●「友愛=兄弟愛・同胞愛」を説く政治家が兄弟争いとは
鳩山氏が説く友愛は、道徳的な理念である。政治家が国民に道徳を説くのであれば、まず自らが実践し、率先垂範すべきである。東洋の政治哲学である儒教は、そのように為政者、君子に教えてきた。鳩山氏は、日本国民に対して友愛を説くだけでなく、外国の指導者や他国民に対しても友愛を説く。それほど高唱するのであれば、鳩山氏は、国の内外に広く自ら模範を示す必要がある。
ところが、鳩山氏は、弟の鳩山邦夫氏とは政治的な意見が異なり、兄は民主党、弟は自民党である。本年10月26日、鳩山首相は、友愛の理念のもとに、国会で所信表明演説を行なった。これに対し、弟・邦夫氏は、「若い女性向けの少女マンガのシーンみたいな話ばっかりだ」と酷評した。また、「兄弟だから1、2割は共感するが、あとはただの美辞麗句だ。辞書の中から美しい言葉ばかりを全部引っ張ってきたような作品だ」などと皮肉交じりに批判した。
8月の衆議院選挙の際には、邦夫氏は、兄は「黒い鳩」だ、自分は「白い鳩」で正義を行なっていると有権者に訴えた。兄の由紀夫氏が友愛、つまり兄弟愛・同胞愛を満天下に説くのであれば、実の弟である邦夫氏すら信服させられなくて、どうして日本国民や外国の指導者や国民を啓発することができようか。兄が自ら実践し、弟が呼応し、誰もが認めるものとならなければ、鳩山氏の友愛は偽善である。
●偽装献金問題で「黒い鳩」と弟が非難
鳩山由紀夫氏が「黒い鳩」と弟から非難されるのは、政治資金収支報告書の虚偽記載による偽装献金問題による。本年6月、鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」が、すでに死亡している人や実際には献金していない人から個人献金を受けたと、事実と異なる内容を収支報告書に記載していたことが明らかになった。鳩山氏は記者会見し、収支報告書に記載した5万円を超える個人献金のうち、故人や実際には献金していない人の名義の記載が、平成17~20年の4年間で計約90人、193件、総額2177万8千円に上ると公表した。鳩山氏は自分は知らず、秘書がやったことだと弁明した。しかし、東京地検特捜部から事情聴取を受けた鳩山氏の元公設第1秘書は、虚偽記載は10数年前から行なっており、鳩山氏の父・威一郎の代から長期にわたって繰り返していたと語っている。鳩山家の伝統は友愛だけではなかった。偽装献金も、鳩山家の伝統に加えなければならない。祖父からは友愛を、父からは偽装を受け継いだのが、由紀夫氏である。
虚偽記載の問題は、東京地検特捜部が現在調査中である。仮に鳩山氏自身が起訴されることになれば、現職の総理大臣が法廷で裁かれることになる。鳩山氏は、首相となる以前、平成15年(2003)7月に、自身のメールマガジンに次のように書いている。「私は政治家と秘書は同罪と考えます。政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやった こと』と嘯いて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです。政治家は基本的に金銭に関わる部分は秘書に任せており(そうでない政治家も いるようですが)、秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」と。
鳩山氏のこの言葉と、今回の虚偽記載での氏の発言は、まったく矛盾している。私は、鳩山氏がうそを言っていると疑わざるを得ない。弟から公然と「黒い鳩」と指弾されても厚顔を保つ鳩山氏は、国内外に友愛を説き続けている。「うそつきは泥棒のはじまり」ということわざがあるが、もし「友愛はうそつきのはじまり」ということになったら、友愛は道徳の理念ではなく、不道徳の隠れ蓑になるだろう。
次回に続く。
鳩山氏が説く友愛は、道徳的な理念である。政治家が国民に道徳を説くのであれば、まず自らが実践し、率先垂範すべきである。東洋の政治哲学である儒教は、そのように為政者、君子に教えてきた。鳩山氏は、日本国民に対して友愛を説くだけでなく、外国の指導者や他国民に対しても友愛を説く。それほど高唱するのであれば、鳩山氏は、国の内外に広く自ら模範を示す必要がある。
ところが、鳩山氏は、弟の鳩山邦夫氏とは政治的な意見が異なり、兄は民主党、弟は自民党である。本年10月26日、鳩山首相は、友愛の理念のもとに、国会で所信表明演説を行なった。これに対し、弟・邦夫氏は、「若い女性向けの少女マンガのシーンみたいな話ばっかりだ」と酷評した。また、「兄弟だから1、2割は共感するが、あとはただの美辞麗句だ。辞書の中から美しい言葉ばかりを全部引っ張ってきたような作品だ」などと皮肉交じりに批判した。
8月の衆議院選挙の際には、邦夫氏は、兄は「黒い鳩」だ、自分は「白い鳩」で正義を行なっていると有権者に訴えた。兄の由紀夫氏が友愛、つまり兄弟愛・同胞愛を満天下に説くのであれば、実の弟である邦夫氏すら信服させられなくて、どうして日本国民や外国の指導者や国民を啓発することができようか。兄が自ら実践し、弟が呼応し、誰もが認めるものとならなければ、鳩山氏の友愛は偽善である。
●偽装献金問題で「黒い鳩」と弟が非難
鳩山由紀夫氏が「黒い鳩」と弟から非難されるのは、政治資金収支報告書の虚偽記載による偽装献金問題による。本年6月、鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」が、すでに死亡している人や実際には献金していない人から個人献金を受けたと、事実と異なる内容を収支報告書に記載していたことが明らかになった。鳩山氏は記者会見し、収支報告書に記載した5万円を超える個人献金のうち、故人や実際には献金していない人の名義の記載が、平成17~20年の4年間で計約90人、193件、総額2177万8千円に上ると公表した。鳩山氏は自分は知らず、秘書がやったことだと弁明した。しかし、東京地検特捜部から事情聴取を受けた鳩山氏の元公設第1秘書は、虚偽記載は10数年前から行なっており、鳩山氏の父・威一郎の代から長期にわたって繰り返していたと語っている。鳩山家の伝統は友愛だけではなかった。偽装献金も、鳩山家の伝統に加えなければならない。祖父からは友愛を、父からは偽装を受け継いだのが、由紀夫氏である。
虚偽記載の問題は、東京地検特捜部が現在調査中である。仮に鳩山氏自身が起訴されることになれば、現職の総理大臣が法廷で裁かれることになる。鳩山氏は、首相となる以前、平成15年(2003)7月に、自身のメールマガジンに次のように書いている。「私は政治家と秘書は同罪と考えます。政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやった こと』と嘯いて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです。政治家は基本的に金銭に関わる部分は秘書に任せており(そうでない政治家も いるようですが)、秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」と。
鳩山氏のこの言葉と、今回の虚偽記載での氏の発言は、まったく矛盾している。私は、鳩山氏がうそを言っていると疑わざるを得ない。弟から公然と「黒い鳩」と指弾されても厚顔を保つ鳩山氏は、国内外に友愛を説き続けている。「うそつきは泥棒のはじまり」ということわざがあるが、もし「友愛はうそつきのはじまり」ということになったら、友愛は道徳の理念ではなく、不道徳の隠れ蓑になるだろう。
次回に続く。