ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

オバマVSロムニー11~対アジア太平洋・中国・北朝鮮

2012-06-30 08:47:32 | 国際関係
●対アジア太平洋政策

 オバマとロムニーについて、私は対日政策、対アジア太平洋政策の違いを重視する。単に自国と米国の関係ゆえ関心が強いだけでなく、アジア太平洋地域は、21世紀の世界で最も重要な地域になっているからである。人口、生産力、消費力、発展可能性、政治的・軍事的緊張関係等、アジア太平洋地域の動向は、世界の将来を左右する。米国の指導者がアジア太平洋地域でどういう政策を選ぶかは、この地域の安全と世界の平和に極めて大きな影響を与える。
オバマが日本及びアジア太平洋重視の方針を続けることは明白である。オバマは、日本について、「同盟国として外交政策のコーナーストーン(礎石)」だと述べている。これに対し、ロムニーは日本に関する見解がはっきりしない。これまで報道される限り、日本への関心は薄く、否定的な文脈でしか日本に触れていない。前回の大統領選挙で共和党候補だったマケインとは対照的である。
 2008年の選挙でマケインは日本を重視し、オバマは日本を軽視する姿勢だった。勝利したオバマは当初、中国を重視する一方、日本については、ほとんど意識さえしていないようだった。私はその点が不満だったが、21年(2009)9月政権に就いた民主党・鳩山首相が沖縄の普天間基地移転問題で、日米合意と異なる動きを示すと、オバマは、日本の重要性に気付いたのだろう。同年11月のアジア歴訪の際、最初にわが国を訪れ、鳩山と会談して、共同声明を発表した。首脳会談において、オバマは「最初のアジア訪問に日本を選んだことは米国の日米同盟重視を表すものだ」「米国と日本の同盟関係は両国だけでなく、アジア・太平洋地域の安定と繁栄の基軸だ」と語った。またアジア太平洋地域に関して、「アジアに積極的に関与していく。米国はこの地域における重要なプレイヤーだ」と述べた。
 オバマは11月14日に行った東京演説でも、「日米同盟が発展し未来に適応する中で、対等かつ相互理解のパートナーシップの精神を維持するよう常に努力していく」「米軍が世界で二つの戦争に従事している中にあっても、日本とアジアの安全保障へのわれわれの肩入れは揺るぎない」と強調した。その後、シンガポールで米・ASEAN首脳会議に参加したオバマは、経済成長を続けるASEANの重視と連携強化の姿勢を明確にした。以後、基本的にオバマは、アジア太平洋重視の方針を取っている。
 一方、ロムニーは、外交・安全保障政策の詳細がまだ明確ではない。基本的には、日本が米国の同盟国であるとの認識に立ち、日本、オーストラリア、韓国という民主国家を北大西洋条約機構(NATO)のパートナーに加え、地球規模の安全保障の枠組みをつくるべきだと提唱してはいる。しかし、オバマがアジア太平洋地域を最重視する戦略を打ち出し、対中シフトを強めつつあるのに対し、ロムニーのアジア太平洋地域における具体的な戦略はまだ明らかではない。

●対中国・対北朝鮮政策

 オバマは、始めのうち中国にひどく低姿勢だった。中国が米国債の最大の保有者となり、ドルの価値を中国に大きく依存する関係となり、また中国が軍事力を増強し、ますます侮れなくなっていることが原因だった。
 平成21年(2009)11月のオバマのアジア歴訪の時点では、中国封じ込めの放棄と軍事交流の推進が示された。歴代の米政権は中国に対して接触と封じ込めを併用してきたが、オバマ氏は東京演説で「中国を封じ込める意図はない」と述べ、封じ込めの放棄を宣言した。また米中首脳会談では、米中は軍事交流を推進し、軍指導者の相互訪問の日程を決めた。この時期のアメリカは、共産中国に対して非常に低姿勢だった。
 だが、その後、中国との外交を続ける中で、オバマは中国に対する姿勢を改めた。そして、23年(2011)秋には、「アジア太平洋シフト」外交に転じ、在日米軍再編など日米同盟を通じた対中抑止強化に踏み出した。ただし、柔軟な対話路線を取り、軍拡・海洋問題では牽制しながら、対北朝鮮・対イランでは協力を要請するという複雑な外交を展開している。
 一方、ロムニーは、オバマの対中外交を融和的と非難し、大統領に就任すれば即日、人民元問題で中国を制裁対象の「為替操作国」と認定すると公言している。また、貿易での制裁を強化したり、人権抑圧や知的財産権の侵犯等には厳しい姿勢を取ろうとしている。わが国との共同によるミサイル防衛の強化、台湾への武器輸出の拡大、米海軍の建艦能力拡大を訴えており、海洋覇権を目指す中国に対抗する方針を示している。北朝鮮に対して、ロムニーは、中国への圧力を増し、核開発を停止させる考えを述べ、食糧支援は現状では行わないことを明言している。

 次回に続く。
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オバマVSロムニー10~外交・安保と対中東政策

2012-06-29 08:42:51 | 国際関係
●外交・安全保障の基本姿勢

 アメリカの外交・安全保障政策は、世界の針路を左右する。経済政策とともに、影響はすこぶる大きい。
 オバマは、多国間協議や対話を重視する姿勢だが、ロムニーは、力の行使も辞さないと主張する。ロムニーはイラン、アフガニスタン、シリア、ロシア、中国、北朝鮮等に対する政策でオバマ政権の姿勢を非難しており、米国の価値観を対外的に強く押し出し、強硬な姿勢を取ることでオバマとの違いを明確にしようとしている。オバマは巨額債務問題で国防費を大幅削減したが、ロムニーは国防予算の300億ドル増や現役兵士の10万人増を外交方針に掲げている。
 オバマとロムニーの外交・安全保障政策について、中東、アジア太平洋、中国、日本の順に見ていきたい。

●対中東政策

 ブッシュ子政権は、平成13年(2001)の9・11以後、アフガニスタン、イラクに侵攻し、力による対決と管理の政策を行った。オバマ政権は、9・11の真相解明を行うことなく、ブッシュ政権の中東政策を引き継ぎ、若干の政策変更は行いつつも、基本的な方針は変えることなく、進んできている。
 9・11は謎の多い事件で、アメリカ同時多発テロの主犯とされたオサマ・ビンラディンについても、不可解な点がいろいろある。オバマ政権は、このアルカイダの指導者の追跡を続けた。オサマ・ビンラディンは、23年(2011)年5月2日、米国海軍特殊部隊が行った軍事作戦によって死亡したと報道された。
 イラクでは、ブッシュ子政権下にイラク戦争の大規模戦闘終結宣言が出たが、治安の悪化が問題となり戦闘が続いた。オバマ政権に替わり、ようやく平成23年(2011)12月、米軍が完全撤収し、大統領がイラク戦争の終結を正式に宣言した。だが、イラクにはスンニ派とシーア派の対立等があり、単独で治安維持ができるかどうか、まだ不透明なところがある。
 アフガニスタンについて、オバマは米軍の完全撤退を平成26年(2014)中と発表した。ロムニーは「絶対に期限はつけない」とし、スケジュール目標を示していない。アフガニスタンは、ユーラシアにおける地政学的な要所であり、中東にまさるほどの石油が埋蔵されているというカスピ海沿岸地方から石油を搬送する通路である。また世界最大のアヘンの生産地でもある。アメリカはここに重大な利権を持っている。
 現在、中東で最もアメリカが関心を寄せているのは、イランである。オバマは「核開発疑惑へは経済制裁で対処する」と言うが、ロムニーはオバマ政権の対応が甘いと批判する。そして、「経済制裁を強化し、軍事的選択肢も排除しない」として、力の行使を辞さない姿勢を示す。ただし、経済制裁や軍事力行使をどのように行うかについては具体的に述べていない。
 アメリカ、EU諸国、日本等がイランへの経済制裁を行っているが、もしイランが譲歩せず、ホルムズ海峡を封鎖した場合、アメリカとイランの戦争となる。軍事的には、アメリカが海軍力で優勢ゆえ、比較的短期間で鎮圧される可能性が高い。だが、イランが米軍基地への報復、イスラエル本土へのミサイル攻撃、湾岸諸国の油田や製油所の爆撃・爆破等へとエスカレートすると、新たな中東戦争に発展する恐れがある。また、イスラエルがイランに攻撃を仕掛ける可能性もある。イランの核開発に最も脅威を感じているのはイスラエルだからである。イランが核開発を大きく進める前に叩こうとイスラエルが動くかもしれない。
 アメリカにとって、中東で最も重要な国は、イスラエルである。イスラエルについては、オバマもロムニーも、イスラエル支持で共通している。ブッシュ子政権のネオコンは、イスラエルを支持し、アラブ諸国を軍事力で押さえ込み、石油・資源を掌中にし、自由とデモクラシーを移植する戦略を推進した。オバマは、この点でブッシュ子=ネオコン政権の中東政策を、概ね継承している。ロムニーは、外交・安全保障のブレーンやスタッフに、ブッシュ子政権の要員を多く持つから、オバマよりネオコン寄りの政策を行うだろう。
 今日、イスラエルが核兵器を保有していることは半公然の事実である。イスラエルは、約200発の核兵器を持つと見られており、中東諸国の中では、圧倒的な軍事力を誇っている。アメリカは、イスラエルの核保有を追認しており、イスラエルに対しては、制裁を行なおうとはしない。その一方、イラクやイランの核開発は、認めない。明らかにダブル・スタンダードを使っている。イスラエルが自由とデモクラシーの国であり、アメリカと価値観を共有しているというのが、その理由だろうが、核の問題は別である。アラブ諸国の核開発は認めないが、イスラエルの保有は擁護するというのでは、ムスリム(イスラム教徒)が反発するのは、当然である。

関連掲示
・拙稿「9・11~欺かれた世界、日本の活路」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12g.htm
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オバマVSロムニー9~社会政策の違い

2012-06-28 08:43:14 | 国際関係
●社会政策の違い

 社会政策では、オバマが「国民に医療保険加入を義務付ける」とするのに対し、ロムニーは「個人の自由を謳う憲法違反だ。廃止する」と反論する。
 アメリカでは、共和党・民主党の二大政党のもとで、社会保障制度がほとんど発達してこなかった国である。わが国のような国民全員参加の公的医療保険制度がなく、高齢者・障害者向けのメディケアと低所得者向けのメディケードがあるのみだった。一般の国民は民間の医療保険に加入するのだが、保険料が高額なため国民の6人に1人が無保険者である。その数、約5,000万人に上る。そのため、病気になって病院にかかると、医療費が払えず、破産する人が増え、深刻な社会問題となっている。
 オバマ政権は医療保険制度改革を内政の最重要課題に位置づけ、平成22年(2010)年3月、医療保険制度改革法を成立させた。それによる公的医療保険制度は、「オバマケア」と呼ばれる。国民に保険加入を義務付け、保険料の支払いが困難な中・低所得者には補助金を支給し、保険加入率を94%程度まで高めようとするものである。
 再選を目指すオバマは、「オバマケア」の定着・拡大を図ろうとしているが、ロムニーは、医療保険制度改革法は「個人の自由を謳う憲法違反だ」とし、大統領に就任したらこの制度を廃止すると公約している。
 だが、ロムニーは、マサチューセッツ州知事時代、平成18年(2006)に皆保険制度を導入した。全米では事実上初めての公的制度だった。保険加入を全住民に求め、無保険者は順調に減少している。これが、オバマによる国民皆保険制度の導入につながったと見られている。ところが、ロムニーは、州知事時代の皆保険制度導入について、共和党内で右派から強い批判を浴びてきた。自立自助を原理とし、公的扶助であれ政府の介入を排除しようとするアメリカの伝統的な考え方に立てば、認めがたい制度なのだろう。実は、アメリカでは26の州で医療保険制度改革法は憲法違反だという訴訟が起こされており、本年(24年)6月には連邦最高裁判所で判断が示される。
 このたびの大統領選において、ロムニーは共和党の候補者として指名を受けるため、右派に配慮したのだろう。オバマが導入した公的医療保険制度をすべて廃止すると公約している。私は、この点、ロムニーという政治家に疑問を持つ。自分が州知事時代に皆保険制度を導入したのであれば、全国民の保険加入を実現する制度を肯定するのでなければ、一貫性を欠く。
 わが国のように、近代化が進んでも社会の共同性を維持し、優れた公的扶助の制度を発達させてきた国から見ると、21世紀になって初めて国民皆保険制度を導入したアメリカとは、価値観に大きな違いがあると感じる。国民皆保険制度は憲法違反だという意見が多くあり、一度導入した制度であるにもかかわらず、次の大統領候補がこれを廃止すると公約し、大統領選挙の争点になることには理解しがたいものがある。
 公的医療保険の導入という政策だけ見れば、オバマはアメリカで画期的な取り組みをしている。ただし、リーマン・ショックの影響への対応で、オバマは特定企業を救済するなど、労働者や貧困層より、財界を優先する姿勢を取った。その基本姿勢のもとでの若干の是正である。優れた公的扶助の制度を持つ日本から見ると、オバマも自由を優先し、競争と自助を強調する点で、アメリカ的価値観を堅持し、そのもとで若干の格差拡大、弱者救済を図っているものである。
 アメリカの経済政策は世界に影響を及ぼすが、社会政策の場合は、アメリカ国内の問題という性格が強い。米国民ではない日本人にとっては、オバマの社会政策かロムニーの社会政策かの選択は、米国民のなすところであり、行動を見守るばかりである。

 次回に続く。

■追記
 医療保険制度改革法は、6月30日連邦最高裁で合憲の判断が示された。5対4の僅差だった。ロムニーはなお大統領就任後、同制度を廃止するという方針を発表した。
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オバマVSロムニー8~経済政策の違い

2012-06-27 06:25:11 | 国際関係
●経済政策の違い

 オバマは「大幅な歳出削減は景気回復後に行う」とし、ロムニーは「歳出削減を直ちに実施する」と公約する。オバマは「富裕層に増税」を掲げるが、ロムニー「富裕層増税に反対」を表明する。
 経済政策では、オバマは、一定の公的ルールに基づく「公正な社会」を主張し、節度を保つ規制によって格差のない、平等な社会を作ろうと主張する。「格差是正のための政府介入」を説き、「大幅な歳出削減は景気回復後に行う」とし、「富裕層に増税」を掲げる。オバマは年収100万ドル(約8000万円)を超える富裕層を対象に増税する「バフェット・ルール」の正当性を強調する。また「共和党は教育や医療という基本的な必要経費まで削って富裕層減税を行おうとしていると批判する。そして、中間層の保護を掲げ、格差是正を積極的に図ることを約束し、「中間層の将来を決する選択の選挙だ」と支持を訴える。
 一方のロムニーは、「徹底した自由競争」を追及する。「歳出削減を直ちに実施する」と公約し、「富裕層への増税に反対」を表明する。ロムニーは投資ファンド会社へ入って重役をつとめ、その後独立して莫大な資産を築いた実業家である。マサチューセッツ州知事としてハイテク企業を誘致するなどし、州財政を立て直したという手腕の持ち主である。自由競争の徹底によって企業活動を強化し、アメリカの活力の回復を目指す。徹底した規制緩和と富裕層を含む減税を行い、「民間主導によるチャンスに満ちた米国社会をつくる」と訴えている。
 ロムニーは、共和党の中では穏健派とされる。その柔軟さが中道派にもアピールして、オバマに対抗できる唯一の候補と見られてきた。だが、ロムニーに現職大統領を敗れるほどの大衆的な訴求力があるか、というと疑わしい。選挙スローガンが、「オバマ大統領への不信任投票を」というのも、訴求力の弱さの表れだろう。
 ロムニーは、当選すればオバマが1期目の最大の成果としている医療保険改革と金融規制改を、すべて廃止すると公約している。医療保険については、別項で述べることとし、ここでは金融規制改革について書く。
 アメリカでは1929年の大恐慌後、議会上院に銀行通貨委員会が設置された。この通称「ペコラ委員会」は、金融危機の原因と背景を解明するとともに、再発防止のための金融制度改革に取り組んだ。ペコラ委員会は、1929年の株価大暴落前後のウォール街の不正行為を暴き、銀行家が証券子会社を通じた銀行業務と一体的な業務展開をすることによって、巨額の利益を得ていたことなどの実態を明らかにした。その調査結果に基づき、1933年に銀行業務と証券業務の分離を定めたグラス・スティーガル法(銀行法)と証券法が成立した。また、翌34年には証券取引所法が成立し、ウォール街の活動を監視する証券取引委員会(SEC)が設立された。
 大恐慌後に設けられた規制は、1970年代までは、巨大国際金融資本の活動を抑えるのに有効だった。しかし、1980年代、レーガン政権の時代から徐々に規制が緩和され、1999年にクリントン政権下でグラム・ビーチ・ブライリー法が成立した。同法によって、銀行・証券・保険の分離が廃止された。その結果、金融機関は、持ち株会社を創ることで、金融に関するあらゆる業務を一つの母体で運営することが可能になった。
 「自由」の名の下、アメリカの金融制度は大恐慌以前に戻ってしまった。ウォール街は、さまざまな金融派生商品(デリバティブ)を開発し、サブプライム・ローン、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)等を生み出し、世界中を狂乱のマネー・ゲームに巻き込んだ。そして、平成20年(2008)9月15日、リーマン・ブラザーズの倒産によって、猛威を振るった強欲資本主義は破綻した。
 オバマ政権は、この反省から金融に一定の規制をかける改革を進めた。ロムニーは、これに反対し、オバマが行った金融規制改革をすべて廃止すると公言している。その根底にあるのは、徹底した自由競争を説く経済思想である。だが、その自由を至上のものとする経済思想こそが、カジノ資本主義を生み出し、借金依存型経済を生み出し、その破綻によって、世界経済危機をもたらしたのである。また、欧州債務危機の遠因ともなって、今もアメリカ経済に影響を与えている。
 アメリカは巨額の債務を抱える債務国だが、リーマン・ショック後、基軸通貨ドルの強みを生かしてドルを刷りまくって、世界中からドルを還流させて、アメリカ経済を動かしてきた。そのモデルそのものが破綻しつつある。そういう時に、その構造のまま自由競争を説く経済政策で、アメリカを健全な形で再建できるだろうか。また、世界経済を健全な方向に進めることができるだろうか。決してできない。
 徹底した自由競争を説く経済思想は、フリードマン、ルーカスらの新自由主義・新古典派経済学を理論的な道具としている。私は、これに対し、強欲資本主義の復活による世界の破滅を避けるために、ケインズの再評価と継承・発展が必要と考える者である。その観点から言うと、ロムニーの経済政策は、リーマン・ショックを体験しても、なお懲りない強欲資本主義を復活・助長することになるだろう。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「日本復活へのケインズ再考」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13k.htm
・拙稿「救国の経済学~丹羽春喜氏2」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13n.htm
 第1章(4)「フリードリッヒ・ハイエクの不作為」、(5)「ミルトン・フリードマンの詭弁」、(6)「ロバート・ルーカスの欺瞞」
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オバマVSロムニー7~現職対挑戦者

2012-06-26 08:50:37 | 国際関係
●オバマとロムニー~現職対挑戦者

 今年11月6日の米国大統領選挙は、民主党の現職オバマと共和党のロムニーの間で戦われる。オバマとロムニーは、政治信条が異なる。オバマは「社会に公正を」と訴え、ロムニーは「米国を信じよう」と訴える。選挙スローガンはオバマが「中間層の将来を決する選択の選挙だ」と呼びかけるのに対し、ロムニーは「オバマ大統領に不信任投票を」と呼びかける。
 経済政策では、オバマは「格差是正のための政府介入」を行うとし、ロムニーは「徹底した自由競争」を追及する。オバマは「大幅な歳出削減は景気回復後に行う」とし、ロムニーは「歳出削減を直ちに実施する」と公約する。オバマは「富裕層に増税」を掲げるが、ロムニー「富裕層増税に反対」を表明する。社会政策では、オバマが「国民に医療保険加入を義務付ける」とするのに対し、ロムニーは「個人の自由を謳う憲法違反だ。廃止する」と反論する。
 外交政策では、イランに対して、オバマは「核開発疑惑へは経済制裁で対処する」と言うが、ロムニーは「経済制裁を強化し、軍事的選択肢も排除しない」として、力の行使を辞さない姿勢を示す。中国に対して、オバマは、柔軟な対話路線を取り、軍拡・海洋問題では牽制しながら、対北朝鮮・対イランでは協力を要請する。一方、ロムニーは、オバマの対中外交を融和的と非難し、中国を為替操作国に指定し、貿易での制裁を強化し、人権抑圧を糾弾するなど、強硬な姿勢である。日本に対しては、オバマが同盟国として外交政策の「コーナーストーン(礎石)」だと重視するのに比べ、ロムニーは日本への関心が低めで、むしろ批判的な態度がうかがわれる。
 後により詳しく比較・検討するが、オバマとロムニーは、このように政治信条や政策が異なっている。米国の有権者は、二人の候補者のどちらかを選択し、米国の政治を託すことになる。
 今回の選挙は、現職大統領が再選を狙う選挙となる。過去に米国大統領選挙で、現職が敗れたのは、4度のみ。1932年フーバーがFDRに、1976年フォードがカーター、1980年カーターがレーガン、1992年にブッシュ父がビル・クリントンに敗れた。これら4例である。現職によほど大きな失政・失敗がなければ、また挑戦者に大衆を引き付ける大きな魅力がなければ、現職再選に有利な傾向がある。
 今回はどうか。オバマは「Change(変革)」を訴え、2008年の選挙戦を制した。その年、9月15日にリ-マン・ショックが起こり、金融危機の只中での選挙だった。オバマは米国史上、黒人初の大統領となった。世界大恐慌以来の経済危機への対処のため、オバマは、多額の財政支出を伴う景気対策や金融への規制の強化を通じて、経済の立て直しに取り組んできた。最大の眼目だった雇用の創出は、公約ほどの成果を上げていないものの、9%以上だった失業率は8.2%と若干改善されつつあるなど、経済状況は、ゆっくりではあるが、回復傾向にある。だが、依然として景気は低迷し、格差は縮小せず、労働者や貧困層の不満が増大している。また、4年連続で1兆ドルを超える深刻な財政赤字が続いている。
 このような状態であるので、今回の大統領選挙における最大の争点は、経済再建や雇用と景気の回復の方法にある。再選を狙うオバマは、富裕層への増税、格差是正のための政府介入、大幅な歳出削減は景気回復後等の政策を訴えて、経済の回復を進めようとしている。だが、オバマに対し、過去3年半で成し遂げられなかったことが、もう一期続ければできるという期待は、大きく膨らんでいっていない。
 アメリカ経済が目立って好転していない一つの原因は、リーマン・ショックの根の深さにある。リ-マン・ショックは、ヨーロッパ諸国にアメリカ以上の大きな打撃を与えた。平成22年(2010)初め、ギリシャが膨大な政府債務を隠していたことが露見し、欧州債務危機が深刻化した。ギリシャに続いて、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペイン等にも債務危機が広がっている。リーマン・ショックから回復しかけたアメリカ経済は、欧州諸国での危機のたびに株価が下落し、消費意欲が低下するなど、足を引っ張られている。これから、大統領選挙までの期間、ユーロ圏の弱体国の危機が連鎖的に拡大し、その影響が波及すると、オバマの座は危くなるだろう。

 次回に続く。
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オバマVSロムニー6~共和・民主の外交政策

2012-06-25 10:23:56 | 国際関係
●共和党・民主党の政策の違い(続き)

 外交及び安全保障政策では、共和党は圧力による外交を重視し、自国本位の傾向がある。民主党は対話による外交を重視し、国際協調を図る傾向がある。また共和党はアイソレーショ二ズム、民主党はグローバリズムと大まかに分類される。アイソレーショニズムは、アメリカは他国・他地域のことに干渉しないという不干渉主義であり、グローバリズムは、アメリカは世界統一の中心となるべきだという地球覇権主義である。
 ただし、実際の外交・安全保障政策では、圧力による外交か対話による外交か、自国本位か国際協調か、戦争の推進に積極的か消極的か、軍事費を増加か削減か、軍事力を拡大か縮小か等については、大統領が共和党か民主党か、議会の多数派が共和党か民主党かによって根本的な違いはないと見たほうがよい。その時の国際情勢によって、国益追求のために現実的な選択がなされてきている。
 民主党は、ベトナム戦争のころから反戦リベラルが増えたり、カーターが人権外交を行ったりしたので、わが国では民主党はハト派、共和党はタカ派というイメージを持っている人が多いが、アメリカでは民主党には「戦争党」と呼ばれている一面がある。第1次世界大戦、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争は、民主党政権のもとで、アメリカは海外の戦争に参戦したからである。だが、湾岸戦争、アフガン=イラク戦争は、共和党政権が始めている。
 共産中国に対しては、共和党は外交姿勢が強硬的、民主党は融和的な傾向がある。だが、共和党政権下でも中国とのビジネスは活発に行われている。民主党は保護貿易主義の傾向が強く、対中貿易赤字には敏感である。また中国の人権問題やチベット問題を非難する議員が多く、近年党内で対中強硬派が台頭している。
 わが国に対しては、共和党と民主党で、どちらが親日的・反日的とは言えない。アメリカは一貫して自国の国益の実現のため、日本に強力な圧力をかけてきている。日米外交で決定的な文書である「年次改革要望書」は、1994年民主党ビル・クリントン政権から提出されるようになったが、共和党に政権が移っても、アメリカの日本に対する要望はより強くなっており、政権がどの党かはあまり関係ない。その要望の集大成が、オバマ政権が強引に進めているTPPである。
 先に覇権国家アメリカの政策は、巨大国際金融資本家や石油や軍事等の多国籍企業の経営者たちによって、ほとんど決められていると書いた。彼らは、しばしば直接政府の要職に就いて、政府を動かしてもいる。彼らの多くは、自らが外交問題評議会(CFR)、ビルダーバーグ・クラブ(BC)、三極委員会(TC)の会員であり、また彼らの意思を理解する優秀な人材をこれらの組織に参加させ、政府に送り出している。それゆえ、連邦政府の外交・安全保障政策は、大統領を中心としたスタッフの背後で働く巨大金融資本の意思によって相当、方向づけがされていると見たほうがよい。その意思は、共和党・民主党の政策の違いを超えた形で、しばしば政策決定に作用すると思われる。それが、共和党政権で一見共和党らしくない政策が施行され、民主党政権で一見民主党らしくない政策が施行されることのある事情だろう、と私は考えている。
 ところで、わが国では保守を自認する人は米国の共和党寄り、リベラルを自認する人は民主党寄りという傾向がある。だが、自民党は、米国の共和党の中道派あたりから民主党の左派まで覆い、さらに社会民主主義に近い考えの政治家まで見られる。
 アメリカでは、オバマが公正を理念とし、富裕層に増税をして、中間層・貧困層に所得を再配分しようとすると、共和党から資本主義の否定であり社会主義だという批判が起こる。米国的な保守の価値観から見ると、わが国の自民党などは、米国の民主党よりリベラルで社会主義的な政党ということになるだろう。当然、わが国の民主党は、もっと左でアメリカの二大政党の価値観では理解できない政党となるだろう。価値観だけでなく、政策も言動も理解できないだろうが。
 以上で、共和党・民主党という二大政党とアメリカの政治構造についての記述を終える。後半ではそれを踏まえてオバマとロムニーの政治信条と政策を検討し、今後の選挙戦の行方について述べる。

 次回に続く。
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オバマVSロムニー5~共和・民主の国内政策

2012-06-23 06:24:34 | 国際関係
●共和党・民主党の政策の違い

 共和党・民主党の比較に話を戻す。アメリカの価値の中心は、自由である。その自由を中心として、共和党は古典的自由主義である保守、民主党は修正的自由主義であるリベラルに分類できる。
 アメリカの政治思想には、自由を中心として、特徴的な対立項がある。すなわち、自由競争/社会的公正、小さな政府/大きな政府、自立自助/公的扶助、一国志向(アイソレーショ二ズム)/世界志向(グローバリズム)、西洋中心主義/多文化主義等が挙げられる。これらの対立項のうち、共和党は自由競争、小さな政府、一国志向の傾向があり、民主党には社会的公正、大きな政府、世界志向の傾向がある。こうした思想傾向の違いが、2大政党それぞれの政策の傾向となって表れている。
 経済政策の基本的な考え方では、共和党は自由競争を説き、政府の介入を排除しようとするのに対し、民主党は自由競争の弊害に対応するため、政府の関与が必要とする傾向がある。「小さな政府」と「大きな政府」と対比される。共和党は大企業の利益実現に積極的で、民主党は中小企業・消費者・社会的少数者の保護に積極的である。また、共和党は自由競争の原理に立って自由貿易主義を主張し、民主党は国内産業の保護のため保護貿易主義を取る傾向がある。だが、民主党は、ロックフェラー家やユダヤ系金融資本の支持を受け、彼らのグローバルな利益に応えてもいる。
 歴史的に見ると、実際の政策決定においては、共和党・民主党に関わらず、その時の大統領・議会・経済状況・国際情勢等によって、現実的な選択がなされている。むしろ、財政政策・金融政策とも、共和党と民主党で考え方や政策に根本的な差異はないと見たほうがよいだろう。これは、アメリカには、連邦政府の他に、連邦準備制度理事会(FRB)という中央銀行に当たる組織があり、ここで巨大国際金融資本の意思によって重要な方針が決められ、連邦政府はその方針に応えて行政を行っているという権力構造があるからである。
 アメリカでは通貨発行権は政府にはない。FRBという民間組織が通貨発行権を握っている。FRBは、基軸通貨ドルの発行権を持つことにより、アメリカだけでなく世界の通貨供給の中心となっており、各国の中央銀行がこれと連携している。FRBは税金申告・会計報告を免除されており、監査を受けたことがない。連邦議会の管理が効かない存在となっている。巨大国際金融資本による経済的な政府が、大統領を中心とする連邦政府を、背後から操作しているようなものである。二大政党の背後に巨大国際金融資本があると書いたが、その背後とつながる重要組織がFRBである。アラン・グリーンスパンは、所有者集団に仕える経営者として、1987年から2006年まで18年間、レーガン・クリントン・ブッシュ子と共和・民主・共和と政権が変わってもFRB議長を務めた。2006年にブッシュ子政権で議長職を継いだベン・バーナンキは、オバマ政権でも同職を務めている。
 税制及び社会政策について、民主党は富裕層・大企業への増税とそれによる中間層・貧困層への所得再分配に積極的だが、共和党は消極的である。共和党は自由を最高価値とし、個人の自立自助を原理とし、民主党は自由を基本的な価値としつつも社会的な公正を追求する傾向がある。公正は社会主義的な平等とは異なる概念で、機会の平等と自由競争に不正がないことを含意し、経済的な格差の是正を図ろうとする。だが、医療保険、公的年金等の社会保障制度は、アメリカはわが国に比べて、よく発達しておらず、民主党でも多数派はその実現・拡大に消極的な傾向があった。
 環境問題への取り組みについては、アメリカは先進国の中で最も消極的だが、二大政党の中では、民主党には積極的な議員・政治家がいる。
 文化政策について、アメリカでは同性愛、同性婚、人工妊娠中絶、人工出産等をめぐって論争があり、道徳的な価値観の対立が見られる。共和党はキリスト教の保守的・伝統的な規範を守ろうとし、民主党はリベラルで個人の選好に寛容な傾向がある。

関連掲示
・連邦準備制度理事会(FRB)については、下記をご参照下さい。
 拙稿「現代の眺望と人類の課題」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion09f.htm
 第3章 新しい国際経済体制
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オバマVSロムニー4~二大政党の背後

2012-06-22 08:55:32 | 国際関係
●二大政党の背後にいる巨大国際金融資本

 アメリカは、実質的な二大政党制である。国民は二つの大政党が立てる候補のどちらかを選ぶ。片方が駄目だと思えば、もう片方を選ぶ。そういう二者択一の自由はある。しかし、アメリカでは、大統領が共和党か民主党かということは、決定的な違いとなっていない。表向きの「顔」である大統領が赤であれ青であれ、支配的な力を持つ集団は外交・国防・財務等を自分たちの意思に沿うように動かすことができる。アメリカの二大政党の後には、巨大国際金融資本が存在する。共和党・民主党という政党はあるが、実態は政党の違いを越えた「財閥党」が後ろから政権を維持・管理していると考えられる。
 アメリカの連邦政府は、大統領を中心とした行政組織というより、財界を基盤とした行政組織と見たほうがよい。国民が選んだ大統領が自由に組閣するというより、むしろ財界人やその代理人が政府の要所を占める。政治の実権を握っているのは財閥であって、大統領は表向きの「顔」のような存在となっている。国民が選んだ「顔」を掲げてあれば、政府は機能する。だから、誰が大統領になっても、支配的な集団は自分たちの利益のために、国家の外交や内政を動かすことができる。このようになっているのが、アメリカの政治構造である。
 大統領には、もちろん独自の意思があり、政策や判断がある。単なるロボットや操り人形ではない。だから、大統領と財界人グループとのぶつかり合いはある。しかし、大統領には大きな枠がはめられている。権限のうち最も強い権限は人事権だが、人事権を実質的に限られていれば、大統領の出来ることは、かなり制約される。なぜ人事権を握られているかというと、アメリカの大統領選挙には、莫大な費用がかかる。資金を提供してくれるスポンサーに対して、大統領はその意思を受け容れ、応えざるを得ない。

 覇権国家アメリカの政策は、巨大国際金融資本家や石油や軍事等の多国籍企業の経営者たちによって、ほとんど決められている。これらの所有者・経営者の集団が、支配的な集団をなしている。彼らは、アメリカの大統領を選ぶだけではなく、大統領顧問団や政策までも決定する力を持っている。そして、誰が大統領かに関係なく、大統領を管理し、アメリカという国家を実質的に支配し続けている。彼らは、しばしば直接政府の要職に就いて、政府を動かしてもいる。彼らの多くは、自らが外交問題評議会(CFR)、ビルダーバーグ・クラブ(BC)、三極委員会(TC)という世界の政治・経済に需要な影響を及ぼす組織の会員であり、また彼らの意思を理解する優秀な人材をこれらの組織に参加させ、政府に送り出している。
 外交問題評議会(CFR)は、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織である。アメリカの政治、特に外交政策の決定に対し、著しい影響力を振るっている全米最大のシンクタンクである。共和党・民主党に関わらず、歴代大統領の多くがその会員であり、政府高官も多く輩出している。
 ビルダーバーグ・クラブ(BC)は、西欧の王族・貴族、欧米各国の現職閣僚や有力政治家、NATO等の軍事関係者、中央銀行総裁、投資銀行家、国際的大企業の経営者、マスメディアの代表者等が参加する欧米白人種中心の世界支配体制を維持するための最高戦略会議と見ることが出来る組織である。
 三極委員会(TC)は、日本・北米・ヨーロッパなどからの参加者が会談する私的組織であり、民間における非営利の政策協議グループである。目的は、先進国共通の国内・国際問題等について共同研究及び討議を行い、政府及び民間の指導者に政策提言を行うことである。
 ちなみにオバマは、2008年大統領選において、自分はCFRの会員ではないと公言したが、CFRの機関誌「フォーリン・アフェアーズ」に論文を寄せており、CFRと無関係ではありえない。2008年選挙でオバマに敗れたマケインはCFRの会員である。今度、オバマに挑戦するロムニーも、CFRの会員である。過去に大統領選挙の有力候補として名前が上がった政治家のほとんどは、CFRの会員かCFRに近い位置にいる。また、ビルダーバーグ・クラブの参加者である者も多い。
 オバマ政権の国務長官ヒラリー・クリントンは、ビルダーバーグ・クラブの会議参加者で、CFR、TCの会員。財務長官ティモシー・ガイトナーは、ビルダーバーグ・クラブの会議参加者で、CFRの会員。経済回復諮問委員会委員長だったポール・ヴォルカーはCFRとTCの会員、前国防長官ロバート・ゲイツはCFRの会員である。

 オバマは「Change(変革)」をスローガンに掲げて、大統領の座に就いた。だが、オバマのいう「Change(変革)」は政策のレベルのものであって、アメリカという国家の真の変革を進めるものではないことは、就任後、数か月の間に明らかになった。だが、誰であれ今後、アメリカの大統領が米国を真に変革しようとするならば、その挑戦はアメリカの政治構造の変革へと進まざるを得ない。そして、もし本気で挑戦しようとすれば、戦後アメリカの権力構造に深く関わるケネディ大統領暗殺事件に始まる多くの事件の真相を究明することなくして、変革を成し遂げることはできないだろう。特に9・11の解明が必要である。9・11とは、平成13年(2001)9月11日、ブッシュ子政権の時に起こったアメリカ同時多発テロ事件の通称である。私は、アメリカ政府はこの事件に何らかの形で関与したという疑いを持っている。9・11の真相究明は、アメリカの変革のために、極めて重要な課題である。オバマは、こうした根本的な問題の解明は、何もやっていない。今後も期待できない。
 仮にロムニーがオバマに勝って、次の大統領になった場合、ロムニーがアメリカの根本的な問題の解明に向かう可能性はない。特に9・11については、全くない。というのは、ロムニーの外交・安全保障政策を立案するブレーンやスタッフには、ブッシュ子政権の枢要なポストに就いていた者たちがいるからである。彼らは、ネオコンの理論家や活動家であり、9・11の真相を隠蔽する側の人間である。それゆえ、ロムニーには、問題解明を全く期待できない。

関連掲示
・拙稿「現代世界の支配構造とアメリカの衰退」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09k.htm
 第2章 アメリカを動かす外交問題評議会
 第3章 ビルダーバーグ・クラブ
 第5章 ロックフェラーのグローバリズム
 第7章 9・11とアメリカの挫折
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6・17~ギリシャとフランス

2012-06-21 08:56:25 | 経済(ユーロ)
 私は6月4日、「欧州債務危機とフランスの動向」をサイトに掲載した。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12l.htm
 その時に途中段階にあったギリシャの総選挙とフランスの下院選挙の結果が出た。
 6月17日に行われたギリシャの国会再選挙は、財政緊縮派が勝利した。もし急進左派連合が勝って金融支援の条件である緊縮策を撤回した場合は、欧州連合(EU)が支援を打ち切り、ギリシャのユーロ圏離脱へと進む可能性があった。だが、緊縮派が過半数を占めたことで、当面急激な変化はない。
 元の与党で再び第一党となった新民主主義党(ND)のサマラス党首が首相となり、第三党となった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)に、新たに穏健な反緊縮派である民主左派を加えた3党で連立を組んだ。だが、NDとPASOKは長年のライバルであり、またPASOKと民主左派は閣外協力という形で一定の距離を置く構えゆえ、連立は脆弱であり、安定した政権運営ができるかが危ぶまれる。
 急進左派連合の党首アレクシス・ツィプラスは、再選挙前、「借りたカネが多額なら借りた方が優位だ」と言っていた。借りた側が返済を引き延ばせば貸し主をコントロールできるということだろう。これは不逞の輩である。選挙後、「緊縮策に反対する大多数の国民の代表だ」と言明し、緊縮路線に徹底抗戦していく姿勢を示している。緊縮派が議席の過半数を占めると言っても、第1党には50議席上乗せがされるというギリシャ独特の選挙制度の結果であって、獲得票数では緊縮派と反緊縮派は拮抗している。今後、新政権が国論をリードして政策を進めていけるかどうかは、厳しい状況と思われる。

 同じ17日、フランスで国民議会(下院)の総選挙の第2回投票が行われた。直前の予想では左派がやや優勢と見られたが、結果は社会党が圧勝。オランド大統領の与党が単独過半数を獲得した。サルコジ前大統領の支持基盤、国民運動連合(UMP)は惨敗した。サルコジへの批判が、予想以上にUMPへの逆風になったようだ。
 昨年9月の元老院(上院)の選挙でも社会党を中心とする左派が過半数を獲得しており、今回の選挙によって左派が大統領―首相―国民議会―元老院―地方議会と主な政治機関を押さえる状況となった。
 オランドは今後、この権力基盤に立って、経済成長と財政赤字削減の両立、欧州危機対策や富裕層への課税強化を柱とする税制改革等を推進するだろう。ユーロ圏の双頭エンジンの片方であるフランスが大きく左傾化したことは、今後、独仏関係に影響し、ひいてはユーロ圏とEUの針路に影響するだろう。
 なお、ユーロからの離脱、フランの復活、保護主義政策、移民の制限等を唱える国民戦線(FN)は2議席を獲得した。14年ぶりに議席を復活させたものの党首のマリーヌ・ルペンは落選した。4月に行われた大統領選挙では、17.90%を獲得したが、選挙区では社会党の候補に僅差で敗れた。下院の任期は5年。フランスで、FNが短期間に勢力を伸ばす可能性は減少した。

 ギリシャとフランスで国政選挙の結果が出た18日、市場ではスペイン国債の価格が急落した。長期金利の指標となる10年もの国債の利回りが、7.3%超まで上昇した。国債は、価格が下がると利回りは上昇する。政府が市場で国債を売って資金を調達する場合、利回りが高くなると利払い費が増える。当座の資金は得られても、将来返済する額が増えていく。利回りが7%を超えると、持続的な財政運営が不可能とされる。スペイン国債はその7%を超えた。今後、スペインの財政は、制御不能に陥る恐れが出てきた。利回りの高い国債は、リターンが大きいようでも、リスクが大きい。急速に信用力が下がると、どんどん売りに出されて、価格が暴落する。政府は償還の際の支払金が増える一方、新たな国債の発行による資金調達は困難になっていく。
 スペインが本格的な危機に陥ったら、影響はギリシャの比ではない。EUは、7月に発足する欧州安定メカニズム(ESM)等の融資能力を5千億ユーロから8千億ユーロに増加することを決めている。だが、ギリシャへの支援等を除くと、残りは約5千億ユーロ。これでは、経済規模の大きいスペインへの支援には足りないと見られる。ESMの融資能力をさらにどこまで拡充できるか、それが大きなポイントの一つとなるだろう。
 わが国の再建が急務である。リーマン・ショック以上のユーロ・ショック数連発に見舞われた際、再建が遅れれば遅れるほど、痛手は深くなる。政権交代と経済政策の転換が焦眉の急である。

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●産経新聞 平成24年6月19日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120619/erp12061921230009-n1.htm
3党連立政権の期待高まる ギリシャ、穏健・反緊縮派取り込みへ
2012.6.19 21:22

 【アテネ=宮下日出男】ギリシャ国会再選挙後の政権樹立に向け、財政緊縮派の第一党、新民主主義党(ND)は19日、組閣作業を続行した。現地メディアによると、NDと緊縮派で第三党、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)、穏健な反緊縮派、民主左派の3党による連立政権発足への期待が高まっている。
 組閣作業では、反緊縮派の第二党、急進左派連合がすでに協力を拒否。PASOKは明確に政権参加を表明していないが、同党とNDは反緊縮派も加わる「挙国一致内閣」を目指しており、民主左派の動向が最大の焦点となっている。
 17議席を持つ民主左派は親欧州派で、緊縮策の2017年までの段階的撤回を主張。同党のクベリス党首はNDのサマラス党首との18日の会談で、こうした要求を提示した。政権参加への態度は明示しなかったが、サマラス党首は「建設的な会談だった」と述べた。
 19日午前にはPASOKのベニゼロス党首もクベリス党首と会談し、説得にあたったが、クベリス党首は「いくつかの問題がまだ残っている」と語った。
 3党の政権が実現した場合の議席は179議席となる。NDとPASOKで過半数(151)の議席を確保できるが、過去に政権を担ってきた両党への国内の反発は強く、反緊縮派を取り込み、政権基盤を安定化させる狙いだ。ベニゼロス党首は急進左派連合の参加も要求したが、トーンダウンさせている。(略)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120618/erp12061811250006-n1.htm
【仏総選挙】
社会党が単独過半数確保 大統領、富裕層への課税強化へ
2012.6.18 11:24

 【ロンドン=内藤泰朗】フランス国民議会(下院、577議席)総選挙の第2回投票は17日、投開票が行われ、フランスからの報道によると、5月に当選したオランド大統領の与党、社会党が単独過半数を制し314議席を獲得した。下院で社会党の単独過半数は1981年の総選挙以来。
 上院も掌握する大統領は下院での圧勝により有権者の信任を得た形で、今後は経済成長と財政赤字削減の両立を目指し、困難な欧州危機対策や富裕層への課税強化を柱とする税制改革などの主要課題に本腰を入れて取り組む。
 開票がほぼ終了した時点での同国内務省の集計によると、社会党は195議席から314議席に躍進。反対にサルコジ前大統領の支持基盤で、改選前に単独過半数議席を保持していた保守系の国民運動連合(UMP)は304議席から194議席に大幅に後退し、下院の左右勢力が10年ぶりに逆転した。
 移民排斥を掲げる極右、国民戦線(FN)も2議席を確保し、14年ぶりに議席を復活させた。(略)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120618/erp12061814300007-n1.htm
【仏総選挙】
極右、22歳孫娘が当選 14年ぶり議席復活
2012.6.18 14:28

 17日のフランス国民議会(下院)総選挙第2回投票で、移民排斥を掲げる極右、国民戦線(FN)から22歳の女性議員が誕生した。(略)
 女性議員はFN創設者で前党首のジャンマリ・ルペン氏の孫のマリオン・マレシャルルペン氏。南部ボークリューズ県の選挙区で当選し、1958年発足の第5共和制で最年少の議員となった。「若い世代の代弁者になれてうれしい」と喜びを語った。もう1議席は南部ガール県の選挙区。
 一方、ジャンマリ・ルペン氏の三女のFN党首、マリーヌ・ルペン氏は北部リール近郊の選挙区で社会党候補に118票差という小差で敗れた。(略) (共同)
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オバマVSロムニー3~ネオコン

2012-06-20 08:50:35 | 国際関係
●共和党を変えたネオコン

 共和党には近年明らかな変化が見られ、グローバリズムを志向する勢力が目立つようになっている。この変化のきっかけは、民主党から共和党に移籍したグループによる。新保守主義者(ネオ・コンサーバティスト)、略称ネオコンという。
 ネオコンの源流は、1930年代に反スターリン主義の左翼として活動したトロツキストである。彼らは「ニューヨーク知識人」と呼ばれるユダヤ人の集団だった。そのうちの一部が、第二次世界大戦後、民主党に入党し、最左派グループとなった。
 彼らは、民主党カーター大統領の人権外交に不満を持った。そして、共和党のレーガン大統領がソ連に対抗して軍拡を進め、共産主義を力で克服しようとしたことに共感し、1980年代に共和党に移った。反スターリン主義が反共産主義へと徹底されたわけである。彼らは、もともと共和党を支持していた伝統的な保守とは違うので、ネオコンという。
 ネオコンは、自由とデモクラシーを人類普遍の価値であるとし、その啓蒙と拡大に努める。西洋近代的な価値観を、西洋文明以外の文明に、力で押し付けるところに、闘争性がある。その点では、戦闘的な自由民主主義と言えるが、そこにユダヤ=キリスト教の世界観が結びつき、イスラエルを擁護するところに、顕著な特徴がある。
 ネオコンは、ブッシュ子政権において、政権の中枢に多く参入した。そして、グローバリズムの思想に基づいて、力による覇権を目指す世界戦略を展開した。ネオコンには、ユダヤ系の知識人が多く、アメリカ=イスラエル連合というべき関係を強固なものとした。
 共和党のブッシュ子から民主党のオバマに大統領が変わった後、ネオコンの勢力は大きく後退したように見える。来る大統領選挙の共和党候補者ロムニーは、中道派・穏健派と呼ばれるが、外交・安全保障のブレーンやスタッフにはネオコンの戦略家や実務家がいる。そして、重要なのは、グループとしてのネオコンより、その背後にある勢力である。すなわち、イスラエル・ロビーと呼ばれる勢力であり、また彼らを支える巨大国際金融資本である。

●共和党・民主党とも動かすイスラエル・ロビー

 今日、アメリカでは、イスラエル・ロビーが最大のロビー団体となり、アメリカの外交政策に強い影響を与えている。アメリカ合衆国は、世界最大のユダヤ系人口を持つ国家であり、ユダヤ系米国人の多くが、親イスラエルの思想・感情を持つ。またユダヤ系米国人には、政治・経済・科学・文化・芸術・教育等で活躍している知識人や有力者が多い。ユダヤ系米国人やイスラエルを宗教的な信仰によって擁護するキリスト教右派等を中心に、イスラエルを支持・擁護し、米国の政治・外交をイスラエルに有利なものにしようと政治家や議会に働きかける団体が、イスラエル・ロビーである。
 イスラエル・ロビーは政府・議会・政治家に積極的に働きかけ、アメリカの政策をイスラエルに有利なものに誘導している。彼らの活動の目的は、アメリカの政治・外交をイスラエルに有利なものに導くことである。そして、イスラエル・ロビーはアメリカ=イスラエル連合を絶ち難いまでに確固としたものすることに成功している。
 こうした状態を危惧するアメリカ国民の中から、合衆国政府はアメリカの国益よりもイスラエルの国益を優先しているという批判が上がっている。高名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトによる『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(講談社、2007年)は、言論界に一石を投じた。著者たちは、イスラエル・ロビーの強い影響力により、アメリカの政策論議は合衆国の長期的安全保障を損なう方向に向かっていると主張する。イスラエル・ロビーの団体は、極右政党リクードに近い団体・個人で構成されていると指摘。他の団体・個人との境界線は曖昧で、多くの学者、シンクタンク、政治活動委員会、ネオコン・グループ、キリスト教団体等がロビー活動を支援しているという。
 具体的には、アメリカ政府は政権が共和党・民主党の違いに関わらず、イスラエルに大規模な無償の軍事援助を行っている。2007年から10年間、毎年30億ドル、合計300億ドルの援助を行う予定である。また、国連安全保障理事会でイスラエルに不利な提案が出されると、アメリカは必ず拒否権を発動している。イスラエル・パレスチナ問題においては、イスラエル側に立って関与しており、アラブ諸国の批判を受けている。
  イスラエル・ロビーは、ロックフェラー家やロスチャイルド家、ユダヤ系金融資本家等を資金源とし、潤沢な資金を持つ。また、そこにはユダヤ人の優秀な頭脳が集まっている。彼らによってイスラエルを批判しているとみなされた者は、選挙で落とされる。そのため、いまやアメリカのほとんどの政治家は、共和党・民主党にかかわらず、イスラエル・ロビーの主張に同調したり、イスラエルの外交政策を支持したりするようになっている。
 2008年(平成20年)の大統領選挙において、有力候補者たちは、早々にイスラエル支持を表明した。共和党のジョン・マケイン、ルドルフ・ジュリアーニ、ミット・ロムニーら、民主党のバラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョン・エドワーズら、みなそうだった。選挙は彼らのうちマケインとオバマの戦いになり、オバマが勝った。今度の2012年の選挙はオバマとロムニーの戦いになる。だが、二人のうちどちらが勝っても、イスラエル支持という点では変わらない。

 次回に続く。
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