ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

SNSを利用して3年

2008-03-31 10:20:32 | Weblog
 私はこのブログと共に、SNSを利用している。
 平成17年(2005)3月29日にMIXIに入会して、このほど3周年を迎えた。そこで私が主宰するコミュニティ「真の日本精神」の会員は、1301人から1540人に増えた。いろいろな人との出会いが広がり、うれしく思う。 
 
 インターネットに文章を載せ始めて、11年。何かまとまったものを書く時は、ブログとMIXIに日々、分載することにしている。この1年も折々に、関心の赴くままいろいろ書いてきた。主な連載を分類すると、以下のようになる。

<日本精神>
●マンガが世界に日本精神を 2007年04月06日~
●「美しい“日本の心”を取り戻すには」 2007年06月05日~

<教育>
●「親学」が、いよいよ展開 2007年04月11日~
●道徳教育はどうなすべきか 2008年01月22日~

<少子化問題>
●脱少子化は命と心の復活から 2007年07月13日~

<歴史認識>
●旧日本軍の慰安婦問題 2007年05月24日~
●慰安婦問題の虚偽 2007年06月14日~
●戦後賠償問題は、決着済み 2007年08月06日~

<憲法と国防>
●憲法第9条は改正すべし 2007年08月30日~
●集団的自衛権は行使すべし 2007年12月25日~
●人権の核心としての生存権 2008年03月03日~

<国際関係>
●インド・シン首相の国会演説  2007年04月17日~
●日米印の戦略的協力の強化を 2007年04月22日~
●9・11~欺かれた世界 2007年09月14日~
●9・11の真相を求めて 2007年11月04日~
●米大統領選挙の日本への影響 2008年02月15日~
●台湾に親中派の総統が誕生 2008年03月25日~

<地球環境>
●「不都合な真実」を知ったら 2007年04月30日~

 原稿の多くは、まとめ直して、マイサイトに分野別に掲載している。関心のある方は、サイトの方をお読みいただきたい。今後ともお付き合いただければ幸いである。

沖縄集団自決訴訟で不当判決

2008-03-30 09:42:43 | 歴史
 28日、大阪地裁で沖縄集団自決訴訟の判決が出た。この訴訟は、沖縄戦で旧日本軍の隊長が集団自決を命じたとする大江健三郎氏の著書『沖縄ノート』(岩波書店)などの記述をめぐり、元隊長らが出版差し止めなどを求めたもの。大阪地裁は大江氏側の主張をほぼ認め、原告の請求を棄却した。
 深見敏正裁判長は、「書籍に記載された内容の自決命令は、ただちに真実と断定できない」としながらも、「(命令の)事実については合理的資料や根拠がある」と認定し、大江氏らが命令説を真実と信じた相当の理由があったとして、名誉棄損を否定する「真実相当性」を棄却の根拠とした。

 この判決は不当である。原告側はただちに控訴する方針とのこと。軍命令説を最初に書いたのは、沖縄タイムス社編『鉄の暴風』(昭和25年)だが、本書は、GHQが厳しい検閲を行なっていた占領下に刊行されたものである。日本人に戦争犯罪を信じ込ませ、沖縄住民を反日親米化させる宣伝工作の一環として出版された可能性が高い。大江氏は、本書に書かれた軍命令説を『沖縄ノート』に引用した。
 しかし、作家の曽野綾子氏が現地に取材してノンフィクション『ある神話の背景』(昭和48年)を出版し、『鉄の暴風』『沖縄ノート』等の記述に疑問を提起した。
 その後、この疑問を裏付ける実証的な研究が進んでいる。例えば、座間味島の生存者の女性は、生前に「軍命令による自決なら遺族が年金を受け取れると説得され、偽証した」と語っていた。軍命令は集団自決した住民に援護法を適用するために創作されたという証言がある。自決に失敗した人々が赤松隊長の所に押しかけ、治療を受けており、自決命令と住民への治療は矛盾する。梅澤隊長が忠魂碑前に集まっている人々を「解散させよ」と解散命令を出していたという証言もある。もはや軍命令説の根拠は崩れているのである。

 今回の大阪地裁判決は、こうした実証的な研究、当事者の証言を十分踏まえずに下されたものである。沖縄集団自決は、歴史教科書の記述をめぐっても、重大な問題となっている。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20071227
 控訴審では徹底した審理を行ない、適正な判決が出されるよう期待する。
 以下は、関連情報。

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●沖縄集団自決冤罪訴訟を支援する会のサイト

http://blog.zaq.ne.jp/osjes/

 同会代表・南木隆治氏の掲載文から一部引用

 「赤松隊長の所へ自決に失敗した人々が押しかけ、治療を受けている。これが事実です。どうして自決命令を出しておいて、その治療をするのか。また、梅澤隊長が忠魂碑前に集まっている人々を解散させよと「解散命令」を出していたという有力な証言まで出ています。これは結審後、判決までに出た新証言なので、高裁ではこの証言も必ず審理されます。
 軍は、自決に失敗した人々の治療をした。また、自決するなと言う命令を出すという「関与」はした。これは皆「良い関与」をしたのでです。
 それから、日本軍のいないところでは自決は起こっていないと、馬鹿げた意見をこの裁判官は取り上げていますが、米軍や、ソ連軍等の敵軍がいないところでも自決は起こっていません。逆に、日本軍がいても戦闘にならなかったところでは自決は起こっていません。敗戦と共に多数の方が自決されたが、軍は国民に自決せよと命令したのでしょうか。樺太真岡の電信員たちの自決についても、最初は軍命によるとされていました。このことは当裁判にも参考になることです。『鉄の暴風』発刊当時の米軍占領下ではすべて日本軍が悪かったことになっていたのです。」

●産経新聞記者・阿比留瑠比氏のサイト

http://abirur.iza.ne.jp/blog

 阿比留記者は、「軍命令は集団自決した住民に援護法を適用するために創作された」と証言した照屋昇雄氏に独自にインタビューし、取材記録をサイトに掲載している。その部分を引用。

 《私 沖縄タイムスは照屋さんのことを「捏造」証言の元職員と書いたが、沖縄タイムスから取材はあったのか

 照屋氏 とんでもない。私には聞きにきません。あの記事は、どこからか、「照屋さんの話は捏造だと書いた記事がある」と聞いた。その後、いろいろと分かったが、裁判で被告側が出してきた私の証言が捏造だとする証拠文書はどんなものか。職名がなく、伏せられているし、全部庶務係となっている。あんな書類の作り方はないんです。被告が出してきた書類の方が捏造ではないかとの疑問がある。

 私 沖縄タイムスはその後、訂正やお詫びはしたのか

 照屋氏 やりませんよ。新聞は記事でウソを言って頭からやりこめる。私は援護課、社会福祉事務所…と異動しましたが、当時そこに在籍した人に聞けば、私が分からない人なんていないでしょう。私は主任(旧軍人軍属資格審査員)をしていたのだから、知らない人はいない。逆に、沖縄タイムスが、私の話は捏造だという記事で出してきたKの証言が捏造です。彼は高校卒業後、謄写版刷りのアルバイトをしていました。それがね、私たちが極秘で行った問題(※集団自決を軍命令だったことにして援護法適用を申請すること)を耳にしていた、ということがおかしい。局長ほか数名しか知らんのに。

 私 ちょっとその間の経緯を説明してもらえますか

 照屋氏 確か、昭和26年に本土で特措法ができ、27年に南西諸島にもカネを出そうとなった。その処遇規定の中に、取り扱い要綱があり、22項目があった。戦死した者、スパイ嫌疑でやられた者、部隊から脱走したとされたが、実は脱走ではなくて突撃したもの、道案内…。その中で、集団自決という問題が出てきた。また、軍務に服せない16歳未満の取り扱いの問題と。
 渡嘉敷、座間味の集団自決が問題になり、私らはこの人たちを法律の中に適用するかしないかが大変だった。適用範囲にはめ込むのに苦労した。適用するしないの調査が僕の仕事だった。最初は認められなかったが、次第次第に拡大され、責任ある上司の「命令」があれば適用できるとなった。それが問題でね。私も昭和29年か30年ごろ、一週間渡嘉敷に泊まって調査した。
 戦時は島民は究極の人間の心理状態にあった。あんな小さな島を千数百隻の船が囲み、1万2、3000人の住民を3万人の米軍が包囲した。それは精神状態は異常になる。赤松隊長はそれを落ち着けようとして、敵の姿が見えないところに住民を誘導している。
 私は調査で、住民一人ひとりから「(自決の件は)お父さんがやったのか、お母さんが死のうと言ったのか、隊長が命令したのか」といちいち聞いた。沖縄には死んだらお墓で一緒に、という文化があるしね。本当に隊長の命令があったのか尋ねたが、そう答えた人は一人もいない。これは断言するよ。

 私 照屋さんは、赤松隊長は立派な人だと言っていますね

 照屋氏 十字架を背負うというのは、彼の行為のことだと思うよ。実は渡嘉敷の村長は私の友人だった。彼とも話し合い、「隊長が命令したという一言があれば、8000人~9000人の島民が全部、援護金をとれる」ということになった。だから、赤松隊長は神様なんだ。それで村長が赤松隊長から一筆もらった。昭和31年1月15日の閣議に出さないといけないから持ってこいと厚生省からは言われていた。間に合ってよかったねと、村長と二人でお祝いしたよ。

 私 そうした照屋さんの経験を地元紙は取材し、話も聞きにこないと

 照屋氏 (大江氏の沖縄ノートが引用した)沖縄タイムス刊の「鉄の暴風」は、本土に対する「沖縄をほったらかしにして…」という感情もあって、悪いやつらが流言飛語で流したことがもとになったんじゃないか。あの本の著者の一人はサイパン帰りで、サイパンで見た話とミックスしたのではないかと思う。その「鉄の暴風」を盗作して話を大きくした大江氏は、裁判でかけて罰するべきだと思うよ。沖縄タイムスは、自分たちの本(の正当性)を守るために、沖縄県民100万人以上
に、今も誤解を与え続けているのだと思う。》

●産経新聞 平成20年3月29日付

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080329/trl0803290218000-n1.htm
【主張】沖縄集団自決訴訟 論点ぼかした問題判決だ
2008.3.29 02:17

 沖縄戦で旧日本軍の隊長が集団自決を命じたとする大江健三郎氏の著書「沖縄ノート」などの記述をめぐり、元隊長らが出版差し止めなどを求めた訴訟で、大阪地裁は大江氏側の主張をほぼ認め、原告の請求を棄却した。教科書などで誤り伝えられている“日本軍強制”説を追認しかねない残念な判決である。
 この訴訟で争われた最大の論点は、沖縄県の渡嘉敷・座間味両島に駐屯した日本軍の隊長が住民に集団自決を命じたか否かだった。だが、判決はその点をあいまいにしたまま、「集団自決に日本軍が深くかかわったと認められる」「隊長が関与したことは十分に推認できる」などとした。
 そのうえで、「自決命令がただちに事実とは断定できない」としながら、「その(自決命令の)事実については合理的資料や根拠がある」と結論づけた。
 日本軍の関与の有無は、訴訟の大きな争点ではない。軍命令の有無という肝心な論点をぼかした分かりにくい判決といえる。
 訴訟では、軍命令は集団自決した住民の遺族に援護法を適用するために創作された、とする沖縄県の元援護担当者らの証言についても審理された。大阪地裁の判決は元援護担当者の経歴などから、証言の信憑(しんぴょう)性に疑問を示し、「捏造(ねつぞう)(創作)を認めることはできない」と決めつけた。
 しかし、本紙にも証言した元援護担当者は琉球政府の辞令や関係書類をきちんと保管し、経歴に疑問があるとは思われない。これらの証言に対する大阪地裁の判断にも疑問を抱かざるを得ない。
 集団自決が日本軍の「命令」によって行われた、と最初に書いたのは、沖縄タイムス社編「鉄の暴風」(昭和25年、初版は朝日新聞社刊)である。その“軍命令”説が大江氏の「沖縄ノート」などに引用された。その後、作家の曽野綾子氏が渡嘉敷島などを取材してまとめたノンフィクション「ある神話の背景」で、「鉄の暴風」や「沖縄ノート」の記述に疑問を提起し、それらを裏付ける実証的な研究も進んでいる。
 今回の判決は、これらの研究成果もほとんど無視している。
 判決前の今年2月、座間味島で日本軍の隊長が集団自決を戒めたとする元防衛隊員の証言も出てきた。控訴審で、これらの新証言も含めて審理が尽くされ、適正な判断を期待したい。
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学習指導要領に君が代、愛国心

2008-03-29 09:01:37 | 教育
 文部科学省が小中学校の新しい学習指導要領と幼稚園教育要領を官報に告示した。今年2月に指導要領案が公表された際、私は一定の評価をするとともに、改善すべき点を掲げた。全体的に要領案の段階より、改善されていると思われる。
 報道によると、国歌「君が代」につき、従来小学音楽で「いずれの学年においても指導する」となっていたところ、「歌えるよう指導する」と踏み込んだ規定となった。小中学校ともに、全体の指針となる総則において、「伝統と文化を継承し」という記述が「尊重し」に変更された。また「我が国と郷土を愛し」という文言が加わり、愛国心に関することが盛り込まれた。
 新しい指導要領が実施されるのは、小学校が平成23年度、中学校が24年度からである。教育効果が出てくるまでには、3年から5年かかるだろう。
 時間のあるときに、学習指導要領の全文を読んで検討してみたい。
 以下は報道のクリップ。

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●読売新聞 平成20年3月27日付

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080327-OYT1T00837.htm
文科省、新指導要領に「愛国心養成」を追加
(読売新聞 - 03月28日 05:05)

 文部科学省は、約3年の改定作業を経てまとめた小中学校の新学習指導要領を28日付官報で告示する。

 先月15日公表の改定案と比べ、「我が国と郷土を愛し」といった記述が追加されたほか、「君が代」についても「歌えるよう指導する」と明記されるなど、「愛国心」の養成をうたった改正教育基本法を色濃く反映する形となった。

 これらの修正点は、文科相の諮問機関「中央教育審議会」の審議を経ないまま盛り込まれており、なぜ新たな文言が突然加わったのか議論を呼ぶのは必至だ。
 新しい指導要領は小学校では2011年度、中学では12年度から実施される。
 今回の修正の中で目立ったのは、一昨年12月に改正された教育基本法に「我が国と郷土を愛する態度を養う」との表現で愛国心の養成が盛り込まれたことを受け、小中学校ともに全体の指針となる総則に「我が国と郷土を愛し」という文言が加わった点。同じ総則の「伝統と文化を継承し」という記述も「尊重し」に変更され、小学国語に「神話・伝承を読み聞かせる」ことが追加されるなど伝統文化の尊重も強調された。
 君が代も小学音楽で「いずれの学年においても指導する」から「歌えるよう指導する」と修正され、中学社会では自衛隊の国際貢献に言及している。
 先月公表の改定案には、自民党の一部議員から、竹島や尖閣諸島について「我が国固有の領土」と明記されていないとの批判が集まっており、「愛国心を強調することで、そうした批判に配慮した」(自民党中堅)という指摘もある。
 文科省は「修正は中教審の答申の枠の中で行っており、批判を受けるとは考えていない」としている。

●産経新聞 平成20年3月28日付

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080328/edc0803280825002-n1.htm
「君が代」歌えるように 学習指導要領 道徳目標に愛国心
2008.3.28 08:25

 文部科学省は28日付で小中学校の新しい学習指導要領と幼稚園教育要領を官報に告示した。国歌の君が代を「歌えるよう」指導することを指導要領で明記したほか、道徳教育の目標に「愛国心」を加えるなど、今年2月に公表された指導要領案を修正、指導内容をより具体的に示した。
 幼稚園は平成21年度、小学校は23年度、中学は24年度から全面実施される。学力面では「ゆとり教育」を見直し、主要教科を中心に授業時間を約1割増やし、基礎学力の強化を目指す。
 主な修正は、小学校の音楽で「国歌『君が代』は、いずれの学年においても指導すること」としていたのを「-歌えるよう指導する-」と明確化した。一部の教員が卒業、入学式などで国旗、国歌の指導をないがしろにするケースが依然としてあり、是正が期待される。
 また国語の読み聞かせの例示で「昔話や伝説」が「昔話や神話・伝承」と神話などが加わった。
 中学では宗教に関する寛容の態度や教養について規定した改正教育基本法を踏まえ、社会で「政治および宗教に関する教育を行うものとする」と明示した。
 小中学校とも、道徳教育の目標について「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛し」と愛国心について加えた。道徳教材として例示された「先人の生き方」を「先人の伝記」に改めた。
 また小中学校いずれも総則で教育課程の編成の方針に「これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする」と付け加えた。
 教科書改訂を伴う全面実施に先立ち、21年度から先行実施(移行措置)され、理数教科については、台形の面積など追加される内容の多くを指導する。教科書がない道徳、総合学習、特別活動も21年度から先行実施される。
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米・マケイン候補は日本重視

2008-03-28 09:53:56 | 国際関係
 2月15~16日に「米大統領選挙の日本への影響」という拙文を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=995031660c9e4039f9a663fcdaa12ecd
http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=c5e62a59d912de2783b24274d6dba7eb
 そこに、次のようなことを書いた。

 わが国のマスコミは、ヒラリーとオバマの戦いを連日のように報道している。初の女性大統領の誕生か、それとも初の黒人大統領の誕生か、確かに今回の候補戦は大衆の耳目を引く。これらの候補がどのような政策を掲げており、それが実行されるようになった場合、わが国にはどういう影響が予想されるか、それが大事なのだが、そういう報道は少ない。
 ヒラリーは最も親中的で、日本にはやや敵対的ですらある。オバマも親中的だが、日本への関心は低いようで、どういう政策をしようとしているか、まだ明確でない。いずれにしても、民主党大統領になった時は、わが国は、米中の狭間で厳しい立場に立たされるだろう。これに対し、マケインは、台頭する中国への対処を重要課題と位置付けて、日米同盟を重視している。マケインは、日米とオーストラリア、インドの4カ国による「安全保障パートナーシップ」を構築する構想を明らかにしている。また、有力大統領候補の中でただ一人、日本人の拉致事件に触れ、北朝鮮との交渉で弾道ミサイルの問題に加え、拉致事件も考慮に入れると言明している。
 日本人としては、日本を重視し、中国の危険性を知り、拉致問題にも強い関心を持った大統領候補の主張に、もっと注目すべきだろう、と。

 以上のような拙文を書いてから1ヶ月以上たつが、マスコミの多くの報道姿勢は変わっていない。有識者の言論でも、対日政策という点から各候補を論じているものは、少ない。こうした中で、今朝の産経新聞「正論」に、佐々淳行氏がメディア報道の偏りを指摘し、3候補の政策を検討した上で、マケイン候補を支持する意見を載せた。傾聴すべき意見として以下に転載する。

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●産経新聞 平成20年3月28日付

http://sankei.jp.msn.com/world/america/080328/amr0803280309001-n1.htm
【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 マケイン候補の勝利を願う
2008.3.28 03:08

≪偏ったメディア報道≫
 日本のメディアの米国大統領選挙の報道ぶりは明らかに公正さを欠いている。初めから共和党はイラク・ブッシュ失政でダメと決め込み、ヒラリーか、オバマか、初の女性大統領かいや黒人大統領成るかというセンセーショナルな二者択一に新聞もテレビも埋めつくされている。共和党のマケイン候補はフルネームさえ紙面・画面にのらず、まるで泡沫(ほうまつ)候補扱いだ。
 だが本当にそうなのだろうか。筆者はわずか200年と歴史の浅いアメリカ民主主義が、女性又は黒人の大統領をたやすく受け入れる程成熟しているとは思わない。オバマへの最悪の極端な反発もあるかもしれない。
 マケインは英国系WASPの代表、与党共和党の統一候補、祖父も父も海軍大将という名門の白人、ベトナム戦争で空母艦載機パイロットとして参戦し、撃墜され、拷問と虐待に5年半耐えた元海軍少佐の「英雄」であり、2000年大統領選でブッシュを追い上げた有力な下院・上院議員経験者である。71歳の百戦錬磨の政治家、ジョン・シドニー・マケイン候補が本選挙で史上初の女性候補、もしくは黒人候補と対決したとき、アメリカの有権者は果たしてどちらを選ぶだろうか。
 マケインは負けると先入観で決めこんでいて、埒(らち)もない福井県小浜市の“オバマ・フィーバー”の狂態の報道に、あんなに紙面や画面を割いていいのだろうか。

≪3候補の政策評価を≫
 外国の首長選挙ではあるが、中国と北朝鮮からの各種の脅威にさらされている今の日本にとって同盟国アメリカの大統領選挙の結果は、少なくとも向こう4年間の日本の国運を左右しかねない大問題である。核・ミサイル・拉致の一括解決を拒否されて6カ国協議から締め出されて孤立無援の日本にとって、日本の味方になってくれる候補者が米国大統領になることこそ望ましいことだ。
 首相官邸や外務省は内政干渉になるからコメントできないが、マスコミは少なくとも3候補のアジア政策、とくに対日・対中国政策を、日本の国益という観点から分析評価し、国民に誰が一番いいのかその利害得失を解説するのがその任務ではないのだろうか。
 ヒラリー、オバマ両候補の選挙演説をきくと、いずれもアジア政策は中国重視で、日本や日米同盟についての言及はゼロに等しく、いずれが勝っても日米関係は冷え切るだろう。一方ネオコンでもリベラルでもない“マーヴェリック(一匹狼)”の異名をとるマケイン候補の政見は、3候補中ただ一人「日米同盟強化」「日本の国連常任理事会入り支持」「プーチンの覇権主義反対」「強硬な外交介入主義」「人権外交の立場からの拉致問題重視」を主張、さらに共和党でただ一人の「地球環境保護・公害防止論者」である。苛烈な戦争体験をもつ軍人だからこそイラク戦争について現実派の立場をとる。
 今の日本に必要な米国大統領は、このマケイン候補だと思う。100年前日露戦争の際、帝政ロシアの覇権主義的南下政策に反対して、日英同盟の英国と協力して日本の味方をしてくれたセオドア・ルーズベルト大統領の再来となるかもしれないからだ。

≪直言受け入れる度量≫
 セオドア・ルーズベルトが1905年日本を支持して締結した「桂・タフト協定」はブッシュ=ライス=ヒルの対中鮮宥和(ゆうわ)政策により6カ国協議で中国に朝鮮半島の優越的支配を認める「逆桂・タフト協定」状態となっている。マケイン候補の最も尊敬する米国政治家がセオドア・ルーズベルトであることも奇遇である。もし彼が勝てば、アーミテージら共和党の知日・親日派がカムバックし、副大統領、国務・国防両長官、駐日大使など日本重視のホワイトハウス、ペンタゴン(国防総省)の布陣も夢でない。
 1990年1月8日、前内閣安全保障室長だった筆者は、アマコスト駐日大使邸で日米防衛関係の両国高官が出席した席で、マケイン上院外交委員長と日米同盟について激しい議論を交わした。日本の防衛努力の不足を、小柄だが精悍(せいかん)な同議員は厳しく批判し、「日米同盟の破棄を米国議会が決議したらどうする」と日本側に迫った。
 筆者は「私は同盟堅持派だが、米側が破棄通告してきたら直ちにマッカーサー憲法改正、核武装派となる」と応じた。「では私にどうせよというのか」と尋ねる同議員に筆者は乱暴な軍人英語で「口出しは無用」と直言した。驚いたことに激しい気性でなる同議員は「率直な意見だ。ではそうしよう」と筆者の非礼な直言を受け入れた。その度量の広さに感服した筆者は以来、同氏を高く評価しているのである。(さっさ あつゆき)
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北京五輪に参加見直しの動き

2008-03-27 10:21:09 | 国際関係
 オリンピックは、平和とスポーツの祭典である。力と技と美を競う選手の姿は素晴らしい。しかし、この祭典の運営は、政治的駆け引きと特権的利益で汚れている。北京でオリンピックを開催することが決定した時、すぐさま中国で行なうことに疑問の声が上がった。
 私は、現在の中国にはオリンピックを行なう資格はないと思う。共産中国は実質的な一党独裁であり、自由と言論は抑圧され、情報が統制されている。少数民族や法輪功に対する虐待・虐殺が行なわれている。猛烈な軍拡が続けられ、アジアの安定への大きな脅威となっている。前例のないほどの環境破壊が進行し、周辺諸国にまで悪影響を及ぼしている。こうした国でオリンピックを行なうことは、オリンピックの価値を貶めることになる。中国共産党政府がオリンピックを招致したいというのであれば、国際社会は、中国に対して、五輪開催にふさわしい国に変わるように求めるべきだった。それは、中国の民主化・自由化を促進するカードになりえたはずである。

 案の定、チベット暴動への中国政府の弾圧によって、オリンピックへの参加が問われる事態となっている。欧州主要国では、ボイコットや開会式出席の見直しを検討する発言が続いている。フランスのサルコジ大統領は開会式不参加の可能性を示唆した。アメリカのブッシュ大統領は開会式に参加する意向だというが、連邦議会の議員の一部にはオリンピック不参加を求める意見が早くからあり、広がりを見せつつある。世界有数の多国籍企業にとって、オリンピックは巨大なビジネスチャンスだが、そうした企業が国際的な不買運動が広がることをおそれ、対応を協議しているとも伝えられる。
 聖火リレーの走者が各国を継走する。その際、中国政府を批判する人々や亡命チベット人らが抗議行動を行なうだろう。抗議と警備の模様が世界に報道されるにつれ、参加取りやめを求める世論が国際的に広がっていくのではないか。
 今のままで開催すれば、北京での「平和とスポーツの祭典」は、「弾圧と環境破壊の災典」に終わるだろう。
 以下は報道のクリップ。

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●読売新聞 平成20年3月26日付

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080326-OYT1T00655.htm
五輪の政治問題化を牽制、中国副主席が日本メディアと初会見
 【北京=藤野彰】中国の習近平・国家副主席(党政治局常務委員)は26日、北京・人民大会堂で「第2回日中ジャーナリスト交流会議」日本側代表団(田原総一朗座長)と会見し、チベット暴動を受けて今夏の北京五輪を忌避する動きが国際的に広まっていることについて、「五輪は非政治化が原則である。この原則にのっとって成功裏に北京五輪を開催すべきだ」と述べ、北京五輪の政治問題化を強く牽制(けんせい)した。

 習氏は胡錦濤総書記(国家主席)の有力後継候補。昨秋の第17回党大会で政治局常務委員(序列6位)に抜てきされ、先の全国人民代表大会(全人代=国会)で国家副主席に選出されたばかり。中央指導者として日本メディア関係者の会見に応じたのはこれが初めて。
 会見の中で習氏は「我々は北京五輪の成功に自信を持っている。それを成功させることは世界の文明の進歩と五輪の歴史にとって重要な意義がある」と強調。さらに、「(ソウル五輪に次ぐ)アジアでの20年ぶりの五輪開催であり、ぜひ支持をいただきたい」と語り、国際支援を訴えた。
 また、5月上旬に予定されている胡主席の訪日について「歴史的訪問」と位置付けた上で、「中国の元首としては、今世紀初の訪日であり、第17回党大会後初の外国訪問でもある。両国関係を新たな段階へと推し進める重要な訪問になると確信している」と述べ、訪日の成功に強い期待感を表明した。
 一方、台湾の陳水扁政権が提案した、「台湾」名での国連加盟の是非を問う住民投票が不成立となったことに関して、「住民投票の失敗に留意している。『台湾独立』はまったく人心を得られないことが裏付けられた。海峡両岸の同胞がともに努力して平和を維持していきたい」と語り、次期総統に当選した馬英九・前国民党主席が率いる新政権の下で関係改善を目指す考えを示唆した。
(2008年3月26日22時23分 読売新聞)

●産経新聞 平成20年3月26日付

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080326/erp0803261852003-n1.htm
北京五輪の「ボイコット論」、欧州で急速に広がる
2008.3.26 18:54
 【ベルリン=黒沢潤】チベット自治区で弾圧を続ける中国政府に抗議するため、
 ドイツの与党、キリスト教民主同盟(CDU)に所属するポレンツ連邦議会外交委員長は25日、独メディアに対し、「(北京五輪の)ボイコットを排除すべきでない」と強調した。ドイツ政府は公式にはボイコットしないとしているが、シュタインマイヤー外相は22日付の独紙で、独裁者ヒトラーの政権下で行われたベルリン五輪(1936年)に言及した上で「昔とは事情が異なる。テレビで華やかな五輪を放映し、裏では騒乱が続いたままという事態は通用しない」と中国当局を痛烈に批判した。
 ドイツ政府は先週、チベット問題に抗議するため、地球温暖化対策支援の対中交渉を凍結、中国政府に事態の改善を強く求めている。
 フランスでも25日、サルコジ大統領が「あらゆる選択肢を持っている」と語り、五輪開会式のボイコットもあり得るとの考えを示した。仏世論調査機関のCSAが24日公表した国内世論調査では、53%が開会式のボイコットに賛成し、反対(42%)を上回った。サルコジ大統領は同日、中国とダライ・ラマ14世との対話再開に向け、仲介の用意があると呼び掛けている。
英国のミリバンド外相は25日、五輪のボイコットに同調しないと表明したが、チャールズ英皇太子は五輪の開会式に出席しない方針という。皇太子はダライ・ラマの支持者として知られ、今年初めには、チベットの人権問題に取り組む活動家とも面会した。ダライ・ラマの5月訪英の際には、ブラウン首相だけでなく、チャールズ皇太子も会談する予定という。
 このほか、ローマ法王ベネディクト16世も23日、復活祭のミサでチベット問題に言及した。「人間性に対する災いはしばしば無視され、時に故意に隠される」と語り、中国を間接的に批判した。五輪のボイコット問題は28、29の両日、スロベニアで開かれる欧州連合(EU)非公式外相会合でも議題となる見通しだ。

●産経新聞 平成20年3月22日付

http://sankei.jp.msn.com/world/america/080322/amr0803221712009-n1.htm
チベット騒乱で五輪スポンサーにも厳しい判断
2008.3.22 17:12
 【ロサンゼルス=松尾理也】中国西部チベット自治区を発火点にした大規模騒乱は、北京五輪の有力スポンサーにも厳しい判断を迫っている。現在のところ、スポーツと政治は別との立場が強調されているものの、水面下では各社が集まって対応を協議するなどの動きが始まっているもようだ。
 北京五輪には、コカ・コーラやマクドナルド、フォルクスワーゲンといった世界的企業12社が「世界スポンサー」として名を連ねる。中国市場への期待を背景に、この12社は、各社ごとに少なくとも1億ドル(100億円)以上を支払っているとみられる。
 だが、チベット騒乱の拡大で、五輪への関与が不買運動などのマイナス効果につながる可能性が無視できなくなってきた。
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台湾で親中派の総統が誕生2

2008-03-26 12:17:12 | 国際関係
 国民党・馬英九氏の総統当選について、第三の要因は、台湾独立へのアメリカの不支持の影響である。陳総統は台湾化政策を進め、「中華民国」を「台湾」に改名する憲法改正を目指した。中国はこれを「法理上の独立宣言」だとして、反国家分裂法を制定し、台湾武力侵攻を合法化した。中台間の緊張の激化を憂慮したアメリカのブッシュ大統領は、「台湾独立を支持しない」と発言した。
 この発言は、中台の激突を避けたいという思惑と、中国共産党への配慮の表れだろう。アメリカは、北朝鮮の核問題への対応において、中国の同意・協力を得ざるを得ない。アメリカの不支持は、独立志向派の勢いをそいだことだろう。

 第四の要因は、中国共産党のソフト路線の効果である。以前の中国であれば、台湾の独立志向に対して、露骨に圧力をかけた。しかし、今回の総統選挙では、中国共産党は、直接的な発言をせず、台湾人を刺激して反発をかうようなやり方を避けている。その一方、経済的に優遇政策を一貫して行ってきたから、台湾経済の中国への依存度が増している。大陸に仕事を求めて、働きに行っている台湾人も多い。あえて力を誇示しなくとも、台湾の指導部・国民大衆を中台融和路線に招き入れることに成功している。
 胡錦濤政権は、馬氏の当選を歓迎している。民主国家において、民主的な選挙によって、親中路線が取られることには、国際社会は誰も反対し得ない。そういう点で、今回の総統選挙で国民党以上に勝利を手にしたのは、中国の胡錦濤政権だといえるだろう。

 今回の総統選挙では、同時に住民投票も行われた。憲法改正の道は中国の干渉を招き、アメリカの支持を得られないと言う状況で、陳総統は、替わりに住民投票という形で独立路線を追求しようとした。しかし、1月の立法院選挙では国民党が圧勝し、民進党は大敗した。議席の4割を占めていた民進党は4分の1にまで議席を激減させた。
 このたびの住民投票では、国連問題に関する民意が問われた。民進党は、「台湾」名義での国連加盟を提案した。国民党は、正式名称「中華民国」名義での国連復帰を提案した。住民投票の結果は、両案とも投票総数が成立条件に達せず、不成立となった。
 両案不成立の原因は、住民投票の結果がどうであれ、国連への加盟または復帰の道が開かれることはない。それならば、国連問題で中国から圧力をかけられたくないという台湾人の思いがあるのではないか。
 
 台湾は今後、独立の方向に再び進みうるか、それとも中国との一体化の方向に進み続けるか。国民党は、外省人は2~3世の時代となり、新台湾人と本省人の政党に世代交代してきている。今後、党として大きく分裂する可能性は少ないようである。
 一方、民進党は主に4派に分かれており、今回の総統選挙でも、候補者選びの段階からばらばらだった。陳水扁氏以後、誰が中心となって党をまとめていくか、見えてこない。混迷は深いようである。求心力を取り戻して国民党に対抗し、台湾独立の道を牽引するのは、新たな人材の登場がなければ難しいだろう。
 馬氏は、自分の任期中に中国と統一問題は語らないと言っている。しかし、経済的に中台関係がいっそう深まっていけば、実質的に中台の一体化が進行していくだろう。

 急速な経済成長と猛烈な軍拡を続ける中国は、わが国や台湾・韓国にとって、大きな脅威となっている。日・台では、ここ数年、中国への対抗のために、国家意識・民族意識が高揚した。しかし、ここへ来て、国家意識・民族意識よりも、対中融和・経済優先へと大きく流れが変化している。
 その変化の原因の一つは、中国の経済力の巨大化と軍事力の強大化である。日・台・韓の企業は中国への進出を深め、それぞれの経済界は、政府に中国重視の政策を要望している。核兵器・ミサイル・潜水艦等を増殖させている中国人民解放軍に対し、侵攻されるのを避けたいという心理から、媚び諂いの外交が行なわれる。
 もう一つの原因は、アメリカの東アジア政策の転換である。アメリカは、9・11以後、アフガン=イラク戦争の長期化によって、中東を重視する戦略を取り、東アジアでは米軍の配置転換を進めている。また、ブッシュ政権は、中国と融和する政策に切り替えた。このアメリカの政策の転換が、日本・台湾・韓国の国政選挙や政府の政策に大きな影響を与えている。

 わが国では、昨年9月に成立した福田政権が、親中路線を取っている。韓国では、12月に選出された李明博大統領が、経済成長を重視する実利政策を取っている。台湾では、本年1月に立法院で国民党が大勝し、3月に誕生した馬英九総統が、親中的な路線のもと、経済問題に力点をおいている。共通しているのは、中国との緊張を避け、経済的利益の追求を第一としていくという政策である。日・韓の場合は、緊張を避ける対象に北朝鮮が加わる。
 こうした東アジアにおいて、わが国は、どうあるべきか。このたび台湾で立法院・総統とも親中的な国民党が占めたことで、中台戦争・米中激突・日中対決の可能性は低くなった。その反面、平和的手段と民主的な手続きによって、台湾が実質的に中国に併呑されていくというシナリオが、上位にあがってきた。わが国は、今のままでは、第二の台湾になってしまう可能性がある。朝鮮半島も同様である。
 これを中国側の視点で見れば、中国の経済圏が周辺諸国をおおい、中国の核ミサイルが東アジアを圧する。それによってシナ文明=中華文明が東アジアに広がるという展開である。
 これからの10~30年、中国で共産政権が崩壊するのが先か、わが国がシナ化するのが先か、重大な危機の時代に入ったと思う。 
 私見の詳細は、これまでさまざまの拙稿に書いてきたので割愛するが、わが国は、独立主権国家としての根幹を成す憲法を改正し、自主国防力を整え、主体性のある外交政策を取ることが必要であり、それを怠ると、アメリカと中国のはざまで、日本は一個の国家として立つことができなくなる。私はそう考える。(了)

台湾に親中派の総統が誕生1

2008-03-25 18:05:19 | 国際関係
 台湾の総統選挙は、大方の予想通り、共産中国に追従的な国民党の馬英九氏が当選した。国民党は1月の立法院選挙で、単独で3分の2以上の議席を獲得している。ここで総統の座も得たことにより、総統・議会とも国民党という強力な政治体制が実現した。これから総統の打ち出す政策は、議会の支持を得て、強力に推進されるだろう。
 馬氏は、大陸出身の外省人である。しかし、外省人でありながら、台湾で育った「新台湾人」となるべく努めた。馬氏が大衆的な人気を得ていたのに対し、陳水扁総統周辺の金銭疑惑は、民進党に対する幻滅を与えていた。

 馬氏は、中台融和路線を掲げており、民進党などによる台湾独立論に対しては、中台共同市場構想を提示している。馬氏は「三通」、つまり交通・通商・通信の三つの「通」による中台間の直接交流を促進する方針を打ち出している。中国からの観光客受け入れ解禁や中台直行のチャーター航空便の運航拡大等を政策として掲げている。こうした方針・政策がこれから実行されるだろう。
 それは大局的に見れば、中台の一体化の進行である。わが国にとっては、中台の一体化は、安全保障上、重大な脅威となる。台湾の進路選択は、民主的な選挙によるものだから、わが国がどうこう言う範囲ではない。日本自体がこうした状況を踏まえて、国のあり方をどうするかの問題である。

 今回の選挙での国民党の勝因、民進党の敗因は、何か。いろいろあるだろうが、気になる順に挙げてみたい。

 第一の要因は、民進党の陳水扁総統が進めた台湾独立路線の行き詰まりだろう。
 過去の総統選挙では、共産中国との関係で、台湾独立か中台統一かの二項対立に集約されていた。しかし、中国共産党は、独立の意図を持つ指導者とは絶対対話しないという強硬な姿勢を取って、陳総統を追い詰めた。民進党がいろいろと仕掛けても、反中国では民意を結集できなかった。選挙戦の最後の段階でチベット暴動が起こり、中国への警戒心から民進党の支持者が増えるのではないかとも見られたが、チベットの悲劇は、選挙結果には、ほとんど影響がなかったようである。
 
 第二の要因は、中台の経済関係の深化である。中国市場への投資拡大を望む台湾経済界は、台湾独立路線とは距離を置くようになっている。台湾は世界第4位の外貨準備高を誇っているが、貿易黒字の大部分は中国から得ている。中台の経済的な関係は、広く深くなってきている。
 台湾の自立を目指す陳水扁政権下では、中台経済はぎくしゃくし、台湾経済は停滞した。経済の再生を願う有権者は、親中的な国民党を支持したのだろう。台湾人の間で、独立志向よりも、中台経済融和という現実的な路線をよしとする傾向が優勢となっている。その背景にあるのは、経済の停滞や現在及び将来の生活への経済的不安である。独立より経済、誇りより生活という風潮だろう。

 次回に続く。

ギャルポ氏、チベットを語る

2008-03-22 09:22:14 | 国際関係
 今朝の産経新聞は、1面トップにチベット人ペマ・ギャルポ氏の記事を載せた。3面に続く長文である。異例の掲載である。ギャルポ氏は、日本にいるチベットの知識人のうち最も有名な人物で、著書・論文のほかテレビにもよく出演する。ギャルポ氏は、今のチベット、その歴史・課題をどう見ているか。以下転載する。
 このまま出張に出るので、私見は別の機会に記したい。

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●産経新聞 平成20年3月22日付

http://sankei.jp.msn.com/world/china/080321/chn0803212230013-n1.htm
挑発に怨念噴出 チベットの哀しみ ペマ・ギャルポ氏
2008.3.21 22:26

 中国のチベット族居住地域で騒乱が続発している。チベット自治区の区都ラサだけでなく、四川省など近隣の各省に住むチベット族も中国当局とぶつかっている。チベット族は今、なぜ、このような行動に出ているのか。チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世のアジア・太平洋地区担当初代代表を務めたペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学法学部教授は21日、産経新聞に対し、中国共産党の支配下に入ったあとのチベット族の悲惨な境遇を振り返りながら、今回の騒乱に至る経緯などを、説明した。

▼チベット族釈放要求
 今回の騒乱は3月10日から始まった。1959年、ダライ・ラマがインドに亡命することになったチベット決起(動乱)からちょうど49年にあたるこの日、ラサでは、僧侶たちが平和的にデモを行った。それが、死者99人(チベット亡命政府発表)を生む騒乱に拡大した。
 中国の温家宝首相は、ダライ集団が背後で糸を引いた「計画的」な騒乱と主張している。だが、報道された映像をみると、僧侶は素手で店を壊したり、石を投げたりしていた。計画的であれば何らかの武器を持っているはずだ。むしろ当局側の挑発行為があり、民衆が興奮したのが事実だろう。
 3月10日のデモは毎年、中国国内のチベット族、海外のチベット人亡命者で行われている。だが、今年はこれまでのデモと違う点が3つあった。
 昨年10月、ダライ・ラマは米議会から「議会名誉黄金章」を受章した。チベットでは祝賀会が全土で行われたが、この際、多くのチベット族が当局に逮捕された。今回のデモは拘束されているチベット族の釈放を求めることが目的のひとつだった。

▼五輪を政治利用
 今年開催される北京五輪のため、中国政府がチベットを「政治利用」していることに対する抗議の意味も強い。聖火リレーがチョモランマ(英語名エベレスト)を通過するのは、チベットが中国の一部であることを誇示するためだ。チベット人にとっては、それぞれの山に神がいる。山に登られること自体、抵抗がある。五輪のマスコットに使われているのは、チベットの動物であるパンダとチベット・カモシカだ。チベットにおける植民地支配を正当化するために、オリンピックを政治の道具にしている。
 ラサまで伸びる青蔵鉄道の開通により、チベットへの「経済的侵略」が明確になってきたことに対する反発もある。鉄道開通によりコレクターらが文化財である寺院の骨董(こつとう)品や床の石などを買いあさっていく。だから、中国人の店が抗議対象になった。
 チベットは希少金属などの鉱物資源も豊富だ。鉱物資源は青蔵鉄道で運ばれているともいわれている。鉄道は軍事的な目的も大きい。中国はソ連解体時、ミサイルを列車に乗せる技術を入手したといわれている。
 中国政府は五輪開催が近づいてから問題が起きるより、3月10日のタイミングを使って、捕まえるべき人を捕まえようとしたのではないか。そのために、平和的なデモに対して挑発的な行為に出て、騒乱を引き起こしたと考える。
 中国政府は暴動のシーンを発信することで、「仕方なく騒乱に対処するのだ」との印象を世界に与えようとしたのだろう。だがチベットには観光客がいた。IT(情報技術)も発達していた。中国が伝えようとしたことと異なる事実が世界に流れた。

▼幼少時に雰囲気一転
 私は53年6月、現在の四川省の甘孜(ガンズ)チベット自治州で生まれた。
 父はもともとは藩主ということもあって、51年に北京政府と結んだ条約に基づいて、県長にもなった。中国側は私のことを「藩主の子」と呼んでかわいがってくれた。家に毛沢東、劉少奇、ダライ・ラマ、パンチェン・ラマの4人の写真が掲げられていたのを覚えている。人民解放軍の兵士たちも一生懸命、人を助けたり、私もあめ玉をもらったことがある。
 ところが、それがある日、がらりと雰囲気が変わる。子供でも、毛沢東の写真に、傷を付けたりして喜ぶようになった。
 私の村では水道がないので、水を川からくんでくるのが女の子の日課になっていたが、中国軍に届け、乱暴されたことが何回かあって、それがきっかけで摩擦が起きた。そこで村民が立ち上がった。
 それは1957年ごろだったと思う。逃げながらラサまで行った。何度か追っ手の中国軍と戦い、村を出た当初は200人の大きな団体だったが、インドにたどりついたときは20人ぐらいになっていた。後から聞いたら、残ったおばあさん2人と兄2人は、餓死したり、射殺されたらしい。
 人々の話では、一番辛かったのは、人民裁判で、奥さんが旦那(だんな)さんを、子供が親を告発したりしたことだという。人民裁判では、殴ったりしなければならなかった。
 僕の父には、妻が2人いた。つまり私には母が2人いた。年下の母は共産党に非協力的で、騒乱を起こしたうちの1人だ。
 その下の母には、そっくりのいとこがいて、(中国軍は)その人を殺して見せしめにした。下の母を捕まえ、処刑したように見せかけたらしい。
 先代のパンチェン・ラマが亡くなる3カ月前に東京の中国大使館で会った。そのとき、一番辛かったのは刑務所で人としゃべれなかったことだと言った。彼は19年間独房に入れられていた。僕たちと会ったときも言葉がたどたどしかった。
 チベット全土では、家族が全員そろっている人はいないと思う。必ず、誰かが犠牲になっている。

▼住職と檀家の関係
 中国はあれだけ広いのに、北京の時間で国を統一している。チベットと中国は、2時間半から3時間の時差がある。しかし、北京の時間がチベットに適用されているので、チベットではまだ明るいのに、夕食を食べなくてはいけない。朝は真っ暗なのに、朝食を食べなくてはいけない。これが現実で、いかに北京中心の価値観が押しつけられているかということだ。
 チベットの面積は中国全体の940万平方キロメートルのうち、230万平方キロメートル。チベット人居住地域にはチベット自治区とかチベット自治州とか、地図をみると、「自治」という言葉がついている。
 チベットは2100年以上の歴史を持つが、チベット人が一番誇りに思っているのは、吐蕃王朝(7世紀初めから9世紀中ごろ)の時代だ。チベットが中国にかいらい政権をつくっていたこともあった。
 中国とチベットはお互いに、仲良く過ごした時代もある。最も仲が良かったのは元の時代である。それから明、清の時代と続くが、この時代はたとえば、ナポレオンが皇帝になっても、ローマ法王の認知と後押しがなければ国民に対して、正当性をもてないように、中国の歴代皇帝とダライ・ラマもそんな関係に似ていた。檀家(だんか)とお寺の住職(チベット)の関係だった。
 檀家が偉いか、住職が偉いかは時代によって違うが、チベット側からすれば、自分たちの方が聖職で偉いと思っていた。こうした関係は1900年代まで続いた。
 1930年代、チベットには中国の支配が及んでいなかった。49年に中華人民共和国が成立すると、朝鮮戦争のどさくさにまぎれ、人民解放軍が、チベットに入ってきた。

▼決断下せぬ中国
 中国政府は今回のチベット騒乱を押さえ込んで正常に戻ったと言っているが、実際にしているのは、戦車を町に巡回させ、公安当局が疑わしい人物を捕まえることだ。これが世界中に知られれば波紋を呼び、問題となるだろう。チベット族の運動の火山帯は活発であり、今後、どういうきっかけで何が起こるかは予想がつかない。そうならないためにも、中国政府は1日も早くダライ・ラマと真剣に対話すべきだ。
 ダライ・ラマが重視する対話などの穏健路線に対し、チベット側にも不満を持っている人がいるのは事実だ。しかし、最終的にはダライ・ラマに逆らうわけにはいかない。ダライ・ラマの権威は、いまだに健在といえる。
 中国政府はダライ・ラマの悪口を言っているが、もしダライ・ラマに何かがあれば、中国政府は交渉相手がいなくなるということを真剣に考えるべきだ。ダライ・ラマの下で問題を解決できれば、後遺症を残さないソフトランディングが可能だ。
 ただ、中国側との話し合いがうまくいっていないのは、中国指導部の中に完全に強い人がいないためだ。これまでの話し合いの中で、かなり具体的な話はできているが、それを実行するには決断が必要だ。その決断ができないから、話し合いを引き延ばしたりするのではないか。
 もしかすると、中国指導部は現場の状況を把握していないのかもしれない。胡錦濤総書記(国家主席)は昨年秋の中国共産党大会で2期目を迎えたが、彼が力を持てば、チベット情勢は変わるかもしれない。
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集団的自衛権のまとめ

2008-03-21 19:31:31 | 憲法
 集団的自衛権について書いたものをまとめ、私のサイトに掲載しました。連載を一本化するにあたり、加筆修正を行いました。
 読んでみたい方がおられましたら、以下へどうぞ。

■「集団的自衛権は行使すべし」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08n.htm

 なお、目次は以下のようになっています。

 第1章 集団的自衛権の政府解釈はおかしい
 第2章 国連が各国の自衛権を認めている
 第3章 集団的自衛権はどのように成立したか
 第4章 わが国の憲法と集団的自衛権の関係
 第5章 政府解釈は自制的に変化した
 第6章 日中国交回復と専守防衛で一般的禁止へ
 第7章 厳しい国際情勢に直面する日本
 第8章 9・11以後の世界でのわが国の対応
 第9章 試み半ばの具体的検討
 結 び~憲法を改正し、集団的自衛権を主体的に行使しよう

日銀総裁人事の混迷は日本の危機

2008-03-20 09:05:06 | 時事
 日銀総裁が決まらない。総理大臣にリーダーシップや調整能力がなく、民主党は対案もなく反対を繰り返している。国の舵取りで意見が割れている。世界経済はアメリカのサブプライムローンの問題から、大きく後退している。その中で日本だけが投売りされている。日本の政治への期待のなさ、経済の落ち込みを外国の投資家は厳しく評価している。このような状況で、日本経済の要職の一つである日銀の総裁が決まらず空席となった。そのことがまた国際社会での日本の評価を下げる。
 今朝の産経新聞の「主張」(社説に当たる)は「日本がつぶれてしまう」と題しているが、決して大げさでない。
 日銀総裁人事の混迷は、日本の政治経済の危機であり、日本という国家の危機である。国民は国政について真剣に考え、次ぎの国政選挙で、わが国の舵取りがしっかりされるような候補を選び、自滅の道をさけねばならない。
 以下は報道のクリップ。

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●読売新聞 平成20年3月19日付

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080319-OYT1T00656.htm
白川副総裁を総裁代行に指名、決着は4月にずれ込む公算

 日本銀行の福井俊彦総裁は19日、自らの任期が同日に切れ、戦後初の総裁空席になったことを踏まえ、副総裁に就任する白川方明(まさあき)・京大教授(58)を総裁代行に指名した。  福井氏の後任に元大蔵事務次官の田波耕治・国際協力銀行総裁(68)を充てる人事案が、19日の参院本会議で民主党などの反対によって否決されたのを受けた措置だ。政府は総裁について別の案を提示する方針だが、民主党との接点を探る作業は難航が予想され、決着は4月にずれ込む公算が大きくなっている。
 この日の参院本会議では、西村清彦・日銀政策委員会審議委員(54)の副総裁就任案だけが可決された。一方、その後の衆院本会議では、田波、西村両氏の人事案が同意を得た。
 政府はその後の持ち回り閣議で、西村氏と、すでに同意を得ていた白川氏を20日付で副総裁に任命することを決定。日銀法の「副総裁は、総裁が欠員のときはその職務を行う」という規定に基づき、白川氏が総裁代行に指名された。
 福田首相は19日夜、首相官邸で記者団に、「責任を痛感している」と述べ、空席解消を急ぐ姿勢を強調した。ただ、民主党の小沢代表との党首会談については「何度も申し上げている。お返事がないのが現状だ」と語り、実現の見通しがたたないことを明らかにした。
 町村官房長官は19日夕の記者会見で、新たな人事案の提示時期について、「できるだけ空席が長引かないようにしたい」と述べた。白川氏を総裁に充てる可能性は、「副総裁として提示し、同意を得たものを、直ちに総裁としてまたお願いする不見識なことができるか」と否定した。
 政府は税制関連法案の成立を巡る年度末の与野党攻防を控え、月内は新たな案の提示を見合わせる方向だ。ただ、4月前半には日銀金融政策決定会合や先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が予定されており、こうした会議までには決着させたい考えだ。
(2008年3月20日02時04分 読売新聞)

●産経新聞 平成20年3月20日付

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080320/stt0803200337000-n1.htm
【主張】日銀総裁空席 日本がつぶれてしまう 政治混乱の拡大食い止めよ
2008.3.20 03:35

 日本は、政治の無策と鈍さゆえに国難ともいえる事態を招いてしまった。日本銀行総裁が空席という戦後初めての異常な状況を現出させた責任は、福田康夫首相と小沢一郎民主党代表にある。
 「空席」という結果責任から首相は免れない。一連の人事の迷走は統治力に疑問符が付けられた。他方、小沢代表はこの問題を政争の具として利用し続けた。「日本売り」への危機感もみられず、無責任というそしりは免れない。
 両氏は総裁の空席を1日でも短くするよう協議して事態を収拾するのが責務である。
 しかも、この政治の混乱と混迷は日銀人事にとどまらず、道路特定財源問題や揮発油(ガソリン)税の暫定税率の取り扱いなどにも波及する様相だ。そのつけを負うのは国民である。国民の利益を守るための打開策を自民、民主両党に強く求めたい。このままでは国がつぶれてしまう。
 ≪侵された日銀の独立性≫
 総裁不在は経済に悪影響を与えるだけでなく、国際的な信用も失う。なぜなら、日銀は「通貨の番人」として、日本の物価の安定と金融システムの維持に責任を負っているからだ。
 その最高責任者の不在は戦後、例がない異常事態である。しかも、政争の結果、空席となったわけで、海外から政治の介入で日銀の独立性が侵されたと受け止められるのは必至だろう。
 日本経済を取り巻く状況は不安定さを増している。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題で、米国景気には後退懸念が出ている。ドル安も止まらない。
 これに伴う円高は、日本の輸出企業の収益を直撃する。企業業績の悪化は、個人の所得を減らし、消費を冷やそう。
 日銀は当面、白川方明新副総裁が総裁代行として政策委員会の議長を務めることになる。日銀きっての理論派として金融政策に精通しているとはいえ、対外折衝の面での力量は未知数だ。
 4月中旬には先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が予定されている。経済大国としての責務を果たす上からも総裁不在を長期化させてはならない。
 混乱はこれにとどまらない。
 民主党は歳入関連法案の成立を阻む方針で、年度内に成立しなければ揮発油税の暫定税率が4月以降、廃止され、国と地方合わせて2・6兆円の歳入欠陥が生じる。混乱を回避するため、道路特定財源の一般財源化問題も含めた与野党の修正協議も待ったなしだ。
 日銀人事をめぐり、民主党の小沢代表は「福田内閣は機能不全を起こしている」と指摘したというが、混乱をもたらした責任の多くは民主党にある。その認識がないまま機能不全の言葉を使うところに問題の根深さがある。
 ≪有能な人材の登用を≫
 昨年の参院選で与党を過半数割れに追い込んだことをもって、民主党は「新しい民意」を得たと主張する。大連立構想で一時、党内の混乱はあったが、ねじれ現象を最大限利用し、福田内閣を窮地に追い込む戦略をほぼ一貫してとってきた。
 福田内閣支持率の下落傾向が続いている。一方、民主党の政党支持率が急伸したのだろうか。
 党幹部の間には、空白回避に向けて日銀問題を収束させるべきだとの意見もあったものの一部にとどまったという。政局至上主義の空気が党内に蔓延(まんえん)し、異論のある幹部も沈黙しているなら憂慮すべき状況だ。
 ねじれ現象に加え、そのような姿勢の民主党を相手に、福田内閣が政策運営や国会対応で苦慮せざるを得ない面はあるが、政府・与党が一体となって修正協議などに対応できる態勢になっているとはいえまい。日銀人事をめぐる迷走をまた繰り返すのだろうか。
 多数の道路族議員を抱える自民党で、道路財源の法案修正は党内調整にもエネルギーを要する作業となる。課題を実現するため、首相が必要だと判断すれば、有能な人材を官邸や閣内、党執行部に再配置することも決断すべきだ。
 ねじれ現象に向き合って政治の機能不全を脱却し、いかにして国民生活を守るか。そのことこそ、首相と小沢代表が競い合うべきテーマである。
 自ら行動し、指導力を発揮する場面があまりにも少ない。国民の目にはそう映る。
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