ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

衆院議員の84%が改憲に賛成

2017-10-31 09:27:08 | 憲法
 10月25日、私は、友人たちとともに東京・永田町海運クラブで行われた「美しい日本の憲法をつくる国民の会」に参加しました。衆院選では憲法改正を公約に掲げた自民党が圧勝し、改憲派が8割を占めました。戦後初めてのことです。
 そうした状況を踏まえ、本集会では「今こそ憲法9条を改正し、自衛隊の存在を明記することが何よりも求められている」などとする決議を満場一致で採択しました。決議文は、参加した自民党及び日本維新の会の代表者に手交されました。

 各氏の発言から~
 桜井よしこ氏(共同代表)「本当に深刻に憲法改正を考えている人々がどれだけいるのか。とりわけ一番大事なことは9条2項だ。自衛隊を国軍としてきちんと位置づけることができるかどうかだ」
 ケント・ギルバート氏(米カリフォルニア州弁護士)「9条2項は国際的に見て異常。病気だ」「憲法第9条を改正してようやく占領が終わる」
 織田邦男氏(元空将)「自衛隊を違憲と言ってる憲法学者は卑怯。違憲なら解散か改憲しないといけないのに両方とも言わない。国民が自衛隊を認めてるから『解散!』と言う勇気もない。『改憲!』と言うとこれまでの主張と矛盾する。だから卑劣だと思う」
 山田宏氏(自民党参議院議員)「強盗が入ってきた時に70年前の家訓で抵抗できないから隣のおじさんを呼んでくると言ったら終わりなんですよ!その家庭は終わりですよ!」

 参加できなかった方は、産経新聞が詳細を報じていますので、お読みになるようお勧めします。
http://www.sankei.com/politi…/…/171026/plt1710260002-n1.html
http://www.sankei.com/politi…/…/171026/plt1710260001-n1.html
http://www.sankei.com/politi…/…/171026/plt1710260004-n1.html

 ところで、読売新聞は、衆院選後、当選者にアンケートを行いました。10月27日の記事によると、当選した議員全体の93%となる431人が回答し、84%が改憲に賛成でした。改憲賛成者が挙げた改憲項目で最も多かったのは、「緊急事態条項の創設」の69%。続いて、「環境権」(50%)、「自衛のための軍隊保持」「参院選の合区解消」がともに49%でした。「国と地方の役割」は48%、「教育無償化」は47%でした。
 記事のうしろ3分の1ほどは有料サービスの会員でないと読めませんが、その部分も含めて全文を英訳した記事が、読売の英字紙 The Japan News に載っています。
http://www.yomiuri.co.jp/election/…/20171025-OYT1T50196.html
http://the-japan-news.com/news/article/0004027678
 上記の記事において、現時点で3分の2以上が賛成するのは、「緊急事態条項の創設」だけです。私は、緊急事態条項の新設は不可欠とし、10年以上前から新設を訴えています。しかし、9条の改正をしなければ、日本は独立主権国家としての本来の姿を取り戻すことはできないと考えます。9条の改正なくして、真の憲法改正とは言えません。国会議員の3分の2以上が「自衛のための軍隊保持」を改憲項目に挙げ、国民の過半数がそれに賛成する状態になることを目指して、啓発活動を続けましょう。そして、安倍政権において、憲法改正を必ず実現すべく頑張りましょう。

ユダヤ119~経済学におけるユダヤ人

2017-10-29 06:45:11 | ユダヤ的価値観
●経済学におけるユダヤ人

 ここで経済学の歴史とそこにおけるユダヤ人の活躍を書いておきたい。
 近代ヨーロッパで資本主義が発達すると、資本主義の経済社会を理論的にとらえる学問が発達した。その経済学の歴史は、アダム=スミス・リカードらによるイギリスの古典派経済学に始まり、先進国に対して後進国独自の発展を追求するリストらによるドイツ歴史学派、古典派経済学を継承しつつそれを社会主義の側から批判したマルクス・レーニンらによるマルクス経済学、財の価値の決定に限界効用の概念を打ち出したメンガー・ジェボンズ・ワルラスらによる新古典派経済学などが続き、20世紀には、失業問題に有効需要の概念で取り組んだケインズ経済学、ケインズの管理政策を批判するハイエク・フリードマン・ルーカスらによる新自由主義的な新古典派経済学などが現れた。21世紀の今日は、リーマン・ショック後、新古典派経済学の見直しとケインズ経済学の復権が進んでいるところである。
 ここに名前を挙げた代表的な経済学者のうち、デイヴィッド・リカード、カール・マルクス、ミルトン・フリードマンはユダヤ人である。リカードは、産業革命の進む19世紀初めに古典派経済学を完成させて、イギリスの自由主義的資本主義の発展に寄与した。マルクスは、1870年代に資本主義体制を転覆する革命の経済学を樹立した。それに対して、1930年代に社会主義革命を防ぐために、非ユダヤ人のケインズが自由に一定の統制を加えた。すると、これに反発して、1960年代にフリードマンが再び自由主義的資本主義を徹底する経済学を提示した。このように見ると、経済学の歴史において、ユダヤ人が重要な役割を果たしてきたことが分かるだろう。
 さて、経済学の諸学派は、資本主義を肯定してその発達を促すものと、資本主義を否定して社会主義を目指すものに分かれる。マルクス主義の経済学以外は、すべて前者である。前者には、様々な学説があるが、私は、ネイション(国家・国民・共同体)の利益を主に追及するものと、資本の利益を主に追及するものに分類する。
 ネイションの利益を主に追及する経済理論は、アダム=スミス、ヒューム、リスト、ケインズらによって展開された。この系統は、個人の自由を尊重するとともに、人間の共同性を保持しようとする。資本の利益を追求するが、個々の資本の利益よりも、国家・国民全体の富の増大を目標とする。そのために有効な政策を政府に提案する。具体的な政策には、自由貿易主義、保護貿易主義、総需要管理主義などの違いがあるが、いずれもネイションの発展・繁栄を目的とする。
 これに対し、資本の利益を主に追及する経済理論は、新古典派経済学の論者が多く展開してきた。アトム的な個人をモデルとし、利己的で合理的に行動する人間を想定し、市場における経済活動を研究する。資本の自由な活動が優先され、市場を中心概念とし、国家・民族の概念は重視されない。
 ユダヤ人の資本家や巨大国際金融資本家にとっては、資本の利益を主に追及する経済学が、彼らの価値観と要求に応えるものである。ユダヤ人は離散した民族として自らの国家を持たず、国民国家の枠組みを超えた経済活動によって最も利益を獲得できる。ユダヤ人資本家にとっては、自らが所属する異民族の国家・国民の富の増大よりも、自らの貨幣を投じた資本の増大が目標である。そして、ユダヤ的価値観に最も適った経済理論を打ち立てたのが、ユダヤ人経済学者のフリードマンだったと私は考える。
 フリードマンの経済学こそ、1980年代以降、世界を席巻した新自由主義・市場原理主義の学説であり、2008年のリーマン・ショックに至る強欲資本主義を助長した理論である。

●フリードマンの新自由主義的な経済理論

 フリードマンはハンガリーからのユダヤ系移民の子として、1912年にニューヨークで生まれた。1870年代から発達した新古典派経済学を継承し、これを発展させた。新古典派経済学とは、一般に限界効用の概念で経済理論を刷新する限界革命を経た経済学を言う。
 第2次世界大戦後、新古典派経済学は、ワルラスの一般均衡理論を基礎にすえる学派が主流となった。ワルラスの一般均衡理論は、ある与えられた時点で、人口・資源・技術・社会組織を与件として、競争を徹底的に行うならば、もはやこれ以上変化しない状態としての一般均衡状態に到達すると説く。この理論によれば、各市場において需要と供給が一致する価格と生産量の組み合わせが実現している状態は、もっとも効率的である。その状態を実現する方法は、「絶対的な自由競争」つまり完全競争が機能するようにすることである。そして、各市場で完全競争が作用し、価格を通じた需給調整がうまくいくならば、最適の状態が達成され、効率的な資源配分が実現されるとする。
 1950~60年代には、世界的に、新古典派よりもケインズ学派が優勢だった。その始祖のジョン・メイナード・ケインズは、新古典派経済学は「供給はそれみずからの需要を創り出す」というセイの法則を暗黙の前提としており、また完全雇用状態という特殊な場合にしか当てはまらないとしてその欠陥を指摘した。そして新古典派の理論を特殊として包摂する一般理論を打ち出した。1929年世界大恐慌後の時代に、不況と失業を解決するための理論を構築して、具体的な政策を提案し、その実現のために活動した。
 ケインズは、イギリス伝統の個人を尊重する個人主義的自由主義を説き、自由を守るために、中央管理により、一定の規制を行うことを提唱した。それが有効需要の理論に基づく総需要管理政策である。この政策がイギリスの国策に取り入れられ、またアメリカのニューディール政策に理論的根拠を与えた。英米はケインズ的な政策によって経済的危機を脱し、共産主義革命の波及を防ぎ、またナチス・ドイツとの戦争に勝利することができた。いわば左右の全体主義から自由を守ることに、ケインズは重大な貢献をした。それによって、ケインズの経済学は、第2次大戦後の世界の多くの国における経済学研究の主流となった。同時に、経済政策の策定に重要な役割を果たした。本稿では、ケインズ理論には立ち入らない。詳しくは、拙稿「日本復活へのケインズ再考」をご参照願いたい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13k.htm
 ケインズの理論を認めない経済学者は、1930年代から多くいた。なかでもフリードリッヒ・フォン・ハイエクは、自由への規制は自由の否定になるとして、政府の市場への介入に徹底的に反対した。ハイエクは新自由主義の旗手といわれる。そのハイエクを継承し、彼の新自由主義を徹底したのが、フリードマンとされることが多い。ただし、ハイエクはデカルト、サン=シモンらを設計主義だとして行き過ぎた合理主義を批判しており、フリードマンを彼らの流れに立つ実証主義だとして厳しく批判している。ハイエクにはユダヤ人説があるが、彼の出自はユダヤ人の家系ではない。
 フリードマンは、ケインズ経済学全盛の時代から、一貫してこれに対抗した。著書『資本主義と自由』(1962年)において、市場主義を前面に押し出し、政府が市場に介入することや累進課税による所得再分配政策を批判した。ケインズが打ち立てた資本主義を政府が管理する理論に対して、フリードマンは強く反発した。そして、大恐慌以前の古典的自由主義への復活を求めた。

 次回に続く。

脱デフレのため、金融緩和偏重の経済政策是正を~田村秀男氏

2017-10-28 08:51:09 | 経済
 衆院選は、自民圧勝という結果になりました。選挙期間中、連日伸長を続いていた東京株式市場の日経平均株価は、23日の終値が2万1696円65銭でした。昭和24年5月に戦後の取引が再開されて以降で初めて15営業日続伸し、歴代最長の連騰記録が更新されました。高度成長期の記録を上回ったことは、驚きです。この株価の続伸は、衆院選で自公が優勢と予想され、安倍政権が支持され、アベノミクスが継続されることに、市場が好反応をしたものです。
 安倍政権は、アベノミクスを継続し、デフレからの完全脱却を実現してほしいものです。今後の経済政策について、反骨のエコノミスト、田村秀男氏は、選挙前の時点で大意次のように述べました。
 「アベノミクスには光と影が交錯している。雇用面では求人倍率がめざましく上昇したのだが、賃金には反映しない。家計消費は平成26年4月の消費税増税ショックの後遺症から抜けきれない。2%のインフレ目標達成のメドはいまだに立たないどころか、代表的なインフレ指標である国内総生産(GDP)デフレーターは昨年後半からマイナス基調だ。『脱デフレ』はいまだ成らず、だ」。
 「タンス預金」は、「第一生命経済研究所の推計では今年2月末時点で43兆円、前年に比べ3兆円、8%増という」「経済の観点からすればデフレ病の一症状である」「経済という体にカネという血液が、現預金の皮下脂肪とならずに消費という血管で円滑に流れれば元気になるのだが、デフレ病がそれを邪魔するのだ」
 「日銀の黒田東彦総裁は異次元金融緩和があれば、消費税増税に伴うデフレ圧力を軽くできるとし、26年4月の消費税増税を安倍晋三首相に決断させた。『デフレは貨幣現象』という従来の学説はそうでも、机上の空論だ。増税など緊縮財政は、日本のような慢性デフレ経済には当てはまらないのだ」「衆院選後の国会では、金融緩和偏重の経済政策是正に向け、政府・日銀、与野党が真剣に議論を戦わせてほしいものだ」と。

 以下は、田村氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成29年10月22日

http://www.sankei.com/premium/news/171022/prm1710220010-n1.html
2017.10.22 08:00更新
【田村秀男の日曜経済講座】
衆院選後の国会、財政・金融政策論戦を 脱デフレに向けカネを動かせ

 衆院選後の経済の懸案はデフレ圧力再燃だ。改めて問う、財政と金融政策はどうあるべきか。
 アベノミクスには光と影が交錯している。雇用面では求人倍率がめざましく上昇したのだが、賃金には反映しない。家計消費は平成26年4月の消費税増税ショックの後遺症から抜けきれない。2%のインフレ目標達成のメドはいまだに立たないどころか、代表的なインフレ指標である国内総生産(GDP)デフレーターは昨年後半からマイナス基調だ。「脱デフレ」はいまだ成らず、だ。
 新聞の社会面記事を読んでみよう。瞠目(どうもく)したのは、相次ぐ札束のゴミ捨てだ。4月には群馬県沼田市で4251万円、5月には奈良県御所市で2千万円の現金がそれぞれ廃棄物処分場で見つかった。前者は法定相続人に返還され、後者は従業員が1千万円をネコババしていたというオチがついたのだが、ため息をつかされたのはその巨額ぶりだ。
ゴミとなって見つかった現金の相場は2年前は1千万円以下だったが、昨年は1千万~3千万円だ。幸いにも見つかったケースは氷山の一角で、そのまま焼却処分された万札はどのくらいになるのか、と想像してみたくなる。
 上記のようなカネの出所は「タンス預金」と呼ばれ、第一生命経済研究所の推計では今年2月末時点で43兆円、前年に比べ3兆円、8%増という。銀行に預けることで、マイナンバーを通じて税務当局に補足されるのを嫌う富裕層の相続税逃れも動機の一部にあるのだろうが、経済の観点からすればデフレ病の一症状である。その証拠に、家計の金融資産のうち現預金がデフレとともに急増している。
 日銀によると、今年6月末の家計金融資産総額の51%、944兆円が現預金であり、前年比で23兆円増えた。日銀のマイナス金利政策を受けて定期預金金利はゼロ・コンマ%台だが、物価は上がらないのだから現預金のままでも目減りしない。それはもちろん「持ってる」家計の賢明な判断に違いない。
「持っていない」者のひがみで言うわけではないが、こうした家計の集合体である国民経済は、とばっちりを受ける。停滞するのだ。経済のパイは少しずつ大きくなっているのだが、消費は盛り上がらない。家計が現預金増加分の2割強(今年4~6月期の場合年率換算で5兆4千億円)を消費に回せば、GDPは1%増える。
 要は、経済という体にカネという血液が、現預金の皮下脂肪とならずに消費という血管で円滑に流れれば元気になるのだが、デフレ病がそれを邪魔するのだ。
 インフレ目標2%を掲げる日銀の「異次元金融緩和」の効き目はあるのか。王道たるべきシナリオは、日銀が年間で80兆円、GDPの15%相当のカネを発行して金融機関に流し込む。金融機関がその分融資すれば、カネが経済全体に循環するようになる。企業は設備投資、家計は消費を増やすようになり、需要が拡大するので物価や賃金が上がりやすくなるはずだ。実際にはどうか。
 グラフを見ると、銀行に流し込まれた日銀資金は日銀への預け金となって大半が日銀当座預金にとどまっている。銀行の貸出増加額は昨年6月時点では預け金増加額の1割にも満たなかった。今年は貸出増加額が預け金増加額の5割を超え、ようやく上向いてきた。設備投資、住宅ローン、中小企業向けと銀行は融資に前のめりになっている。
 無理もない。銀行は膨らむ預金と日銀預け金を動かさずにしておけば、たとえゼロに近くても預金金利は払わなければならないし、一部の日銀当座預金についてはマイナス金利のために目減りする。貸し出しを増やして利ざやを稼ぐしかないわけだ。それでもGDPデフレーターは下向いており、脱デフレにはほど遠い。
 日銀の黒田東彦総裁は異次元金融緩和があれば、消費税増税に伴うデフレ圧力を軽くできるとし、26年4月の消費税増税を安倍晋三首相に決断させた。「デフレは貨幣現象」という従来の学説はそうでも、机上の空論だ。増税など緊縮財政は、日本のような慢性デフレ経済には当てはまらないのだ。
 政府が増税によって家計から所得を吸い上げ、社会保障や教育などの財政支出を切り詰める。つまり、家計など民間にカネを還流させないと、内需が減退するのは小学生だってわかる。衆院選後の国会では、金融緩和偏重の経済政策是正に向け、政府・日銀、与野党が真剣に議論を戦わせてほしいものだ。(編集委員)
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関連掲示
・拙稿「消費増税延期決定は大英断」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/227fa3e17f3ca36fa12a2c8dcafc4a10

ユダヤ118~新自由主義とリバータリアニズムの思想

2017-10-26 08:59:50 | ユダヤ的価値観
●新自由主義とリバータリアニズムの思想

 新自由主義の思想的背景について書くと、新自由主義に影響を与えた思想家の一人に、ロシア生まれのユダヤ系アメリカ人、アイン・ランドがいる。
 ランドは、思想家であるとともに小説家・劇作家・映画脚本家でもあった。理性を知識を得る唯一の手段とし、信仰や宗教を拒絶した。合理的かつ倫理的な利己主義を支持し、利他主義を否定した。『利己主義という気概』(The Virtue of Selfishness、1964年)において、彼女は利己主義を積極的に肯定した。ランドの見解によると、自己の利益こそ倫理の基準であり、無私無欲は最も深い不道徳である。自分の生命と幸福が自分にとっての最高価値であり、人はお互いに他者の利益のための従僕や奴隷ではない。自己の利益の追及は、自己の責任を伴う。人生においてどういう価値を求め、その価値を獲得するためにどのように行動するかは、各自の自己責任である。
 ランドは、このような見解に立って、「完全で、純粋で、支配されない、規制を受けない自由放任資本主義」の実現を提唱した。その主張は、最小国家を個人の権利を守る唯一の社会制度として支持し、政府によるあらゆる規制を撤廃しようとするものである。ランドは、自由放任資本主義の提唱は、唯一の権利としての個人の権利を提唱することになると断言した。
 ランドはシオニストである。1973年の第四次中東戦争の時は、パレスチナ及びアラブ諸国と戦うイスラエルを「野蛮人と闘う文明人」と呼んで支持した。また、アメリカに入植した白人種には先住民から土地を奪う権利があったと述べた。
 ランドの徹底した利己主義の主張は、新自由主義に強い影響を与えた。元FRB議長のアラン・グリーンスパンは、ランドを師と仰ぎ、ランドが自分の思想形成に決定的影響を与えたと告白している。また、ランドの利己主義と自由放任の擁護は、グリーンスパンを通じて、サブプライム・ローン問題やリーマン・ショックによって世界的な経済危機を引き起こしたという非難が上がっている。
 新自由主義は、自由を中心価値とする。平等に配慮する修正自由主義を批判し、自由一辺倒の古典的自由市義への回帰を図るものである。米国のいわゆるリベラルは、修正自由主義であり、古典的な自由主義を信奉する者は、これと自らを区別するためにリバータリアニズムを標榜する。リバータリアニズムは、個人の自由を至上の価値とする思想である。自由至上主義または絶対的自由主義と訳される。
 ランドは、リバータリアニズムの思想的支柱ともなっている。「アイン・ランドがいなかったら、リバータリアン運動は存在しなかっただろう」とリバータリアン党の創設者の一人、デイヴィッド・ノーランは述べている。共和党内のリバータリアニズムの運動であるティーパーティにもランドの信奉者がいる。ランドから影響を受けたと公言する者には共和党員が多く、連邦議会議員や政治評論家にもランドの影響を認める者がいる。
 リバータリアニズムは、米国に伝統的な開拓民の独立心に裏付けられている。その理論家の一人に、ロバート・ノージックがいる。ノージックはロシア系ユダヤ人移民の子としてニューヨークに生まれた。拙稿「人権――その起源と目標」に、現代の正義論としてジョン・ロールズの思想を書いたが、ロールズは、自由を優先しつつ平等に配慮することが正義だとする正義論を説いたのに対し、ノージックは、ロールズを古典的自由主義の立場から批判した。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion03i-4.htm
 ノージックは、著書『アナーキー・国家・ユートピア』(1974年)で、すべての個人は、生命、自由及び財産の権利を侵害されることなく、侵害されれば処罰や賠償を求めることができる絶対的な基本的権利を持つとする。ノージックは、この権利を、人間は単なる手段ではなく目的であり、本人の同意なしに何かの目的を達成するために利用したり犠牲にしたりすることは許されないというカント的な思想で基礎づける。ノージックによると、道徳的に正当化できる国家(政府)は、暴力・盗み・詐欺からの保護、契約の履行の強制に限定される「最小国家」のみである。所得の再分配等の機能を果たそうとする「拡張国家」は、人々の権利を侵害するゆえに正当化されない。最小国家は、人々の自由な活動と結合による自発的共同体であるユートピアのための枠組みとして「メタ・ユートピア」という性格を持つとする。
 ノージックは、国家に必要なのは市場の中立性と矯正的・手続き的正義の確保であると説く。また取得と交換の正義が満たされている限り、どのようなものであっても、結果としての配分は正しいとする。ベンサム流の功利主義(最大幸福主義)やロールズの格差是正原理については、分配の結果を何らかの範型に当てはめようとするものであり、政府によるそうした押し付けは、個人の自由を侵害し、専制的な再分配を正当化するものであると批判する。この考え方は、政府による市場への介入に対して全体主義への道と強く反対したハイエクや、第2次大戦後、新古典派経済学の中心となり、新自由主義の経済理論を説いたフリードマンに通じるものである。また、利己主義を積極的に肯定したランドの思想とも、部分的に共振するところがある。ノージックの思想は、政党で言えば共和党の考え方に近く、2009年に始まった共和党内のリバータリアニズムの運動団体、ティーパーティに影響を与えていると推察される。これに対し、ロールズの思想は、民主党の左派の考え方に近い。
 フリードマン、ランド、ノージックはユダヤ人ないしユダヤ系だった。自由を中心価値とするアングロ・サクソン系の思想家以上に、ユダヤ人ないしユダヤ系の思想家が自由を至上の価値とし、アングロ・サクソン=ユダヤ文化に強く作用してきたことは、注目に値しよう。

 次回に続く。

ユダヤ117~リーマン・ショックと強欲資本主義の復活

2017-10-24 09:27:08 | ユダヤ的価値観
●リーマン・ショックと強欲資本主義の復活
 
 ビル・クリントン政権に替わったブッシュ子政権は、再びレーガン政権を受け継ぐ新自由主義・市場原理主義の経済理念を取った。だが、その経済政策は、失敗に終わり、貧富の差が拡大し、税収が減少した。米国は、再び双子の赤字を抱えるようになった。
 こうした問題に対処するため、アメリカはウォール街の株式市場に海外から資金を集める必要を高め、様々な金融派生商品で資金を呼び込んだ。自己資金の何倍もの資金を借りて株式を買うレベリッジという手法により、巨額の取引が行われた。石油、穀物など、あらゆるものが、投機の対象となった。その活動は、強欲資本主義と呼ぶにふさわしい。ここで猛烈な活動をしたのが、ユダヤ系のゴールドマン・サックスに代表される投資銀行や、ユダヤ人のジョージ・ソロスらによるヘッジファンドだった。
 特に大きな社会問題となったのが、サブプライム・ローンである。サブプライム・ローンは、信用能力の低い階層を対象とした住宅ローンである。ウォール街は、そうした低所得者向けの住宅ローンを証券化し、これを安全性の高い商品であるかのように仕立てて、世界中で売りさばいた。
 2007年(平成19年)、サブプライム・ローンが焦げ付き、これをきっかけに世界的な金融危機が始まった。翌2008年9月15日、投資銀行のひとつリーマン・ブラザーズが倒産した。世界経済は約80年前に起きた大恐慌以来の危機に陥った。これがリーマン・ショックである。
 1929年の大恐慌は、投機的な投資が一つの原因となって発生した。恐慌後、アメリカでは金融危機の再発防止のための金融制度改革が行われ、銀行業務と証券業務の分離を定めたグラス・スティーガル法(銀行法)、証券法、証券取引所法が成立し、ウォール街の活動を監視する証券取引委員会(SEC)が設立された。
 大恐慌後に設けられたこうした規制は、1970年代までは、巨大国際金融資本の活動を抑えるのに有効だった。しかし、1980年代、新自由主義・市場原理主義の席巻により、レーガン政権の時代から徐々に規制が緩和された。そして、クリントン政権の1999年にグラム・ビーチ・ブライリー法が成立した。同法によって、銀行・証券・保険の分離が廃止された。その結果、金融機関は、持ち株会社を創ることで、金融に関するあらゆる業務を一つの母体で運営することが可能になった。これを理論的に推進したのが、新古典派経済学だった。
 「自由」の名の下、アメリカの金融制度は大恐慌以前に戻ってしまった。ウォール街は、さまざまな金融派生商品(デリバティブ)を開発し、サブプライム・ローン、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)等を生み出し、世界中を狂乱のマネー・ゲームに巻き込んだ。だが、猛威を振るったカジノ資本主義は、リーマン・ショックによって破綻した。
 リーマン・ショック後、米国では投機的な金融機関に対する一定の規制が行われた。しかし、その規制は小規模なものにとどまっている。強欲資本主義は、一時的なダウンから立ち上がり、その勢いを取り戻している。
 ユダヤ系金融業者は横の連携を取りつつ、再び富の獲得と拡大に活躍している。その中でアメリカの政権への参加が最も目立つ企業が、ゴールドマン・サックスである。ゴールドマン・サックスはユダヤ系で、もとはロスチャイルド財閥との関係が深かったが、現在はロックフェラー財閥とも融合している金融機関である。1990年代からウォール街を代表する投資銀行として巨大化した強欲資本主義の象徴的存在である。2008年(平成20年)の経済危機で、生き残りのために商業銀行に変わった。
 ところで、アメリカでは、経済政策は政府よりも連邦準備制度(FRS)が実権を握っている。FRSの理事会をFRBという。FRBについては、先に書いたが、米欧の巨大国際金融資本の連合による国際経済管理機構である。
 1980年代末から2000年代半ばにかけて18年間、連邦準備制度理事会に君臨したのが、アラン・グリーンスパンである。ブッシュ父、クリントン、ブッシュ子と政権が共和党・民主党・共和党と変わっても、グリーンスパンはFRB議長を続けた。それだけ巨大国際金融資本の支持があったと考えられる。グリーンスパンはユダヤ人であり、ユダヤ系金融資本、さらにロスチャイルド財閥、ロックフェラー財閥につながっている。グリーンスパンは、2006年(平成18年)にFRB議長を退任した後、住宅バブル、石油バブル、そしてリーマン・ショックを招いた責任を問われることになった。
 後任のFRB議長には、ベン・バーナンキが就いた。バーナンキは、プリンストン大学の教授だったが、ブッシュ子政権下でFRBの理事となり、2006年に議長となった。バーナンキはグリーンスパンを批判するのでなく、基本的にグリーンスパンの路線を踏襲した。結果が良くなかった部分を是正するという対応だった。バーナンキもユダヤ人であり、グリーンスパン同様、ユダヤ系金融資本、さらにロスチャイルド財閥、ロックフェラー財閥につながっていると見られる。バーナンキの在任中にリーマン・ショックが起こった。バーナンキは、大胆な金融緩和でこれに対処した。
 ところで、ユダヤ的価値観を最もよく体現するロスチャイルド家は、直系相続人が多数、第一線でビジネスマンとして活動している。その点が、欧米の多くの財閥の子孫が遺産相続人として巨大な資産を有する投資家となっているのとは異なる。世界の金価格は現在もロンドンのシティにあるロンドン・ロスチャイルド銀行で決定されている。そして、イギリス、フランスのロスチャイルド家には、欧米のユダヤ系投資銀行が創業者以来、姻戚関係でつながっている。そうしたユダヤ系投資銀行には、ゴールドマン・サックス、ソロモン・スミス・バーニー、ウォーバーグ・ディロン・リード、シュローダー・グループなどがある。
 ロスチャイルド家及びユダヤ系の国際金融資本家は、その豊富な資金力・情報力を用いて、ユダヤ系アメリカ人のシオニストやネオコンを支援している。支援が行われているのは、それがイスラエルやユダヤ人の利益となるとともに、彼らの私的事業の利益にもなるからであるに違いない。

 次回に続く。

衆院選結果~自民圧勝、改憲勢力約8割に

2017-10-23 11:33:19 | 時事
 衆院選は、事前の大方の予想通り、自民圧勝となりました。来る特別国会で、安倍首相兼自民党総裁が首相に指名され、第4次内閣を発足させることになります。今回の選挙の結果は、安倍政権が信任され、北朝鮮への圧力強化、消費増税の使途変更、アベノミクス、憲法改正などの政策が支持されたと見られます。

 残り4議席は未定ですが、現時点で自民280、公明29に自民党の追加公認3を加えると与党が312議席。総定数465のうち憲法改正の国会発議に必要な3分の2となる310議席を超えました。これに希望49、維新10を加えると、改憲勢力は371。実に79.78%になります。
希望は公示前の議席を減らして完敗した一方、立民が躍進し、約3倍増で54で野党第一党になりました。共産は12、社民が1で、護憲勢力は合わせて67。このほかに諸派・無所属が23あり、改憲・護憲は不明な部分があります。

 今回の選挙で自公与党が3分の2以上を堅持し、改憲勢力が衆院の8割近くになった意味は、極めて大きいです。新たに招集される国会で憲法改正に向けた建設的な議論がされ、一日も早く日本人自身の手によるる憲法改正案が国民に対して発議されることを期待します。

アベノミクスの成功は明白、その継続・拡大が生活向上と日本繁栄の道

2017-10-21 09:21:13 | 経済
 衆院選は10月22日、いよいよ明日となりました。悪天候が予想されますが、有権者の皆さん、日本の将来の選択のため、選挙に行きましょう。
 今回の選挙は、アベノミクスに関する評価を問うものでもあります。自民党・公明党は成果を強調し、希望の党、立憲民主党、共産党などは与党の経済政策を批判しています。外交・防衛・福祉など他の政策については、成果の数値的な把握に難しいものもありますが、経済については基本的に結果が数字にはっきり出ます。
 自民党は、アベノミクス5年間の実績を次のように示しています。

●名目GDP 過去最高 50兆円増加
 493兆円(2012年10-12月期)→543兆円(2017年4-6月期)
●就業者数 185万人増加
 6,271万人(2012年)→6,456万人(2016年)
●正社員有効求人倍率 初の1倍超え
 0.5倍(2012年2月)→1.01倍(2017年7月)
●若者の就職内定率 過去最高
 大学生93.9%(2013年4月)→97.6%(2017年4月)
●企業収益 過去最高 26.5兆円増加
 48.5兆円(2012年度)→75.0兆円(2016年度)
●家計の可処分所得 2年連続で増加
 292兆円(2012年)→295兆円(2015年)
●外国人旅行者数 5年で約3倍
 870万8千人(2012年度)→2,482万4千人(2016年度)

 深刻なデフレに苦しんでいた5年前には考えられないくらいの好転です。しかし、野党の多くは、こうした数値を認めず、デフレの脱却ができていない部分や、労働者の賃金が十分上昇していないこと、特に地方では景気好転の実感が薄いことなどを以て、アベノミクスを否定し、あかたもそれ以上の経済政策があるかのように訴えています。過去に実績があった政党が言うなら、耳を貸す値があるかもしれませんが、何の実績もない政党がいうことは、選挙目当て、議席欲しさの言説であり、ほとんど詐欺的な弁論です。

 アベノミクスについて、客観的に見て成功は明白です。例えば、イギリスの投資家で「日本は甦るか」、「日本の選択」等の著書のあるピーター・タスカ氏は、次のように語っています。
 「安倍氏が首相に再登板した2012年12月以降、日本の経済は驚くべき変化を遂げている。過去20年間、日本の名目GDPはまったく成長がなかった」。だが、「日本の今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は年率4%だった。先進7カ国(G7)の中で最も高い値だろう。重要なのは、成長が6四半期連続であり、かつそれぞれの期間の数値が日本の潜在成長率(0・75%程度)を上回るものであったということだ」
 「14年に安倍氏を説得して不必要な消費税増をけしかけたのは、破滅論者の官僚たちだった。その結果、リフレーションの勢いは少なくとも2年停滞した。それでも、労働市場から貸出残高の伸びまで、さまざまな指標は数十年来の高い水準にある」
 「安倍氏再登板後の東証株価指数(TOPIX)の年率リターンは円建てで20%、ドルベースで12%を記録。新興市場のジャスダック指数は史上最高で、円建て26%、ドル建て18%に達した」
http://www.sankei.com/politics/news/170828/plt1708280011-n1.html

 この記事は、8月28日のものです。その後、安倍首相は衆院解散総選挙を決めました。明日はその投開票日です。選挙期間中、日本の株価は上昇を続けています。株価が上がるということは、世界的に日本経済への期待が高まっているということです。
 10月20日東京株式市場で日経平均株価は14営業日続伸しました。14営業日続伸は、高度経済成長期の昭和35年12月21日~36年1月11日以来約56年9カ月ぶりで、歴代最長タイの連騰記録とのことです。終値は前日比9円12銭高の2万1457円64銭。平成8年10月以来約21年ぶりの高値を連日でつけました。

 政治が国民の支持を得られるかどうかは、最終的には経済政策によります。いかに高邁な理想を掲げても、いかに雄大な構想を追及しても、経済という国民の生活に直結するところで成果を上げられねば、その政権は国民の支持を得られません。自由主義国でも社会主義国でも、これは共通します。
 5年前、デフレ脱却の処方箋を出した優れた経済学者が、私の知る限り数人います。しかし、理論は理論です。それを現実の社会で実行し、結果を出すことのできる政治家がいなければ、絵に描いたモチに終わってしまいます。第二次世界大戦後、先進国で唯一デフレに陥り、それが約15年も続いた日本にとって、悪質なデフレを抜け出すのは、ひどく困難な課題でした。安倍政権は、それを成し遂げつつあります。5年前の日本経済の指標と比べれば、現在の状態は、ほとんど奇跡に近い結果です。だが、アベノミクスは、まだ道半ばです。日本の潜在的成長力は、底知れないほど大きく、その力を発揮するのは、むしろこれからです。デフレを完全に脱却して日本を大きく繁栄させるという、その大事業を成し遂げられるのは、この5年間の実績のある安倍政権以外にありません。

 もし総選挙で自民党が大敗し、安倍氏が退陣するという事態になったならば、この大事業はそこで終了します。まず驚異的に伸長してきた株価が一気に下がることは、明白です。さらにもし政権交代が起り、野党連立政権が実現したならば、名目GDPの減少、就業者数の減少、正社員有効求人倍率の低下、若者の就職内定率の低下、企業収益の減少、家計の可処分所得の減少等が続いて起こるでしょう。日本という国の富、国民の豊かさが失われ、この5年間を逆戻りする道となることは確実です。
 有権者は、各政党の言っていることの真偽を見抜き、国民を欺く言説に惑わされないようにしましょう。そして、確かな目を以て、小選挙区の候補者と比例の政党を選びましょう。

関連掲示
・拙稿「アベノミクスの金融政策を指南~浜田宏一氏」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13t.htm
・拙稿「アベノミクスに情報戦略の強靭化を~宍戸駿太郎氏2」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13u.htm
・拙稿「デフレ脱却の経済学~岩田規久男氏」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13s.htm

ユダヤ116~新自由主義・市場原理主義の席巻

2017-10-20 08:55:59 | ユダヤ的価値観
●新自由主義・市場原理主義の席巻
 
 第2次世界大戦後の世界経済は、1970年代から大きく変化した。その変化の開始は、1971年(昭和46年)のニクソン・ショックに遡ることができる。アメリカが金とドルの交換を停止したため、各国は次々に変動相場制に移行した。資本主義が変動為替相場制に移行したことによって、貨幣に新たな機能が生じた。貨幣自体が、一つの商品になったのである。それが、資本主義世界経済を大きく変えることになった。経済活動の中心がものの生産ではなく、貨幣のやりとりによる金融に移った。
 こうした時代に、経済学の主流になったのが、新古典派経済学である。その最高の理論家が、ユダヤ人経済学者ミルトン・フリードマンである。フリードマンについては、後に経済学の歴史と合わせて、別の項目に詳しく書く。彼の理論は政府による市場への介入を排除し、市場における自由な取引を徹底的に追及する思想がもとになっている。新自由主義・市場原理主義と呼ばれる。
 1980年代にレーガン政権は、新自由主義・市場原理主義を取り入れた政策を行った。ビル・クリントン政権は、前政権の経済政策を否定し、方向転換を行った。それによって、レーガン政権で生じた双子の赤字を解消し、財政黒字を生み出した。この時代に、アメリカでは情報通信革命が推進された。コンピュータの普及は、経済活動、特に金融を大きく変えた。国境を超えた市場では、ある通貨が安くなったら大量に買い、高くなったところで売る。これだけで大儲けが出来る。逆に裏目に出たら大損をする。こうした為替差益を狙う通貨の売買は、一種のギャンブルと化す。世界の金融市場を結ぶコンピュータのネットワークが、このギャンブルを超高速で行うことを可能にした。こうした段階の資本主義を、情報金融資本主義という。
 情報金融資本主義の社会において、金融市場はあたかも巨大なカジノの賭博場のようになった。外国為替取引に関係するディーラーたちは、世界の金融市場を瞬時に結ぶコンピュータの画面を見ながら、マネー・ゲームに興じる。イギリスの経済学者スーザン・ストレンジは、こうした資本主義の姿を「カジノ資本主義」と名づけた。世界市場は、カジノ資本主義の狂宴の場と化した。
資本は、自己増殖する価値の運動体である。その典型は、貨幣である。貨幣の貸借は、返済の義務を生じる。貸借の報酬として、利子を取るとき、貨幣は増殖する。この貨幣の自己増殖の運動は、資本主義の本質的な要素である。貨幣という典型的な資本なくして、資本主義は成立しない。そして、貨幣そのものの商品化は、こうした資本主義の本質を全面的に実現したものだと私は思う。そして、これは利子を取ることを肯定するユダヤ的価値観が経済社会に普及したものだといえる。
 資本は、もともと物を作って売ることが、目的ではない。利潤を上げることが目的である。それゆえ、必ずしも物を生産しなくとも、金銭や信用によって利潤を上げられれば、資本の目的は達せられる。物を作る労働に汗を流すより、金銭を動かすことで利潤を上げるファンド・マネージャーが、グローバルな情報金融資本主義の主役となった。
 企業もまた投資と売買の対象となる。1980年代にウォール街で、弱肉強食の企業乗っ取りをリードし、またそのお膳立てを行ってきた者の多くがユダヤ人であり、またユダヤ教を信奉するユダヤ人だったといわれる。1997年に金融専門誌『ファイナンシャル・ワールド』が掲載したウォール街の所得者番付では、最上位25名の中で11名がユダヤ人で、約44%を占めた。その多くは企業買収ビジネスとヘッジファンド運営に従事していた。
 歴史的に見ると、ヨーロッパで土地に根差したものの生産ではなく、貨幣の取り扱いで利益を上げてきたユダヤ人が、現代のファンド・マネージャーの原形と言えよう。また、情報通信革命の中で行われる新自由主義・市場原理主義の経済活動こそ、ユダヤ的価値観が最も合理的に実現した形態と言えるだろう。

 次回に続く。

衆院選予測~自公3分の2超、希望は東京で全滅?

2017-10-19 09:27:19 | 時事
 産経新聞社がFNN(フジニュースネットワーク)と合同で行った電話世論調査(10月12~15日)に全国総支局の取材を加味し、衆院選終盤情勢を予想。

 自民党:<公示前290→最少272~中間286~最多300> 序盤情勢よりさらに伸長。300議席をうかがう。苦戦が予想された東京や大阪などの都市部でも優位な戦いを展開する選挙区が多い。
 公明党:<公示前35→最少32~中間33~最多35> 公示前の35議席の維持が難しい状況。
 ※自公与党:<公示前325→最少304~中間319~最多335> 憲法改正の国会発議に必要な310議席の獲得は堅い情勢。

 希望の党:<公示前57→最少39~中間44~最多52> 失速が顕著。40議席台となる可能性がある。小池代表が地盤とする東京で東京で全滅の可能性も。結党メンバーの若狭勝氏をはじめ松原仁氏、長島昭久氏らを含めて全選挙区で苦戦。比例は30議席に届かない見通し。民進から希望に移籍した前職の中に、党の公約と大きく異なる主張を掲げる候補が続々と出始めた。「憲法9条改正」に公然と異を唱え、小池代表を批判する声まで上がる。
 日本維新の会:<公示前14→最少8~中間10~最多12> 地盤の大阪で苦戦。議席を減らす見通し。

 立憲民主党:<公示前16→最少46~中間52~最多60> 公示前の3倍以上の50議席台が視野に入り、野党第一党に躍進する勢い。比例でも希望を上回る。
 共産党:<公示前21→最少14~中間15~最多16> 比例が伸び悩む。議席を減らす見通し。
 社民党:<公示前2→最少1~中間1~最多2> 選挙区で1議席を固めている。

 産経の記事曰く「接戦区が30選挙区以上あるほか、態度未定の有権者が5割を超える選挙区もあり、今後情勢が変化する可能性もある」
http://www.sankei.com/politi…/…/171016/plt1710160059-n1.html

 私の意見。今回の衆院選の各種予想は、公示前から中盤まで、はっきりと一定の方向への流れを示しています。自民伸長、希望大失速、立民躍進、野党食い合いです。非常に明瞭です。問題は、投票先を決めていない4~5割の有権者の行動ですね。今回のように自民単独過半数、自公3分の2以上が予想される状況では、大勢が決したと考えて自分が投票しても変わらないと棄権する人、自民が勝ちすぎないようにしようと反自民に投じる人、流れの方向に与しようと自民に入れる人など、さまざまな行動が予想されます。それらがどういう割合になり、最終的にどういう結果になるかは、政治や選挙の専門家も予測できないところです。

 有権者の皆さん、10月22日は選挙に行き、投票権を行使して、自分の意思を示しましょう。

関連掲示
・拙稿「衆院選予測~自民74減、与党でやっと過半数確保?」 2017-10-06
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/265a04fa1a234d0bc4e975011d016cc4
・拙稿「衆院選予測~自民は過半数超え、希望は大失速」 2017-10-13
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/600224e4b917adbd51b2e343f8bcac42