モーロワは、祖国の敗因を分析した上で、「救済策」を提示している。救国の対策である。フランスはナチス・ドイツに占領されている。その状況にあって、モーロワは、祖国が自由と独立を回復するために、何をなすべきかを自国民に呼びかけた。それが以下の9つの対策である。
便宜上、番号を振ることにする。
●祖国の救済策
1.強くなることーー国民は祖国の自由の為にはいつでも死ねるだけの心構えがなければ、やがてその自由を失うであろう。
2.敏捷に行動することーー間に合う様に作られたる1万の飛行機は、戦後の5万台に優る。
3.世論を指導することーー指導者は民に行くべき道を示すもので、民に従うものではない。
4.国の統一を守ることーー政治家というものは同じ船に乗り合わせた客である。船が難破すればすべては死ぬのだ。
5.外国の政治の影響から世論を守ることーー思想の自由を擁護するのは正当である。しかし、その思想を守るために、外国から金を貰うのは犯罪である。
6.非合法暴力は直接的かつ厳重に処罰すべきであるーー非合法暴力への煽動は犯罪である。
7.祖国の統一を撹乱しようとする思想から青年を守ることーー祖国を守る為に努力しない国民は自殺するに等しい。
8.治めるものは高潔なる生活をすることーー不徳はいかなるものであれ、敵につけ入る足掛かりを与えるものである。
9.汝の本来の思想と生活方法を熱情的に信ずることーー軍隊は、否、武器をすら作るものは信念である。自由は暴力よりも熱情的に奉仕する値打ちがある。
●フランスの解放
フランスは、起ちあがった。レイノー内閣の国防次官だった将軍シャルル・ド・ゴールは、パリが陥落すると、イギリスに亡命し、ロンドンからレジスタンスを呼びかけた。「自由フランス国民委員会」を結成し、「自由フランス」を指揮して北アフリカ戦線で戦い、対独抗戦を指導した。
アメリカにあって救国の対策を示したモーロワは、国民に勇気を与え、また米英等の国民に助力を促しただろう。
幾多の困難を経て、1944年6月、連合軍によるノルマンディー上陸作戦は成功した。8月25日、パリが解放され、フランスは自由と独立を回復した。
フランスは、まだ幸いだったのかもしれない。英米との同盟があったからである。旧ソ連の侵攻を受けた東独等の東欧諸国は、40年以上の支配と搾取を受けた。中国の侵攻を受けたチベットは、徹底的な虐殺と破壊により、民族絶滅の危機に陥っている。国防力が弱く、また強力な同盟を持たない国は、なすすべなく蹂躙される。
●日本のための予防策
モーロワの書『フランス敗れたり』は、日本に今後起こりうることを、不気味なほどに暗示している。それとともに、それを避けるための方策を読み取ることもできる。
モーロワの「救済策」は、祖国が他国に蹂躙されてしまってからの対策だった。我々日本人は、前車の轍を踏まぬよう、これを予防策に読み替えて、教訓としたい。
以下、救済策の下に、私の所感を書く。
1.「強くなることーー国民は祖国の自由の為にはいつでも死ねるだけの心構えがなければ、やがてその自由を失うであろう」
フランス国民は、自由と独立を守るために戦うことを怠った。その結果、全体主義の侵攻に敗れ、自由と独立を失った。日本国民は、フランスの教訓に学ぶべきである。
2.「敏捷に行動することーー間に合う様に作られたる1万の飛行機は、戦後の5万台に優る」
国防は、相手があってのもの。変貌する東アジアの事情に対応できる国防政策を行うことが必要である。なにより憲法の改正なくして、日本は守れない。現行憲法は亡国憲法である。自らの手で新憲法を作り、安全保障を整備することが急務である。
3.「世論を指導することーー指導者は民に行くべき道を示すもので、民に従うものではない」
デモクラシーは、指導者と国民に道徳があってのもの。道徳が崩壊すれば、デモクラシーは堕落する。堕落したデモクラシーは、独裁か愚民政治に至る。大衆が愚民と化し、指導者がその大衆に迎合するとき、国は危殆に瀕する。国政に当たる者は、このことを肝に銘じてほしい。
4.「国の統一を守ることーー政治家というものは同じ船に乗り合わせた客である。船が難破すればすべては死ぬのだ」
日本丸が沈没すれば、国民は家族の生命や財産を失って漂流する。政治家は個人的な争いにとらわれて、民利国益を見失ってはならない。自国より他国の利益に奉仕する者は、国民を裏切り、遂には自らも破滅する。
5.「外国の政治の影響から世論を守ることーー思想の自由を擁護するのは正当である。しかし、その思想を守るために、外国から金を貰うのは犯罪である」
戦後、わが国は米ソの影響に支配されてきた。近年は中国・韓国・北朝鮮の影響が強くなっている。利権に執着し、脅しに屈服し、他国に買収され、国を売る行為は、厳罰に処すべきである。
6.「非合法暴力は直接的かつ厳重に処罰すべきであるーー非合法暴力への煽動は犯罪である」
本項は、共産主義やファシズムについて言うものだろう。わが国は過激派やオウム真理教に対して、破防法の適用をせず、破壊活動を許した。日本人拉致に関与した在日朝鮮人組織にも、有効な規制をかけていない。非合法暴力には、断固たる対応が必要である。
7.「祖国の統一を撹乱しようとする思想から青年を守ることーー祖国を守る為に努力しない国民は自殺するに等しい」
戦後日本には、米・ソ・中・韓・朝等の思想が大量に流入している。それどころか、反日的・反国家的な思想が、公教育で青少年に教えられ、マスメディアによって国民に吹き込まれている。良識ある国民は、これ以上、亡国自滅の行為を許してはならない。
8.「治めるものは高潔なる生活をすることーー不徳はいかなるものであれ、敵につけ入る足掛かりを与えるものである」
政治家・官僚のモラルが低下した国は、外交でも軍事でも外国の工作に敗れる。為政者は、国の運命を担っている。その自覚を持って、国政にあたってほしい。皇室における「仁」の伝統を仰ぎ、為政者における武士道の精神を取り戻したい。
9.「汝の本来の思想と生活方法を熱情的に信ずることーー軍隊は、否、武器をすら作るものは信念である。自由は暴力よりも熱情的に奉仕する値打ちがある」
どの国、どの民族にも「本来の思想と生活方法」がある。それは、フランスであればフランス精神であり、日本であれば日本精神である。その「本来の思想と生活方法」を守り、信念をもって国難にあたることが、最も大切である。
日本人は、自己本来の日本精神を取り戻そう。
次回に続く。