ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

安倍「自民」VS小池「希望」の衆院総選挙へ

2017-09-30 09:22:27 | 尖閣
 政治は、権力の獲得・配分・拡大をめぐる運動です。権力をめぐる戦いには、敵・味方の区別が生じます。カール・シュミットは、政治とは友・敵の区別が生じるところに始めて成立するものだとします。言い換えれば、友・敵の区別の生じるところに権力をめぐる戦いが生まれる、というとらえ方です。
 いずれにしても政治の本質が最もよく表れるのが、選挙です。選挙は、権力の獲得・配分・拡大をめざし、敵・味方に分かれて、有権者の票を集めるために戦う活動です。

 安倍首相が衆院選を決断したのは、来年米朝戦争となる可能性が高く、解散総選挙をやるならいましかない、民進党は支持率が下がり、小池新党は準備不足と見てのこと。しかし、これをチャンスと見た小池都知事は、国政政党の立ち上げを一気に進め、「希望の党」を旗揚げし、自分が代表に。民進党・前原代表は実質的合流でこれに応じ、そこに小沢自由党も参加。にわかに「寛容な改革保守」を標榜する新党が出現しました。
 希望の党は、自公与党との政策や理念の違いが明確ではありません。小池氏個人は、憲法改正、安保関連法維持、原発ゼロ、消費税凍結などを掲げていますが、同じ考えは自民党内にもあります。唯一はっきりしているのは、反安倍。安倍政権から権力を奪うという目的のみ。しかも実態は、個々の政治家が自分の議席を獲得するための集合。そのために寄り集まる者が、思想や信条の違いに関わりなく、友となり、味方となっているという感じです。選挙で落ちて、無職や無収入になりたくない。税金で歳費をもらって生活していくために、生き残るにはどうするか。そこで、選挙のたびに繰り返されてきたのが、選挙互助会。希望の党もその性格を強くしつつあります。
 北朝鮮の核・ミサイルによる危機が迫っている中で、本来、国政を担う政治家がすべきことは、この危機に対処するための国民的な団結でしょう。それがどこかに行ってしまって、ただの権力闘争、しかも私権闘争になってきています。

 報道やネットから注目すべき発言・情報をもとに、メモします。

・前原誠司民進党代表「どんな知恵を絞ってでも安倍晋三政権を終わらせる。野党がばらばらでは選挙に勝てない」
・安倍晋三首相「新党ブームからは決して希望は生まれない」「若い皆さんが仕事に就ける、未来をつかむことができることこそ希望ある日本だ」「選挙のためだけに看板を替える政党に日本の安全を、子供たちの未来を任せるわけにはいきません」
・伊吹文明元衆院議長「民進党はかつて政権を取った政党だ。それをたかだか10人くらいの『バブル企業』(希望の党)に身売りするのは理解できない。選挙で生き残る希望の党になっている」
・和田正宗参院議員「政党とは国家観や理念が一致してまとまるもの。しかし小池新党は国家観も理念もバラバラ。『国民の希望の党』ではなく『新党参加者にとってのみの希望の党』であり小池氏の『野望の党』」・小池百合子都知事「私がまた国政に出るのではないかとにぎわっているが、今の国政が変わらない限り、都政でしっかり頑張る。(選挙後の首相指名は)今後考えていきたい」
・小池都知事は、自身の公式サイトから「日本も核武装の選択肢は充分ある」と明記していた発言を削除。http://www.yukawanet.com/96184/archives/5272862.html
・小池都知事は、憲法改正と安保関連法維持を受け入れの基準とする。希望の党の公認を申請した民進党の前職61人は、安保関連法案の採決で反対のプラカード掲げていた。小池氏は、きっちり選別するのか。
・民進党の希望の党への実質的合流は、民進党内の左翼・リベラル勢力の切り捨てにはなる。菅・枝野・蓮舫・辻元らや旧社会党系・新左翼系は、どう動くか。
・民進党の金庫には150億円前後の金(*政党助成金)が眠っている。正式に解党すると、国庫に返却しなければならないので、解党はしない。一方、希望の党はほぼすっからかん。この資金をめぐり、前原、小池らによる争奪戦が始まる。権力の争いは、カネの争いでもある。


中国の横暴、”世界秩序の破壊者”露・朝と連携~石平氏

2016-08-21 09:33:43 | 尖閣
 8月6日から数日のうちに、尖閣諸島周辺の海域に、中国公船20隻以上とともに400隻以上の中国漁船が押し寄せた。中国の行動は、6月初めから、どんどんエスカレートしてきている。その動きについて、振り返っておきたい。

 6月9日午前0時50分ごろ、中国海軍のフリーゲイト艦が尖閣諸島周辺の接続水域に入った。わが国領海に近接する接続水域に、いよいよ中国の軍艦が初めて出現したのである。その直前に行われた米中戦略・経済対話で、中国は南シナ海に関して国際法無視の身勝手な主張をした。その主張と軌を一にして、東シナ海でも軍事力のデモンストレーションをした格好である。
しかも、この時、中国だけでなく、ロシアの軍艦も同時に航行した。これについては、偶然同時になったという見方、中国軍艦がロシア軍艦の動きに乗じたという見方、日米の連携強化に対して中露が連携して牽制したという見方などがある。
 一度、軍艦が接続海域に入ったということは、今後、そうした行動が繰り返され、またエスカレートしていくことが予想された。中国が良く採る手だが、南シナ海に注意をひきつけておいて尖閣を襲うという可能性もあり、要注意である。
 6月15日には、中国海軍の情報収集艦が鹿児島県の口永良部島付近の領海に侵入し、16日には同じ艦艇が沖縄県の北大東島周辺の接続水域を航行した。この時は、日米印の共同演習に関する情報の収集と見られるが、無人島の尖閣諸島周辺と異なり、鹿児島県の口永良部島付近を中国軍艦が航行したのは、より強い威圧感を与える行動だった。
 このように計画的に行動をエスカレートさせて、根拠のない支配権を既成事実化していくのは、中国の常とう手段である。日本国民は、中国の手引きをする朝日・毎日や親中派野党の情報操作・世論誘導に騙されてはならない。

 シナ系日本人評論家の石平氏は、6月16日付の産経新聞に「世界秩序の破壊者同士の露朝を巻き込む『毛沢東外交』へ先祖返り」と題した記事を書いた。
 石氏は「米中戦略・経済対話で、南シナ海をめぐる米中の話し合いは、完全にケンカ別れとなり、米中の対立はより決定的なものとなった。その直後に、中国は直ちに前述の威嚇行動に打って出た」とし、「追い詰められた中国は、ロシアの虎の威を借りて日米主導の中国包囲網に対する徹底抗戦の意思を示したのであろう」と分析している。
 これに加えて、次のように書いている。「その前に、中国はもう一つの布石を打った。今月(ほそかわ註 6月)1日、習近平国家主席は訪中した北朝鮮の李洙●(スヨン)労働党副委員長との会談に応じたが、立場の格差からすれば北朝鮮に対する異例の厚遇であった。つまり習主席は日米牽制のために、北朝鮮の核保有を容認したまま、金正恩政権との関係改善に乗り出した」と。そして「このように、日米主導の中国包囲網に対抗して、習近平政権は今、世界秩序の破壊者同士であるロシアや北朝鮮を抱き込んで対決の道を突き進んでいる。ある意味ではそれは、1950年代初頭の冷戦時代の毛沢東外交への先祖返りである」と石氏は見ている。
 氏によれば、<日米主導の中国包囲網>対<中・露・朝の世界秩序破壊国家群>という対立の構図が、明確になりつつある。わが国は、こうした大局的な見方を以て、中国の覇権主義的な行動に対処していく必要があるだろう。
 以下は、石氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成28年6月16日

http://www.sankei.com/world/news/160616/wor1606160027-n1.html

2016.6.16 12:33更新
【石平のChina Watch】
世界秩序の破壊者同士の露朝を巻き込む「毛沢東外交」へ先祖返り

 政府は今月9日未明、中国、ロシア軍艦艇が相次いで、尖閣諸島周辺の接続水域に入った、と発表した。
 中国軍艦が侵入してきたことは、日本に対する重大な軍事的挑発であるに違いないが、ロシア軍艦が同時に侵入した真相は不明だ。中露両国が事前に示し合わせた計画的行動である可能性もあれば、この海域を通過するロシア艦隊に中国軍が便乗して行動を取ったのかもしれない。いずれにしても、中国が意図的に、ロシア軍の動きと連動して日本への挑発的行為に乗り出したことは事実だ。
 日本とともに尖閣防備にあたるべきなのは同盟国の米国である。中国の戦略的意図は明らかに、軍事大国のロシアを巻き込んで「中露共闘」の形を作り上げ、日米両国を威嚇して、その同盟関係に揺さぶりをかけることにあろう。
 中国はなぜ、日米同盟に対してこのような敵対行為に出たのか。その背後にあるのは、先月下旬の伊勢志摩サミット前後における日米の一連の外交行動である。
 5月23日、オバマ米大統領はサミット参加の前にまずベトナムを訪問し、ベトナムに対する武器禁輸の全面解除を発表した。
 中国からすれば、南シナ海で激しく対立している相手のベトナムに、米国が最新鋭武器をもって武装させることは、中国の南シナ海制覇戦略に大きな打撃となろう。
そして、伊勢志摩サミットの首脳宣言は名指しこそ避けているものの、南シナ海での中国の一方的な行動に対する厳しい批判となった。
 これに対し、中国政府は猛反発してサミット議長国の日本だけを名指して批判した。つまり中国からすれば、サミットを「反中」へと誘導した「主犯」は、まさにこの日本なのである。
 6月に入ると、外交戦の舞台はシンガポールで開催のアジア安全保障会議に移った。そこで、米国のカーター国防長官は先頭に立って中国を名指しして厳しく批判し、大半の国々はそれに同調した。今まで南シナ海問題でより中立な立場であったフランスまでがEU諸国に呼びかけて、南シナ海で米国と同様の「航行の自由作戦」を展開する意向を示した。
 中国の孤立感と焦燥感はよりいっそう深まった。
 そして、今月7日に閉幕した「米中戦略・経済対話」で、南シナ海をめぐる米中の話し合いは、完全にケンカ別れとなり、米中の対立はより決定的なものとなった。
 その直後に、中国は直ちに前述の威嚇行動に打って出た。追い詰められた中国は、ロシアの「虎の威」を借りて日米主導の中国包囲網に対する徹底抗戦の意思を示したのであろう。
その前に、中国はもう一つの布石を打った。今月1日、習近平国家主席は訪中した北朝鮮の李洙●(スヨン)労働党副委員長との会談に応じたが、立場の格差からすれば北朝鮮に対する異例の厚遇であった。つまり習主席は日米牽制(けんせい)のために、北朝鮮の核保有を容認したまま、金正恩政権との関係改善に乗り出した。
 このように、日米主導の中国包囲網に対抗して、習近平政権は今、世界秩序の破壊者同士であるロシアや北朝鮮を抱き込んで対決の道を突き進んでいる。
 ある意味ではそれは、1950年代初頭の冷戦時代の「毛沢東外交」への先祖返りである。ソ連や北朝鮮などの社会主義国家と連携して「米国帝国主義打倒」を叫びながら西側文明社会と対抗した毛沢東の亡霊が現在に蘇(よみがえ)った感がある。
 人や国が窮地に追い込まれたとき、先祖返り的な退行に走ることは往々にしてあるが、もちろんそれは、窮地打開の現実策にはまったくならない。南シナ海への覇権主義的野望を完全に放棄することこそ、中国が外交的苦境から脱出する唯一の道ではないのか。

●=土へんに庸
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外務省が竹島・尖閣を動画で広報

2013-11-14 08:43:12 | 尖閣
 わが国の外務省は、竹島及び尖閣諸島がわが国の領土であることを説明した動画を、10月16日Youtubeに掲載した。
http://www.youtube.com/watch?v=TXg-NGVKuWI
http://www.youtube.com/watch?v=t78GO7efdYM
 1分間ほどの短いものだが、内容はよく凝縮されている。これらの動画は外務省のサイトからも見られるようになっている。サイトには、主要言語に訳されたパンフレットも掲載されている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/index.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html
 
 動画は年内から来年1月にかけて英語や中国語、フランス語などの国連公用語(6カ国語)に加え、韓国語やドイツ語など計10カ国語に翻訳し、ネット上に公開する予定だという。さらに竹島は1本、尖閣は3本、別の内容の動画を追加して作成・公開するという。大変良い動きである。世界に向けて積極的に広報活動を展開してほしい。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成25年10月24日

竹島・尖閣、動画広報強化へ 年内にも10言語版、専用サイトも
2013.10.24 15:44

 政府は23日、韓国や中国がそれぞれ領有権を主張する竹島(島根県隠岐の島町)と尖閣諸島(沖縄県石垣市)について、日本固有の領土であることをアピールする動画広報を強化する方針を固めた。海外に向け不当な主張を行っている中韓両国に対抗する狙い。一部の動画は公開済みで、年内にも英語、韓国、中国語を含め計10言語に翻訳した動画を掲載する。本数も増やし、日本の立場を積極的に発信する。
 外務省が動画投稿サイト「ユーチューブ」で16日に公開した竹島と尖閣に関する動画は、国際法上も日本固有の領土であることを、歴史的な経緯を踏まえ説明している。長さはいずれも約1分半。現在は日本語版のみだが、年内から来年1月にかけて英語や中国語、フランス語などの国連公用語(6カ国語)に加え、韓国語やドイツ語など計10カ国語に翻訳し、ネット上に公開する。
 さらに別の内容の動画を竹島について1本、尖閣は3本追加して作成、公開する予定だ。外務省のホームページ(HP)では動画の場所が分かりにくいため、新たに専用のサイトを設けて見つけやすい構成に改める。
 政府は実効支配する尖閣について「領土問題は存在しない」との立場を取る。ただ、中国が昨年秋からメディアを使って海外向けに領有権のアピールを強めているため、「反論しないと既成事実化される」と判断。竹島とともに動画広報の強化に踏み切った。
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尖閣:中国人船長釈放、やはり仙谷が指示

2013-10-22 10:38:09 | 尖閣
 平成22年(2010)9月7日に起こった尖閣諸島沖中国漁船衝突事件について、仙谷由人氏は、当時官房長官だった自分が菅直人首相の意向も踏まえ、公務執行妨害の疑いで逮捕された中国人船長の釈放を促す発言を法務・検察当局にしていたことを証言した。
 当時那覇地検は「国民への影響や今後の日中関係も考慮した」として船長を釈放したが、菅首相、仙谷官房長官は検察が独自判断で釈放したとして「政治介入」を否定していた。
 だが、このたび仙谷氏は、「法務事務次官(註 大野恒太郎氏)とはいろいろな話をしていた。私の政治的な判断での要望については当然、話をしたと思う」と自分が関与したことをようやく認めた。
 仙谷氏は、横浜市でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を22年11月に控えていた中で、中国が参加を見合わせれば日本のメンツがつぶれる可能性があると焦った菅氏から解決を急ぐよう指示があったことも認めた。菅政権の岡田克也外相や前原誠司国土交通相が「これはけじめをつけよう」と法的手続きに入るべきだと主張したのに対し、仙谷氏は「政治的な配慮をする必要があるかもしれないと思い、問題提起した」という。また、船長釈放決定に先立ち法務・検察当局からの要請に応じ、外務省の課長を参考人として那覇地検に派遣し、外務省の立場を説明するよう自ら指示を出していたことも認めた。
 私は、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件から1年を迎えた平成23年(2011)年9月7日、「尖閣:事件から1年」を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110907
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110908
 そこで私は、次のように述べた。
 「この事件で、わが国政府の中国に対する対応は、まったく弱腰で、世界に恥を晒した。9月7日は、わが国の国辱記念日となった。当時の菅首相、仙石官房長官、前原外務大臣らの責任は極めて重い。だが、事件は解明されぬまま、菅内閣は総辞職し、野田内閣に移った。
 尖閣事件は、日本人に覚醒を迫る事件である。この事件をあいまいのままにしておくと、大きな禍の種になる」
 「最大の問題点は、船長の釈放という判断にあったことは明らかである。今回の一連の事件の本質は、漁船衝突事件に係る中国人船長の責任にある。船長は領海侵犯、公務執行妨害、器物破損等の罪に問われねばならなかった。刑事事件と共に民事事件として、1000万円といわれる巡視船の修理代も請求しなければならないものだった。
 政府中枢は、船長の釈放は地検独自の判断と説明するが、政府中枢が関与したと思われる証言が多数出ている。直接的な指示を官房長官、法相等が行った可能性がある。また、最終判断は、菅首相だろう。だが、この検察に対する政府中枢の介入も、事実関係が明らかになっていない。
 国会議員は、国政調査権に基づき、関係者の証人喚問を実施すべきである。昨秋自民党には証人喚問を求める動きがあったが、その後、目だった展開が見られない。外交・安全保障に係る国会議員がこういう重大問題をあいまいにすると、将来に禍根を残す」
 「尖閣事件は、日本人に覚醒を迫る事件である。自らの魂を失った国民は、自らの国を失う。尖閣を守れなければ、南西諸島、そして沖縄を守れない。沖縄を守れなければ、日本を守れない。日本人は今、精神的に覚醒しなければならない。
 尖閣事件をうやむやに終わらせてはならない。うやむやにすると、尖閣の防衛整備を進めるうえで、大きな支障となる。事件の解明を進めながら、尖閣防衛の整備を急がねばならない。
 日本人が日本精神を取り戻し、憲法を改正し、国防を充実させて、独立主権国家としてまともな外交ができるようにならなければ、わが国の安全と持続的繁栄は決して得られない」と。
 私がこう書いた約3週間後となる23年9月26日、産経新聞は、菅政権で内閣官房参与を務めた松本健一氏のインタビュー記事を載せた。松本氏は、そこで中国人船長を処分保留のまま釈放したのは、当時の菅首相と仙谷由人官房長官の政治判断によるものだったと明らかにした。松本氏は、次のように語った。

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--事件発生後の経緯は
 「閣内では事件発生当初、菅氏や前原誠司国土交通相のように『証拠もあるわけで、国内法にのっとり断固として裁くべきだ』との考え方と、『釈放すべきだ』との立場に立つ仙谷氏の2つの意見があった」
--最終的に釈放という判断に至ったのは
「それは裁判が維持できないから。最終的には菅首相が判断したわけだ」
--菅氏が指示を出したのは事実か
「そうでなきゃ、釈放なんかできないでしょ、最終的に。あれだけの外交問題になっていたわけだから。菅氏は国連総会の最中に仙谷氏に電話をかけて、釈放するかしないかでやり合っていた。仙谷氏は官邸から一歩も出ずに夜中に首相と話し合っていた」
--菅氏が仙谷氏に押し切られたということか
「仙谷氏の方に正当性があると。(菅氏も)裁判が維持できないと納得した。電話のやりとりの中で(釈放するとの)2人の合意がなされた。それは船長が釈放される2、3日前だ」
--なぜそうしたのか
「菅さんは自分に責任がかかってくる問題は避けたがっていた」
--釈放は菅氏と仙谷氏の2人で決めたのか
「少なくとも官房副長官くらいはいるかもしれないが、政治家が決めた」
--官邸側の誰が法務省・地検側に釈放しろと命令をしたのか
「少なくとも菅氏はしていないでしょう。仙谷氏の可能性が高い」
--官邸側の指示で検察が動いたといえるか
「それはそうですね」(略)
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 松本氏の発言は、事件の核心に係る重要な証言だった。国会議員は、国政調査権に基づき、関係者の証人喚問を実施し、尖閣事件の徹底解明を進めてもらいたいと私は要望したが、ほとんど何も進んでいない。
 事件後、3年を経た今日、仙谷氏は自分の関与を認めた。当然、仙谷氏単独の判断ではない。当時の菅首相が最高責任者とし判断したはずであり、彼らの責任は重大である。
 国会議員は改めて、この事件の重大性を理解し、真相を明らかにし、菅政権の中枢部だった政治家の責任を追及してもらいたい。これは単に過去の事件の真相究明、責任追及ではない。尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るには、政治家と国民の意識が変わらねばならない。そのために必要な行動である。

関連掲示
・拙稿「尖閣諸島、6月17日に備えよう」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12i.htm
 補説に「尖閣事件から1年」を所収
・拙稿「尖閣:菅・仙石が『政治判断』との証言が」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/5d290f28754e1331ef7ebb0287104e88

尖閣:オバマ大統領が「力による現状変更」に反対

2013-10-11 08:51:39 | 尖閣
 9月5日、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された20ヶ国・地域(G20)首脳会議に参加した安倍首相とオバマ米大統領は、日米首脳会談を行った。会談後、ローズ米大統領副補佐官は、オバマ大統領が尖閣諸島について「力による現状変更を目指すいかなる取り組みにも反対する」と安倍首相に伝えたことを明らかにした。
 安倍首相は、「力の行使による現状変更は何も正当化しない」との考え方を2月の施政方針演説に盛り込み、開かれた海での航行の自由等の考え方とともに米国や国際社会に訴え、日本の立場への理解と協力を求めてきた。4月に来日したケリー米国務長官は、「現状を変更しようとする一方的な行動に米国は反対する」と述べた。6月には日米豪防衛担当閣僚会談も同様の見解で一致した。
 6月に米カリフォルニア州パームスプリングズ郊外で行われたオバマ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談では、習主席が尖閣諸島は「中国固有の領土」と主張したうえで、中国の譲れない国益を意味する「核心的利益」との認識を示した。これに対し、オバマ大統領は、日本は「米国の同盟国」で「成熟した民主主義国」であるとするとともに、「領土問題についてどちらかの立場は取らない。双方が問題をエスカレートさせないよう対話してほしい」と述べたと報じられる。それが主旨であれば、尖閣諸島は日本固有の領土であり領土問題は存在しないとする日本政府の見解に異を唱えたことになる。
 その後、米上院議会は7月29日の本会議で、尖閣諸島周辺や南シナ海で示威行動を活発化させる中国を念頭に、領有権の主張や現状変更を狙った「威嚇や武力行使」を非難する決議案を採択した。決議は「アジア太平洋地域の航行の自由に米国の国益がかかっている」と指摘し、「米政府は、尖閣の日本の施政権を害そうとするいかなる一方的な行為にも反対している」と指摘し、尖閣は日本の施政権下にあるという米国の認識が「第三者の一方的な行動によって変わることはない」とし、尖閣が日米安全保障条約に基づく対日防衛義務の対象であることを明記した。
 こうした流れの中で今回、オバマ大統領は「力による現状変更」という表現を初めて用いた。オバマ氏の発言は、軍事力を背景に尖閣奪取を図ろうとしている中国を牽制し、日本の立場への強い支持を示したものとみられる。この大統領発言の意義は大きい。
 今度は、わが国が大統領発言にどのように応えていくかが問われる。わが国自身の課題及び日米間の課題の処理を着実に進めるとともに、集団的自衛権行使への政府見解の修正が急務である。
 その際、確認しておくべきことがある、米国はニクソン政権以降、尖閣諸島の施政権が日本にあることは認めているが、領有権が日本にあるとは認めていない。米政府は「特定の立場をとらない」として、中国に配慮している。また、尖閣が日米安保の適用対象と明言されても、そのことは無条件で、アメリカが尖閣防衛のために行動することを意味しない。わが国が自国領土を自ら守る決意を行動で示して初めて、米国に行動を期待できる。日米安保は片務的である。第5条で米国は日本防衛の義務を負うが、日本は第6条で基地を提供するのみである。尖閣諸島は無人島である。米国民は、日本の無人島を守るために、米国兵士が血を流してまで戦うことを理解できないだろう。日本人が自ら守る行動を示さない限り、アメリカ人が尖閣諸島を命を懸けて守ることはないと考えるべきである。集団的自衛権の行使への解釈変更も、これらの確認点を踏まえたものでなければならない。

関連掲示
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12o.htm
・拙稿「集団的自衛権は行使すべし」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08n.htm

尖閣:棚上げ合意などなし

2013-07-25 08:57:37 | 尖閣
 野中広務氏と鳩山由紀夫氏が、相次いで、尖閣諸島に関して日中首脳間で棚上げにする合意があったかのような発言をした。野中氏は、超党派の元国会議員や現職議員の訪中団の団長として6月3日に北京を訪れた時の発言。野中氏は、記者会見で、日中国交正常化交渉後、研修会で田中角栄首相(当時)から尖閣諸島をめぐり、日中首脳が問題を棚上げするとの共同認識に達したとの趣旨の話を聞いたと主張した。わが国政府の見解とは異なるが、野中氏は「生き証人として、聞いた者として明らかにしておきたかった。なすべきことをなした」と述べた。「聞いた」というのは、証拠がない。いかようにも言える。
 鳩山氏は、6月25~26日香港のフェニックステレビの取材に応じた時の発言。野中氏が「聞いた」とする伝聞を、「これは歴史的事実だ」と決めつけた。さらに27日、北京で記者団に対し、「40年前に棚上げすると決めたのだから、メディアも理解しないといけない」と述べ、棚上げの合意があったとの認識を示した。鳩山氏は、先のインタビューで、尖閣の日本領への編入過程についても「中国側から見れば盗んだというふうに思われても仕方がない」と中国の主張に理解を示した。発言のほとんどが、事実誤認によるものである。
 野中氏は、自民党政権のときに官房長官、幹事長等を歴任。「影の総理」とまで言われた。鳩山氏は、民主党政権のときの総理大臣、代表等を歴任。現在の元総理待遇を受けている。そういう政治家が、伝聞や事実誤認のレベルで、日中間の重大問題について発言し、中国政府が都合よく利用できる絶好の材料を提供してしまった。
 この二人は、どうしようもない。しかし、彼らが発言したことについては、政府が公に一つ一つ事実を明らかにし、また根拠の無いことは根拠なしと指摘していかなければならない。
 そうした状況に置いて、元外務省中国課長の田島高志氏は産経新聞の取材に応じ、棚上げについては、「中国側の一方的な思いで、合意はなかった」と述べた。田島氏は、中国側が合意があったとする1978(昭和53)年の会談に中国課長として同席したという。産経新聞6月29日号が田島氏の発言を掲載している。
 以下、田島氏の発言を伝える記事。

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●産経新聞 平成25年6月29日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130629/chn13062908300000-n1.htm
「尖閣棚上げ合意なかった」 78年の園田・トウ小平会談同席の元中国課長
2013.6.29 08:24

■「一方的思い」
 尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐり、中国政府が主張する領有権問題の「棚上げ合意」について、元外務省中国課長の田島高志氏は28日までに産経新聞の取材に応じ、「中国側の一方的な思いで、合意はなかった」と述べた。田島氏は、中国側が合意があったとする1978(昭和53)年の会談に中国課長として同席した。
 会談は、日中平和友好条約をめぐり同年8月10日、北京で園田直(すなお)外相(当時)とトウ小平副首相(同)の間で、同条約の批准書交換のため来日したトウ氏と福田赳夫首相(同)との間で10月23、25の両日にそれぞれ行われた。
 田島氏によると、8月の会談では、トウ氏が「日中間には釣魚島(尖閣諸島の中国名)や大陸棚の問題があるが、それ以上に共通点がある」と発言。これを受け、園田氏が同年4月に起きた中国漁船団による尖閣諸島周辺の領海侵入事件を念頭に「先般のような事件を二度と起こさないでいただきたい」と主張し、トウ氏が「中国政府としてはこの問題で日中間に問題を起こすことはない。数年、数十年、100年でも脇に置いておけばいい」と応じた。園田氏は聞き置いただけで反論しなかった。日本側は尖閣諸島を実効支配しており、中国側に現状変更の意図がないことが確認できたため、反論は不要と判断したという。
 中国側資料には、これに似たトウ氏の発言だけが記録されており、外務省が公開済みの記録には、尖閣関連のやりとり自体が含まれていない。
また、記録公開済みの10月25日の福田・トウ会談では、トウ氏が終了間際に「次の世代は、われわれよりもっと知恵があり、この問題を解決できるだろう」と「独り言のように」(田島氏)発言。福田首相は応答しなかった。トウ氏は会談後の単独記者会見で「国交正常化の際も、平和友好条約を交渉した際も、この問題に触れないことで一致した」と主張した。
 田島氏は、一連の会談での合意を否定した上で、中国側が、昨年9月の尖閣諸島購入で「日本側が共通認識(合意)を破壊した」(外務省声明)としていることには「事実に反する言いがかりだ」と批判した。

■72年も合意なし
 中国側は、国交正常化交渉が行われた72(昭和47)年9月27日の田中角栄・周恩来両首相の会談でも合意があったとしている。交渉に条約課長として同行した栗山尚一氏は「両首脳の間で棚上げの暗黙の了解が成立した」と指摘する。
 ただ、産経新聞の取材に「あったのは暗黙の了解で、中国側が『合意があった』と言うのは言い過ぎだ」とも話した。田島氏も「条約交渉当時、田中・周会談で棚上げの合意があったという認識はなかった」と72年の合意説を否定した。
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尖閣:中国首相が「日本が盗み取った」と公言2

2013-06-12 09:54:59 | 尖閣
 李克強首相が尖閣諸島を念頭に「日本が盗み取った」と主張した発言は、昨年9月楊潔●(よう・けっち)外相と李保東国連大使が国連総会一般討論の場で行った演説に通じる。楊外相と李国連大使は、この時、尖閣諸島の領有権を主張し、日本が尖閣諸島を「盗んだ」という表現を計7回使用した。日本による尖閣国有化に関連し、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べ、「強盗の論理と同じ」「マネーロンダリング(資金洗浄)のようだ」とも表現した。国連総会という国際社会で重要な会議の場で、日本を盗人呼ばわりする中国の姿勢は、異様だった。
 これに対し、日本の国連代表部の児玉和夫次席大使は、同演説に反論する答弁権を行使し、日本の尖閣諸島領有の歴史を詳細に説明した上で「日本の固有の領土」であることを主張した。李国連大使が激しく反論すると、日本は2度目の答弁権行使で、「歴史的事実と国際法に基づき、尖閣諸島は日本の固有の領土だ」と主張した。
 中国の言い分は、尖閣は台湾の付属諸島であり、カイロ宣言及びポツダム宣言によって、中国に返還されたはずだという論理である。カイロ宣言は、台湾などに言及し、「日本国が清国人より盗取したすべての地域を中華民国に返還する」と規定している。しかし、戦後の日本の領土は、昭和27年(1952)4月28日サンフランシスコ講和条約の発効を以て、法的に確定したものである。講和条約でわが国は、日清戦争で割譲を受けた台湾を放棄したが、わが国は台湾割譲以前に、尖閣諸島を閣議決定で沖縄県に編入している。当時、尖閣はどこの国にも属しておらず、国際法上適正な手続きによる編入だった。中国は、日本はカイロ宣言・ポツダム宣言に定められた義務を果たしておらず、「戦後の国際秩序に挑戦」していると主張するが、中国の言い分には、まったく根拠がないのである。
 だが、楊外相らの発言は、単に国連総会の場を使ったプロパガンダではない。周到な研究と計画あってのものと見て、わが国は外交的な対抗策を講じるべきである。中国政府は、日本に対し、第2次大戦の戦勝国の地位を利用し、戦後秩序を維持するという論理を用いて歴史認識や領土の帰属に係る主張をしている。中国が国際連合で歴史カードを使っているのは、国際連合は、第2次世界大戦の時の連合国がもとになっており、戦勝国が戦後秩序を維持するための機関として設立されたことに関係する。わが国では国際連合と訳すthe United Nationsは、正しい訳は「連合国」であり、中国はそれを使用している。日本は連合国に降伏して、連合国=国際連合に加入を許された旧敵国である。国連憲章には、日本を敵国と見なす「敵国条項」が残されたままである。この敵国条項は、中国が日米安保を無効化するために悪用する可能性があり、注意を要する。
 なお、李首相は、ポツダム宣言について「カイロ宣言の条件を必ず実施すると指摘している」と述べた。だが、カイロ宣言については、米英中参加国首脳の誰も署名はしておらず、チャーチル英国首相は国会ではっきり宣言の存在を否定している。米国国務省はカイロ宣言はなかったと公に発表している。宣言というより、公告という程度のものであることを、抑えておく必要がある。
 ところで、中国の習近平国家主席は、異例にも国家主席就任後、早期に訪米し、オバマ大統領との首脳会談を行った。6月7日、米カリフォルニア州で行われた首脳会談で、オバマ氏に対し、尖閣諸島は歴史的に見ても「中国固有の領土」と主張を繰り返し、中国の譲れない国益を意味する「核心的利益」に位置づけているとの認識を表明し、主権と領土統一を断固として守る方針を強調した。また習氏は「中米両国が互いに相手の核心的利益を尊重することが重要だ」とくぎを刺したと伝えられる。
 習氏が国家主席に就いて中国の最高権力者となれば、覇権主義的な行動を一段と強く推進してくることが予想されたが、予想通りの展開である。習氏は、オバマ氏との初の首脳会談で、オバマ政権を米中二大国のG2路線に引き戻させようとするとともに、尖閣については、尖閣については強い姿勢を示すことで、米国を牽制し、米国が日本に譲歩を迫るよう促す狙いがあったものとみられる。また首脳会議で「核心的利益」と述べたことで、日本に対し、引き続き強硬な方針で挑んでくることは確実である。
 6月上旬の米中首脳会談に向けて、中国は沖縄についても、これを奪取しようとする姿勢を明確にした。6月2~3日の拙稿「中国の沖縄略奪工作と琉球独立運動」に書いたが、5月8日、中国共産党機関紙、人民日報は、沖縄の帰属は「歴史上の懸案であり、未解決の問題だ」とする論文を載せた。11日人民日報傘下の環球時報は社説で、この論文に言及し、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」と中国政府に提案した。15日、沖縄では「琉球民族独立総合研究学会」が設立された。これに呼応して、衆院沖縄2区選出の社民党・照屋寛徳国対委員長が「沖縄、ついにヤマトから独立へ」と題した文書を公表した。16日環球時報は、社説で「琉球民族独立総合研究学会」について「中国の民衆は支持すべきだ」とする社説を掲載した。こういう流れの中で、米中首脳会談における習主席の発言は、行われている。ここ数か月間の中国の尖閣及び沖縄に関する外交宣伝工作の展開あっての発言であり、米中首脳会談に向けても計画的にかつしたたかに工作を展開してきたのだろう。
 中国は、尖閣=沖縄略奪工作を一貫して進めており、今後、一層大胆にかつ執拗に展開してくるだろう。尖閣諸島周辺で武力による威嚇を繰り返し、国民の間に厭戦気分を醸成し、同時に反戦思想を高揚させ、憲法改正や集団的自衛権行使が進まぬようにする。同時に沖縄の独立運動を育成し、沖縄県民の意識を誘導し、本土の反日左翼を利用し、沖縄と中央のメディアを操作する。そして、戦わずして勝つ孫子の兵法によって、兵を動かさず、米国と衝突せず、民主的に沖縄県民多数の意思によって、沖縄が独立し、中国の勢力圏に入ってくるよう謀る。だが、もしこの最善の策が国内外の事情によって遂行できないと見極めるや、牙をむいて襲い掛かってくるだろう。
 日本国民は、わが国の主権の要である尖閣を守り、また沖縄でチベットや新疆ウイグルの人民と同じ悲劇が起こらないよう沖縄を守り、またそれによって日本そのものを守らねばならない。

(註 ●=簾の广を厂に、兼を虎に)

関連掲示
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12o.htm
・拙稿「中国の沖縄略奪工作と琉球独立運動」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/b67a056be689c5ea0b357d66fa9b8da9
・拙稿「米中再接近をけん制し、価値観外交の展開を」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/9ef38f8b6965e21b17d046cff9e144ce

尖閣:中国首相が「日本が盗み取った」と公言1

2013-06-10 08:43:08 | 尖閣
 5月6日米国の国防総省は、中国の軍事動向に関する年次報告書を公表し、沖縄県・尖閣諸島をめぐり、中国が昨年9月から「不適切に引かれた直線基線」を使って領有権主張を強めていると指摘した。米政府は領有権問題で特定の立場を取らないとしているが、尖閣諸島周辺に独自に設定した「領海基線」について、「国際法に合致しない」と断じた。
 「領海基線」とは、領海の範囲を規定する際に基となる線である。国連海洋法条約で基線から12カイリ(約22キロ)の範囲まで領海を設定できるが、中国政府は昨年9月、尖閣諸島を中国領として扱えるよう、一方的に基線を設定した海図を国連事務総長に提出した。米国国防総省は、この動きに対する見解を発表したもので、国防総省が尖閣に関することで「国際法違反」との立場を明確にしたのは初めてだった。これに対し、中国外務省の華報道官は、独自の領海基線について「完全に国際法などに符合する」と主張し、米国に対し「この問題で誤ったシグナルを発してはいけない」とけん制した。
 中国政府は、尖閣諸島を略奪するために、段階的に主張と行動のレベルを上げてきている。4月26日には、中国外務省の華春瑩副報道局長は、記者会見で、尖閣諸島について「釣魚島の問題は中国の領土主権問題に関係している。当然、核心的利益に属する」と明言した。中国政府が尖閣を「核心的利益」と位置付けていることを、外交当局者が公式に認めたのは初めてだった。
 いずれ習近平政権の閣僚級が尖閣諸島を「核心的利益」と公言することが予想されたが、国営新華社通信によると、5月26日ドイツ訪問中の李克強首相は、ベルリン郊外のポツダムで演説し、尖閣諸島を念頭に「日本が盗み取った」と主張し、「世界平和を愛する人々は、第二次大戦の勝利の成果を破壊したり否定したりしてはいけない」と述べたという。
 李氏は、ポツダム宣言について「日本が盗み取った中国東北地方や台湾などの島嶼を中国に返還すると規定したカイロ宣言の条件を必ず実施すると指摘している。これは数千万人の生命と引き換えにした勝利の成果だ」と強調した。また「ファシストによる侵略の歴史の否定や美化の言動は、中国人が承諾できないだけでなく、世界各国の平和を愛する正義の勢力も受け入れられない」と発言したという。
 これに対し、菅義偉官房長官は27日の記者会見で、李首相が「日本が盗み取った」と主張したことに対し「あまりにも歴史を無視した発言だ」と批判した。また「尖閣諸島に関する中国独自の主張に基づくものであれば、決して受け入れることはできない」と指摘し、「いかなる発言もわが国の立場に影響を与えるものではない」と強調した。29日にも、中国の王毅外相が尖閣諸島をめぐり、ポツダム宣言の規定を引用し、菅氏に「もう一度、(歴史を)まじめに学んだらどうか」と領有権を主張したことに反論し、「尖閣諸島はポツダム宣言以前から日本の領土。私は歴史をしっかり勉強して発言している」と述べた。「(中国側の発言は)全く歴史を無視した発言だ。さかのぼると、(1895年の)日清講和条約締結以前から、尖閣はわが国固有の領土だった」と強調した。このように、即座にかつ明確に反論することが必要である。

 次回に続く。

尖閣:米中再接近の動きに注意すべし3

2013-05-23 08:45:11 | 尖閣
●親中派ケリー氏への国務長官の交代

 第1期オバマ政権はアジア太平洋重視の外交を続けた。それを主導したのは、クリントン国務長官だった。だが、健康問題を抱えるクリントン氏は国務長官を勇退し、氏の後任に、ジョン・ケリー氏が指名された。国防長官は、レオン・パネッタ氏からチャック・ヘーゲル氏に交替した。
 ケリー氏は平成16年(2004)大統領選では、民主党の候補としてブッシュ子と戦って敗れた。その後、上院外交委員長を務め、第1期オバマ政権ではアフガニスタンやイラク問題で外交の実務で活躍した。ヒラリー・クリントン氏に勝るとも劣らない大物である。だが、私はケリー氏の国務長官就任で、オバマ政権が対中融和路線に戻る可能性があることに懸念を覚えた。ケリー氏は、親中派なのである。平成16年(2004)ブッシュ子前大統領と戦った大統領選で、「中国は一つ」との認識で一貫し、米国が台湾支援の根拠としている台湾関係法には一切言及しなかった。
 案の定、今年1月末の米議会上院公聴会で、ケリー国務長官は、「米国は中国を敵視せず、協力相手とみなすべきだ」と主張し、「アジア太平洋地域での軍事力増強は中国包囲網との印象を与える」と親中的な姿勢を示した。ケリー氏は、上海生まれの母方の祖父が、アヘン貿易で財を成したという家系の過去に反省の意識を持っているらしい。フランクリン・デノア・ルーズベルトも、母方のデラノ家がやはりアヘン貿易で財を成した富豪だった。そういうコンプレックスが、彼の対中政策に影響を与えたと指摘されている。ケリー氏の場合、その点はどうか分からないが、対中融和的であることは、明らかである。
 2期目のオバマ政権は、「財政の崖」と呼ばれる財政危機に直面しており、強制的に国防費を削減することとなった。ヘーゲル国防長官は、この課題を担っている。国防費の削減は、アジア太平洋地域での軍事的対応の縮小につながる。ちょうどそういう時期に、親中派のケリー氏が国務長官になった。一方のへーゲル国防長官は、これまでアジア太平洋地域の安全保障に携わったことがなく、日本や中国に対してどういう認識を持っているか、まだよく分かっていない。
 4月12~15日、ケリー長官は東アジアを歴訪した。韓国・中国に続いてわが国も訪問した。13日には、習近平国家主席と会談した。このとき、習主席は、「先ごろオバマ大統領との電話会談で中米の協力関係を強化し、『新型大国関係』の構築を模索することで合意した。双方が戦略的、長期的な視点から積極的に協力関係を拡大することを希望する」と語ったと報じられる。
 ケリー長官は北京で興奮気味に、「期待したよりもずっと多くの分野で、ほとんどの分野で、いや全ての分野で、不同意よりも同意が実現した。(米中という)世界最強の2カ国、世界最強の2大経済国、2大エネルギー消費国、国連安保理の2大国が、国際社会の隅々にまで目配りするとき、相乗作用が生じるのです」と語った。櫻井氏は「米中協調を国益とする二大国主義(G2)への転換を思わせる発言だった」と書いているが、ケリー氏の発言は、オバマ政権があたかも第1期のスタート時点に戻ったかのようである。
 習主席が唱える「新型大国関係」には、「双方の核心的利益を尊重し合う」という条件がある。中国の「核心的利益」とは、台湾・チベット・新疆ウイグル、そして南シナ海・東シナ海を含む。ケリー国務長官が、クリントン氏もそうだったように、中国との外交に実際に当たる中で、相手の正体に早く気づき、外交姿勢を改めることができるかどうか。それによって、米中関係、さらにアジア太平洋地域の情勢が大きく左右されることになるだろう。

●米中再接近を防ぎ、日米の連携を強化する

 私は、世界の平和と安定にはアジアの平和と安定が不可欠だと考える。そのためには、日米が連携し、アジア太平洋における中国の覇権主義を抑える必要がある。中国は尖閣諸島だけでなく、尖閣の次は沖縄を狙っている。沖縄を略取したら、さらに日本全体を狙ってくる。だから、尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることになる。このことは、米国にとっても重大な意味を持つ。沖縄には米軍基地がある。沖縄から米軍が撤退した後、沖縄が中国領になれば、米国はアジア太平洋における拠点を失う。沖縄が中国の手に落ちると、アジア太平洋における軍事的なバランスが大きく崩れる。クリントン前長官は、この点の理解がかなり進んでいたようだが、ケリー長官はまだしっかりした認識を持っていないように見受けられる。
 東アジア歴訪の最後にわが国を訪れたケリー長官は、4月15日安倍首相、岸田外相と会談した。対北朝鮮政策、尖閣諸島、普天間移設等を議論し、日米の連携の強化が図られた模様だが、その一方、ケリー長官は会談で中国への言及が少なかったと伝えらえる。中国との融和・協調に意識が傾き、中国の術策にはまって、日米間に隙間を生じないようにしれもらいたいところである。
 米国政府では、知日派のカート・キャンベル国務次官補が退任したが、後任には幸い知日派の国家安全保障会議(NSC)のダニエル・ラッセル・アジア上級部長が内定した。近く上院で承認を受ける見通しである。わが国の政治家・外交関係者は、日本をよく知る米国の政治家・外交官等とのつながりを生かし、ケリー国務長官が中国の領土的野心、覇権主義を理解し、同盟国日本の重要性を認識できるよう、働きかけを強めるべきである。そのことが現下で米中再接近の動きを防ぎ、日米の連携を強化する上で要になると思う。
 以上で本稿を終える。価値観外交については、引き続き、稿を改めて書く。

関連掲示
・拙稿「2013年明けの『財政の崖』は回避、だが米国に次の危機が」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12.htm
 目次から項目36へ
・拙稿「米中が競い合う東南アジアと日本の外交」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12p.htm

尖閣:米中再接近の動きに注意すべし2

2013-05-21 10:17:02 | 尖閣
●東南アジアが米中の競い合う場に

 中国は、米国をけん制しつつ、東南アジアへの経済・外交・安全保障面での影響力を拡大している。とりわけ、南シナ海のほぼ全域を「核心的利益」と呼んで領有権を主張し、覇権の確立を目指している。これに対し、米国はアジア太平洋における中国の行動をけん制するため、ASEANとの関係の強化を図ってきた。冷戦時代に、米国と中国はインドシナ半島で激しく勢力争いをした。ベトナム戦争やカンボジア内戦は、米中の勢力争いの舞台だった。今日その争いの再現を思わせるほど、東南アジアは再び米中が激しく競い合う地域となっている。
 オバマ大統領は、23年(2011)秋、それまで以上に「アジア太平洋シフト」外交の姿勢を明確にし、在日米軍再編など日米同盟を通じた対中抑止強化に踏み出した。ただし、中国に対して柔軟な対話路線を取り、軍拡・海洋問題では牽制しながら、対北朝鮮・対イランでは協力を要請するという複雑な外交を展開しているものである。
 24年(2012)11月6日オバマ大統領が再選された。大統領が引き続きアジア太平洋重視の方針を堅持する姿勢を示したことは、日本にとってもアジア太平洋地域にとっても歓迎すべき事柄だった。
 再選されたオバマ大統領はタイ、ミャンマー、カンボジアの3カ国を、再選後初の外遊先に選んだ。このことは、2期目もアジア太平洋重視の方針を堅持することを示しただった。11月19日、オバマ氏は現職の米大統領として初めてミャンマーを訪問した。オバマ氏は、スー・チー氏を自宅に訪ねて会談した。スー・チー氏の肩を抱いて微笑むオバマ氏の写真は、ミャンマーの民主化と米国の関与を強烈に印象付けた。オバマ氏のミャンマー訪問は、ミャンマーを中国から引き離し、自由民主主義の勢力の側に引き付ける外交をさらに大きく前進させるものとなった。
 このときプノンペン行われた一連のASEAN関連首脳会議で、東南アジアにおける米中の対立が一段と鮮明になった。南シナ海問題について、オバマ大統領は「多国間の枠組みでの解決」を主張した。一方、中国の温家宝首相は「あくまで2国間で解決すべきだ」と従来の姿勢を繰り返した。中国は多国間協議を拒否し、個別撃破の政略を取っている。中国の反対により、南シナ海の紛争回避に向けた「行動規範」の策定協議入りは先送りされた。
 中国が南シナ海で覇権を確立すれば、東シナ海でも覇権確立の動きを強化することは明白である。南シナ海の領有権問題は、わが国にとっては東シナ海の領有権に直結する問題である。南シナ海から東シナ海へ、さらにインド洋へと勢力を広げようと企む中国の野望に対抗するため、わが国は、米国・東南アジア諸国に加えて、南方のオーストラリア、西方のインドへも連携の輪を広げ、太く、強くする必要がある。米国の政権が、日米安保条約を堅持し、中国に対して積極的に対抗する外交を行う政権であることは、わが国にとっても、またアジア太平洋地域の多くの国々にとっても、喜ばしいことなのである。

 次回に続く。