ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

橋下徹氏の危い発言2

2012-10-02 10:24:52 | 橋下
 橋下氏は、依然として歴史認識に関して見識不足が見られる。9月19日、橋下氏は尖閣諸島や竹島の問題に絡み「中国、韓国が何を怒っているのか、しっかり過去の戦争を総括すべきだ。恨みを持たれてもしょうがないこともある」と述べ、問題解決には過去の歴史の再検証が不可欠との認識を示した。「日本人はアジアの歴史をあまりにも知らな過ぎる。今の日本の体たらくが、竹島、尖閣の問題に結び付いている」と強調し、「敵を知って己を知らないと、自分の主張を通すことはできない」として、こうした問題につながる日本の歴史を国民が正確に理解しておかなければ、中国や韓国に対抗できないとの認識を示した。
 尖閣や竹島の問題と「過去の戦争」とは、直接関係ない。領土と主権の問題に関して、「過去の戦争」の総括や恨み等を結びつけるのは、間違いである。中国とは日中共同声明、日韓とは日韓基本条約によって、国家間の戦後処理問題は完結している。わが国はわが国として過去の歴史の再検証が不可欠なことは言うまでもないが、その検証は中国や韓国の主張に対しても向けられねばならない。シナ事変や南京事件、創氏改名等、相手側の事実と異なる主張に対しては、堂々と反論しなければならない。橋下氏の歴史認識は、東京裁判史観に基づく歴史観、日教組教育による歴史観の枠を出ていない。
 橋下氏の見識が危いのは、在日韓国人・朝鮮人ら特別永住外国人に関する発言においてもそうである。橋下氏は、9月19日「国政での外国人参政権は反対」と明言する一方、在日韓国・朝鮮人ら特別永住外国人について「議論の余地はあるが、人数の多い大阪では、公権力の行使に結びつかないようなコミュニティー(地域社会)のルール作りに参加してもらっていい」との見解を示したという。特別永住外国人が参加する方策や範囲について「精緻に整理しているわけではなく、専門家の議論を待たないといけない」としながらも、具体例として「保育所の設置、ごみのルール、水道料金の問題」を挙げた。「特別永住者が特に多い大阪では、一定の配慮が必要」と述べた。この発言は、地方選挙などで一定の参政権を認めるべきだという認識を示したものと見られる。被選挙権や特別永住者以外の一般永住者の選挙権については否定したという。だが、在日外国人に地方参政権を認めるべきだという主旨において、現行憲法に違反するとともに、独立主権国家のあり方として、誤った見解である。
 また橋下氏は「特別永住外国人制度は未来永劫残すものではない。4世、5世、6世になれば、韓国人か日本人のアイデンティティーのどちらかを選択してもらう必要があると思う」と述べたとも報じられる。ここにいう「アイデンティティー」は、主観的な自己認識ではなく、国籍つまりナショナリティを指すものと思われる。片方では特別永住者の地方行政への参加を検討し、片方では彼らに国籍選択を求めるというのは、中途半端であいまいな意見である。
 現在の橋下氏は、政治理念や経済政策では新自由主義的な傾向が強く、歴史認識や在日外国人問題では保守系リベラルに近いと私は思う。その時、その時、有権者や利害団体にアピールするような発言、マスコミの注目を集める発言をする傾向があり、自分の発言の矛盾や姿勢のぶれに気付かないようである。何よりそれを指摘されると、激しく相手をののしり、こき下ろす。これは、人格的な欠陥である。そこに政治家として最も危い点がある。橋下氏が国政を担う政治家を目指すのであれば、自分を論評・批判する声に謙虚に耳を傾け、自らを磨く石とする度量を持ってもらいたいものである。その度量を持つ努力を怠ると、いつの日か日本を率いるどころか、手勢の「日本維新の会」さえまとめることが出来ないのではなかろうかと危惧するところである。

関連掲示
・拙稿「橋下徹は国政を担い得る政治家か」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13p.htm
・拙稿「橋下『維新八策』は改訂版も未だ『?』」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13q.htm
・拙稿「『維新の会』は支持率が急落」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/1259d31bb56f32258c0a7e8d1615fd8a
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橋下徹氏の危い発言1

2012-10-01 10:24:37 | 橋下
 橋下徹氏率いる「日本維新の会」は、次期衆院選で勢いよく躍り出るのか、それとも選挙前に失速するのか。微妙な状況が出てきている。その前途を分ける最大の要因は、橋下氏自身への国民の評価だろう。
 国政政党結成への動きの中で、橋本徹氏の言動は、日々注目を受けている。私は、橋下氏と「日本維新の会」について、国政を担うには準備不十分と見ている。橋下氏には、まず大阪の改革に専念し、その間に憲法・歴史・外交・国防等に関し、じっくり勉強し、見識を磨いてもらいたいと思っている。いまのままでは、大阪の改革はできず、国政進出も失敗するだろう。
 最近の橋下氏の発言をチェックしてみよう。
 まず評価できる発言としては、9月13日、集団的自衛権について「基本的に行使を認めるべきだ。権利があれば行使できるのは当たり前だ」と述べ、行使を容認すべきだとの立場を初めて明言したことである。橋下氏は、政府が内閣法制局の解釈を踏襲してきたことについて「国連憲章でも認められている。権利があるのに行使できないなんて、完全な役人答弁だ。論理的にも言語的にも理解できない」と批判し、「それに対し何も政治がきちんと手だてできなかった。政治の恥だ」と強調。歴代政権にも責任があるとの認識を示した。ただし、「無条件に認めるのはだめだ。韓国や中国がナーバスになるのも厳然たる事実としてある」とも述べ、行使には一定のルール作りも必要だとの考えも明らかにしたという。この「一定のルール作り」が何を意味しているかは、分からない。
 この発言の際、靖国神社参拝については、「日本の歴史をつくってきた人に礼を尽くすのは当然だ」と述べ、参拝を前提とした党の方針をまとめる考えを示したという。また27日にも「日本のために命を落とした方々に敬意を表するのは絶対必要だ。敬意を表する所作をしなければならない」と述べ、自身が政党代表として今後参拝する考えを示した。この点は、政党の代表や政党に所属する政治家が個人として靖国神社に参拝することは、自民党、民主党等でも見られる。最大のポイントは、維新から首相が出た場合また閣僚が出た場合に靖国神社に参拝するどうかである。
 次に、慰安婦問題に関するものである。8月21日、橋下氏は、「慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられた証拠はない。あるなら韓国にも出してもらいたい」と述べた。韓国の李明博大統領が日本固有の領土である竹島に上陸したことなどに絡むやり取りの中で発せられたもので、竹島問題の背景に慰安婦問題があると指摘し、「証拠はない」発言となったという。この発言は、評価すべきものだった。「だった」というのは、その後、橋下氏は、非常に問題のある発言をしているからである。
 9月23日、橋下氏は、竹島について「(韓国の)実効支配を武力で変えることはできない。どうやったら共同管理に持ち込むかという路線にかじをきるべきだ」と述べた。「北方領土と竹島については、(国際司法裁判所で他国から訴えられた場合に応じる義務が生じる)『義務的管轄権』の受諾を外交的に圧力をかけながら決着を付けるしかない」と指摘し、 「(日韓間の)根っこにある従軍慰安婦問題についてどこまで認めるかを韓国側としっかり議論し、(竹島の)共同管理という話に持っていくしかない」と述べたと報じられる。
この発言の最後で、「(日韓間の)根っこにある従軍慰安婦問題についてどこまで認めるかを韓国側としっかり議論し」と言ったのは、先の「慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられた証拠はない」という発言とは矛盾する。強制連行の「証拠はない」としながら、「どこまで認めるか」を議論するというのは、おかしい。「ない」ものを「認める」ことは、あり得ない。
 竹島に関する発言についても、韓国との共同管理に持ち込むという路線は、竹島がわが国固有の領土であることを否定し、同時に韓国による不法占拠を認めることになる恐れがある。橋下氏は、竹島の共同管理案について「主権領有についてではなく、漁業、海底資源など周辺海域の利用の問題」と説明する。だが、竹島の共同管理を目指すために、橋下氏は証拠のない慰安婦問題を認めるというのだから、論理が破たんしている。相手方にまんまと利用されるだけである。仮に韓国が同じ論理で「対馬も共同管理しましょう」と言って来たら、どうするのか。また中国が尖閣諸島を「共同管理しましょう」と言って来たら、どうするのかという疑問がわく。
 橋下氏は、尖閣については、27日に「領土問題なしとしている態度をいったん封印し、国際司法裁判所(ICJ)で堂々と主張して裁定してもらった方がいい」という考えを述べた。竹島について韓国にICJへの付託を呼びかけるなら、尖閣についても「領土問題なし」という主張はできないという論理である。だが、その後に、中国の外相・国連大使が日本が尖閣を「中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べ、わが国を公然と盗人呼ばわりした。尖閣を巡る問題は歴史認識の問題と絡んでくる。だがこの点で橋下氏の認識には危いところがある。それについては、次回に書くこととする。

 次回に続く。
コメント (2)

「維新の会」は支持率が急落

2012-09-26 08:43:46 | 橋下
 私は、9月11~12日の日記に、「衆院選予測:自民236、民主89で維新は58と躍進」と書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/ff283ccb3493ea70078eddf86b5f1393
 この拙稿は「週刊文春」9月6日号の政治広報システム研究所代表の久保田正志氏と週刊文春取材班による予測に基づく。久保田氏の予測では、自民大勝、民主大敗で、政権再交代が起こる。維新は小選挙区24議席、比例34議席の合計58議席と予測される。自民は単独で政権を発足するまでには及ばず、新たな連立政権を組む。自民党が従来のリベラル系路線で行くのか、保守系路線で行くのかが、新たな政権の方向性を決める。保守系路線ならば、自民+維新+たち日の296議席または自民+維新の294議席で過半数の241議席を超える。維新は、この予測よりさらに議席を伸ばす可能性がある。もし橋下徹氏が衆院選に自ら出馬すれば、もっと伸びるだろうと私は書いた。
 その後、橋下氏は、国政政党として「日本維新の会」を立ち上げる準備を進めている。ここ数日内に、結成となるだろう。だが、維新は、これから旗揚げだというのに、支持率が急速に低下している。最近の読売新聞の世論調査では、比例代表投票先は、維新16%(自民31%、、民主14%)。朝日では維新5%(自民23%、民主15%)。政党支持率になると、読売では維新2%(自民21%、民主15%)。朝日では維新3%(民主16%、自民15%)だった。政党支持率が、2~3%とはひどく低調である。新聞によって読者層が違うとはいえ、大きな傾向は見て取れる。
 9月11~12日の日記で紹介したが、8月1~2日に行った産経新聞社とFNNの合同世論調査では、維新が次期衆院選の比例代表投票先として約24%で、自民党22%、民主党17%を抑えてトップだった。うち東京での維新の支持率は、14.7%だった。ところが、9月13日に放送されたフジテレビ番組「新報道2001」が首都圏で行った調査では、支持率9.4%。同じく23日に放送された調査では、支持率4.8%。14.7%→9・4%→4.8%と約10ポイントの低下、約3分の1への減少は、劇的な急落である。
 新党立ち上げへの過程が、維新に期待を寄せた人々の期待を裏切っているのだろう。考えられる原因はいくつかある。

・維新八策は依然として検討が不十分であり、国政政党としての政策が具体的になっていない。
・橋下氏は、プライベートな時間を国政に充てると言っており、国政への姿勢が甘い。
・現時点で、橋下氏は次期衆院選に出馬しないという意向を表しているが、氏に匹敵するような国政を担うリーダーとなる人材がいない。
・国政政党の代表が国会議員ではなく、大阪にいながら国政政党を運営できるのかという疑問がわく。
・国政政党を設立するため、現職の国会議員を募り、政党要件を満たそうとしたが、合流した国会議員に実力者がいない。
・自民・民主等から維新に乗り換えた国会議員が、選挙目当ての印象を与えている。
・公開討論会がお粗末で、幻滅を与えた。
・橋下氏の最近の発言に、見識が疑われることがある。

等々である。
 これらの諸原因により、維新への期待は萎んできているようである。最後の橋下氏の最近の発言については、別に掲示する。

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●産経新聞 平成24年9月23日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120923/stt12092321550009-n1.htm
「日本維新」支持率が急落 「新報道2001」世論調査
2012.9.23 21:54 [世論調査]

 橋下徹大阪市長が代表に就く新党「日本維新の会」の支持率が急激に減少していることが、23日のフジテレビ番組「新報道2001」の世論調査(20日実施)で明らかになった。首都圏に限定した調査とはいえ、国政政党としての政策が具体性に欠ける点や、現時点で橋下氏が次期衆院選に出馬しない意向を示すなど党運営のしくみの分かりにくさが、支持率の低下につながっているとみられる。
 同調査によると、日本維新の首都圏での支持率は4・8%で、前週13日の調査(9・4%)からほぼ半減した。産経新聞社とFNNが1、2日に実施した合同世論調査での「大阪維新の会」の支持率(東京)14・7%と比べると、約10ポイントの大幅な減少となった。
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「橋下・維新八策」をアップ

2012-07-29 08:33:07 | 橋下
 7月17日から27日にかけて連載した維新八策に関する拙稿を編集して、マイサイトに掲載しました。
 国政に進出するには欠点多く、準備不十分な橋下「大阪維新の会」ですが、次の衆院選では関西を中心に相当数の議席を取り、国政に影響を与えそうな勢いです。有権者は、ムードに流されずに、彼らの理念・政策をよく検討し、国政を委ねられるかどうか見極めることが必要です。
 拙稿を通してお読みになりたい方は、下記へどうぞ。

■橋下「維新八策」は改訂版も未だ「?」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13q.htm

 目次は次の通りです。

はじめに
第1章 「維新八策」改訂版はどうか
(1)「維新八策」改訂版の全文
(2)骨子版の欠点は大きく改善されず
(3)8つの方策はどう変化したか
第2章 「維新八策」各方策の検討
(1)統治機構の作り直し
(2)財政・行政改革
(3)公務員制度改革
(4)教育改革
(5)社会保障制度改革
(6)経済政策・雇用政策・税制
(7)外交・防衛
(8)憲法改正
結びに~未だ国政を担うには不十分

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橋下・維新八策は未だ「?」10

2012-07-27 10:14:26 | 橋下
 最終回。

●各方策の検討(続き)

(8)憲法改正(続き)

 次に、憲法改正に関し、維新八策は改訂版でも、非常事態規定について、何も述べていない。これも大きな欠陥である。私は、6年前に新憲法案を作って、マイサイトに公開している。その私案に非常事態条項を設け、折に触れて非常事態規定の必要性を説いてきた。特に独創的なことではなく、明治憲法には規定があり、世界各国の憲法は非常事態の対処を規定している。独立主権国家であれば、不可欠の規定である。昨年東日本大震災が発生し、原発事故が深刻化するなか、私は、この国家非常事態において、早急に憲法に非常事態条項を定め、対応を強化できるように訴えてきた。
 だが、橋下氏は、日本人が大地震・大津波・原発事故という手痛い経験をした後であるのに、憲法改正案に非常事態条項の新設を挙げていない。この点を見て、私は、橋下氏は、日本国民1億2千万を率いる真の指導者に成り得る人材なのか、大きな疑念を持っている。今回の改訂版を読んで、一層疑念が深まった。
 橋下氏は、教育・財政・年金・社会保障・公務員制度等については、改革のできる能力を持っているかもしれない。しかし、一国の総理大臣たるべき人物は、他国からの侵攻、内乱、大規模自然災害等の国家国民の最大危機において、敢然と国民を指導し、国家機関を指揮できなければならない。
 橋下氏は、依然として安全保障と非常事態に関して、国家最高指導者に必要な気構えを持っていないように私には見える。近年の中国の軍拡や北朝鮮の核開発といった東アジアの厳しい国際環境、そして今後も巨大地震が首都や東海・東南海・南海が発生する可能性――こういう環境と時代を生きている日本人としては、橋下氏はまだ状況認識が浅く、感覚が鈍いと思う。意識と覚悟が変われば、国防の義務と非常事態規定は憲法改正における極めて重要なポイントであることを理解できるようになるだろう。

●結びに

 私は、拙稿「橋下徹は国政を担い得る政治家か」で、題名通りの問いを立てた。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13p.htm
 このたびの維新八策改訂版を読んで、現時点での判断を述べるならば、橋下徹氏は、未だ国政を担い得る政治家ではない。また「大阪維新の会」は、未だ国政を担い得る準備が不十分である。
 いま橋下氏がなすべきことは、視聴率稼ぎのマスメディアに乗せられることなく、一部国民の肥大する期待に浮つくことなく、まず大阪で府・市一体の改革に打ち込み、じっくり実績を上げることである。大阪を変えるのは、なま易しい課題ではないはずである。誰もが認めるだけの結果を出してから、国政に歩を進めるべきだろう。大阪改革をやる間に、歴史観、国家像、憲法、外交・安全保障、経済等につき、深く勉強し、国政の構想を練ることができるだろう。何より国政を目指すなら、これまでの自分の言動を反省し、時間をかけて徳を磨くことである。この点に、橋下氏が政治家として飛躍できるかどうかが大きくかかっていると思う。
 「大阪維新の会」の今後は、橋下氏次第である。私は、維新八策改訂版の検討を通じて、橋下氏は現在の状態に止まり、また維新八策が大きな欠陥を是正できなければ、国政を担い得る政党には飛躍できないと思う。仮に現状打破を期待する大衆の支持によって、国政選挙で議席を獲得し、日本の政治のキャスティングボードを握ることになっても、わが国をふさわしい方向に進めることはできないだろう。(了)
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橋下・維新八策は未だ「?」9

2012-07-26 12:02:40 | 橋下
●各方策の検討(続き)

(8)憲法改正

 維新八策は、憲法改正を第8の方策としている。(1)~(7)までの方策を本当に実行しようとするなら、戦後のわが国のあり方に立ち至り、国家の基本法である憲法から改正しなければならないと思い至るはずである。だが、維新八策は、方策の最後に憲法改正を挙げ、ごく簡単に項目を並べるだけである。
 具体的には骨子版では4項目しかなく、改訂版では5項目になっただけである。項目間は次のように変っている。

◆骨子版
 便宜上、アルファベットを振る。

A 憲法改正要件(96条)を3分の2から2分の1に緩和する
B 首相公選制
C 参議院の廃止をも視野に入れた抜本的改革
D 衆議院の優越性の強化

◆改訂版
 便宜上、番号を振る。

1 憲法改正発議要件(96条)を3分の2から2分の1に
2 首相公選制(再掲)
3 首相公選制と親和性のある議院制=参院の廃止も視野に入れた抜本的改革・衆院の優位性の強化(再掲)
4 地方の条例制定権の自立(上書き権)(「基本法」の範囲内で条例制定)。憲法94条の改正
5 憲法9条を変えるか否かの国民投票

 「大阪維新の会」が、維新八策の骨子を2月13日に発表した後、独立回復50年となった4月28日を中心に、自民党は憲法改正案を発表し、みんなの党、たちあがれ日本は憲法改正大綱を発表した。これに比し、「大阪維新の会」は、骨子発表以降約5か月を経過していながら、憲法改正については、ほとんど内容が前進していない。骨子版から改訂版への変化は、つぎのようになっている。

 A→1、B→2、C・D→3
 4、5は新設

 道州制の導入も憲法改正を要する政策だが、(1)「統治機構の作り直し」には挙げてあるものの、憲法改正の課題には書いていない。その意図はわからないが、最大の問題はそもそも何のために憲法改正をするのかが説かれていないことである。維新八策の「目的」は「決定」「責任」「自立」をキーワードとしていたから、私が慮るに、統治機構を作り直すために憲法を改正することになるだろうが、(8)には何も書かれていない。ただ、5項目が列記されているだけである。

 憲法改正に関し、特に重要なのは日本の安全保障をどう確保するかである。維新八策は、骨子版では肝心の憲法9条に触れていなかった。骨子版の発表後、憲法第9条をどう考えるのか、橋下氏にマスメディアが質問を向けた。橋下氏は2月24日、ツイッターで、憲法9条改正の是非について、意見を明らかにした。そして、9条について「決着をつけない限り、国家安全保障についての政策議論をしても何も決まらない」と指摘。9条改正の是非について2年間と期間を区切って徹底した国民的議論を行い、国民投票で方針を定めることを提案した。それが、改訂版では、「憲法9条を変えるか否かの国民投票」という項目となったわけである。
 橋下氏は、被災地のがれき処理の受け入れが各地で進まない現状について、ツイッターで「すべては憲法9条が原因だと思っている」と述べた。3月5日、発言の真意を報道陣に問われた橋下氏は、「平穏な生活を維持しようと思えば不断の努力が必要で、国民自身が相当な汗をかかないといけない。それを憲法9条はすっかり忘れさせる条文だ」と述べた。「9条がなかった時代には、皆が家族のため他人のために汗をかき、場合によっては命の危険があっても負担することをやっていた」「憲法9条は、自分が嫌なことはしないという価値観だ。自己犠牲しないのなら、僕は別の国に住もうかと思う」と語った。その一方、「平和を崩すことには絶対反対で、9条を変えて戦争ができるようになんて思ってない。9条の価値観が良いか悪いかを、国民の皆さんに判断してほしい」とも述べた。こうした一連の発言を見ると、橋下氏は憲法第9条の弊害を強く意識し、戦後の日本人が社会の中で進んで自分の役目を果たそうという姿勢や、互いに助け合い、支え合う生き方を失ってきているのは、第9条が原因だと考えているようである。
 だが、そこまで強く意識しているのであれば、国民に憲法第9条の改正を訴え、どのような条文としたいのか、どのように「日本の主権と領土を自力で守る防衛力」を持って国防を行うようにしたいのか、具体的に提示すべきだろう。それをせずに、橋下氏及び「大阪維新の会」は、具体的な政策を示すことなく、改訂版で「憲法9条を変えるか否かの国民投票」という項目を挙げた。これは、政治家としてなすべきことをせずに、国民に判断を委ねるという無責任は姿勢である。
 政治家がなすべきことは、国民に話し合いと判断を求める前に、自分はこうしたい、それはこういう理由・目的だからだ、と率直に語ることだろう。橋下氏は、それができていない。自分の国を自ら守るという国防の義務を訴えていないからである。この自主独立国家の根本的なあり方を取り戻さないと、日本は本当にはよくならない。そのようにはっきり言わないと、国民への呼び掛けにはならない。ただ「憲法9条を変えるか否かの国民投票」を提案するというのは、国政を担う政治家の姿勢ではない。
 橋下氏がそういう呼び掛けのできる指導者になるには、まず「自己犠牲しないのなら、僕は別の国に住もうかと思う」という自分の言葉を撤回することが必要である。他人が自己犠牲しないなら、自分が「別の国」に住もうと考えるのは、本当の愛国心ではない。他の誰も自己犠牲しなくとも、我一人でも国を守るという決意こそ、同胞の心を動かす。橋下氏は先の言葉を吐いたことを恥じ、まずそれ撤回したうえで、国防に関する考えを明らかにすべきである。

 次回が最終回。
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橋下・維新八策は未だ「?」8

2012-07-25 09:24:16 | 橋下
●各方策の検討(続き)

(7)外交・防衛

 (1)~(6)までは内政に関するもので、(7)は外交・防衛である。(7)は全体の1割も分量がない。項目の書き方は、「理念、実現のための大きな枠組み」と「政策例」となっており、「基本方針」がない。「理念」として掲げていることは、「世界の平和と繁栄に貢献する外交政策」「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」「日米同盟を基軸とし、自由と民主主義を守る国々との連携を強化」「日本の生存に必要な資源を国際協調の下に確保」の4つ。外交の素人でも指折り上げられそうなものである。
 ただし、これでも橋下氏及び「大阪維新の会」としては、大きな前進である。というのは、維新八策の骨子版よりは良くなっているからである。骨子版では、最初に「自主独立の軍事力を持たない限り日米同盟を基軸」という項目があった。これでは「自主独立の軍事力」を持とうという考えか、そうでないのかが、分からない。橋下氏らは、こういう国家根幹をなす問題で、考えがまとまっていなかったのだろう。それが改訂版では「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」と改まった。大きな前進である。大きな前進とはいっても、外交の素人でも思いつきそうなレベルである。そして、「日本の主権と領土を自力で守る防衛力」を持つために、どのようにするのかが、具体的でない。(8)の「憲法改正」に「憲法9条を変えるか否かの国民投票」という項目があり、どうするか国民に判断してもらおうという姿勢だからである。
 政策例の方は、骨子版の内容とかなり変化した。骨子版では、日米同盟を基軸とすることに「加えてオーストラリアとの関係強化」とあった。また「日米豪で太平洋を守る=日米豪での戦略的軍事再配置」となっていた。改訂版では、理念・枠組みで「日米同盟を基軸とし、自由と民主主義を守る国々との連携を強化」と挙げ、政策例で「豪州、韓国との関係強化」としている。韓国が加わったことと、「戦略的軍事再配置」が無くなったことが目につく。骨子版には「日米地位協定の改定=対等」があったが、改訂版ではなくなった。骨子版では「国際標準の国際貢献の推進」とあったのが、改訂版では「国連PKOなどの国際平和活動への参加を強化」が政策例に盛られ、骨子版にあった「国際貢献する際の必要最低限の防衛措置 」がなくなった。もともと思い付き的に並べたものだったのが、また思い付き的に変ったような印象を私は持つ。また、集団的自衛権の行使に踏み込んでいない。
 改訂版では、上記の他にも政策例が掲げられ、中国・ロシアとの戦略的互恵関係の強化、北方領土交渉、ODA、外交安全保障会議等が並ぶ。だが、ほとんど内容の無かった骨子版に、それまで意識もしていなかった外交・安全保障の政策課題を意識するようになって加えたような感じである。日本国民は、平成21年9月の政権交代で、外交・安全保障に方針も経験もない政党が国政を担うと、いかにまずいことになるかを経験した。今の「大阪維新の会」に国政を任せるなら、民主党政権の再現か、それ以下になる可能性が高い。
 ただ一つ、維新八策(7)で私が評価できるのは、「外国人への土地売却規制、その他安全保障上の視点からの外国人規制」を挙げたことである。現行法では外国人による土地所有に事実上、何の制約もない。大正14(1925)年制定の外国人土地法は、国防上重要な土地の取得制限を定めているが、戦後、規制対象を指定した政令が廃止され、実効性を失っている。外国人土地法の改正が必要である。一定面積以上の森林取得には届け出義務や罰則強化を盛り込んだ森林法の改正と、地下水を公共の資源ととらえて揚水可能な地域をあらかじめ指定し、水源を守る地下水利用法案の制定も急がれる。また、外資による取引を規制する外為法も、不動産業の合併・買収について事後届を義務づけているだけであり、見直しが必要である。
 なお、維新八策改訂版は、(6)の雇用政策で、「グローバル人材の育成」「外国人人材」の活用を挙げているが、日本の移民問題についてどのように対応するか、全く触れていない。この問題は中長期的な問題と思われがちだが、中国人移民労働者の急増によって、既に深刻な社会問題となっている。「安全保障上の視点からの外国人規制」を政策例に掲げるのであれば、中国人への規制を説かねばならないところである。

 次回に続く。
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橋下・維新八策は未だ「?」7

2012-07-24 09:37:27 | 橋下
●各方策の検討(続き)

(6)経済政策・雇用政策・税制

 (6)は、維新八策の中で最も分量が多い。経済政策、雇用政策、税制の三つに分かれている。だが、それだけ、きちんと検討がされているかというとそうではない。理念と基本方針が分かれておらず、三つそれぞれが「理念、基本方針」を並べている。うち税制だけに、「政策例」を載せている。(6)についで分量の多い(5)は、年金、生活保護、医療保険・介護保険に「政策例」が載っていた。維新八策が、内政では税制、年金、生活保護、医療保険・介護保険に主に関心を向けたものであることが、ここに表れている。
 さて、経済政策には、新自由主義的な傾向が強く出ている。「理念、基本方針」に「競争力」という言葉が4回使われ、「自由貿易圏の拡大」「イノベーション促進のための徹底した規制改革」を掲げ、「TPP参加」を明記している。小泉=竹中構造改革を批判的せず、それを継承・徹底する姿勢である。私はこの根本的な姿勢に反対なので、部分的には「既得権益と闘う成長戦略」「付加価値創出による内需連関」「為替レートに左右されない産業構造」「所得収支、サービス収支の黒字化重視戦略」など賛成できる点はあるが、橋下氏らに日本の経済政策を委ねられない。
 エネルギー政策については、「新エネルギー政策を含めた成熟した先進国経済モデルの構築」「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」と2項目あるが、脱原発依存でエネルギー政策をどうするのか、具体性がない。橋下氏は、関西電力大飯原発の再稼働に反対した。改訂版は「脱原発依存の構築」を掲げる一方、国内産業の育成も打ち出したが、電力が安定的に供給されなければ、産業も生活も行き詰まる。だが、橋下氏から具体策は出されていない。私は、将来的なビジョンとエネルギー戦略を持っていないためだろうと思う。
 雇用政策については、「徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)」という項目がある。前者は、労働者や学生・女性等の支援だろうが、後者の「解雇規制の緩和」はその一方で首切りをしやすくするという相反する内容となっている。衰退産業から成長産業への人材移動は重要だが、「解雇規制の緩和を含む」と敢えて書くところには賛成できない。
 税制については、「理念、基本方針」に「『簡素、公平、中立』から『簡素、公平、活力」の税制へ』と方向性を示し「超簡素な税制=フラットタックス化」を掲げている。フラット税制は、レーガン政権が行った新自由主義的な税制である。法人税と所得税を極端に低くし、一部の富裕層と株主や経営者の所得を最大にする政策だった。結果は当初の見込みに反して、大幅減税で税収が激減し、財政赤字が拡大した。橋下氏はそのことをよく理解しているのか疑問である。
 (6)には、消費税について書いていない。(1)に「消費税の地方税化と地方間財政調整制度」とあった。(6)では、経済成長戦略と消費増税の関係を書くべきと思うが、増税には何も触れていない。「大阪維新の会」が来る衆議院選挙に出るなら、消費増税に賛成か反対か、またその理由は何かを維新八策で国民に示すべきだろう。
 消費増税法案は、第18条に景気付帯条項を設けている。第1項で「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施する」としている。具体的には、同項に、平成23年度から平成32年度までの10年間、平均で名目GDPの成長率3パーセント程度かつ実質GDPの成長率2パーセント程度を目指す経済成長政策を講ずること。また第2項に、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分すること、としている。
 「富国強靭」を国策に掲げる藤井聡京都大学大学院教授は、景気付帯条項の規定を踏まえ、「増税するか否かは、遅くとも来年夏に誕生する新政権の判断に全て委ねられているのだ。そうである以上、日本国民は今、次の総選挙に向けて.....世間に流布された数々の虚事に惑溺されず、正しき認識に基づいて、ウソに塗まみれた邪説と真っ当な真説とを『見抜く』力を身につけねばならない。そしてその正しき認識に基づく世論を形づくり、真っ当な政権の誕生を期さねばならない」と主張している。
 この「真っ当な政権」を担うのは、民主党ではありえない。そして、消費増税で民主党と連携した現在のままの自民党でもあり得ない。私は、財務省の増税・財政規律路線の呪縛を解き、デフレ脱却と「富国強靭」を実現し得る積極的経済成長政策を推進できる政治家が政界の表面に躍り出ることを期待している。橋下氏には今のところ、私の期待に応える堅固な姿勢と明確な展望、具体的な政策がない。橋下氏と「大阪維新の会」の場合は、消費税を地方税化し、地方交付税を廃止するという全く異なった政策を掲げているわけだが、そうであれば、その立場から、消費増税法案に関して、維新八策の中で、具体的な見解と対案を国民に提示しなければならないだろう。

 次回に続く。
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橋下・維新八策は未だ「?」6

2012-07-23 08:47:59 | 橋下
●各方策の検討(続き)

(5)社会保障制度改革

 社会保障制度改革は、理念に9項目も並べているが、それらよりも基本方針にある「自助、共助、公助の役割分担を明確化」がまず理念の第一に掲げられるべきだろう。また、理念の9項目は、理念らしきものと方針らしきものが混在している。他の方策にもこうした傾向があるが、(5)では特にそれが目立つ。
 まず理念の中に「真の弱者を徹底的に支援」とある。この「真の弱者」は日本国民に限り、外国籍の者を除外すべきである。それを明記しなければならない。非国民に対する生活保護や医療費無料化等を点検せずに、現状のまま「徹底的に支援」すれば、国も自治体も蝕まれるだけである。生活保護の基本方針に、「現物支給中心の生活保護費」「支給基準の見直し」「有期性(一定期間で再審査)」を挙げているのはよいと思う。ただし、受給資格と審査の厳格化が必要である。
 次に、理念に「負の所得税(努力に応じた所得)・ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入」という項目がある。ベーシックインカムは、膨大な支出になる。本年(24年)3月4日、フジテレビの番組で橋下氏が述べたところでは、国民に一律月7万円を支給するという。セイフティネットというより、社会民主主義的な政策である。維新八策の基調となっている自立、競争、自己責任とは正反対の考え方であるし、過度の再配分は国民の依存心を強め、青年層の勤労意欲を削ぎ、生活の縮小を招き、デフレを悪化させるだろう。しかも、ベーシックインカムの実施には、107兆円もの予算がいる。歳入の税収が40兆円を切るなかで、どうやって原資を確保するのか。橋下氏は、先の番組でこの点を問われたが、明確な回答がなかった。その程度の案を、また維新八策に揚げている。選挙で票を集めるための悪しきバラマキ政策ではないか、と私は疑う。
 次に、年金については、「年金一元化、賦課方式から積み立て方式(+過去債務清算)に長期的に移行」と掲げている。橋下氏は国の年金制度を「ねずみ講そのもの」と批判し、現在の賦課方式から積み立て方式に変える必要性を強調してきた。賦課方式とは、現役世代が高齢者に仕送りをするような方式、積み立て方式は自分が払い込んだお金を老後に受け取る積み立てのような方式である。橋下氏は、一定の資産がある人には支給しない「掛け捨て型」の年金制度の導入も提案してきた。橋下氏が年金制度の改革を訴えるのは、少子高齢化が進むと、現行の制度は破綻する、また若者世代に不公平感が募っていくという二つが主な理由のようである。だが、これが現在の年金制度の正しい理解に基づくものかどうか、疑問である。
 平成20年(2008)5月、政府の社会保障国民会議が年金制度についてのシミュレーションを発表した。その結果、未納者がいくら増えても年金制度は破綻しないことが具体的数字で示された。破綻しない理由は、基礎年金の財源の半分に税金が入っているからである。橋下氏と「大阪維新の会」は、現行制度をどのように理解して、改革案を出しているのか、見解を明らかにしてほしい。
 経済評論家の細野真宏氏によると、以前は現役世代が多く、年金の保険料を払う世代が多かったため、現在約200兆円の年金積立金がある。今後は少子高齢化に対応するため、この年金積立金が年金の支払いに使われていく。賦課方式の場合、少子高齢化で現役世代は負担が増える一方、自分の受け取りは少なくなっていくと考えられがちだが、年金は現役世代の保険料だけから支払われているのではない。例えば基礎年金は、平成21年度(2009年度)からは年金の支払いの半分は税金から支払われている。年金積立金による分も含めて、個人の保険料負担は半分で済む。年金の財源は安定しており、根本的に制度を変える必要はない。国民年金は国民の4割が未納という誤解があるが、実際の未納者は公的年金加入者の全体の5%にも満たない。問題があるとすれば、国民年金を納めないでいる人たちが、将来無年金者になることである、と細野氏は見ている。
 いまから積立方式に変えることは、相当年数がかかるだろう。移行は技術的にも複雑になる。そのことも含めて制度設計のシミュレーションをしっかりやってから判断しないと、方式変更に本当にメリットがあるかどうかの判断はできないと思う。将来の無年金者の問題は、自己責任と弱者救済の兼ね合いになる。若年層の失業者や低所得者の増加が原因となっている部分は、雇用を創出し、所得を上昇させるデフレ脱却の経済成長政策を実施しないと、根本的な解決にならない。さまざまな年金制度改革案について、私は、改革と称して、企業が厚生年金の企業負担分を減らそうとすること、また年金制度を単純化しかつ個人積立型なり完全税方式になりに変えることで外資が日本企業の買収をしやすくすることを警戒する。
 医療保険・介護保険について気になるのは、「公的保険の範囲を見直し、混合診療を完全解禁」と掲げていること。混合診療は、アメリカの医薬業界がこれをもって日本市場に進出しようとしているものの一つである。橋下氏はTPP賛成を明言しているが、混合診療解禁を始め、TPPによるわが国の経済社会への負の影響を理解していない。それは郵政改革をどうするか、維新八策は全く触れていないこととも関係している。TPPは郵政民営化の延長にあり、その徹底でもある。郵政民営化の反省と総括なく、TPP賛成を説く橋下氏には、1980年代からの日米の経済と外交の歴史を再勉強してもらいたいものである。

 次回に続く。
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橋下・維新八策は未だ「?」5

2012-07-22 08:50:23 | 橋下
●各方策の検討(続き)

(2)財政・行政改革

 「理念」として4項目、「実現のための大きな枠組み・基本方針」に13項目が掲載されている。全体として何をしたいのか主旨文がないので把握しにくいが、共通しているのは、理念としての「持続可能な小さな政府」、基本方針としての「大阪府・市方式の徹底した行財政改革」と整理できるだろう。
 「持続可能な小さな政府」の「持続可能な」は普通、経済成長と環境保全の両立に関して使われる語であり、この場合、何を意味するか不明である。私は、財政を維持できるという意味と推測する。「小さな政府」という発想は、新自由主義的である。わが国は、深刻なデフレに陥っており、デフレ脱却のためには、大規模な財政出動が必要である。国土強靭化など有意義な事業に公共投資を行い、経済成長を実現し、税収を増加させてこそ、財政の健全化ができる。橋下氏の財政改革策はデフレ脱却の経済政策になっていない。
 財政改革の基本方針のうち、「外郭団体、特別会計の徹底見直し」には賛成だが、「プライマリーバランス黒字化の目標設定」は、橋下氏が財政均衡主義に陥っていることを示している。この考え方を脱しないと、デフレは脱し得ない。
 行政改革については、理念に、国民のための行政改革という点がよく表現されていない。まずそれを書くべきで、「役人が普通のビジネス感覚で仕事ができる環境の実現」「簡素、効果的な国会制度、政府組織」「首相が年に100日は海外に行ける国会運営」だけでは、政府と役人のための改革のようである。その点を改めるならば、基本方針にはおおむね賛成できる。特にICT(情報通信技術)を駆使した選挙制度の導入は、是非実現したいものである。また、選挙期間中に候補者がホームページを更新できないとか、ブログやツイッター、フェイスブック等で候補者と有権者が対話できないとか、今の選挙制度はあまりに時代遅れである。

(3)公務員制度改革

 公務員制度改革は、(2)の行政改革の一環だと思う。ここでは、理念に、「省益のためでなく、国民全体のために働く行政組織」と書かれている。理念の「公務員を身分から職業へ」「倒産のリスクがない以上、人材流動化制度の強化」「厳しくとも公の仕事を望むなら公務員に」は賛成する。基本方針もおおむね賛成できる。特に「公務員労働組合の選挙活動の総点検」は大賛成である。

(4)教育改革

 教育改革は、理念に「自立する国家、自立する地域を担う個人を育てる」と掲げ、「自立」をキーワードにしている。国家の自立が、独立主権国家としての自立という意味なら、独立主権国家の国民としての自覚を持った国民を育成するという理念になる。だが、橋下氏の教育理念には、国家観を欠いている。学力・能力を中心とした人材育成に傾いている。
 理念のうち、「格差を世代間で固定化させないために、最高の教育を限りなく無償で提供する」とある中の「限りなく無償で」というのは、相当の財源がいる。「文部科学省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ」とあるが、国民教育では統一した国家観・歴史観・道徳観を教えるという背骨がなければ、いけない。基本方針にはおおむね賛成する。そのうち、「教育委員会制度の廃止論を含む抜本的改革」「初等・中等教育の学校を、校長を長とする普通の組織にする」「教職員労働組合の活動の総点検」には強く賛成する。

 ここまでのところ、私が思うに、維新八策には、個別的な政策については賛成できるものがあるが、本来、こういう文書で簡潔に示すべき、理念や大方針のレベルでは、何をめざし、どういう方向に進みたいのかが、よく練られていない。理念や大方針のほうに重点を置くなら、まず政党としての綱領を作り、それを打ち出したうえで、骨子となる方策を並べる方が良い。政策のほうに重点を置くなら、有権者にわかりやすく伝えるマニフェストにまで具体化した方が良い。維新八策は現段階では、そのどちらでもなく、中途半端なものとなっている。

 次回に続く。
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