ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

慰安婦問題2~政府・自民党の姿勢は弱すぎる

2014-02-27 08:57:10 | 慰安婦
 昨年12月11日、「テキサス親父」の愛称で知られるトニー・マラーノ氏が、ホワイトハウスのホームぺージにカリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像の撤去を求める請願を立ち上げた。請願は、期限内に10万件の署名を集めることができれば受理され、米政府は見解を表明するという仕組みのもの。慰安婦像除去の請願の期限は、本年1月10日までだったが、マラーノ氏の呼びかけによって、フェイスブック、ツイッター等によって日米だけでなく欧州でも支持が広がり、目標の署名数を達成した。米国連邦政府が地方自治体の案件に介入する可能性はほとんどないと見られるが、重要なのは意思表示であり、これをきっかけに、内外の日本人が力を結集して、韓国系団体による慰安婦像・慰安婦碑の設置運動の広がりを押しとどめたいものである。
 2月3日日本維新の会の杉田水脈(みお)衆議院議員は、衆院予算委員会で河野談話を「反日の格好の情報発信源になっている」と批判し、河野洋平元官房長官を参考人招致するよう要求した。河野氏の参考人招致について「事実に基づく証言をしてもらい、解決への糸口になってほしい」と述べた。杉田氏は、「国・地方の女性議員が呼びかけ人となり、河野氏の証人喚問を求める国民運動に取り組もうと考えている。再三捏造報道を行った報道機関の責任も追及したい」とも語った。だが、自民党は、「犯罪関係を除き、元衆院議員を参考人として呼んだ例はない」として拒否している。河野氏は元自民党総裁であり、党内リベラル派になお影響力を残している。自民党は身内の問題には甘い。以前よりだいぶ良くなったとはいえ、まだまだである。日本人の誇りを守ることより、党の利益を守ることを優先している。政府が消極的な姿勢にとどまっている限り、慰安婦問題をめぐる事態はいっそう深刻さを増していくのみである。このままでは、失われた日本人の誇りは永遠に回復することができない。
 韓国では、2月11日に女性家族省が「慰安婦に関連する記念日」の制定を進めると表明した。朴槿恵大統領に報告した今年の業務推進計画の中に盛られている。
 計画によると、「記念日」には慰安婦に関する国際シンポジウムや音楽会、演劇、美術展を開催する。また、慰安婦問題の解決に向け、新たな教材の開発、学生が参加する歴史認識高揚のための展覧会の支援、ドキュメンタリーなどの制作を通じて教育活動や内外への広報を進める。さらに、米国や中国などでの慰安婦関連資料の調査や分類作業を拡大させるとともに、民間団体が所蔵する資料の国家記録への追加指定を推進する。記録資料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産への2017年までの登録を目指し、作業に入るという。
 女性家族省は一方で、「慰安婦問題を積極的に周知させるため、国際社会との協力を強化させる」としている。同省が支援した仏アングレームでの漫画祭で展示された慰安婦をテーマとした作品を世界各地で巡回展示するほか、国際機関や海外の人権団体との連携活動を強化し、慰安婦問題を今後も全世界に向けて提起し続け、日本を非難する方針である。
 これに対する政府・自民党の姿勢は、弱すぎる。在米の韓国系団体は、米国の連邦議会議員、州や市の議員等に組織的な働きかけを強力に実行している。米国では、ニュージャージー州のパリセイズパークとハッケンサックに慰安婦の碑が建てられ、昨年夏にカリフォルニア州グレンデールに慰安婦像が建てられた。本年1月24日にはニューヨーク州ウエストバリーで、同市で2つ目の慰安婦の碑の除幕式が行われた。これで慰安婦関連で建立された碑や像は全米で5つ目となった。米国での韓国系団体の動きには、中国系反日団体が連携している。昨年12月末、カリフォルニア州のクパチーノ市議会で、中国系の「抗日戦争史実維護(擁護)連合会」の元幹部が新たな「慰安婦」碑の設置を提案した。本年2月以降に審議、公聴会が行われていく見通しである。米国における韓国系と中国系の反日協同行動が連鎖的に拡大する可能性がある。
 安倍首相は、先ごろの「建国記念の日」のメッセージで、「建国記念の日を迎えるに当たり、私は、改めて、私たちの愛する国、日本を、より美しい、誇りある国にしていく責任を痛感し、決意を新たにしています」と述べているが、日本を「日本を、より美しい、誇りある国に」していくには、首相の決断で慰安婦問題を解決しなければならないということが、もう一つよくわかっていないように見受けられる。25日の日記に「安倍首相が河野談話の検証に意欲!」と書いたが、非公式の発言であり、事実関係の真偽と主旨を首相に確認する必要がある。安倍首相に対し、河野談話の検証を決断し、慰安婦問題の国際的解決を推進することを強く要望する。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成26年2月3日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140203/stt14020320050005-n1.htm
河野氏の参考人招致要求 「談話」真相求め維新・杉田氏
2014.2.3 20:00

 日本維新の会の杉田水脈(みお)氏は3日の衆院予算委員会で、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の「河野洋平官房長官談話」を「反日の格好の情報発信源になっている」と批判し、当事者である河野氏を参考人招致するよう要求した。二階俊博委員長は理事会で協議する考えを示した。
 杉田氏は「慰安婦問題は丁寧に検証を重ねて真実を積み上げ、論理的に対処する姿勢が必要だ」と指摘。河野氏の参考人招致について「事実に基づく証言をしてもらい、解決への糸口になってほしい」と述べた。
 また、「国・地方の女性議員が呼びかけ人となり、河野氏の証人喚問を求める国民運動に取り組もうと考えている。再三捏造(ねつぞう)報道を行った報道機関の責任も追及したい」とも語った。
 杉田氏は、米ロサンゼルス近郊グレンデール市に設置された「慰安婦」像について「昨年末の視察で反対運動をしている在米邦人が『日本政府の支援が一切ない』と言っていた」と明かし、政府の積極的な対応を要求。岸田文雄外相は「深刻で重大な問題だと認識している」と強調し、「高い政治レベルでこの問題をしっかり話し合うことも大変重要だ」と語った。

●産経新聞 平成26年2月11日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140211/kor14021116000004-n1.htm
「慰安婦の記念日」制定へ 韓国女性家庭省が計画 シンポや音楽会開催
2014.2.11 18:26 [日韓関係]

 【ソウル=名村隆寛】韓国女性家族省は11日、朴槿恵(パク・クネ)大統領に報告した今年の業務推進計画で「慰安婦に関連する記念日」の制定を進めると表明した。韓国内での慰安婦問題の教育や広報の強化に加え、国際機関や海外の人権団体との連携などを計画しており、国際社会を引き込んで慰安婦問題をめぐる日本への攻勢をさらに強める構えだ。
 「記念日」をいつに設定するかは明言していないが、計画によると、「記念日」には慰安婦に関する国際シンポジウムや音楽会、演劇、美術展を開催する。
 また、慰安婦問題の解決に向け、新たな教材の開発、学生が参加する歴史認識高揚のための展覧会の支援、ドキュメンタリーなどの制作を通じて教育活動や内外への広報を進める。
 さらに、米国や中国などでの慰安婦関連資料の調査や分類作業を拡大させるとともに、民間団体が所蔵する資料の国家記録への追加指定を推進する。記録資料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産への2017年までの登録を目指し、作業に入るという。
 女性家族省は一方で、「慰安婦問題を積極的に周知させるため、国際社会との協力を強化させる」としている。同省が支援した、仏アングレームでの漫画祭で展示された慰安婦をテーマとした作品を世界各地で巡回展示するほか、国際機関や海外の人権団体との連携活動を強化する方針だ。
 業務推進計画の内容からは、韓国政府がアングレームの漫画祭での活動などを通し、慰安婦問題の国際社会へのPRに自信を深めていることがうかがえる。また、慰安婦問題を今後も全世界に向けて提起し続け、日本を非難する方針を明確に示している。国際包囲網を形成し、日本をさらに追い込む構えだ。
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 次回に続く。

慰安婦問題1~地方議員団が抗議のために訪米

2014-02-26 08:47:48 | 慰安婦
 慰安婦問題の根本的な解決には、河野談話の撤回が不可欠である。昨年11月ころから、現在までのこの問題に関する主な動きをまとめておこう。
 本年2月20日衆院予算委員会での質疑で、菅官房長官がようやく政府が河野談話の検証を検討するという姿勢を示すようになったものの、これまで自民党は党としての姿勢が非常に消極的である。そうした中、昨年11月21日、日本維新の会は「歴史問題検証プロジェクト・チーム(PT)」を設立した。設立総会には維新議員約20人が出席。活動は河野談話の検証が中心となる。座長の中山成彬元文部科学相は「河野談話を直してくれと安倍晋三内閣に強く要求しなければならない」と語った。一方、自民党内にも河野談話検証のための勉強会の呼びかけがされている。呼びかけ人の一人は「参院議員約10人を集めて今国会中に開きたい」とし、維新のPTとの連携も視野に入れているという。
 維新の会では、PTの設立に続き、昨年12月17日、日本維新の会所属の国会議員3名が、米国カリフォルニア州グレンデール市を視察した。視察を行ったのは、杉田水脈(みお)、西田譲、中丸啓の三名の衆議院議員。視察の主旨はこれまでの経緯や現状の影響の調査であり、賛成、反対双方の団体の主張も含めてヒアリングを行った。市当局への抗議は行わなかった。
これに続いて、1月14~17日わが国の地方議員団が訪米し、抗議と啓発の活動を行った。本来政府が行うべき活動であり、また国会議員が積極的に行動すべきところである。
 議員団は東京都杉並区の松浦芳子区議を代表世話人とする東京、神奈川、千葉などの県議や市区町議や関係者ら13人。いずれも「慰安婦像設置に抗議する全国地方議員の会」の所属議員である。
 訪米前、松浦氏は「何も発言しないと、日本が『認めた』と解釈されてしまう。次世代の日本人が歪曲された歴史認識が原因で萎縮してしまうようなことはあってはならない。その危機感から訪米を決めた」と語っていた。
 訪米した一行は、1月14日ロサンゼルスに入り、まず同市近郊のブエナパーク市の市議会を表敬訪問した。ブエナパーク市では昨年8月、グレンデール市で慰安婦像設置が決まった直後に議題となっていた像設置をめぐる採決を中止する決定をした。ブエナパーク市では、グレンデール市と同じく市議が持ち回りで市長を務めている。議員団は、市議会が採決を却下した当時、市長だったスウィフト市議とブラウン市議と懇談した。スウィフト氏は「ブエナパーク市が慰安婦問題にかかわるべきではないと判断した。今回のみなさんの訪問を歓迎する」と述べた。議員団は、市議会への出席を許可され、慰安婦像設置を提案した韓国系のオー現市長が同席する中、松浦氏が代表して、「(像設置採決中止の)見識と良識に敬意と感謝を表する」とスピーチした。
 議会出席後、韓国系メディアの記者からグレンデール市の慰安婦像について聞かれた松浦氏は「韓国の日本大使館前に建つのとは意味が違って、米国に建つとなると行き過ぎだ。真実かどうかの検証がないのに、モニュメントが建ってしまったら、形として残ってしまう」などと答えた。
 一方、肝心のグレンデール市では、慰安婦像設置を推進した市議らが議員団との面会を拒否した。「政治家とマスコミには会わない」と回答してきたという。そこで議員団は、像設置に対する抗議文を市の担当者に提出した。抗議文は、日本軍が強制的に女性を拉致し慰安婦とした事実はない、虚偽のプロパガンダのために大きな混乱が生じている、事実ではない「性奴隷」という言葉を碑に刻み、慰安婦像として残すことは将来に禍根を残す等と指摘し、像設置をすみやかに取りやめるよう求めたという。抗議文には賛同する全国318人の地方議員の名簿が添えられた。また、先の大戦で米軍に捕らえられた朝鮮半島出身の慰安婦や雇用主の尋問記録など日本軍の強制連行を否定する米国立公文書館所蔵の資料が別添された。
 松浦氏は「米国の地方都市が決定したことだから、われわれ地方議員が抗議の意思を伝えた。抗議だけが目的ではなく、事実関係の説明もしたかった」と述べた。
 抗議文を提出した後、議員団は慰安婦像が設置されている公園を訪問した。大阪府堺市議の池尻秀樹氏は「像自体も遺憾だが、『日本軍の性奴隷』などの表現は容認できない。実物を見て、やはり抗議すべきだと思った」と語ったと報じられる。
 こうした動きのある中、グレンデール市と姉妹都市関係にある東大阪市の野田義和市長は、グレンデール市のホームページの記載内容に関して3度にわたって抗議文を送ったが、未だ適切な修正が行われていない。
 野田市長は、産経新聞のインタビューに応えて、次のように語った。
 「グ市は市のHPで、『記念像』設置の背景として、『6つの姉妹都市は近い将来、市有地の公園内の姉妹都市スペースに碑や記念物を設置することに関心を寄せている』としている。また、『その維持、修復費は姉妹都市により賄われることを保証する』としていたが東大阪市は何の賛同もしていない。表題が『韓国慰安婦像の設置』なので東大阪市も認めたように解釈できる」
 「昨年末に、HPの“修正”があったようだが、修正箇所が探しにくい上、『全ての姉妹都市は、全ての記念物の維持費を支払うことになっている』という一文に『×』が付けられただけだった。修正といえない」
 「名誉回復に向け、今後も粘り強く修正と謝罪を求めていく。謝罪というのは、不正確な記載という事態に至った経緯を明らかにするなかで、謝る必要があると思う。すでに4度目の抗議文の準備を担当課に指示し、今月中にはぜひとも送りたい」
 「東大阪市として納得がいく修正、謝罪がなければ、ある時期には姉妹都市関係の解消という判断もしなければならないだろう。ただ、簡単に切るわけにはいかない」
 「どれだけ待ってもきちんとした対応がなく、姉妹都市解消という判断に迫られれば、50万市民の代表として、旅費は自腹でも立場、意見を直接伝える必要はあると考えている」
 グレンデール市の市議たちは、訪米した地方議員団との面会を拒否した。直接関係のない地方議員団では相手は動かない。姉妹都市の市長である野田氏は、グレンデール市を訪問し、直接市長・市議に抗議すべきである。旅費は当然、公費で支出すべきである。
 以下は関連する報道記事。 

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●産経新聞 平成26年1月17日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140117/amr14011710180007-n1.htm
慰安婦像設置のグレンデール市に抗議文 地方議員団「事実関係の説明も」 賛同321人
2014.1.17 10:18 [米国]

 【ロサンゼルス=中村将】米カリフォルニア州グレンデール市に慰安婦像が設置された問題で、訪米中の日本の地方議員団は現地時間の16日、像設置に対する抗議文を同市の担当者に提出した。グレンデール市側は抗議文を正式に受領した。
 地方議員団の代表世話人を務める東京都杉並区の松浦芳子区議(65)は「米国の地方都市が決定したことだから、われわれ地方議員が抗議の意思を伝えた。抗議だけが目的ではなく、事実関係の説明もしたかった」と話した。
 抗議文は、日本軍が強制的に女性を拉致し慰安婦とした事実はない▽虚偽のプロパガンダのために大きな混乱が生じている▽事実ではない「性奴隷」という言葉を碑に刻み、慰安婦像として残すことは、将来に禍根を残す-などと指摘。像設置をすみやかに取りやめるよう求めている。
 抗議文には賛同する全国318人分の議員の名簿が添えられ、さらに同日までに3人が賛同したことも伝えられた。
 グレンデール市は市議5人が持ち回りで市長を務める制度。慰安婦像の設置については昨年7月、ウィーバー市長が反対したが、残りの4人の市議が賛成した。
 議員団は抗議文を提出した後、慰安婦像が設置されている公園を訪問。堺市の池尻秀樹市議は「像自体も遺憾だが、『日本軍の性奴隷』などの表現は容認できない。実物を見て、やはり抗議すべきだと思った」と話した。
 議員団は今月14日にロサンゼルス入り。グレンデール市のほかに、慰安婦像設置が議題にあがりながらも採決を拒否し、設置を回避したブエナパーク市を表敬訪問するなどした。17日に帰国の途に就く。

●産経新聞 平成26年1月18日

http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140118/wlf14011808300004-n1.htm

「修正・謝罪なければ姉妹解消も」 東大阪市長インタビュー
2014.1.18 08:30

 米グレンデール市が設置した慰安婦像をめぐり、東大阪市との姉妹都市関係が悪化している。野田義和・東大阪市長に聞いた。

-グレンデール市(以下、グ市)の慰安婦像の設置は、韓国系住民の市議会への強い働きかけによって実現したが、今回の問題が発覚した際、どんな印象を持ったか
 野田義和市長 一方的ではなはだ遺憾。うちの職員が昨年7月中旬にグ市のホームページ(HP)を検索中に記述を見つけた、事実と全く異なるので、私の名で同月25日付でグ市の市長宛に抗議文を郵送した。現地の日本人在住者によると韓国系住民のロビー活動が活発なようで、
一昨年、7月30日をグ市が「慰安婦の日」と制定したころから少し違和感を覚え、その動きを注視していた。

-事実と異なると指摘したHPの記述とは
 野田市長 グ市は市のHPで、「記念像」設置の背景として、「6つの姉妹都市は近い将来、市有地の公園内の姉妹都市スペースに碑や記念物を設置することに関心を寄せている」としている。また、「その維持、修復費は姉妹都市により賄われることを保証する」としていたが東大阪市は何の賛同もしていない。表題が「韓国慰安婦像の設置」なので東大阪市も認めたように解釈できる。

-抗議文を送ったときのグ市の対応は
 野田市長 7、9、10月の3回にわたって市長名で抗議文を送っている。10月に1度回答文書が届いたが、向こうの市長の個人的な思いが綴られているだけで修正や謝罪要求には応えていない。昨年末に、HPの“修正”があったようだが、修正箇所が探しにくい上、「全ての姉妹都市は、全ての記念物の維持費を支払うことになっている」という一文に「×」が付けられただけだった。修正といえない。

-今後、何らかのアクションを起こすのか
 野田市長 名誉回復に向け、今後も粘り強く修正と謝罪を求めていく。謝罪というのは、不正確な記載という事態に至った経緯を明らかにするなかで、謝る必要があると思う。すでに4度目の抗議文の準備を担当課に指示し、今月中にはぜひとも送りたい。

-姉妹都市関係の解消の可能性はあるのか
 野田市長 東大阪市として納得がいく修正、謝罪がなければ、ある時期には姉妹都市関係の解消という判断もしなければならないだろう。ただ、簡単に切るわけにはいかない。

-市長自身のグ市訪問はあるのか
 野田市長 どれだけ待ってもきちんとした対応がなく、姉妹都市解消という判断に迫られれば、50万市民の代表として、旅費は自腹でも立場、意見を直接伝える必要はあると考えている。

-これまでグ市との交流活動は
 野田市長 旧枚岡市時代の昭和35年に姉妹都市提携した。行政間で公的なやりとりはほとんどなく、今回の問題発覚後も、担当課同士ではEメールのやりとりもない。草の根レベルで、市立高校生の短期留学や小学生のミニバスケットボールの交流試合を続けている。グ市側からの働きかけは何もないのが実情だ。

-今月14日から17日までグ市の慰安婦像の抗議などを目的に、日本の地方議員たちが訪米した
 野田市長 今回訪米した東京都杉並区の松浦芳子区議も昨年こちらを訪れ、意見を交換した。慰安婦問題は国政レベルの懸案だが、問題をめぐっては地方議員ですら国のことを思って熱心に動き回っている。

-同じカリフォルニア州のクパチーノ市議会で、中国系団体の元幹部が新たな「慰安婦」碑の設置を提案し、2月以降に可否が審議される見通しになった
 野田市長 これまで慰安婦問題に関し東大阪市としての意見表明はしていない。ただ、今回の問題発覚以降、グ市の慰安婦像設置に対して市民から否定的な意見も多く寄せられ、遺憾な状況になっている。傷つけられたことについては守る努力をしていく。
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 次回に続く。

安倍首相が河野談話の検証に意欲!

2014-02-25 11:30:04 | 慰安婦
 一昨日の23日、昨日の24日と、都内で「日本の国柄と誇り~靖国参拝・慰安婦問題等について」と題して2回の講演を行った。そのなかで、日本維新の会の山田宏議員が衆院予算委で河野談話について行った質問に関して触れた。そして、河野談話は撤回すべきであり、それをしない限り日本人の誇りは永遠に取り戻せないと述べ、河野談話の検証を行うには安倍首相の決断が必要だと訴えた。
 今朝の産経新聞は一面トップで河野談話に関する世論調査結果を載せた。河野談話は「見直すべきだ」との回答が58.6%、6割近くに達した。産経の記事は、次のように書いた。
 「安倍晋三首相は24日、衆院予算委員会の終了後、日本維新の会の山田宏理事に『時機を逸せずに、議論を真剣にやる必要がある』と述べ、談話の検証に意欲を示した。山田氏が記者団に明らかにした。山田氏は談話に批判的な立場から20日の予算委で談話作成に関与した石原信雄元官房副長官を追及。首相は世論調査で河野談話見直し賛成の回答が半数を超えたとして『質問の成果だ』と述べたという」と。
 事実であれば、私を含む多くの人々の思いが通じたことになるだろう。山田氏の側からの発言ゆえ、安倍首相に事実関係の真偽と主旨を確認する必要がある。そして、強く実行を求めていきたい。
 以下は、関連する報道記事。

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●産経新聞 平成26年2月24日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140224/plc14022413060006-n1.htm
「河野談話」見直し6割が賛成 産経・FNN合同世論調査 集団的自衛権の行使容認47%
2014.2.24 13:05

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が22、23両日に実施した合同世論調査で、安倍晋三首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認について賛成が47.7%で、反対は38.1%だった。賛成した回答の45.3%は「憲法改正が望ましいが、当面、憲法解釈の変更で対応すればよい」として、「必ず憲法の改正が必要」(31.7%)や「憲法解釈を変更すればよい」(19.7%)を上回った。
 慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の「河野洋平官房長官談話」については「見直すべきだ」との回答が58.6%に達し、「見直すべきだと思わない」は23.8%にとどまった。
 河野談話をめぐっては、産経新聞の報道で談話の根拠となった韓国での元慰安婦16人の聞き取り調査のずさんさが明らかになっている。菅義偉官房長官は20日の衆院予算委員会で、聞き取り調査を再検証することを検討する考えを示した。今回の世論調査でも、調査のあり方や談話が出された経緯などについて「検証すべきだ」との声が66.3%に達した。
また、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が市長を辞職し出直し選(3月9日告示、23日投開票)に立候補することに関し「支持しない」とする人が61.9%に上り、「支持する」の28.4%を大きく上回った。「大阪都構想」の設計図作りを進めることの是非を問うため、橋下氏が選挙に打って出ることを国民世論は冷ややかに見ているようだ。
 維新以外の各党が候補者の擁立を見送ることに対しては「候補者を立てるべきだ」が60.7%。「立てるべきだとは思わない」(26.6%)を上回っており、橋下氏の「独り相撲」とのイメージを浮き上がらせる各党の“不戦敗”戦術も、世論を味方にすることはできていない。
 安倍内閣の支持率は52.9%となり、1月4、5両日に実施した前回調査に比べ0.8ポイント増えた。不支持率は31.9%(前回32.5%)だった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140225/plc14022508400002-n1.htm
河野談話「検証・見直し」幅広く浸透 安倍内閣不支持層でも6割超 産経・FNN合同世論調査
2014.2.25 08:33 [「慰安婦」問題]

 産経新聞社とFNNの合同世論調査では、「慰安婦の強制連行」の裏付けがないまま発表された河野洋平官房長官談話について見直しを求める声が多数を占めた。談話作成の基となった韓国での元慰安婦聞き取り調査について、裏付け調査をしていなかった実態が国会審議などで明らかになっており、ずさんな談話作成経過に対し支持政党に関係なく、再検証を求める声が広がっている格好だ。
 談話検証の必要性を安倍晋三内閣の支持・不支持別でみると、「検証すべきだ」は支持層で70・3%、不支持層でも65・5%だった。
 検証を求める声は支持政党別では日本維新の会(66・7%)、自民党(65・4%)などで6割を大きく超え、談話見直しに慎重な公明党でも62・2%。見直しに反対する社民、共産両党も含め、全ての政党支持層で「検証すべきだと思わない」を上回っている。
 元慰安婦16人への聞き取り調査のずさんさや、談話の原案段階で日韓両国がすり合わせを行っていたことは、産経新聞が昨年10月16日付、今年1月1日付などの紙面で報じてきた。
 今月20日には談話作成に関与した当時の石原信雄元官房副長官が衆院予算委員会で「裏付け調査を行わなかった」などと証言。各メディアが報じたことで問題の浸透が図られたようだ。
 河野談話を「見直すべきだ」との回答は安倍内閣の不支持層でも55・5%となり、昨年11月調査(49・4%)から6・1ポイント増えた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140225-00000084-san-pol
本社・FNN世論調査 首相、検証意欲「時機逸せず」 河野談話
産経新聞 2月25日(火)7時55分配信

 (略)安倍晋三首相は24日、衆院予算委員会の終了後、日本維新の会の山田宏理事に「時機を逸せずに、議論を真剣にやる必要がある」と述べ、談話の検証に意欲を示した。
 山田氏が記者団に明らかにした。山田氏は談話に批判的な立場から20日の予算委で談話作成に関与した石原信雄元官房副長官を追及。首相は世論調査で河野談話見直し賛成の回答が半数を超えたとして「質問の成果だ」と述べたという。(略)
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関連掲示
・拙稿「ひどすぎる! 元慰安婦報告書」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/c2f09d6322d6550d50d5a98e80add610
・拙稿「河野談話は原案から日韓の「合作」だった!」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/c05fbaab739acb4f3bffbaa7dd91aa80
・拙稿「慰安婦の事実認定書にも韓国が介入」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/7b99fed577ed0e6e0baa37b11ede0427


竹島は江戸時代から日本領と広く認識

2014-02-24 09:35:13 | 国際関係
 2月22日「竹島の日」式典が、島根県、返還要求運動県民会議などの主催により、松江市で開かれた。9回目となった。安倍政権は昨年に続いて内閣府政務官を派遣した。亀岡政務官は「竹島は歴史的事実に照らしても国際法上もわが国固有の領土である。政府として地元の思いを重く受け止めている」と政府の立場を表明した。
 与野党の国会議員を含む約500人が出席した。島根県の溝口善兵衛知事は、式典で安倍晋三政権の姿勢を評価する一方。韓国の不法占拠の既成事実強化の動きについては「決して容認できない」と批判した。また、国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴や竹島の日の政府制定、政府主催の式典開催など7項目の要望書を亀岡氏に手渡した。
 2月7日の「北方領土の日」は政府の制定であり、政府が北方領土返還要求全国大会を全面的に支援し、歴代首相や関係閣僚が出席してきた。本年2月7日には、安倍首相が大会に参加した。これに比し、「竹島の日」は、政府ではなく島根県の制定である。安倍政権は昨年2月に閣議決定した答弁書で「竹島の日」を政府制定にすることを検討するとしたが、結論が出ていない。また、自民党は政府主催の式典開催を、一昨年の衆院選の公約にしたが、今年も開催が見送られた。政府は「竹島の日」を政府制定にし、また政府主催の式典を開催すべきである。
 竹島は、歴史的にも国際上もわが国固有の領土である。その点をより明確にする資料が出てきた。わが国政府は、これまで長久保赤水(せきすい)が作製した初期の日本地図「改正日本輿地路程(よちろてい)全図」(1779年初版)などに竹島が記されている事実をもとに、「遅くとも17世紀半ばには竹島の領有権を確立した」と主張してきたが、本年1月、島根県の竹島問題研究会の調査で、江戸時代後期に作製された複数の地理学者らによる地図5点に、いずれも竹島が日本領として記載されていることが分かった。これによって長久保以外の学者も竹島を日本領としていたことが裏付けられ、江戸時代から広く竹島は日本領という認識が定着していたと言えるだろう。
 竹島問題研究会は、全国の図書館や博物館で18世紀末から19世紀初めに作られた地図に竹島が記載されていることを確認した。それらの地図とは、寛政2(1790)年作製の「蝦夷風俗人情之沙汰付図(えぞふうぞくにんじょうのさたふず)全図」と「蝦夷草紙(えぞそうし)全図」(2点の内容は同じ)、寛政8(1796)年の「寛政亜細亜(かんせいあじあ)地図」と「日本並北方図(にほんならびほっぽうず)」(同)、文化3(1806)年の「華夷一覧図(かいいちらんず)」の5点である。
 「蝦夷風俗人情之沙汰付図全図」と「蝦夷草紙全図」は北方探検家の最上徳内が作製し、現在の竹島と鬱陵島を日本領として茶色に彩色している。
 「寛政亜細亜地図」と「日本並北方図」は経世家で地理学者の本多利明によるサハリンや朝鮮半島などの東アジア地図で、竹島を「松島」、鬱陵島を「竹島」と記し日本領としている。
 「華夷一覧図」は蘭学者で地理学者の山村才助の手になり、アジアや欧州が描かれ、竹島を「松シマ」、鬱陵島を「竹シマ」と示し日本領として赤く彩色している。同時代の地図には珍しい「日本海」の表記もあるという。
 「当時の著名な地理学者らの地図で共通して竹島を日本領としており、幕府や主要な藩、知識人に認識が広まっていたことが分かる」と研究会は述べている。今月22日に行われた「竹島の日」式典後の記念行事では、研究会が初めて一般向けに出版した「竹島問題100問100答」が紹介された。これまでの研究活動の集大成となるものという。研究会座長の下條正男拓殖大教授は、「(竹島問題を)客観的な事実に基づき理解しておかないと(日本の国民も韓国側の主張に)流されてしまう心配があった」と説明し、執筆者の一人、塚本孝東海大教授も「島根県だけでなく、全国で竹島学習が始まると期待しており、その際に参考になると思う」と期待を示したと報じられる。
 問題は、こうした歴史的資料によって竹島が日本領であることが確実に裏付けられているにもかかわらず、これまで積極的に教育がされていないことである。近年ようやく教科書における竹島の記述が是正されつつあるが、本年1月28日下村博文文部科学相は、教科書作成や教員による指導の指針となる中学校と高校の学習指導要領解説書を改定し、尖閣諸島と竹島を「固有の領土」と明記したことを正式に発表した。文部科学省は同日、学習指導要領の解説書を改定したことを都道府県教育委員会や都道府県知事などに通知し、領土教育について「指導の充実」を求めた。この通知は教育委員会を通じて各学校に示され、授業を行う際の指針となるもので、中学校の社会科、高校の地理歴史と公民、中高の地理と公民の解説書について、改定後と改定前の記述を示すとともに、「明治期にわが国が国際法上正当な根拠に基づき竹島、尖閣諸島を正式に領土に編入した経緯に触れることを明記した」などと、改定のポイントを明らかにした。その上で、竹島は韓国に不法占拠され、尖閣には領土問題が存在しないとの政府見解に沿った内容を追加した。高校日本史などでも竹島と尖閣を領土に編入した経緯を取り上げることを求め、領土教育を強化するという。今春申請を受け付ける中学校教科書の検定から反映される。
 先に触れた地図は、視覚的でわかりやすい。教科書にはコラム記事で、数枚の地図を載せ、竹島は江戸時代から広く日本領と認識されてきたと明記するとよいと思う。

関連掲示
・拙稿「竹島の日と日本海名称問題」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/fbc3df156b882962dbef82533a293a97

人権84~人権の歴史

2014-02-23 08:42:33 | 人権
●近代的国家主権の原型

 第1部では、人権について、基礎理論の検討を行った。人権の発達を見るには、その歴史と思想を把握することが必要である。そこで、第2部では、西欧における人権の発達を歴史的にたどり、続いて思想的な展開を見る。
 人権は、主権・民権との関係の中でとらえなければならない。本章では、主権・民権・人権について、西欧の中世から市民革命の時代まで、次章で続いて国民国家・ナショナリズム・帝国主義の時代までの歴史を書く。その後に、20世紀初めまでの人権の発達を書くこととする。
 私は、「西洋発の文明と人類の歴史」という文明学的な観点に立った史論を書いており、本稿はそれに対する個別主題的な論稿となる。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09e.htm
 さて、主権・民権・人権の歴史を概観するに当たり、最初に主権について述べたい。主権については第1部第4章に基礎的なことを書いた。主権は英語 sovereignty等の訳語であり、国境で区画された領域内における最高統治権である。主権は統治の権利であり、その作用を力の観念でとらえれば、統治の権力である。実際、近代西欧では、主権は「最高の力」と呼ばれてきた。
 西欧における権利と権力の根源は、ユダヤ=キリスト教の神に求められ、神の代理人としての教皇の権利と権力は神に授ったものとされた。この教権神授説に対し、帝権神授説、王権神授説が現れ、民権神授説、民権互認説が続いた。人権は、国王が神から授かったとする主権に人民が参与する過程で唱えられるようになった。ここで民権とは「国民の権利(rights of people)」であり、その一部が普遍的・生得的なものと想定されて人権すなわち「人間の権利(human rights)」と唱えられることになった。
 近代的な国家主権には、原型がある。先行形態と言ってもよい。それは、ローマ・カトリック教会の教皇権である。古代ローマ帝国は、395年に東西に分裂した。その後、東西の帝国でキリスト教の教会は独自の道を歩み、1054年に最終的に東方正教会とローマ・カトリック教会に分離した。ローマ教皇の教皇権は、神授のものとされた。教権神授説は、キリスト教の教会組織が成立して以来、唱えられてきた思想だった。
 教皇グレゴリウス7世は、1075年に教皇教書を発布した。教皇教書は絶対的教皇権を確立するものだった。ここでの絶対的とは、一人に権威と権力が集中した状態をいう。立法・司法・行政のすべてにわたる権限が一個の権限となり、それが教皇によって保持された。教皇は、聖書に記された神の法と自然法とにのみ従う普遍的な立法者であるとした。神の法と自然法にのみ従うとは、人間が作った人定法を超えた存在ということである。また、教皇は聖職者及び君侯を補助者として使用する統治者、そして教皇令その他教会法に関する審判者であるとした。これによって教皇は、立法・司法・行政を貫く至上権を得た。私は、この絶対的教皇権が近代的な国家主権の原型と考える。
 教皇権はやがて皇帝権と相対的なものとなり、中世の西欧は、宗教的な教皇と世俗的な皇帝を二つの頂点とし、様々な封建勢力が各地に所領を持って混在する社会となった。近代的な国境は存在しなかった。その教皇権と皇帝権が並立する構造を打破したところに、国王の主権が成立した。これが近代的な国家主権の誕生となった。そして、国王の主権は、国王と貴族や新興階級、国王と国民が共有するものとなったり、国民が共有するものとなったりした。主権に国民が参与する過程で、国民の権利が獲得・拡大され、その権利が人権と呼ばれるようになる。

●教皇権に対する皇帝権の独立

 絶対的教皇権を確立した教皇グレゴリウス7世は、1075年に俗人による高位聖職者の任命を禁止した。それによって、教皇と皇帝の間で叙任権闘争が起こった。皇帝ハインリヒ4世は闘争に敗れ、破門寸前となった。これをカノッサの屈辱という。それほど教皇は強大な権限を持っていた。
 だが、12世紀半ばになると、皇帝フリードリッヒ1世は、教皇ハドリアヌスに反抗して、皇帝は神に直接、世俗の統治を委託されており、帝国は神に直接、聖別されている。教皇には世俗に介入する権利はもともとない、と主張した。フリードリッヒ1世は、1157年に「神聖帝国」の名を使用した。これは世俗権の所有者である皇帝が、教権神授説に立つ教皇による政治を退ける決意表明だった。その後、1254年から、「神聖ローマ帝国」の国号が使われるようになった。帝国の始源は、962年オットー1世の皇帝戴冠に求められ、ドイツを中心に、19世紀の初めまで800年以上続いたとされる。
 フリードリッヒ1世以後、皇帝は権利・権力を強めた。1303年には、教皇ボニファティウス8世がフランス王フィリップ2世にローマ郊外で捕えられるというアナーニ事件が起こった。この事件以降、教皇権は次第に衰退していく。
 14世紀初め、『神曲』で知られるイタリアの詩人ダンテ・アリギエリは、「神の代理者である教皇は霊の世界を管轄するだけ」「現実の諸国家の上に平和を維持するべき皇帝の権限は、神から直接授けられたものであるから教皇権と並立して俗界の至上権たるべき」と帝権神授説を説いた。
 神聖ローマ帝国は、ローマが中心ではなく、実態は今日のドイツを中心とした地域に存在した。皇帝は、諸王の上に立つ王ではあるが、帝国の各地では諸侯が領地を持っていた。諸侯とはカトリックの大司教等の高位聖職者、公爵・伯爵の貴族等である。また帝国の外の各地には、様々な封建制国家が存在し、諸国の国王が存在した。
 教皇権に対する皇帝権の強化は進んだ。1508年にハプスブルグ家のマクシミリアンが教皇の戴冠を受けずに皇帝を名乗った。以降、教皇による皇帝戴冠のシステムがなくなった。これは皇帝権が教皇権から独立したことを意味する。
 補足として、ここに登場するハプスブルグ家は、1282年にオーストリア・ハプスブルグ家が誕生して以後、約700年にわたって、ヨーロッパ史を彩った名家である。1438年にアルプレヒト2世が神聖ローマ帝国皇帝に即位したのがハプスブルグ王朝の開幕だった。オーストリアを根拠に、途中から系統が分かれたスペイン・ハプスブルグ家を含めて、西欧に広大な領地を持ち、各国の王族・貴族と婚姻関係を結び、栄華を誇った。皇帝権や国王権が、実はこうした有力家系の持つ家族的な権利・権力でもあることに注意しなければならない。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「人権――その起源と目標(第1部) 」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion03i.htm

「竹島の日」と日本海名称問題

2014-02-22 08:50:37 | 国際関係
 本日は「竹島の日」である。平成17年3月に島根県議会がこの日を定めてから、9回目となる。2月22日というのは、明治38年(1905)に政府が竹島を島根県に編入し、この日に島根県知事が所属所管を明らかにする告示を行ったことに由来する。2月7日の「北方領土の日」と同様、「竹島の日」は県のレベルではなく、国のレベルで制定すべきである。
 本日島根県が主催し松江市で開催される「竹島の日」式典に、政府は亀岡偉民内閣府政務官を派遣する。平成18年から始まった同式典への政務三役の出席は、昨年の島尻安伊子内閣府政務官(当時)に続き2回目である。
 山本一太領土問題担当相は、政務官派遣につき「国際法的にも歴史的にも日本固有の領土だと示すため、総合的な判断で政務官の派遣を決めた」と説明。竹島の領有権を主張する韓国の反発が予想されることについては「日韓関係を悪化させようという意図は全くない」と述べた。
 わが国は、大東亜戦争末期から敗戦直後にかけて旧ソ連によって北方領土を不法占拠された。続いて、連合国に占領されていた期間に、韓国の李承晩大統領が李承晩ラインを引いて竹島を自国の領土・領海に含めようとした。これに対し、わが国は有効な抗議・行動をせず、不法占拠を許し、実効支配を受ける状態となった。
 韓国は一昨年9月と昨年6月に竹島で防衛訓練を行った。さらに昨年10月25日には海空軍と海洋警察が、竹島で防衛訓練を行い、海軍の特殊戦旅団による上陸訓練も強行された。一昨年夏の李明博前大統領の竹島不法上陸に次ぐ不当な行為である。上陸訓練が行われたのは、ちょうどわが国で「国家安全保障会議(日本版NSC)」創設のための関連法案が、衆院本会議で審議入りした日だった。菅義偉官房長官は、外交ルートを通じて韓国政府に抗議したが、韓国側は反発している。形式的な抗議で、韓国の方針が変わることはない。
 
 ところで、韓国政府は「日本海」という名称を「東海(イースト・シー)」に変えるべきだとして、米国の連邦政府や州政府、国連機関等に働きかけをしている。この動きは、竹島の領有権問題と密接に関係している。竹島の韓国名である「独島」が「日本海」にあると、日本の領海内にあるようでよくないという認識によるものなのである。
 米国南部のバージニア州では、韓国系団体の活動により、州議会に日本海と東海を併記する法案が提出され、上下院とも圧倒的多数の賛成で可決された。知事の署名によって成立する見込みである。この間、わが国は佐々江賢一郎駐米大使がマコーリフ州知事の元を訪れ、日本の主張への理解を求め、協力を要請した。だが韓国系団体と法案推進派議員は、この働きかけを「外国政府の介入」「脅迫」と喧伝し、安豪栄(アン・ホヨン)駐米韓国大使が知事と面会したことで、巻き返されてしまった。韓国側の「東海」の主張は史実の曲解が著しいが、わが国政府は州議会議員に正確な史実を浸透できなかった。
 東海併記を求める韓国側の工作は、他の州でも行われており、米国東部のニューヨーク州でも州議会上下両院に、教科書に日本海を記載する際に「東海」を併記することを義務付ける法案が民主党議員によって提出された。同じくニュージャージー州の州議会下院でも、民主党議員が同様の法案提出を準備していると伝えられる。こうした動きは、米国各地で拡大強化されていくだろう。
 全米50州の全公立学校の教科書に「東海」併記を実現することを目標とする運動も、韓国系団体の「韓国系アメリカ人の声」(ピーター・キム会長)等によって進められている。当然、各州の議会への「東海」併記の働きかけと連携したものである。
 韓国の教科書では竹島を「独島」と称し、韓国領として歴史経緯も厚い記述になっている。これに比し、わが国の教科書は、竹島について他国が領有権を主張していることは強調しながら、固有の領土として歴史的経緯の説明が薄く、「日本固有の領土」と明記していないものが目立つ。「韓国に不法占拠されている」と日本政府の公式見解に沿って明確に書いている教科書はほとんどない状態である。米国在住の日本人、日系人の多くも、竹島が日本固有の領土という知識を教育されておらず、自国領だという確信を持てていないから、韓国系住民のような積極的で組織的な運動ができていないと思われる。
 戦後日本人の領土意識は、極端に低下している。これを回復しないと、日本の現状は改革しえない。領土問題は主権の問題、国防の問題であり、つきつめると憲法問題である。そこに根本を置かないと、事態は決して好転しない。この点は、別に掲示している下記の拙稿をご参照願いたい。

関連掲示
・拙稿「領土問題は、主権・国防・憲法の問題」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12.htm
 目次から02へ

「人権--その起源と目標」第1部をアップ

2014-02-21 08:48:39 | 人権
 平成24年7月8日からブログとMIXIに連載している「人権――その起源と目標」は、第83回をもって第1部基礎理論篇を終えました。そこで第1部の原稿を編集して、マイサイトに掲載しました。通してお読みになりたい人は、下記へどうぞ。

■人権――その起源と目標(第1部)
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion03i.htm

 第1部だけで単行本1冊分の量となりましたが、第2部は人権の歴史と思想、第3部は人権の現状と課題、第4部は人権の目標と新しい人間観を予定しています。既に第3部の半分以上書き進めているのですが、進む過程で新たな理論的検討点が出てきており、全体をひととおり書き終えてから、第1部は一部修正・加筆するつもりです。

ルーズベルトは「北方領土は日本保持」とする米極秘文書を無視した

2014-02-19 10:23:33 | 歴史
 わが国の北方領土は、ソ連が占領し、現在も後継国家ロシアが「第2次大戦の結果、自国領になった」と領有を主張している。この不法行為を正当化する根拠とされてきたのが、ヤルタ協定である。
 ヤルタ協定は、連合国首脳が交わした軍事協定にすぎず、条約ではない。国際法としての根拠をもっていない。ヤルタ密約とも呼ばれる。当事国が関与しない領土の移転は無効という国際法に違反しており、当事国だった米国も法的根拠を与えていない。1956年、共和党のアイゼンハワー政権は、ヤルタ秘密議定書は、「ルーズベルト個人の文章であり、米国政府の公式文書ではなく無効」との国務省声明を発表している。
 産経新聞2月6日の記事は、ヤルタ会談でルーズベルトが無視した極秘報告書について書いている。記事によると、戦前米国では、国務省がクラーク大学のブレイクスリー教授に委嘱して千島列島を調査し、1944年12月に「南千島(歯舞、色丹、国後、択捉の4島)は地理的近接性、経済的必要性、歴史的領土保有の観点から日本が保持すべきだ」との極秘報告書を作成した。そしてヤルタ会談の前にルーズベルト大統領とステティニアス国務長官に提出した。
 しかし、ルーズベルトは国務省の報告を読まず、進言を無視した。その理由は、米軍は日本本土上陸作戦になると、日本軍の抵抗で50万人の兵士が犠牲になると推定しており、ルーズベルトはソ連の参戦を望んでいたためだった。ハリマン駐ソ大使は、ルーズベルトに対し、ソ連に千島列島を与えるという合意に再考を促したが、ルーズベルトは「ロシアが対日戦の助っ人になってくれる大きな利益に比べれば、千島は小さな問題だ」と進言を退けたという。
 記事は、ワシントン・ポスト紙の元モスクワ支局長、マイケル・ドブズの近著『ヤルタからヒロシマへ』を紹介している。それによると、スターリンは「盗聴報告のほか、スパイがもたらす米国の説明文書も目にすることができた。共産主義の崩壊後、彼の個人ファイルにはクリール諸島(千島列島)のソ連への割譲に反対する44年12月の米国務省作成の内部文書が含まれていることが分かった。ルーズベルトはこうした問題で自国の専門家の見解を読む気にならなかったが、スターリンはあらゆる微妙な綾までむさぼり読んでいたのである」。そして「ルーズベルトが国務省の助言に従わないことを喜んだ」という。
 スターリンは、ルーズベルトが脳こうそくの一種であるアルバレス病のため、精神がもうろうとして正常な判断ができない状態であることを把握していた。そのうえ、ルーズベルト政権には200人を超すソ連のスパイや工作員が侵入していた。なかでも、ステティニアス国務長官の首席顧問としてヤルタに随行したアルジャー・ヒスは、ソ連の軍参謀本部情報総局(GRU)のエージェントとして、ヤルタ会談で重要な役割を担った。ヒスは、国務省を代表してほとんどの会合に出席し、ルーズベルトを補佐した。会談の前に、米国の立場に関する全ての最高機密ファイルと文書を与えられ、ヤルタ密約の草案を作成した。「ルーズベルトが国務省文書を一顧だにせず北方領土を引き渡した背景にスターリンの意をくんだヒスの働きがあったといえる」と記事は書いている。
 ヒスの暗躍については、拙稿「日本を操る赤い糸~田中上奏文・ゾルゲ・ニューディーラー等」の第9章「ヤルタ会談でもソ連スパイが暗躍」にも書いたところである。現代史の常識として、日本人はよく知るべきである。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion07b.htm
 以下、記事を転載する。
 
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●産経新聞 平成26年2月6日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140206/plc14020609370006-n1.htm
米極秘文書「北方四島は日本保持」 諜報駆使、スターリン熟読
2014.2.6 09:35

「ヤルタ密約」で主導権
 あす7日は北方領土の日。先月31日の日露次官級協議でロシア側は「北方四島は第二次大戦の結果、ロシア領になった」との従来の主張を繰り返した。ロシアが北方四島領有を正当化する根拠としてきたのが1945年2月のヤルタ会談で交わされた「ヤルタ密約」だ。会談直前に米国務省は「北方四島は日本が保持すべきだ」との報告書を作成しながら、ルーズベルト米大統領は一切目を通さず、逆に事前に入手したソ連のスターリン首相が熟読し、ルーズベルトが国務省の進言に従わないことを奇貨として、主導権を握って巧みに北方領土を奪ったことはあまり知られていない。
(岡部伸)

◆ルーズベルト無視
 国務省はクラーク大学のブレイクスリー教授に委嘱して千島列島を調査し、44年12月に「南千島(歯舞、色丹、国後、択捉の4島)は地理的近接性、経済的必要性、歴史的領土保有の観点から日本が保持すべきだ」との極秘報告書を作成、ヤルタ会談前にルーズベルト大統領とステティニアス国務長官に手渡した。
 ワシントン・ポスト紙の元モスクワ支局長、マイケル・ドブズ氏が上梓した近著『ヤルタからヒロシマへ』によると、スターリンは「盗聴報告のほか、スパイがもたらす米国の説明文書も目にすることができた。共産主義の崩壊後、彼の個人ファイルにはクリール諸島(千島列島)のソ連への割譲に反対する44年12月の米国務省作成の内部文書が含まれていることが分かった。ルーズベルトはこうした問題で自国の専門家の見解を読む気にならなかったが、スターリンはあらゆる微妙な綾までむさぼり読んでいたのである」。そして「ルーズベルトが国務省の助言に従わないことを喜んだ」という。
 またスターリンは往年の覇気を失ったルーズベルトの病名がアルバレス病(動脈硬化に伴う微小脳梗塞の多発)で、精神がもうろうとして正常な判断ができないほど悪化していたことを正確に把握していた。
 スターリンは、インテリジェンス(諜報)を駆使してルーズベルトと米国を丸裸にして、南樺太同様に「北方四島も日露戦争で奪われた」とルーズベルトを欺いたのである。
 では、なぜルーズベルトは国務省の進言を無視したのだろうか-。
 米軍は日本本土上陸作戦(ダウンフォール作戦)になると、日本軍の抵抗で50万人の兵士が犠牲になると推定しており、「背後」からソ連の参戦を望んだためだ。この当時は原爆が完成していなかった。
 米国は1941年4月、モスクワで日ソ中立条約を締結した際、スターリンが松岡洋右外相に「条約締結の見返りに千島列島の譲渡」を要求した、との日本の外交電報を傍受、解読していた。北方四島を含む千島列島に領土的野心を燃やすスターリンの歓心を買おうとしたともいえる。ソ連に大きく譲歩する合意に再考を促したハリマン駐ソ大使に対し、ルーズベルトは「ロシアが対日戦の助っ人になってくれる大きな利益に比べれば、千島は小さな問題だ」と進言を退けたという。
 ルーズベルトの背後で暗躍したのがソ連のスパイたちだった。ルーズベルト政権には200人を超すソ連のスパイや工作員が侵入していたことが米国家安全保障局(NSA)の前身がソ連の暗号を傍受・解読したヴェノナ文書で判明している。
 側近としてヤルタに同行したアルジャー・ヒスもその一人で、ソ連の軍参謀本部情報総局(GRU)のエージェントだった。
 ステティニアス国務長官の首席顧問としてヤルタに随行したヒスは、国務省を代表してほとんどの会合に出席し、病身の大統領を補佐した。会談19日前、米国の立場に関する全ての最高機密ファイルと文書を与えられ、ヤルタ協定の草案も作成している。そこで北方四島を含む千島列島引き渡しのアウトラインを描いた可能性が高い。ルーズベルトが国務省文書を一顧だにせず北方領土を引き渡した背景にスターリンの意をくんだヒスの働きがあったといえる。

◆プーチン氏も踏襲
 このヤルタ密約を根拠にソ連は、北方四島を占領し、現在も後継国家ロシアは「第二次大戦の結果、自国領になった」と北方領土を領有する歴史的正当性を主張し続けている。プーチン大統領も「ロシアが積極的な役割を果たして達成したヤルタ合意こそ世界に平和をもたらした」と評価し、31日の日露次官級協議でもヤルタ密約をサンフランシスコ講和条約、国連憲章の旧敵国条項などとともに根拠にあげたもようだ。
 しかし、そもそもヤルタ密約は、連合国首脳が交わした軍事協定にすぎず、条約ではないため国際法としての根拠をもっていない。さらに当事国が関与しない領土の移転は無効という国際法にも違反しており、当事国だった米国も法的根拠を与えていない。共和党アイゼンハワー政権は1956年、ヤルタ秘密議定書は、「ルーズベルト個人の文章であり、米国政府の公式文書ではなく無効」との国務省声明を発表。2005年にはブッシュ大統領が「史上最大の過ちの一つ」と批判している。
 「ヤルタ密約」が招いたのは北方領土問題だけではない。中国、北朝鮮などアジアに共産化を引き起こした。
 8日ロシア南部のソチで日露首脳会談が行われるが、北方領土問題の原点ともいえる「ヤルタ密約」を克服して国際的に合法な国境画定ができるかが鍵となりそうだ。
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関連掲示
・拙稿「日本を操る赤い糸~田中上奏文・ゾルゲ・ニューディーラー等」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion07b.htm



人権83~主権と人権

2014-02-16 08:35:17 | 人権
●主権と人権をめぐる戦いとそのルール

 一国において、集団の意思がぶつかり合い、対話・交渉によって解決しない場合には、戦う権利が承認されなければならない。ロックの抵抗権、革命権や民族の自決権がそうである。ただし、抵抗権があれば、これを抑止する権利もあり、革命権があれば、革命を防止する権利もある。方や自決権があれば、方や統治権がある。意思と意思のぶつかり合いは、最後は実力によって決着をつけるしかない。
 一国内で、政府の統治権と少数民族なりエスニック・グループ等の自決権がぶつかり合う場合がある。政府は、制度化された権利を主張する。既存のものとして、正当性を主張する。これに反発する側は、問題が話し合いで解決しなければ、自らの力で権利の実現を図るしかない。意思の対立が激化すれば、最後は実力によって決着をつけるほかない。革命・内戦・無政府状態等は、殺し合い、奪い合いの修羅場を生み出す。殺してはいけない、奪ってはいけない、犯してはいけない等の道徳的な訴えだけでは、解決がつかない事態となる。この場合は、力で制止したり、事態に決着をつけるしかない。
 政府は、物理的強制力としての権力を行使する。反政府側は、デモで意思を表示したり、武力で闘争したりする。権利を得たいなら、力で勝ち取るしかない。権利とはそういうものである。こうした権利の総称が、しばしば人権と呼ばれる。
 国家間で意思がぶつかり合い、対話・交渉によって解決しない場合には、戦争に発展することがあり得る。1928年の不戦条約は、国際紛争の解決はすべて平和的手段によるものとし、一切の武力使用禁止を約した。ただし、侵攻戦争か自衛戦争かを決めるのは、当事国であるとされた。相手国は侵攻だと非難しても、当事国は自衛だと主張する場合がある。この条約は期限がなく、現在も約60の国が当事国となっている。国際連合憲章は第2条3項に「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。」、同4項に「すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と定めた。これは不戦条約の規定の趣旨を定めなおしたものと考えられている。
 しかし、このように国際条約に定めても、なお主権と人権をめぐる戦争は起こり得る。その場合、戦争における戦い方のルールを定めたものが、戦時国際法である。戦時国際法は、交戦国間の関係を律する交戦法規と、交戦国と中立国との関係を律する中立法規に分かれる。ただし、戦時国際法も条約を締結しない国家は、このルールを承認しない。ゲリラやテロリストや革命家も、このルールを承認しない。そのため、戦時国際法を認めない集団が相手であれば、ルールなき戦いが繰り広げられる。これを収拾するには、最終的には実力によるしかない。
 国民の権利を保障する主体は、その国の政府である。国家が破産したり、崩壊したり、他国に支配されたりして、政府が機能マヒに陥れば、国民の権利は保障を受けられなくなる。もともと集団の権利あっての個人の権利ゆえ、集団の統治機構である政府がマヒすれば、国民の権利は不安的になり、最悪の場合は消失する。国内の一地域が民族紛争、内戦、災害等によって無政府状態になっている場合も、深刻な状況を生む。略奪・暴行・強姦・殺戮等が横行する。
 政府が機能をマヒした状態にあっては、国内の諸集団が崩壊し、成員が分散してしまうことがあり得る。集団から離脱または孤立した個人や家族に対して、権利を保護するものは存在しない。人々は、自らの生命・自由・財産の権利を自力で守らねばならない。自主的に実力を組織し、一定の領域を統治する団体、すなわち政治団体を形成する。そして構成員や被保護民の権利を保護することが必要になる。
 ある国から他の国に難民が流入した場合、これを受け入れるかどうは、領域国の判断である。国際機関は、領域国に難民の受け入れを強制することができない。民間団体は、領域国の政府の認める範囲での救援に活動を限られる。
 現代世界において、人権の名のもとに保障される権利を守るには、それぞれの国民が自国の主権と独立を守り、自国において自らの権利を発展させる以外にない。そして各国の共存共栄・国際平和が実現されていてはじめて、権利を侵害されたり、保護を失ったりしている人々への国際的な支援と自立への援助ができる。反国家・脱国家が人権の実現となると説く者は、人々を惑わす者である。国家崩壊を招いたら、その国民は亡国の民、流浪の民となるのみである。個人の自由と権利を獲得し、またそれを守るには、所属する集団の集団としての権利を維持・強化する必要がある。自国の主権と独立を守り得てこそ、個人の自由と権利を守り、拡大することができる。国家の主権と個人の人権は、相互関係にあることを認識しなければならない。

 以上で第1部を終了する。続いて、第2部では、第1部で書いた人権に関する基礎的な理論の考察をもとに、中世以降の西洋における人権にかかる歴史をたどり、19世紀までの人権の思想的展開について検討したい。

 次回に続く。