ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

人権214~20世紀初頭への展開

2015-10-19 08:52:08 | 現代世界史
●19世紀末から20世紀初頭にかけての人権思想の展開

 本章では、近代西欧に現れた主権・民権・人権に係る思想について、人権を中心に述べた。17世紀イギリスにおける思想的展開、18世紀の啓蒙思想、アメリカ・フランスにおける市民革命期の思想、ドイツにおけるカント及び彼以後のドイツ観念論から現れたマルクスとナショナリズム、19世紀イギリスにおける功利主義と修正自由主義、最後に日本における近代西洋思想の摂取と独創的な展開という順に記した。
 ここで本章の結びに、19世紀末から20世紀初頭までの人権の思想の発達を書きたい。
17~19世紀の欧米における人権の思想史を振り返る時、最も重要な動きは、ロックの思想の普及であると考える。ロックは近代科学思想に通じ、中世的プラトニズムを排して生得観念を否定し、感覚に基づく経験論を説いた。ホッブスの理論を批判的に継承して、自由・平等な個人の自発的同意に基づく契約によって政府が設立されたとする社会契約論を発展させた。ロックはまた労働による所有を意義づけて、私有財産を肯定し、近代資本主義を正当化した。   
 ロックは、「人間は生まれながらにして完全な自由をもつ。人間はすべて平等であり、他の誰からも制約を受けることはない」と主張した。絶対主義王政に対抗して、リベラリズム、デモクラシーの思想を唱え、「民衆の信頼に反するような法律や政令を発見した場合は、民衆にはその法律を改廃させる優越的権利が依然としてある」として抵抗権・革命権を認めた。
 ロックの思想は、イギリス名誉革命を正当化する理論となり、アメリカ独立革命や独立宣言、合衆国憲法の理論的支柱となった。またフランスでは、ルソーや百科全書派によって急進化され、フランス革命の推進力ともなった。そして、イギリス、アメリカ、フランスが先進国・列強として発展するにつれ、ロックの思想は直接的または間接的に欧米の他の諸国へ、さらに非西洋文明の社会へと伝わっていった。この過程は、近代化の進行と西洋文明の非西洋文明諸社会への伝播と相即する。ロックの思想の浸透は、資本主義・自由主義・デモクラシー個人主義の普及と重なる。
 ロック思想が諸方面に浸透していった17~19世紀は、科学の発達によってキリスト教が権威を失い、世俗化が進み、科学的合理主義が支配的になった過程でもある。17世紀の「科学の世紀」、18世紀の「啓蒙の世紀」を経て、様々な分野で自然の研究が進み、実験と観察に基づく近代西欧科学的な世界観が形成された。それに加えて、ダーウィンが1859年に『種の起源』で、生物の種は神の創造によるという聖書の記述を揺るがす理論を説いたことは、重要である。ダーウィンの仮説は、天動説から地動説への転回以来の衝撃を、キリスト教文化圏にもたらした。   
 西方キリスト教文明は根底から揺らぎ出した。その動揺を最も鋭く、深く捉えたのが、ニーチェだった。ニーチェは、1883年の『ツァラトゥストラ』で、キリスト教によって代表される伝統的価値が、西洋人の生活において効力を失っていると洞察し、この状況を「神は死んだ」と表現した。彼は、西洋思想の歴史は、本当はありもしない超越的な価値、つまり無を信じてきたニヒリズムの歴史であると断じ、ニヒリズムが表面に現われてくる時代の到来を予言した。そして、ニヒリズムを克服するため、新しい価値を体現し得る超人の思想を説いた。
 ニーチェが予言したように、19世紀末の欧米では、ニヒリズムが蔓延するようになった。ニヒリズムは、広義の場合は従来の宗教的価値観の喪失や否定・破壊を意味する。
 だが、科学的合理主義の増勢やニヒリズムの浸透が進むなかにおいても、ロックの思想は普及し続けた。それはイギリス・アメリカ・フランス等での資本主義的な生産力の増大、軍事力の強大化、帝国主義政策の展開による。資本主義の発達によって、各国・各地域に自由主義・デモクラシー・個人主義が広がった。それとともに、これらを基礎づけるロックの思想が普及していった。そして、ロック思想の普及によって、人権の思想が発達し、各国において国民の権利が拡大されていったのである。

 次回に続く。
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米国学者グループが慰安婦問題で安倍首相に声明2

2015-05-29 10:17:59 | 現代世界史
 5月5日欧米を中心とする日本研究者や歴史学者187人が、「日本の歴史家を支持する声明」と題する文書を公表し、安倍首相宛てに送付されたと報じられる件については、産経新聞の古森義久氏(ワシントン駐在客員特派員)が、次のように書いている。
http://www.sankei.com/column/news/150517/clm1505170006-n1.html
 「この一文は『日本の歴史家』を支持する声明」とされていたが、『日本の歴史家』が誰かは不明、日本政府や国民への一方的な説教めいた内容だった」
 当然、米教育出版社「マグロウヒル」の世界史教科書の慰安婦問題に関する記述と同じ主旨のことを書いている歴史家だろう。同教科書は、「日本軍は14~20歳の約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に徴用し、慰安婦になることを強要した」「逃げようとして殺害された慰安婦もいた」などと強制連行があったかのように記述し、「日本軍は慰安婦を天皇からの贈り物として軍隊にささげた」と虚偽の内容を書いている。このような記述と同じような主張をしている自虐的・反日的な「日本の歴史家」を支持するというのが、先の声明と考えられる。
 古森氏は、声明の発信者について次のように分析している。
 「発信者とされる187人には『米国の日本研究者』とは異なるような人物たちも多い。安倍政権非難の活動に熱心な日本在住のアイルランド人フリー記者や性転換者の権利主張の運動に専念する在米の日本人活動家、作家、映画監督らも名を連ねる。中国系、韓国系そして日本と、アジア系の名も40ほどに達する」と。
 そして同声明は「米国全体からみれば極端な政治傾向の人物たちの主導で発せられた」とし、主導者について次のように書いている。
 「声明作成の中心となったコネティカット大学教授のアレクシス・ダデン氏は日本の尖閣や竹島の領有権主張を膨張主義と非難し、安倍首相を『軍国主義者』とか『裸の王様』とののしってきた。マサチューセッツ工科大学名誉教授のジョン・ダワー氏は日本の天皇制を批判し、日米同盟の強化も危険だと断じてきた。コロンビア大学教授のキャロル・グラック氏は朝日新聞が過ちだと認めた慰安婦問題記事の筆者の植村隆氏の米国での弁解宣伝を全面支援している。要するにこれら『米国の日本研究者』たちは米国の多数派の対日認識を含む政治傾向や歴代政権の日本への政策や態度よりもはるかに左の端に立つ過激派なのである」と。
 また、彼らのような反日・親中・親韓のニュー・レフト(新左翼)であっても、今回の声明では、「強制連行」「20万人」「性奴隷」という言葉は使っていない。
 声明については、拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏も発言している。その全文を転載にて紹介する。
2月5日米国の歴史学者19人が日本政府の訂正要求を拒否する声明を出したのに対し、3月17日秦郁彦氏ら日本の19人の有識者が連名で反論を行い、明確な事実誤認部分8カ所について、教科書出版社に訂正を求める声明を公表した。藤岡氏は、この19人のうちの一人である。

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●ZAKZAK 平成27年5月22~23日

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150522/dms1505221140010-n1.htm
欧米学者による「日本の歴史家を支持する声明」に異議あり 藤岡信勝氏緊急寄稿(上)
2015.05.22

 安倍晋三首相が8月に発表する「戦後70年談話」を見据えて、欧米を中心とした日本研究者450人以上が署名した「日本の歴史家を支持する声明」が注目されている。韓国や中国の「民族主義的な暴言」を問題視する一方、日本政府に慰安婦問題など「過去の清算」を促している。当初、「比較的フェア」という見方もあったが、専門家が分析すると「怪しさ」や「狡猾な罠」も感じられるという。日本の知識人による反撃の覚悟とは。拓殖大学の藤岡信勝客員教授が緊急寄稿した。

 欧米を中心とした各国の歴史学者・日本研究者187人の声明が発表されたのは今月5日だった。20日までに賛同者は457人に増加したと朝日新聞が報道している。朝日新聞、本日も反省なしか。
 声明の趣旨は、戦後70年にあたり、安倍首相は日本の過去の戦争における「過ち」について、「全体的で偏見のない清算」をするように呼びかけ、慰安婦問題の解決に「大胆な行動」を期待する、というものである。明示していないが、安倍首相の「戦後70年談話」で「謝罪」せよと要求したものであると考えられる。
 それにしても、この声明は一体、何なのか。まことに怪しい。
 まず、誰にあてて出されたものか、名宛人がハッキリしない。代表者が誰なのかも分からない(=声明の署名者一覧は、名字のアルファベッド順に並んでいるだけ。取りまとめ役の1人としては、慰安婦問題で日本に批判的なコネティカット大学のアレクシス・ダデン教授の名前が報じられている)。江戸時代、唐傘に円形に署名して首謀者を分からないようにした傘連判(かされんぱん)のようだ。連絡先の事務所も不明で、日付もない。いわば、怪文書の体裁だ。それでいて、首相官邸にも届けたというが、真偽、消息とも不明。
 タイトルは「日本の歴史家を支持する声明」である。この発想は、3月に米国の全米歴史学会の雑誌に投稿された「日本の歴史家たちと連帯する」とそっくりだ。この時は19人が署名した(後に1人が加わって20人)。テーマは米マグロウヒル社の世界史教科書に載っている、「慰安婦」というコラムの記述だった。
 昨年11月3日、産経新聞がマグロウヒル社の世界史教科書の内容を報道した。20万人の若い女性を強制連行し、天皇の贈り物であるとして部隊に下賜した-というデタラメ極まりない、ひどい内容である。すると、今まで動いたことのない日本の外務省が、11月から12月にかけて、マグロウヒル社に訂正の申し入れをした。
 米国から見ると日本は属国である。「この国はどんな辱めを受けても反撃してこない特殊なところだ」と高をくくっていたら、意外にも反乱を起こした。ここは示しをつけなければならない、という雰囲気で文書は書かれていた。日本の軍慰安婦は「国営性奴隷制」であるというのが、本質規定だった。
 ところが、今回の声明には「強制連行」「性奴隷」「20万人」などの言葉がすっかり消えているのである。驚くべき変化だ。
 実は、5月の187人の署名者の中には、3月の19人の文書にも名を連ねた人物が12人もいるのである。3月の声明と5月の声明の間に、一体何があったのか。そこには、日本側の毅然とした反論があったのだ。

米大学名誉教授ら450人超署名
 問題の声明は今月5日、「日本の歴史家を支持する声明」として発表された。ベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者であるハーバード大学のエズラ・ボーゲル名誉教授ら187人が名前を連ねていたが、21日までにオランダ人ジャーナリスト、イアン・ブルマ氏ら約270人が新たに署名し、450人を超えたという。
声明の中身だが、「戦後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、政治的寛容さなどは祝福に値する」としたうえで、「慰安婦問題などの歴史解釈が(祝福の)障害となっている」と指摘している。
 一方で、「韓国と中国の民族主義的な暴言にもゆがめられてきた」と明言。韓国側が「20万人以上」などと主張する慰安婦の数についても「恐らく、永久に正確な数字が確定されることはない」とした。韓国や左派勢力が使う「性奴隷」(Sex slaves)といった言葉は使われていない。
 安倍晋三首相が4月の米上下両院合同会議での演説で「人権という普遍的価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性」について語ったことを称賛し、「その一つ一つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません」と訴えている。
 声明の最後には「ここに表明されている意見は、いかなる組織や機関を代表したものではなく、署名した個々の研究者の総意にすぎません」とあった。(続く)

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150523/dms1505231530004-n1.htm
欧米学者声明に異議 “持ち上げ”は慰安婦で謝罪させる罠か 藤岡信勝氏緊急寄稿(下)
2015.05.23

 3月に出された声明「日本の歴史家たちと連帯する」(19人が署名。後で1人加わる)と、5月の「日本の歴史家を支持する声明」(187人が署名。現在は450人超)の間には、日本側の毅然とした動きがあった。現代史家の秦郁彦氏を代表とする日本の歴史家19人が3月17日、米大手教育出版社「マグロウヒル」の教科書の誤り8カ所を指摘し、同社に訂正勧告をしたのだ。
 一例をあげよう。
 教科書は、慰安婦の総数を「20万人」としつつ、「慰安婦が毎日20人~30人の男性を相手にした」と書いている。そうすると、日本軍は毎日、400万回~600万回の性的奉仕を調達したことになる。他方、相手となるべき日本陸軍の海外兵力は、最盛期の1943年で100万人であった。そこで、教科書に従えば、彼らは全員が「毎日4回~6回」慰安所に通ったことになる。これでは戦闘準備をする時間はおろか、まともに生活する暇もなくなる。
 こうした反論は、手裏剣のように相手の論理の急所に突き刺さった。さすがに「20万」という数字は言えなくなった。この推定が当たっているとすると、日本からの訂正勧告は、今年の歴史戦の大戦果の1つになる。
 5月声明の187人の署名者の中には、3月声明の19人の文書にも名を連ねた人物が12人もいる。それらの人々が自説を変えたのなら、まずマグロウヒル社の教科書是正をわれわれと一緒に要求すべきだ。
187人の声明では、戦後日本の国際貢献をやたらに持ち上げている。「世界の祝福に値する」とまで言う。だが、それは1つの伏線で、その祝福を受けるにあたって障害となっているものが「歴史解釈」の問題だとして慰安婦問題を持ち出すのである。
 「20世紀に繰り広げられた数々の戦時における性的暴力と軍隊にまつわる売春のなかでも、『慰安婦』制度はその規模の大きさと、軍隊による組織的な管理が行われたという点において、そして、日本の植民地と占領地から、貧しく弱い立場にいた女性を搾取したという点において、特筆すべきものであります」
 何のことはない。「19人」は刑事部屋の鬼刑事である。被疑者を恫喝(どうかつ)して、ひたすら自白させようとする。嘘がバレてうまくいかなくなったので、今度は「187人」が温情刑事として登場する。「お前さんはいいこともした。罪を認めて謝罪すればもっと褒められる」という。どっちも日本に謝罪させようとする目的は同一なのだ。
 日本政府は怪文書(声明)を無視したらいい。われわれ民間は徹底的に論争する。反日包囲網を敷かれても真実はこちらにあるから、必ず勝利する、と私は確信している。 =おわり
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関連掲示
・拙稿「慰安婦問題:米教科書会社に秦郁彦氏らが訂正要求」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/7464ca0fabc8f24ce6c47cf64400a7a5
・拙稿「米教科書が7年以上前から、慰安婦は『30万人』『強制連行』と記述」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/s/%A5%DE%A5%AF%A5%B0%A5%ED%A5%A6
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竹島問題:マッカーサー・テレグラムと米国の態度

2015-04-22 09:27:12 | 現代世界史
 テキサス親父ことトニー・マラーノ氏が、2月中旬に来日し、講演や対談、取材対応等を行った。その中でマラーノ氏は、竹島に関して「マッカーサー・テレグラム」について触れた。それがきっかけで、マッカーサー将軍の甥、ダグラス・マッカーサー2世元駐日米国大使が本国に向けて出した秘密電報に改めて注目が集まっている。本件について紹介し、私見を述べる。

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●ZAKZAK 平成27年2月24日付

http://news.livedoor.com/article/detail/9820058/

竹島は日本の領土…マッカーサー秘密電文に注目集まる
2015年2月24日 17時12分
ZAKZAK(夕刊フジ)

 韓国が不法占拠を続ける島根県・竹島の返還を求める22日の「竹島の日」記念式典に、韓国政府は相変わらず抗議をしてきた。歴史的にも国際法上も、竹島は日本固有の領土だが、いつまで隣国はウソをつき続けるのか。こうしたなか、かつての駐日米国大使の秘密電文が注目されている。
 「実に嘆かわしい」「歴史に逆行する行為だ」
 韓国外務省は、島根県主催の式典に3年連続で内閣府政務官が出席したことを受け、報道官声明を発表した。ソウルの日本大使館前では抗議集会が行われ、液体入り容器を大使館に投げつけた男が連行された。
 毎年繰り返される醜い光景だが、日韓国交正常化から50年、朴槿恵(パク・クネ)大統領率いる韓国はそろそろ、米高官が「竹島=日本領」と認めた決定的証拠を受け止めるべきだ。
 これは「マッカーサー・テレグラム(電文)」と呼ばれるもので、1960年4月、GHQ(連合国総司令部)最高司令官、マッカーサー元帥の甥で、当時、駐日米国大使だったダグラス・マッカーサー2世が米国務省に送った秘密電文である。
 機密扱いが解除され、「テキサス親父」こと、米評論家のトニー・マラーノ氏が、ワシントンの国立公文書館の責任者から「本物の書類を合法的にコピーしたもの」と確認した。そこには、こう記されていた。
 《日本海にある竹島は日本の領土である》《韓国は力ずくで不法占拠している》《われわれ米政府は、韓国に圧力をかけて、この島を日本に返さなければならない》《最低限、われわれはこの件を国際司法裁判所に付託し、仲裁を求めることに合意するよう主張すべきである》
 これ以外にも、米国のラスク極東担当国務次官補は51年、梁(ヤン)駐米韓国大使に対し、竹島について《われわれの情報によれば朝鮮の一部として取り扱われたことが決してなく、1905年ごろから日本の島根県隠岐島支庁の管轄下にある》との書簡(ラスク書簡)を送っている。
 韓国が、国際社会のルールを無視して不法行為を続けているのだ。

●Wikipedia ダグラス・マッカーサー2世

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC2%E4%B8%96
(略)
日韓関係への言及
 駐日大使在任中の1960年4月26日、韓国の四月革命によって李承晩大統領が失脚し亡命に追い込まれると、それまで李政権がとっていた対日強硬路線によって悪化の一途をたどっていた日韓関係を懸念したマッカーサーは、翌27日には本国国務省に宛ててこの千載一遇の機会にアメリカがとるべき行動を提言した電文を送付している。これが「マッカーサーの電報」として知られる国務省機密電文3470号である。



 この文書の中でマッカーサーは、竹島は古来日本の領土と認識されている島であり、これを李政権が武力によって不法に占拠したものであると明記している。そして、人質外交をやめさせ、人質となっている日本人漁師を直ちに解放させるべきである、李承晩ライン周辺の韓国領海外の公海上で日本の漁船を拿捕する行為を中止させるべきである、韓国の次期政権に対して竹島を日本に返還するよう圧力をかけるべきである、次期政権にいかなる形においても竹島を返還する意思がない場合には、米国は最低限でもこの件を国際司法裁判所に付託し仲裁を求めるよう主張すべきである、などの提言をつづっている。(略)
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 ここで指摘したいのは、マラーノ氏も wikipedia の記事も触れていない「マッカーサー・テレグラム」への米国政府の対応についてである。
 戦後、韓国大統領となった李承晩は、昭和27年(1952)1月18日、一方的に公海上に軍事境界線、いわゆる李承晩ラインを設定して、竹島を自国の領土に含めようとした。そして、日本の漁船を拿捕した。同年4月に講和条約が発効して日本が再独立する直前の出来事だった。
 海上保安庁や島根県は28年6月、竹島に調査上陸して領土標識を建て、韓国漁民を退去させたが、翌月には竹島に上陸した韓国側が海保の巡視船を銃撃する事件が起きた。また、29年8月には、巡視船が約200発もの銃撃を浴びた。
 李承晩は大統領に4選されたが、昭和35年(1960)4月26日、韓国の四月革命で失脚し、ハワイに亡命した。駐日米国大使マッカーサー2世が本国国務省に電報を送ったのは、その翌日である。この秘密電報は、竹島は古来日本の領土と認識されている島であり、これを李政権が武力によって不法に占拠したものであるという認識が明記されている点で、価値あるものである。
 だが、もう一つ重要なのは、米国政府はこれに対して適切な対応を取らなかったことである。当時の大統領はドワイト・アイゼンハワー、国務長官はクリスチャン・ハーターだった。米国は、李承晩が占領下日本の領土である竹島を不法占拠しても、占領者として実力でこれに排除せず、以後不法占拠を容認し、李承晩失脚後、マッカーサー2世駐日大使が提言をしても、基本的な態度を変えなかったということである。
 昭和26年(1951)に極東担当国務次官補として駐米韓国大使にラスク書簡を送ったディーン・ラスクは、昭和36年(1961)ケネディ政権の国務長官に昇進した。ラスクは、極東事情に精通した政治家だったが、彼もまた米国の基本的な態度を変えることがなかった。
 ラスクがジョンソン政権で国務長官を務めていた時期、昭和40年(1965)6月22日に日韓基本条約が締結された。同条約において、竹島問題は解決していない。同条約の締結まで、李承晩ラインを越えたことを理由に韓国により、日本漁船328隻が拿捕され、日本人44人が殺傷、3929人が抑留された。これに対し、わが国は、有効な対抗策を講じることなく、韓国の不法占拠を許したまま、竹島の実効支配を受ける状態となっている。こうした現状は、わが国政府の大失策の結果である。
 それと同時に、この背景には、米国の意思があったと考えられる。すなわち、日本とソ連の間には北方領土、日本と韓国の間には竹島、日本と中国の間には尖閣諸島というように、地域諸国間に領土をめぐる問題があるようにして、互いにけん制させ、連携して米国に対抗しないようにするという、外交手法があると考えられるのである。わが国としては、こうした可能性も考慮した上で、領土問題の解決に対して戦略的な取り組みをする必要がある。
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イスラム過激組織のテロから日本を守れ8

2015-02-26 08:48:33 | 現代世界史
●テロ対策のための課題

 日本国民は、深刻さを増しつつある中東情勢を踏まえつつ、1月20日のISILによるテロ攻撃宣言に対し、早急に具体的な対応課題への取り組みを進めなければならない。
 最初に有識者の意見を紹介し、その後、私見を書く。
 元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は、日本国民に対し、ISILとの戦いに勝たなければならないと説いている。
 「かつてソ連共産党が結成したコミンテルンは世界中の共産党を支部と位置づけ、全世界で共産主義革命を起こそうとしていた。イスラム国も同じだ。日本にもドイツにも、フランスにもイスラム国の支持者がいる。それが緩やかなネットワークでつながり、それぞれの国内でテロを起こさせ、世界イスラム革命を起こすことが彼らの目的となっている。
 日本とイスラム国との戦争はすでに始まっており、敵は日本国内にもいる。昨年にはイスラム国の戦闘員に加わろうとシリア渡航を企てたとして、北海道大学の男子学生らが家宅捜索を受けた。こうした法規違反に関し、日本政府は厳正に対処していくべきだ。
 日本国民は勝つか、消し去られるかという戦争をしている。この戦争には勝たないといけない。今回の事件にひるむことなく、中東支援を続け、イスラム国の壊滅に向けた行動を続けていくべきだろう」と。
 佐藤氏は「戦争」という語で何を意味しているか不明である。現在、わが国はISILと武力行使による国家間の闘争という狭義の戦争を行っていない。また、現代世界におけるテロとの戦いを広義の戦争と呼ぶとしても、それを「勝つか、消し去られるかという戦争」ととらえるのは、過剰反応だろう。私は、過剰反応に陥ることなく、世界的なテロの横行の時代における安全保障体制の強化を図るべきだと思う。
 そうした方向での意見として、まず初代内閣安全保障室長・佐々淳行氏は、首相直属の内閣情報宣伝局(仮称)の創設が必要だと説いている。
 「安倍晋三首相のテロへの際立って毅然とした陣頭指揮は高く評価される。オバマ米大統領をはじめとする先進諸国首脳との電話会談など、危機管理宰相として頼もしい限りだ。『極めて卑劣な行為であり、強い憤りを覚える』と怒りを露わにし、テロに屈しない国家であることを強く主張してきた」。
 「『飛耳長目』とは、松下村塾の吉田松陰が大切にしていた言葉と聞く。山口は安倍首相の故郷である。遠く離れた地の情報を見聞きして収集するという意味の言葉で、内外の情報を収集する機関を表現するのにぴったりの言葉だ。
 しかし現実の日本には、首相直属の積極的情報機関がない。高度な情報能力を有する米CIAや英MI6、独BND、仏DGSE、イスラエル・モサドなどの情報機関に全面的にいつまでも頼っていてはいけない。今回の事件とアルジェリア事件で、首相直属の内閣情報宣伝局(仮称)の創設の必要性を思い知らされた」と。
 次に、元外交官で現在キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏は、セキュリティの強化、国際レベルの情報分析能力を備えた対外情報機関の創設、国家安全保障会議(NSC)と危機管理の分業体制の構築を提案する。
 「今、日本人が考えるべきことは、この事件を政争の具とするのではなく、事件から正しい教訓を汲み取り、さらなる人質事件発生を未然に防ぐためにも、長年の懸案であった“宿題”を処理することではないか」
 「第1は、先に述べたテロのグローバル化現象を踏まえ、日本内外の日本人・日本企業の安全確保について今一度再点検することだろう。今回の事件はシリア国内で起きたが、将来、これが東南アジアや日本国内で起きないとはもはや言えなくなったからだ。
 第2は、国際レベルの情報分析能力を備えた対外情報機関を、既存の官僚組織の枠の外に、早急に設置することだ。現在の外務・警察の官僚的発想だけでは、国際的に通用するインテリジェンス・サービスなど到底作れないと思う。
 第3は、国家安全保障会議(NSC)と危機管理の分業体制を改めて構築することではないか。今回のように邦人保護・危機管理と、国家安全保障が幾層にも交錯する事件こそ、オペレーションと政策立案実施を分けて立体的に実務を処理すべきだからだ」と。
 次に、帝京大学教授・志方俊之氏は、安全保障法制の整備を提案する。
 「国家としての危機管理事案は、個人の拉致・監禁だけではない。集団として拘束され、関係国が軍事的に協力して救出する事案も考えておかなければならない」「自衛隊法には「在外邦人等の輸送(84条3)」という任務がある。輸送の任務に限って自衛隊の艦艇、輸送機、ヘリコプター、車両を派遣することができる」「現地には日本人だけで構成されている企業体などほとんどない。緊急退去を要するのは多くの国籍を持つ人たちである。港湾地区へ通ずる経路が3本あったとして、自衛隊がその1本の経路を警護して輸送し、他の経路を2つの関係国の軍隊が警護するケースは十分に起こり得る。集団的自衛権の行使が限定的にすら許されていない現行の法解釈では、自衛隊員の武器使用の『行動基準(ROE)』は極めて限られている。現場の自衛隊員は入隊時に宣誓した日本国憲法第9条を反芻しながら銃の引き金を引くことになる。国連平和維持活動(PKO)における『駆け付け警護』も同質の問題が起きる。二言目には『文民統制』と言う日本の政治は、今回の事件を機に明確な安全保障法制の整備をすべきだ」と。
 以上の各氏の意見に私は賛成である。

 次回に続く。
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「現代の眺望と人類の課題」第2版をアップ

2014-09-21 08:49:09 | 現代世界史
 「現代の眺望と人類の課題」第2版をマイサイトに掲示しました。ブログに連載した1970年代以降の現代世界史は、第8章以下に当たります。まとめてお読みになりたい方は、下記へどうぞ。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09f.htm
 また、この機会に「現代の眺望と人類の課題」初版の第9章以下を独立させ、「現代世界の支配構造とアメリカの衰退」と題して別に掲示しました。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09k.htm
 以上、ご案内いたします。
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現代世界史45~新しい精神文化の興隆

2014-09-18 08:17:14 | 現代世界史
 最終回。

●日本から新しい精神文化の興隆が待望されている

 精神科学発達のための計画は、従来の宗教や霊的伝統の再評価にとどまるものであってはならないだろう。私は、拙稿「心の近代化と新しい精神文化の興隆」において、西欧発の近代化の進行を、心の近代化という観点からとらえ、人々の心は全面的に「近代化=合理化」するのではないことを論じ、21世紀における新しい精神文化の興隆について書いた。
 キリスト教、イスラム、仏教等の伝統的宗教は、紀元前から古代にかけて現れた宗教であり、科学が発達し、人々の意識が向上するにつれて、その役割を終え、発展的に解消していくだろう、と私は考える。
 現代は科学が発達した時代である。従来の宗教では人々の心は満たされない。従来の宗教は、天動説の時代に現われた宗教である。今では、地球が太陽の周りを回っていることは、小学生でも知っている。パソコンやスマートフォンや宇宙ステーション等がないどころか、電気や電燈すらなかった時代の宗教では、到底、現代人の心を導けない。
 伝統的宗教の衰退は、宗教そのものの消滅を意味しない。むしろ既成観念の束縛から解放された人々は、より高い精神性・霊性を目指すようになり、従来の宗教を超えた宗教を求めるようになると考える。近代化の指標としての識字化と出生調節は、人々が古代的な宗教から抜け出て、精神的に成長し、さらに高い水準へと向上する動きの一環だろうと私は思う。
 「近代化=合理化」が一定程度進み、個人の意識が発達し、世界や歴史や宇宙に関する知識が拡大したところで、なお合理化し得ない人間の心の深層から、新しい精神文化が興隆する。新しい精神文化は、既成宗教を脱した霊性を発揮し、個人的(パーソナル)ではなく超個人的(トランスパーソナル)なものとなる。それに応じた政治・経済・社会への改革がされていく。
 いまや科学が高度に発達した時代にふさわしい、科学的な裏付けのある宗教の出現が求められている。これからは、新しい精神科学的な宗教を中心とした、新しい精神文化の興隆によって、近代文明の矛盾・限界を解決する道が開かれるだろう。(註1)
 人類は、この地球において、真の神を再発見し、宇宙・自然・生命・精神を貫く法則と宇宙本源の力にそった文明を創造し、新しい生き方を始めなければならない。そのために、今日、科学と宗教の両面に通じる精神的指導原理の出現が期待されている。世界平和の実現と地球環境の回復のために、そしてなにより人類の心の成長と向上のために、近代化・合理化を包越する新しい精神文化の興隆が待望されているのである。
 今後、現れるべき精神文化は、自然と調和し、太陽光・風力・水素等の自然エネルギーの活用による「21世紀の産業革命」と協調するものとなるだろう。こうした動きが拡大していって、初めて世界の平和と人類の繁栄を実現し得ると私は考える。
 新しい精神文化の出現が最も期待される地域は、精神文化の豊かな伝統を持ったアジアである。ここにおいて日本文明が担うべき役割には、まことに大きなものがある。西欧において始まった近代化を、非西洋社会で初めて成し遂げ、独自の展開をしてきた日本文明は、新しい精神文化の興隆が待望される時代に、大きな貢献を果たす可能性を秘めている。

 現代世界人類の二大課題は、世界平和の実現と地球環境の保全である。そのためには、核戦争を防ぎ、また環境と調和した文明を創造しなければならない。これらの課題を実現するうえで、日本には重要な役割がある、と私は確信している。人と人、人と自然が調和する日本精神には、人類の文明を転換し、この地球で人類が生存・発展していくための鍵があると思う。
 人類は、21世紀に物心調和・共存共栄の新文明を地球上に創造できるかどうかに、自らの運命がかかっている。日本人は、人類の一員として、自らの特徴を発揮し、物心調和・共存共栄の新文明の実現に貢献することによってのみ、自らの運命を切り開くことができる。
 すべては、日本及び日本人の自覚と行動にかかっている。日本及び日本人は、自らに与えられた使命を担い、自己の本質に沿って進まないと、逆に混迷・衰亡の方向に陥ってしまうことになるだろう。
 私たち日本人は、この21世紀において、日本精神を取り戻し、世界的にユニークな日本文明の特長を活性化し、新しい世界秩序の構築と、新しい人類文明の創造に寄与したいものである。(了)

註1 「新しい精神科学的な宗教」と「新しい精神文化の興隆」については、次のサイトをご参照下さい。
http://www.srk.info/
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現代世界史44~科学と宗教の融合

2014-09-17 06:28:34 | 現代世界史
●科学と宗教が融合する時代へ

 第2次世界大戦後の現代世界において、西欧発の近代化革命が、地球規模で加速度的に進行している。
 近代化革命」つまり近代化の過程は、科学の発達と宗教の後退の歴史だった。西欧では15世紀以降、「呪術の追放」によって宗教が合理化され、17世紀の科学革命によって合理主義が進展した。18世紀以降、啓蒙主義の高揚が人知への過信をもたらした。その結果、西欧人の多くは神を見失った。その影響で、人類の多くが神を見失った。神といっても、聖書の物語の中に描かれている神ではない。真の神とは、宇宙・自然・生命・精神を貫く法則であり、万有顕現の原動力のことである。現代人は、こうした意味の神を見失い、自らが神に成り代わったかのように錯覚している。宗教はますます後退し、精神性・霊性は、物質的な享楽の中に埋没しかかっている。西欧を中心として世界的に、近代化革命の進展とともに「脱宗教化=世俗化」とニヒリズムが広がっている。
 ところが驚くべきことに、20世紀に入って以降、科学の側から、この展開を逆転させる動きが現れている。科学の先端において、精神性・霊性への関心が高まってきている。科学の時代から精神の時代へ、あるいは物質科学文化の時代から精神科学文化の時代への転換ともいえるような、巨大なパラダイム・シフトが起こりつつある。
 20世紀の新しい物理学、量子力学や相対性理論によって、物理学ではパラダイム・シフトが始まっている。そのことを明らかにした物理学者の一人が、フリッチョフ・カプラである。カプラは、名著『ターニング・ポイント』(1984年)で、次のように書いている。
 「現代物理学から生まれつつある世界観は、機械論的なデカルトの世界観とは対照的に、有機的なホリスティック(全包括的)な、そしてまたエコロジカル(生態学的)な世界を特徴としている。それはまた、一般システム論という意味で、システム的世界観と呼ぶこともできる。そこではもはや、世界は多数の物体からなる機械とは見なされていない。世界は不可分でダイナミックな全体であり、その部分は本質的な相互関係を持ち、宇宙的過程のパターンとしてのみ理解できるとする」
 カプラは、現代物理学の世界観が、東洋に伝わる伝統的な世界観に非常によく似ていることを発見した。『老子』や『易経』や仏典に表わされている宇宙の姿と、量子力学や相対性理論が描く世界像とが近似しているという。このことをカプラは、『物理学の道(タオ)』(1975年、邦題『タオ自然学』)という本で発表し、世界的に話題を呼んだ。
 これは決してカプラ個人の見方ではない。20世紀の名だたる物理学者たち、不確定性原理のウェルナー・ハイゼンベルグや波動方程式のエルヴィン・シュレーディンガーが、かつては単なる神秘思想と思われていたインド哲学に深い関心を持ち、コペンハーゲン解釈のニールス・ボーアは晩年シナの易学の研究に没頭した。カプラの師、ジェフリー・チューは自分の靴ひも理論が大乗仏典の内容とそっくりなことに驚愕している。
 カプラは言う。「東洋思想がきわめて多くの人々の関心を呼び起こしはじめ、瞑想がもはや嘲笑や疑いを持って見られなくなるに従い、神秘主義は科学界においてさえ、真面目にとりあげられるようになってきている。そして神秘思想は現代科学の理論に一貫性のある適切な哲学的裏付けを与えるものという認識に立つ科学者が、その数を増しつつある。人類の科学的発見は、人類の精神的目的や宗教的信条と完全に調和しうる、という世界観である」(『ターニング・ポイント』)
 こうしてカプラは、科学と宗教とが調和・融合する新しい時代の到来を、世界の人々に伝えている。

●「心のアポロ計画」を推進する

 大脳生理学者・カール・プリブラムも、次のように語っている。
 「従来の科学は、宗教で扱う人類の精神的側面とは相容れないものだった。いま、これが大きく変わろうとしている。21世紀は科学と宗教が一つとして研究されるだろう。このことはあらゆる面でわれわれの生き方に重大な影響を及ぼすだろう」(プリブラム他著『科学と意識』)
 科学と宗教が一つのものとして研究され、それが私たちの生活に大きな影響をもたらすーーこうしたことを唱えているのは、カプラやプリブラムだけに止まらない。物理学や生物学や認知科学など、さまざまな分野の科学者が、科学と宗教の一致を語っている。
 われわれは、科学と宗教が分離し対立した近代を経て、改めて科学と宗教がより高い次元で融合すべき新しい段階に入っているのである。
 ここにおいて、再評価されつつあるのが、宗教の存在と役割である。
 カプラは、次のように書いている。「われわれが豊かな人間性を回復するには、われわれが宇宙と、そして生ける自然のすべてと結びついているという体験を回復しなければならない。宗教(religion)の語源であるラテン語のreligareはこの再結合を意味しており、それはまさに精神性の本質であるように見える」と。(『ターニング・ポイント』)
 まさしく、われわれは、科学の時代から精神の時代、物質科学文化の時代から精神科学文化の時代への転換期にある。この時代の方向指示者の一人として、数理科学者のピーター・ラッセルは、「心のアポロ計画」という注目すべき提案をしている。ラッセルは、名著『ホワイトホール・イン・タイム』(1992年)で、次のように言う。
 「今日、人類はまっさかさまに破局へ突っ込んでいく事態に直面している。もし本当に生き残りたかったら、そして私たちの子供や、子供の子供たちに生き残ってほしかったら、意識を向上させる仕事に、心を注ぐことこそが最も大切なことである。破壊的な自己中心主義から人類を解き放つための全世界的な努力だけが必要である。つまり、人類を導くための地球規模のプログラム、”心のアポロ計画”が要求されているのである」
 アポロ計画とは、1960年代に宇宙時代を切り拓いた米国の宇宙開発計画である。それは、物質科学文明のピークを歴史に刻んだ。人類が月に着陸し、月面から撮った宇宙空間に浮かぶ地球の写真は、人々に地球意識を呼び起した。これに比し、「心のアポロ計画」は、この宇宙時代にふさわしい精神的進化を追及するプロジェクトである。
 このプロジェクトでは、心理的な成熟や内面の覚醒を促す技術の研究開発に焦点が当てられる。そこに含まれるテーマは、次のようなものである。

◆神経科学と心理学に焦点を当て、心の本質を理解する。
◆自己中心主義の根拠をもっと深く研究する。
◆霊性開発のための現在ある方法を全世界的に調査する。
◆新しい方法を探すとともに、現在ある方法の協同化を進め、発見されたものの応用と普及を図る

 提唱者ラッセルによると、この計画に巨額な資金は必要としない。
 「毎年全世界が“防衛”に費やしている1兆ドルの1パーセント足らずで、すべてがうまくいくはずである」とラッセルは言っている。
 私はこの「心のアポロ計画」に賛同する者である。世界の有識者は、早急にこの精神科学発達プログラムを促進すべきである。だが、ラッセルが「心のアポロ計画」を提唱してから、既に20年以上経っているが、世界規模での具体的な取り組みはされていない。国連等の国際機関で、すみやかにその取り組みを開始すべきである。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「“心の近代化”と新しい精神文化の興隆~ウェーバー・ユング・トランスパーソナルの先へ」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09b.htm
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現代世界史43~日本文明の特徴を生かす

2014-09-16 08:51:35 | 現代世界史
●日本文明の特徴を生かして世界平和に貢献する

 日本文明は、非セム系自然教文明群で独自の特徴を持つ。その特徴は、セム系一神教文明群にも非セム系自然教文明群にも見られないユニークなものである。文明の中核には、宗教がある。日本文明の固有の宗教とは、何か。神道である。神道が他の主要な宗教と異なる点は、海洋的な要素を持っていることである。セム系一神教であるユダヤ教・キリスト教・イスラムや非セム系自然教である道教・儒教・インド教・仏教は、どれも大陸で発生した。大陸的な宗教を中核にすることによって、セム系一神教文明も非セム系自然教文明も、ともに大陸的性格を持っている。21世紀の世界で対立を強めている西洋文明、東方正教文明、イスラム文明、シナ文明には、大陸的な性格が共通している。
 これに比べ、神道は海洋的な要素を持ち、日本文明に海洋的な性格を加えている。これは、四方を世界最大の海・太平洋をはじめとする海洋に囲まれた日本の自然が人間心理に影響を与えているものと思う。この視点から見ると、世界の諸文明は大陸的文明群と海洋的文明群に分けられる。
 私は、セム系一神教文明を中心とした争いの世界に、非セム系自然教文明群が融和をもたらすために、日本文明の担うべき役割は大きいと思う。日本文明のユニークな海洋的性格が、大陸的文明同士の摩擦を和らげ、大いなる調和を促す働きをすることが期待される。
 ハンチントンは、文明は衝突の元にもなりうるが、共通の文明や文化を持つ国々で構築される世界秩序体系の元にもなりうる、と主張した。文明内での秩序維持は、突出した勢力、すなわち中核国家があれば、その勢力が担うことになると説く。また、文明を異にするグループ間の対立は、各文明を代表する主要国の間で交渉することで解決ができるとし、大きな衝突を回避する可能性を指摘している。そして、日本文明に対して、世界秩序の再生に貢献することを期待した。
ハンチントンは「日本国=日本文明」であり、一国一文明という独自の特徴を持っていると指摘した。9・11の翌年刊行した『引き裂かれる世界』で、ハンチントンは日本への期待を述べた。
  「日本には自分の文明の中に他のメンバーがいないため、メンバーを守るために戦争に巻き込まれることがない。また、自分の文明のメンバー国と他の文明との対立の仲介をする必要もない。こうした要素は、私には、日本に建設的な役割を生み出すのではないかと思われる。
 アラブの観点から見ると、日本は西欧ではなく、キリスト教でもなく、地域的に近い帝国主義者でもないため、西欧に対するような悪感情がない。イスラムと非イスラムの対立の中では、結果として日本は独立した調停者としての役割を果たせるユニークな位置にある。また、両方の側から受け入れられやすい平和維持軍を準備でき、対立解消のために、経済資源を使って少なくともささやかな奨励金を用意できる好位置にもある。
 ひと言で言えば、世界は日本に文明の衝突を調停する大きな機会をもたらしているのだ」と。
わが国は、世界平和を実現するために、中東におけるイスラエルとアラブ諸国の対立を和らげるように助力しなければならない。世界的にユニークな特徴を持つ日本文明は、西洋文明とイスラム文明の抗争を収束させ、調和をもたらすためにも重要な役割があることを自覚すべきである。

 それとともに日本は、太平洋を隔てて、西洋文明の中核国家・米国とシナ文明の中核国家・中国の間に位置する。日本文明は、自己の存立のために、西洋文明とシナ文明の融和を図らざるを得ない環境にある。
 超大国アメリカは、衰退の兆しを示している。主体性のない盲目的な従米は、一蓮托生の道である。アメリカが没落すれば、日本も一緒に没落する。わが国はまず独立主権国家としての自主性・主体性を取り戻すことが必要である。憲法を改正し、自主国防を整備し、その力の裏づけを持ってはじめて国際社会で発言力・影響力を発揮することができる。そして、アメリカとの関係を従属から対等の関係に転じていけるように進めなければならない。
 次にわが国は、共産中国に対して毅然とした姿勢を貫く必要がある。独立主権国家としての自主性・主体性を失い、中国にこびへつらう態度を取れば、強大化する中国に日本は呑み込まれかねない。中国外務省筋による2050年の東アジアの予想地図によると、日本の西半分は中国の一部としての東海省となり、東半分は日本自治区と記されている。日本が中国の支配下に入り、民族が分断統治されているという予想地図である。わが国は、独立主権国家、一国一文明の誇りを以て、国家を再建し、このような中国共産党の願望を打ち砕かねばならない。
 中国は、反日以外には国民を統合する原理を持てなくなっており、また唯物的な経済成長が行き詰まっている。覇権主義的な姿勢を強め、世界各地から資源を確保しようと躍起になっている。自然を支配し、搾取する共産主義思想により、自然環境の悪化もすさまじい。中国がこのまま破壊的な行動を続けるならば、人類の将来は中国によって破滅の方向に引きずり込まれるだろう。それを避けるために、わが国は、中国の民主化を促進し、共産主義が支配する以前のシナ文明の伝統、道教・儒教をはじめとする自然教の伝統が蘇るように助力する必要がある。共産主義によって変質したシナ文明の再生には、日本文明の伝播が触媒作用を果たすだろう。

 次回に続く。
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現代世界史42~日本から共存共栄の道を広める

2014-09-15 10:30:39 | 現代世界史
●日本から共存共栄の道を広める

 現代の人類は、共存共栄の世界を実現することを課題の一つとしている。共存共栄とは、自然の法則と調和して、個人と個人、国家と国家、民族と民族が共存調和して、共に繁栄することである。
 だが、現代世界で最も強い影響力を持っている価値観は、自己本位で利己的な傾向を持っている。それが、西欧発の文明において形成されたアングロ=サクソン・ユダヤ的な価値観である。アングロ=サクソン・ユダヤ的な価値観は、資本主義を生み出した。資本主義は合理的かつ組織的な生産を実現し、人類の欲望を解放した。またこの価値観は、グローバリズムすなわち地球統一主義または地球覇権主義の思想を生み出し、米国政府と巨大国際金融資本がこれを推進している。
 アングロ=サクソン・ユダヤ的な価値観が作り出した経済機構を改革しないと、人類は欲望の増大によって地球を食い荒らし、自滅に至るだろう。だが、この経済機構を改革する方法は、資本主義を全く否定することからは生まれない。合理的かつ組織的な生産を実現した資本主義を改善し、現在の経済機構を利己的・部分的ではなく、人類全体を益するように管理する仕組みを創ることが必要である。この仕組みを作るためには、物質的な発展・繁栄だけを追及する価値観ではなく、自然と調和し、また人間が精神的に成長・向上することを追及する価値観が高揚・普及しなければならない。そうした価値観の発達において、日本的な価値観が重要な役割を果たすだろう。そして日本的な価値観が指し示す共存共栄の道こそ、21世紀の世界人類が歩むべき道と私は考える。
 日本に伝わる共存共栄の道を世界に広めるには、まず日本国が独立主権国家としてのあり方を確立し、その上で日本的価値観に基づく外交を積極的かつ戦略的に展開する必要がある。

 わが国は、今日の国際社会で、国家間関係(international relationship)においてだけではなく、文明間関係(inter-civilizational relationship)においても、地球全体のキーポイントとなる立場にある。そこで、日本文明の特長を良く発揮することが、日本人に求められている。
 ハンチントンは、現代世界には、7または8つの文明が存在すると説いたが、世界の諸文明は、単に併存しているのではなく、大きく二つのグループに分けることができる。二つのグループとは、セム系一神教文明群、非セム系自然教文明群の二つである。
 セム系一神教文明群は、ハンチントンのいう西洋文明、東方正教文明、イスラム文明の三つが主要文明である。私はその周辺文明の一つとして、ユダヤ文明を挙げる。セム系一神教文明群の担い手は、超越神によって創造された人間の子孫であり、アブラハムを祖先とすると信じられている。宗教的には、ユダヤ教、キリスト教、イスラムである。その超越神は、観念的な存在であり、神との契約が、これらの宗教の核心にある。地理学的・環境学的には、砂漠に現れた宗教という特徴を持つ。砂漠的な自然が人間心理に影響したものと考えられる。
 これに対し、非セム系自然教文明群とは、ハンチントンのいう日本文明、シナ文明、ヒンズー文明を中心とする。いわゆる東洋文明はこれである。これらの文明では自然が神または原理であり、人間は自然からその一部として生まれた生命体である。文明の担い手は、自然が人間化したものとしての人間である。宗教的には、日本の神道、シナの道教・儒教、インド教、仏教、アニミズム、シャーマニズムである。地理学的・環境学的には、森林に現れた宗教という特徴を持つ。森林的な自然が人間心理に影響したものと考えられる。
 
 世界の不安定の要因の一つである西洋文明とイスラム文明の対立は、同じセム系一神教文明群の中での対立である。イスラエルの建国後、アラブ諸国はイスラエルと数次にわたって戦争を行い、またアメリカと湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争等で戦っている。また東方正教文明の中核国家だった旧ソ連とはアフガン戦争で戦い、今日は旧ソ連圏のイスラム教徒が中央アジア各地で、ロシアと戦っている。これは、イスラエルやロシアを含めたユダヤ=キリスト教系諸文明とイスラム文明の対立・抗争である。アブラハムの子孫同士の戦いであり、異母兄弟の骨肉の争いである。
 1980年代以降、アメリカの指導層は、イスラエル政府の外交政策を支持する親イスラエル派やシオニストが主流を占めている。キリスト教保守派の多くは、イスラエルを守るべき国とし、キリスト教とユダヤ教の結びつきは強化されている。ブッシュ政権は、9・11以後、「新しい十字軍戦争」を唱導した。これは、アメリカ=イスラエル連合つまりユダヤ=キリスト教とイスラム過激派との戦いであり、セム系一神教文明群の中でのユダヤ=キリスト教系諸文明とイスラム文明の戦いである。オバマ政権は、アフガニスタンやイラクからの米軍の撤退を進めているが、中東では争いが憎悪を生み、報復が報復を招いて、抜き差しならない状態となっている。そして、現代世界は、イスラエル=パレスチナ紛争を焦点として、ユダヤ教・キリスト教・イスラムのセム系一神教の内部争いによって、修羅場のような状態になっている。
 このような争いの世界を、調和の世界に導くには、どうすればよいのか。私は、非セム系自然教文明群が、あい協力する必要があると思う。中でも日本文明には対立関係に調和を生み出す原理が潜在する。その原理を大いに発動すべき時が来ている。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「ハンチントンの『文明の衝突』と日本文明の役割」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09j.htm
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現代世界史41~食糧・水・人口の問題を解決する

2014-09-14 08:44:05 | 現代世界史
●食糧・水・人口の問題を解決する

 21世紀の世界では、天然資源の争奪に、食糧と水の争奪が加わっている。まず世界の食糧は、現在の世界人口を養うに十分な量が生産されている。だが、食糧の分配が過度に不平等な状態になっている。小麦、トウモロコシ、牛肉等は国際的な商品であり、巨大な農業関連資本が市場を制している。そのため、先進国には飽食、発展途上国には飢餓という二極分化が起こっている。国連開発計画が発行した2003年版の『人間開発報告書』によると、発展途上国の7億9900万人、世界人口の約18%が飢えている。毎日世界中で3万人を超える子供が、脱水症、飢餓、疾病などの予防可能な原因で死亡している。世界的な食糧事情は、国際的な協力によって貧困と不平等の是正を進めなければ、改善されない問題となっている。
 食糧問題に加えて深刻になっているのが、水不足である。2000年(平成12年)の時点で世界中で少なくとも11億人が安全な水を利用できず、24億人は改善された衛生設備を利用できなかったと報告されている。その後もアフリカ、中東、アジアの各地で水不足と飢饉が日常化している。原因は、人口増加、都市化、工業化、地球温暖化等である。水の価値が上がり、水は「21世紀の石油」といわれる。今後20年で世界の水需要は現在の倍になると予測される。これから一層、水の需要と供給のバランスが崩れていくだろう。「ウォーター・バロンズ」(水男爵)と呼ばれる欧米の水企業が、世界各地の水源地の利権を確保するため、しのぎを削っている一方、中国は、国家として、水の確保を進めており、わが国の水と森林の資源が狙われている。
 仮にエネルギーを化石燃料から太陽光・風力・水素等に転換できたとしても、水の問題は、なお存在する。水不足と水汚染を解決できなければ、人類の文明はやがて行き詰る。また水をめぐっての紛争が各地で頻発し、大規模な地域戦争が起こる可能性もある。こうしたなか、日本の水関連技術への期待は大きい。海水の淡水化に必須の逆浸透膜の技術や、排水や汚水を再び生活用水として生まれ変わらせるリサイクル技術等は、日本の技術が世界で圧倒的なシェアを誇っている。日本は世界の農村と農民を助け、水と食糧問題を解決する力を持っている。優れた農業関連技術とインフラ整備、砂漠緑化や淡水化や浄水化などで最先端の技術を保有している。自然と調和して生きる日本人の知恵が、今ほど世界で求められている時はない。

 各国政府が積極的に太陽光発電、電気自動車、砂漠の水田化、水の造成と浄化等の新しい技術を活用することで、環境、エネルギー、食糧、水等の問題は、改善に向いうる。地球温暖化や砂漠化にも、対処する方法はある。人工知能やロボットの開発、宇宙空間での資源利用等が、これらの問題への取り組みにもさまざまな形で貢献するだろう。しかし、仮にこれらの問題による危機を解決に向けることが出来たとしても、なお重大な課題が残る。その一つが人口問題である。
 世界の人口は、20世紀初めは16億人だったが、年々増加を続け、1950年頃から特に増加が急テンポになり、「人口爆発」という言葉が使われるようになった。1987年(昭和62年)に人類の人口は50億人を突破し、2007年(平成19年)には66億人になった。2050年の世界人口は91億人になると国連は予想している。世界人口がピークを迎えるのは、21世紀末から22世紀になるだろうともいわれる。
 増え続ける人口は、大量のエネルギーを消費し、環境を悪化させ、食糧を高騰させ、水の争奪を起こし、紛争を激化させる。人口爆発は、新しい技術の活用による環境、エネルギー、食糧、水等の問題への取り組みを、すべて空しいものとしかねない。だから、人口増加を制止し、「持続可能な成長」のできる範囲内に、世界の人口を安定させる必要がある。
 どうやって安定させるのかは難題であるが、エマニュエル・トッドは、家族制度と人口統計の研究に基づいて、発展途上国での識字率の向上と出生率の低下によって、世界の人口は21世紀半ばに均衡に向かうと予測している。希望はある。識字率の向上と出生率の低下を促進するには、基本的な教育の普及が必要である。そのためには、貧困と不平等の是正が不可欠となっている。

 地球規模の問題を考える人の中には、国家や民族を否定し、地球市民として生きるという人が少なくない。そういう人の政治意識は、ほとんど左翼と変わらない。しかし、現実の世界は、さまざまな国家が並存している国際社会である。地球環境の問題にしても、個人や民間団体の活動は、規模が限られている。地球規模の危機を改善するには、国際社会の単位である国家が主体とならなければ、大規模な動きはできない。
 西洋物質文明の中核をなすアメリカや、唯物論的な共産主義の支配している中国が、人類社会を大調和の方向に導けるとは、思えない。これに比し、日本には古来、人と人、人と自然が調和して生きる精神が伝わってきている。その精神が、21世紀人類の衰亡か飛躍かの岐路において、大きな役割を果すと私は思う。日本を再建し、日本文明の持つ潜在力を発揮することが、世界平和の実現と地球環境の保全の鍵となると私は考える。
 今後人類にとって新しい文明の建設が可能になるのは、空間エネルギーの利用、物質転換の実現等、これまでの科学技術の水準を大きく越えるものが登場・普及した時だろう。空想的といえば空想的だが、わずか500年前には、夜も昼のように明るく、空中や地下を自由に移動し、遠く離れた大陸の人と互いに姿を見ながら話ができ、過去に起こったことを映像で再生できるというような今日の文明を、誰も予想することはできなかった。ここ百年の間にも、夢のような、いや人々が夢にすら思いつかなかったようなことが、次々に実現してきている。そのことを思うと、これからの時代にも何が現れ、世界がどのように変わりうるか分からない。危機が大きければ大きいほど、それを乗り越える知恵やひらめきもまた強く輝くだろう。人類は既に想像を超える変化を経験してきている。これからはさらに想像を絶する大変化を体験していくことだろう。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「『太陽の時代』のギガトレンド~21世紀の産業革命を促進しよう
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion13g.htm
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