私は、小沢氏起訴議決が発表された10月4日の日記に、「民主党に自浄能力があるならば、すみやかに小沢氏に離党勧告をすべきである。小沢氏が勧告を受け入れない場合は、除名処分にし、政党としての規律を示すことを期待する」と書いた。その後、5日目になるが、民主党は離党勧告をしていない。小沢氏は、7日の記者会見で、離党も議員辞職もしない意思を公表した。民主党には自浄能力がなく、小沢氏には政治家としての最低の倫理もないことが、改めて明らかになった。かつての腐敗・堕落した自民党でも、ここまではひどくなかった。
起訴議決が発表された翌日、10月5日の全国各紙は、一斉に社説で小沢氏の問題について書いた。
意外にも一番論調が厳しいのは、朝日だった。朝日は、小沢氏に対し、「小沢一郎・元民主党代表は今こそ、自ら議員辞職を決断すべきである」「小沢氏が今回、けじめをつけなければ、政権交代に「新しい政治」を期待した有権者を再び裏切ることになる。 離党したとしても「数の力」で党外から影響力をふるうなら同じことだ。小沢氏の師、田中角栄元首相はロッキード事件で逮捕され離党した後も、「闇将軍」として大きな権力をふるった。師の轍(てつ)を踏んではならない」と書いた。
次に厳しいのが産経で、小沢氏に対し、「小沢氏本人は「裁判の場で無実が必ず明らかになる」と語ったが、今こそ自ら進んで責任を認め、潔く議員辞職し、政治生活にピリオドを打つべきだろう。」と書いた。また産経は民主党に対し、「民主党内からも小沢氏の議員辞職を求める意見が出ているのは当然だ。小沢氏が従わない場合は、除名処分や離党勧告などを行うのは最低限必要だ」と書いた。朝日は議員辞職について「べきである」と書き、産経の「べきだろう」より強い。
次は毎日で、「小沢氏は代表選の際、仮に起訴されても「離党したり、辞職する必要はない」と表明している。だが、 与野党から議員辞職や離党などを求める声が強まることは避けられまい。「古い体質」を象徴する 政治とカネの問題を抱える小沢氏が与党の実力者として影響力を保ち続けることは問題がある。 国会での究明と同時に、出処進退について、自らけじめをつけるべきである。」と書いた。朝日・産経との違いは、議員辞職とそのまま言わず、出処進退と婉曲に言っている点である。
ただ一つ穏やかなのが読売である。小沢氏については、「小沢氏が刑事被告人になりながら、従来と同様に政治活動を続ければ、国民の政治不信は増幅されよう。刑事責任の有無とは別に、その政治的・道義的な責任は重いと言わざるを得ない」と書いた。民主党については、「民主党内では、小沢氏の事件でも、鳩山前首相の資金管理団体の虚偽献金事件でも、2人の責任を問う声がほとんど出なかった。政治とカネの問題に対する民主党の自浄能力には、大きな疑問符が付いている」と書いた。客観的な書き方であり、社としての主張まで言っていない。
共同通信社は、全国緊急電話世論調査を実施した。6日の発表によると、小沢氏に議員辞職を求める人は54・3%、離党論は63・8%に上った。 議員辞職を求める朝日と産経は、10月8日の社説にも、それぞれ社の主張を書いた。朝日は、小沢氏は「鳩山由紀夫前首相とともにダブル辞任に追い込まれたのに、わずか3カ月後に党代表選に立ち、多くの国民を驚かせもした。一連の政治行動に、選良としての節度を見ることはできない。 有権者の期待を裏切らず、歴史的な政権交代の意義をこれ以上傷つけないためにも、強制起訴決定の機会に議員辞職を決断すべきだった」と、民主党支持の立場から、小沢氏に重ねて議員辞職を求めている。一方、産経は「自民党の加藤紘一元幹事長は、事務所代表の所得税法違反事件の際に、自身は立件されなかったものの、離党や議員辞職に追い込まれている。小沢氏の元秘書の石川知裕衆院議員も、小沢氏の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反で逮捕・起訴されて、民主党を離党した。今回の小沢氏の場合も、政治家として議員辞職などけじめをつけるのは当然だろう」と書いた。
菅首相と民主党に対して、朝日は、「菅直人首相と民主党は小沢一郎元代表に対し、政治的なけじめを強く求めなければならない。証人喚問に応じるなど国会での説明を促し、離党勧告か除名をする。最低限、それが必要だ」「小沢氏が自らけじめをつけないというなら、これから厳しく問われるのは菅首相と民主党の対応である」「菅首相と民主党は小沢氏のけじめの問題に、できるだけ早く結論を出す必要がある」と意思決定を求めている。産経は「菅直人首相や岡田克也幹事長にとり、小沢氏に離党や議員辞職を求めることが政権立て直しの第一歩である。辞職に言及した党幹部を辞任させるような対応は、クリーン政党を目指す決意がないことを露呈したようなものだ」と書いた。
小沢氏は離党も議員辞職もしない。民主党は今のところ、そうした小沢氏に離党勧告も除名処分もしそうにない。あとは国民がこういう政党に政権を委ね続けるかの問題である。
以下は関連する報道記事のクリップ。
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●読売新聞 平成22年10月8日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101008-OYT1T00168.htm
小沢G、溶解?…「俺もオヤジのように離党か」
民主党の小沢一郎元代表は7日、検察当局が自らの資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件を「不起訴」と判断したことをタテに、離党も議員辞職もしない考えを4日の検察審査会の議決公表後、初めて公式に表明した。
(略) 小沢氏の念頭に、政治の師、田中角栄元首相の存在があるのは間違いない。田中氏は1976年7月にロッキード事件で逮捕され、自民党を離党したが、85年2月に竹下登元首相が田中派議員の大多数を率いて「創政会」(後の経世会・竹下派)を旗揚げするまで10年近くも政界に影響力を持ち、「闇将軍」と呼ばれた。小沢氏も創政会発足メンバーの一人だった。
若手議員が大半の小沢グループには、竹下氏のような、後継となり得る有力議員はいない。それが小沢氏の今の強気につながっているとの見方もある。
だが、小沢氏は起訴議決の直後、周囲にこう弱音を漏らしたという。
「おれもオヤジ(田中氏)のように(離党)した方がいいのかな」
(2010年10月8日09時00分 読売新聞)
●産経新聞 平成22年10月8日
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101008/stt1010080048001-n1.htm
【小沢氏会見】正面突破を図る小沢氏 見通しは不透明
2010.10.8 00:44
東京第5検察審査会(検審)の4日の起訴議決から初めて公の場に姿を現した民主党の小沢一郎元代表は予想通り、離党も議員辞職もしない「闘争宣言」をした。影響力保持のため正面突破を図ったといえる。だが、裁判がいつ決着するか見通しの立たない中、今後の政局で主導権を確保するのは困難で、小沢氏の前途は多難だ。(佐々木美恵)
(略) 小沢氏が師事した田中角栄元首相や金丸信元副総理は事件発覚後、自民党を離党した。中でも金丸氏は東京佐川急便事件で自民党副総裁を辞任した後、議員辞職、逮捕へと坂道を転げ落ちるように影響力を失った。小沢氏が離党や辞職を否定したのも、そうした前例も直接見てきたこともあるだろう。(略)
起訴議決で今後の政局のシナリオは狂った。小沢氏の支持派は衆参両院で多数派が異なるねじれ国会のため、菅政権が来年の通常国会には行き詰まるとみていた。しかし、裁判を抱えたままでは小沢氏は身動きできない。閣僚経験者の一人は「当面は静かでも野党や世論にせめられて、いずれ執行部は離党勧告をしなければいけなくなるよ」と予言する。
自民党の森喜朗元首相は7日午後、BS11の番組収録で、平成19年の自民、民主両党の大連立協議の際に福田康夫元首相と小沢氏の会談を仲介した経緯に触れ「小沢さんは後始末をしないから仲間が離れる。その後、わたしにも電話一本なかった」と小沢氏を批判した。小沢氏にはもはや再編の選択肢も残っていない。
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起訴議決が発表された翌日、10月5日の全国各紙は、一斉に社説で小沢氏の問題について書いた。
意外にも一番論調が厳しいのは、朝日だった。朝日は、小沢氏に対し、「小沢一郎・元民主党代表は今こそ、自ら議員辞職を決断すべきである」「小沢氏が今回、けじめをつけなければ、政権交代に「新しい政治」を期待した有権者を再び裏切ることになる。 離党したとしても「数の力」で党外から影響力をふるうなら同じことだ。小沢氏の師、田中角栄元首相はロッキード事件で逮捕され離党した後も、「闇将軍」として大きな権力をふるった。師の轍(てつ)を踏んではならない」と書いた。
次に厳しいのが産経で、小沢氏に対し、「小沢氏本人は「裁判の場で無実が必ず明らかになる」と語ったが、今こそ自ら進んで責任を認め、潔く議員辞職し、政治生活にピリオドを打つべきだろう。」と書いた。また産経は民主党に対し、「民主党内からも小沢氏の議員辞職を求める意見が出ているのは当然だ。小沢氏が従わない場合は、除名処分や離党勧告などを行うのは最低限必要だ」と書いた。朝日は議員辞職について「べきである」と書き、産経の「べきだろう」より強い。
次は毎日で、「小沢氏は代表選の際、仮に起訴されても「離党したり、辞職する必要はない」と表明している。だが、 与野党から議員辞職や離党などを求める声が強まることは避けられまい。「古い体質」を象徴する 政治とカネの問題を抱える小沢氏が与党の実力者として影響力を保ち続けることは問題がある。 国会での究明と同時に、出処進退について、自らけじめをつけるべきである。」と書いた。朝日・産経との違いは、議員辞職とそのまま言わず、出処進退と婉曲に言っている点である。
ただ一つ穏やかなのが読売である。小沢氏については、「小沢氏が刑事被告人になりながら、従来と同様に政治活動を続ければ、国民の政治不信は増幅されよう。刑事責任の有無とは別に、その政治的・道義的な責任は重いと言わざるを得ない」と書いた。民主党については、「民主党内では、小沢氏の事件でも、鳩山前首相の資金管理団体の虚偽献金事件でも、2人の責任を問う声がほとんど出なかった。政治とカネの問題に対する民主党の自浄能力には、大きな疑問符が付いている」と書いた。客観的な書き方であり、社としての主張まで言っていない。
共同通信社は、全国緊急電話世論調査を実施した。6日の発表によると、小沢氏に議員辞職を求める人は54・3%、離党論は63・8%に上った。 議員辞職を求める朝日と産経は、10月8日の社説にも、それぞれ社の主張を書いた。朝日は、小沢氏は「鳩山由紀夫前首相とともにダブル辞任に追い込まれたのに、わずか3カ月後に党代表選に立ち、多くの国民を驚かせもした。一連の政治行動に、選良としての節度を見ることはできない。 有権者の期待を裏切らず、歴史的な政権交代の意義をこれ以上傷つけないためにも、強制起訴決定の機会に議員辞職を決断すべきだった」と、民主党支持の立場から、小沢氏に重ねて議員辞職を求めている。一方、産経は「自民党の加藤紘一元幹事長は、事務所代表の所得税法違反事件の際に、自身は立件されなかったものの、離党や議員辞職に追い込まれている。小沢氏の元秘書の石川知裕衆院議員も、小沢氏の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反で逮捕・起訴されて、民主党を離党した。今回の小沢氏の場合も、政治家として議員辞職などけじめをつけるのは当然だろう」と書いた。
菅首相と民主党に対して、朝日は、「菅直人首相と民主党は小沢一郎元代表に対し、政治的なけじめを強く求めなければならない。証人喚問に応じるなど国会での説明を促し、離党勧告か除名をする。最低限、それが必要だ」「小沢氏が自らけじめをつけないというなら、これから厳しく問われるのは菅首相と民主党の対応である」「菅首相と民主党は小沢氏のけじめの問題に、できるだけ早く結論を出す必要がある」と意思決定を求めている。産経は「菅直人首相や岡田克也幹事長にとり、小沢氏に離党や議員辞職を求めることが政権立て直しの第一歩である。辞職に言及した党幹部を辞任させるような対応は、クリーン政党を目指す決意がないことを露呈したようなものだ」と書いた。
小沢氏は離党も議員辞職もしない。民主党は今のところ、そうした小沢氏に離党勧告も除名処分もしそうにない。あとは国民がこういう政党に政権を委ね続けるかの問題である。
以下は関連する報道記事のクリップ。
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●読売新聞 平成22年10月8日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101008-OYT1T00168.htm
小沢G、溶解?…「俺もオヤジのように離党か」
民主党の小沢一郎元代表は7日、検察当局が自らの資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件を「不起訴」と判断したことをタテに、離党も議員辞職もしない考えを4日の検察審査会の議決公表後、初めて公式に表明した。
(略) 小沢氏の念頭に、政治の師、田中角栄元首相の存在があるのは間違いない。田中氏は1976年7月にロッキード事件で逮捕され、自民党を離党したが、85年2月に竹下登元首相が田中派議員の大多数を率いて「創政会」(後の経世会・竹下派)を旗揚げするまで10年近くも政界に影響力を持ち、「闇将軍」と呼ばれた。小沢氏も創政会発足メンバーの一人だった。
若手議員が大半の小沢グループには、竹下氏のような、後継となり得る有力議員はいない。それが小沢氏の今の強気につながっているとの見方もある。
だが、小沢氏は起訴議決の直後、周囲にこう弱音を漏らしたという。
「おれもオヤジ(田中氏)のように(離党)した方がいいのかな」
(2010年10月8日09時00分 読売新聞)
●産経新聞 平成22年10月8日
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101008/stt1010080048001-n1.htm
【小沢氏会見】正面突破を図る小沢氏 見通しは不透明
2010.10.8 00:44
東京第5検察審査会(検審)の4日の起訴議決から初めて公の場に姿を現した民主党の小沢一郎元代表は予想通り、離党も議員辞職もしない「闘争宣言」をした。影響力保持のため正面突破を図ったといえる。だが、裁判がいつ決着するか見通しの立たない中、今後の政局で主導権を確保するのは困難で、小沢氏の前途は多難だ。(佐々木美恵)
(略) 小沢氏が師事した田中角栄元首相や金丸信元副総理は事件発覚後、自民党を離党した。中でも金丸氏は東京佐川急便事件で自民党副総裁を辞任した後、議員辞職、逮捕へと坂道を転げ落ちるように影響力を失った。小沢氏が離党や辞職を否定したのも、そうした前例も直接見てきたこともあるだろう。(略)
起訴議決で今後の政局のシナリオは狂った。小沢氏の支持派は衆参両院で多数派が異なるねじれ国会のため、菅政権が来年の通常国会には行き詰まるとみていた。しかし、裁判を抱えたままでは小沢氏は身動きできない。閣僚経験者の一人は「当面は静かでも野党や世論にせめられて、いずれ執行部は離党勧告をしなければいけなくなるよ」と予言する。
自民党の森喜朗元首相は7日午後、BS11の番組収録で、平成19年の自民、民主両党の大連立協議の際に福田康夫元首相と小沢氏の会談を仲介した経緯に触れ「小沢さんは後始末をしないから仲間が離れる。その後、わたしにも電話一本なかった」と小沢氏を批判した。小沢氏にはもはや再編の選択肢も残っていない。
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