ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

救国の経済学37~丹羽春喜氏

2011-07-31 09:53:13 | 経済
●1990年代からの構造改革政策を批判

 私は、日本の構造改革を、それを主に推進した政権の名を並べて、橋本=小泉構造改革を呼んでいる。構造改革は、橋本内閣で本格的に開始され、それ以降多少の行きつ戻りつはあったが、小泉内閣でさらに強力に推進された。
 私見によると、従米的なプラザ合意後に発生したバブルは、当然のこととして崩壊し、わが国の経済は大打撃を受けた。1990年代はそこからの回復の過程だった。ようやく回復の兆しを示していた平成8年(1996)、政権を担った橋本内閣は、6大改革を掲げた。これがわが国における本格的な構造改革の開始である。橋本内閣は緊縮財政と消費増税を行い、日本経済はデフレに陥った。またアメリカの圧力で金融ビッグバンを進め、わが国はアメリカに金融的に属国化した。こうした失政の結果、平成10年(1998)7月の参議院選挙で自民党は惨敗した。橋本内閣は総辞職し、小渕内閣が成立した。
 丹羽氏は、小渕政権の時代、わが国の政界・官界・財界等に浸透していた反ケインズ主義的な政策を厳しく批判した。
 平成10年5月に発表した「正統派的ケインズ政策の有効性」にて、丹羽氏は、大意次のように言う。当時、規制緩和が声高に叫ばれていたが、丹羽氏は「いかに懸命に規制緩和に努めたとしても、総需要が増えなければ、わが国経済の不況・停滞は続くことにならざるをえない。そして、規制緩和によって総需要が増えることになるかどうかは、本質的に、不確実」と言う。対照的に「正統的なケインズ的政策」は「100パーセント確実に総需要を拡大させうる」。「規制緩和でケインズ的政策の代用をつとめさせようという政策姿勢は、根本的に間違っている」。リストラや行革は「総需要を減少させるデフレ要因」であり、「不況・停滞を激化させるもの」にほかならない、と。
 丹羽氏は、このような見解をもって、時の国家最高指導者に直接提言した。平成10年(1998)に小渕首相に提出した「政策要求書」においては、次のように進言した。
 「わが国経済の現在の不況・停滞の原因は、現実には、構造改革・構造調整の立ち遅れだとか規制緩和の不十分だとかといったミクロ面の供給サイドの問題にあるのではありません。わが国経済の不況・停滞は、ひとえに、マクロ的な総需要の不足にこそ、その原因があります。したがって、平成不況がはじまってから今日まで、わが国の朝野を通じて広く唱えられてきたところの、『まず構造改革をやれ! それがすむまでは、総需要拡大政策などはやるな!』といった意見は、根本的に間違っています。そのうえ、リストラ、構造改革、等々は、企業どうしで注文を削りあうことにほかなりませんので、不況を激化させる要因でもあります」と丹羽氏は言う。そして「もちろん、構造改革は、それ自体、長期的には必要なことであるには違いありませんが、それは、総需要の拡大によって不況が克服され、経済が成長率を回復して、完全雇用・完全操業の『天井』が視野に入ってきた段階になってから行なうべきことですし、また、そうなれば、市場メカニズムの働きで、それは自ずからスムーズに行なわれていくことにもなるはずです」と述べている。
 丹羽氏は、平成11年にも小渕首相に「建白書」と題した政策提言を行った。小渕氏は、首相就任以来、橋本政権以来の財政改革を凍結して積極財政を行い、景気は回復に向った。そこに丹羽氏の提言が影響を与えたかどうかは不明である。
 小渕氏は、平成12年(2002)4月、志半ばで急病に倒れた。後継の森喜朗首相は、橋本構造改革に戻す経済政策をまとめ、小泉純一郎首相がそれを強力に実行した。橋本政権から小泉政権へと、小渕内閣を除いて、一つの方向性のもとに構造改革政策が行われているのは、財務官僚を中心とした官僚集団が企画・立案・推進しているからである。

 次回に続く。
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トッドの移民論と日本66

2011-07-30 08:45:27 | 国際関係
●一般永住者急増の原因~官僚が勝手に方針を変更した

 中国人を中心とする一般永住者の急増は、平成10年(1998)2月に行われた入管行政の方針変更が主な原因である。この時の方針変更で、永住者の在留資格を与える要件が大幅に緩和された。
 それまで永住者となるには、①素行が善良である、②独立の生計を営むに足りる資産または技能を備えている、③永住認定が日本国の利益になる、という要件に加えて、おおむね20年の在日歴が必要だった。これが一気に10年に短縮された。これを契機に永住者は増加し、10年間で5倍増となった。
 在留期間を原則20年から半分の10年に短縮するというこの大幅な要件緩和は、国会審議や政策審議会などで議論されることなく、法務省と入管当局の裁量で行われた。官僚が勝手に国の方針を変えたのである。国会の議論もなく、一行政機関の裁量判断でこうした要件緩和が行われたのは、極めて重大な問題である。
 その後、行政裁量によって一般永住者の急増を招いたことは、国会で問題として取り上げられた。しかし、責任の追及はなく、あいまいなままに終わり、方針の見直しはされていない。
 そうしたなか、さらに永住資格取得の要件を緩和しようとする動きがある。法務省では、「専門知識や技術を持つ外国人」は日本での在留歴を、10年から5年に短縮しようとする一層の緩和方針が検討されている。平成22年(2010)1月、千葉景子法務大臣(当時)の私的懇談会「第5次出入国管理政策懇談会」が同様の主旨の報告書を提出した。早ければ本年(平成23年)の通常国会で入管法の改正案が提出される可能性があった。
 永住許可の緩和は国家の基本を揺るがす重大問題である。永住許可を得ると、無期限かつ制限のない在留が認められ、外国人による世論工作や、スパイ活動・破壊活動が容易になったりする。これほど重大な問題が国民に知らされぬまま、国民の意思を問うことなく、進められようとしている。

●官僚が日本を多民族化しようとしている

 移民受け入れ計画を進めている本体は、その時々で移り変わる政権ではなく、国家官僚組織である。表舞台の政治家の裏にいる官僚の思想・行動をつかみ、これを改めないと、日本は衰退・崩壊する。
 永住者資格を取得するために必要な日本での在留期間を「原則20年」から半分に短縮するよう入管行政の方針変更をしたのは、法務省である。出入国を厳重に管理すべき法務省が、逆に要件を緩和しようとするのだから、おかしな話である。また、法務省による移民受け入れの緩和と連携して「多文化共生」を推進しているのが、総務省である。総務省は、平成17年(2005)6月に有識者を集めて「多文化共生の推進に関する研究会」(座長:山脇啓造・明治大学教授)を発足し、同会は翌年3月「『多文化共生推進プログラム』の提言」を発表した。
 多文化主義を信奉する官僚と学者が、税金と行政機関を使って、多文化共生化を進めている。その一環として、多文化共生教育が推進されている。多文化主義に取り付かれている官僚や学者、教育者は、エマニュエル・トッドの移民問題の論考に学び、またドイツやオランダ等の失敗に目を開くべきである。
 日本を移民国家・多民族国家に変造しようとする理論的な指導者に、坂中英徳氏がいる。元法務官僚で、現移民政策研究所長である。「日本型移民国家」をめざす氏の主張については、後日検討・批判する予定である。
 日本の多民族化政策が行政府の官僚によって進められている一方、立法府である国会では、一部の政党・政治家によって、永住外国人地方参政権付与法案の成立が画策されている。永住外国人地方参政権付与法案は夫婦別姓法案、人権侵害救済法案と合わせて、3つの関連し合う法案と見たほうがよい。これらの根底には、「人権」という概念がある。外国人や女性や人権侵害の被害者の権利に係る法案ということで、いかにも進歩的な動きのようだが、これら3法案は、日本の家庭・社会・国家を解体する危険性を持っている。
 移民問題との関係で言えば、これらの法案は、日本の国家・社会を改造し、外国人移民を大量に受け入れるための準備を進めるものだろう。つまり、日本を移民国家とし、多民族国家に変えるための布石だと私は考える。そして、夫婦別姓法案、永住外国人地方参政権付与法案、人権侵害救済法案の3法案に、民主党が提唱する地域主権国家の実現と東アジア共同体の建設を加えると、日本を破壊する政策体系となる。
 永住外国人に地方参政権を付与することの危険性に気づく人が増え、22年(2010)4月10日現在で35の県議会で反対または慎重を求める決議がされ、さらに広がる勢いである。しかし、民主党には、参政権どころか、重国籍の容認や外国人住民基本法案の制定をめざす動きもあり、予断を許さない状況である。
 政治家や官僚が、日本を移民国家・多民族国家に変えようとしたり、日本という国家を解体しようとしたりするのを、国民は英知をもって阻止し、日本の進路を是正しなければならない。

 次回に続く。
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増税策を取り下げて量的緩和を

2011-07-29 08:57:09 | 経済
 民主党も自民党も多くの議員は、増税では一致する。消費増税は、もともと自民党がやろうとしてきた政策だ。背後で政治家を動かしているのは、財務省である。なぜ財務省は増税をしようとするのか。この点に切り込まないエコノミストには、御用学者が多い。
 東日本大震災後、復興増税に反対を表明する田村秀男氏は、産経新聞7月3日号の記事で、財務官僚主導の増税論を批判した。また17日には円高の中で、政府は増税を取り下げ、日銀は量的緩和をすべしと提案した。田村氏の批判は、データに基づくもので、ポイントをついている。その後、現在米国がデフォルトに陥る可能性が高まっており、それが円高を高進させている。田村氏は27日、繰り返し円高是正のための量的緩和を説いている。
 まず、財務官僚主導の増税論を批判した記事を掲載する。

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●産経新聞 平成23年7月3日号

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110703/fnc11070308040000-n1.htm
【日曜経済講座】
「何でも増税」策の舞台裏 「デフレ」無視の財務官僚主導
2011.7.3 08:02

編集委員・田村秀男



 菅直人首相とその周辺はまるでパブロフの犬のようだ。「財源」と問えば、ただちに「増税で」と反応する。税と社会保障一体改革案は消費税増税、東日本大震災復興構想会議提案は臨時増税、さらにB型肝炎訴訟の和解金支払いにも、福島原子力発電所事故に関連する補償についても増税または形を変えただけの「国民負担」しか考えない。
 慢性デフレのために、1世帯あたりの可処分所得は10年前に比べて月当たり4万4400円も減った。やせ細る家計から税を絞り取ることしか考えない。かつての悪代官顔負けの異常な政策はどういうふうに生まれるのだろうか。

◆現実離れの前提条件
 そう思って、税・社会保障改革案と復興構想会議提言を再チェックしてみたら、これらの前提条件は見事なまでに現実から遊離している。
 まず「税・社会保障」の場合、吉川洋東大教授が中心となって5月30日付でまとめた「消費税増税のマクロ経済に与える影響について」という研究報告書が添付されている。増税が日本経済にどのような悪影響を及ぼすかを詰めたうえでないと消費税率の幅やタイミングを決められない。与謝野馨経済財政担当相肝いりのペーパーである。
じっくり読むと、重大な課題から目をそらしていることがわかる。例えば、1997年の消費税増税をきっかけに日本が長期・慢性デフレ局面に突入した事実を無視している。増税は長期的な影響を経済活動全体に及ぼすのに、当時の家計所得など一時的な要因分析だけで「消費税増税は1997~98年の景気後退の『主因』であったとは考えられない」と決めつけ、しかも巧妙に「デフレ」への言及を避け「景気後退」と言い抜けた。「デフレよりも日本の財政への国際的な信認、マーケットの信認のほうが大事だ」(与謝野氏)というわけだ。
 デフレ下の増税は消費や投資をさらに萎縮させ、個人や企業の所得や収益を減らす。97年の消費税増税の数年後には所得税、法人税を合わせた税収が大幅減収となり、減収額は消費税増収分をはるかにしのいだ。増税により財政収支は逆に悪化し、それこそ日本国債の信認が失われよう。

◆震災憂慮は“言い訳”
 もっと愕然(がくぜん)とさせられたのは、3月11日の東日本大震災の衝撃についての考察の欠如である。報告書の末尾に添付されている「有識者の意見」の中で、大震災の影響を憂慮する声が言い訳程度に散見される程度である。
 消費税増税のタイミングについては、景気の上昇局面が適切だと論じている。大震災後は、いわゆる復興需要の影響で見かけ上は経済指標が来年は好転するとの見方が多いが、それを増税のタイミングだと言わんばかりである。多くの企業が円高や電力不足を背景に国内向け投資をあきらめ、海外投資に走っている。生産と消費の反転はあるとしても一時的で、増税実施後には急速に減退しよう。
 一方、東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)による「復興への提言」付属の資料には「阪神淡路大震災とのマクロ経済環境の違い」編が挿入されている。そこでは、名目GDPについて、阪神淡路489兆円(94年度)と東日本大震災479兆円(2010年度見通し)と対比している。だが、16年前よりも10兆円も経済規模が少ないその異常さに何の説明も加えていない。その代わり、国地方の長期債務残高、国債の格付けの悪化ぶりなど財源の制約ばかり盛り込んでいる。
 報告書のどこにも「デフレ」、あるいは「デフレーション」の一言も出てこない。その代わり、「再生」という言葉は77回、「復興」は258回も繰り返し出てくる。内容のない言葉だけが呪文のように唱えられている。

◆シナリオ通りの会議
 委員の一人は述懐する。「いや、実際の会合では増税の意見はほとんど出なかった。なのに、財務省主導の事務当局が財源は増税によるとメディアにブリーフィングしていた」と、いかにも無責任な評論家そのものだ。事務当局が書いたシナリオ通り、会議は踊った。五百旗頭議長は、4月14日の初回会合の後、「復興のための増税」案を記者発表した。「まず増税ありき」の路線は以来、一貫してきた。
 ことあるごとに増税論にくみしてきた菅直人首相は提言を唯々諾々と受け入れ、退陣しても次期首相に引き継ぎ、日本を自滅に導くだろう。
 せめて、国会の与野党議員たちは、「まるで災害という傷を負った子供に重荷を持たせ、将来治ったら軽くするといっているに等しい」という浜田宏一米エール大学教授の痛烈な批判に耳を傾けてほしい。
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 私の知る限り、最も厳しく財務省を批判してきたエコノミストは、菊池英博氏である。拙稿「経世済民のエコノミスト~菊池英博氏」で詳しく紹介したので、ここでは、簡単に書く。
 菊池氏によると、橋本政権において、粗債務のGDP比率が欧米より高くなったことを理由に増税を提案したのは、大蔵省(現財務省)である。菊池氏は、当時のわが国の財政を粗債務ではなく、純債務で見ると、財政の実態はまったく違っていたと指摘する。「1996年の日本の財政事情を純債務で見ると、純債務のGDP比率は21.6%程度であり、超健全財政であった」。政治家・官僚が財政のとらえ方を誤ったために、政策を誤り、わが国の政府が、わが国の経済を損壊したのである。
 平成13年(2001)4月、橋本元首相は「1997年度の増税は国民に多大の迷惑をかけた」と国民に謝罪した。しかし、「橋本首相に財政改革を提案したのは財務省」である、「本来ならここで財務省も謝罪すべきである」と菊池氏は告発する。菊池氏は次のようにも言う。「その上、小渕首相が財政改革を凍結した結果、景気が回復してきたために、財政改革・緊縮財政の責任が財務省に波及することを恐れたと言われる。そこで財務省は改めて財政危機を煽り、構造改革という美名の下で財政改革を自民党に進言したと言われている」と。
 かつての大蔵省、現在の財務省の誤りは、財政を粗債務でしか見ないことである。債務だけを強調して、国民や政治家に財政危機を煽る。それに基づいて政府が緊縮財政政策をし、デフレになっても、財務官僚は一切責任を取らない。そして、税収が落ち込み、財政赤字が増大すると、その原因が財務省の失策にあることを隠したまま、政策を増税へと誘導する。多くの政治家がこれに乗せられている。また財務省に同調し、協力するエコノミストが多い。
 菊池氏は言う。「政府与党が叫ぶ『財政危機』こそ大嘘であり、財政危機は消費税を引き上げるための『偽装政策』である。この『偽装財政危機』が今日の日本の不幸を招いている元凶である」と。
 さらに菊池氏は、次のように言う。「『戦前、日本国家を破滅させたのは陸軍と海軍だった。現在は財務省が国を滅ぼす』。これは多くの政治家や日本の実情をよく知る国民の言葉である。このままいけば、まさに『緊縮財政、偽装財政危機、基礎的財政収支均衡政策』が国を滅ぼすのであり、その行政府が財務省である」と。
 関心のある方は、拙稿「経世済民のエコノミスト~菊池英博氏」を閲読願いたい。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13i-2.htm

 次に、田村氏が、増税を取り下げ、円高是正のために量的緩和をすべしと説いた記事を2本、掲載する。

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●産経新聞 平成23年7月17日号

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110717/fnc11071708060000-n1.htm
【日曜経済講座】
円高で貧しくなる日本 「増税」取り下げ量的緩和を
2011.7.17 08:04

編集委員・田村秀男



流出する国富

 未曽有の大震災と原発事故から4カ月もたったというのに、菅直人政権は場当たり政策に終始して恥じず、復興・再生を妨げている。そんな日本の通貨、円は売られておかしくないのに、逆に買われ、円高が加速している。今の円高が日本のためになるとは妄言である。日本国と日本人をますます貧しくさせる。
 論より証拠、データを見てみよう。円は2007年夏から上昇基調に転じた。この3月11日の東日本大震災を機に円高にはずみがついた。先週には1ドル=80円を切るようになり1年前に比べ約10%上昇した。日銀統計によると、この間の輸入物価は10・5%上昇し、輸出価格は2・2%下落した。輸入コストの上昇は石油や穀物など原材料の高騰のせいだと、割り切ってはいけない。輸入業者は「円高差益」の多くを懐にし、実際の小売価格は据え置きにするケースが多いのだ。
 もっと深刻なのは、輸出部門である。輸入原材料コスト上昇と円高の分だけ輸出価格を引き上げておかしくないのだが、逆に値下げしている。つまり、自動車や電機メーカーは輸出シェアを確保しようとし、下請け部品メーカーなどにさらなるコスト削減を求める。弱小企業が身を削り、その分の富が海外に流れるわけである。
財務省統計によれば、日本の対外資産総額は2010年末で564兆円に上るが、07年末に比べて47兆円も減った。ところがドルに換算すると、逆に29%、1兆5600億ドルも増えている。07年末の円相場水準で10年末の総資産を再計算すると789兆円になるのだから、何と225兆円も違う。もちろん、リーマン・ショックに伴う海外金融資産の目減りも考慮しなければならないが、世界最大の対外債権大国日本は円高のために途方もない額の国富を喪失している。
 ちなみにこの間に外貨準備高は20兆円も減っている。税率5%の消費税収で約2年分に相当する。この国庫毀損(きそん)は痛いはずなのに、財務省は沈黙したままだ。
 円高という貧乏神はまだまだ容赦しない。株価と発行株式数を掛け合わせたのが時価総額で、株式で成り立つ資本主義国家の実力を示す指標である。日本に限らず世界的に「リーマン」などにより株価が急落すれば、時価総額はもちろん落ち込むが、日本の場合は円高に連動して株価が下落する「法則」がある。最大の理由は、日本株の売買の過半を占める外国人投資家が円高すなわち日本株売りという株式自動売買プログラムを組んでいるからである。
 ニューヨークに本拠を置く投資ファンドや機関投資家はドル建て換算で日本株の保有比率を固定している。円高になればその分、保有日本株のドル換算時価総額が増える。そこで同比率を維持するよう、コンピューターの自動売買プログラムが作動して、日本株売りが始まる。それにつられて日本国内の投資家も円高が進めば売るので、株下落にバイアスがかかる。こうして東証の時価総額は4年間で半分近い283兆円も減った。
買われゆく日本企業
 株価が下がれば、個人投資家ばかりでなくわれわれの老後を担う年金ファンドも資産を減らす。企業は投資家にそっぽを向かれ、株式発行による資金調達が困難になる。時価総額が縮小すれば、反対に膨らませている外国企業が日本企業を買収しやすくなり、中国企業による「乗っ取り」も増えるだろう。
 どうすれば円高を食い止め、せめて1ドル=100円程度まで巻き戻せるのだろうか。答えははっきりしている。政府は「なんでも増税」政策を白紙撤回する一方、日銀が米国のドル増刷に合わせて思い切った日銀資金の発行、つまり「量的緩和」政策に転じることだ。日本は1998年以来、慢性デフレに苦しんでいる。デフレとは物価が下がり続ける状態のことなのだが、言い換えると通貨としての円の価値が上がる。逆に物価が上昇している米欧、中国など世界の主要国の通貨の価値は下がっている。円をこれらの国々の通貨と交換しようとすれば、円の価値が高くなるのは当然である。不況下での増税は消費者や企業から購買力を奪い、需要を減らすのでデフレを助長する。政府が増税に前のめりになればなるほど円高が進む。

政策の転換が必要

 日銀の罪も重い。米国がこの2年半の間にドル資金発行を3倍にしたというのに、日銀は小出しの金融緩和策しかとってこなかった。ドルは洪水、円は渇水だから、ドルに対して円の値打ちが上がるのは、小学生だって分かる。
 政府と日銀が政策転換するだけで、日本窮乏化は避けられるのだ。

●産経新聞 平成23年7月27日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110727/fnc11072721000016-n1.htm
円高是正に向け量的緩和政策を
2011.7.27 20:59

 世界の主要通貨のうちで、円だけが一本調子で高くなる。最大の要因は中央銀行による国際的なお札の増刷競争であり、日本は刷り負けている。
 中央銀行による資金供給は金融用語では「ベースマネー」(おカネの基)と呼ばれる。日銀は2006年後半にベースマネー供給を削減し、以来ほとんど増やそうとしなかったが、他の主要中央銀行は逆に増やしてきた。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は08年9月の「リーマン・ショック」後、ドルを大増刷し、この6月までに実に3倍以上も増やした。FRBは第二次大戦参戦期(1941~45年)の4年間に現金を約3倍発行した。現在は戦時体制をさらに上回る速度でおカネを創出したとも考えられる。
 対照的に、日銀はFRBに同調しなかった。ユーロを発行する欧州中央銀行も人民元の中国人民銀行もマネー供給を増やし続けた。
 韓国はベースマネーを着実なペースで増やし続けると同時に、外国為替市場での介入により、円はもとより人民元に対してもウォン高にならないようなオペレーションを展開している。ウォンは4年間で円に対して4割以上も安くなった。
 日本は「お札刷り負け」の教訓から学べばよい。
 日銀がはっきりと「量的緩和政策」への転換を決め、東日本大震災後の緊急策としての年率15、16%以上のベースマネー増量を「量的緩和政策」として定着させれば、外国為替市場での円先高感は薄れ、円高是正に向かうだろう。もとより、日銀を突き動かすためには、ポスト菅直人首相に指導力ある人物が就かなければならないが。(編集委員 田村秀男)
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 円高への対処に関しては、26日に書いた丹羽春喜氏の説明がわかりやすい。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/51dffc109d1dc3e2f49fad8d3cb96e4b
 丹羽氏は大意次のように言う。
 変動為替制(フロート制)のもとでは、財政・金融政策を行って、インフレ・ギャップやデフレ・ギャップを発生させないように適切な水準の総需要を確保し、完全雇用・完全操業という意味での「国内均衡」を保っていれば、フロート制の自動的な調整作用によって、為替レートを媒介として、貿易収支・国際収支の妥当な程度の「対外均衡」も、もたらされる。つまり、ケインズ的総需要管理政策を適切に実施していけば、あたかも、それに対する「褒賞」のごとく、経済の「国内均衡」と「対外均衡」とが、ともに達成される理想的な状態が自ずと実現可能となる。
 しかし、ひとたび、マクロ的な経済政策の「かじ取り」を誤ると、事態は一変する。すなわち、ある国の政策当局が、国内的に総需要の確保を怠るか、それに失敗して、不況を発生させ、デフレ・ギャップを生じさせてしまうと、産業による「輸出ドライブ」が激化し、他方では輸入が減るため、その国の通貨が高騰して輸出も苦しくなる。日本であれば、円高の進行である。あたかも、失政に対する「罰」のごとく、為替レートによる「ハンディキャップの供与」も行なわれなくなり、不況が悪循環的に永続化することになってしまう。フロート制は「まさに『信賞必罰』のシステムなのである」と丹羽氏は言う。
 わが国は、戦後先進国の中で唯一、デフレに陥り、それを脱却することが出来ずにいる。そのため、「信賞必罰」の「罰」を受ける自業自得の結果となっている。そのうえ、現在は、世界的に米ドル、ユーロ等の通貨の価値が下がり、相対的に信用が高い円が買われ、さらなる円高をもたらしている。政府はデフレ脱却を最優先し、成長路線を採り、日銀は量的緩和を実施し、政府と日銀が連携して財政金融政策を断行すべきである。
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救国の経済学36~丹羽春喜氏

2011-07-28 08:54:05 | 経済
●日本経済は3つの悪循環に陥った

 丹羽氏は、わが国経済は、1970年代から3つの悪循環に陥ったのだと分析する。すなわち、

(1)不況 → 円高 → 不況、
(2)不況 → 財政破綻 → 緊縮財政と増税 → 不況、
(3)不況 → 企業のリストラ → 需要の削り合い → 不況

の3つである。
 そしてこれら3つの悪循環は、「1970年代後半以降の30年間を通じて、きわめて明白に、そして、とりわけ1990年代以降の平成不況の時期に入ってからは極度に過酷に、日本経済を苦しめ、衰退に導いてきた」。しかも、「3つの悪循環は相乗作用を演じてきたのであるから、事態はきわめて重大であったと言わねばならない」と述べる。
 丹羽氏によると、フロート制への転換が行なわれた1973年を重要な契機として、翌年の1974年からわが国の経済においては総需要の伸びの不振からデフレ・ギャップが顕在化しはじめ、それは長年にわたって趨勢的に拡大の一途をたどってきた。
 ところが、わが国においては、「3つの悪循環を直視して、それからの有効な脱却の方途を策定するといった最重要なことが、ほとんど行なわれてこなかった」。「供給サイド構造改革、規制緩和、行革、税制見直し、等々、のミクロ経済的諸方策は、それら自体としてはなんらかの意味で必要なことであったと言いうるかもしれないとしても、肝心の、上記の3つの悪循環からわが国の経済を脱出させ、産業の衰退や空洞化を食い止めるという目的の達成のためには、むしろ有害であるか、まったく役に立たないか、せいぜいのところ、プラスの効果が若干はあるかもしれないとしても、それがきわめて不確実なものでしかなかった」と丹羽氏は言う。
 そして、丹羽氏は、3つの悪循環が、「疑いもなく、すべて、ケインズ的総需要管理政策の不在という同一の『需要サイド』の原因から生じている」と指摘する。そして、「そういった状況がもたらされてきたのは、フリードマンやルーカスを頭領とする、現代米国の新古典派を中心とする反ケインズ主義のグローバルな思想攻勢が、わが国の政策担当者たちをはじめ、政界、官界、財界、学界、マスコミ、論壇、等々、わが国民各層に絶大な支配的影響力を振るってきたからに、ほかならなかったのである」と主張する。
 すなわち、わが国では、政治家・官僚・財界人・学者・マスコミ等が反ケインズ主義の支配的な影響を受けために、不況の悪循環の根本原因は需要不足であることをとらえられず、3つの悪循環を脱することができなかったというわけである。
 新自由主義・新古典派経済学については、本稿の別の項目に書いた。繰り返しになるが、丹羽氏は、フリードマンらは、彼らの理論が「いずれも、きわめて非現実的かつ妥当性を欠いた不自然なトリック的前提や仮定に基づいた牽強付会の詭弁にすぎないということを、よく知っているはずである」と言う。そして、彼らの理論に従えば日本経済が悪化することを「理論的に予測しえていたはずである」と言う。そして、日本経済の失速と不況・不振の永続化は、アジア諸国にとっても、1997~98年のアジア金融恐慌のような大きな災厄となることも、「フリードマンたち新古典派反ケインズ主義陣営」は、「はっきりと予見していたはずなのである」とも言う。
 丹羽氏によると、彼らは「トリック的前提や仮定に基づいた牽強付会の詭弁」と分かっていながら、反ケインズ主義の経済理論を展開した。また、日本経済やアジア経済に対する影響を予測・予見しながら、「牽強付会の詭弁」を用いた。わが国の政治家・官僚・財界人・学者・マスコミ等は、彼等の思想攻勢に圧され、その意図を見抜けずに、判断を大きく誤ったわけである。
 ここで1990年代以降のデフレについて私見を述べたい。
 1970年代から、日本に続いてアジア諸国が経済成長を始めた。エマニュエル・トッドは、近代化の指標の一つに識字率の向上を挙げる。識字化の進展によって、新興国に工業労働のできる労働者が増加する。先進国の企業は、安価な労働力を求めて、海外に生産拠点を移す。その国の生活水準が上がり、労働賃金が上がると、さらに安い労働力を求めて、拠点を他の国に移す。そのため、先進国では雇用が減少し、労働者の所得が低下する。また新興国で生産された安い輸入品が国内に入ってくるので、物価が下落する。これが1990年以降の世界的傾向である。冷戦が終結し、旧共産圏の国々も市場に加わり、世界的に長期的なデフレ傾向になっている。
 わが国の場合、こうした世界的なデフレ傾向の中で、政府が失政を行った。わが国自体がもともとデフレ傾向にあったのに、デフレを促進するような構造改革政策を行った。この大失敗によって、わが国は、大戦後、先進国後で唯一にデフレに陥り、深刻な状態に陥った。
 丹羽氏は、フロート制は「信賞必罰のシステム」だと言う。ケインズ的な政策によって内需を拡大し、国内で完全雇用・完全操業の実現を目指さないと、円高が進み、フロート制の「罰」を受ける。しかも、世界的なデフレ傾向は、長期的に続くから、わが国経済はますます悪化していく。
 戦後日本は、戦勝国アメリカに従属し、アメリカの政策に付き従ってきた。押し付けられたGHQ起草の憲法を、一字一句変えずに60年以上放置している。歴史認識においては、東京裁判で作られた日本断罪史観を踏襲した自虐史観が蔓延している。この心理傾向と、経済政策における自損自壊的な行為には、通底するものがある。デフレからの脱却は、戦後日本人が陥っている従属的・自虐的な心理状態から自らを解き放たないと、なしえない課題だと私は考える。

 次回に続く。
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尖閣:中国人船長を強制起訴へ

2011-07-27 10:11:14 | 時事
 尖閣沖中国漁船衝突事件で、那覇検察審査会は、那覇地検が不起訴にした中国人船長を強制起訴すべきだと議決した。この議決によって、那覇地裁が指定した弁護士が検察官役として強制起訴することになる。裁判所はすでに釈放されて帰国している中国人船長に召喚しなければならない。起訴状が2カ月以内に中国人船長に送達されなければ、公判は開かれず、公訴棄却となる。わが国の政府は、被告が召喚に応じるよう中国政府に対して要求しなければならない。その要求さえできなければ、日本は法治国家の体を失う。
 私は、わが国の政府に対して、中国人船長の召喚を中国政府に要求するよう要望する。また、事件を記録した動画を、政府として国民に公開するよう要望する。一色元海上保安官がネットに載せたのは、記録の一部に過ぎない。政府は、その部分を含む記録の全体を公開し、国民に事実を伝えるべきである。
 関連する報道記事を下記掲載する。

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●産経新聞 平成23年7月21日

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110721/trl11072122590015-n1.htm
中国人船長を強制起訴へ、那覇検審議決 公判は困難
2011.7.21 22:56
 沖縄・尖閣諸島付近の中国漁船衝突事件で、那覇検察審査会は21日、海上保安庁の巡視船「みずき」に衝突したとする公務執行妨害などの容疑について、那覇地検が不起訴にした●其雄(せん・きゆう)船長(42)を強制起訴すべきだと議決した。地裁が指定した弁護士が今後、検察官役として強制起訴する。
 起訴状が2カ月以内に船長に送達されなければ、裁判を開くことはできず公訴棄却となる。船長は釈放され既に帰国しており、公判を開くのは難しい。刑事事件捜査に国民感覚を反映させることを目的に導入された、強制起訴制度の実効性が問われる事態となった。
 起訴議決は「衝突は人命を危険にさらす無謀な行為。船長は何ら謝罪や被害弁償をしていない」と指摘。その上で「検察審査会は日中の関係改善を期待するが、日本の領海内での船長の行為は処罰に値する」と判断した。
●=擔のつくり

●産経新聞 平成23年7月22日

【http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110722/plc11072203050001-n1.htm
【主張】 船長強制起訴 政府は何もせぬつもりか
2011.7.22 03:05
 那覇検察審査会は昨年9月に起きた沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、公務執行妨害容疑で逮捕されながら不起訴処分(起訴猶予)となった中国人船長を強制起訴すべきだと議決した。
 今後は那覇地裁が指定した弁護士が検察官役として強制起訴することになる。しかし、起訴状が2カ月以内に中国人船長に送達されなければ公判は開かれず、公訴棄却となる。
 すでに釈放されて帰国している中国人船長に起訴状を届けるためには、中国側の協力も必要となる。日本政府は主権を守るための外交を断固行うべきだ。
 議決書は、1回目の起訴相当の議決後、検察が中国人船長についての情報提供や捜査共助の申し入れを中国側に行っていないとして「再捜査を尽くしたとはいえない」と断じている。
 また事件以降、尖閣諸島付近の日本領海内で操業する漁船の数が減っていると検察側が述べているのに対し、中国漁業監視船の接近が増えていることから、「日本の漁船に安全な海域になったわけではない」と否定している。
 こうしたやり取りをみると、那覇地検はまるで中国人船長側の弁護人の役目を果たしているようにさえみえる。
 中国人船長の犯行の悪質さや、謝罪や弁償を全くしていないことなどを指摘し、「市民の正義感情を反映させるために起訴すべきだと判断した」とする検察審査会の議決の意味は重い。
 最初から、不自然だらけの事件だった。海上保安庁に逮捕された中国人船長は那覇地検により処分保留のまま釈放された。この際、那覇地検は「今後の日中関係を考慮した」とその理由を述べた。政治の介入があったことを誰もが疑ったが、政府は「地検の判断」と、関与を否定し続けた。
 今回の強制起訴が問うているのは、中国人船長の罪だけではない。逮捕から処分保留、不起訴処分に至った検察、政府の対応についての不信が検察審査会を動かしたといってもいい。事件当初からの疑問に、政府も検察も明確な答えを出していない。
 議決書はまた、海上保安官が中国漁船との衝突時に撮影した動画を国民に公開するよう要望している。いまだ正式にビデオが全面公開されていない事態を、国民は異常と感じているのだ。
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関連掲示
・拙稿「尖閣事件を起訴猶予で終わらせるな」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110123
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米国にデフォルトの危機強まる2

2011-07-26 16:33:14 | 時事
 オバマ大統領は、米国債発行額の上限引き上げをめぐる民主党と共和党の交渉行き詰まりを打開するため、「無謀で無責任な」デフォルト(債務不履行)を回避する公正な妥協案を、今後数日以内にまとめるよう、両党指導部に要請した。
 7月23日の日記の本件について書いたが、民主・共和両党の指導部が合意しなかったら、デフォルトが現実になる可能性が高まっている。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1753771500&owner_id=525191
 世界最強といわれてきたアメリカ政府が、社会保障費や退役軍人給付金の支給、政府職員の給与支払、政府が契約している企業への支払等ができなくなる。リーマン・ショックの時は、基本的には民間企業を中心とした経営破たんだった。今回は、違う。米国政府そのものが、債務不履行となる寸前なのだ。
 26日ロイター通信は、民主・共和両党の協議が決裂した場合のオバマ大統領の選択肢は、①政府資産の売却、②米国憲法修正第14条の拡大解釈、③支払いの優先順位付け、④FRBからの支援の四つとして、それぞれの場合について書いている。どれもこれなら打開できるという充分有効性を持った方策ではないようだ。
 ヨーロッパでは、ギリシャのデフォルトが事実上確実になっている。格付け会社フィッチが、金融支援策で民間負担を求めたギリシャの一部国債について、長期信用格付けをデフォルト扱いにした。今後、ギリシャ国債を大量に保有している欧州諸国を中心に、大きな影響が出てくるだろう。アメリカがデフォルトを回避できないと、アメリカとEU、西洋文明の主要地域が同時に相当の経済危機に陥ることが予想される。当然、わが国もその危機の波及を免れない。
 以下、これらの記事の転載。

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●ロイター 平成23年7月26日

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22361520110726
米大統領、債務上限引き上げ問題で超党派の妥協案要請
2011年 07月 26日 12:32 JST

 [ワシントン 25日 ロイター] オバマ米大統領は25日夜のテレビ演説で、米連邦債務の上限引き上げをめぐる民主党と共和党の交渉行き詰まりを打開するため、両党指導部に対し、「無謀で無責任な」デフォルト(債務不履行)を回避する公正な妥協案を今後数日以内にまとめるよう要請した。
 大統領は、債務上限引き上げと財政赤字削減で合意が成立しなかった場合に予想される米国債のデフォルトや格下げの深刻な経済的影響について言及。「この議論の結果としてわが国が債務をデフォルトすれば、無謀で無責任だ。われわれはワシントン発の深刻な経済危機のリスクを冒すことになる」と述べた。
 米国の債務返済に支障が生じるとされる8月2日の期限が近づく中、大統領は財政赤字削減と米社会全体での負担分担で妥協を呼び掛けた。市場では債務交渉の行き詰まりを嫌気して株価とドルが下落する一方、金は最高値に押し上げられている。ただワシントンの一部の政治家が懸念していたようなパニック売りの兆候は出ていない。
 オバマ大統領は、米国がデフォルトすれば政府は社会保障費や退役軍人給付金、何千もの企業との契約を履行する支払いなどができなくなり、一般国民生活に直接的な影響が出ると指摘。「(民主、共和)両党の指導部に対し、両院を通過でき、私が署名できる公正な妥協案を今後数日以内にまとめるよう要請した」と述べるとともに、「米国民は分裂した政府に投票したかもしれないが、機能不全政府に投票したわけではない」と強調した。
 大統領はまた、一部の共和党議員が「削減一本やり」の手法に固執し、富裕層などに対する減税打ち切り提案に反対していることを非難した。
 これに対してベイナー下院議長は、オバマ大統領の提案に対する共和党の反対姿勢をあらためて示した。議長は「大統領が半年前に白地小切手を望み、今も白地小切手を望んでいるというのが悲しい現実だ。そういうことは起こり得ない」と述べた。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22362820110726
米債務上限引き上げ協議、決裂時のオバマ大統領の選択肢
2011年 07月 26日 11:20 JST

[ワシントン 25日 ロイター] 米連邦債務上限引き上げに向けた協議の行き詰まりが来週初めまでに打開されなかった場合、オバマ大統領は、どのようにして危機に対処するか厳しい決断を迫られる。
 ガイトナー財務長官らは、8月2日の期限までに議会が債務上限を引き上げられなかった場合に備え、緊急対応策の策定に取り組んできた。
 米政府はこれらの対策についてほとんど公表していないが、対策の多くは複雑で、政治的な反発を引き起こす可能性もある。一部の対策については、その実効性をめぐり民間の専門家の間で意見が分かれている。
 また、いくつかの措置が実行に移されたとしても、債務問題の行き詰まりが金融市場の混乱やドル安、米金利の上昇などを招き、米経済を危機にさらす懸念が容易に消えることはないとみられる。
 オバマ大統領が検討する可能性のある措置は以下のとおり。

<資産の売却>
 米財務省は、金やモーゲージ担保証券(MBS)など政府保有資産の一部売却を検討する可能性がある。この選択肢について、米国が返済義務を果たすのに苦闘していることを世界に示すことになるため、米当局者は大きな難点があると指摘している。また、この場合、資産の投げ売りとなる可能性があり、この措置により多くの時間稼ぎができる可能性は薄いとみられる。

<合衆国憲法修正第14条>
アメリカ合衆国の公共負債が「問題にされることはない(shall not be questioned)」としている合衆国憲法修正第14条が、オバマ大統領の切り札になる可能性があると一部の専門家はみている。
 同条項に基づき、大統領は、議会の承認を必要とすることなく債務上限を引き上げることが可能、とこれらの専門家は主張している。一方、大統領には議会が設定した上限を無視する権限はないとの見方もある。政権当局者は、合衆国憲法修正第14条について、行き詰まりの打開策にはならないとの見解を示している。
 大統領は22日、この選択肢について「法務顧問と話したが、こうした議論が支持されるとの確信は得られなかった」と述べた。ガイトナー長官は24日、議会を無視することはデフォルト危機回避に向けた「有効な選択肢ではない」と指摘している。

<支払いの優先順位付け>
 資産の売却と合衆国憲法修正第14条活用のいずれも有効でないと財務省が決定した場合、債務の利払いに十分な資金を確保するため、政府の給付金受給者や、政府職員、外部契約者などへの一部支払いの延期が検討される可能性がある。
 ワシントンのシンクタンク、バイパーティザン・ポリシー・センターによると、財務省は8月に1720億ドルの歳入を確保する一方、3060億ドルの支払い義務が発生する。新たな借り入れなしでは、債務の55%しか返済できないことになる。
 一部の保守派共和党議員は、財務省が多くの行政サービスを閉鎖し、債務返済を優先することでデフォルトに対処する可能性があるとの見方を示しているが、ガイトナー長官は実行不可能としてこの選択肢を退けている。
 議会指導部が債務上限引き上げで合意できなかった場合、オバマ大統領は8月3日に予定される約490億ドルの社会保障費の支払いをどうするかという大きな問題に直面する。
 大統領は、債務上限が引き上げられなければ、社会保障費の支払いが脅かされると警告している。

<FRBからの支援>
 金融当局は債務問題で緊密に協力し合う姿勢を示しているとみられ、ガイトナー長官は22日、バーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長とニューヨーク(NY)連銀のダドリー総裁と、議会が連邦債務上限を引き上げることができなかった場合の米経済への影響について協議した。
 フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁はロイターに対し、FRBは金融市場で財務省のブローカーとしての機能を果たしており、介入して財務省の代わりに借り入れを行うことはできないと述べた。それは財政政策を実施することになり、FRBの責務ではないと指摘した。
 ただ、FRBは政府の小切手の決済を行っていることから、業務面での関与が必要になる可能性がある。
 さらに、ニューヨーク連銀は金融市場参加者と定期的に緊密な連絡を取っていることから、米国のデフォルトや格下げが市場のパニックにつながった場合、市場の反応を監視するという重要な役目も担っている。

●産経新聞 平成23年7月23日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110723/erp11072300160000-n1.htm

 欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスが22日、金融支援策で民間負担を求めたギリシャの一部国債について、長期信用格付けを「デフォルト(債務不履行)」扱いにした。市場は、デフォルトを織り込み済みで、現段階では落ち着いている。ただ、ギリシャ以外のスペインやポルトガルなどの財政悪化国でもデフォルトが起きかねないとの疑心暗鬼が広がれば、信用不安が一気に拡大し、金融危機の引き金となる可能性も否定できない。米国の連邦債務上限引き上げをめぐる議論も膠着(こうちゃく)しており、米国債のデフォルト懸念もくすぶっている。投資家がリスク回避姿勢を強めれば、世界的な金融収縮を招く恐れもある。
 財政危機に陥ったギリシャをめぐっては、欧州連合(EU)が21日の首脳会議でギリシャ向け追加支援で合意し、市場では信用不安が周辺国に拡大する「負の連鎖」への懸念は後退。民間投資家が一定の負担を被る支援の決定を受け、格付け会社がギリシャの格付けをデフォルトと認定するリスクも想定されていた。
 フィッチがギリシャをデフォルト扱いとしたのは財政危機が根深いとみているためだ。今回の合意はギリシャの2014年半ばまでの資金繰りにめどをつけただけで、肝心の財政赤字を削減する抜本的解決策とはいえない。
 EUはデフォルトはギリシャだけとしているが、フィッチは、アイルランドやポルトガルについても、「2013年を迎えるまでに財政の持続可能性が確かなものにならないと、民間負担が適用されるだろう」と懐疑的な見方を示している。市場の疑念が膨らめば、各国の国債が売られ、長期金利が急騰しかねない。欧州と並んで世界の市場が危ぶむ米国の債務問題も瀬戸際で、8月にデフォルトに陥りかねない状況になっている。
 投資家がリスク投資を手控える流れが強まる懸念は強い。実際、世界のヘッジファンドへの6月の資金流入額は25億ドル(約2030億円)と昨年12月以降で最低となった。リスクマネーが市場から一斉に引き揚げれば、世界的に市場が混乱する恐れがある。
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お勧めのビデオ~日の丸のはなし

2011-07-26 14:56:27 | 日本精神
 マイミクのチョックリーさんが、「日の丸のはなし」というビデオを作っていたが、このほど全篇が完成した。
 国旗日の丸の由来や国旗の大切さが、くわしく、わかりやすく描かれている。改めて、お勧めしたい。

◎日の丸編

【ゆっくり動画】 日の丸のはなし 【前編】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14626610
【ゆっくり動画】 日の丸のはなし 【中編】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14831405
【ゆっくり動画】 日の丸のはなし 【後編】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15119318
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救国の経済学35~丹羽春喜氏

2011-07-26 12:01:50 | 経済
●フロート制は「信賞必罰のシステム」

 わが国の不況には、世界的な為替通貨制度の影響もある。1973年に、世界は固定為替レート制度から変動為替相場制度(フロート制)に移行した。丹羽氏によると、フロート制の下で形成される為替レートには、「ハンディキャップ供与機能」がある。それによって、絶対的に生産性の高い先進工業国と絶対的に生産性の低い後進発展途上国の間でも、貿易が活発に行なわれ、国際分業が成立しうる。
 丹羽氏は平成18年(2006)に出した「安倍政権の政策担当マシーン諸氏へ」で大意次のように説く。
 フロート制のもとでは、財政・金融政策を行って、インフレ・ギャップやデフレ・ギャップを発生させないように適切な水準の総需要を確保し、完全雇用・完全操業という意味での「国内均衡」を保っていれば、フロート制の自動的な調整作用によって、為替レートを媒介として、貿易収支・国際収支の妥当な程度の「対外均衡」も、もたらされる。つまり、ケインズ的総需要管理政策を適切に実施していけば、あたかも、それに対する「褒賞」のごとく、経済の「国内均衡」と「対外均衡」とが、ともに達成される理想的な状態が自ずと実現可能となる。
 説明を加えると、完全雇用・完全操業に近いほど大幅に内需が拡大されれば、産業による「輸出ドライブ」が緩和され、また、わが国への外国産品の輸入が大きく伸び、為替レートは円安になる。そうなれば、対外競争力を大幅に回復することができ、産業の「空洞化」の危険は解消されるとも丹羽氏は言っている。
 しかし、丹羽氏によれば、ひとたび、マクロ的な経済政策の「かじ取り」を誤ると、事態は一変する。すなわち、ある国の政策当局が、国内的に総需要の確保を怠るか、それに失敗して、不況を発生させ、デフレ・ギャップを生じさせてしまうと、産業による「輸出ドライブ」が激化し、他方では輸入が減るため、その国の通貨が高騰して輸出も苦しくなる。日本であれば、円高の進行である。あたかも、失政に対する「罰」のごとく、為替レートによる「ハンディキャップの供与」も行なわれなくなり、不況が悪循環的に永続化することになってしまう。フロート制は「まさに『信賞必罰』のシステムなのである」と丹羽氏は言う。
 では、わが国では、どうだったか。丹羽氏は、次のように言う。
 「1970年代後半より現在まで、わが政策当局が、財政・金融政策によるケインズ流のマクロ的総需要管理政策を十分な規模でダイナミックに運営するという意欲を失ってしまってきたために、わが国の経済は、その実力を発揮することができなくなってしまっており、フロート制による厳しい『罰』を受けて、あたかもハンディキャップを剥奪されたままでコンペに出場させられたゴルフ・プレイヤーのごとく、永続的な不況・停滞と深刻な産業空洞化に苦しめられ続けてきているわけである。したがって、わが国の企業や産業が、それぞれに、どんなに合理化努力を傾注しても、その結果として、さらにいっそう厳しい円高による追い討ちを受けることにならざるをえなかったわけであり、まさに、賽の河原の苦しみが続いてきたのである」と。
 そのうえ、不況は政府の財政収入を落ちこませる。それに押されて、財政当局が増税と財政支出の緊縮につとめれば、総需要をいっそう減少させ、不況がますます激化するという悪循環が生じる。また、不況は、企業に諸種の「リストラ」努力を強いるが、それは、企業どうしが需要の削り合いを行なうことにほかならない。それもまた、不況、停滞、そして、経済衰退のプロセスをさらに悪化させるという悪循環をもたらす。経済学に言ういわゆる「合成の誤謬」である。

 次回に続く。
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国旗国歌条例は極めて常識的

2011-07-25 08:49:08 | 日本精神
 最高裁は平成19年2月、国歌伴奏を命じた職務命令を合憲と判断したのに続いて、本年5月30日、卒業式での国歌斉唱時の起立命令を合憲とする判断を示した。また、6月3日に大阪府議会で、府施設での国旗の常時掲揚と、府内の公立学校の教職員に国歌斉唱時の起立を義務付ける条例が可決、成立した。全国初の画期的なものだった。
 私は、これらについて、それぞれ5月31日、6月6日の日記に書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110531
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110606
 その後、有識者の発言を見る中で、憲法学者の百地章氏の見解は、法理的にも、わが国の伝統から見ても、適切なものと思う。
 次に、百地氏の発言を掲載する。

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●産経新聞 平成23年7月1日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110701/edc11070107390001-n1.htm
【金曜討論】
国旗国歌条例 百地章氏、宇都宮健児氏    
2011.7.1 07:36

 大阪府の施設での国旗常時掲揚と、府内公立学校の教職員に国歌斉唱時の起立を義務付ける全国初の条例案が6月3日、地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹知事)が過半数を占めている府議会で可決・成立した。条例は府内市町村立学校の教職員も対象で、国旗国歌法や教育基本法、学習指導要領の趣旨を踏まえたものとされている。この条例制定の是非について、日本弁護士連合会の宇都宮健児会長と、憲法学が専門の百地章日本大学教授に見解を聞いた。(溝上健良)

≪百地章氏≫

■きわめて常識的な内容だ

--大阪府で条例が制定されたことをどうとらえるか
 「条例自体は内容を見てもきわめて常識的なものだと思う。法的根拠にしても『伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛する態度を養う』という教育基本法や国旗国歌法、学習指導要領の趣旨を踏まえている。ただ府教委の通達などがすでにあり、条例は『屋上屋を架すもの』かもしれない。橋下徹知事のパフォーマンスとの声もあり、条例不要説も理解はできる」

○斉唱の義務は明らか

--罰則条例を9月に制定しようという動きについては
 「教師はどんな思想を持っていようが、国歌斉唱の義務があることは先の法律などから明白だ。思想・良心の自由とは別問題で、組織の秩序の問題。そこで一定のルールを定めて処分するということは、当然のことではないか」

--橋下知事は「国旗国歌を否定するなら公務員を辞めればいい」と発言している
 「ちょっと乱暴な気もするが、世間の常識とはそういうものだと思う。思想・良心の自由や職業選択の自由もあり、私はそこまでは言わないが。他の例でいえば、法律も国民の思想信条に合致するものばかりではないだろう。ある人が『税金なんて必要ない』という信念を持つことは構わなくても、納税の義務は拒否できないように、法治国家では思想とは別に行為としては法に従わざるを得ない」

--この条例に反対する人は起立自体が思想・良心の自由侵害だと主張するが
 「その主張は当たらない。『考えを変えろ』とまで言ったら思想・良心の自由侵害に当たるが、行動のみを求めているのであって、それまで否定したら法治国家は成り立たないし教育も成立しない」

--国旗・国歌は外国では普通に教えられている現実がある
 「国旗・国歌の尊重は教育上、社会常識として教えねばならないこと。逆にこれを知らずに育った子供は国際社会でも恥ずかしい行動をとってひんしゅくを買うなど、不幸なことになりかねない」

○自信を持って指導を

--国歌斉唱指導を合憲とした最近の一連の最高裁判決についての評価は
 「きわめて妥当な判決。どう考えても違憲とはいえないだろう。客観的に見れば、国旗国歌にかたくなに反対する教師たちは、子供たちに国旗を批判し国歌を冒涜(ぼうとく)するような教育を一方的に行っており、これこそ子供たちの思想・良心の自由の侵害といえる。一連の判決で最高裁の立場は確立したわけで、政治闘争を展開している教師による現場の混乱を収束させるために、教育委員会も校長も自信を持って指導してほしい」

【プロフィル】百地章
 ももち・あきら 日大法学部教授。昭和21年、静岡県生まれ。静岡大人文学部卒、京都大大学院法学研究科修士課程修了。46年、愛媛大助手。同大助教授、教授を経て平成6年から現職。法学博士。専門は憲法学。著書は「憲法の常識 常識の憲法」「靖国と憲法」「憲法と政教分離」など多数。

※宇都宮氏については略
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 日本の国旗は「日の丸」であり、国歌は「君が代」である。青少年にそのことをしっかり教えよう。祝日には国旗を掲揚しよう。式典では国歌を声高らかに歌おう。

関連掲示
・マイサイトの「日の丸」「君が代」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/j-mind03.htm
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/j-mind04.htm
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救国の経済学34~丹羽春喜氏

2011-07-24 14:25:18 | 経済
●1970年からのわが国の経済政策を批判
 
 丹羽氏は、平成不況がどうして深刻化したかについて独自の分析をしている。丹羽氏は、拙稿「救国の秘策がある!」で詳しく紹介したように、平成10年(1998)から時の小渕・小泉・安倍の各政権に、積極的に政策提言を行ってきた。その提言の中で、丹羽氏は1970年代からのわが国の経済政策を批判している。それを概観しよう。
 平成10年に小渕首相に提出した「政策要求書」の「詳論」において、丹羽氏は、次のように問うた。
 「なぜ、わが国経済の不況がこれほどまでに深刻化し、かくも悪性の危機的な窮迫状況をもたらすまでに立ち至ったのか?」
 丹羽氏は、わが国の不況の起点を山家悠紀夫氏・菊池英博氏のように橋本政権時代とするのではなく、1970年代前半からだとする。当時からマクロ的に総需要の不足が続いてデフレ・ギャップが発生・累増してきていた。それは「昭和50年代の後半から、政府の誘導もあって、反ケインズ主義による社会的マインド・コントロール状況が形成され、不況克服の特効薬『ケインズ政策』の発動が封止されてきたから」だと言う。「ケインズ的なマクロ的総需要管理政策、とくに財政政策の発動が、社会的にタブーとされてしまった以上、ひとたび不況が発生し、しかも、それが市場メカニズムの自立的回復機能の臨界限度を踏み越える(すなわち「流動性のわな」現象が発現する)ほどの激しさに達したとなれば、不況のとめどない深刻化は、必至であった」。その不況が平成元年に起こった。
 菊池氏によると、バブルの崩壊によって、わが国の経済は、大打撃を受けた。1990年代はそこからの回復の過程だった。ようやく回復の兆しを示していた平成8年(1996)橋本龍太郎氏が総理大臣になった。橋本内閣は、粗債務だけを示す大蔵省の資料を鵜呑みにし、わが国は財政危機にあると判断した。そして、財政改革と称して「基礎的財政収支均衡策」を取り、増税を実行した。その結果、不況を招き、デフレに陥った。菊池氏は、今日まで続くデフレの原点は平成9年(1997)の緊縮財政であるとする。丹羽氏は、わが国の経済は、それ以前に、1970年代からデフレ・ギャップが発生・累増しており、それが平成不況の深刻さの根底にあることを統計的に明らかにしている。
 丹羽氏は、先の「政策要求書」や同時期の著作で、大意次のように言う。平成3年(1991年)に平成不況がはじまり、宮沢喜一内閣時代の平成4年(1992年)から数次にわたって合計数十兆円規模と称する「総合経済対策」が行われたが、その効果はほとんど現れなかった。このことをもって「ケインズ的政策が無効である証拠」とする見解が流布されているが、これは「きわめて悪質な思想謀略的デマゴーグ」である。平成3年から9年(1991~1997)までの、政府支出(中央および地方)の実質額の伸び率は、平均年率2パーセント台にすぎない。「総合経済対策」なるものにおいて、有効需要支出へのネットの政策的追加額(いわゆる「真水」)が、各年度の本予算の伸びがいちじるしく抑制・削減されて大きな景気冷却効果がもたらされたことの差し引きで見れば、「事実上、マイナスでしかないような微々たるもの」とされてしまっていたからこそ、景気浮揚が成就されえなかったのである。
 民間投資支出の低迷を政府支出の増額で補って、この両者の合計額の実質伸び率を、たとえば平均年率5パーセント以上に維持するような政策運営が行なわれていれば、平成不況は起こらなかった。「総合経済対策」なるものは、リップ・サービスにすぎず、政府支出を必要なだけ増やして景気を回復させ、十分な経済成長率を維持しようとする政策運営は、ほとんど行なわれてこなかった。また、「そもそも、そのような考え方に基づく政策の策定そのものが、まったくなされていなかったと判定するほかはない。それは、反ケインズ主義の社会的マインド・コントロール強化をねらった策略の一環として、政府が、わが国民を騙してきたものと断ぜざるをえないのである」と当時、丹羽氏は主張した。

 次回に続く。
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