ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

21世紀型の日英同盟の構築を

2013-09-30 08:53:04 | 国際関係
 私は、平成25年6月13日に、「21世紀の『日英同盟』復活へ」と題した日記を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/c3f5f722106b0c44a505281ba549588e?fm=entry_awp
 そこで私は、「日本とNATO(北大西洋条約機構)、特に英国との安全保障の連携強化の動きがあり、注目される」「安倍首相は昨年12月就任後すぐ、日米同盟に加えて欧州との安保関係を重視する姿勢を表明した」「なかでも英国との間では、わが国は、安保協力を拡大させつつある」「英国のヨーク公アンドルー王子が今秋訪日し、21世紀型の新たな「日英同盟」を模索する国際会議を東京で開催する計画があるという」「暴走する北朝鮮、軍拡を進める中国を念頭に、日英間の安全保障強化に向けた動きとして注目される」「英国との連携は、オーストラリア等、英連邦諸国との関係発展につながる可能性もあり、わが国政府は積極的に日英同盟復活に取り組んでもらいたいである」と書いた。
 産経新聞ロンドン支局長の内藤泰朗氏が、同紙9月2日号の記事で伝えるところによると、日英関係は再び動き出そうとしている。
 「日英両国は7月、機密情報の交換を可能にする情報保護と、装備品共同開発の枠組みに関する2つの協定に調印した。日本が安全保障上重要な2協定を締結したのは、米国に次いで2カ国目で、双方の協力の急速な進展ぶりを物語る。武器の共同開発の話などはすでに浮上しているという」「軍拡と領土拡張の野心を見せる中国の脅威への対処が喫緊の課題である日本は再び、英国の有力なパートナーになり得るというわけだ」「日本も、米国に加えて米国最大の同盟国、英国からの武器調達という選択肢は外交に幅を与え、米英両国の機密情報にも接する機会を得ることになる」と内藤氏は書いている。そして、「日本の安全保障の要、日米同盟を補完し、日本独自の安保政策を推進するためにも、21世紀型の新しい日英同盟の構築が求められているのではないだろうか」と問いかけている。
 本日9月30日から10月1日にかけて、わが国で日英安全保障協力会議が、「21世紀の新たなるパートナーシップ形成に向けて」をテーマに開催される。わが国は、安倍首相が出席し、イギリス側はヨーク公爵アンドルー王子が出席される予定である。
 6月13日に書いたことの繰り返しになるが、英国との連携は、オーストラリア等、英連邦諸国との関係発展にもつながる可能性がある。わが国政府は積極的に日英同盟復活に取り組み、21世紀型の日英同盟の構築を進めるべきである。
 以下は、内藤氏の記事。

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●産経新聞 平成25年9月2日号

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130902/erp13090213510002-n1.htm
【視線】
21世紀型の日英同盟構築を ロンドン支局長・内藤泰朗
2013.9.2 13:39

 英国がジョージ王子誕生のニュースで沸き返っていた7月末。海上自衛隊の練習艦「かしま」など3隻の練習艦隊が、実習と英海軍との交流を目的に英海軍基地ポーツマスを親善訪問した。日本の艦隊訪英は5年ぶりだという。艦上レセプションに招待されたので出かけてみた。
 ロンドンから南西に列車で約2時間。陽光まばゆいポーツマスはかつて、「日が沈むときはない」といわれた大英帝国の繁栄を支えた海軍の本拠地だった。今も英国海軍の司令部は置かれるが、軍港としての役割は退き、貿易や観光などで栄える。「かしま」は、そんな英国の盛衰の歴史を見てきた港の埠頭(ふとう)に係留されていた。
 後部甲板につくられた会場では、白い制服で正装した若き実習生たちが招待客たちをもてなしていた。この春、海上自衛隊幹部候補生学校を卒業し、日本からの遠洋航海で日夜訓練を重ねてたくましく成長した若き海上自衛官たちが英海軍やポーツマス市の幹部らにも礼儀正しく対応する姿は、若き外交官のようだった。
 実習生の一人は「訓練は寝る間がないほど忙しく、厳しいものです。英海軍から多くのことを学びたいです」と語っていた。日本を取り巻く国際環境は島根県・竹島や北方四島の不法占拠に次いで、沖縄県・尖閣諸島をめぐっても緊張が高まっている。そんな危険な海で日本防衛のため、自衛官に志願した彼らにエールを送りたい。
 招待客には、帝国海軍の軍艦「比叡」を建造したウェールズ地方にあるペンブロークの英国人研究者たちもいた。日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎元帥が若い頃、英国留学から帰国する際、同艦を日本に回航した。研究者たちは、来年創立200年を迎えるペンブロークの造船所の祝賀行事に自衛隊関係者を招待したいと夢を語っていた。
 近代化を急ぐアジアの小国、日本がロシア帝国という北方の脅威に勝利できた遠因には、日露開戦の2年前に日英同盟が締結され、当時最新の軍艦調達や露軍情報の提供など英国からの支援があった。英国は当時、中国での権益確保で脅威だったロシアを牽制(けんせい)するため日本と手を組んだ。
 そこまでは歴史の話だが、日英関係が再び動き出そうとしている。
 日英両国は7月、機密情報の交換を可能にする情報保護と、装備品共同開発の枠組みに関する2つの協定に調印した。日本が安全保障上重要な2協定を締結したのは、米国に次いで2カ国目で、双方の協力の急速な進展ぶりを物語る。武器の共同開発の話などはすでに浮上しているという。
 英政府筋によると、英国は日本、東南アジア、南アジアの英連邦諸国を加えた多国間で災害救援や平和維持活動(PKO)などの合同演習実施を検討。情報共有や外交・戦略面での協調、侵略行為への共同対処など「新しい形の防衛協力条約締結」を次なる関係深化と位置づけているという。
 その最大の狙いは英国製兵器の売り込みだ。国防予算を縮小する欧米諸国への武器輸出は当面、期待できない。軍拡と領土拡張の野心を見せる中国の脅威への対処が喫緊の課題である日本は再び、英国の有力なパートナーになり得るというわけだ。
 日本も、米国に加えて米国最大の同盟国、英国からの武器調達という選択肢は外交に幅を与え、米英両国の機密情報にも接する機会を得ることになる。今秋、「かしま」訪英の返礼として英海軍が計画する最新鋭駆逐艦の訪日も日本シフトの表れといえる。日本の安全保障の要、日米同盟を補完し、日本独自の安保政策を推進するためにも、21世紀型の新しい日英同盟の構築が求められているのではないだろうか。(ないとう やすお)
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人権63~権力闘争による権力関係の変化

2013-09-28 13:27:33 | 人権
●権力闘争による権力関係の変化

 権力が闘争的に行使される集団では、成員はしばしば小集団に分かれ、権利をめぐって闘争する。闘争はしばしば物理的な実力の行使に至る。敵対的な小集団が実力行使によって自らの意思の実現を目指す。両者が対決する場合、勝者は優位を得、敗者は劣位に屈する。権利関係の変化に伴う権力関係の変化は、より顕著なものとなる。
 集団内の優位者は権利を行使し、劣位者に行為を要求または命令する。要求・命令の実行は義務とされ、劣位者は義務の履行を免れない。履行できなければ、制裁・処罰が行われる。権利関係は優位者によって法に定められ、制度化され、社会秩序が安定する。支配―服従関係が秩序となる。その秩序は闘争的な権利の均衡状態である。均衡状態が有利な者にはその秩序は保つべきものであり、逆に不利な者には変えるべきものとなる。秩序を保つため、実力が組織され、意思を実現するために使用される。秩序を保つ側は強制力を行使し、秩序に反発する者は従いつつも不満を持つ。権利関係に伴う権力関係は、強制と反発がせめぎ合う緊張度の高い関係となる。
 支配―服従の権力関係において、支配者が所有する権利の典型的なものに、税を納入させる権利即ち徴税権、労役を提供させたりする権利即ち使役権がある。支配者はしばしば権利の拡大を図り、税の徴収を重くしたり、労役を増やしたりしようとする。被支配者はこれに抵抗し、逆に税の比率や労役の員数・回数を減らすように陳情や反抗を行う。対立が激化し、闘争が起こると、物理的実力が行使される。支配者が勝利すれば、徴税権や使役権が拡大される。被支配者が勝利すれば、税や労役が減免される。こうした権利関係の変化は、権力関係の変化を生み出す。
 権利関係の変化が小さければ、集団の権力体系に構造的な変化は起こらない。権力体系の枠内での権利関係の変化だからである。だが、権利の獲得や拡大が、既存の権力体系に収まらなくなると、権力そのものをめぐる闘争に転ずる。これが権力闘争である。
 権力の奪取と防衛を目的とする行為は、政治的な行為である。政治的なものの固有の指標は「敵と友の区別」とするシュミットの論を受ければ、集団の中で成員が敵同士となって闘争する。ここで争奪される権力は、政治的権力である。闘争が決着すると、権力関係に大きな変動が起こる。政治的権力を握った者は、敵対する相手を拘束したり、追放したりして、抵抗を排除する。究極的には相手を殺害して、その意思と存在を抹消する。

●統治権の移動と人権の発達

 権力の変動の最大のものは、統治権の移動である。統治権とは、一定の領域とそこに住む人民を統治する権利である。権力闘争によって、劣位者または被支配集者が統治権を奪い、支配―服従の関係が逆転することがある。権力の主体が交代する。主体の交代は、指導者個人、有力者の集団または指導階層の全体のレベルで起こる。
 統治権の急激かつ全面的な移動が革命である。革命は、権力体系の重層構造に変動を引き起こす。近代西欧においては、中産階級・商工業者等の近代西欧史的な意味での「市民」が台頭し、国王や貴族・聖職者等に対して権利を主張し、権利を取得して、政治的権力への参加ないし政治的権力の獲得を実現した。この出来事が市民革命である。17世紀イギリスの市民革命は、君主制のもとでの権力参加を実現した。議会に新興階級である市民の代表を送るという参加形態が定着した。18世紀アメリカの市民革命は、植民地が本国から独立するという形で行われた。君主制の国家から独立した人民が、共和制の国家を建国した。フランスの市民革命は、君主制から共和制へと政治体制の変革を強行した。ただし、フランスはその後、帝政・共和政・帝政・共和政等と動揺を続けた。イギリスの革命は権力参加を、アメリカ・フランスの革命は権力奪取を実現した。それにより、国民の権利が拡大した。そこに人権の思想が発達した。
 19世紀西欧では社会主義・共産主義が発達し、北方に伝播して20世紀ロシアで共産主義革命が起こった。共産主義者は市民革命をブルジョワ革命と呼び、これを歴史的な中間段階とし、彼らによる革命をプロレタリア革命と呼ぶ。だが、共産主義革命の実態は、共産党による権力の簒奪であり、プロレタリア独裁の名のもとに共産党官僚が権力を独占する体制が誕生した。
一方、イギリス・アメリカ・フランス等ではリベラル・デモクラシーが発達し、国民が選挙を通じて政治に参加する制度が確立した。制限選挙から普通選挙へ、男性から女性へ、年齢の高い者から低い者へと選挙権・被選挙権の保有者が拡大した。議会員となる国民の代表者を選挙することによって、権力が変動し得る体制が実現した。
 権力の変動は、指導者の専制や横暴とそれによる反発、階級分化による支配―服従、外部集団の侵攻・征服、政策の選択等の様々な要因によって起こる。主導権争い、階級闘争、戦争は、権利をめぐる集団的な権力闘争である。権力闘争が激烈な場合、権力の変動において、その集団が分裂・崩壊することもある。内部で対立し闘争する集団は、他の集団にとっては攻めやすい。外部集団の侵攻・略奪によって、その支配を受ける場合がある。自らの集団は権力を喪失し、他の集団の権力のもとに組み込まれてしまう。
 人権は、17世紀から今日まで、欧米を中心に自由権の確保、参政権の獲得、社会権の拡大という形で、具体的な国民の権利として発達してきた。人権と呼ばれる国民の権利は、権力との関係において、歴史的社会的文化的に発達してきた。権力の変動において、勝者は権力を拡大し、敗者は権力を縮小する。他の集団に支配された集団は、権力を奪われるとともに多くの権利を喪失する。個人の自由と権利もまた自らの所属する集団の権利とともに制限・規制される。こうした権力をめぐる闘争と権力の変動の中で、人権は最優先の権利でも不可侵の権利でもない。もともと集団の権利を前提とした個人の権利だからである。その権利を守る権力が縮小または消滅するとき、人権と呼ばれる個人の権利も縮小または消滅する。人権の考察には、この点の認識が重要である。本稿において、権力について一章を設ける理由である。権力論なき人権論、人権論なき権力論は、ともに欠陥を持つことを指摘したい。
 なお、近代資本主義の発達によって、ウォーラースタインのいう世界システムが形成された。世界システムの形成は、国家を単位とした集団間の権利関係の大陸間への広がりである。同時にそれは集団間の権力関係の構造化でもある。西欧白人種の宗主国と非西欧有色人種の植民地の間では、強大な権力と劣弱な権力の間に、支配―収奪の構造が形成された。この構造は、垂直的かつ水平的である。垂直的とは上下関係、水平的とは中核―周辺関係をいう。構造の上部かつ中核部では、列強同士の権力闘争と覇者の交代が行われた。下部かつ周辺部では、社会的権力が抑圧され、しばしば分断統治や相互に牽制させる統治が行われた。上部・中核部では、国民の権利が確保・拡大され、下部・周辺部では権利が規制・剥奪された。いわゆる人権の発達は、下部・周辺部の集団における権利の規制・剥奪の上に、上部・中核部の集団において実現されたものである。

 次回に続く。
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消費増税を求める国際的圧力と中川昭一氏の「遺言」

2013-09-27 06:34:01 | 経済
 昨年12月アベノミクスが実行されて、まだ9ヶ月あまり。株価は上がり、円高は是正されつつはある。25年のGDPは1~3月期、4~6月期とも年率でそれぞれ4・1%と3・8%という高い伸びを示した。今はその勢いが持続・拡大するように、金融緩和の継続と成長政策の推進をすべき時であって、焦って消費増税をすべきではない。
 現在の日本は、15日も寝込んでいた病人が起き上がって、ようやく歩き出したというところである。ちょっと動けるようになったからといって、病み上がりで無理をさせたら、また寝込んでしまうだろう。増税は、マクロ的にはデフレ圧力になる。消費が縮小すれば、景気が後退し、税収も減る。増税と同時に経済成長政策を打つとしても、成長政策の効果が減少する。お湯を沸かしながら、水を足しているようなことになる。
 だが、一貫してデフレ下の消費増税に反対の姿勢を取っているエコノミストは、少ない。そうした中で、明確に消費増税反対を唱えてきているエコノミストの一人が、田村秀男氏である。
 9月22日の産経新聞の記事に、田村氏は、一般商業紙ではぎりぎりに近いと思われることを書いた。まずその部分を引用する。
 「日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。米欧の国際金融マフィアが牛耳る国際通貨基金(IMF)は2年以上前から日本の消費税増税をせき立ててきた」
 ここで「国際金融マフィア」と言っているのは、巨大国際金融資本である。ロスチャイルド家、ロックフェラー家を中心とした支配者集団である。IMFは、国際的な経済機関だが、中立的な組織ではなく、巨大国際金融資本が世界的に利益を実現するための組織であることに本質がある。
 田村氏は書く。「英フィナンシャル・タイムズ紙(FT、アジア版)は13日付の社説で、消費税増税を『挑戦するに値するギャンブル』、『さいは投げられた』として安倍首相の増税決断を先回りして褒めたたえた。ウォール街など国際金融市場の利害を反映する他の金融中心の米欧メディアも同様だ」と。
 田村氏が指摘する海外のメディアは、巨大国際金融資本の意思を受けた情報を流し、世論を形成し、各国の指導者を彼らにとって望ましい政策を誘導する。いまわが国の政府に対し、消費税を上げよという圧力がかかり、政治家、経済官僚等に様々な働きかけがされていると考えられる。
 次に、田村氏の書いた別の点を引用する。
 「消費税増税問題を国際金融の次元でとらえ直すと、日本は増税によって米欧のための『キャッシュ・ディスペンサー』の役割を確約したといえるかもしれない」 「日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう」
 言い換えれば、日本が消費増税を行うかどうかは、「米欧の投資ファンドにとって死活的な利害」となる。消費増税は、日本が「米欧のための『キャッシュ・ディスペンサー』の役割」を果たすことになる。
 田村氏は、日本が「キャッシュ・ディスペンサー」となる仕組みを次のように書いている。
 「日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る」「日本は世界最大の外国向け資金の提供国であり、その基本的な担い手は家計である」「家計は10年以来の『15年デフレ』の間、消費を抑えてひたすら金融資産を増やし続けてきた」「増分相当がそっくり海外での金融資産に充当されている」と。
 最後になるが、田村氏の記事は、上記のことを伝えるために、中川昭一氏が語ったことを書いている。「キャッシュ・ディスペンサー」という表現は、中川氏が使ったものである。「日本はキャッシュ・ディスペンサーになるつもりはない」と。
 中川氏は、堂々と海外の指導者を相手に渡り合い、日本の国益を追求した政治家だった。彼の自殺後、その活躍を称え、その死を惜しむ者は多い。いま日本の政治指導者に必要なのは、中川氏のように、日本の国益を生命をかけても守る意志である。
 安倍総理大臣以下、国政を担う政治家は、日本を守るために、巨大国際金融資本の圧力に屈してはならない。そして、そのためにも財務省・内閣府の虚偽情報に左右されてはならない。
 以下は、田村氏の記事。

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●産経新聞 平成25年9月22日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130922/fnc13092214460005-n1.htm
【日曜経済講座】
「現金支払機」の増税デフレ 中川元財務相の「遺言」に思う
2013.9.22 14:45

編集委員・田村秀男

 18日昼、安倍晋三首相が苦悩の末、消費税増税を決断したと聞いたとき、ふと、「9月は日本にとって因縁の月か」と思った。「平成バブル」へと日本を導いたプラザ合意(昭和60年)、米中が裏で示し合わせてアジア通貨危機対策での日本の主導権を葬り去った国際通貨基金(IMF)・世界銀行香港総会(平成9年)、そして日本のデフレ不況を加速させたリーマン・ショック(20年)も9月の出来事である。日本はそのつど、国運を狂わせた。
 リーマン・ショック直後に財務相に就任したのは故中川昭一氏で、20年10月10、11の両日にはワシントンで先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などを精力的にこなした。
 以下は氏から直接聞いた秘話のメモである。
 10日、ポールソン米財務相、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長らに対して公的資金投入による金融危機対策を厳しく迫った。11日にはブッシュ大統領主催のホワイトハウスでの歓迎パーティーに出席。そこに飛び込んできたのは、北朝鮮に対する米国の「テロ国家指定解除」という重大ニュースだった。中川さんはそれを耳にするや、前日にも会って面識のあるブッシュ大統領に走り寄った。「大統領、どうしてですか。日本人などの拉致問題をどうするのか」と詰め寄る。大統領は「あそこにいるコンディ(コンドリーザ・ライス国務長官)に聞いてくれ」と逃げ出した。
 中川さんは帰国後、訪ねてきた米共和党の要人に向かって、口頭でホワイトハウスへの伝言を託した(筆者はこの場に居合わせた)。内容は、「いくら世界のためだ、黙ってカネを出せと言われても、日本はキャッシュ・ディスペンサー(CD、現金自動支払機)になるつもりはない」。遺言だな、と今思う。
 筆者が知る限り、国際金融の舞台での致命的とも言える日本の弱さにいらだちを強く感じ、激しく行動した政治家は、中川さんしかいない。
 消費税増税問題を国際金融の次元でとらえ直すと、日本は増税によって米欧のための「キャッシュ・ディスペンサー」の役割を確約したといえるかもしれない。
 日本は世界最大の外国向け資金の提供国であり、その基本的な担い手は家計である。家計金融資産の多くは銀行など金融機関に預け入れられる。金融機関は資金の多くを日本国債や外国証券に投資して運用する。財務省は外国為替資金特別会計を通じて金融機関から円資金を調達して米国債を購入、運用する。



 家計は10年以来の「15年デフレ」の間、消費を抑えてひたすら金融資産を増やし続けてきた。今年6月末、名目国内総生産(GDP)は9年末比で44兆円減だが、家計金融資産は305兆円、対外金融資産は398兆円増えた。
 リーマン後の増減が本グラフである。名目GDPはマイナスが続くのに、金融資産増に加速がかかっている。しかもその増分相当がそっくり海外での金融資産に充当されている。ドル換算すると、対外金融資産総額は今年6月末時点で約1兆7千億ドル増えた。このカネは米連邦準備制度理事会(FRB)が増刷したドル資金約1兆5千億ドルをしのぐ。FRBマネーは紙切れでいくらでも刷れるが、しょせんはあぶく銭だ。日本が出すのは本物のカネであり、国民の勤勉な労働の産物である。
 FRBが量的緩和政策の縮小に動く中で、動揺する米欧の株式や債券市場にとって、これほど頼りになるカネはない。日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。米欧の国際金融マフィアが牛耳る国際通貨基金(IMF)は2年以上前から日本の消費税増税をせき立ててきた。G7、G20(新興国を含む20カ国)もそうだ。
 英フィナンシャル・タイムズ紙(FT、アジア版)は13日付の社説で、消費税増税を「挑戦するに値するギャンブル」、「さいは投げられた」として安倍首相の増税決断を先回りして褒めたたえた。ウォール街など国際金融市場の利害を反映する他の金融中心の米欧メディアも同様だ。
 今の日本には中川さんのような「国士」が見当たらない。それどころか、得体のしれない「国際世論」を重視し、国内世論を無視し、増税を「国際公約」同然とうそぶいて恥じない風潮が言論界や政界に蔓延(まんえん)している。中川さんがもし健在なら、首相にどう助言するだろうか。
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関連掲示
・現代世界の支配構造については、下記の拙稿をご参照下さい。
「現代の眺望と人類の課題」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion09f.htm
 第9~14章
コメント

消費増税で官僚の詐術に騙されるな~田村秀男氏

2013-09-26 08:51:02 | 経済
 産経新聞9月19日号で、安倍首相が来年4月に消費税を8%に引き上げることを「決断した」と報じた。だが、20日の日経の記事は、菅官房長官が「正直なところ、総理は私は決断してないと思う」と語ったと伝えた。
 産経新聞編集委員の田村秀男氏は、8月25日の産経の記事では、「安倍晋三首相が消費税率の引き上げについて問うべき相手は、外部ではなく政府内部にいる。虚報を流し続ける官僚たちである」と指摘した。デマとは、「消費税率10%でも財政再建できない」「増税で税収が増え、デフレにならない」「増税しないと国債が暴落する」という3点に尽きるとし、これら3点のデマである理由を述べている。
 第一の「消費税率10%でも財政再建できない」というデマについて、田村氏は、内閣府の試算が、基点となる13年度の一般会計税収を12年度の実績43・9兆円より減るとしている詐術を指摘。「現実には景気の好転で、税収は法人税収を中心に大きく伸び続けている」「増税しなくてもこのまま名目成長率3%を維持すれば、消費税増税込みの内閣府試算とほぼ同水準の税収が増税なしで実現する」と述べている。
 第二の「増税で税収が増え、デフレにならない」というデマについては、1997年前半、「つまり消費税増税直後から企業在庫が急増し、続いて生産・出荷指数が下落し、翌年からデフレ不況に陥った」「今回も消費税率をアップしてデフレ圧力を呼び込んだ揚げ句、中国の不動産・金融バブル崩壊の直撃を受けると、97年の二の舞いになるだろう」と予想する。
 第三の「増税しないと国債が暴落する」というデマについては、「日本国債の90%以上は日本国民の貯蓄で賄われているうえに、異次元緩和の日銀が買い増しするゆとりが十分ある。米国の場合、国債の3分の1は外国勢に依存しており、投げ売られるリスクは日本よりはるかに高い」と田村氏は述べている。
 この程度のレベルのデマに引っかかっている政治家が多いのは、嘆かわしい。
 田村氏は、次のように警告する。「日本がデフレを進行させる増税に踏み切れば、カネは国内では国債以外に回らずに米国に流れて、米国債市場安定に貢献するだろうが、税収は減り続け、増税→デフレ→財政悪化の悪循環から抜け出られなくなる。それこそが、日本の国と若者の将来をなくし、究極的には日本売りを呼び込むだろう」と。
 田村氏は、9月12日のSANKEI EXPRESSの記事では、「東京五輪のプラス効果は間違いないだろうが、脱デフレの決め手になるはずはない。首相が「増税」包囲網の中で「脱デフレ」の道を示すためには、少なくとも来年4月の3%税率アップは圧縮せざるを得ないだろう」と書いた。
 安倍首相は、官僚の詐術や周辺の政治家の意見に惑わされずに、デフレ脱却を最優先とし、消費税増税の是非を判断し、実施する場合は時期と方法を、ぎりぎりまで熟考してほしいものである。
 以下は、田村氏の記事。

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●産経新聞 平成25年8月25日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130825/fnc13082510400000-n1.htm
【日曜経済講座】
編集委員・田村秀男 アベノミクス効果を無視する官僚
2013.8.25 10:36

消費増税に向け3大詐術弄す

 安倍晋三首相が消費税率の引き上げについて問うべき相手は、外部ではなく政府内部にいる。虚報を流し続ける官僚たちである。デマとは、「消費税率10%でも財政再建できない」「増税で税収が増え、デフレにならない」「増税しないと国債が暴落する」という3点に尽きる。
 最新例は8日に内閣府がまとめた「中長期の経済財政に関する試算」である。単なる「試みの計算」書ではない。1年前に国会で成立した消費税増税法案通りの税率引き上げはもとより、一層の増税を誘導するたくらみがある。2013年度以降、23年度までの税収を試算したが、今後の経済成長率平均が名目3%、実質2%であっても、国・地方の基礎的財政収支(税収・税外収入と国債費を除く歳出の収支)は20年度でも国内総生産(GDP)比で2%の赤字で黒字化を達成できない、という。が、詐術である。
 鍵は基点となる13年度の一般会計税収にある。「試算」では43・1兆円と、何と12年度の実績である43・9兆円より減る。現実には景気の好転で、税収は法人税収を中心に大きく伸び続けている。ところが、首相の膝元の内閣府がアベノミクス効果を完全無視し、財務官僚が決めた税収見込みに従った。試算の「ウソ」は筆者が8日の時点で安倍首相周辺の専門家たちに指摘したところ、「気付かなかった。まさか、そこまでやるとは」とあきれていた。
税収は名目経済成長率の2・5ないし3倍くらいの速度で増える、というのが民間シンクタンクの間では常識である。増税しなくてもこのまま名目成長率3%を維持すれば、消費税増税込みの内閣府試算とほぼ同水準の税収が増税なしで実現する。ところが、日経新聞などは「試算」を鵜呑(うの)みにして消費税率を10%以上に引き上げなければならないと、報じる。



 グラフは1997年度の消費税増税後の政府一般会計の消費税収と消費税を除く税収が97年度に比べてどうなったか、その増減の推移を追っている。97年度以降、毎年度4兆円の消費税収が増えてきたが、所得税収や法人税収などは逆に大きく減る。98年度以来12年度までの15年間のうち2年はプラスになったが、プラス幅は極小で、いわば0勝13敗2引き分けである。
 吉川洋東大教授などは、97年度増税は15年デフレや税収減とは無関係で、97年秋のアジア通貨危機や山一証券など大手金融機関の経営破綻が主因だとしているが、当時の経済データをきちんと検証してほしい。アジア危機や山一破綻の前の97年前半、つまり消費税増税直後から企業在庫が急増し、続いて生産・出荷指数が下落し、翌年からデフレ不況に陥った。もちろん、外部要因は無視できない。今回も消費税率をアップしてデフレ圧力を呼び込んだ揚げ句、中国の不動産・金融バブル崩壊の直撃を受けると、97年の二の舞いになるだろう。
 3つ目の詐術は執拗な「日本国債暴落」説である。財務省は「国の借金」残高が6月末時点で国民1人当たり792万円の借金を背負っていることになる、と債権者のはずの国民を債務者にすり替えた。日米比較すれば、それが詐術だとすぐわかる。
 まず、政府債務だが、現代の市場経済制度では、資産と債務を対照して信用度を計るのが常識である。つまり、経済主体には債務があれば、資産があり、債務から資産を差し引いた純債務を目安にすべきだ。そこで、両国政府の純債務をみると、11年度末で日本は473兆円、GDP比97%、米国は14兆8千億ドルで同95%である。日米の債務水準はほぼ同じで、日本が突出して高いわけではない。
 日本国債の90%以上は日本国民の貯蓄で賄われているうえに、「異次元緩和」の日銀が買い増しするゆとりが十分ある。米国の場合、国債の3分の1は外国勢に依存しており、投げ売られるリスクは日本よりはるかに高い。米連邦準備制度理事会(FRB)による国債買い入れも限度に来ている。外国の投資家はそれをよく知っており、米国債よりも日本国債をはるかに安全な資産として買い続けるので円高だ。日本がデフレを進行させる増税に踏み切れば、カネは国内では国債以外に回らずに米国に流れて、米国債市場安定に貢献するだろうが、税収は減り続け、増税→デフレ→財政悪化の悪循環から抜け出られなくなる。それこそが、日本の国と若者の将来をなくし、究極的には日本売りを呼び込むだろう。
 安倍首相はもはやわかっておられるだろうが、官僚の詐術を排したうえで消費税増税実施の是非を最終決定してほしい。

●産経新聞 平成25年9月12日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130912/plc13091208300002-n1.htm
【田村秀男の国際政治経済学入門】
デフレなお衰えず それでも増税するのか
2013.9.12 09:10

 安倍晋三首相は10月1日にも、昨年の「3党合意」に基づく予定通りの消費増税に踏み切らざるを得ないとの見方が政界では多数を占めている。財務官僚の意をくむ麻生太郎副総理兼財務相や甘利明経済再生担当相らが、4~6月期の国内総生産(GDP)2次速報値での成長率アップや7月の消費者物価上昇や失業率の改善に加え、2020年東京五輪の開催に伴う景気押し上げ効果が見込めるとし、増税にますます前のめりになっている。もとより増税に慎重な安倍首相もこうした周囲からの包囲網を跳ね返せないのではないか、との予想が成り立つのだが、筆者はそれでも安倍首相は3党合意通りの増税には応じないとみる。なぜか。(SANKEI EXPRESS)

 まず、「アベノミクス」の本質を最もよく心得ているのは、安倍首相本人のほか、菅義偉官房長官、経済指南役の本田悦郎静岡県立大学教授と浜田宏一エール大学名誉教授である。一貫して強調している最優先目標は「脱デフレ」であり、その実現に向けた首相の信念はまさに政治生命そのものと言っていい。麻生、甘利の両氏や石破茂自民党幹事長らはこの信念を首相と共有しているとは言いがたく、むしろ「ポスト安倍」の機会をつかむためには、GDPの5割相当に匹敵する予算を支配する財務官僚を味方につける方が有利との、政治家特有の打算が働くはずだ。財務官僚も心得たもので、増税と引き換えに「大型補正」の餌を自民党要人の目の前にぶら下げている。
 安倍首相は、1997年度の橋本龍太郎政権の消費増増税など財務官僚のシナリオに従ってきたからこそ、「15年デフレ」の泥沼にはまり抜けられなくなったという疑念を抱いている。財務官僚OBでありながら、消費税増税によるデフレ圧力を強く懸念する本田氏と、橋本増税の失敗を教訓にするべきと主張する浜田両教授をアドバイザーに選んだ背景である。本田氏は木下康司財務次官と同期で意思疎通が良好だが、首相の意を裏切ることがない。本田氏が出した増税修正案は税率引き上げ幅を1%にして段階的に上げて行く。その案は第1段階で2%の上げ幅もオプションにしている。本田氏はもとより増税延期論者だったが、木下氏ら財務省幹部の工作ぶりからみて、延期は無理と見て、熟慮の末に考え出したのがこの小刻み案である。本田案はデフレ圧力を大幅に緩和すると見込まれ、財務省寄りの経済学者の中にも賛同者がいるほどだ。だが、中小企業者の間に事務負負担が煩雑と反発が強いこともあって、政治的には実現が難しいだろう。
 浜田教授の1年延期案はその点、すっきりしている。アベノミクスの脱デフレ効果はあと1年で軌道に乗り、賃上げの基調が定着すれば、増税に伴う消費意欲の減退を避けられる、というわけである。浜田教授は1年延期しても、2015年には増税は必ず実行すると首相が確約すれば、財務官僚や日経、朝日新聞などのメディアが喧(けん)伝(でん)する「国債暴落」の不安も払拭できると踏んでいる。だが、政治的な難点がある。順当に行けば次の衆院総選挙は16年12月になるが、1年増税をずらすと16年10月に消費税率10%への引き上げとなり、与党にとって不利との見方が多いのだ。
 首相決断の原点は繰り返すが「脱デフレ」に尽きる。日本型デフレとは物価の継続的な下落と、それを上回る賃金の下落のことで、安倍首相はこの点をよく理解している。まず、消費者物価指数(CPI)だが、国際標準であるインフレ指数は生鮮食料品とエネルギーを除く「コアコアCPI」であり、天候や中東情勢からくる変動要因を除いた実物の需給関係を反映する。甘利氏は総合物価指数が上向きになったことで「脱デフレの兆し」を強調するが、コアコアで見れば、CPIはこの7月まで下落基調は衰える気配がまったく見られない。民間設備投資も肝心の製造業は依然海外志向で、国内向けは低調だ。新規雇用は依然として賃金の安いサービス業主体で、勤労者所得も前年を下回っている。東京五輪のプラス効果は間違いないだろうが、脱デフレの決め手になるはずはない。首相が「増税」包囲網の中で「脱デフレ」の道を示すためには、少なくとも来年4月の3%税率アップは圧縮せざるを得ないだろう。(産経新聞特別記者・編集委員)
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消費増税なら5年後のGDPはー6%に~宍戸駿太郎氏

2013-09-24 08:50:50 | 経済
 来年4月消費税8%へ増税という風潮が作られつつあるが、わが国が世界に誇る経済学者・宍戸駿太郎氏は、敢然と反対している。

【宍戸駿太郎氏インタビュー】消費増税ではなく経済成長を!【ザ・ファクト】
http://www.youtube.com/watch?v=aby8vaXWAZY
~8月に政府が開催した消費税集中点検会合で、増税反対を唱えた筑波大学・国際大学名誉教授の宍戸駿太郎氏に、「なぜ増税がいけないのか」を伺いました。~

 宍戸氏は、シミュレーションによる経済分析の世界的な権威である。
 宍戸氏は語る。―――
 消費増税をすれば5年目に名目GDPは-5%~ー6%にまで落ち込み、アベノミクスはダメになる。
 増税を延期して、取るべき具体策は、①国土強靭化のための公共投資、②法人税の減税(加速償却方式で)、③新エネルギーの開発等の政策金融で有効需要を拡大、④有給休暇の完全消化で消費拡大。
 増税なしでこれらを実行すれば、2020年にはGDPは800兆円になる。政府の借金を返済でき、余った分でより強力な社会保障制度を実現できる。政治家・国民は、IMF・財務省の宣伝にだまされるなーーーーと。

 宍戸氏については、拙稿「日本経済復活のシナリオ~宍戸駿太郎氏」をお読みください。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13h.htm
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消費増税の報道 安倍首相が決断?

2013-09-23 08:42:27 | 経済
 消費増税に関する一部の報道により、情報が錯綜している。ここ10日ほどの間に、共同通信と読売新聞は、安倍首相が来年4月に消費税を8%に引き上げる意向を固めたという主旨の報道をした。読売は14日の記事で、安倍首相の経済ブレーンの浜田宏一・内閣官房参与(米エール大名誉教授)が、首相が意向を固めたことについて、「『適当な方向だ』と一定の理解を示した。『政治の自然な流れなのだろう』とも述べた。首相官邸で記者団に語った」と書いた。浜田氏は、デフレ脱却を最優先しており、増税を1年間待つことを提案してきた。一度に3%ではなく、経済状況を見ながら、毎年1%づつ上げるという案も語っていた。読売の記事が発言主旨を正確に伝えているか疑わしい。
 ところが、産経新聞は19日の朝刊のトップ記事で、「消費増税来春8% 首相決断」と大見出しを上げ、「安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年4月に8%に引き上げることを決断した」と断定した。トップ記事に続いて、増税反対の旗手である田村秀男氏は、首相は上げ幅を2%に圧縮する案も考えたが、「その強大な指導力をもってしても予定通りの通りの増税という政府や与党内の大勢を押し返せなかった」という首相周辺筋の情報を署名記事に書いた。
 翌日の20日、日本経済新聞のニュースは、菅義偉官房長官は首相が決断した、との報道について「正直なところ、総理は私は決断してないと思う」「総理ご自身がもう決断したということは私はまったく聞いていない」と語ったとし、そのうえで「10月になって日銀企業短期経済観測調査(短観)等の数字をみたうえで、総理自身その対策を含めたうえで判断する」との見解を改めて示したと報じた。
 報道機関が飛ばし記事を書いたのか、政治家が複数の情報を流しているのか。背後には、財務官僚による圧力や誘導がありそうである。私は、現状はデフレ脱却の緒についたばかりであり、ここでの消費増税はアベノミクスの効果を大半打ち消すものとなると思う。国政に与る政治家は、内閣府のシミュレーションや財務省の増税不可欠論に惑わされてはいけない。政府と日銀が一体となって、経済成長路線を進むならば、増税せずとも税収が増え、財政の健全化や社会保障の充実ができる。
 安倍首相には、まさに命がけの選択になると思う。そこに日本の運命がかかっている。周辺の政治家やマスメディアや海外からの圧力に負けることなく、強い精神力をもって、国家最高指導者としての判断をしてもらいたいものである。
 以下は関連する報道記事。

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●読売新聞 平成25年9月14日

浜田氏「自然な流れ」、本田氏は懸念…消費増税

 安倍首相の経済ブレーンの浜田宏一・内閣官房参与(米エール大名誉教授)は13日、首相が来年4月から消費税率を5%から8%へ引き上げ、5兆円規模の経済対策をまとめるとの意向を固めたことについて「適当な方向だ」と一定の理解を示した。
 「政治の自然な流れなのだろう」とも述べた。首相官邸で記者団に語った。
 一方、同じく首相の経済ブレーンの本田悦朗・内閣官房参与(静岡県立大教授)は同日、記者団に「日本の置かれた状況は複雑で深刻だ」として、首相の消費増税に対する懸念を表明した。「15年間のデフレが、半年の実質国内総生産(GDP)で判断できるのか」とも強調した。
(2013年9月14日10時03分 読売新聞)

●産経新聞 平成25年9月19日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130919/fnc13091907420000-n1.htm
消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示
2013.9.19 07:41

 安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年4月に8%に引き上げることを決断した。消費税増税の判断材料になる各種経済指標は、景気回復を裏付けているものの、首相周辺には引き上げによる景気腰折れを心配し、増税幅を2%に抑えるべきだとの声もあった。だが、党内調整や今後の国会運営を考慮し、3%の引き上げが避けられないと判断した。首相は同日、麻生太郎財務相に法人税減税の具体策検討を指示。低所得者への現金給付などを合わせた経済対策の総額は、5兆円超になる見通し。
 首相は、10月1日に日銀が発表する9月の企業短期経済観測調査(日銀短観)や、8月の有効求人倍率などを分析して最終判断し、消費税率引き上げを発表する方針だ。
 消費税率引き上げは、4~6月期の国内総生産(GDP)改定値が、重要な判断材料になると注目されていた。これに対し、9日発表された改定値は名目が年率換算3.7%増、物価の影響を除いた実質が3.8%増を確保し、消費税増税法の付則で目安とされる名目3%、実質2%の成長率を上回った。
 8月下旬に、有識者60人からその是非をヒアリングした消費税率引き上げの集中点検会合でも、7割が増税に賛同。2020年の東京五輪開催が決定し、インフラ整備などの経済効果が見込めることも後押しした。
 ただ、消費税増税は消費を急激に冷え込ませ、デフレ脱却の芽を摘む恐れがある。このため、政府内では引き上げ幅を2%に抑える選択肢も検討されたが、消費税増税法の関連法案の修正をめぐり、10月半ばからの臨時国会が紛糾すれば、成長戦略の議論が進まなくなる心配があった。
 3%の引き上げで、家計や企業には年間8兆円規模の負担増が生じる。そこで、2%の引き上げ分に相当する5兆円超の大型の経済対策も、引き上げの発表に併せ、安倍首相が表明するもようだ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130919/fnc13091910150006-n1.htm
【消費税来春8%へ】
逆境下で首相は脱デフレやり抜けるか 編集委員 田村秀男
2013.9.19 10:11

 大型消費税増税は大きなデフレ圧力を呼び込む。政府内でこの懸念を最も強く抱いてきたのは、安倍晋三首相本人であり、最終的には消費税率上げ幅を2%に圧縮する案も考えた。ところが「その強大な指導力をもってしても予定通りの増税という政府や与党内の大勢を押し返せなかった」(首相周辺筋)。首相は逆境のもとで「脱デフレ」をやり遂げられるだろうか。
 デフレ下では、物価の下落を数倍も上回る速度で国民の賃金や所得が縮小する。平成9年度、消費税増税で物価は上がったが、翌年度は物価下落以上に賃金下落の基調が定着してしまい、デフレは慢性化した。その二の舞いを避けなければ、アベノミクスへの信頼は損なわれてしまう。
 日銀の試算によれば、3%の消費税率アップは消費者物価を2%押し上げる。日銀のインフレ目標2%を加えると、合計で4%物価が上がりそうだ。半面、4%ものインフレ分を補填(ほてん)する賃上げは雇用需給が逼迫(ひっぱく)しない限り望みは薄い。多くの一般家計は消費を切り詰めざるをえなくなる。
 政府は増税を受けた景気対策として大型補正予算を議論しているが、財源の制約から24年度末の真水5兆円の補正予算と同水準が限度で、前年度比でみる経済成長率押し上げ効果はゼロであり、増税デフレを相殺するには不十分だ。
 設備投資減税など法人税減税も検討されているが、来年度に間に合わせることが重要だ。そもそも、消費税増税で需要を減らすと、企業の設備投資意欲が萎える。その後で減税しても遅い。各種の規制緩和や「2020東京五輪開催」も有効に違いないが、脱デフレや成長にいつから、どこまで寄与できるか、不明な部分が多い。以上、消費税増税によるデフレ圧力を政府として解消させる決め手には欠けるのが現実だ。
 最後の頼みは日銀の追加金融緩和策だ。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁はすでに、消費税増税に伴う需要減退に対し、金融政策で対応する用意を表明している。その場合、最も期待できるのは円安促進効果である。日銀の「異次元緩和」は今年前半、円安、株高を誘発した。金利と量の両面の緩和でもう一段の円安を期待できる。
 政府は日銀と歩調を合わせながら、短期、中長期で統合のとれた脱デフレ策を固める。そして首相自らその有効性を広く国民に訴えるべきだ。(編集委員 田村秀男)

●日本経済新聞 平成25年9月20日

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL200P9_Q3A920C1000000/
官房長官、消費増税「正直なところ総理は決断していない」
2013/9/20 16:55

 菅義偉官房長官は20日午後の記者会見で、2014年4月からの消費税率引き上げを安倍晋三首相が決断した、との報道について「正直なところ、総理は私は決断してないと思う」と述べた。
 首相自身、増税した場合の影響などを総合的に勘案して自ら判断する考えをかねて述べている。菅氏は「総理ご自身がもう決断したということは私はまったく聞いていない」と語った。そのうえで「10月になって日銀企業短期経済観測調査(短観)等の数字をみたうえで、総理自身その対策を含めたうえで判断する」との見解を改めて示した。
 復興特別法人税の終了を1年前倒しすることが取り沙汰されている点に関連し「復興財源25兆円を削ることはあり得ない」とも述べた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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人権62~権力の変動

2013-09-21 08:47:39 | 人権
●権力の変動

 権力は変動する。変動とは、変化と移動である。権力の関係・作用・大小・強弱が変化する。権力の主体が移動・交代する。また権力体系の重層構造が変動する。この権力の変動について、権利との関係、権力の価値と転換、量的把握、権力闘争、統治権の移動という4点を述べたい。
 権力は社会的な力である。社会的な力は、人間の意思の働きによる力であり、集団の意思の合成によって発揮される能力である。
 権力関係は、固定したものではなく、権利関係の変化とともに変動する。集団は、権利をめぐって、自らの意思を実現しようとする者とこれに反発する者に分かれ、互いの意思を交換する。話し合いが順調にいけば、対立は譲歩や妥協によって解決する。話し合いが不調に終わると、闘争が起こる。闘争は、相手の闘争意思をくじくことができれば、目的を達することができる。勝者は自らの意思を実現し、敗者はこれを受容する。勝者は権利を取得または拡大し、敗者は権利を移譲または喪失する。新たな権利関係の承認が行われる。こうした権利関係の変化とともに、権力関係も変化する。新たな力の均衡が成立する。
 一般に氏族・部族においては、集団の共同性が高く、成員の意思が疎通しており、権力は協同的に行使される。権力関係は、保護―受援の関係にある。そのような集団では、上記のような闘争は一時的である。組合・団体・社団も目的を共有する限り、基本的には似た傾向にある。だが、集団の共同性が低下し、集団の意思の対立が常態化している集団では、権力は闘争的に行使されるものとなる。権力関係は、支配―服従の関係にある。そのような集団では、闘争が起きやすく、激化しやすい。そして権力の変動が生じやすい。

●権力の生みだす価値とその転換

 近代化する社会において、権力関係が保護―受援的な関係にあるとき、権力は個人の自由と権利を保護・拡大するものであり、これに従うところに自由と権利の獲得・拡大が実現される。この場合、権力は「正の価値」を持つと言える。価値とは「よい」と思われる性質である。権力関係が支配―服従的な関係にあるとき、権力は自由と権利を抑圧・規制するものであり、これと闘うところに自由と権利の獲得・拡大が実現される。この場合、権力は「負の価値」を持つと言える。正の価値が「よい」と思われる価値であるのに対し、負の価値は「わるい」と思われる性質である。
 権力の正と負の価値は、権力関係の双方の主体にとって、一方の「正の価値」が他方の「負の価値」になるという関係にある。権力が闘争的に行使されている社会関係では、権力は、優位者にとって、支配と収奪を実現する力である。だが劣位者にとっては、同じ権力が支配され抑圧される力となる。一つの権力が、自らの意思に合う者と自らの意思に反する者とで、全く違うものに感じられる。権力は、優位者には「正の価値」、劣位者には「負の価値」を生む。多くの権力論は、権力の「負の価値」に注目し、これを強調する。だが、権力の「正の価値」を同時に見て、総合的に把握しなければならない。
 集団の指導者は、成員を率いてその集団の権力を代表的に行使する。指導者は権力を象徴的に体現する。指導者を支持し、尊敬する者にとって、指導者は「正の価値」を象徴する。指導者に反発し、反抗する者にとって、指導者は「負の価値」を象徴する。権力はその保護・支援・指導・教育を受ける者には、自らを守り、助ける力として安心や信頼を感じさせる。また自分がその力と一体であると感じることによって、自信や高揚を覚えもする。そうした感情が権力の象徴的な体現者である指導者に向けられる。権力はその支配・収奪・抑圧・規制を受ける者には、自らを押さえ、縛り、苦しめる力として、怒りや憎しみの対象となる。そうした感情も権力の体現者としての指導者に向けられる。権力の変動は、しばしば指導者への反発・反抗によって生じる。
 権力は自らがそれに参加し、自らの意思を実現するものと感じられるとき、より価値あるものと認められる。権力関係において、優位者は権力に対して能動的であり、劣位者は権力に対して受動的である。劣位者は闘争によって、権力に対し受動的から能動的に転じる。闘争に勝利すれば、自らの立場は劣位から優位に転換する。劣位者が優位者と闘争し、権力を獲得しようとするとき、獲得すべき権力は「負の価値」から「正の価値」に転じる。

●権力変動の量的把握

 権利の相互作用を力の観念でとらえたものが、権力である。権力関係を権利関係と相関的にとらえると、量的な比較ができ、また関係の変化を量的な変化として把握できる。量的な認識は、権力の変動を考える際に有効である。
 権力関係は、多くの場合、優位者が力を独占し、劣位者は無力と表象される。いわば100とゼロの関係である。しかし、これは局限的な状態であって、権力関係には、いわば90対10とか51対49とかいう相対的な状態が存在する。そのことが、見落とされがちである。親子、夫婦、兄弟のような家族関係においても、また部族・氏族・組合・団体・社団等の首長と成員の関係やその成員相互の関係、集団と集団の関係においても、権利の大小・多少の比較と同様に、権力の大小・強弱の比較をすることができる。そうした見方をすることによって、権利関係の変動に伴う、権力関係の変動をとらえることができる。権利の量、関与する人員の数や武器の数等が、権力の量的側面を表す指標となる。
 優位者と劣位者の関係は、強者と弱者の力の関係ゆえ、相対的である。100とゼロではなく、弱者にも力はあるから、そこに反抗や逆転の可能性がある。古代ローマ帝国の奴隷や近代世界の有色人種等は、ほとんど無力の状態から力を強め、権力関係の逆転を起こしている。権利関係の変化に伴う権力関係の変動である。奴隷が自由人になる。主人にさえなり得る。それが解放であり、独立や革命である。強者が保持し誇示するものも権力であり、弱者が熱望し奪取を目指すものも権力である。
 このように権力の変動を考えることによって、人権と権力の関係は相互的で変化するものと理解することができるだろう。

 次回に続く。
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中国の反日教育がほころび始めた~石平氏

2013-09-20 09:13:06 | 国際関係
 本年8月15日、靖国神社参道で行われた第27回戦没者追悼中央国民集会では、シナ系日本人評論家の石平氏が提言者の一人として登壇した。提言は熱烈、明快で、参加者の拍手は割れんばかりだった。Youtubeに掲載されている。
http://www.youtube.com/watch?v=3iaBRPUhkQI
 この日の朝、石氏の書いた記事が産経新聞の「石平のChina Watch」に載った。「ほころび始めた反日教育」と題したもので、中国の最新情報とそれに対する分析が書かれている。
 石氏によると、7月14日中国中央テレビが日本の「歴史認識問題」に関する報道番組を放送した。日本の中学生へのインタビューをもとに、日本の歴史教育への批判を繰り広げたものだった。これに対し、「多くの視聴者から上がってきたのは意外な反応だった」。ミニブログ「微博」専用ページには次のようなコメントが並んだ。
 「中国人民は皆知っている。よく嘘をつくメディアは人民日報、よく捏造する教科書は中国の教科書だ。お前らこそ、毎日のように中国人民をだましているのではないか」「文革以来、一体誰が多くの中国人民を惨殺してきたのか。日本人ではないぞ」「自国の歴史さえ正視できないこの国が他国に正しい歴史認識を求めることができるのか。嘘ばかりをつくこの政府は、他人に真実を語れと要求できるのか」等々。
 また8月には、「網易」という民間サイトが「日本の歴史教科書と中国の歴史教科書、どちらの方が嘘をついているのか」という討論を行った。一般ユーザーにも意見を求めると、「日本の教科書の方が嘘をついている」と答えた回答者数が2730人だったのに対し、「中国の教科書の方が嘘つきだ」と答えたのはその数倍以上の8949人に上ったという。
 石氏は、これらの反応に対し、「中国政府が長年やってきた反日教育が破綻し始めていることは一目瞭然である」「御用宣伝機関筆頭の中央テレビ局や政府発行の歴史教科書までもが多くの中国人民に『嘘つき』だと認定されているようでは、反日教育を含めた、政権が行う思想教育・統制、それ自体がすでに失効していることがよく分かる」「思想の統制が崩壊した暁には、政治の統制が後どれくらい維持できるのか。それこそが、まさに今後の『見どころ』なのである」と書いている。
 この記事は、それ自体、非常に興味深いものだが、下記の記事と読み合わせると、中国人民の中で大きな意識変化が起こり、国家体制に動揺が始まっていることがよく分かる。

拙稿「習政権下で暴動続く中国に備えを~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/de74630514e5cb29d3d30e2718528fa6

 以下は、8月15日の石平氏の記事。

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●産経新聞 平成25年8月15日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130815/chn13081508040000-n1.htm
【石平のChina Watch】
ほころび始めた反日教育
2013.8.15 08:03

 先月14日、中国中央テレビは日本での現地取材を内容とする報道番組を放送した。いわゆる「歴史認識問題」がテーマである。中央テレビ局といえば、中国における反日教育と反日宣伝の中心的な存在である。この報道番組も当然、宣伝目的で作られたものだ。日本取材の中、中国人記者は街を歩く中学生たちをつかまえて、「日中戦争中に多くの中国人が死んだことを知っていますか」「南京大虐殺を知っていますか」などの質問を投げかけた。
 とっさのことで中学生たちが「知らない」と答えると、番組の解説者はすかさず「なるほど、日本の歴史教科書は歴史を改竄(かいざん)して子供たちに侵略の歴史を教えていないから、こうなったのですね」と、日本の歴史教育への批判を繰り広げた。
 中国では昔から、この手の反日報道が日常的に行われ、それなりの効果を上げている。今回も同じ繰り返しかと思えば、多くの視聴者から上がってきたのは意外な反応だった。人民日報社が開設するミニブログ「微博」専用ページには次のようなコメントがずらりと並んでいる。
 「中国人民は皆知っている。よく嘘をつくメディアは人民日報、よく捏造(ねつぞう)する教科書は中国の教科書だ。お前らこそ、毎日のように中国人民をだましているのではないか」
 「文革以来、一体誰が多くの中国人民を惨殺してきたのか。日本人ではないぞ」
 「自国の歴史さえ正視できないこの国が他国に正しい歴史認識を求めることができるのか。嘘ばかりをつくこの政府は、他人に真実を語れと要求できるのか」
 などなどと現在もこのような辛辣(しんらつ)なコメントが書き込まれ続けている。
 こうしてみると、政府の行う反日宣伝は完全に裏目に出ていることが分かる。「日本の教科書が真実を教えない」と批判すれば、「中国の教科書こそ嘘ばかりではないのか」との反論が返ってくるし、「南京大虐殺が忘れられた」と騒げば、「お前らこそ多くの中国人民を殺したのではないか」と突っ込まれる。反日宣伝をやった分、それはすべて、政府自身に返ってくるのである。
 8月に入ると、今度は「網易」という民間サイトが「日本の歴史教科書と中国の歴史教科書、どちらの方が嘘をついているのか」というネット上の討論を開始し、一般ユーザーにも意見を求めた。その結果、「日本の教科書の方が嘘をついている」と答えた回答者数が2730人であったのに対し、「中国の教科書の方が嘘つきだ」と答えたのはその数倍以上の8949人に上ったのである。
 ここまでくると、中国政府が長年やってきた反日教育が破綻し始めていることは一目瞭然である。丹念に行った日本批判のすべてが政府批判展開のきっかけを作ったのにすぎないのであれば、「それでは一体何のための反日だったのか」と、政府の宣伝担当者はさぞかし落胆しているのではないか。
 それどころか、御用宣伝機関筆頭の中央テレビ局や政府発行の歴史教科書までもが多くの中国人民に「嘘つき」だと認定されているようでは、反日教育を含めた、政権が行う思想教育・統制、それ自体がすでに失効していることがよく分かる。
 インターネットが発達する情報化の時代、市場経済の中で多くの人々が自立的な生活基盤を得て自由な思考を始めた「啓蒙(けいもう)の時代」、共産党政権が国民大半の頭と心をコントロール下におくことはもはやできなくなっている。
 国民規模の「思想解放運動」はただ今展開している最中だ。思想の統制が崩壊した暁には、政治の統制が後どれくらい維持できるのか。それこそが、まさに今後の「見どころ」なのである。
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慰安婦問題で河野洋平氏を提訴へ

2013-09-18 09:54:11 | 慰安婦
 慰安婦問題の最近の展開を憂慮する人々が集まり、慰安婦問題で日本の名誉を守ろうとする個人・諸団体の連絡組織として、「慰安婦の真実」国民運動が7月29日に結成された。代表に外交評論家の加瀬英明氏、幹事長に朝鮮問題研究家の松木國俊氏が就任した。「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが中心となっており、同会のサイトに活動報告が掲載されている。
 「慰安婦の真実」国民運動は、9月10日、政府に対し「河野談話」の撤廃を求める署名3万867人分を提出した。5万人を目標として引き続き12月末まで署名活動を行うという。
 政府への申し入れ後、同会の代表者らは、参議院議員会館で記者会見を行い、近く河野洋平氏個人を提訴する考えも明らかにした。河野談話については、東京地検に刑事告発したが、時効として却下された例がある。今回は民事で責任を問う準備がされており、年内にも提訴できる見通しという。国民運動としては、慰安婦問題をあおってきた研究者との公開討論呼びかけ、講演会の開催、意見広告の掲載、全国に40以上ある「慰安婦決議」をした自治体への抗議等の活動を進めていく方針が示された。また河野談話の強制連行を否定した第1次安倍内閣の閣議決定の再確認、河野談話の撤廃または新談話の発表等、政府や政治家に働きかけていくという。
 以下は、関連する報道記事。

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●産経新聞 平成25年9月16日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130916/plc13091612030003-n1.htm
【慰安婦問題】
河野洋平氏を提訴へ 「国民運動」談話撤回求める署名も3万超
2013.9.16 12:00

 慰安婦問題とは直接関係ないはずの米国に慰安婦の碑が建てられるなど、韓国・中国による慰安婦問題を題材とした日本バッシングが繰り広げられる中、今年7月に発足した「慰安婦の真実」国民運動(加瀬英明代表)が10日、参議院議員会館で記者会見し、騒動を泥沼化させた根源といえる「河野談話」の撤廃を求める署名3万867人分を同日、国に提出したことを報告。また近く河野洋平氏個人を提訴する考えも明らかにした。(溝上健良)

 会見で、加瀬代表は「慰安婦問題をめぐっては、全世界で日本はぬぐいがたい深刻な汚名を着せられている。これはひとえに平成5年、河野官房長官が出した談話に発している」と、河野談話の罪深さに言及。続いて松木国俊幹事長がアピール文を読み上げた。問題の全体像と深刻度を確認するためにも、ここではその全文を紹介しておきたい。

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「慰安婦の真実」に関する国民へのアピール

 いわゆる「従軍慰安婦」問題をめぐって、日本バッシングの風潮が世界的に広がっています。日本の慰安婦は代価を払わない「性奴隷」であったとか、「20世紀最大の人身売買事件」だったとか、ナチスのユダヤ人虐殺に匹敵するホロコーストだったとか、事実無根の途方もない言説がばらまかれています。アメリカの公共施設に朝鮮人慰安婦の像や碑が建てられ、地方議会の非難決議も行われています。韓国、中国、アメリカにロシアまで加わって日本批判を展開しています。
 アメリカでの慰安婦問題は1990年代初頭から在米中国、韓国人のロビー活動で始まり、2007年にはアメリカ議会下院での日本非難決議がなされ、引き続いてオーストラリア、オランダ、フランス、EU、フィリピン、台湾と続き、今や日本はこの問題で、四面楚歌ともいうべき深刻な状況に置かれています。
 このような事態がもたらされた最大の原因は、日本政府が、何一つ証拠がなかったにもかかわらず、慰安婦の「強制連行」を認めたかのように読める「河野談話」を平成5年(1993年)に発表したことにあります。「河野談話」は、慰安婦の強制連行さえ認めれば事は収まるという韓国側の誘いに乗って、事実を曲げて政治的妥協をはかって作成された文書です。しかし、その結果は全く逆に、「河野談話」こそが強制連行の最大の証拠とされ、各国の日本非難決議の根拠となり、韓国人の妄言に見せかけの信憑性を与えることになったのです。
 あるアメリカの有識者は、「古今東西、軍隊と売春婦はつきものであり、それについて謝罪したのは有史以来日本政府だけである」と指摘しました。そして「そのような当たり前の事に謝罪したのは、本当はもっと悪いことをしていて、それを隠すためではないかとさえ勘ぐられている」と言います。日本を貶めようとする外国の謀略に乗せられ、国益を無視して安易に発した「河野談話」が、慰安婦問題で日本を苦境の縁に立たせた元凶なのです。
 日本国民がこのいわれのない屈辱に対して怒らないとしたら、それは日本国家の精神の死を意味します。私たちはどんなことがあってもこの汚名を私たちの子々孫々に負わせることはできません。
 今年7月、この問題を憂慮する個人・団体が集まり、私たちは〈「慰安婦の真実」国民運動〉を結成しました。今後は日本国内外の多くの同志と広く連携をとり「河野談話」の撤回運動を初めとする、日本の汚名をそそぐための様々な運動を展開していきます。
 国民の皆様には、我々の救国運動に深いご理解をいただき、深甚なるご支援を賜りますよう、心よりお願いいたします。

 平成25年9月10日 「慰安婦の真実」国民運動 代表 加瀬英明
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国家への裏切り行為
 慰安婦問題がここまで反日勢力に利用されることになった元凶は、「韓国側の誘いに乗って、事実を曲げて政治的妥協をはかって作成された文書」である河野談話にある、というわけで、当然ながら出席者からは河野洋平氏に対する厳しい声が相次いだ。藤岡信勝幹事は「政治家としての国家に対する裏切り行為を、司法の場で問う意義はあるのではないか」として、河野洋平氏に対する民事訴訟を起こす考えを示した。
 河野談話氏をめぐっては、石川県在住の諸橋茂一氏がかつて、東京地検に河野氏を刑事告発したものの「時効」を理由に却下された経緯がある。今回は民事で責任を問う方針で準備が進められており、年内にも提訴できる見通しという。
 さらに国民運動としては慰安婦問題をあおってきた研究者との公開討論呼びかけも含め、講演会の開催や意見広告の掲載、全国に40以上ある「慰安婦決議」をした自治体への抗議といった活動を進めていく方針が示された。「なでしこアクション」の山本優美子代表は、慰安婦像が設置された米カリフォルニア州グレンデール市に住む日本人女性が肩身の狭い思いをしている現状を報告し、外務省の無策ぶりを告発した。
 それにしても、米ニューヨークの街路を「慰安婦通り」と命名しようとするなど、反日勢力の活動は尋常ではない。もしかして、日本のみならず米国に対しても「軍隊と性」の問題に向き合うよう促しているのかもしれない。それを止めるつもりはないが、その前に韓国は自らを省みる必要があるはずだ。その内容については『悪韓論』(室谷克実著、新潮新書)に詳しいのでここでは繰り返さない。あわせて『面白いけど笑えない中国の話』(竹田恒泰著、ビジネス社)、『日本人が知っておくべき「慰安婦」の真実』(SAPIO編集部編、小学館)もお勧めだ。
 ジャーナリストの大高未貴氏は、慰安婦問題をあおっている“司令塔”は在米の中国勢力であることを指摘し、「おかげさまで中国・韓国の常軌を逸した嫌がらせによって、普通の日本人も『これはおかしい』と気づきはじめました。今こそ自虐史観から脱却するチャンスを中国・韓国から与えていただいたと感謝して、日本再生のために頑張っていきましょう」と訴えた。中国・韓国は図らずも、日本人の目を覚まさせようとしているのかもしれない。
 実は第1次安倍政権の平成19年3月、当時は社民党に所属していた辻元清美衆院議員の質問主意書に答えて、政府は「河野談話」に関連し「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定している。閣議決定は官房長官談話よりも重いものであり、この時点で根拠が崩れた河野談話は空文化しているはずなのだが、いまだにその亡霊が猛威をふるっている。
 国民運動では、この閣議決定の再確認や、河野談話の撤廃ないし新談話の発表などを、国や政治家に働きかけていくことにしている。反日勢力の悪質なデマを許さないためにも、その根拠となっている河野談話の「最終処分」が急務だろう。
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関連掲示
・拙稿「慰安婦問題は、虚偽と誤解に満ちている」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12f.htm
・拙稿「橋下「慰安婦」発言きっかけに国連が事実誤認の勧告」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/dfd3ee828b5956533b365e7de5e9f7a0
・なでしこアクションのサイト
http://nadesiko-action.org/?p=4908
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「カントの哲学と心霊論的人間観」をアップ

2013-09-17 09:33:35 | 人間観
 8月20日から9月16日にかけてブログとMIXIに連載したカントと心霊論的人間観に関する拙稿を編集し、マイサイトに掲載しました。通してお読みになりたい方は、下記へどうぞ。

■カントの哲学と心霊論的人間観
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion11c.htm

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