国が参加を表明してから、独仏伊など先進7カ国(G7)の後追いが続き、今や日米を除く多くの主要国が参加を決めている。
 これに対し「日本外交の失敗」という評価や、「中国を孤立させるつもりが、日米が孤立している」などと批判する声がある。だが本当にそうだろうか。国際金融や開発・援助の世界の常識から考えると、世評とはまったく違った景色が浮かび上がってくる。

◆公明正大な日本の開発・援助
 まず、国際開発金融の世界において、中国はカネを借りている側である。世界銀行では第3位、アジア開発銀行(ADB)では第2位の支援対象国である。
 ところが中国は、既に世界第2位の経済大国であって、経済力に見合った発言権を求めている。また習近平国家主席は、「中国の発展の恩恵を周辺国、さらには世界に共有してもらう」とも言っている。ちょっと上から目線なのが気になるが、膨大なアジアのインフラ需要に貢献してもらえるなら結構な話である。4兆ドル近い外貨準備の有効活用にもつながる。
 かつてはわが国も、新幹線や黒部ダムの資金を世銀から借りていた。それらを返済しながら、1966年にADBの設立に貢献した。日本は筆頭株主になり、歴代総裁を送り込んできたが、だからといってその立場を都合よく利用したわけではない。むしろ敗戦国として、突出しないように注意を払ってきた。本部をマニラに置いたのもその表れである。
 ADBでは全加盟国67カ国・地域の意見をバランスよく取り入れて、透明性の高い運営を行ってきた。環境社会配慮なども厳格に行ってきた。おかげで「使い勝手が悪い」と言われることもある。AIIBは、そこを「お手軽モード」にするといわれている。
 ちなみに筆者は商社業界の禄を食(は)んで久しいが、日本の商社がADBで商売を取ったという話を聞いたことがない。それくらい日本の開発・援助に対する姿勢は公明正大で、狭い意味での「国益」を追求するものではなかった。

◆どの程度の信認が得られるか
 AIIBが目指しているのは、こうした既存の国際秩序に対する一種の挑戦である。これから創設メンバー国で、6月末に向けて定款を作るという。立派な国際金融機関になるのか、それとも中国自身を利する道具となるのかは、現時点ではわからない。が、AIIBが国際標準にのっとった「お行儀の善い」銀行になるのだとしたら、中国としては当初の思惑が外れたことになるだろう。
 つまり、開発・援助に対する姿勢が日中ではまるで違っている。今までの方針を簡単に変更していいのだろうか。これがAIIBに日本が飛びつくべきではない道義的な理由である。
 次に、慎重になるべき現実的な理由について述べよう。国際開発金融機関は、参加各国から集めた金をそのまま貸し付けるわけではない。起債して資金を調達し、レバレッジを利かせることで効率を上げる。世銀やADBなどの機関は、おしなべて「AAA」(トリプルエー)の格付けを有している。それだけ市場から高い信認を得ているということだ。
 これに対し、新設のAIIBの格付けがどの程度になるかは分からない。が、約半分を中国が拠出するのだとしたら、常識的に考えて中国のソブリン格付けと同程度になるのであろう。つまり資金調達コストにおいて、ADBなどに対して劣後することになる。
  
◆行き先不明のバスに乗るな
 おそらく中国は、日本やアメリカがAIIBへ参加することを切望していよう。その方が、格付けが向上するからだ。しかし日本政府として、かかる「お付き合い」に巨額の税金を投入するのはいかがなものか。ちなみに初期の出資額は15億ドルと試算されている。
 本件に対し、日米がともに慎重姿勢を示しているのはある意味で自然なことである。日米はともにアジア太平洋地域の大国であり、なおかつブレトンウッズ体制を守ってきた。これに対し、インドや東南アジア諸国は資金を借りる側であるし、欧州諸国は出資比率も少ない「お気楽」な立場である。同列に論じられるものではない。
 最後に、日本が遅れてAIIBに参加する可能性はゼロではない。筆者は4月初旬、自民党の「AIIB勉強会」の講師を務めたが、ここでは安倍晋三首相の指示に基づいて党としての方針を論議している。5月中には提言がまとまり、6月上旬には日中財務対話が予定されているので「滑り込み」のシナリオは残されている。
 仮に4月末の日米首脳会談において、「日米共同でのAIIB参加」という合意ができるようなら、それはそれで一考の余地があろう。
 とはいえ、「バスに乗り遅れるな」は論外である。筆者には、いかにも変な所へ連れて行かれそうなバスに見えるのだが。(よしざき たつひこ)
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関連掲示
・拙稿「中国AIIBの野望と自滅に加わるな」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12X.htm
・拙稿「中国AIIBは日米不参加で資金調達が困難に」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6ab64a953c771f93fb5054882aa0bfd2
・拙稿「中国AIIBの野望と欧州参加国の危うい策略」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/f1b25ec810d2f4c21cc56085fcbab48c

竹島問題:マッカーサー・テレグラムと米国の態度

2015-04-22 09:27:12 | 現代世界史
 テキサス親父ことトニー・マラーノ氏が、2月中旬に来日し、講演や対談、取材対応等を行った。その中でマラーノ氏は、竹島に関して「マッカーサー・テレグラム」について触れた。それがきっかけで、マッカーサー将軍の甥、ダグラス・マッカーサー2世元駐日米国大使が本国に向けて出した秘密電報に改めて注目が集まっている。本件について紹介し、私見を述べる。

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●ZAKZAK 平成27年2月24日付

http://news.livedoor.com/article/detail/9820058/

竹島は日本の領土…マッカーサー秘密電文に注目集まる
2015年2月24日 17時12分
ZAKZAK(夕刊フジ)

 韓国が不法占拠を続ける島根県・竹島の返還を求める22日の「竹島の日」記念式典に、韓国政府は相変わらず抗議をしてきた。歴史的にも国際法上も、竹島は日本固有の領土だが、いつまで隣国はウソをつき続けるのか。こうしたなか、かつての駐日米国大使の秘密電文が注目されている。
 「実に嘆かわしい」「歴史に逆行する行為だ」
 韓国外務省は、島根県主催の式典に3年連続で内閣府政務官が出席したことを受け、報道官声明を発表した。ソウルの日本大使館前では抗議集会が行われ、液体入り容器を大使館に投げつけた男が連行された。
 毎年繰り返される醜い光景だが、日韓国交正常化から50年、朴槿恵(パク・クネ)大統領率いる韓国はそろそろ、米高官が「竹島=日本領」と認めた決定的証拠を受け止めるべきだ。
 これは「マッカーサー・テレグラム(電文)」と呼ばれるもので、1960年4月、GHQ(連合国総司令部)最高司令官、マッカーサー元帥の甥で、当時、駐日米国大使だったダグラス・マッカーサー2世が米国務省に送った秘密電文である。
 機密扱いが解除され、「テキサス親父」こと、米評論家のトニー・マラーノ氏が、ワシントンの国立公文書館の責任者から「本物の書類を合法的にコピーしたもの」と確認した。そこには、こう記されていた。
 《日本海にある竹島は日本の領土である》《韓国は力ずくで不法占拠している》《われわれ米政府は、韓国に圧力をかけて、この島を日本に返さなければならない》《最低限、われわれはこの件を国際司法裁判所に付託し、仲裁を求めることに合意するよう主張すべきである》
 これ以外にも、米国のラスク極東担当国務次官補は51年、梁(ヤン)駐米韓国大使に対し、竹島について《われわれの情報によれば朝鮮の一部として取り扱われたことが決してなく、1905年ごろから日本の島根県隠岐島支庁の管轄下にある》との書簡(ラスク書簡)を送っている。
 韓国が、国際社会のルールを無視して不法行為を続けているのだ。

●Wikipedia ダグラス・マッカーサー2世

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC2%E4%B8%96
(略)
日韓関係への言及
 駐日大使在任中の1960年4月26日、韓国の四月革命によって李承晩大統領が失脚し亡命に追い込まれると、それまで李政権がとっていた対日強硬路線によって悪化の一途をたどっていた日韓関係を懸念したマッカーサーは、翌27日には本国国務省に宛ててこの千載一遇の機会にアメリカがとるべき行動を提言した電文を送付している。これが「マッカーサーの電報」として知られる国務省機密電文3470号である。



 この文書の中でマッカーサーは、竹島は古来日本の領土と認識されている島であり、これを李政権が武力によって不法に占拠したものであると明記している。そして、人質外交をやめさせ、人質となっている日本人漁師を直ちに解放させるべきである、李承晩ライン周辺の韓国領海外の公海上で日本の漁船を拿捕する行為を中止させるべきである、韓国の次期政権に対して竹島を日本に返還するよう圧力をかけるべきである、次期政権にいかなる形においても竹島を返還する意思がない場合には、米国は最低限でもこの件を国際司法裁判所に付託し仲裁を求めるよう主張すべきである、などの提言をつづっている。(略)
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 ここで指摘したいのは、マラーノ氏も wikipedia の記事も触れていない「マッカーサー・テレグラム」への米国政府の対応についてである。
 戦後、韓国大統領となった李承晩は、昭和27年(1952)1月18日、一方的に公海上に軍事境界線、いわゆる李承晩ラインを設定して、竹島を自国の領土に含めようとした。そして、日本の漁船を拿捕した。同年4月に講和条約が発効して日本が再独立する直前の出来事だった。
 海上保安庁や島根県は28年6月、竹島に調査上陸して領土標識を建て、韓国漁民を退去させたが、翌月には竹島に上陸した韓国側が海保の巡視船を銃撃する事件が起きた。また、29年8月には、巡視船が約200発もの銃撃を浴びた。
 李承晩は大統領に4選されたが、昭和35年(1960)4月26日、韓国の四月革命で失脚し、ハワイに亡命した。駐日米国大使マッカーサー2世が本国国務省に電報を送ったのは、その翌日である。この秘密電報は、竹島は古来日本の領土と認識されている島であり、これを李政権が武力によって不法に占拠したものであるという認識が明記されている点で、価値あるものである。
 だが、もう一つ重要なのは、米国政府はこれに対して適切な対応を取らなかったことである。当時の大統領はドワイト・アイゼンハワー、国務長官はクリスチャン・ハーターだった。米国は、李承晩が占領下日本の領土である竹島を不法占拠しても、占領者として実力でこれに排除せず、以後不法占拠を容認し、李承晩失脚後、マッカーサー2世駐日大使が提言をしても、基本的な態度を変えなかったということである。
 昭和26年(1951)に極東担当国務次官補として駐米韓国大使にラスク書簡を送ったディーン・ラスクは、昭和36年(1961)ケネディ政権の国務長官に昇進した。ラスクは、極東事情に精通した政治家だったが、彼もまた米国の基本的な態度を変えることがなかった。
 ラスクがジョンソン政権で国務長官を務めていた時期、昭和40年(1965)6月22日に日韓基本条約が締結された。同条約において、竹島問題は解決していない。同条約の締結まで、李承晩ラインを越えたことを理由に韓国により、日本漁船328隻が拿捕され、日本人44人が殺傷、3929人が抑留された。これに対し、わが国は、有効な対抗策を講じることなく、韓国の不法占拠を許したまま、竹島の実効支配を受ける状態となっている。こうした現状は、わが国政府の大失策の結果である。
 それと同時に、この背景には、米国の意思があったと考えられる。すなわち、日本とソ連の間には北方領土、日本と韓国の間には竹島、日本と中国の間には尖閣諸島というように、地域諸国間に領土をめぐる問題があるようにして、互いにけん制させ、連携して米国に対抗しないようにするという、外交手法があると考えられるのである。わが国としては、こうした可能性も考慮した上で、領土問題の解決に対して戦略的な取り組みをする必要がある。

中国AIIBの野望と欧州参加国の危うい策略

2015-04-21 08:50:20 | 経済
 中国が主導するアジアインフラ投資銀行に、英独仏伊蘭等の欧州諸国が参加した。欧州諸国は、どうしてAIIBに参加したのか。
 この点について、ドイツや欧州の事情に詳し評論家の西尾幹二氏が、興味深い見方を書いている。西尾氏は、次のように述べる。
 「欧州はロシアには脅威を感じるが中国には感じない。強すぎるドルを抑制したいというのが欧州連合(EU)の一貫した政策だが、ユーロがドルへの対抗力となり得ないことが判明し、他に頼るべき術もなく、人民元を利用しようとなったのだ。
 中国の力を味方につけて中露分断を図り、ロシアを少しでも抑制したいのが今の欧州の政治的欲求でもある。それは安倍政権がロシア接近を企て、それによって中国を牽制したいと考える政治的方向と相通じるであろう。欧州は経済的に日米から、政治的にロシアから圧力を受けていて、そこから絶えず自由になろうとしているのがすべての前提である。
 それなら英国が率先したのはなぜか。英国が外交と情報力以外にない弱い国になったからである。英米はつねに利害の一致する兄弟国ではなく、1939年まで日本人も『英米可分』と考えていた。
 第二次大戦もそれ以降も、英国は米国を利用してドイツとロシアを抑止する戦略国家だった。今また何か企んでいる。中国はばか力があるように見えるが直接英国に危害を及ぼしそうにない。その中国を取り込み、操って政治的にロシアを牽制し、日本と米国の経済的パワーをそぐ。これは独仏も同じである。日本が大陸の大国と事を構えて手傷を負うのはむしろ望むところである。AIIBは仮にうまくいかなくても巨額は動く。欧州諸国の巧妙な策略である」と。

 西尾氏は「中国を味方につけて中露分断を図り、ロシアを少しでも抑制したいのが今の欧州の政治的欲求」というが、AIIBには、ロシアも参加する。欧州諸国もAIIBに参加することが、どうして同じメンバーのロシアを抑制することになるのか。この点の説明がない。また西尾氏は、英独仏は「中国を取り込み、操って政治的にロシアを牽制し、日本と米国の経済的パワーをそぐ」という策略を持つというが、中国を取り込むより、むしろ中国に取り込まれるおそれがあるのではないか。また西尾氏は「AIIBは仮にうまくいかなくても巨額は動く」と言うが、巨額が動いたところで、AIIBがうまくいかなければ、債券は不良債権と化す。欧州諸国は、中国から不良債権を押し付けられる可能性がある。

 今月17日の米財務省の発表によると、2月末時点の米国債の国別保有額は、日本が中国を抜いて2008年8月以来6年半ぶりに第1位になった。この原因の一つは、アベノミクスによる日本経済の回復・成長である。また別の一つは、中国経済が悪化していることである。中国はこれまで外資マネーの大量の流入に対し、人民元高を抑制するために米国債を多く購入してきた。だが、景気の減速によって中国からの資本流出が加速しており、米国債を購入する必要性が減っている。また、中国商務省が発表した1~3月期の対中投資の統計も、中国経済の悪化を示す。日本から中国への直接投資実行額は、前年同期比12・3%減、同じく米国からの投資が40・4%減、ASEANからの投資は31・2%減となっており、日・米・東南アの中国離れが目立ってきている。私は、この傾向は、一時的なものではなく、今後も続くと予想する。潮目が変わっているからである。

 このように考えると、西尾氏がいう欧州諸国の「策略」は、仮にあったとしても、あまり効果を上げられそうにない。むしろ、中国を利用するつもりが、狡猾な共産党指導者によって、逆に利用されることになりかねない。危うい策略と言わざるを得ない。
 以下は、西尾氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成27年4月16日

http://www.sankei.com/column/news/150416/clm1504160001-n1.html
2015.4.16 05:01更新
【正論】
中国の金融野心と参加国の策略 評論家・西尾幹二

 中国主導によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、英国を先頭に仏独伊など西欧各国の参加意思が表明され、世界50カ国以上にその輪が広がったことが、わが国に少なからぬ衝撃を与えたように見える。中国による先進7カ国(G7)の分断は表向き功を奏し、米国の力の衰退と日本の自動的な「従米」が情けないと騒ぎ立てる向きもある。

《なぜ帝国主義台頭を許すのか》
 もとより中央アジアからヨーロッパへ鉄道を敷き、東南アジアからインド洋を経てアフリカ大陸に至る海上ルートを開く中国の壮大な「一帯一路」計画は夢をかき立てるが、しかしそれが中国共産党に今必要な政治的経済的戦略構想であり、中華冊封体制の金融版にほかならぬことは、だれの目にもすぐに分かるような話ではある。
 中国は鉄鋼、セメント、建材、石油製品などの生産過剰で、巷(ちまた)に失業者が溢(あふ)れ、国内だけでは経済はもう回らない。粗鋼1トンが卵1個の値段にしかならないという。
 外へ膨張する欲求は習近平国家主席の「中華民族の偉大なる復興」のスローガンにも合致し、ドル基軸通貨体制を揺さぶろうとする年来の野心に直結している。それはまた南シナ海、中東、中央アジアという軍事的要衝を押さえようとする露骨な拡張への動機をまる見えにしてもいる。
 それならなぜ、遅れてきたこのファシズム的帝国主義の台頭を世界は許し、手を貸すのだろうか。今まで論じられてきた論点に欠けている次の3点を指摘したい。
 計画の壮大さに目がくらみ、浮足立つ勢力に、実行可能なのかどうかを問うリアリズムが欠けている。中国の外貨準備高は2014年に4兆ドル近くに達しているが、以降急速に減少しているとみられている。中国の規律委員会が1兆ドル余は腐敗幹部により海外に持ち出されているとしているが、3兆7800億ドルが消えているとする報道もある。

《策略にたけた欧州の狙い》
 持ち出しだけではもちろんない。米国はカネのすべての移動を知っているだろう。日本の外貨準備高は中国の3分の1だが、カネを貸している側で対外純資産はプラスである。最近知られるところでは、中国政府は海外から猛烈に外貨を借りまくっている。どうやら底をつきかけているのである。
 AIIBは中国が他国のカネを当てにし、自国の欲望を満たそうとする謀略である。日米が参加すれば巨額を出す側になる。日本の場合、ばかばかしい程の額を供出する羽目になる可能性がある。安倍晋三政権が不参加を表明したのは理の当然である。
 第2に問われるべきは欧州諸国の参加の謎である。欧州はロシアには脅威を感じるが中国には感じない。強すぎるドルを抑制したいというのが欧州連合(EU)の一貫した政策だが、ユーロがドルへの対抗力となり得ないことが判明し、他に頼るべき術(すべ)もなく、人民元を利用しようとなったのだ。
 中国の力を味方につけて中露分断を図り、ロシアを少しでも抑制したいのが今の欧州の政治的欲求でもある。それは安倍政権がロシア接近を企て、それによって中国を牽制(けんせい)したいと考える政治的方向と相通じるであろう。欧州は経済的に日米から、政治的にロシアから圧力を受けていて、そこから絶えず自由になろうとしているのがすべての前提である。

《日本の本当の隣国は米国だ》
 それなら英国が率先したのはなぜか。英国が外交と情報力以外にない弱い国になったからである。英米はつねに利害の一致する兄弟国ではなく、1939年まで日本人も「英米可分」と考えていた。 第二次大戦もそれ以降も、英国は米国を利用してドイツとロシアを抑止する戦略国家だった。今また何か企(たくら)んでいる。中国はばか力があるように見えるが直接英国に危害を及ぼしそうにない。その中国を取り込み、操って政治的にロシアを牽制し、日本と米国の経済的パワーをそぐ。これは独仏も同じである。日本が大陸の大国と事を構えて手傷を負うのはむしろ望むところである。AIIBは仮にうまくいかなくても巨額は動く。欧州諸国の巧妙な策略である。
 第3に中国と韓国は果たして日本の隣国か、という疑問を述べておく。地理的には隣国でも歴史はそうはいえない。隣国と上手に和解したドイツを引き合いに日本を非難する向きに言っておくが、ドイツが戦後一貫して気にかけ、頭が上がらなかった相手はフランスだった。それが「マルクの忍耐」を生んでEU成立にこぎ着けた。
 それなら同様に戦後一貫して日本が気兼ねし、頭が上がらなかったのはどの国だったろうか。
 中国・韓国ではない。アメリカである。ドイツにとってのフランスは日本にとっては戦勝国アメリカである。日本にとっての中国・韓国はドイツにとってはロシアとポーランドである。その位置づけが至当である。こう考えれば、日米の隣国関係は独仏関係以上に成功を収めているので、日本にとって隣国との和解問題はもはや存在しないといってよいのである。(にしお かんじ)
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関連掲示
・拙稿「中国AIIBの野望と自滅に加わるな」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12X.htm
・拙稿「中国AIIBは日米不参加で資金調達が困難に」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6ab64a953c771f93fb5054882aa0bfd2

人権144~アンソニー・スミスのナショナリズム論

2015-04-19 06:52:25 | 人権
●スミスは、エスニックな核が必要と説く

 ゲルナーとアンダーソンは、ともに国民が形成された要因を、近代化に見た。彼らは、ナショナリズムを純粋に近代的な現象であると考え、近代以前の共同社会とネイションの間には明確な違いが存在すると主張した。他の代表的な論者の多くも、類似の主張をしている。こうした立場を、ナショナリズム論における近代主義という。
 これに対し、ナショナリズムは、原始時代からあると説く論者もおり、その立場を原初主義という。原初主義は、歴史の始めから現代まで世界に広く見られるエスニシズムと、近代的な現象であるナショナリズムの区別ができておらず、エスニックなものをナショナリズムの用語で語るために、議論が混乱している。
 私は、原初主義的なナショナリズム論に対しては、エスニシズムとナショナリズムを区別すべきと比較論を提示する。一方、近代主義的なナショナリズム論に対しては、前近代的なエスニシズムからの連続性を指摘し、ナショナリズムにおける近代性と前近代からの連続性を総合的にとらえるべきと考える。そして、このような観点から、ナショナリズムの近代性を説くだけでなく、ネイションの形成にはエスニックな核が必要だとするアンソニー・スミスの理論を高く評価する。
 スミスは、ゲルナーやアンダーソンらの近代主義的なナショナリズム論を批判し、ネイションの形成における伝統文化の役割を強調した。スミスは、著書『ネイションとエスニシティ』(1986年)で、近代のネイションの背景となっているエスニック・グループをエスニーと名づけて、ネイションと区別した。エスニーは、近代的なネイションが形成される過程で、そのネイションのもとになった集団である。ネイションは、一つのエスニーが周辺のエスニーを包摂することによって成立したものであり、近代以前からのエスニーの伝統を引き継いでいる。近代において国民形成が可能になったのは、エスニーに継承されてきた民族にまつわる象徴体系があったからだ、とスミスは主張する。近代化によって、商業や交易の方法の変化、行政・戦争・国家間関係の性格の変化、世俗的な知識階級・大衆文化・大衆教育の登場等が起こった。それによって、人間の集合的な単位や感情に重大な変化がもたらされたことをスミスも認める。だが、そうした変化は近代以前の社会的枠組みの中で起こったのであり、既存の枠組みが近代の新しい枠組みへの変動を条件づけた。民族の起源にまつわる神話や記憶、象徴等からなる「神話―象徴複合体」が、ネイションの近代性を制約したのだ、とスミスは主張する。ネイションの形成には、エスニックな核が必要だという主張である。
 私は、スミスの見解に基本的に賛同する。例えば、近代主義のゲルナーやアンダーソンは、ネイション形成における言語の重要性を説くが、人々が共通して身につけるようになった言語は、無から創造されたものではない。近代以前から受け継がれてきたエスニックな自然言語を、固有の語法に則って標準語化したものである。その言語には、出版資本主義や産業化以前から蓄積されてきたエスニックな文化が蓄積されている。また、個々のネイションの形成は、人類や民族の起源にまつわる物語が、もともと人々の間で共有されていたから可能になったものであり、全く歴史的な根を持たない思想は、人々に容易に受け入れられない。他にも、様々な理由を挙げることができる。そこに表れる思想・運動がエスニシズムであり、ナショナリズムはエスニシズムの特殊近代的な形態である。ナショナリズムには、近代性と近代以前からの連続性という二つの側面がある。その点を踏まえて、ナショナリズムを把握し、人権とナショナリズムの関係を考察する必要がある。

 次回に続く。

■本稿は、拙稿「人権ーーその起源と目標」の一部です。ナショナリズムに関する項目は、下記に掲載しています。第6章(2)を中心にお読みください。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion03i-2.htm

対中外交の三つの重大な失敗~大原康男氏

2015-04-17 08:47:13 | 国際関係
 国学院大学名誉教授・大原康男氏は、3月9日付の産経新聞に「戒めとしたい対中『苦渋の記憶課』」と題して、日中外交の三つの重大な失敗について書いた。第一は昭和60年中曽根康弘首相の参拝取りやめに端を発する靖国神社参拝問題、第二は平成4年宮沢喜一首相によって強引に実施された天皇ご訪中問題、第三は平成21年鳩山由紀夫首相による「1ヶ月ルール」を無視した習近平現国家主席の天皇陛下ご会見問題である。これらの問題の経緯と重大性については、後に転載する大原氏の記事に書かれているが、私が注目するのは、大原氏が、これらのケースは「いずれも皇室に関わることでもある」と的確に指摘していることである。
 靖国神社参拝問題では、我が国の歴代首相の多くが中国によるいわゆるA級戦犯合祀を理由とする不当な干渉に屈したことによって、天皇の靖国ご参拝が実現できない事態となっている。天皇ご訪中問題では、天安門事件による孤立化を打破することを狙った中国によって、天皇の政治利用が行われた。「1ヶ月ルール」を無視した天皇陛下ご会見問題では、重要な皇室祭祀を行う日が蔑ろにされた。このように、みな皇室に関わることである。
 首相の靖国参拝に干渉することによって、天皇に靖国参拝をさせない。天皇を中国の利益のために政治利用するーーこれらのことは、単なる外交の術策ではなく、日本を支配し、共産化するという長期的な戦略のもとに行われていると見ることができる。
 昭和47年(1972)8月に出現した中国の秘密文書、『日本解放綱領』には、次のように書かれている。

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日本の平和解放は、下の3段階を経て達成する。

 イ.我が国との国交正常化(第一期工作の目標)
 口.民主連合政府の形成(第二期工作の目標)
 ハ.日本人民民主共和国の樹立・天皇を戦犯の首魁として処刑(第三期工作の目標)
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 すなわち、日本の解放つまり日本の共産化は3段階を経て達成するとし、最終段階においては、「天皇を戦犯の首魁として処刑」して「日本人民民主共和国」を樹立するというのである。
 私は、共産中国はこうした戦略を以て対日工作を進めてきており、その工作の最大のポイントが天皇の権威を貶め、天皇と国民の結びつきを弱めていくことにあると推測する。大原氏が挙げる日中外交の三つの重大な失敗は、いずれも『日本解放綱領』以後の出来事であることに注意したい。
 以下は、大原氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成27年3月9日

http://www.sankei.com/politics/news/150309/plt1503090004-n1.html
2015.3.9 05:01更新
【正論】
戒めとしたい対中「苦渋の記憶」 国学院大学名誉教授・大原康男

 別に古傷を暴いて気分をスカッとしようとしているのではない。「人の噂も75日」と俚言にもあるように、忘れっぽい日本人への戒めとして、ここ30年にわたる中国との外交関係を振り返り、同時代を生き、直接関わった者の一人が若い世代にもこの苦渋に満ちた記憶を共有してもらえれば、との思いで一筆したためた次第。

≪隘路に追い込まれた靖国問題≫
 一つは靖国神社参拝問題である。占領末期に参拝を復活した吉田茂首相以来、4半世紀にも及ぶ首相による公式参拝の実績がありながら、昭和50年の終戦の日に首相として初めて参拝した三木武夫首相が突如として「私的参拝」を標榜(ひょうぼう)したことから、靖国神社をめぐる混迷の時代が始まった。
 三木首相の豹変(ひょうへん)は憲法の政教分離原則に過敏に反応したものであった。それからちょうど10年たった同60年に中曽根康弘首相が「戦後政治の総決算」の一つとして公式参拝を復活したことによって、三木参拝がもたらした最初のボタンの掛け違いが解消されたのは評価されてよいが、その直後に中国のいわゆる“A級戦犯”合祀(ごうし)を理由とする抗議を甘受して爾後(じご)の参拝をとりやめたため、それ以降、歴代の首相は公私を問わず靖国神社に参拝できないという異常な事態が続くことになる。これが第二のボタンの掛け違いである。
 かくして平成8年の橋本龍太郎首相による例外的参拝を除けば、中断の期間は同13年の小泉純一郎首相の参拝再開まで16年にも及ぶが、首相の靖国参拝はあくまでも国内問題である。にもかかわらず、その不当な干渉に簡単に屈したことによって、あってはならない外交問題と化してしまった不見識さ-ここに靖国問題を隘路(あいろ)に追い込んだそもそもの原因があるのだ。今もなお天皇のご参拝が実現しない最大の要因でもある。
 そればかりか、昭和61年秋頃から中国側の意向に沿って“A級戦犯”を靖国神社から分離して別の神社に祀(まつ)るという合祀取り下げ工作を密(ひそ)かに進め、いわゆる“分祀論”の鼻祖になって今日に至っている。中曽根首相の“罪科”はたとえようもなく大きい。

≪強行された天皇ご訪中≫
 二つ目は平成4年秋に宮沢喜一首相によって強引に実施された天皇ご訪中問題である。まず第一に念頭に置かねばならないのは、憲法上「国政に関する権能」を有しない「国および国民統合の象徴」である天皇の外国ご訪問は「現実の国際政治の次元を超えたところでなされる友好と親善」でなければならないという原則である。
 しかるに当時は教科書検定、首相や閣僚の靖国神社参拝、中国による尖閣諸島の領土“編入”や東シナ海での油田採掘、国連平和維持活動(PKO)法案への執拗(しつよう)な反対等々、日中間には厄介な問題が山積しており、その真っ直(ただ)中でご訪中を強行すれば、天皇の「政治利用」になるという激しい反対の声が全国から寄せられていた。
 政府は加藤紘一官房長官の下で形としては各界の有識者を集めて意見聴取を行いはしたものの、その1週間前に宮沢首相はご訪中を決断、与党幹部にその旨を伝えていたのである。ある台湾人が「まるで勝手に丸刈り頭にしておきながら、あとで周囲に“髪を伸ばすべきか、刈るべきか”と相談するようなもの」と評したように、茶番劇もいいところ。
 平成15年秋に刊行された銭其●外相の回顧録によれば、ご訪中招請は中国が天安門事件による孤立化の打破を狙って進めたもので、「天皇訪中は西側の対中制裁を打破する上で積極的な効果」があったと明言しているが、当時の関係者のうち誰一人として責任の弁を語った者はいない。

≪汚点残した「1カ月ルール」≫
 もう一つ、平成21年12月15日に中国の習近平国家副主席(現主席)が来日して天皇陛下と会見したときのこと。外国の賓客が陛下と会見する場合、通常は1カ月前に文書で申請する「1カ月ルール」と呼ばれる慣例があるのだが、この申請は11月下旬でありながら、鳩山由紀夫首相は「特例」としてその実現を強く指示した。宮内庁は当初は拒否したものの、法制上は「内閣総理大臣の管理」に属するとされているため、結局従わざるを得ず、将来に向かって大きな汚点を残すことになった。
 この日は夕刻から賢所御神楽(かしこどころみかぐら)が斎行されることになっていた。新嘗祭と並んで皇室祭祀(さいし)の中でも最も由緒ある祭儀であり、陛下が終日お心を安らかにして身を慎まねばならない日を蔑(ないがし)ろにした背後に小沢一郎民主党幹事長がいたことは間違いない。
 陛下との会見で箔(はく)をつけたから、有力なライバルをけ落として国家主席になれたとまでは言わないが、中華民族の興隆を揚言し、対日威嚇を加速する習主席の昨今の強硬姿勢を見るにつけ、複雑な感慨を覚えざるを得ない。
 以上、紹介したケースはいずれも皇室に関わることでもある。
 戦後70年の今日、対中外交における負の連鎖を断ち切って、むしろ積極的により強固な中国牽制(けんせい)網が構築されんことを願うのみ…。(おおはら やすお)

 ●=王へんに深のつくり
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関連掲示
・拙稿「『日本解放綱領』の残影~中国の対日政治工作」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion07c.htm


イスラム過激組織に気を取られて中国に油断するな

2015-04-16 08:45:01 | 国際関係
 わが国は、1月20日に起こったISILによる日本人人質事件以降、イスラム過激組織に関する話題で沸騰した。マスメディアは事件に関する報道を繰り返し、国会では事件への対応が多く論じられた。テロへの対応は重要である。だが、わが国には迫り来るもっと大きな危険がある。それは、中国による尖閣奪取への動きである。イスラム過激組織に気を取られて、中国に対して油断してはならない。
 中国は昨年中ごろ、「東シナ海合同作戦指揮センター」を設置した。将来、海空の合同作戦を展開する計画だろう。その計画の一環と思われるのが、尖閣諸島近くでの新たな軍事基地の建設である、
 中国は尖閣諸島から300キロ北西にある逝江省温州市沖の南キ列島に、新軍事基地を建設している。基地の位置は、沖縄からよりも尖閣諸島に100キロ近い。昨年秋数百人の軍人が上陸して基地建設を進め、今では島の高所に複数の大型レーダーが設置され、軍事用の超高速通信網の敷設が行われている。ヘリポートや大型巡視船の艦載機に使用されると見られる滑走路の建設も行われている。基地は今年中に完成予定と伝えられる。今後、陸海空軍が駐留する計画である。
 昨年12月22日付のジャパンタイムズは滑走路がすでに舗装されている写真を載せた。この滑走路が使えるようになれば、中国の戦闘機は那覇から尖閣諸島に向かう航空自衛隊の戦闘機よりも早く到達することが可能になる。空自の戦闘機が尖閣諸島に接近する中国機をスクランブルすることが出来なくなるかもしれない。中国が東シナ海の制海、制空権を確保しようとしていることは明白である。中国は本気である。本気で尖閣奪取のための準備をしている。
 昨年11月には中国政府傘下の軍事企業である「保利集団」が、「WB-1」と呼ばれるレーザー兵器を開発した。これが南キ列島の新軍事基地に配備される可能性が高まっている。自衛隊関係者によると、この兵器は強力な電磁波を発し、人体の水分を沸騰させる。ビームを当てられた人間は命に別状はないものの、電子レンジに入れられたような耐え難い熱さを感じ、ヤケドを負った感覚になる。尖閣上陸作戦の折にこれを阻止する海保隊員らに用いるのに最適と見られる。

 こうした重大な出来事が、わが国では大きく報道されない。国会でも、活発に議論されない。だが、わが国の対応が遅れれば、中国はどんどん覇権主義的な計画を進めることは、南シナ海での動きを見ればわかる。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は中国との間で南シナ海の紛争を回避するため、平成14年(2002)に南シナ海行動宣言(DOC)を採択した。そこには、一方的な主張を武力によって進めることを双方が控えるという主旨が盛られた。だが、中国は自ら採択した宣言にお構いなしに、領土の拡張を進めている。
 平成24年(2012)に中国はパラセル(中国名・西沙)諸島の永興島に三沙市人民政府を設立した。パラセル諸島はベトナム戦争末期の昭和49年(1974)、米軍撤退の隙を突いて中国が実効支配した。中国は同諸島を「中国固有の領土」と主張し、ベトナムはこれに反発している。
25年(2013)8月末にブルネイで開催されたASEAN拡大国防相会議では、南シナ海での行動を規範化(COC)することに中国は合意した。だが、中国は永興島にあった2700メートルの滑走路の拡張工事を進め、昨26年(2014)10月に3千メートルの軍用滑走路を完成させた。永興島は、島の面積を4割拡大する埋め立てを行ったと伝えられる。

 昨26年(2014)5月には、中国は南シナ海のベトナムが自国領と主張する海域に巨大な石油掘削機を持ち込み、一方的に海底油田の調査を進めた。これを阻止しようとするベトナム船と中国公船が衝突を繰り返し、南シナ海に緊張が高まった。中国は、アメリカがアジア太平洋地域にどこまで本気で関与しようとしているのかを試したものと見られる。だが、米国およびベトナムが断固たる姿勢を示すと、中国は掘削施設を撤収した。次のチャンスをうかがうものと見られる。
ASEAN側は「宣言」を拘束力をもつCOCにすることを主張しているが、中国は2国間協議を主張し、いまだにCOCは実現していない。中国はASEAN諸国との協議を重視すると口では言いながら、着々と領土拡張を進めている。

 2月22日の産経新聞の記事は、南シナ海での最近の中国の動きを伝えた。
http://www.sankei.com/world/news/150222/wor1502220021-n1.html
 記事は、国際軍事専門誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーによるもので、中国が南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で進めている人工島の建設が、拡大の一途をたどり急ピッチで進められていることを伝えている。
 スプラトリー諸島は中国のほか、ベトナムやフィリピンなどが領有権を主張している。中国は近隣諸国などの抗議を無視する形で、また米国が対中対応に苦慮する間に、着々と工事を拡大している。
 人工島の建設が進められているのは、ヒューズ(東門)礁、ジョンソン南(赤瓜)礁、ガベン(南薫)礁、ファイアリークロス(永暑)礁、クアテロン(華陽)礁の5岩礁などである。
 ヒューズ礁は、フィリピンの西方約340キロにある。ここでは、サッカー場14面ほどに相当する人工島が建設されている。2004年2月撮影の人工衛星の画像では380平方メートルにすぎなかったものが、今年1月24日付の画像では7万5000平方メートルと、面積が約200倍に拡大したという。
 中国はこの人工島に昨年8月以降、護岸工事を施して岸壁を完成させ、2つの埠頭とセメント工場、ヘリコプター発着場を整備した。さらに、対空高射砲塔とみられる軍事施設も建設中とみられている。
 ガベン礁では昨年3月末以降、人工島の建設が進められている。1月30日付の画像で舗装路やヘリの発着場などが確認された。ファイアリークロス礁でも軍艦やタンカーが接岸できる大規模な軍港施設などの建設が進み、3千メートル級の軍事用滑走路滑走路ができたといわれる。
記事は、こうした工事のほとんどは習近平国家主席が権力を掌握した2012年以降に始まったようだと述べ、岩礁を軍事拠点化し、海域はもとより空域も支配する狙いがあるとみられると書いている。防衛専門家は、中国は南シナ海に防空識別区を設ける計画だろうと見ている。南シナ海では、実効支配を着々と強化する中国の動きに歯止めがかからない状態である。
 
 こうした南シナ海での中国の覇権主義的な行動を見れば、東シナ海で中国が何をしようとしているか、分かる。尖閣諸島近くに新軍事基地を建設しているのは、尖閣諸島を取るためである。中国は、尖閣を奪取したら、次に沖縄を狙う。沖縄を押さえられたら、わが国は窮地に陥る。わが国は、尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るために、最善の努力をしなければならない。

関連掲示
・拙稿「荒れる南シナ海と米中のせめぎ合い」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12u.htm
・拙稿「南シナ海で中国を駆り立てる中華ナショナリズム」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/06d4e3d4e4ba60f383c9f2301f514234
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12o.htm
・拙稿「中国は沖縄に独立宣言をさせる~恵隆之介氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/04d54eddda25a619aab628d9be7cca9a
・拙稿「中国で沖縄工作が公言~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/a3ac2550ec7308d805acfe732eb25d4a