ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

食育で日本の心を取り戻そう1

2007-01-31 08:22:34 | 教育
 少し前の事になるが、昨年11月25日、長野県松本文化会館で、「明けゆく世界セミナー2006 in 松本」が行われた。「『食』を通じて"日本の心"を考える」が主題だった。
 食育についての取り組みは、国民的な運動として推進されている。日本の心を取り戻すためにも、食の問題は大切なものの一つである。
 今回のセミナーでは、最初に「ごはんとパン~日本型食生活が見直される理由」と題して、相川りゑ子氏(大妻女子大学短期大学部教授・管理栄養士)が基調講演をした。米を中心とした日本食の献立の素晴らしさについて、詳しい説明がされた。続いて、相川氏に私が加わって、「"食育"から学ぶ日本の心」と題した対談を行った。その後、日本の食文化を踏まえた提言がなされた。
 私が登壇した対談の部分は、来場者参加型の企画だった。来賓の地方議員に自治体での食育への取り組みについて話してもらったり、小学校・中学校の先生や福祉施設で働く人からの現場報告があったり、参加者の質問に相川氏や私が答えたりというトークセッションのような形で進んだ。
 このセミナーでの対談の内容をご紹介したい。以下は要旨を記すものであって、細部は必ずしも正確な文言ではない。その点はご容赦願いたい。掲載は7回に分けて行う予定である。

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【司会】 このコーナーでは「〝食育〟から学ぶ日本の心」をテーマに対談を行っていきたいと思います。
 相川先生は、大学教授でもあり、お母さまでもあり、奥さまでもいらっしゃいます。相川家では食育といったことで、実際にされていることをお聞かせいただけますか。

【相川】 私の家のことですが、食の部分だけは専門家という意識がありますので適当にしたくないと思い、睡眠時間を削ってでも、食の場面には気を配ってきました。
 一番に野菜をどう食べさせようかということを考えてまいりました。お肉とか魚とか卵などはどこでもおいしいものがたくさん食べられますけれども、ややもするとお野菜や海藻は食べ方を上手にしないと、おいしくないということになりますから、これがどう体に力を与えてくれるもので、どんなふうに食べたらいいかということを、いつも作って、食べながら話をしました。
 長女が結婚してから、ときどき電話がかかってきて、「お母さん、あの料理はどうやって作るんだっけ」と言ってくるので、記憶のどこかにとどめてもらったことと、ほっとしています。

【司会】 娘さんは家で毎日大学の講義を聞いていたような状態ですね。細川さん、昨今食育といわれて久しくなりますけれども、感想はいかがでしょうか?

【細川】 戦後わが国は、非常に豊かになり、世界中から食べ物を集めて、好きなものをいつでも食べたいだけ食べられるという世の中になっています。
 ところが、その反面では、食の乱れが起きています。生活習慣病が増え、また、子供たちの心身の健全な発達に問題が起きています。そのほかいろいろな面で食に関する私たちの在り方が崩れてきていると思います。
そういう中で昨年(註 平成17年のこと)の6月に食育基本法という法律ができ、国を挙げて食の乱れを立て直そうという運動を行っています。長野県でも食育推進会議が作られて、計画が練られていると思います。
 日本人の食を立て直さないと、食が原因で多くの国民が病気になるということになってしまいます。実際、医療費が増大して財政を圧迫するという事態になっています。そこで、食育への関心が高くなっているのです。
 わが家は三年前から、朝食を日本食に切り変えました。そうしたところ体の調子もいいですし、自分の体のことを考えて食生活をコントロールするのは、とても大事だと昨今強く感じています。

【司会】 ありがとうございます。対談を進めるに当たりまして、これから先は、今日ご来場の皆さんのご参加・ご協力をお願いします。

 次回に続く。

教育再生会議が提言・要望

2007-01-30 08:53:07 | 教育
 教育の改革は急務である。いじめ自殺、校内暴力、学力低下、引き篭もり、ニート等、問題は山積している。安倍首相は、著書『美しい国へ』で教育に関する所信を公にし、総理に就任するや教育改革を重点課題として打ち出した。その首相の意思を受けて改革のための具体案を検討しているのが、教育再生会議(野依良治座長)である。同会議は、このたび第1次報告を行なった。

●教育再生会議が第1次報告を提出

 教育再生会議のメンバーには、共産党の機関誌『赤旗』の寄稿者、ジェンダーフリーやフェミニズムの信奉者、ゆとり教育導入時の文部事務次官等がおり、議論を収拾できるのか案じられていた。しかし、昨年10月の発足後、個々の委員から、ゆとり教育の見直し、いじめへの真剣な取り組み等について真剣な発言がなされ、私は改革への意欲を感じていた。

 去る1月24日、教育再生会議の第5回総会が開催され、第一次報告「社会総がかりで教育再生を~公教育再生への第一歩~」が安倍首相に提出された。同会議が発足してわずか3ヶ月で報告が出されたことには、積極的な取り組みの表れだと思う。
 報告は、教育再生のための当面の取り組みとして、「7つの提言」を挙げ、「4つの緊急対応」を要望している。「7つの提言」は、教育内容の改革、教員の質向上、教育システムの改革、「社会総がかり」での全国民的な参画に関し、具体的な提案をするものである。「4つの緊急対応」は、いじめ問題対応、教員免許更新制導入、教育委員会制度の抜本改革、学習指導要領の改訂及び学校の責任体制の確立について、対応を求めている。

 安倍首相は、同会議総会の挨拶で、「教育再生は、私の内閣の最重要課題というだけでなく、現在そして将来の日本にとって最も大切な課題であります。今こそ私達が責任を持って教育再生に取り組まなければなりません。今後、この第1次報告の内容の実現に向けて、内閣をあげて取り組んでいくことをお約束します。また緊急対応が必要な問題については、いじめ問題の対応は、現行法でできること、出席停止制度の活用や通知等の見直しを早急に詰め、また法律の改正に関しては、三法(学校教育法、地方教育行政法、教育職員免許法)の改正に向け今通常国会において法案を提出し、教育再生について『待ったなし』であるという強い意志を示していきたい」と述べた。

 教育改革は、まさに「待ったなし」の課題である。今回出された報告の内容には、現行法ですぐできることと、法律の改正を要することがある。
 「4つの緊急対応」のうち、第一の「暴力など反社会的行動をとる子供に対する毅然たる指導のための法令などでできることの断行と、通知などの見直し」は、本年度中つまり3月末までの実施をめざしている。これは、体罰に関する定義の見直しを含むものだ。
 また、緊急対応の第2から第4は、教育三法のすみやかな改正を求めるものである。安倍首相は、これを受けて、25日にはじまった通常国会で教育三法改正の実現に意欲を明らかにしている。私は、この政府の取り組みを支持するとともに、国民の一人として、自分にできることをやっていきたいと思う。

 教育再生会議は、引き続き教育再生への検討を続け、今年5月に第2次報告、12月には最終報告をまとめるという。是非、実効性のある提案を練り上げて打ち出してほしいと思う。

●第1次報告の要旨

 教育再生会議の第1次報告の内容は、首相官邸のサイトに全文が掲載されている。A4で27枚になるが、私は、これからの改革に大いに期待の持てる内容だと思う。教育の再生そしてそれを通じた日本の再建を願う人に、読み、考え、行動していただきたい内容となっている。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/kettei/070124honbun.pdf

 報告内容のあらましをつかむには、産経新聞が要旨として掲載したものが、なかなかよくまとまっている。資料として以下に転載する。私見は、後日述べたい。

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産経新聞1月25日号
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/gakko/070125/gkk070125003.htm

教育再生会議第1次報告の要旨

【第一次報告に当たっての基本的な考え方】
 子供たち一人ひとりが充実した学校生活を送り、自ら夢と希望を持ち、未来に向かって多様な可能性を開花させ、充実した人生を送るために必要な力を身につけてほしい。
学校教育とともに家庭教育や大人社会全体の取り組みを通じて、わが国が永年培ってきた倫理観や規範意識を子供たちが確実に身につけ、しっかりとした学力と人格を磨き、幅広い人間性と創造性、健やかな心身で21世紀の世界に大きく羽ばたいてほしい。
 グローバルな知識基盤社会が到来した。イノベーションを生み出す高度な専門人材や国際的に活躍できるリーダーの養成が急務だ。近未来のわが国と国際社会の情勢を見据え、世界最高水準の教育を達成しなければならない。
 教育再生会議は「教育界」の「悪平等」「形式主義」「閉鎖性・隠蔽(いんぺい)主義」「説明責任のなさ」などについて真剣に議論した。すべての子供に基礎学力と規範意識を身に付ける機会の保障▽多様性を確保し、個に応じ、それぞれの能力を最大限伸ばす教育▽学校や教員が切磋琢磨(せっさたくま)しながら創意工夫する環境-などを目指し、抜本的な改革・改善を実現することが必要と考える。
 家族、地域社会、企業、団体、官庁、メディアなどあらゆる層の人々が、「教育の当事者」との自覚を忘れたことなどが現在の教育荒廃を招いた大きな原因の一つだ。今こそ「社会総がかり」で教育を再生しなければならない。 

【教育再生のための当面の取り組み】
◇7つの提言 
(1)「ゆとり教育」を見直し、学力を向上
 授業時数の10%増加▽薄すぎる教科書の改善(学習指導要領の改定)▽夏休みや放課後を活用した、教員経験者、学生ボランティアらによる補習の実施▽習熟度別指導の拡充▽地域の実情に留意した学校選択制の導入
(2)学校を再生し、安心して学べる規律ある教室にする
 深夜・休日を含めた24時間対応の電話相談などいじめ相談体制の抜本的拡充▽荒れている学校をなくすための予算・人事・教員定数での支援▽出席停止制度の活用▽暴力など反社会的行動を繰り返す子供に対する毅然(きぜん)とした指導ができるよう、昭和20年代の「体罰の範囲等について」など関連する通知を平成18年度中に見直す
(3)すべての子供に規範を教え、社会人としての基本を徹底する
 集団活動、集団生活体験、スポーツなどの積極的活用▽学校での「道徳」の授業時間の確保▽高校での奉仕活動の必修化▽大学の秋季入学の普及促進
(4)あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てる
 社会人経験者や教員養成系学部卒業者以外の大学卒業者の積極的な教員採用▽外国語指導助手経験者ら英語を母国語とする外国人の積極登用▽特別免許制度の積極活用▽公立学校の優れた教員に対する給与・昇進・手当などでの優遇▽悩みを抱える教員のための相談窓口の充実▽保護者、児童・生徒らの意見を反映した教員評価▽指導力不足教員の認定基準の明確化▽教員免許更新制の導入▽改善が図られない指導力不足教員に対する分限制度の有効活用
(5)保護者や地域の信頼に真に応える学校にする
 第三者機関の「教育水準保障機関」(仮称)による厳格な外部評価・監査システムの導入▽副校長、主幹などの管理職の新設▽民間人校長の数値目標の設定などを通じた外部人材の積極登用▽民間人教頭の登用推進
(6)教育委員会のあり方を抜本的に問い直す
 教委での議論や学校での問題の情報公開の徹底▽教育委員長の持ち回り互選をやめ、相応しい人材を専任▽国の研修への新任教育委員の参加義務付け▽外部専門家による危機管理チームの学校への派遣による問題解決や支援を行う▽いじめ実態調査の定期的な実施▽いじめを放置、助長、加担した教員に対する減給などの措置と公表▽地方教育行政体制の再検証▽義務教育に関して、極力、市町村教委、学校に権限を委譲▽極力、市町村教委への人事権を委譲する▽第三者機関による教委の外部評価制度導入 
(7)「社会総がかり」で子供の教育にあたる
 「家庭の日」を活用した多世代交流▽子育て支援窓口の整備▽地域リーダー・教育コーディネーターの活用▽企業の学校への課外授業講師の派遣、子供の就業体験などの積極受け入れ推進▽企業の休暇制度の改善・充実▽有害情報に対する企業の自主規制の強化

◇4つの緊急対応(1は、18年度中に実施。2-4は速やかに国会に提出)
(1)暴力など反社会的行動をとる子供に対する毅然たる指導のための法令などでできることの断行と、通知などの見直し
(2)教育職員免許法の改正
(3)地方教育行政の組織、運営に関する法律の改正
(4)学校教育法の改正(学習指導要の改定、学校の責任体制の確立)
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改正教育基本法の検討8

2007-01-29 08:54:35 | 教育
●教育基本法を早期に再改正すべし

 改正教育基本法には、欠陥があり、早期に再改正するのが望ましい。私は、平成18年4月に新教育基本法の私案を掲載したが、改めてここに再改正の案として提示したい。
 基本的な内容は、平成18年4月16日~5月10日に連載したものと同じである。修正点は、第二条(教育の目標)の6号に食育に関する条文を加えたことである。

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◆教育基本法の再改正のためのほそかわ私案

前 文
 
 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって独自の歴史、伝統、文化を築いてきた。わが国近代の発展は、教育の振興によるところが大きく、敗戦後の復興と成長もまた、国を担う人材の育成に努めた成果である。
 しかし、家庭、社会、世界の変化により、今日、わが国の教育は新たな課題に直面している。
 我々は、わが国のさらなる発展とともに、世界の平和と人類の福祉に貢献することを願い、自他の敬愛に基づく公共の精神を尊び、多様な文化の共存に努め、自然と文明の調和を図る国民の育成を期するとともに、歴史と伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 我々は、この教育は、家庭、学校、社会、国家を通じて実現されるべきものと認識し、わが国の未来を切り拓く教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、共同体のかかわりの中で各個人に内在する可能性を開花させ、心身ともに健康な国民を育成するとともに、その個人が属する様々の社会の維持及び発展に寄与し、家庭、社会、国家、ひいては世界に貢献する日本人の育成を図ることを、目的とする。

(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
1 知育、徳育、体育を調和をもって施し、幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
2 個人に内在する価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
3 家庭において、親子、夫婦等の家族の敬愛、男女の協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
4 我が国の伝統と文化を尊重し、愛国心を涵養するとともに、他国を理解し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
5 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
6 食に関する教育を、生きる上での基本であり、知育、徳育、体育の基礎となるべきものとして推進し、子供を健やかに成長せしめ、また国民の健康が増進すること。

(教育の方針)
第三条 教育の目標の達成は、あらゆる機会、あらゆる場所で追及されなければならない。
2 国民は、ひとしく教育の目標達成をめざし、大人及び親として、相互に人格を成長、発展させることに努め、次世代の育成に貢献するものとする。
3 男女は、互いにその特性を生かし、相互に協力し合って家庭、社会、国家を共に担う責務があることを、教育上重視するものとする。

(生涯学習の理念)
第四条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

(教育の機会均等)
第五条 すべて国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける機会が与えられ、人種、信条、性別または社会的身分によって、教育上差別されない。ただし、これは必要な区別を排除するものではない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者への奨学の措置を講じなければならない。

(家庭教育)
第六条 教育の原点は家庭にあり、親は子の教育について第一義的責任を有する。父母その他の保護者は、人生最初の教師であることを自覚し、自らが保護する子供に、しつけを行い、生活のために必要な習慣を身に付けさせ、自立心を育成し、心身の調和の取れた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家族の絆を育成及び強化し、家庭教育の充実を図るため適切な支援を行う責務を有する。
3 国及び地方公共団体は、国民の家庭の形成と家庭教育を支援するため、親となり、子育てをするための学問及び教育を振興することに努めるものとする。

(幼児教育)
第七条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
2 幼児教育は、家庭との緊密な連携を図り、これを助け、かつ補完するものでなければならない。

(義務教育)
第八条 国民は、教育の目的を達成するため、国民一般に共通する基礎教育としての普通教育を、ひとしく受ける権利を有する。
2 国民は、その保護する子供に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
3 国は、前項に定める義務教育に関する権限と責任を有する。
4 国または地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は徴収しない。

(学校教育)
第九条 学校教育は、教育の目的を実現するための中心的な機能を有する。
2 国及び地方公共団体は、学童、生徒、学生の健やかな成長に資する良好な環境の整備、振興に努めなければならない。
3 学校における教育活動は、公的な性格をもつものであって、学校は、国または地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
4 国は、普通教育を行なうため、初等及び中等教育を整備する。また、普通教育の成果の上に、個別的部分的な教育を施す専門教育及び職業教育の整備に努めるものとする。

(家庭、学校、地域の連携と協力)
第十条 家庭、学校及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の連携と協力を促し、教育の目的達成と教育環境の整備を図るよう努めるものとする。

(初等中等教育)
第十一条 初等中等教育は、学校教育の基礎をなすものであり、児童、生徒の発達に応じて、段階的に教育の目的達成をめざすものとする。
2 国は、初等中等教育について全国的に一定水準を確保する責務を有し、内容その他の基本的な事項を定めるとともに、その達成状況の評価を行う。
3 地方公共団体は、国の定めた初等中等教育に関する施策を確実に遂行するものとし、更に地域の特性に応じ、独自の基準の制定その他の独自の施策を立案実行することができる。

(高等教育)
第十二条 高等教育は、高度で専門的な知識と技術を備え、勤労と責任を重んじ、自主的な精神にみちた人材の育成を図ることを目的とする。
2 大学は最高学府として、真理の探究を通じて、新たな価値を生み出し、学術の進展や我が国及び国際社会の発展に貢献する人材を養成するための教育及び研究の機関とする。

(職業教育)
第十三条 国及び地方公共団体は、国民が個性と能力に応じ、職業に関する知識と技能を身につけることを期し、職業教育の振興に努めるものとする。

(私学振興)
第十四条 私立学校の有する公的な性格及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

(社会教育)
第十五条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供、情報通信機構の整備その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

(公民教育)
第十六条 公民教育は、国民が国家社会の形成員として、公私の区別をわきまえ、積極的に国政に参加し、また公共の利益の追求に取り組むことを目的として行われなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

(宗教教育)
第十七条 宗教的情操の涵養は、道徳の根底を支え人格形成の基盤となるものであることにかんがみ、教育上重視するものとする。
2 宗教に関する教育は、宗教への理解と寛容の態度を養うことが重視されなければならない。
3 国及び地方公共団体が設置する学校においては、特定宗教の信仰に導き、またはこれに反対するための教育を行ってはならない。

(環境教育)
第十八条 日本と地球の環境を保全するため、あらゆる段階の教育において、自然を尊び、自然との共生や一体感を育んできた日本人の伝統と文化の維持、継承を図るものとする。

(教員)
第十九条 法律に定める学校の教員は、法令に従い、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

(教育行政)
第二十条 教育行政は、国民全体に責任を負い、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるものとする。
2 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られるよう、地方公共団体との適切な役割分担を行い、これを監督する権限を有する。
3 地方公共団体は、国との緊密な連携を図り、区域内の教育に関する施策を策定し、これを実施する権限と責任を有する。

(教育振興基本計画)
第二十一条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

(補則)
第二十二条 この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。
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 各条項の説明は、平成18年4月~5月に連載した際に書いたので、ここでは重複を避けるため割愛する。私のサイトには、説明文も掲載している。以下のページの四にある。ご関心のある方は、ご参照願いたい。内容は、改正教育基本法の成立に伴い、若干修正を加えてある。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02e.htm
(了)

関連掲示
・拙稿「戦後教育を呪縛してきた教育基本法~その弊害と改正」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02b.htm
 このたびの連載をまとめ、一部増補したもの。

改正教育基本法の検討7

2007-01-27 07:00:57 | 教育
●この教育基本法には欠陥がある(続き)

 今回の改正で、第十条に、家庭教育の条文が新設されたのは、前進だった。父母その他の保護者が子供の教育について持つ「責任」が明記されている。「生活のために必要な習慣を身に付けさせ、」という文言は、しつけを基本とする基本的な生活習慣の習得を意味するものだろう。この点は、評価できる。

 第十一条に、幼児期の教育について盛られたのも良かった。ただし、問題点がある。「国と地方公共団体は幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備、振興」という文言は、「男女共同参画社会基本法」に引き寄せて理解すれば、フェミニズムによる曲解を許すと懸念される。すべての女性を労働者とするための保育所の増設、超長時間保育の拡大などのフェミニズム行政の根拠とされれば、他の教育改革はすべて基礎から崩れ去るおそれがある。

 第十五条は、旧法の第一項に「宗教に関する一般的教養」という文言を加筆した。第二項は旧法と同じである。多くの国民が求めていた「宗教的情操の涵養(かんよう)」は、盛り込まれていない。神道・仏教・キリスト教などさまざまな宗教について、特定の宗教宗派に偏らずに教育し、宗教的情操を養うことは可能なことである。
 創価学会=公明党は「宗派的な教育でない宗教教育はあり得ない」と反対したが、その反対は、むしろ自団体の活動の利益を守り、また追及するためではないかと疑われる。

 第十六条は、教育は「不当な支配に服することなく、」という文言が残った。この条文は、旧法第10条にあったもので、日教組・全教が国の関与を排除する根拠としてきた条文である。この文言がそのまま存続するので、教職員組合のイデオロギー的・政治的な活動を許すだろう。それを避けるには、教育についての行政責任を明記する必要があったのだが、この点は明記されていない。

 また、改正教育基本法には、食育に関する規定がない。平成17年7月に施行した食育基本法は、前文にて、食育を「『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」こととしている。そして、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける」とし、「家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいく」と書いている。
 それほど、国として食育を重視するのであれば、教育基本法に食育がまったく盛られていないことも、欠陥だと思う。教育に関わる教育基本法と食育基本法の間に、連携をつけるべきだろう。

 以上、改正教育基本法は、部分的には前進があるけれども、全体を貫く理念・方針がはっきりしない。国家百年の計というにふさわしい大計のないままつくられたものと、言わざるを得ない。問題山積の教育の改革に取り組むにあたり、この新法からどれだけ実効性を引き出せるか、疑問が残る。

●残された問題点

 教育基本法の改正において、特に「愛国心」が明記されなかったこと、宗教的情操の涵養が盛り込まれなかったこと、教育に対する「不当な支配」の文言の修正がされなかったことの3点は、重大な欠陥である。今回の改正は、こうした欠陥を持ったままの取り敢えずの改正であり、連立与党の自民党・公明党による政治的な妥協と折衷の産物だと私は思う。
 また、教育勅語との関係がある。旧教育基本法の制定時には、教育勅語の存在が前提とされていた。しかし、制定後、教育勅語はGHQの意思により、国会で排除・失効の決議がされた。そのため、旧教育基本法のもとでの教育は、教育の根本目的、道徳教育の理念を欠いたものとなった。
 今回の教育基本法の改正においては、国会で、教育基本法と教育勅語の関係や排除・失効の決議の法的有効性について、ほとんど議論されていない。教育勅語の見直しや復権はなされていない。それゆえ、新法のもとでも、道徳教育は、大きくは改善されないだろう。この点が、今回の改正における最も大きな欠陥である。新法は、伝統の尊重、公共の精神、国を愛する態度等を盛り込んではいるが、それらを束ねる理念を欠いている。その理念は、教育勅語の復権なくして確立されないものである。

 それゆえ、占領下に定められた教育基本法が、59年ぶりに改正された意義は、大きいものの、私の評価は、ボーダーラインぎりぎりの合格点というところである。今回の改正の成果を踏まえ、さらに早期に再改正をすべきものと思う。
 憲法改正が先に実現すれば、新憲法のもとでの再改正となるだろう。その場合、今回の改正教育基本法は、暫定的な性格のものだったことが明らかになるだろう。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「教育勅語を復権しよう」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02c.htm

改正教育基本法の検討6

2007-01-26 09:36:50 | 教育
●この教育基本法には欠陥がある

 改正教育基本法は、旧教育基本法に比べて、どこが改正され、どこに問題を残したか。主な点を検討したい。

 旧教育基本法は、わが国の教育の専門家による教育刷新委員会が原案をつくったが、帝国議会に上程される直前に、GHQのCIE(民間情報教育局)の指示で、法案の前文から「伝統を尊重し」という文言が削除された。また「宗教的情操の涵養」という部分も削除された。
 出来上がった旧教育基本法は、憲法順守が謳われ、GHQ製の押しつけ憲法の「精神」にのっとった教育を行うものだった。「人格の完成」「機会均等」などの教育理念が打ち出され、「個人の尊厳」や「真理と平和の希求」が盛られる一方、愛国心、公共心、伝統の尊重などが欠け落ち、自国の歴史や伝統を重んじ、国の発展をめざすということが抜けていた。「民主」「平和」「個人」などの用語があるのに対し、「日本人」「民族」「国民」「歴史」「伝統」などの用語自体が使われていなかった。わが国の青少年をどういう「日本国民」に育てるか、という目標像がなかった。むしろ、日本人が日本民族としての自覚を持てず、歴史と伝統を受け継げないようにする内容となっていた。

 「宗教教育」についても、宗教的な情操教育を大切にするという姿勢はなく、憲法第20条3項とともに、公立学校での宗教教育を制限する狙いがあった。旧教育基本法全体が、日本人に自国の歴史と伝統を伝えないような内容となっていたが、その一環として、日本人の心の中核にある宗教的情操を弱め、次世代に伝わらないようにする意図があったと見られる。
 また、教育は「不当な支配に服することなく、」という文言が入っていた。これは、国家による教育が、軍国主義者や超国家主義者によって支配されないようにするというGHQの意思の表現である。この条文は、日教組が教育現場への国の関与を排除するための根拠としてきた。学校行事における日の丸掲揚、君が代斉唱等に反対するために利用されてきた。

 今回の教育基本法の改正で、上記の問題点の一部は、改善された。しかし、重要な部分の改善はされないままに終わった。

 まず、前文に「公共の精神を尊ぶ」が入った。「公」を忘れ、「私」に偏りすぎた戦後教育の理念を一定程度、修正するものとなっている。また「伝統の継承」が入ったのも、前進である。自国の伝統を尊重するという当たり前のことが、ようやく基本法に盛られた。
 その反面、「日本国憲法の精神にのっとり」の文言は残っている。GHQ製の押しつけ憲法の「精神」にのっとった教育という根本は、変わっていない。

 第二条の5号に、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」と盛られた。公明党がかたくなに抵抗したため、「愛国心」という言葉は使用されなかった。また、「愛国心」を用いない場合、「態度」という言葉を「心」に直すべきだという意見が出された。
 当時、内閣府の世論調査によると、愛国心教育は「必要」という人が80.8%もあった。不必要が10.4%、不明が8.8%だった。国民の8割が望んでいるのに、「国を愛する心」が盛り込まれなかったのは、異常である。その一方、「他国を尊重し」と盛り込むのは、自国の国益より他国の国益を尊重することになりかねないと反対があったが、そのまま条文となった。

 次回に続く。

改正教育基本法の検討5

2007-01-25 10:50:22 | 教育
●自公案がそのまま法律に

 結局、教育基本法の自公案は、一字一句修正されずに、平成18年11月16日、衆議院本会議で採決された。3点に絞った修正要求、民主党の対案については、十分な議論のされぬまま、与党の単独採決によって、自公案が可決された。続いて参議院では12月15日に、採決が行われ、可決された。
 改正教育基本法は、このようにして成立した。内容は、以下のようになっている。私見は後日述べる。

――――――――――――――――――――――――――――――
教育基本法(平成18年法律第120号)

教育基本法(昭和22年法律第25号)の全部を改正する。

目次
前文
第一章 教育の目的及び理念(第1条―第4条)
第二章 教育の実施に関する基本(第5条―第15条)
第三章 教育行政(第16条・第17条)
第四章 法令の制定(第18条)
附則

 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

第一章 教育の目的及び理念

(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
1 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
2 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
3 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
4 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
5 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

(生涯学習の理念)
第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

第二章 教育の実施に関する基本

(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

(学校教育)
第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

(大学)
第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

(私立学校)
第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

(教員)
第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

(家庭教育)
第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(幼児期の教育)
第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

(社会教育)
第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

(政治教育)
第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

(宗教教育)
第十五条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。


第三章 教育行政

(教育行政)
第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

(教育振興基本計画)
第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

第四章 法令の制定

第十八条 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

附則

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。

(社会教育等の一部改正)
2 (略 関連法における「教育基本法」は改正教育基本法を意味すること)
3 (略 関連法における対照条項の変更に関すること)
――――――――――――――――――――――――――――――

 次回に続く。

改正教育基本法の検討4

2007-01-24 10:07:27 | 教育
●教育基本法改正の経緯

 旧教育基本法は、占領下に作られ、戦後教育を呪縛してきた。同法が制定された後、国会で教育勅語が排除・失効とされ、わが国の教育は、理念や方針に根本的な問題を抱えたまま、行われてきた。
 戦後50年となる平成7年ごろから、教育に関する問題が次々に吹き出るようになった。いじめ、不登校、学級崩壊、対教師暴力、学力低下、援助交際という名の少女売春、麻薬服用の低年齢化、少年による凶悪犯罪等々、事態はもはや猶予を許さないところに至った。
 このまま進めば、日本は亡国に至るという危機感が強まり、教育基本法の見直しを図る議論が高まったのは、平成14年ころからである。そして、ようやく平成18年12月、制定後、59年ぶりに改正が実現した。

 立案・審議の過程には、大いに問題があった。平成18年4月、教育基本法の改正が国会で審議されようとする段階に入る前、自公連立与党は、同法の改正に関し、3年間にわたって、秘密会議で協議していた。議事録も資料も公開しなかった。与党検討会(大森理森会長)は、平成18年4月の最終報告段階になっても条文案を公表せず、要旨だけしか発表しなかった。それに対する国民の批判が高まり、ようやくその内容が、報道された。
 その時報道された与党案が結局、そのまま法律となった。自公の関係者は、ごく一部の者の話し合いで案をつくり、それを一気に成立させてしまおうという目論見だったのだろう。彼らは、デモクラシーを保障する「公開の討論」という根本原則を無視していた。これは、従来の自民党にはなかった姿勢である。個人独裁的・中央集権的な体質を持つ公明党=創価学会の手法が、自民党の政治手法に相当影響しているのではないかと懸念される。

 自民党は、自らの腐敗・堕落のため、政権を自力では保ちえなくなった。政権に固執する自民党は、公明党=創価学会との関係を深め、彼らの協力なくして選挙を戦えなくなっている。
 平成17年、小泉政権のもとで行われた9・11衆議院選挙では、与党が歴史的な大勝をしたが、これは自民党が公明党と一体化を深めた結果である。選挙後は、ますます創価学会の意向に沿うことなしに、自民党は、政権維持・政策実現ができなくなっている。教育基本法の改正は、こうした状態において、国会で審議されたのである。

●修正の要望と対案は無視された

 国会での審議が始まると、教育基本法改正促進委員会(超党派改正議連・亀井郁夫委員長)、「日本の教育改革」有識者懇談会(民間臨調・西沢潤一会長)、日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長)などが、与党に修正要求を出した。
 与党案とは別の改正案も準備されていたが、与党案の全般的な修正は難しいという判断のもと、3点に搾って修正要求が出された。「国を愛する態度を養う」と表現した与党案について「態度」を「心」に変えること、与党案に盛られていない「宗教的情操の涵養(かんよう)」を明記すること、教科書検定訴訟や国旗国歌反対運動の根拠とされてきた旧教育基本法の「教育は、不当な支配に服することなく」という文言は主語を「教育」から「教育行政」に改めること。これらの3点である。
 私も改正私案を公表していたが、3点に絞った修正要求を、最低限の要求として支持した。

 一方、民主党は、独自の対案を提出した。民主党案は、愛国心に関しては、「日本を愛する心を涵養」という文言を前文に入れていた。宗教的情操の涵養に関しては、「宗教的感性の涵養」という文言を入れた。また、教育行政に関しては、「教育は、不当な支配に服することなく、」について、その文言を用いず、独自の条文案を提示した。その限りにおいて、与党案の持つ欠陥を正す内容となっていた。保守系の学者・有識者の中には、与党案より優れていると評価し、与党に対し、民主党案をそっくり受け入れることを求める人もいた。
 しかし、私は、異なる考えを持っていた。民主党は、戦後教育を大きくゆがめてきた元凶ともいえる日教組を、支持団体の一つに持っている。日教組を基盤とした議員もいる。民主党の教育政策は日教組の活動を容認し、日教組は民主党の教育政策を支持するという関係にある。民主党は、教育基本法の改正案には優れた部分があったとしても、日教組を批判して、日本の教育を改革しようと意思は、まったく感じられない。日教組の支持を受けている政党が、歴史教育の偏向、道徳教育の欠落、過激な性教育の横行を是正できるはずがない。それゆえ、民主党の改正案は、単なる国会戦術にすぎないものだと私は疑ったわけである。現在もその考えは変わらない。

 次回に続く。

改正教育基本法の検討3

2007-01-23 08:49:27 | 教育
●旧教育基本法の問題点(続き)

 こうした前文に続いて、第一条に「教育の目的」が規定されていた。すなわち、「教育は人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とある。
 ここでは、教育の目的として「人格の完成」と「国民の育成」が掲げられている。これはまっとうなことである。しかし、日本人が日本民族としての自覚をもち、歴史と伝統を受け継ぐという観念が、そこにはなかった。

 旧教育基本法には、日本人に日本人が日本人としての誇りや民族意識を持ち、自国の歴史と伝統を伝えることが期待されていなかったのである。むしろ伝えないように制約されていたのである。この点で、旧教育基本法は、その源にある日本国憲法と全く同じく、占領政策推進法としての性格を明らかにしている。日本国憲法は、戦争の贖罪意識を色濃くし、自国を守る力を否定し、国民に国防の義務をなくし、日本人が自分の国を自ら守るという意識をもたないように制約をかけている。
 この憲法―教育基本法の下では、「個人の尊厳」を重んじるとは、個人の権利の主張、私利私欲の追及にすぎず、「真理と平和の希求」は、戦勝国に与えられた規範への従属と、占領国の力への依存であるにすぎない。「普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す」というものの、その「文化」は日本の歴史と伝統に基づくものとは、考えられていない。それもそのはず。戦勝国が持ち込み、外から移植しようとしている外国の文化が前提となっているからである。
 すなわち、戦勝国によって、押し付けられた憲法の「精神」を、日本人の青少年に吹き込んで、洗脳するための法律が、旧教育基本法だったのである。

 第二条以下では、教育の方針、教育の機会均等、義務教育、男女共学、学校教育、社会教育、政治教育、宗教教育、教育行政などを定めていたが、これらは上記を前提として定められたものである。そのなかで、重要なのは、宗教教育に関する問題である。
 「宗教教育」については、第九条に規定されていた。先に日本側の原案には「宗教的情操の涵養」なる文言があったが、GHQによって削除されたと述べた。そのことに現れているように、旧教育基本法には、宗教的な情操教育を大切にするという姿勢はなかった。むしろ憲法第20条3項とともに、旧教育基本法第九条2項は、公立学校での宗教教育を制限するものだった。
 マッカーサーは、憲法―教育基本法の施行の前に、戦前の日本の神道を戦勝国にとって危険なものと見て、国家神道廃止令を出した。これに過剰に反応した日本人もいて、日本人の宗教的情感に根ざした教育を教育現場から遠ざけることになってしまった。さらに近年は、憲法と教育基本法の宗教関係の条文を極端に拡大解釈し、あらゆる宗教的な文化・習慣までを否定しようとする傾向が現れている。
 しかし、欧米では今日も、公立学校で、キリスト教に基づく道徳教育がされている。実際、道徳教育は、宗教や伝統文化への理解なしには成り立たない点がある。教育において、自国の精神文化を教えなければ、その国民は自国の精神を失って行くことになる。そして、それと同時に、他人への思いやりや、社会に奉仕する心など、人間として大切な要素を失って行くことにもなってしまう。
 この項目の前半部で、旧教育基本法は、日本人が自国の歴史と伝統を伝えないような内容となっていたことを述べた。その一環として、日本人の心の中核にある宗教的情操を弱め、次世代に伝わらないようにしようとする意図があったと見られるのである。

 旧教育基本法に盛られた占領者の意図が、わが国の教育現場で浸透したのは、日教組の活動による。旧教育基本法は、第10条1項に、教育は「不当な支配に服することなく、」という文言が入っていた。これは、国家による教育が、軍国主義者や超国家主義者によって支配されないようにするというGHQの意思の表現である。
 日教組は、この条文を、教育現場への国の関与を排除するための根拠としてきた。学校行事における日の丸掲揚、君が代斉唱等に反対するために利用してきた。その点では、第十条1項こそ、旧教育基本法にこめられた意図を、日教組の教師たちが学校で青少年に浸透させる活動を可能にしてきた極めて有害な条文だったのである。

 次回に続く。

改正教育基本法の検討2

2007-01-22 09:35:51 | 教育
●旧教育基本法の成立事情

 次に、旧教育基本法の成立過程を振り返ってみたい。
 日本国憲法はGHQによって作られ、銃砲の下でわが国に押し付けられた憲法である。この憲法は昭和21年11月3日に公布された。そして22年5月3日に施行されるに先立って、同年の3月31日に旧教育基本法が施行された。

 旧教育基本法は、占領下の日本で、当時のわが国の教育の専門家による教育刷新委員会が原案をつくった。ところが帝国議会に上程される直前に、GHQ(連合国軍総司令部)のCIE(民間情報教育局)の指示により、法案の前文から「伝統を尊重し」という文言が削除された。また「宗教的情操の涵養」という部分も削除された。この変更は重要である。こうして、旧教育基本法は、GHQの情報管理・言論統制の中で成立したのである。
 成立した旧教育基本法には憲法順守がうたわれ、「人格の完成」「機会均等」などの教育理念が盛り込まれる一方、愛国心、公共心、伝統の尊重などが欠け落ちていた。わが国の青少年をどういう「日本国民」に育てるか、という目標像がなかったのである。
 旧教育基本法は、まさにGHQ製の憲法に基づく教育を行うための法律として生み出された。日本国憲法は、占領基本法という性格を持っているが、旧教育基本法は、その憲法の下での占領教育法というべきものだった。それは、占領後、行われてきた日本弱体化のための一連の占領教育政策を完成し、固定するものだった。

 旧教育基本法の欠陥を、さらに決定的にしたのは、教育勅語が廃止されたことである。教育勅語は、明治以来、わが国の教育の理念・目標を示してきたものだった。それはまた日本の道徳教育の根本を示すものでもあった。教育勅語には、親孝行、兄弟愛、夫婦愛、公共心、愛国心などの道徳の基準が示されていた。旧教育基本法の日本側の立法者は、旧教育基本法を、教育勅語と並立し、これを補完するものと考えていた。もしそのまま教育勅語が存続されていれば、旧教育基本法の欠陥は教育勅語によって補われていただろう。しかし、戦勝国はそう甘くはなかった。

 旧教育基本法が昭和22年3月に施行された1年3ヵ月後、23年6月に教育勅語は廃止を余儀なくされた。GHQの口頭命令によって、国会が廃止・失効を決議した。このことによって、戦後教育には決定的な欠陥が生れた。わが国の教育を再建するには、教育基本法の改正だけでなく、教育勅語の復権が必要である。

●旧教育基本法の問題点

 次に、旧教育基本法は、どういう内容のものだったかを確認したい。以下に全文が掲載されている。
http://www.houko.com/00/01/S22/025.HTM

 旧教育基本法は、前文と11条の条文による短い法律だった。この法律が、約60年間にわたり、わが国の戦後教育を支配してきた。

 はじめに、前文は次のような文章だった。
 「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」
 この前文は、GHQ製が押し付けた憲法と教育基本法が一つの体系をなしていたことを示している。前文によると、日本国憲法は「民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献」するという理想を掲げている。そしてその理想を実現するには、教育の力が必要である。だから、教育基本法によって、「日本国憲法の精神」に則った「教育の目的」を定めて、戦後日本の教育の基本を確立しようとしたことがわかる。

 問題は、それがどういう教育だったかということである。それは前文の中間部にある。すなわち、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育」だとされる。
 「個人の尊厳」や「真理と平和の希求」は大切なことである。それにはおそらく誰も異存はないだろう。しかし、ここには重要なことが欠けていた。自国の歴史や伝統を重んじ、国の発展をめざすということである。「民主」「平和」「個人」などの用語がある一方、「日本人」「民族」「国民」「歴史」「伝統」などの用語がなかったのである。

関連掲示
・拙稿「教育勅語を復権しよう」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02c.htm

改正教育基本法の検討1

2007-01-20 08:43:17 | 教育
 日本は今日、政治・経済・社会等、あらゆる分野で深刻な問題を抱えている。最も危機的なものの一つが、教育である。その教育の改革のために、教育基本法が改正された。これからの教育改革は、改正教育基本法のもとで行われる。
 旧教育基本法は、どういう経緯で作られ、どのような弊害があったのか。そして、新たな教育基本法は、どういう点を改正したのか。改正教育基本法が持っている欠陥とはなにか。これらについて検討してみたい。

●教育の目的と戦後教育の欠陥

 教育の目的とは人格形成であり、その国を担う次世代の国民を育てることにある。そのためには、知育・体育とともに、徳育が必要である。
 ところが、わが国の戦後教育では、道徳教育が、ほとんど行われてこなかった。家庭では、しつけに始まり社会の規範がきちんと教えられていない。学校では、人としてどう生きるべきかという一番大切なことを教えていない。
 青少年が、家族の一員として、社会の一員として、国民の一人として、人類の一人として、どういう人間になるべきか、ということを、十分に教えてこなかったのである。これは、教育のあり方が根本的に違っているというほかはない。

 どうして、こういうことになっているのだろうか。それは、大東亜戦争の敗北と戦勝国による日本弱体化政策の影響である。戦勝国は、日本人を精神的に骨抜きにするための政策を行った。とりわけ重点のおかれたものの一つが、教育の改革だった。それまで教えられてきた道徳教育が否定され、教育内容から伝統に基づく家庭道徳、社会道徳、国民道徳がなくされてしまったのである。

 こうした欠陥教育を受けて育った戦後世代は、第2世代・第3世代となるに従って、急速に倫理観が低下してきた。いじめ、不登校、学級崩壊、対教師暴力、学力低下等が、学校で深刻な問題となっている。援助交際という名の少女売春、麻薬服用の低年齢化、少年による凶悪犯罪、一方では親の無責任・身勝手・給食費未納問題等々、事態はもはや猶予を許さない。このまま進めば、日本は亡国に至るのみである。
 日本を崩壊から守るには、教育を改革しなければならない。教育を根本的に改革するために必要不可欠とされたのが、戦後教育を規定してきた教育基本法の改正だった。

●憲法と教育には深い関係が

 旧教育基本法は、昭和22年3月に制定された。戦後教育の欠陥は、この法律の中に潜んでいた。教育基本法が、わが国の教育を呪縛してきたのである。
 旧教育基本法は、日本国憲法のもとで作られた。それゆえ、日本国憲法の性格がそのまま同法に反映していた。

 そもそも憲法と教育基本法とは、どういう関係にあるのだろうか。
 憲法とは、国のかたちを、根本的に規定するものである。憲法は、それに基づく教育が行われて初めて、国民の意識を規定するものとなる。この憲法を担う国民を育てるための基本方針が、教育基本法である。

 明治国家においては、教育の基本方針を示すものは、教育勅語だった。これは明治天皇が国民に呼びかけた御言葉である。明治22年2月に大日本帝国憲法が発布されると、翌23年10月に教育勅語が発布されている。明治天皇に仕えた指導層は、憲法と教育の関係について、実に深い理解をもっていたといえよう。国のかたちは憲法に定めるけれども、その憲法の下で国を担う人間は、教育勅語に基づいて育てるということである。そのことを最も深く認識していたのは、井上毅だった。
 井上は憲法と教育勅語をともに起草した人物だからである。井上の構想では、憲法と教育勅語は別々のものではなく、「憲法―勅語体系」とでもいった、一つの体系をなしていたのだろう。

 大東亜戦争の敗戦後、マッカーサーは、大日本帝国憲法に替えて、GHQで極秘裏に作成した憲法を押し付けた。憲法の施行は昭和22年5月。その前に教育基本法を、22年3月に施行した。
 明治憲法と教育勅語がひとセットだったように、日本国憲法と教育基本法もまたひとセットとして、作成されたと考えられる。戦後日本の組織・形態はマッカーサー憲法で規定するが、その日本国民の精神は教育基本法で変えていくということだろう。明治の井上がそうだったように、マッカーサーも日本における憲法と教育との関係を深く認識していたのである。

 このように考えると、教育基本法は、単に様々な法律のうちのひとつではなく、特別の重みを持つことがわかる。その証として、旧教育基本法には、「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立する」ために、この法律を制定するという前文がつけられていた。
 前文及び条文の内容については、後日改めて見ることにする。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「日本弱体化政策の検証~日本の再生をめざして」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08b.htm
・拙稿「日本国憲法は亡国憲法――改正せねば国が滅ぶ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08c.htm