ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

尖閣~ロシアをも強硬にさせた

2010-09-30 10:09:34 | 時事
 民主党政権は、尖閣沖衝突事件への対応の大失態で、中国を勢いづかせただけでなく、ロシアをも強硬姿勢にさせてしまった。ロシアは第2次世界大戦の終戦65年を機に、大戦末期の対日侵攻を正当化し、「対日戦勝記念日」を制定した。これに対し、わが国の政府は、抗議らしい抗議をしなかった。ロシアに対して弱腰をさらしたところに、中国漁船による尖閣沖衝突事件が起こった。わが国は菅首相以下の腰抜け外交で、歴史的な敗北を喫した。これを見たロシアは、わが国に対し、強硬な姿勢をいっそう強めている。
 中露は27日に共同声明を発表し、「中露は第二次大戦の歴史の歪曲、ナチスや軍国主義分子とその共犯者の美化、解放者を矮小化するたくらみを断固として非難する。国連憲章およびその他の国際文献はすでに、第二次大戦に対する定論を作り出しており、簡単に歪曲してはならない」と謳った。これは、共産主義ソ連を継承するロシアが、共産主義を堅持する中国との連携を強め、過去の歴史を正当化し、現在の国際社会での外交を有利に進めようとするものである。
 両国は、共同声明で、第2次大戦の「悲劇」、及びファシズム、軍国主義の「侵攻」「征服」を強調するばかりで、20世紀の人類に最大の災厄をもたらした共産主義、及びスターリン・毛沢東の犯罪については、まったく反省していない。ロシアは、共産国に先祖返りしたかのごとくである。
 中国訪問を終えたメドベージェフ大統領は、クリル諸島(北方4島と千島列島)は「わが国の重要な地域だ」と強調し、北方領土に「必ず行かなくてはならない」と述べ、近く訪問する意向という。実現すれば、旧ソ連時代を含めて、首脳の北方領土訪問は初めてとなる。訪問によって、対日侵攻の正当化、北方領土の実効支配強化を、一段と進めようとする意図だろう。わが国の対露外交は、厳しい状況にある。敗戦から65年間、旧ソ連、現ロシアと粘り強く返還交渉を続けてきた努力が、水泡に帰すおそれがある。これも、尖閣沖衝突事件で、民主党政権が国辱的な大失態を演じたためである。もはや菅内閣は責任を取って総辞職し、国民に信を問うべきである。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年9月28日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/100928/chn1009280256001-n1.htm
【主張】中露首脳会談 看過できない歴史の歪曲
2010.9.28 02:55

 訪中したメドべージェフ・ロシア大統領と胡錦濤国家主席が会談し、第二次大戦終結と対日戦勝65周年に関する共同声明に署名した。これに先立ち、同大統領は「歴史をねじ曲げようとする勢力がいるが、われわれは大戦の真実を主張していかねばならない」とし、中露がともに努力すべきだとの考えを強調した。
 ロシアはこれまでも「日本が歴史を捏造(ねつぞう)した」と主張しているが、旧ソ連の北方領土侵攻の歴史を勝手に書き換えることはできない。北方四島が日本固有の領土である事実を全面否定することは断じて許されない。
 中国がロシアに同調すれば、日本を標的に歴史を歪曲(わいきょく)し、領土という共通利益を正当化するための共同戦線を両国が構築したことになる。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で日本が毅然(きぜん)たる対応を示せないことも中露に乗じるすきを与えていよう。菅直人首相は直ちに両国に抗議し、反論すべきだ。
 中露は漁船衝突事件前から今回の会談をにらんで布石を打ってきた。胡主席は5月のロシアの対独戦勝記念日に訪露、「対独、対日の歴史の真実を守り抜くために連携を強める」と言明した。ロシアは日本が第二次大戦降伏文書に調印した9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」に制定した。
 今回の首脳会談でも、胡主席は「国家の核心的利益にかかわる問題で相互支持を堅持すべきだ」と語り、北方領土問題でロシアを支持する見返りに、尖閣諸島の中国の領有権の主張をロシアが受け入れるよう求めた形となった。
 択捉、国後、色丹、歯舞群島の北方四島は1945年8月9日、当時のソ連が日ソ中立条約を破棄し、終戦後に不法占拠した日本固有の領土だ。「戦争による領土不拡大の原則」を掲げた連合国大西洋憲章(41年)にも違反する。
 一方、尖閣諸島は日清戦争後に明治政府が沖縄県に編入、戦前にはかつお節工場もあった。終戦後は米国施政下に置かれたが、沖縄返還協定で日本に返還された。
 こうした明白な事実を国際社会に認知させる努力を歴代政権は十分に行ってきたのか。在外公館などを通じた説明が不可欠だ。
 中国は今後も軍事的威嚇や領海侵犯を強める可能性がある。ロシアも加わって、日本の主権は危機に瀕(ひん)している。菅政権は漫然と構えている時ではない。

●読売新聞 平成22年9月28日

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100927-OYT1T01102.htm
中露、共同声明に署名…領土巡る新たな対日圧力

 【北京=大木聖馬】中国の胡錦濤国家主席とロシアのメドベージェフ大統領は27日、北京で首脳会談を行い、「第2次大戦終結65周年に関する共同声明」に署名した。
 露大統領府によると、声明は、中露が「大戦の歴史を捏造(ねつぞう)し、ナチス・ドイツやその同盟者を英雄視する試みを非難する」内容になっている。尖閣諸島を巡る日中対立が深まる中、領土を巡る対日摩擦を抱える中露が日本への圧力をかけた形だ。
 声明はまた、中露両国が「大戦の結果と教訓について、非常に近い立場である」ことを明示した。大戦を終結に導いた両国の貢献を評価し、同時に、中露の歴史認識の「正しさ」を主張する狙いがある。
 新華社通信によると、胡主席は会談で、「両国がそれぞれの核心的利益に関する問題で互いに協力し合う」ことを提案した。中国は領土保全など主権に絡む問題を「核心的利益」と位置づけており、胡主席の発言には、尖閣諸島を巡る日本との対立を念頭に、ロシアの協力を取り付ける狙いがあるのは確実だ。メドベージェフ大統領は、地域問題で中国と密接に協調していくと言明した。
(2010年9月27日22時57分 読売新聞)

●産経新聞 平成22年9月30日

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100929/erp1009290058002-n1.htm
中露第二次大戦終戦65周年を記念する共同声明全文
2010.9.29 00:57

 中国とロシアが署名した第二次大戦終戦65周年を記念する共同声明の全文は次の通り。
   ◇
 今年は第二次大戦が終結して65周年。この20世紀における人類最大の悲劇は、世界の多くの国家の人民に無数の災難をもたらした。人類は、人類の文明を破壊する災難の再発を避けるために、永遠にこの悲劇とその原因、教訓を深く心に刻んで忘れない。
 この戦争中、中露国民はファシストおよび軍国主義の侵攻を受け、最も残酷な試練を経験した。最も惨憺(さんたん)たる犠牲を払い、侵略者の重圧に立ち向かい、最後に勝利を勝ち取った。ファシストおよび軍国主義勢力は、苦心惨憺して中露両国やその他の国家や大陸を征服し、奴隷のように酷使した。中露両国は、この2つの勢力を制止した人々の功績を永遠に忘れない。
 両国国民は、同盟国や生命と自由を守るためにわれわれとともに戦った人々を追懐し、記念する。
 戦争時代の残酷な試練の中で、中露両国の人民が互いに助け合うという素晴らしい伝統が体現され、強化された。日本が中国を侵略した後、ソ連はすぐに自らの隣国に巨大な援助を提供した。両国のパイロットはともに戦い、中国公民さえソ連軍の作戦に参加した。中国はソ連軍が、中国東北戦線解放において果たした役割を高く評価する。
 両国自民は戦闘での友好、互いに助け合いながら作り上げた光り輝く歴史によって、現在の強固な中露の戦略的協力関係の基礎を固めた。
 われわれは大戦を戦った戦士たちに対し、謹んで崇高な敬意を表する。彼らは現在、依然として愛国主義および国家のために献身する模範である。われわれは崇敬の念を抱きながら、両国の自由と独立のために犠牲となった烈士たちを記念する。
 中国人民はそれらの中国解放事業のために尊い命を差し出したソ連軍の将兵の思いを心の中に大事にしまっておく。そして永遠に彼らの卓越した勲功を深く心に刻んで忘れない。
 第二次大戦の勝利が中露に対して持つ重大な意義をかんがみ、両国は2010年、共同で第二次大戦終戦65周年に関する数々の活動を行ってきた。
 第二次大戦が全人類に与えた警告は厳しいものだ。中露は第二次大戦の歴史の歪曲(わいきょく)、ナチスや軍国主義分子とその共犯者の美化、解放者を矮小(わいしょう)化するたくらみを断固として非難する。国連憲章およびその他の国際文献はすでに、第二次大戦に対する定論を作り出しており、簡単に歪曲してはならない。さもないと、各国、各民族間の敵対心を挑発するだろう。このようなたくらみはわれわれをイデオロギーで線引きする冷戦時代に引き戻す行為であり、国際社会が国際的な挑戦や威嚇に対応するためにしてきた努力を水泡に帰させることになる。
 数十年来、各国は国際法の原則を打ち立てるために、国際関係体系の基礎を作るために、多くの活動を行ってきた。中露は国連安全保障理事会の常任理事国として、平和を愛する国家と人々とともに、公正で合理的な国際秩序を確立し、戦争や衝突を防止するために継続として共に努力していく。(川越一)

●産経新聞 平成22年9月30日

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100929/erp1009291929014-n1.htm
「北方領土必ず行く」 露大統領 対日本で中国に同調姿勢
2010.9.29 19:28

 ロシアのメドベージェフ大統領は29日、日本の北方領土を含むクリル諸島(北方4島と千島列島)は「わが国の重要な地域だ」と強調するとともに、29日の訪問計画が取りやめになったものの「必ず行かなくてはならない」と述べ、近く訪問する意向を明らかにした。日本外務省によると、ソ連時代を通じロシアの国家元首が北方領土を訪問した例は確認されておらず、領土の実効支配強化を目指すロシアの意思の表れといえる。訪問すれば、日露関係は戦後最悪のレベルに落ち込む公算が大きい。
 国営ロシア通信によると、大統領は29日、訪問先のロシア極東ペトロパブロフスク・カムチャツキーで、クリル諸島訪問についての記者団の質問に、「残念ながらいまは飛行に適さない天候だが、近いうちに必ず行く」と答えた。(略)
 大統領は28日までの中国公式訪問で、「歴史の歪曲(わいきょく)は許さない」とする共同声明に胡錦濤国家主席と署名し、対日戦争をはじめとする第二次大戦の歴史認識をめぐり連携する方針を確認した。尖閣諸島近海で起きた中国漁船衝突事件で対日強硬姿勢を強める中国に、同調する戦略が鮮明になったといえる。
 これに続く大統領の北方領土の初訪問計画は、領土返還交渉そのものを事実上、拒否するロシア側の意思表示といっても過言ではない。日本政府は交渉戦略を根底から見直すことが急務となる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100929/plc1009292209018-n1.htm
外相「重大な支障」と言うものの、中露攻勢になすすべなし
2010.9.29 22:08

 メドベージェフ大統領の北方領土訪問について、前原誠司外相は29日、外務省を訪れたロシアのベールイ駐日大使に対して、「実現すれば日露関係に重大な支障が生ずることになる」と強く警告した。前原氏が同日の産経新聞などのインタビューで明らかにした。だが、北方四島の実効支配を強めるロシアに対し、日本側には訪問を実力で阻止するすべはない。ロシアは尖閣諸島付近の漁船衝突事件で強圧的な態度をとる中国と連携して対日攻勢を強めている。安全保障面で定見がない民主党政権は弱点を突かれた格好だ。(略)
 前原氏の強い態度も口先だけで終わる可能性が大きい。具体的な対抗措置をちらつかせることすらできないのが今の日本政府だ。仙谷由人官房長官は29日の記者会見で大統領訪問について「ロシアの意向がどのへんにあるのかは承知していない」と語り、無策ぶりを露呈した。(略)
 平成19年6月にロシアのラブロフ外相が北方領土・国後島などを訪れたが、日本政府は当時抗議すらしなかった。ロシアの「対日戦勝記念日」制定に対しても異議を唱える申し入れだけで済ませてしまった。今回の問題でも、国際社会を味方につける発信力に乏しい。菅直人首相は29日夕、記者団に「大統領が北方四島を具体的に訪問するとは受け止めていない」と繰り返しているだけだ。
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コメント

尖閣~櫻井よしこ氏らが提言

2010-09-29 10:14:45 | 時事
 尖閣沖衝突事件が、国会で審議されている。与野党の国会議員の申し入れによって、参院外交防衛委員会が閉会中審査を行っている。心ある国会議員は、事件の事実関係を明らかにし、政府の対応を追及するとともに、有効な方策を提案し、国のあり方を正してもらいたい。
 政府の対応については、与党の民主党内からも不満が上がっている。党所属国会議員の4分の1近くの約100人が政府の対応を批判する声明などに署名した。
 長島昭久前防衛政務官、吉良州司前外務政務官らは27日、首相官邸に仙谷官房長官を訪ね、同党議員43人の署名を添えて「建白書」を提出した。また、松原仁衆院議員ら国会議員有志12人は同日、尖閣諸島への自衛隊常駐の検討などを政府に求め、声明を発表した。自民党の議員からは、具体的な提案が出ていない。野党側も、方策を提起すべきである。
 こうしたなか、民間シンクタンクの国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)は、同じ27日、緊急提言を発表した。櫻井氏らのグループには、外交・安全保障・中国問題の専門家も多く参加している。提言の内容は、具体的かつ有益である。国家重大事に、民間から即座にこうした提言が出るのは心強い。日本人の気概がここにある。
 以下全文を掲載し、広く同憂の人々にお知らせしたい。また、政府・国会議員は、この提言を真摯に受け止め、速やかに最善の策を講じてもらいたい。

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●国家基本問題研究所

http://jinf.jp/suggestion/archives/3608
中国人船長釈放に関する緊急提言

平成22年9月27日

緊急政策提言

一般財団法人 国家基本問題研究所

 沖縄・尖閣諸島沖の日本領海内で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件で、日本が中国の圧力に屈し、中国人船長を処分保留のまま釈放したことは、極めて遺憾である。軍事力を背景にした中国のこれ以上のごり押しを防ぎ、日本の領土主権と国益を守るため、当研究所は以下を緊急に提言する。

1、政治家は今回の事件をもって戦後の国防体制を根本的に再考する機会にせよ
 加えて、以下の当面の措置を取るよう求める。
2、政府は中国船による意図的衝突の証拠となるビデオ映像を公表せよ
3、政府は尖閣諸島に自衛隊を配置せよ
4、政府は「白樺」など東シナ海のわが国排他的経済水域内の天然ガス田の試掘を開始せよ
5、国会は外国船の違法活動を罰する法律を制定せよ 

1、戦後の日本は、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」に象徴される仮構の下に安全保障を考えてきた。しかし、この幻想は無残にたたき壊されたという今回の現実を直視すべきである。自衛隊を「普通の民主主義国家」が持つ「国軍」に改め、併せて世界でも有数の長大な海岸線を持つ国家らしく、海上保安活動の装備向上と強化を急ぐなど、戦後体制の根幹を改める方向を決める必要がある。国の代表である政治家には特にその自覚を促したい。

2、中国政府は9月25日の船長の釈放で矛を収めず、日本政府に謝罪と賠償を要求するというさらに高圧的な態度に出た。日本政府はこの理不尽な要求を断固拒否するとともに、船長逮捕の正当性を国際社会に訴えるため、中国漁船が海上保安庁巡視船に意図的に体当たりした証拠となるビデオ映像を公表すべきである。

3、尖閣諸島周辺海域には、海上保安庁が巡視船を常時配備し、定期的に航空機を哨戒させている。日本政府は平成14年に尖閣諸島の魚釣島、南小島、北小島を所有者から借り上げる一方、平成17年には魚釣島の灯台(昭和63年に日本の政治団体が設置)を国有財産とし、海上保安庁が保守・管理を行っている。日本は尖閣諸島のこうした実効支配を強化し固有の領土を守るため、尖閣諸島に自衛隊部隊を配置し、周辺海空域で自衛隊による警戒監視を実施すべきである。日本は自国領土を自ら守る決意を行動で示して初めて、米国に日米安保条約の尖閣諸島への適用を期待することができる。

4、中国人船長逮捕への報復として、中国は東シナ海のガス田「白樺」(中国名・春暁)の掘削を一方的に開始した可能性が高い。白樺の開発については、日本企業が出資の形で参加することで日中が2008年に合意し、出資比率を詰める交渉が始まったが、漁船衝突事件を受けて中断した。中国側の掘削が確認されるなら、日本も対抗してわが国排他的経済水域内の試掘開始に踏み切るべきである。

5、国連海洋法条約は領海における無害通航権を外国船に認めるとともに、無害でない通航として、武力行使または威嚇、兵器演習、情報収集行為、宣伝行為、航空機の発着や積み込み、汚染行為、漁業など12項目を上げている。日本の国内法では、外国漁船の操業については「外国人漁業の規制に関する法律」に、無害通航に当たらない不審な停留や徘徊に対しては「領海等における外国船舶の航行に関する法律」に、それぞれ罰則規定がある。しかし、それ以外の無害でない通航を取り締まる国内法は日本にない(今回の事件で、中国人船長は公務執行妨害容疑で逮捕された)。
 同様に、日本が主権的権利を有する排他的経済水域内での違法活動を取り締まる実効的な法令も整備されていない(「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」では不十分である)。
 そもそも自衛隊には領域警備の権限がなく、海上警備行動が発令されない限り、対応する法的根拠がない(諸外国の軍隊には領域警備の権限がある)。海上保安官の武器使用についても、海上保安庁法改正で多少改善されたものの、なお厳しい縛りがある。水産庁の取締船に至っては、放水銃しか装備していない。
 今後、日本の領海と排他的経済水域を脅かされることがないよう、必要な法整備を図り、装備も充実させていく必要がある。
 
 日本政府は尖閣諸島が日本領であることについて、概略以下のような基本見解を発表している(外務省ホームページ)。当研究所はこの見解を支持する。
① 日本政府は1895年1月、尖閣諸島が無人で清国の支配下にないことを確認した上で、日本領に編入した。
② 1895年5月発効の下関条約に基づき日本が清国から割譲された台湾と澎湖諸島に尖閣は含まれていない。
③ 従って1951年のサンフランシスコ平和条約で日本が放棄した領土の中に尖閣は含まれていない。尖閣は南西諸島の一部として米国の施政権下に置かれ、71年の沖縄返還協定で日本に返還された。
④ 中国は70年後半に東シナ海の石油開発の動きが表面化してから領有権を主張し始めた。
⑤ 中国が領有権を主張する歴史的、地理的根拠は、国際法上有効な根拠にならない。

 菅直人首相は国際社会に対して中国側の主張の理不尽を指摘し、そのなりふり構わぬ恫喝に対して毅然と拒否する姿勢を貫くべきである。
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コメント

尖閣~日本は世界に恥をさらした

2010-09-28 10:12:02 | 時事
 9月24日は国辱記念日である、と昨日書いた。尖閣諸島沖の中国船衝突事件で、日本は世界に恥をさらした。これは菅首相の恥に留まらず、日本という国の恥辱であり、日本国民の恥辱であり、日本人一人一人の恥辱である。
 世界の各国は、日本の中国に対する対応に注目した。国連総会のため、各国代表がニューヨークに集合している最中だった。日本を尊敬し、信頼していた国々は、日本外交の弱体ぶりを見て、敬意と信頼を失っただろう。韓国・ASEAN・インド等、中国と国益をかけた外交を行っている国々は、日本には期待できないと失望しただろう。日本との間で北方領土問題を持つロシアは、これ幸いと実効支配の正当化を強めるだろう。
 今回の事件で日本は世界に恥をさらしたと書いたが、実はこれが初めてのことではない。わが国は、竹島を韓国に実効支配され、それを事実上放置しているからである。北方領土は、大東亜戦争末期にソ連が侵攻・不法占拠したものであり、戦後処理の課題である。竹島はそうではない。竹島は、明治38年(1905)、日本政府は内務省訓令により、“隠岐島の西北八十五里にある島嶼”を「竹島」と命名し、島根県の所管とした。ところが、大東亜戦争後、韓国の大統領となった李承晩が、李承晩ラインを引き、竹島を自国の領土・領海に含めようとした。これに対し、わが国は有効な抗議・行動をせず、不法占拠を許し、実効支配を受ける状態となってしまった。
 尖閣諸島は、このままでは二の舞になる。その影響は竹島の時とは比較にならぬほど大きなものとなる。単に領土・領海・資源を失うということだけではない。日本という国の国際的な信用、評価、名誉、そして国富、繁栄をも失うことになりかねない。日本人は、国家・国民としての恥辱を、腹の底から感じ、日本の立て直しを誓い、団結・努力しよう。

 船長釈放後も日本の対応に、引き続き各国は注目している。これまでの各国の反応を伝える報道記事をクリップしておく。

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■東南アジア諸国

●読売新聞 平成22年9月25日

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100924-728653/news/20100925-OYT1T00860.htm
米ASEAN声明、米の対中けん制ならず

 【ニューヨーク=黒瀬悦成】米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が24日、ニューヨークで行った2回目の首脳会議は、共同声明で焦点の南シナ海の領有権問題が明記されず、米国が意図していた対中けん制網の明確な形成には至らなかった。
 オバマ米政権は今回、「アジア回帰」に向けた地歩を築きつつも、ASEANの「バランス外交」の壁に阻まれた格好だ。
 米国のアジア戦略の中で、ASEANの重要性は急速に高まっている。計6億2000万人の人口を抱えるASEANは、米国の輸出市場としてはカナダとメキシコ、中国に次ぐ規模で、大統領が経済再建の重点施策に掲げる「輸出倍増計画」の達成にかかわる存在だ。
 米国はさらに、中国による東南アジアへの経済・外交・安全保障面での影響力拡大を効果的にけん制できるという意味で、米・ASEANの関係強化は、双方にメリットがあると判断している。特に、南シナ海をめぐっては、中国によるスプラトリー(南沙)諸島の実効支配に懸念を強めるASEANと「共闘」の余地は大きいとみていた。
 しかし、米ホワイトハウスによれば、会議では、「南シナ海を含む紛争の平和的解決の重要性で合意した」としているものの、共同声明は、原案にあった「南シナ海」の語句を削除。また声明の草案段階にあった、「ASEANと米国は、武力または威嚇による南シナ海での領有権確保に反対する」とした、中国に警告を発する語句も消えた。
(2010年9月25日22時48分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100925-OYT1T00834.htm
南シナ海、中国実効支配に懸念…東南ア諸国

 (略)中国は、軍事力だけでなく、政治力も強い。ニューヨークで開かれた今回の米ASEAN首脳会議では、南シナ海への米国の関与を強める形での解決を模索するとみられていた。だが、首脳会議の声明では、最終的に、原案段階からあった「南シナ海」の表現が消えた。経済的影響力を強める中国側が猛烈に巻き返し、伝統的な友好国のラオスやカンボジア、ミャンマーなどへの外交攻勢を強め、声明内容の骨抜きを図ったとの見方も出ている。(シンガポール 岡崎哲、マニラ 稲垣収一)
(2010年9月25日22時35分 読売新聞)

■韓国

●産経新聞 平成22年9月25日

http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100925/kor1009252113003-n1.htm
【中国人船長釈放】韓国、日本を“反面教師”に 「力なき正義、国家間に通用せず」
2010.9.25 21:28

 【ソウル=水沼啓子】韓国各紙は25日、中国人船長の釈放について「“パワーチャイナ”が現実になる」(朝鮮日報)、「“17日間の領土戦争”日本、中国に白旗」(中央日報)などの見出しを掲げ、日本外交の敗北を大々的に報じ、中国に対する強い警戒感をあらわにした。韓国政府や外交専門家らは、日本の“屈服外交”を反面教師として、今後の外交政策に生かそうと注視している。
 各紙は、日本が中国の圧力に屈した決め手として、ハイテク機器などの製造に欠かせないレアアース(希土類)の対日輸出措置を指摘。中央日報は、韓国が昨年2600トンのレアアースをすべて中国から輸入した事実を挙げ、「中国が輸出を制限する“資源武器化”戦略を取り、産業界も尻に火がついた」とし、今回の事態は「他人事ではない」と強調した。
 また、韓国は東シナ海にある離於島(中国名・蘇岩礁)をめぐり中国側と争っている。このため、衝突事件を踏まえ「あらかじめ段階的な対応策を準備するよう韓国の外交官たちに注文したい」(中央日報)との論調が多い。
 朝鮮日報も「強大国が資源を武器に経済報復に出るときだ」と題する社説で、「中国は国際社会で大国としての責任と役割には関心がなく、自国の利益だけに執着し影響力拡大にだけにこだわっている」と非難。「こうした中国に、もまれて生きなければならない未来を、韓国ももっと切実に考えるべき時だ」と警鐘を鳴らしている。
 東亜日報は「中国の強硬圧迫に降伏した日本」と題する社説で、「大国主義と中華思想が強い中国が、経済力と外交力を背景に国際舞台で発言力を強めつつある現実は、われわれにもっと緊張しろという信号を送っている」と指摘。「国家間に力のない正義が通用することはほとんどない」と警告している。
 韓国の外交専門家は「韓国は今回、日本の対応を注視していた。独島(日本名・竹島)をめぐる領有権問題などに今後、応用できるからだ」としている。

■インド

●産経新聞 平成22年9月25日

http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100925/asi1009252116002-n1.htm
【中国人船長釈放】インド、“中国脅威論”を裏付ける
2010.9.25 21:14

 【ニューデリー=田北真樹子】日本が中国人船長を釈放したことについて、インドでも「日本は中国に屈した」との見方が広がっている。また、中国との間で国境問題を抱えるインドにとって、漁船衝突事件での中国の出方は、“中国脅威論”を改めて裏付ける材料の一つと受け止められている。
 25日付のヒンドゥスタン・タイムズ紙は社説で、日本が船長を逮捕したことに対する中国の反応を、「狂乱に近い」と表現。その上で、「将来の大国(中国)の成熟度は、急成長する力とは反比例しているとの感触をさらに強くさせた」とみる。そして、中国があまりにも多くの国と対立していることから、世界の安定に対する中国の姿勢の見極めが必要になると指摘する。
 中国が強硬な姿勢を強めていることについて、ジャワハルラル・ネール大のG・V・ナイドゥ教授は、「インドの国益も脅かされかねない」との認識が改めて明確になったと指摘。その上で、「日本やその周辺国と連携して、中国を除いて、個々の地域的な政策を全体の政策に発展させることが、インドにとっても長期的な利益につながる」と主張する。

■ロシア

●毎日新聞 平成22年9月27日

中露:歴史問題で歩調「領土」正当性アピール

 【北京・浦松丈二】中国の胡錦濤国家主席は27日午前、訪中したロシアのメドベージェフ大統領と北京で会談。会談後、第二次世界大戦終結65周年を記念する共同声明を発表し、歴史問題で共同歩調を取る見通しだ。
 中露首脳会談は今年5回目。メドベージェフ大統領は26日、中国東北部の旅順港を訪れ、日露戦争や第二次大戦で旧日本軍と戦った兵士の墓地に献花した。中露の元兵士らと面会して「歴史をねじ曲げようとする勢力がいるため、真実を主張しなければならない」と訴えた。
 ロシアは北方領土について「第二次大戦の結果としてソ連(現ロシア)に移った」と主張し、領有権を主張する日本と対立。旧ソ連のスターリン時代の人権弾圧を非難する東欧諸国との間でも歴史問題を抱えている。
 中国は尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近での衝突事件で、領有権を主張して日本と対立している。歴史問題での共同歩調には、中露それぞれが日本との間で抱える「領土問題」の正当性をアピールする狙いもありそうだ。
 メドベージェフ大統領は27日午後、温家宝首相や習近平国家副主席らと個別に会談。東シベリアの油田から中国に原油を送るパイプラインの完成式典に出席する予定だ。

毎日新聞 2010年9月27日 11時16分(最終更新 9月27日 14時17分)
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尖閣~9月24日は国辱記念日

2010-09-27 09:34:39 | 時事
 尖閣沖衝突事件で、那覇地検は、中国人船長を処分保留のまま釈放した。その日、国民の多数が、政府の対応に憤慨し、落胆し、屈辱を味わった。
 シナ系日本人である評論家の石平氏は、「平成22(2010)年9月24日という日は、日本にとって戦後最悪の『国家屈辱記念日』になるだろう」と言う。まさに国辱記念日として、9月24日は心に刻まれねばならない。
 石氏は、産経新聞への寄稿にて、続けて次のように述べている。
 「今回の決定は、日中関係と日本の安全保障に多大な禍根を残す。国家の領土保全と主権にかかわる問題で日本政府があっさりと降参してしまった以上、中国共産党政権はもはや日本を独立国家として、対等な交渉相手とはみなさないはずだ。
 圧力をかければ折れてくるような相手だから、何かことがある度に中国は圧力をかけてこよう。日本政府には自らの領土を守り抜く覚悟がまったくないことが分かってしまったので、これからは『領土問題』を提起して日本を圧迫してくるに違いない。そして、東シナ海における中国海軍の活動がますますエスカレートし、日本の海の安全は日増しに脅かされていくのだ。
 今回の『非合法的』政治決定は、日本の中国への属国化に道を開いた売国行為以外の何ものでもない」
 これが、9月24日は「戦後最悪の『国家屈辱記念日』になるだろう」と石氏が言う理由である。

 石氏が述べるのは中国との関係のみだが、私は今回の事件の対応で、アメリカとの関係についても、改めて屈辱を感じている。
 日米首脳会談後、米国政府の発表文には、中国への言及がなかった。中国を想起させるのは、「両首脳は西太平洋の海洋問題について議論し、緊密に協議していくことで一致した」という抽象的な文言だけである。それは、菅首相が、中国への対応について、オバマ大統領にまともな話をできなかった結果だろう。
 そのうえ、米中首脳会談では、尖閣諸島は議題にならなかった。会談は2時間に及んだが、経済問題が中心だった。オバマ大統領が温首相に対し、事件の収拾を働きかけた様子はない。クリントン国務長官は日米外相会談で、尖閣諸島について「日米安保条約が適用される」と明言したが、これは外相レベルの話である。中国との首脳会談では、大統領は日本より中国への配慮を優先した。オバマ大統領は就任以来、日本より中国を重視している。今回も中国を刺激しないようにしたのだろう。
 アメリカが日本政府に対し、中国人船長の早期釈放を働きかけたという見方が、専門家から出ている。アメリカにすれば、尖閣は自国領ではなく、石油・天然ガスの掘削権も直接関係ない。日中の対立が大きくなり、日米安保によって中国相手に軍を出す事態になったら面倒だ。「早く片付けろ」と、日本政府に求めても不思議はない。
 菅首相は訪米前に「超法規的措置は取れないのか」と言い、実際に船長釈放に動いたのは、仙谷官房長官と前原外相だったとの報道がある。前原外相はクリントン国務長官に、事件について「まもなく解決しますから」と語ったと言う。わが国の政府中枢は、自国の領土と国益を守る覚悟がなく、事件に対処する方針もなく、アメリカの要望のままに法を曲げ、正義を捨てて、中国に譲歩した可能性がある。
 日本は戦後65年、アメリカに従属したまま、新たに中国に屈服し、二つの大国に従属する状態に陥りつつある。日本人の意思で、独立主権国家としてのありようを回復しない限り、この屈辱的な状態から脱することはできない。
 
 ところで、海上保安庁の巡視船に衝突した漁船は、「スパイ船」ではないかという疑いが上がっている。船は漁師の生活に欠かせない。大切な財産である。その船をぶつけてくるのは、尋常でない。「週刊文春」は、9月30日号で「日米の情報のプロたちは、トロール漁船の事件が、中国政府による『作戦』の可能性が高いと判断している」「もしそうであれば、トロール漁船を仕切っていたのは船長ではない。船員に偽装した中国情報機関員か政治士官が存在するはずだ」と書いている。
 アメリカのヘリテージ財団研究員 ディーン・チェン氏は、「われわれは、中国漁船が主権にかかわる活動に使われたとみている。この一件は、今回の衝突事件で、中国政府が漁船を仕立て故意に起こしたのではないか、という根本的な疑問を惹起する」と述べている。
 仮に漁船はスパイ船、船長は中国情報機関員または政治士官だったとすれば、衝突の目的は何か。意図的に事件を起こし、日本の出方を観る。あるいは事件をきっかけに外交攻勢をかけ、一定の成果を得る。漁船の行動が調査だったのか作戦だったのかは、現時点でわからないが、計画的かつ組織的な行動だったと考えられる。
 私は9月20日の日記「中国は尖閣占領を狙っている」に、「事件は表面的には中国漁船による衝突事故だが、単に民間人が起こした偶発的な事故と見るべきではない。背後に、尖閣諸島の占領を目論む中国共産党政府の計画があると推測されるからである」と書いた。また、来年6月に中国が尖閣諸島を占領する計画があるという情報を紹介した。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1586155465&owner_id=525191
 船長を釈放したことは、事件の決着ではない。むしろ、遥かに重大な事態の始まりである。日本人は尖閣沖衝突事件の屈辱をかみ締め、真剣に憲法・国防・外交について考え、日本を立て直さなければならない。日本人が日本人としての精神、日本精神を取り戻すこと。それによってのみ、日本の活路は開ける。

 以下は関連する報道のクリップ。

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●元木昌彦の深読み週刊誌

http://www.j-cast.com/tv/2010/09/24076617.html?p=2
体当たり中国船「スパイ船説」…日本の出方試す「仕掛け」の臭い
2010/9/24 16:10

(略)「週刊文春」は、日米の情報のプロたちが件の漁船は「スパイ船」ではないかと疑っているという。その理由は、漁船の大きさが、これまで出没していた漁船とはかなり違うからだ。「もしそうであれば、トロール漁船を仕切っていたのは船長ではない。船員に偽装した中国情報機関員か政治士官が存在するはずだ」(文春)
そして、その後の中国政府の抗議の姿勢に、その疑いを濃くしたという。なぜなら、丹羽大使を呼びつけた国務委員は「人民解放軍の諜報機関『参謀部2部』と一体化した『裏外交』の最高責任者」として認定されている人物なのだ。中国側の目的についてはこう書いている。
 「日米の情報のプロたちは、トロール漁船の事件が、中国政府による『作戦』の可能性が高いと判断している。つまり、ごく近い将来、尖閣諸島の実効支配の作戦を意志決定して、どこまでやれば日本はいかなる手段に訴えるか、その対抗措置を作成するために諜報機関が指揮した『仕掛け』ではなかったのか、そのため、突撃しても支障のない大型船を用意したのではないか」
 緊張状態を意図的に作り、さらなる強硬手段に中国は出てくると読む。(略)

※「週刊文春」9月30日号。記事の題名は「中国衝突漁船は『スパイ船』だった! 衝撃スクープ 日本巡視船に『仕組まれた突撃』。船員たちの『自供』は中国大使館員の面会で一変した」
※元木氏は「週刊現代」「Web現代」等の編集長を歴任したジャーナリスト

●産経新聞 平成22年9月26日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100926/plc1009260746005-n1.htm
【私はこうみる】尖閣敗北 “ダミー漁船”で衝突という疑念も
2010.9.26 07:45

米ヘリテージ財団研究員 ディーン・チェン氏

 中国漁船衝突事件は、中国海軍の艦船が今年4月に沖縄本島と宮古島の間を通過した活動を含め、昨年来の中国海軍の活発な動きとの関係でみる必要がある。(略)
 今回の事件が偶発的なものか、組織的なものかは分からない。
 中国が昨年3月、南シナ海で米調査船「インペッカブル」の活動を妨害したように、われわれは、中国漁船が主権にかかわる活動に使われたとみている。この一件は、今回の衝突事件で、中国政府が漁船を仕立て故意に起こしたのではないか、という根本的な疑問を惹起(じゃっき)する。
 中国は今年7月、軍事作戦を支援する際、民生物資の動員を可能とする「中国国防動員法」を施行した。こうした軍と民生部門のあいまいな状態はとても危険だ。何かあった場合、民間の漁民が危険にさらされる可能性がある。(略)

【プロフィル】ディーン・チェン
 1966年生まれ。86年、米プリンストン大卒、米マサチューセッツ工科大(MIT)院博士課程。米議会技術評価局で中国の軍需産業に関する調査員を経て、米海軍分析センター中国研究所研究員。専門は中国政治、軍事。44歳。

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トッドの移民論と日本22

2010-09-26 11:25:37 | 国際関係
●アメリカにおける「受け入れ社会の全能性の原則」

 トッドの基本用語の一つに、「受け入れ社会の全能性の原則」がある。移民を受け入れる社会には、その社会とは異なる家族型を持つ移民が流入する。しかし、受け入れ社会の人類学的システムは、移民の流入によっても変わらない。一方、移民の側は3~4世代のうちに受け入れ社会の家族型に変化する。この現象をいう。
 アメリカ合衆国はアングロ・サクソンの絶対核家族の社会である。親子間の関係は自由で、子供は早期に独立し、兄弟姉妹間の絆は弱い。これに対して、米国に流入する移民の大部分は直系家族か平等主義核家族である。直系家族はドイツ、スウェーデン、アイルランド、ユダヤ、日本、韓国からの移民である。平等主義核家族はイタリアからの移民である。こうした移民が多数流入しても、アメリカ社会のもともとの家族型は変化していない。逆に移民の方は、移住後一時的に固有の家族型の特徴を強めるが、やがて絶対核家族的な習俗に同化していっている。
 直系家族的集団は、伝統的な社会が近代化し、さらに脱工業化社会になっても、親子の結びつきが強く、家族が団結する。それが、子供の勉学には有利に働き、社会的職業的な上昇を促す。ユダヤ人や日本人が、アメリカ社会で、大学に多数進学しているのは、そのためである、とトッドは指摘する。わが国もそうだが直系家族的集団は、産む子供を少なくして、子供一人一人の教育に費用をかけ、教育を財産として子供に与える。そのため少子の傾向がある。一方、絶対核家族は、個人の自由と子供の自立を重んじるため、教育では成果が上がっていない。その代わり、相対的に子供の数は多いという傾向がある。

●トッドはアメリカ発の多文化主義を批判

 アメリカ社会は、建国以来、差異主義を根底に持つ社会である。そうしたアメリカで、1965年から1990年にいたる期間、多文化主義が勢力を伸張した。多文化主義とは、異なる文化を持つ集団が存在する社会において、それぞれの集団が「対等な立場」で扱われるべきだという思想である。アメリカにおいては、アングロ・サクソンの文化を相対化し、それ以外の移民の文化を対等に扱うべきという主張となる。これもまた差異主義の一種である。優勢な集団による支配的な差異主義ではなく、劣勢な集団による対抗的な差異主義といえよう。
 アメリカ合衆国では、多文化主義によって、各自が民族的出自にアイデンティティの根拠を置くことが推奨された。国民的なナショナル・アイデンティティよりも、民族的なエスニック・アイデンティティを重視する動きである。さらにアメリカでは、女性であること、同性愛者であること等に、より重要な価値を置く風潮も広がった。
 多文化主義は、アメリカから全世界に輸出された。ドイツ、フランス、日本にも「押しつけられた」という表現をトッドは使う。トッドは、多文化主義は、米国で白人の間では客観的な民族的差異が消失した同化の最終段階に出現したもので、もはやアメリカには「複数の白人文化は存在しない」と言う。そして、多文化主義を「差異を見つけ出さなければ気が済まない差異主義の現れ」と説明する。
 アメリカの黒人の間には、黒人の特殊性を主張する差異主義が現れた、とトッドは言う。その例として、戦闘的黒人運動を唱道したブラック・パンサーを挙げる。トッドによれば、この動きは、黒人の自己発見ではなく、「アメリカの支配的イデオロギーが生み出した差異主義の一つ」にすぎない。
 トッドによれば、「多数の民族が織り成す万華鏡」という多文化主義のイメージは、幻想にすぎない。現実のアメリカには、白人と黒人という二分法のみが存在する。それは17世紀イギリスから来た移民が信奉していた、選ばれた者と劫罰を受ける者という救霊予定説の二分法が存続していることを示している、とトッドは指摘する。根底には、宗教的な差異主義が持続しているというのである。
 なお、アメリカの多文化主義については、国際政治学者のサミュエル・ハンチントンも、別の立場から批判している。ハンチントンは、トッドとは違ってアメリカ人であり、かつ広義の白人、ユダヤ系である。『文明の衝突』で、米欧は西洋文明として連携を強めるべき、とハンチントンは説く。ハンチントンは、多文化主義者は「多くの文明からなる一つの国家をつくりたいと願っている。つまりどの文明にも属さず、文化的な核を持たない国にしようというのである」と批判する。そして「多文明的なアメリカはアメリカではなくなり、連合国家となるだろう」と警告している。トッドとハンチントンの比較については、私見を拙稿「家族・国家・人口と人類の将来~トッド」に書いている。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion09h.htm

 次回に続く。
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中国人船長の釈放は日本の敗北

2010-09-25 10:37:53 | 時事
 尖閣沖衝突事件における中国人船長の扱いは、那覇地検が処分保留のまま釈放と発表し、突然の決着となった。中国の圧力に挫けた屈辱的なわが国の敗北である。
 船長の釈放で、事件全体が決着したのではない。中国は、わが国が国内法に基づいて対処することを「違法であり無効」としてまったく認めていない。そのうえ、船長釈放後に、わが国に謝罪と賠償を求めてきた。これが傲慢・横暴の中国外交である。
 24日那覇地検の鈴木亨次席検事は、釈放の理由について「我が国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と述べた。地検が独断で釈放を決定したとは考えられない。検察上層部と協議しただろう。しかも、理由が政治的である。あたかも政府の代理人のように、「我が国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と述べている。外交問題まで含む高度な政治的判断を、検察がするのはおかしい。政府の指示があったと推察される。
 菅首相、前原外相は訪米中である。首相、外相は米国首脳と会談し、事件の対処について話し合った。日米の連携を確認し、外相は各国に日本の立場の理解を求めてもいる。ところが、首相、外相の不在の中で、船長は釈放された。これは、実質的に内閣を取り仕切っている仙谷官房長官の指示によるものではないかという見方が成り立つ。
 仙谷氏は地検の独自の判断だとし、その判断を「了としている」と述べた。柳田法相も「指揮権を行使した事実はない」と言明した。衝突事件直後、わが国は証拠となる漁船をすぐに中国に戻し、船員も返した。その際、仙谷長官は船長を含めた全員を中国に引渡し、両国が遺憾の意を表して丸く収めようと考えていたと伝えられる。中国に対し妥協的な仙谷氏が法相・検察トップを通じて地検に船長の釈放を指示する。首相・外相は不在ゆえ、最後は仙谷氏が責任を取る。政権は維持できる、というわけである。
 しかし、読売新聞はこういう見方を否定する。菅首相は訪米前に「超法規的措置は取れないのか」と言っていた。そして、実際に船長釈放に動いたのは、仙谷官房長官と前原外相だったと伝える。前原外相はクリントン国務長官に、事件について「まもなく解決しますから」と語ったと言う。とすれば、民主党政権の中枢は、日本国民には、尖閣諸島は日本の領土であり、国内法に基づいて厳正に対処するというポーズを取りながら、国民を欺き、裏では法を曲げ、正義を捨てて、中国に譲歩する対応を進めていたことになる。
 中国は、民主党政権の弱腰、外交能力の低さ、党内不一致、日米関係のきしみ等をよく分かっており、だからこそ、一気呵成の攻勢に出たに違いない。前原外相は、G8の主要各国代表等に、尖閣諸島に関する日本の立場を説明し、理解を求めていた。政府は、一方でそうしていながら、中国が強圧的な姿勢を強めると、あっさり屈する。弱腰外交というより、腰抜け外交である。これを見た世界の国々は、日本と日本人を軽蔑するだろう。とりわけ南シナ海で中国と緊張関係にあるASEAN諸国は、日本には期待できないと失望するだろう。

 今回の政府の対応がもたらす外交での損失は大きい。領土・領海に係る国益の損失は、さらに大きく、計り知れないものがある。
 櫻井よしこ氏が、「週刊新潮」連載の「日本ルネッサンス」第429回「東シナ海で決まる民主党外交の浮沈」(9月30日号)に次のように書いている。
 「中国は1992年に南シナ海の西沙、南沙、東沙、中沙諸島の全てを自国領だと宣言した。事実とかけ離れた中国領有権の主張は、同年に米国がフィリピンに保有していた大規模な海軍、空軍の両基地を閉鎖し、撤退したその軍事的空白の中で展開された。ASEAN諸国は怒ったが、中国は力を誇示して、或いは実際に軍事力を行使して、有無を言わさない。
 中国外交のこの手法は現在も変わらない。基本的型として、彼らは史実も現実も無視し、中華帝国的版図を宣言する。漁民或いは漁民を装った軍人を、中国だ領だと主張する島々や海に進出させる。元々の領有権を保有する国々が船を拿捕したり漁民を捕らえると、それを口実に軍事力を背景にして相手を屈服させるのだ。
 こうして中国は95年初頭までに南沙諸島の実効支配に取り掛かった。現在、南シナ海、特に西沙諸島周辺海域には中国海軍の軍艦が常駐し、『銃撃』も辞さない構えを取り続けている。南シナ海の現実から東シナ海の近未来図を読み取ることができる」
 尖閣沖衝突事件におけるわが国の敗北は、このままでは歴史的な敗北となる。
 昨日の日記に私は書いた。「尖閣問題を機に、日本を立て直そう」と。日本人が日本人としての精神、日本精神を取り戻さなければ、日本は衰滅する。尖閣問題を機に、真の日本精神を学び、日本の元気を奮い起こそう。

 以下は報道のクリップ。

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●毎日新聞 平成22年9月24日

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100924k0000e040069000c.html
<漁船衝突>中国人船長を釈放へ 「日中関係を考慮」
(毎日新聞 - 09月24日 15:03)

 沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海内で中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突した事件で、那覇地検は24日、公務執行妨害容疑で逮捕・送検し、拘置していた中国人船長、※其雄容疑者(41)を、処分保留のまま釈放すると発表した。
 ※船長は、今月8日未明、中国籍の大型トロール漁船(166トン)を日本領海内の尖閣諸島で操業。久場島北西約15キロで立ち入り検査のため停船命令を出して追跡中だった石垣海上保安部の巡視船「みずき」(197トン)の右舷中央部に漁船を衝突させ、海上保安官の職務を妨害したとして公務執行妨害容疑で逮捕された。
 領海問題を巡り、停船命令に従わなかった中国船籍の漁船が巡視船に衝突させる行為を公務執行妨害ととらえて逮捕する異例の展開となった。石垣簡裁は19日、29日までの拘置延長を認めていた。
 那覇地検の鈴木亨次席検事は釈放の理由について「我が国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と述べる一方、船長の行為を「追跡を免れるためにとっさに取った行動で、計画性は認められない」などと述べた。今後釈放手続きに入るが、釈放の日時は未定という。※は「簷」の竹カンムリを取る

●産経新聞 平成22年9月25日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/100925/chn1009250815001-n1.htm
【中国人船長釈放】日本に謝罪と賠償要求 再び「強烈な抗議」
2010.9.25 08:13

 中国外務省は25日未明、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で起きた中国漁船衝突事件で、日本が公務執行妨害容疑で●其雄船長(41)を逮捕、拘置したことなどにあらためて「強烈な抗議」を表明、謝罪と賠償を要求する声明を発表した。那覇地検が処分保留で釈放した船長は同日未明、中国政府のチャーター機で福建省福州市の空港に到着した。
 日本側は船長の釈放、帰国を受け、中国による閣僚級以上の対日交流停止やレアアース(希土類)輸出制限の解除、河北省石家荘市で拘束された日本人4人の釈放などを早期に実施するよう働き掛けていく方針。しかし、中国が謝罪と賠償を要求したことで、対抗措置の解除は遅れ、日中間の対立が長期化する可能性も出てきた。(共同) ●=擔のつくり

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100925/plc1009250301005-n1.htm
【主張】中国人船長釈放 どこまで国を貶(おとし)めるのか
2010.9.25 03:00

■主権放棄した政権の責任問う
 日本が中国の圧力に屈した。千載に禍根を残す致命的な誤りを犯したと言わざるを得ない。
 沖縄・尖閣諸島(石垣市)沖の日本領海を侵犯した中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、公務執行妨害の疑いで逮捕、送検されていた中国人船長を那覇地検が処分保留のまま釈放することを決めた。勾留(こうりゅう)期限まで5日残しており、法の手続きを無視した事実上の超法規的措置といえる。
 釈放にあたり、那覇地検次席検事は記者会見で「わが国国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と説明した。法に基づき事件を厳正に処理すべき検察当局が「外交上の配慮」を述べるとはどういうことか。
 菅直人首相、前原誠司外相の外交トップが外遊で不在の中、仙谷由人官房長官は地検独自の判断との立場を強調した。しかし、日本の国益と領土・主権の保全、対中外交のあり方や国民感情などを考慮しても到底納得できない。釈放により、今後日本が尖閣周辺で領海侵犯や違法操業を摘発するのは極めて困難となる。主権放棄に等しい責任について首相や官房長官は国民にどう説明するのか。
 船長は容疑を否認しているが、海保側は漁船が衝突してきた状況を撮影、故意であるのは立証できるとしている。それならばなおさら起訴し、公判でビデオを公開して罪状を明らかにすべきだった。検察当局が船長に「計画性はなかった」と判断し、処分保留とはいえ釈放したことは事実上、刑事訴追の断念を意味する。国際社会も日本が中国の圧力に屈したと判断する。これほどのあしき前例はなく、その影響は計り知れない。

◆むなしい日米首脳会談
 那覇地検の決定は、ニューヨークで行われた日米首脳会談、日米外相会談の内容ともそぐわず、いかにも唐突で無原則な印象を国際社会に与えよう。
 菅首相とオバマ米大統領の首脳会談では、衝突事件を念頭に日米の連携と同盟の強化で一致した。米政府は「西太平洋の海洋問題で緊密に協議していくことで合意した」と発表、中国の海軍力増強と海洋進出に日米で共同対処する姿勢を明示したばかりだ。
 これに先立つ外相会談でも、前原外相にクリントン国務長官は尖閣諸島には「日米安保条約が適用される」と言明したという。前原氏は主要国(G8)外相会合でも「日本は冷静に対処している」と船長逮捕の正当性を強調して各国に理解を求めており、今回の決定はこの点でもちぐはぐといわざるを得ない。
 尖閣諸島は日本が明治時代に他国が領有権を主張していないことを確認した上で領土に編入した。中国が領有権を主張し始めたのは東シナ海の石油・天然ガス資源が明らかになった1970年代にすぎない。1953年の人民日報には、「尖閣諸島は沖縄の一部」との記述もあるほどだ。

◆尖閣領有の意思明示を
 にもかかわらず、中国政府は事件発生以来、船長逮捕を不当として即時無条件釈放を要求し続け、閣僚級の交流停止、東シナ海のガス田共同開発条約交渉中止などの対抗措置を次々と打ち出した。ハイテク製品の生産に欠かせないレアアース(希土類)の日本向け輸出を事実上禁止した。
 さらに、中国当局は旧日本軍の遺棄化学兵器処理事業に関連して中国河北省の現場で事前録画を行っていた日本の建設会社関係者4人を「許可なく軍事管理区域に入った」との理由で拘束、取り調べていることも判明した。異様な対日圧力である。
 事件を「国内法にのっとって厳正に対処する」(菅首相)としてきたのが結局腰砕けに終わったことで、中国側は「中国外交の勝利」と宣伝し、日本への対抗措置を徐々に解除する可能性があるが、日本の主権と国益が大きく貶(おとし)められ、取り返しがつかない。
 海上保安庁などによれば、尖閣諸島海域には1日平均270隻もの中国漁船が現れ、その4分の1以上が日本領海内で違法操業中だという。処分保留によって中国側は一層強い姿勢に転じ、漁船に加えて、「安全操業」の名目で武装した漁業監視船も同行させる恫喝(どうかつ)的操業が一般化しよう。
 そうした事態を阻止するには、尖閣諸島の領有の意思を明確な態度で示す必要がある。ヘリポート建設なども含め、自衛隊部隊配備も念頭に検討を急ぐべきだ。

●読売新聞 平成22年9月25日

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100925-OYT1T00154.htm?from=top
いらだつ首相「超法規的措置は取れないのか」

 「『超法規的措置』は、取れないのか」
 22日の訪米を控えた菅首相は、周囲にいらだちをぶつけた。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、中国の対抗措置の報告が次々に上がってきていた。
 首相は「民主党には(中国で副首相級の)戴秉国(たいへいこく)(国務委員)と話せるやつもいない。だからこういうことになるんだ」とこぼした、と関係者は語る。
 首相とその周辺が中国人船長の扱いをめぐる「落としどころ」を本気で探り始めたのは、船長の拘置期限が延長された19日以降のことだ。この日を境に中国政府は、日本人4人を拘束し、レアアース(希土類)の対日輸出禁止の動きに出るなど、本格的な「報復カード」を相次いで切った。
 実際に「船長釈放」に動いたのは、仙谷官房長官と前原外相だったとされる。
 23日朝、ニューヨーク。日中関係の行方を懸念するクリントン米国務長官と向かい合った前原外相は、こう自信ありげに伝えた。
 「まもなく解決しますから」
 那覇地検が船長を釈放すると発表したのは、その半日余り後の日本時間24日午後2時半だった。東京・霞が関の海上保安庁に、寝耳に水の一報が入ったのは、そのわずか10分ほど前。
 「戦争になるよりはいい。このまま行けば、駐日大使の引き揚げ、国交断絶もありえた」――。首相に近い政府筋は24日夜、船長釈放に政治判断が動いたことを、周囲に苦しげに認めた。
 「那覇地検の判断なので、それを了としたい」
 仙谷官房長官は24日夕の記者会見で、ひたすら「地検の判断」を繰り返し、政治の介入を否定した。
 柳田法相もこの後すぐ、法務省で記者団を前に「法相として検察庁法14条に基づく指揮権を行使した事実はない」とのコメントを読み上げた。質問は一切受けつけなかった。
 だが、こうした弁明は、世間には通用したとはとても言えない。首相官邸には直後から「弱腰だ」といった抗議電話が殺到。官邸職員は対応に追われた。
 民主党代表選での再選、内閣改造・党役員人事を経て、ようやく本格的な政権運営に着手したばかりの菅首相。「中国に譲歩した」と見られて再び世論の支持を失う失態は、できれば避けたかった。
 首相がそれでも「政治決断」を選択したのは、中国の反発の強さが当初の予想を超えていたためだ。
 19日の拘置延長決定後、中国は、20日に日本人4人を拘束、21日にはレアアース(希土類)の対日禁輸に踏み切るなど、たたみかけるように「対抗措置」を取った。日本側はこれらを公表しなかった。だが、ニューヨークにいた温家宝首相は21日夜(日本時間22日朝)、在米中国人約400人が出席する会合で、船長釈放を要求する異例の動きに出た。これが、官邸内に広がりつつあった「このままではまずい」という思いを、政府の共通認識にまで押し上げるきっかけとなった。
 「あそこまで強硬にやるとは……。海上保安庁の船長逮捕の方針にゴーサインを出した時、甘く見ていたかもしれない」。政府関係者は、そもそも「初動」に判断ミスがあった、と苦々しげに振り返る。
 菅政権の政治判断の背景には、郵便不正事件をめぐって大阪地検特捜部の主任検事が最高検に証拠隠滅容疑で21日に逮捕されたことで検察の威信が低下し、「今なら検察も言うことをきくだろう」との思惑が働いていたとの見方がある。
 実際、船長以外の船員と船を中国に帰すにあたっては、「外務省が検察にかなり強く働きかけていた」と証言する日中関係筋もいる。
 検察幹部も「外務省から、起訴した場合の日中関係への影響などについて意見を求めた」と話し、双方で早い段階からやりとりをしていたことがわかる。その際、起訴に向けた表立った異論はそうなかったとみられる。政府内に「迷い」が生じたのは、やはり19日に船長の拘置延長が決まった後だったようだ。
 船長釈放は、結果として日米首脳会談直後というタイミングになった。このため、「米国からこれ以上の日中関係悪化について、いいかげんにしろ、と圧力がかかったのでは」との指摘すら出ている。
 政府・民主党内でも、官邸の判断に対する評価は分かれる。「中国ではスパイ容疑は最悪、死刑が適用される。4人の人命がかかっていた」との危機感から理解を示す声がある一方、「レアアース問題は、世界貿易機関(WTO)に提訴すれば中国は負ける。ごり押しすれば勝てる、と中国にまた思わせただけだ」といった批判も多い。
 「菅も仙谷も、外交なんて全くの門外漢だ。恫喝(どうかつ)され、慌てふためいて釈放しただけ。中国は、日本は脅せば譲る、とまた自信を持って無理難題を言う。他のアジアの国々もがっかりする」。党幹部はうめいた。(2010年9月25日03時16分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100924-OYT1T01214.htm
中国人船長釈放 関係修復を優先した政治決着(9月25日付・読売社説)

 尖閣諸島沖での衝突事件で逮捕されていた中国人船長が、処分保留のまま、釈放されることが決まった。
 船長を取り調べていた那覇地検は「国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と説明した。中国・河北省で「軍事目標」をビデオ撮影したとして日本人4人が拘束されたばかりである。「国民への影響」とは、拘束が長引く可能性があることへの懸念をさすものだろう。地検は、船長の行為に計画性が認められず、けが人が出るなどの被害がなかったことも、釈放の理由に挙げた。だが、これでは、悪質性が高いとして船長を逮捕・拘置してきたこととの整合性がとれない。
 仙谷官房長官は、地検独自の判断であることを強調しているものの、菅首相はじめ政府・民主党首脳らの政治判断による決着であることは間違いあるまい。背景には早期解決を求める米政府の意向もあったとされる。「国内法に基づいて処理する」と繰り返してきた日本政府として筋を通せなかった印象はぬぐえない。国民の多くも同様の思いを抱いているのではないか。政府は国民の納得が得られるよう、十分説明を尽くす必要がある。尖閣諸島は言うまでもなく、日本固有の領土である。政府はこの立場を、繰り返し内外に示していかなければならない。
 今回の決着が、今後にもたらす影響も無視できない。尖閣諸島沖の日本領海内で違法操業する中国漁船への海上保安庁の“にらみ”が利かなくなる可能性がある。海保の体制強化はもちろん、海上自衛隊との連携も強めることが求められる。
 中国が今回、ハイブリッド車の部品などの製造に欠かせないレアアース(希土類)の輸出禁止措置をとったことは、中国が貿易相手として予測不能なリスクを抱える国であることを再認識させた。今後、中国に大きく依存する物資については、中国以外からも調達できるよう対策を講じておくことが肝要だ。
 中国の高圧的な姿勢の裏には、国内の対日強硬派への配慮もあろうが、青年交流や条約交渉の中止など矢継ぎ早の対抗措置は、明らかに行き過ぎている。日本は、単なる「友好」という言葉に踊らされることなく、「戦略的互恵」の立場で、冷静かつ現実的に国益を追求する対中外交を展開していかねばならない。(2010年9月25日01時24分 読売新聞)
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関連掲示
・「真の日本精神」については、下記をご参照下さい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/keynote.htm
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尖閣問題を機に、日本を立て直そう

2010-09-24 09:53:17 | 時事
 菅首相とともに、前原外相が国連総会出席のために訪米している。前原氏はクリントン国務長官と会談し、長官から尖閣は日米安保の適用範囲という米政府の立場を改めて明言させた。前原外相はEUの外相から尖閣問題について聞かれ、日本の立場を説明し、理解を求めた。外相としてはなすべきことをしている。しかし、これでは足りない。中国は尖閣沖事件について、外相より格上の国務委員が発言しており、さらに温首相が見解を述べている。これに対し、わが国の菅首相は、最高指導者として、領土と国益を守る意思を表明していない。オバマ大統領との首脳会談で、この問題について話し合われたか詳細は不明だが、菅首相自ら断固とした姿勢を示さなくてはならない。
 今朝の産経新聞の一面トップ記事は、中国がレアアース(希土類)の対日禁輸を開始したらしいことを伝えている。レアアースは製造業に不可欠な資源であり、わが国は中国からの輸入にほぼ全面的に頼っている。これを止められることは、わが国の産業界に大きな打撃である。中国政府がいう対抗措置の一環である。産業界に圧力をかけて、国内の団結を妨げ、日本政府に譲歩・屈服をさせる手だろう。
 漁船の船長一人のために、何でここまでと、今頃驚いている人が多いのではないか。中国は、一国民の人権のためにやっているのではない。尖閣諸島周辺の石油・天然ガスの略取、アジア太平洋地域での覇権の確立、国内の治安維持、共産党政権の維持等のため、外交攻勢を行っているのだ。
 本日の産経の「正論」に拓殖大学大学院教授・森本敏氏が「尖閣と普天間はリンクしている」という寄稿を書いている。安全保障の専門家として、問題を大きくとらえ、ポイントを整理して示している。その記事の最後に、「日本の姿勢としては、法と正義に基づき正々堂々と振る舞うこと、それ以外にない」とあった。確かにそうだが、法と正義は、ただ力に裏付けられた時のみ、維持・実現される。法と正義だけで、領土や主権が守れるのであれば、北方領土も竹島も外国に不法占拠されることはない。
 やはり今朝の産経の記事だが、アメリカの安全保障問題の専門家ジェームス・アワー氏は、「尖閣諸島の保有に関しては日本自身が覚悟をせねばならないだろう。尖閣の主権をあくまで主張するならば、それを守る決意があることを示さなければならない。そのために戦う覚悟を示してこそ、初めてその領土への主権に正当性が得られるとさえいえるだろう」と述べている。
 まったくその通りである。また同盟国であっても、自ら自国の領土と国益を守ろうとしない他国民のために、あえて危険を犯す国はない。
 日本人は尖閣問題をきっかけに、真剣に憲法・国防・外交について考え、日本の立て直しをしなければならない。安全を他者に依存していれば、自由と繁栄が保たれるという錯覚の時代は、終わったのだ。日本人自ら国を守ろうとしなければ、他国の圧力に屈し、富を奪われる。国民所得は半減し、自由を制限され、伝統と文化も破壊されることになる。
 早急に取り掛からねばならない。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年9月24日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100923/plc1009232313021-n1.htm
「尖閣は日米安保適用対象」クリントン長官、明言 日米外相会談で
2010.9.24 01:13

 【ニューヨーク=酒井充】前原誠司外相は23日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークでクリントン米国務長官と外相就任後初めて会談した。クリントン氏は沖縄・尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突した事件に関連して、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であるとの見解を強調した。今月7日の事件発生以来、米側がこうした見解を直接、日本側に明言したのは初めて。海洋権益を拡大する中国に対し、日米両国が足並みをそろえて牽(けん)制(せい)した格好だ。
 前原氏は約50分間に及んだ会談で、衝突事件について「東シナ海に領土問題はない。日本の国内法にのっとって粛々と対応する」と述べ、日本政府の対応を説明した。その上で、尖閣諸島を日米安保条約の適用対象としている米側の従来の立場に謝意を示し、日中間で問題解決に取り組む決意を示した。
 これに対し、クリントン氏は尖閣諸島について「明らかに日米安保条約が適用される」と語った。日米安保条約第5条は「日本国の施政の下にある領域」で「いずれか一方に対する武力攻撃」があった場合に、「共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。
 ただ、クローリー米国務次官補(広報担当)は、尖閣諸島の領有権が日中両国のどちらにあるかについて、米国は立場を明確にしないとした上で、外相会談でクリントン長官が、日中両国の対話強化による衝突事件の早期解決を求めたことを明らかにした。
このほか、会談では日米同盟がアジア太平洋地域の平和と安定に欠かせないとの認識のもと、同盟深化を図ることで一致。米軍普天間飛行場(沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)移設問題では、前原氏が同県名護市辺野古を移設先とする5月の日米共同声明の実現に向けて「しっかり対応していく」と述べ、米側の理解を求めた。
 これに対し、会談に同席したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は「移設問題も重要だが、もっとグローバルなテーマも日米の戦略対話でしっかりやっていこう」と語った。北朝鮮の核開発問題に対し日米が連携して解決に努力することや核開発を続けるイランへの制裁で協調することでも一致した。日本側が削減を求め、米側が難色を示す在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の問題は話題に上らなかった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100924/plc1009240057001-n1.htm
“報復”産業界に脅威 日本向けレアアース輸出差し止め
2010.9.24 00:55
 「採掘に環境汚染を伴う」などとして、レアアースの輸出枠を削減してきた中国だけに、漁船衝突事件以降、産業界は中国の出方に警戒を強めてきた。全面的な対日禁輸の場合、ほぼ全量を輸入に頼り、世界の消費量の約4分の1を占める日本の産業界に影響が及ぶことは避けられそうにない。一般的なHV1台あたり30キログラムが使われるなど、充電池やモーター用磁石に使われるレアアースは、日本企業が得意とする省エネ・環境技術に不可欠だからだ。
 中国が輸出禁止を正式に表明しない背景には、世界貿易機関(WTO)のルールへの抵触を懸念する向きがあるとみられる。正当な理由を欠く禁輸は批判を招くためだ。中国のレアアース関連企業には国有企業が多いとされ、「コントロールしやすい」(大手商社)という。
 今のところ産業界に目立った影響は出ていないものの、原材料の入荷が不安定になれば、生産や出荷といった事業計画の見直しにも波及しかねない。大手自動車メーカー幹部は「次世代車の生産への影響が懸念される」と話す一方、大手電機メーカーも「影響は大きい」とみる。
 今年7月、中国は下半期向けのレアアースの輸出枠を約8千トンとし、年初からの合計が約3万トンと昨年の約5万トンから大幅に減らす方針を示すなど「戦略的に利用する姿勢」(関係筋)を鮮明にしている。
 レアアースの安定供給確保策として日本政府はアフリカ大陸などでの資源開発援助の拡大や代替材料やリサイクル技術の開発に取り組んでいるが、いずれもまだ緒に就いたばかりだ。
 経済外交の有力な武器ともいえるレアアースは、日本経済を支える製造業を脅かしかねない存在となった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100924/plc1009240235003-n1.htm
【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏 尖閣と普天間はリンクしている
2010.9.24 02:34

 中国漁船が9月7日に、尖閣諸島南端の久場島北西の領海内で巡視船に衝突した事件で、日本当局が船長を公務執行妨害の疑いで逮捕したことに対して、中国側が取ってきた強硬姿勢は、温家宝首相が即時、無条件釈放を求め、さもなければ、さらなる対抗措置を取ると警告する事態にエスカレートした。
 中国側の対応はこれまで、すでに、駐中国日本大使への抗議、日本大使館へのデモやいやがらせ、閣僚級交流やスポーツ・旅行・文化行事の停止、東シナ海ガス田開発交渉中断、全人代副委員長の訪日延期など急速に激しさを増し、全く冷静さを欠いている。

◆船長裁判阻止へ圧力かける
 中国側は、日本の司法当局が船長を日本の国内法で起訴して判決を下すと、尖閣諸島は法的に日本領土であるという既成事実ができてしまうので、それを阻止すべく、あらゆるルートから船長釈放を求める圧力をかけつつ日本側の対応を見極めようとしている。習近平国家副主席の陛下表敬の時のように、日本は圧力をかければ最後は何とかなる社会だと考えているのであろう。日本の司法当局には政治圧力が効かないことを理解していないのかもしれない。
 中国の究極の狙いは、周辺海域での海洋主権の拡大に向けて既成事実作りをし、領有権を唱え続けて日本との交渉に持ち込むことにある。だから、今後も尖閣諸島に漁船を近寄らせ、大型漁業監視船(海軍艦艇の改造船)で威圧して恒常的な活動実績を積み上げてゆき、いずれ実効支配という非常手段に出る可能性もある。
 中国は国内の反日デモが拡大しないよう統制する一方、反日感情を利用して日本側に圧力をかけてもいる。
 日米同盟が健全状態になく、日本の内政も安定していないのを見越し、日本が7月の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)で南シナ海問題に関し中国批判をしたことに報復するという要素もあろう。
 日本としては、日中間に領土問題はないとの原則に立ち、国内法に照らして厳正に対応していくほかない。司法当局は勾留(こうりゅう)期間を延長して起訴する方向で、公判請求はあり得る。政府は中国に冷静な対応を要請し続けており、これまでの対応は妥当なものだ。

◆沖縄が対立の最前線に
 日本が今後取るべき対応は、第一に、普天間飛行場問題を速やかに解決し、日米同盟を再強化することだ。在日米軍は対中抑止力の役割をますます色濃く帯びるようになっており、対中戦略のうち喫緊の課題が尖閣諸島問題である。尖閣問題と普天間問題は密接にリンクしているのである。
 仮に、尖閣諸島が中国の領土になれば、沖縄の各基地を含む在日米軍基地は、米中対立の最前線になる。そんな状況を未然に防ぐためには、日米同盟に基づく抑止機能を再活性化するしかない。できれば、早急に沖縄周辺海域で日米海上合同演習を頻繁に行うといった着意が必要である。
 第二は、中国が対日抗議を激化させていることに対しては、あくまで法と正義にのっとって冷静に対応することだ。前述した通り、中国が日本社会には圧力をかければ、自らの意図を実現できると甘く見ているとすれば、なおのこと国内法を厳正に適用する姿勢を明確にする必要がある。
 その一方で、中国が、今回のような海洋行動を一段と日常化させてきて、そのうち、中国海軍艦艇が中国漁船を守りつつ、日本の領海に接近してきた場合、いかなる手段を取るべきかも検討しておかなければならないだろう。

◆施設建設と日米合同演習を
 備えのひとつとして、日本としては、現在私有地である尖閣諸島を国有地にする手続きを踏み、船舶の停泊施設や警戒監視施設、対艦ミサイル基地を建設するなど対応に万全を期しておくべきだ。
 また、南西方面戦略を進めて、鹿児島南端から与那国島に至る百九十余の離島を防衛する措置を取ることも急がれる課題だ。
 第三には、尖閣の問題を日中間の問題に狭めることなく、アジア・太平洋の多国間の問題に広げる努力を行うことである。
 10月にはハノイで東アジアサミットが、11月には横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がそれぞれ開催される。これらの会合を通じて、アジア・太平洋における航行の自由や領有権問題について、各国の懸念を背にしたような外交的な働きかけを行う必要がある。中国は日本への対抗措置を、南シナ海問題を抱えるASEAN諸国に見せつけている。そして、ASEAN側は日本の対応を注視しているのだ。
 要するに、今回の問題ではっきりしてきたのは、中国の一方的にして強圧的かつ露骨な海洋主権拡大の意図であり、中国が今回のような海洋行動を常態化させることにより、目的を達成しようとする長いプロセスが始まったということである。日本の姿勢としては、法と正義に基づき正々堂々と振る舞うこと、それ以外にない。(もりもと さとし)

http://sankei.jp.msn.com/world/america/100923/amr1009232106014-n1.htm
【尖閣衝突事件 私はこう見る】「日本は保有の覚悟示せ」 ジェームス・アワー・ヴァンダービルト大学日米研究協力センター所長 2010.9.23 21:04

 今回の事件はまず東アジアの戦略的な構図から考える必要がある。東アジアでは中国、日本、ロシア、米国という主要諸国の力が安定しないまま、中国が覇権的なパワーを強め、優越な立場にあるような言動をとり始めた。この動きは日本にとって脅威である。そもそも地政学的には、一定地域で一方のパワーがすでに優位にあった側に追いつき、追い越そうとする際に不均衡が高まり、危険が大きくなる。だからこそ米軍がなお日本と韓国に駐留しているのだといえよう。
 中国が尖閣諸島の領有権を石油資源の可能性が浮かんできた1970年代まで主張しなかったことは周知の事実であり、当時、中国側には尖閣諸島をはっきりと日本領として描いた地図も存在したと聞いている。しかし米国政府は伝統的に他の諸国の領土紛争には中立を保つ。だから尖閣の主権がどの国にあると公式に断定することはできない。
 尖閣諸島の保有に関しては日本自身が覚悟をせねばならないだろう。尖閣の主権をあくまで主張するならば、それを守る決意があることを示さなければならない。そのために戦う覚悟を示してこそ、初めてその領土への主権に正当性が得られるとさえいえるだろう。その点で日本政府が竹島に対してとっている態度は悪い見本となる。
 今回の中国漁船の行動は「無謀運転」といえるだろう。ただしそれが故意の無謀運転か、過失の無謀運転か、まだわからない。
 尖閣諸島は明らかに日本の統治下にあり、日本の施政の下にある領域は日米安全保障条約での日米共同防衛の対象となる。米国は戦後、尖閣諸島の施政権を保有し、沖縄返還の際にいっしょにその施政権を日本側に返した経緯があるから、なおさら強く意識している。
 ただし米国政府も、クリントン政権時代にモンデール駐日米大使が「尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」という趣旨の発言をして、波紋を広げた。これは発言者が実態をよく知らなかったための失言だった。その後、私も含めて多数の識者たちが米国政府のミスを指摘し、クリントン政権の国防総省高官のカート・キャンベル氏らが後に「尖閣には日米安保条約が適用される」と明言するようになった。
 だから現在も、もし尖閣諸島が中国などの軍事攻撃を受ければ日米安保条約の発動となり、米国は同盟国の日本を守る軍事行動をとるだろう。安保条約上の責務なわけだ。日米両国は東アジアの安定を保つためにも、尖閣諸島をめぐる軍事衝突を起こさないためにも、同盟を堅固に維持していくべきだろう。(談)
     ◇
■ジェームス・アワー 1941年、米ミネソタ州生まれ。米海軍将校として駆逐艦などを指揮。海上自衛隊幹部学校への留学経験もある。国防総省日本部長などを歴任し日米同盟関係の維持、強化に貢献した。89年から米テネシー州のヴァンダービルト大教授。
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コメント

温首相の理不尽な要求に屈するな

2010-09-23 10:06:47 | 時事
 中国の温家宝首相は21日、在米中国人や華僑代表と会見した際、尖閣諸島付近で起きた漁船衝突事件に言及し、「不法拘束中の中国人船長を即時・無条件で釈放することを日本側に求める」「釈放しなければ、中国はさらなる対抗措置を取る用意がある。その結果についてすべての責任は日本側が負わなければならない」と述べたという。理不尽な要求である。これに屈してはならない。
 中国政府が外交の場面で言うことには、実は国内向け、中国人向けという場合がある。今回の発言も、在米中国人や華僑代表と会見した場での発言である。しかし、発言は中国にとっての領土問題に係るものであるから、単なる国内向け、中国人向けのパフォーマンスと取ると誤ると思う。
 中国政府は、以前から尖閣諸島は「中国の不可分の領土である台湾省の一部」であると主張してきた。今度は首相が国連総会に参加するためアメリカを訪問した際に、「中国の神聖な領土だ」と公言した。発言は新華社を通じて世界に流れた。中国は本気である。
 中国は首相が政府の見解を公言した。わが国は、菅首相がすみやかに見解を明らかにしなければならない。中国に対してとともに国際社会に向けて、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、中国船衝突事件は日本の国内法に則って厳正に対処する」と、首相の立場で明言すべきである。
 温首相の発言は、尖閣は日米安保の対象とするアメリカに対抗する意思表示でもある。極度に強気に出て、相手の譲歩を引き出す術策である。この度の訪米で菅首相はオバマ大統領と会談する。菅首相は、尖閣諸島の問題について、オバマ大統領と話し合い、日米が連携してこの問題に当たることを協議し、アメリカ側からもその意思を発表してもらうように外交を展開する必要がある。
 中国の脅威は、ASEAN諸国も共有している。日本政府代表は、国連総会に集うASEAN首脳とも意見交換し、アジア太平洋地域の国々が共同で中国の理不尽に対応していくための連携を築いていくべきである。
 全国紙のうち温首相の発言について、社説に書いたのは産経のみ。対中国の問題になると、マスメディアの多くは迎合的か融和的になる。
 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年9月23日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/100922/chn1009221036002-n1.htm
温首相が船長の即時釈放を要求 新華社報道
2010.9.22 11:19

 【北京=矢板明夫】中国国営新華社通信が22日伝えたところによると、国連総会に出席するため米ニューヨークを訪れている中国の温家宝首相は21日、在米中国人や華僑代表と会見した際、尖閣諸島付近で起きた漁船衝突事件に言及し「不法拘束中の中国人船長を即時・無条件で釈放することを日本側に求める」と発言した。
 同通信によると、温首相は「釈放しなければ、中国はさらなる対抗措置を取る用意がある。その結果についてすべての責任は日本側が負わなければならない」と述べたうえで、「近年の中日関係の発展は、双方の長年の努力によるものである。日本側が早急に過ちを正し、中日関係を正しい道筋に戻すことは、両国人民の根本利益に合致するだけでなく、平和、協力という世界の潮流とも一致する」と指摘した。
 中国漁船衝突事件以後、中国の外務次官、外相、外交担当の国務委員(閣僚級)が相次いで発言し、日本を非難したが、国家首脳がこの問題に触れたのは初めて。温首相は21日から3日間の日程でニューヨークを訪問しているが、菅直人首相との会談は予定されていない。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100923/plc1009230238003-n1.htm
【主張】尖閣漁船事件 危険はらむ中国首相発言
2010.9.23 02:37

 尖閣諸島付近での中国漁船と日本巡視船の衝突事件に関し、中国の温家宝首相が21日、ニューヨークで、日本に勾留(こうりゅう)されている漁船船長の即時無条件釈放を要求、応じなければさらなる対抗措置を取ると警告した。日本の法制度を無視した露骨な脅しで、きわめて遺憾というほかない。
 温首相の発言は、これまで戴秉国国務委員はじめ中国側が外交ルートで行ってきた要求と基本的に同じだ。だが温氏は共産党最高指導部の一員であって、中国の党、政府が一切譲歩しない方針を固めている表れといえる。
 中国側はすでに、閣僚級交流や東シナ海の天然ガス共同開発条約交渉の中止などに加え、日本ツアーの中止など民間交流にも影響が拡大しつつある。追加措置の検討にも入っており、そこには経済交流の制限や、尖閣諸島海域への艦艇派遣といった強硬手段も含まれていると伝えられる。
 日中関係は小泉純一郎政権の時代も、靖国神社参拝問題などで冷え込んだ。中国で大規模な反日デモが発生したが、実務関係や経済交流への影響はほとんどなく、日中貿易は拡大し「政冷経熱」といわれた。双方が、政治的対立が実務関係に及ばないよう、冷静に対処した結果だった。
 中国側が強硬姿勢を続ける理由の一つは、尖閣諸島の領有権の主張を含め、東シナ海での海洋権益確保である。日本固有の領土である尖閣諸島の日本の領有権を認めず、中国漁船の拿捕(だほ)、船長の勾留を非難する背景だ。
 しかし事件は、日本の領海内で中国漁船が不法操業し、巡視船に体当たりして逃亡を企てたという単純なものだ。日本当局は、公務執行妨害容疑で船長を取り調べる司法手続き中であり、それに中国が圧力を加えるのは内政干渉以外の何物でもない。
 中国の強い圧力に対し、日本政府が中国側に自制を求め、「粛々と法手続きを進める」のは当然である。しかし中国側の対抗措置に、手をこまねいているだけでよいのか。在外公館を通じて、各国に尖閣問題についての日本の立場を説明するなど積極的に発信して対抗する必要がある。
 日中が敵対関係に陥りかねない事態は双方にとって不幸である。司法の結論を待ち、政府は中国側との対話を模索し、事態の拡大を防ぐ努力をすべきだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100923/plc1009230238002-n1.htm
【主張】菅・オバマ会談 日米で尖閣防衛確認せよ
2010.9.23 02:37

 菅直人首相が国連総会出席とオバマ米大統領との首脳会談のために訪米した。米軍普天間飛行場移設問題で日米同盟の空洞化が深まる中、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件では中国首相が船長の「即時無条件釈放」を要求するなど強硬姿勢を一段と強めてきた。
 日本の領土と安全はかつてない危機にさらされている。アジア太平洋の秩序を守る公共財たる日米同盟の実効性に東南アジア諸国の懸念も高まっている。
 決定的に重要なのは、日米首脳会談と外相会談だ。中国の無法な行動に対抗するため、首相と前原誠司外相は米軍再編の着実な履行を柱に同盟の基盤を立て直し、尖閣防衛を貫く強力な意思を世界に発信すべきである。
 日米関係は昨年秋の民主党政権移行以来、普天間問題で迷走を重ね、菅改造内閣発足後も解決のめどは立っていない。この間、同盟空洞化の足元を見透かすように中国海軍は黄海、東シナ海、南シナ海で大胆な行動に出始め、海上自衛隊護衛艦に対する艦載ヘリの異常接近(4月)も起きた。
 その延長が今回の漁船衝突事件であり、日本の安全と領土・領海を守る同盟の意思と能力が試されているといわざるを得ない。周辺諸国が事態を注視するのもそのためだ。首相や外相はまずこの現実を強く認識する必要がある。
 尖閣諸島は日本固有の領土であり、日本政府は少なくとも「中国側が領海侵犯と違法操業を謝罪し、衝突の損害賠償に応じない限り、交渉には一切応じない」となぜ主張できないのか。日中が「戦略的互恵関係」を進めるには、相手の領土・領海を尊重することが大前提であることを中国は肝に銘じなければならない。
 米国務省は先月、尖閣諸島が日本の施政の下にあり、「日米安保条約の防衛対象」と言明した。首脳会談、外相会談では同盟の根幹につながる共同防衛の誓約を再確認し、国際社会にアピールすべきだ。一方で米国は「日中の対話が必要」(スタインバーグ米国務副長官)との立場も示しており、日米共通の対処を緊密にすり合わせる必要もある。
 首脳会談の翌日には米・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会談も開かれる。ASEANの懸念に応えるためにも、日米が「強い同盟」の回復に全力を注ぎ、信頼を取り戻してもらいたい。
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コメント (2)

尖閣問題はアジア太平洋の問題

2010-09-22 10:32:58 | 時事
 尖閣諸島をめぐる問題は、中国が世界的に展開している資源獲得と関係がある。中国は石油・銅・希少金属等の資源を求めて、アフリカ、南米、シベリア等、世界各地へと貪欲に手を伸ばしている。国内のチベットや新疆ウイグルへの支配を強化しているのも、これらの地域に貴重な資源が存在するからに他ならない。中でも、中国が強い意欲を示しているのが、東アジアの海洋地域である。この地域は、中国から見れば、自国の外洋である。自国の海岸線に沿って、北は東シナ海、南は南シナ海。地図上は東・南と分けて呼ぶが、中国にとっては「シナの海」である。
 アジア太平洋地域には、石油・天然ガスが豊富にある。南シナ海には、サウジアラビアに匹敵する埋蔵量の石油があるといわれる。尖閣諸島のある東シナ海にも、中東に匹敵する埋蔵量の石油と天然ガスがあると推測されている。さらにメタンハイドレートも海中に大量に眠っている。アジア太平洋地域は「21世紀の中東」とでもいうべき資源の宝庫。「宝の山」ならぬ「宝の海」なのである。
 中国にとって、「シナの海」は安全保障上も重要である。ここでは、過去、米軍が引っ込むと中国軍が出てきた。昭和49年(1974)に米軍がベトナム撤退を決めると中国は西沙諸島を占領した。平成4年(1992)に米軍がフィリピンから撤退すると、中国は南沙諸島を占領した。いまアメリカは世界的なトランスフォーメーション(戦略的資源配置転換)を行い、世界に展開する軍隊を各国からできるだけ本国に戻し、効率的・機動的な作戦を行う体制へと転換しつつある。東アジアでも大規模な配置転換が計画的に行われる。沖縄の基地問題もその一環である。
 中国はアメリカのこの動きに応じて、アメリカが引いたところへ自国軍を展開するという計画を実行しつつある。今回の尖閣諸島をめぐる中国の行動には、アメリカの意思を確認するという意図があるだろう。そして、この行動は、東シナ海が「陸続き」ならぬ「海続き」である南シナ海における覇権主義的な行動と一体のものである。中国の海洋政策、アジア太平洋地域における政策は、一段と積極的なものにギアチェンジされたのだろう。
 昨日の日記に「大紀元日本」平成22年9月15日号の記事を引いた。その記事には、米国の中国問題専門家・孫延軍の発言が掲載されている。孫氏によると、尖閣諸島の東海海域より、北京当局の注意力は南海にある。「南海は東北アジアと東南アジアの経済動脈であり、南海を牛耳れば、東海の争議と台湾問題とも戦わずに勝つことになる」と孫氏は語る。
 わが国にとっては、シーレーンを抑えられれば、のどもとに手をかけられたと同然となる。それゆえ、わが国の安全と繁栄を維持するためには、同盟国アメリカとの連携とともに、南シナ海で中国と緊張関係にあるASEAN諸国との連携が重要である。さらに加えて、南方のオーストラリア、西方のインド等との連携を拡張していくことが、わが国の外交・安全保障政策の中期的課題とされねばならない。
 以下は報道記事のクリップ。

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●産経新聞 平成22年9月22日

http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100922/asi1009220305000-n1.htm?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
【明日へのフォーカス】高畑昭男 尖閣に直結する南シナ海
2010.9.22 03:04

 記録破りの猛暑が続いた8月末、ベトナム南部で開かれた「東アジア・フォーラム」(EAF)という国際会議に参加する機会があった。尖閣諸島沖で中国漁船の領海侵犯事件が起きる2週間前のことだ。
 日本であまり知られていないが、EAFは東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓のASEANプラス3首脳会議で設置された半官半民の意見交換の場だ。域内13カ国の産・官・学の代表が年に1回、地域統合の知恵や工夫を提供しあう。(略)
 ASEANは2015年を目標に政治・安全保障、経済、社会・文化の3つを柱とするASEAN共同体の実現を掲げている。08年にはASEAN憲章も発効した。(略)
 確かに13カ国の人口は世界の3分の1を占め、域内総生産(GDP)では24%にあたる。インド、豪州なども加われば規模はさらに膨らみ、「世界の成長センター」の統合にかける各国の期待と夢は大きい。
 もちろん仏教のタイ、イスラムのインドネシア、社会主義のベトナムなど地域の顔は多様だ。域内格差や異なる制度の調和など統合への課題は山ほどある。だが、何といっても最大の懸案は、自己主張を強める中国の巨大な影にどう対応するかにあるように強く感じられた。
 もちろん会議の主題は統合へ向けたインフラ整備や人的・物的交流の促進だったため、各国が安全保障でぶつかるような場面はなかった。
 とはいえ、1カ月前にハノイで開かれたASEAN地域フォーラムでは、中国が「核心的利益」とする南シナ海の航行の自由や領土紛争をめぐってクリントン米国務長官が中国外相と激しいサヤ当てを演じた。
 その3週間後、ベトナムは同じ南シナ海で米国と初の合同訓練を展開し、米海軍のイージス艦や原子力空母などが参加して中国を牽制(けんせい)してみせたことも記憶に新しい。
 地域の外交筋によれば、ASEAN、とくにベトナム、タイなどメコン諸国は「日米やインドを巻き込んで中国との力の均衡を図り、経済統合では相互依存関係を築くというしたたかなゲームを展開している」というのが最新の情勢だ。
 会議はわずか2日だったが、今思えば「巨竜」の影に集団で挑むASEANの姿勢がこの1カ月に凝縮されていたように思う。南シナ海の水温もさぞや上昇したことだろう。
 そんな中で起きたのが尖閣諸島沖の事件である。アーミテージ米元国務副長官が「日米は中国に試されている」とし、事件を「ベトナムやマレーシアなどへの中国の警告」と指摘したように、南シナ海と東シナ海の問題の根は同じといっていい。
 「アジア復帰」を宣言したオバマ米政権も日本に続いてジャカルタにASEAN常駐代表を置く。日米が結束し、ASEANと連携して東シナ海と南シナ海の風通しをよくする必要がある。(論説副委員長)

●共同通信 平成22年7月3日

2010/07/03 16:53
http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010070301000445.html

【ワシントン共同】中国政府が今年3月、北東アジアとインド洋を結ぶ軍事・通商上の要衝で、アジア各国による係争地域を抱える南シナ海について、中国の領土保全などにかかわる「核心的利益」に属するとの新方針を米政府高官に初めて正式に表明していたことが3日、分かった。関係筋が明らかにした。
 中国はこれまで台湾や独立運動が続くチベット、新疆ウイグル両自治区などを
「核心的利益」と位置付け、領土保全を図る上で死活的に重要な地域とみなし、他国に対する一切の妥協を拒んできた。新たに南シナ海を加えたことで、この海域の海洋権益獲得を強硬に推し進める国家意思を明確に示した。
 中国は南シナ海に連なる東シナ海でも、日中双方が領有権を主張する尖閣諸島(中国名・釣魚島)海域周辺での活動を活発化させており、海洋権益をめぐり日本との摩擦が激化する恐れもある。(略)

●読売新聞 平成22年7月24日

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100723-OYT1T01126.htm
ASEAN、南シナ海問題で拘束力ある枠組み主張

 ハノイで23日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)では、ASEAN―中国間で緊張が高まっている南シナ海の領有権を巡る問題も大きな焦点となった。
 ASEAN側は、平和解決に向けて拘束力のある枠組み作りの必要性を主張し、今後結束して対処すると表明。これに対し、中国は対話には応じつつ、主権が絡む妥協は拒否する構えを崩さなかった。
 「南シナ海問題で中国側とこれほど論議したのは久しぶりだ」とASEAN筋が語る。会議では、この問題が北朝鮮問題に次いで議論され、中国の楊外相発言のほとんどは、南シナ海を巡るものだった。
 スプラトリー(南沙)諸島などの領有権争いを巡り2002年にASEAN、中国が署名した「行動宣言」は、法的拘束力がない。ASEAN側はこれまで、信頼醸成などでの具体的行動を明記し、法的拘束力を持たせた「行動規範」の策定を働きかけてきたが、中国側に拒否されてきた。
 今会議でASEANは、「行動宣言」の影響が及ぶのは「海域の権利主張国」と限定していた従来の主張を変え、ASEAN全体の利害にかかわる問題だと強調した上で、「『行動宣言』の完全履行に加え、『行動規範』策定に向け、努力を促す」ことを声明に盛り込むよう求めた。

●時事通信 平成22年9月21日

南シナ海問題も協議へ=米・ASEAN首脳会議
時事通信 9月21日(火)10時42分配信

 【ワシントン時事】ローズ米大統領副補佐官(戦略広報担当)は20日、オバマ大統領が東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳と24日に行う会談で、南シナ海の領有権問題について協議を行うとの見通しを示した。
 クリントン国務長官は7月にハノイで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)で「外交を通じた問題解決を支持する」と発言。南シナ海の大半を自国の領海と主張し、権益確保の動きを見せる中国をけん制している。 
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尖閣問題で中国が強硬な理由

2010-09-21 11:09:11 | 時事
 尖閣沖衝突事件で、共産中国の姿勢は強硬である。5年前の反日デモのときとは違う。北京オリンピックを成功させ、いま上海万博も成功裏に進めている。国際社会に存在感を示し、新興巨大国家としての自信が、政府にも国民にも高まっているのだろう。より具体的には、軍事力を増強し、東アジアの海洋支配に向けて着々と武力を強化していることが、強硬姿勢の理由にある。さらにGDPで日本を抜き、世界一の外貨準備高をもち、日本国債を多量に購入するなど、日本経済への影響力を拡大していることも理由にある。
 わが国は、政府・国民を挙げて、真剣に日本のあり方を正す必要がある。しかし、民主党政権は、自主独立の精神が弱く、領土・国益に関する危機感が薄い。前原外相は、岡田前外相よりはましだが、現状を「脅威」ではなく「懸念」と述べるのみ。国民に対し、領土問題として理解・協力を求めるのでもない。菅首相にあっては、最高指導者でありながら、責任を持って対応する姿勢さえ示していない。
 私は数年前、アンドレ・モーロワが第2次大戦でドイツに敗れた祖国フランスについて書いた『フランス敗れたり』という本について、一文を掲げた。ナチスの台頭を前にしながら、厭戦気分と内紛のため、有効な防衛整備をしなかったフランスは、ヒトラーの侵攻に対し、あっけなく敗れた。そして全体主義の軍靴に国土を踏みにじられた。ナチスの侵攻を受ける前のフランスと現在の日本がよく似ていると指摘し、中国から日本を守る方策を述べたのが、拙稿である。尖閣問題に取り組むため、同憂の士のご参考に供したい。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08l.htm

 以下は目を引いた報道記事のクリップ。
 
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●産経新聞 平成22年9月21日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/100921/chn1009210012001-n1.htm
強硬姿勢の中国 2005年との違いは? 中国漁船衝突事件
2010.9.21 00:10

 【北京=川越一】沖縄・尖閣諸島周辺海域で起きた中国漁船衝突事件をめぐる日中の軋轢(あつれき)は、中国人船長の勾留(こうりゅう)延長で激化の様相を呈している。反日デモの“嵐”が吹き荒れた2005年のときと比べると、さまざまな相違点が浮かび上がってくる。
 小泉純一郎元首相の靖国神社参拝や日本の国連安全保障理事会常任理事国入りへの反対などが引き金になり、05年4月初めから中旬にかけて北京や上海、広州、深●(=土へんに川)などで大規模な反日デモが相次いだ。北京の日本大使館や上海の日本総領事館が投石を受けるなどし、日本料理店が焼き討ちにあう事態にまで発展した。
 当時、中国外務省報道官は「日本の指導者は中国人民の感情を無視した」などと主張。崔天凱アジア局長(当時、現外務次官)も「両国関係の政治的基礎を傷つけ、中国やアジアの人民の感情を傷つけた」と述べるなど、中国側は一貫して“感情論”を唱えた。
 それが人民レベルの反日をあおり、デモが激化した側面もある。ただ、中国政府は4月中旬以降、対日関係の修復に動き、経済交流や民間交流に大きな影響が及ぶことはなかった。当時はまだ、日系企業の撤退などによる中国側の“損失”が大きかったからだ。
 今回の摩擦の根幹にあるのは領土問題。そして、世界2位の経済大国の座をうかがうほどの成長を遂げた昨今、日本からの投資に影響が出たとしても“損失”は限定的だ。1万人規模の訪日団の中止も、日本側が受ける痛手の方が大きい。
 この5年ほどでインターネットの普及が進んだことも見逃せない。政府が弱腰の態度を見せれば、すぐさまそれを非難する世論が沸き起こる。
 今回の反日デモはまだ中国当局のコントロールが効いている。ただ今後、「中国人民の感情」を刺激する事態が加われば、“嵐”は理性を失いかねない。

●大紀元日本 平成22年9月15日

http://www.epochtimes.jp/jp/2010/09/html/d99724.html
尖閣諸島問題に強気の中国、海洋戦略に際立った変化

【大紀元日本9月15日】(略)

◆中共の海洋政策に重大な変化か
 (略)中国の強気の対日外交に、米VOA中国語サイトは12日、「尖閣問題における中国の圧力は、最近の南海での一連の動きを含めて、中国の海洋政策に重大な変化が現れたことを意味する」と指摘。
 日本在住の中国問題専門家であり、当代中国研究センター代表を務める楊中美博士は、米VOAの取材に応じて、これまでの尖閣諸島で起きた摩擦に対して中国政府は問題が大きくならないように対応してきたが、今回の中国の対応は今までの「日中友好優先」のスタンスと明らかな違いが見られていると指摘した。
 楊博士によると、尖閣諸島周辺で台湾の漁船と日本の漁船が衝突する事件はしばしば見られるが、中国の漁船がこの地域で日本と衝突するのは極めて稀である。この海域は中国漁民の活動範囲ではなく、主に台湾と日本の漁民が作業する地区であるという。
 「最近中国の大量の漁船が、中国の海監船の保護下で、南海で漁業活動を行っている。南海諸国は直接中国の漁民を追い出すことができないため、事実上、中国政府南海での主権を訴える活動になっている」と楊博士は、最近の中国の南海での動きについで言及し、今回の尖閣諸島の問題における中国政府の強硬な態度も考え合わせ、中国の海洋政策に重大な変化が生じたのではないかと分析している。
 米国の客員研究員で、中国問題を専門とする首都師範大学元教授孫延軍は、本紙の取材に応じて、尖閣諸島の東海海域より、北京当局の注意力は南海にあると分析している。
 「南海は東北アジアと東南アジアの経済動脈であり、南海を牛耳れば、東海の争議と台湾問題とも戦わずに勝つことになる」「東南アジア諸国の実力は弱く、ほかの国際社会の政治勢力が南海問題に深く介入する理由はない」という。

◆尖閣衝突事件で国内の危機を減圧
 さらに、孫教授は、尖閣諸島問題における今回の中国の狙いは、抗日戦争勝利記念日のタイミングを利用して領土の争議問題を挑発し、現在中国国内の危機を減圧することにあると指摘する。同時に、尖閣諸島問題で、ある程度の政治的な緊張を保ち、今後の国際問題における切り札として利用するだろうと事態を読み取る。
 「現在中共は内外とも大きな危機を直面しており、尖閣諸島問題を解決力もないし、日本との外交関係を破壊するところまではやらないだろう。このようなパフォーマンスは今後も演じるだろうが、戦略として尖閣問題を第一にすることはない」と語り、中共の海洋政策の最優先は南海にあるという見解を示している。
 「南海領土問題では、他国との衝突を通して領土を徐々に回収し、中国国民に求心力をアピールし、生き延びる時間を生み出して、現在の政治危機を乗り越える狙いだ」という。
 中国国内メディアや運動家らは当局に、領土問題に対してもっと強硬な態度をみせるよう求めている。中国政府が国家主権を守れなければ、国民の前で面子を丸つぶしにされ、高まる民族主義の感情はいつか反政府運動へと発展しかねないことを危惧しているとAP通信は分析している。
 また、米シンクタンクのジェームズタウン基金会の研究員が10日に発表した「琉球列島における中国の策略」では、北京当局は争議のある尖閣諸島問題を利用して政治的、心理的に日本を操る策略であると指摘している。2005年の尖閣諸島の摩擦では、中国国内で反日運動が盛んに行われている。尖閣諸島問題において、中国は日本の過去の戦争の問題を掌握することで、中国民衆の愛国感情を利用してうまく日本に圧力を掛けるねらいだという。

◆尖閣諸島問題は近くに鎮まるか
 シンガポール国立大学東アジア研究所の林志佳助理研究員は、(略)日本政府にとって、今回の漁船接触事故で米軍の日本駐留に反対する国民を説得するための良い理由を見つけたとも分析した。
 近年日本との衝突に強硬な態度を見せてきた中国だが、今回の事件が両国の関係に影響を及ぼす可能性は低い、と同研究員は指摘している。
 その理由として、自民党より民主党が中国寄りの姿勢をとっていること、そして両国の間に領土問題、歴史問題はあるが、経済協力こそ両国にとって最重要だと双方も認識していると同研究員は上げた。
 シンガポールの中国語紙「聯合早報」は13日付けの記事で、尖閣諸島問題は繰り返されて発生するが、中国、日本、米国の三カ国の利益に関わるため、さらに、中共の「戦うが破らない」との方針もあり、毎回、短期的な現象で終わっていると分析する。
 台湾淡江大学の国際事務・戦略研究所の林中斌教授は、「聯合早報」の取材に対して、今回の尖閣諸島の発生は、日中両国とも必要であると指摘。日本側は民主党党首の選挙が起きる時期に、尖閣諸島問題で投票を獲得する機会になると状況を読む。
 一方、中国側は、胡温政権の改革を推進させたい意図で、外交問題が内部の改革まで影響することは望ましくないため、表面上は強い姿勢を出しているが、経済上の考えから、また、毛沢東時代からの日本との外交関係において、「戦うが破らない」との方針を取ってきたため、尖閣問題を大きく発展させることはないとしている。
 同じく台湾淡江大学の国際事務・戦略研究所に務める翁明賢教授は、尖閣諸島問題の主役は実は米国であると指摘し、台湾にも関わっているため、日本も問題の拡大化を望んではいないため、近いうちに鎮まるだろうとしている。
(執筆・趙莫迦、高遠)
(10/09/15 13:18)

●サーチナ 平成22年9月21日

尖閣問題で「対日報復、為替介入で円高誘導」=中国専門家
(サーチナ - 09月21日 10:04)

 中国社会科学院日本研究所の馮昭奎研究員は20日までに、尖閣諸島近海で中国漁船が拿捕され、中国人船長が逮捕された件で、日本に対する最大の報復措置は「日本円を大量に買い、猛烈な円高を誘導することだ」との考えを示した。チャイナネットが報じた。
 中国では◆日本製品の不買◆希土類の対日輸出禁止◆日本企業への各種制限――などの措置を求める声が高まった。馮研究員は、さまざなな経済的報復措置の中でも、円高誘導が最も有効な方法との考えを示した。
 中国船拿捕・船長逮捕問題で、日本政府が中国側の要求を受け入れない理由は「国内世論を慰撫(いぶ)することで、政治家が点数を得ようとしている」と分析。ただし、日中関係に実質的な損害は「日本自身の長期的利益を損ねることになる」との考えを示した。
 東シナ海のガス田問題では、「日本側の測量を実力阻止する必要がある」と主張した上で「双方とも武力衝突は避けねばならない。武力で争うことになればおそらく、共倒れになる」と述べた。
 日本政府・日銀は15日、6年半ぶりの円売り・ドル買いの単独介入を行い、一時は1ドル=82円台にまで進んだ円高を、とりあえず沈静化した。しかし、日本の産業界からは「85円台にはなったが、依然として円高局面が続いていることに変わりない」との声が出た。日本の単独介入により、欧米では「自国の利益だけを考慮」との懸念や反発が出た。(編集担当:如月隼人)

●産経新聞 平成22年9月20日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/100919/chn1009192131008-n1.htm
中国紙、「沖縄は日本が不法占領」との論文掲載
2010.9.19 21:29

19日付の中国紙、環球時報は琉球(沖縄県)は明治政府が19世紀末に清国から奪い取ったもので、日本政府は今も沖縄住民の独立要求を抑え込んでいるとの趣旨の署名入り論文を掲載した。
 中国大陸に近い尖閣諸島(中国名・釣魚島)については中国領であることは明白で「日本には中国と話し合う資格もない」と結論付けている。
 筆者は在日中国大使館勤務経験がある商務省の研究者、唐淳風氏。論文ではかつての琉球王国住民の大部分は福建省、浙江省、台湾付近の出身で、言葉も制度も中国大陸と同じだったと断言。
(共同)
 
●産経新聞 平成22年9月21日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100921/plc1009210029001-n1.htm
強硬な中国 危機感薄い日本政府はだんまり
2010.9.21 00:27

 沖縄・尖閣諸島付近における海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で、“対抗措置”をエスカレートさせる中国に対し、日本政府の動きが鈍い。中国側が事件を「あえて領土問題と位置づけようとしている」(政府高官)のは明らかなだけに、日本側は「冷静な対応」を堅持する構えだというが、危機感は薄い。菅直人首相は20日、「合宿」と称する新閣僚の勉強会を首相公邸で開いたが、中国への対応策に関し、指示はなかった。(酒井充)

 首相は20日午後、外遊中の海江田万里経済財政担当相と松本龍環境相を除く15閣僚と党幹部を集めたため、対応策を協議したとの見方が強まったが、経済政策や政治主導のあり方などについて意見交換し、21日に閣議決定する副大臣・政務官人事の最終調整を行っただけ。福山哲郎官房副長官は勉強会後、記者団に「事件に特化した話はしていない」と語った。
 しかも首相とほとんどの閣僚は勉強会後、都内のホテルに場所を移し、中国料理に舌鼓(したつづみ)を打った。
 中国の波状的な攻勢に対し、日本側は前原誠司外相が「尖閣諸島に領土問題は存在しない。国内法で毅然(きぜん)と対応するだけだ」と繰り返し強調している。ただ、民主党代表時代に中国の軍拡を「現実的な脅威」と批判していた前原氏でさえ、就任後は「脅威」という言葉を意識的に避け、「懸念」という表現にとどめる配慮を示す。
 まして首相からは明確なメッセージは聞かれない。片山善博総務相は19日のNHK番組で「もっと領土に対する意識を国民に涵養(かんよう)するような施策が必要だ」と主張したが、こうした意見が唯一の民間閣僚からしか出てこないあたりに民主党政権の主権に対する意識の低さがうかがえる。
 一方、中国は南シナ海をチベットや台湾と同列に扱う「核心的利益」と呼び、海洋権益の拡大を着々と進める。領土・主権への執着は日本と比較にならないほど強い。
 中国の胡錦濤国家主席は11月13、14の両日に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する予定だ。このため、政府内には「時間が解決する」(政府高官)との楽観論がある一方、「何もメッセージを発しないと、衝突事件を領土問題と位置づける中国の主張が既成事実化する」(政務三役)との懸念も出ている。
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関連掲示
・拙稿「『フランス敗れたり』に学ぶ~中国から日本を守るために」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08l.htm
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