ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユダヤ18~ユダヤ人と日本人

2017-02-28 10:18:56 | ユダヤ的価値観
●ユダヤ人の多様性

 ユダヤ人は、わが国の多くの人に思われているようには決して一様ではなく、多様性に富んでいる。まずユダヤ教の宗派には、先に書いたように超正統派、正統派、保守派、改革派の四つがあり、宗派によって信仰についての考え方が違う。広義のユダヤ人には、ユダヤ教徒だけでなく、キリスト教徒や無神論者・唯物論者等もいる。政治的にも、イスラエルのユダヤ人には、自由主義者もいれば、社会主義者もいる。右翼政党連合のリクード、左翼の労働党の他、少数党がいくつもある。アラブ諸国との対決を主張する勢力もあれば、和平共存を願う勢力もある。アメリカのユダヤ人には、民主党を支持するリベラルな者が多いが、共和党を支持する保守的な者もいる。古典的自由主義の自由至上主義者(リバータリアン)や新保守主義者(ネオ・コンサーバティスト)すなわちネオコンもいる。また世界的には、自由主義、共産主義、グローバリズム、ナショナリズム、コミュニタリアニズム、コスモポリタニズム等の思想を持つユダヤ人がいる。日本に対しては、猛烈に反日的な者、日本に興味も持たない者、日本の文化を愛する親日的な者、日本人とユダヤ人は共通の祖先を持つという説を信奉する者がいる。また、日本よりも中国・華僑との友好を求める者や、アジア全体を嫌悪する者等もいる。
 このようにユダヤ人の考え方は多様であり、また個人個人の自己主張が強い。また、ユダヤ人社会には様々な団体があり、それぞれの主義主張を唱えている。それゆえ、ユダヤ人は決して一枚岩ではない。また、こうした多様性が様々な分野で驚異的な能力を発揮し得る背景ともなっているだろう。

(3)ユダヤ人と日本人

●ユダヤ教と神道

 ここで第1章と第2章にまたがることとして、ユダヤ教と神道、ユダヤ人と日本人について書く。
 ユダヤ教と神道には、世界の主要な宗教の中で、ともに民族宗教であるという共通点がある。また、主に次のような類似点がある。

(1)生命を肯定し、現世の幸福を追求する。
(2)性愛を自然なものとし、子孫の繁栄を願う。
(3)ラビまたは神職に独身生活を課していない。
(4)労働を神聖な行為とし、労働で得た成果を聖なるものに捧げる。
(5)飲酒を禁じず、儀礼において酒を飲む。
(6)穢れを忌み嫌い、穢れを祓う清めを行う。ユダヤ教では、死体に接した者、月経や出産後の女性は、ミクベ(沐浴場)で首まで水につかって、身を清める。神道では、海や川などで禊を行う。

 ただし、相違点はもっと重要である。ユダヤ教は一神教であり、神道は多神教である。ユダヤ教は神ヤーウェ以外の神々や霊的存在を偶像として禁止する。神道は自然の事物や人間等の八百万の神々を祀る。この違いは決定的である。上記のような類似点を多数挙げたとしても、この決定的な違いを埋めるものではない。
 ユダヤ教は選民思想を持ち、偶像崇拝の禁止とあいまって、ほかの民族や宗教に対して排外的・闘争的である。これに比し、神道は多様なものを受け入れ、これを融和・共存させる。儒教・道教・仏教等が伝来するとこれらを受容し、逆に日本化した。それゆえ、日本には宗教戦争がなかった。
 ユダヤ教は、キリスト教、イスラーム教、ヒンドゥー教、仏教、儒教、道教等と同じく大陸の影響を受けて発生した宗教である。これに対し、神道は、海洋の影響を受けて発生した宗教である。大陸的な宗教が陰の性格を持つのに対し、海洋的な宗教である神道は陽の性格を持つ。明るく開放的で、また調和的・受容的である。多神教であるうえに海洋的であることが、神道の共存調和性のもとになっている。

 ところで、ユダヤ教と神道は同じ根源を持つという説は、その証と一つとして、伊勢神宮参道の石灯籠にダビデの星と同じ六芒星が彫られていることを挙げる。だが、ユダヤ教は偶像崇拝や神についていかなる図像も禁止しており、ダビデの星については、聖書には何も書かれていない。また、この図形は、ユダヤ教独自のシンボルではない。すでに考古学でいう青銅器時代に西はブリテン島から東はメソポタミアに至る広い地域の諸民族が使用しており、古代・中世には地球上のさまざまな民族が用いていた。中世の西方キリスト教社会では「ソロモンの封印」と呼ばれ、教会建築の幾何学的装飾文様として頻繁に用いられた。
 この図形がユダヤ人の象徴としてユダヤ人の間で普及するのは19世紀のことであり、1898年の第2回シオニスト会議においてシオニストの旗印に選定されて以降のことである。
 それゆえ、伊勢神宮参道の石灯籠の六芒星をダビデの星だとし、ユダヤ教と神道が同根であることの証とするのは、間違いである。

●同祖論に確かな根拠なし

 次に、ユダヤ人と日本人の関係について、ユダヤ人と日本人は共通の祖先を持つという説がある。日猶同祖論という。
 日猶同祖論の始めは、英国人のノーマン・マクレオドが1875年(明治8年)に長崎の出版社から刊行した英文の書『日本古代史の縮図』である。マクレオドは幕末に来日し、古代イスラエルと日本の習慣の類似性に関心を持ち、日本人はユダヤの第10支族の子孫であり、天皇家の歴史は古代イスラエル王家の歴史を継承したものであると唱えた。本書は1901年に『ユダヤ百科事典』に取り上げられ、アインシュタインがそれを読んで日本に関心を抱いたといわれる。
 日本人では、東洋史学者の佐伯好郎が、1908年(明治41年)の論文「太秦(うずまさ)を論ず」で、京都の太秦に住んだ渡来系の豪族・秦氏はユダヤ人だったと主張した。また、1932年(昭和7年)にキリスト教の牧師・中田重治が、太古の日本にユダヤ人が渡来し、彼らと先住民の混血により今日の日本人が誕生したと説いた。
 今日も日猶同祖論は一部のユダヤ人と日本人によって説かれているが、人類学的にも遺伝学的にも歴史学的にも、確かな根拠を持たない仮説である。

 次回に続く。

APAホテルは中国共産党に屈しない

2017-02-27 09:30:46 | 時事
 本年1月中旬、APAホテルに、南京大虐殺を否定し、「慰安婦」を偽りだなどと書いた本が置かれていることが、にわかに国際問題となった。その本は、同ホテルの最高経営責任者(CEO)、元谷外志雄氏がペンネームで書いた日英2カ国語の著作である。同ホテルでは、以前からこの書籍を客室に備え付けてあるのだが、中国側がこれを問題視したのである。
 以後、1カ月半ほど経つが、APAグループは中国共産党の圧力に屈せず、堂々とした姿勢を貫いている。

 当初中国外務省は、APAグループに対し、「日本国内の一部勢力は歴史を正視しようとしない。正しい歴史観を国民に教育し、実際の行動でアジアの隣国の信頼を得るよう促す」と批判した。外国である日本の民間企業であるホテルが客室内に置いている本を取り上げて、批判するのだから、異例の対応である。これに対し、APAグループは、客室から撤去する考えがないとする見解を公式サイト上に掲載した。「特定の国や国民を批判することを目的としたものではなく、あくまで事実に基づいて本当の歴史を知ることを目的としたもの」と説明し、「日本には言論の自由が保障されており、一方的な圧力によって主張を撤回するようなことは許されてはならない」との考えを強調している。
 APAグループは、帽子をかぶった女社長の広告で有名だが、「真の近現代史観」の懸賞論文を主宰しており、第1回は田母神俊雄氏が最優秀賞を受賞したことでも知られる。
http://ronbun.apa.co.jp/
 また、朝日新聞の慰安婦報道に抗議して、同紙への広告掲載を取り止め、客向け朝刊無料サービスを朝日から読売に変更などしている。他の経営者も見習ってほしいものである。
 今回の著書に関する対応も、実に立派である。私は、1月19日にSNSに「断固支持します。中国共産党の全体主義・覇権主義に屈してはならない。ハッカーを使った同社のサイトへのサイバー攻撃、在日中国人を動員した抗議、工作員による破壊行動等が予想されます。警戒警備体制を強化してください。」と書いた。また、「日本国政府に対し、日本国内の民間人・民間団体の言論活動に干渉する中国外務省に抗議をするよう要望します。」とも書いた。
 その同じ日、菅内閣官房長官が中国外務省の批判に対して、記者会見でコメントした。「報道官の発言一つ一つに政府としてコメントすることは控えたいと」し、その上で「過去の不幸な歴史に過度な焦点を当てるのではなく、日中両国が国際社会が直面する共通の課題、そして未来志向に向けて取り組んでいる姿勢を示すことが重要だ」と指摘した。
 看過せずコメントしたのはよかったが、この内容ではダメである。抗議にも反論にもなっていない。これでは、中国共産党の謀略宣伝を押し返すことはできない。私は「官房長官、しっかりしてください。南京事件に関する事実認識には触れなくとも、少なくとも、日本は憲法で言論の自由を保障しており、外国政府による干渉は許されない、と政府を代表して言い返さねばなりません」と書いた。
 APAグループのサイトに掲載されている日本語の声明は、南京事件について、なぜ大虐殺説が偽りであるかを具体的に論述している。
http://www.apa.co.jp/newsrelease/8325
 書籍の著者である元谷CEOは、自ら近現代史を研究し、信念を持って著作を書き、慰安婦問題についても発言しています。政治家はその姿勢を見習うべきである。
 1月25日、APAグループは、中国共産党政府の批判や予約妨害を受けても、客室から近現代史の書籍を撤去しないと表明した。元谷CEOの姿勢には、ブレがない。同日付の産経新聞で見解を述べたインタビュー記事から要点を抜粋する。
 「今回のことはいずれ起こると想定していたこと」「幸い当社は1200万人以上の会員のビジネスユースが大半で、海外の宿泊者は2割程度。その中でも中国は5%、韓国は3%。10%の規制に達する前のいいタイミングで今回のことは起きたと思っている」
 「これまで誰もいってこなかった。向こうが押せば引くと、70年間にわたって日本は『押せば引く国』『文句いえば金を出す国』ということで敗戦国の悲哀を味わっていたが、もうここまで来たら『本当はどうなのか』ということを向こう(中国)の方にも知ってもらう必要がある。いいタイミングに自ら騒いでくれた」
 「今や知名度は世界一。今回のことは全世界で報道されている。世界の友人が教えてくれた。何が大事か、本当はどうなんだ、本当のことがわかればみんな保守になる。日本の人は本当のことがわかっていても言えなかったけれども、これからはジワジワと本当のことを知らせてこなかった本国(中国)にダメージがいくだろう」
 「中国は(利用者の)5%。多くの人から『アパホテルしか使わない』といった激励もいただいているし、相殺、むしろプラスが多いと思う。」
http://www.sankei.com/west/news/170125/wst1701250038-n1.html

 快なる哉、この心意気。志操堅固かつ戦略的である。
 
 2月5日、私の予想通り在日中国人が行動に出た。東京・新宿で在日中国人約100人がAPAホテル批判のデモを実行したものである。この動きを知った都知事選で多くの支持者を得た桜井誠氏らの呼びかけで、愛国的な日本人がそれ以上の人数で集まって中国人デモ隊に抗議した。
 その際、一人で抗議に来ていたウイグル人トゥール・ムハメット氏を見かけた桜井氏がマイクを渡し、ムハメット氏が演説した。ムハメット氏は、次のように語った。
 「中国の官製デモが、この素晴らしい民主国家、アジアのモデルである日本で行われている。こんな素晴らしい国家で、こんなくだらないデモが…。1949年の中華人民共和国建国以来、数え切れない殺戮、弾圧、海外侵略を行っています。(略)建国以来、ウイグル人、チベット人に対する虐殺は許されません」
 中国人デモ隊は、トラブルの拡大を避け、APAホテルへの要請書の提出を断念したとのことである。デモの主催者が中国人サークルに発表した募集文には、「犯我中华,虽远必诛」(中国を犯すなら、ぶっ殺す)、と書いてあったと伝えられる。日中友好、平和愛好を思わせる見せかけのプラカードに騙されてはならない。
 中国共産党の内政干渉、言論弾圧に屈しないAPAグループを断固支持しよう。

ユダヤ17~各分野で活躍するユダヤ人

2017-02-25 10:02:07 | ユダヤ的価値観
●各分野で活躍するユダヤ人

 ユダヤ人は、近現代の世界で極めて広い範囲の各界で活躍している。主な例を掲示する。
 以下には、狭義の宗教的定義によるユダヤ人すなわちユダヤ教徒だけでなく、広義の民族的定義によるユダヤ人すなわち他宗教に改宗した者や無神論者・唯物論者等も含む。また、父がユダヤ人であること等によって、ユダヤ系とされるものを含む。

 哲学:バルーフ・スピノザ、カール・マルクス、アンリ・ベルグソン、エドムント・フッサール、ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン、カール・ポッパー、マックス・ホルクハイマー、テオドール・アドルノ、ヘルベルト・マルクーゼ、ハンナ・アーレント、レオ・ストラウス、マルティン・ブーバー、ジャン・ポール・サルトル、エマニュエル・レヴィナス、イヴァン・イリイチ、ジュリア・クリスティヴァ、ジル・ドゥルーズ、ジャック・デリダ、アイザイア・バーリン、ヤエル・タミール、ピーター・シンガー

 経済学:デイヴィッド・リカード、カール・マルクス、ルドルフ・ヒルファ―ディング、ヨーゼフ・シュンペーター、ルートヴィヒ・ミ―ゼス、ポール・サミュエルソン、サイモン・クズネッツ、ケネス・アロー、ワシリー・レオンチェフ、レオニート・カントロヴィチ、エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハー、ミルトン・フリードマン、ハーバート・サイモン、ローレンス・クライン、フランコ・モディリアーニ、ロバート・ソロー、ハリー・マーコウィッツ、マートン・ミラー、ゲーリー・ベッカー、ロバート・フォーゲル、ジョン・ハーサニ、マイロン・ショールズ、ジョセフ・E・スティグリッツ、ジョージ・アカロフ、ダニエル・カーネマン、ロバート・オーマン、レオニード・ハーヴィッツ、エリック・マスキン、ロジャー・マイヤーソン、ポール・クルーグマン、ピーター・ダイアモンド、アルヴィン・ロス、アラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ、ジャック・アタリ、ジャネット・イエレン

 経営学:ピーター・ドラッカー

 社会主義:モーゼス・ヘス、カール・マルクス、カール・カウツキ―、エドゥアルト・ベルンシュタイン、ローザ・ルクセンブルグ、レフ・トロツキー、グリゴリー・ジノヴィエフ、レフ・カーメネフ、モイセイ・ウリツキー、カール・ラディック、アイザック・ドイッチャー、ルカ―チ・ジェルジ、ルイ・アルチュセ―ル、エルネスト・マンデル

 政治学・国際政治学:ハロルド・ラスキ、ハンス・モーゲンソー、ヘンリー・キッシンジャー、ズビグニュー・ブレジンスキー、サミュエル・ハンチントン

 ナショナリズム論:エリ・ケドゥーリー、アーネスト・ゲルナー、ベネディクト・アンダーソン、アンソニー・スミス

 政治家:ベンジャミン・ディズレーリ、ダヴィド・ベングリオン、アリエル・シャロン、ベンヤミン・ネタニヤフ、ヘンリー・モーゲンソー、フランシス・パーキンス、ロバート・ルービン、ローレンス・サマ-ズ、ロバート・ライシュ、ミッキー・カンター、モーディレン・オルブライト、ポール・ウォルフォウイッツ、リチャード・パール、ポール・ボルカー、リチャード・ホルブルック、デイビッド・アクセルロッド、ラーム・エマニュエル、バーニー・サンダース

 政治運動:ユゼフ・レッティンゲル、アーヴィン・クリストル、ウィリアム・クリストル、サイモン・ウィーゼンタール、エイブラハム・クーパー

 法学者:ゲオルグ・イェリネック、ルイス・ブランダイス、フーゴー・プロイス、ハンス・ケルゼン、フェリックス・フランクフルター

 社会学:エミール・デュルケム、ウォルター・リップマン、ピティリム・ソローキン、カール・マンハイム、ダニエル・ベル

 言語学:ロマン・ヤコブセン、ノーム・チョムスキー
 
 人類学:クロード・レヴィ=ストロース、カール・ポランニー

 歴史学:ポール・ラッシニエ、マックス・ディモント、ベン=アミー・シロニー、ハワード・サッチャー、ノーマン・フィンケルスタイン

 人口学:エマヌエル・トッド

 宗教学・ユダヤ教学:ミルトン・スタインバーグ、レイモンド・シェインドリン

 精神医学・心理学:チェザーレ・ロンブローゾ、ジークムンド・フロイト、アルフレッド・アドラー、エーリッヒ・フロム、ウィルヘルム・ライヒ、エドガー・バーネイズ、ジャック・ラカン、ヴィクトール・フランクル

 数学:ピエール・ド・フェルマー、レオポルト・クロネッカー、ゲオルク・カントール、アルバート・マイケルソン、ヘンドリック・ローレンツ、エミー・ネーター、アドルフ・フランクル、アルフレト・タルスキ、ブノワ・マンデルブロ、ピーター・フランクル、グレゴリー・ペレルマン

 物理学:アルバート・アインシュタイン、ハインリッヒ・ヘルツ、ニールス・ボーア、エドワード・テラー、ロバート・オッペンハイマー、アルバート・マイケルソン、ガブリエル・リップマン、ジェイムス・フランク、グスタフ・ヘルツ、オットー・シュテルン、イジドール・イザーク・ラービ、ヴォルフガング・パウリ、フェリックス・ブロッホ、マックス・ボルン、イリヤ・フランク、イゴール・タム、エミリオ・セグレ、ドナルド・グレーザー、ロバート・ホフスタッター、レフ・ランダウ、ユージン・ウィグナー、リチャード・P・ファインマン、ジュリアン・シュウィンガー、ハンス・ベーテ、マレー・ゲルマン、ガーボル・デーネシュ、レオン・クーパー、ブライアン・ジョゼフソン、ベン・ロイ・モッテルソン、バートン・リヒター、アーノ・ペンジアス、シェルドン・グラショー、スティーヴン・ワインバーグ、カール・アレクサンダー・ミュラー、レオン・レーダーマン、メルヴィン・シュワーツ、ジャック・シュタインバーガー、ジェローム・アイザック・フリードマン、ジョルジュ・シャルパク、マーチン・パール、フレデリック・ライネス、デビッド・リー、ダグラス・D・オシェロフ、クロード・コーエン=タヌージ、ジョレス・アルフョーロフ ロシア、アレクセイ・アブリコソフ、ヴィタリー・ギンツブルク、デイビッド・グロス、デビッド・ポリツァー、ロイ・グラウバー、アダム・リース、ソール・パールマッター、セルジュ・アロシュ、フランソワ・アングレール

 情報科学:ノバート・ウィーナー、ジョン・フォン・ノイマン

 化学:アドルフ・フォン・バイヤー、アンリ・モアッサン、オットー・ヴァラッハ、リヒャルト・ヴィルシュテッター、フリッツ・ハーバー、ゲオルク・ド・ヘヴェシー、メルヴィン・カルヴィン、マックス・ペルーツ、クリスチャン・アンフィンセン、ウィリアム・スタイン、イリヤ・プリゴジン、ハーバート・ブラウン、ポール・バーグ、ウォルター・ギルバート、ロアルド・ホフマン、アーロン・クルーグ、ジェローム・カール、ハーバート・ハウプトマン、シドニー・アルトマン、シドニー・アルトマン、ルドルフ・マーカス、ジョージ・オラー、ハロルド・クロトー、ウォルター・コーン、アラン・ヒーガー、バリー・シャープレス、アーロン・チカノーバー、アブラム・ハーシュコ、アーウィン・ローズ、ロジャー・コーンバーグ、マーティン・チャルフィー、アダ・ヨナス、ダニエル・シェヒトマン、ロバート・レフコウィッツ、マーティン・カープラス、マイケル・レヴィット、アリー・ウォーシェル

 医学・生理学:イリヤ・メチニコフ、パウル・エールリヒ、ローベルト・バーラーニ、オットー・マイヤーホフ、カール・ラントシュタイナー、オットー・ワールブルク、オットー・レーヴィ、ジョセフ・アーランガー、ハーバート・ガッサー、エルンスト・ボリス・チェーン、ハーマン・J・マラー、ゲルティー・コリ、タデウシュ・ライヒスタイン、セルマン・ワクスマン、ハンス・クレブス、フリッツ・アルベルト・リップマン、ジョシュア・レーダーバーグ、アーサー・コーンバーグ、コンラート・ブロッホ、フランソワ・ジャコブ、アンドレ・ルヴォフ、ジョージ・ワルド、マーシャル・ニーレンバーグ、サルバドール・エドワード・ルリア、ジュリアス・アクセルロッド、ベルンハルト・カッツ、ジェラルド・モーリス・エデルマン、デビッド・ボルティモア、ハワード・マーティン・テミン、バルーク・サミュエル・ブランバーグ、アンドルー・ウィクター・シャリー、ロサリン・ヤロー、ダニエル・ネイサンズ、バルフ・ベナセラフ、セーサル・ミルスタイン、マイケル・ブラウン、ジョーゼフ・ゴールドスタイン、スタンリー・コーエン、リータ・レーヴィ=モンタルチーニ、ガートルード・エリオン、ハロルド・ヴァーマス、アルフレッド・ギルマン、マーティン・ロッドベル、タンリー・B・プルシナー、ロバート・ファーチゴット、ポール・グリーンガード、エリック・カンデル、シドニー・ブレナー、ロバート・ホロビッツ、リチャード・アクセル 、アンドリュー・ファイアー、ラルフ・スタインマン、ブルース・ボイトラー、ランディ・シェクマン、ジェームス・ロスマン

 文学:ロレンツォ・ダ・ポンテ、ハインリッヒ・ハイネ、マルセル・プルースト、ライナー・マリア・リルケ、シュテファン・ツヴァイク、フランツ・カフカ、トリスタン・ツァラ、ヴァルター・ベンヤミン、アンドレ・モーロア、アルベール・カミュ、アーサー・ミラー、アーサー・ケストラー、アルベルト・モラヴィア、ジェローム・サリンジャー、パウル・ツェラン、ノーマン・メイラー、ウル・フォン・ハイゼ、ボリス・パステルナーク、イリヤ・エレンブルグ、アイザック・アシモフ、シュムエル・アグノン、ネリー・ザックス、アイザック・バシェヴィス・シンガー、エリアス・カネッティ、ヨシフ・ブロツキー、ナディン・ゴーディマー、ケルテース・イムレ、エルフリーデ・イェリネク、ハロルド・ピンター、パトリック・モディアノ

 作曲家:フェリックス・メンデルスゾーン、ジャコモ・マイヤーベーア、ヨハン・シュトラウス、ジャック・オッフェンバック、ジョルジュ・ビゼー、エルンスト・ブロッホ、グスタフ・マーラー、アーノルド・シェーンベルグ、ダリウス・ミヨー、ジョージ・ガーシュイン、フェルッチョ・ブゾーニ、アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト、クシシュトフ・ペンデレツキ

 クラシック音楽の演奏家:
 〔指揮者〕フェリックス・ワインガルトナー、ピエール・モントゥー、ブルーノ・ワルター、オットー・クレンペラー、フリッツ・ライナー、ヴィクトル・デ・サバタ、ユージン・オーマンディ、カレル・アンチェル、エーリヒ・ラインスドルフ、クルト・ザンデルリング、ゲオルク・ショルティ、キリル・コンドラシン、レナード・バーンスタイン、ルドルフ・バルシャイ、チャールズ・マッケラス、アンドレ・プレヴィン、ロリン・マゼール、ウラディーミル・アシュケナージ、エリアフ・インバル、ダニエル・バレンボイム、ジェームズ・レヴァイン、マリス・ヤンソンス、ジュゼッペ・シノーポリ
 〔バイオリン奏者〕ヨーゼフ・ヨアヒム、ヘンリク・ヴィエニャフスキ、フリッツ・クライスラー、ヨーゼフ・シゲティ、ヤッシャ・ハイフェッツ、ナタン・ミルスタイン、エリカ・モリーニ、ダヴィッド・オイストラフ、シモン・ゴールドベルク、ユーディ・メニューイン、アイザック・スターン、レオニード・コーガン、ピンカス・ズーカーマン、イッアーク・パールマン
 〔ビオラ奏者〕ユーリ・バシュメット
 〔チェロ奏者〕エマヌエル・フォイヤマン、グレゴール・ピアティゴルスキー、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、ミッシャ・マイスキー
 〔ピアニスト〕アルトゥル・シュナーベル、アルトゥール・ルビンシュタイン、ウラディミール・ホロヴィッツ、ルドルフ・ゼルキン、エミール・ギレリス、ベラ・ダヴィドヴィチ、アレクシス・ワイセンベルク、ラザール・ベルマン、ウラディーミル・アシュケナージ、マルタ・アルゲリッチ

 ジャズ演奏家:ベニー・グッドマン、ハービー・マン、スタン・ゲッツ

 ポピュラー音楽家:ボブ・ディラン、ポール・サイモン、アート・ガーファンクル

 画家:アメデオ・モジリアニ、マルク・シャガール

 映画制作:ハリー・ワーナー、セルゲイ・エイゼンシュタイン、ウイリアム・ワイラー、ビリー・ワイルダー、スタンリー・キューブリック、ロマン・ポランスキー、ウディ・アレン、スチーブン・スピルバーグ

 俳優・女優:ユル・ブリンナー、ピーター・セラーズ、マリリン・モンロー、スティーヴン・セガール、ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン

 財政家・銀行家・実業家:
 〔19世紀以前〕マルクス・マイゼル(ハプスブルグ家財務)、ザームエル・オッペンハイマー(ハプスブルグ家財務)、フランシス・ベアリング(銀行家)、ロスチャイルド一族(多数のため個人名省く。ロートシルト、ロチルド含む)、デイヴィッド・サッスーン(貿易)、ウィリアム・ジャーディンとジェームズ・マセソン(貿易)、マーカス・ゴールドマン(ゴールドマンサックス社)、エイブラハム・クーン、ソロモン・ローブ(クーン・ローブ社)、リーバイ・ストラウス(ジーンズ)、リチャード・ウォーレン・シアーズ(通信販売)、ローランド・ハッシー・メイシー(百貨店)
 〔20世紀前半〕ポール・ロイター(ロイター通信の創立者)、アドルフ・シモン・オックス(ニューヨーク・タイムズ社の社主)、レオポルド・ゾンネマン(フランクフルター・ツァイトニング紙の創立者)、ジョゼフ・ピューリッツアー(新聞社主)、ウィリアム・ペイリー(CBSの創立者)、デイヴィッド・サーノフ(NBCの育成者)カミロ・オリベッテイ(事務機メーカー社主)、バーナード・バルーク(軍需産業)、アンドレ・シトロエン(フランスの自動車王)、ヘレナ・ルビンシュタイン(化粧品)
 〔20世紀後半~21世紀〕マイケル・デル(コンピュータのデル社)、ラリー・エリソン(パソコンソフトのオラクル社)、スチーブン・パルマー(マイクロソフト会長)、サーゲイ・ブリン(グーグル)、サムナー・レッドストーン(メディアのヴァイアコム)、サミュエル・ニューハウス2世&ドナルド・ニューハウス(アドヴァンス出版)、ジョージ・ソロス(クオンタム・ファンド)、ロナルド・ペレルマン(レブロン)、マイケル・ブルームバーグ(金融情報サービスのブルームバーグL.P.)、ラルフ・ローレン(被服・服飾品卸のポロ・ラルフ・ローレン)、モーリス・グリンバーグ(AIG)、エドガー・ブロンフマン1世(酒造のシーグラム)、レナード・ローダー(化粧品のエスティ・ローダー)、ミハイル・フリードマン(オルガリヒ、銀行)、ボリス・ベレゾフスキー(オルガリヒ、石油)、メディア王ウラディミール・グシンスキー(オルガリヒ、メディア)、ミハイル・ホドルスキー(オルガリヒ、石油)

 マフィア:マイヤー・ランスキー

 霊能者:ユリ・ゲラー

 日本関連:ジェイコブ・シフ(日露戦争の戦時国債に協力)、アーサー・ウェイリー(『源氏物語』を英訳)、エドワード・サイデンステッカー(日本文学を英訳)、ブルーノ・タウト(桂離宮などを世界に紹介)、ハリー・デクスター・ホワイト(ハル・ノートを起草)、ハーバート・ノーマン(日本史)、チャールズ・ケーディス、ベアテ・シロタ・ゴードン(GHQで日本国憲法を起草)、マーヴィン・トケイヤー(日本にユダヤ教を紹介したラビ)

 次回に続く。

蓮舫二重国籍事件は不起訴、検察審査会に申し立て

2017-02-24 09:32:06 | 時事
 蓮舫二重国籍事件について蓮舫氏を不起訴とした東京地検の処分は不当だとして、女性団体「愛国女性のつどい花時計」が、東京の検察審査会に申し立てを行う。司法制度による手段として、残るは検察審査会のみである。審査会において一般国民の良識が発揮されることを願う。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170128/plt1701281530003-n1.htm

 「愛国女性のつどい花時計」は、これまでの経緯を1月10日に、次のように報告している。
「平成28年10月28日、私どもは民進党の蓮舫代表を東京地方検察庁に告発しました。罪状は「国籍法14条違反」並びに「公職選挙法235条1項違反」によるものです。しかし「国籍法」には罰則規定がなく、犯罪として処罰対象にすることができない、という回答を東京地検からもらいました。また「公職選挙法第235条1項違反」については、私どもは平成16年6月当時の選挙公報に蓮舫氏が記載した内容を問題視しましたが、既に公訴時効が成立している、という理由で不受理になりました。
 平成28年11月18日、私どもは告発状を検討、練り直して再度、蓮舫代表を「公職選挙法第235条第1項(虚偽事項の公表罪)違反」の罪により東京地方検察庁に告発しました。12月22日、東京地検から「不起訴処分とする」という「処分通知書」をもらいました。「処分通知書」に理由が記載されていなかったので理由を知りたい、という文書を出しました。すると12月28日、「不起訴処分理由告知書」が来ました。しかし「不起訴処分の理由ー罪とならず」と書いてあるのみでした。
 蓮舫代表はいまだに中華民国籍離脱の証明書も出さず、戸籍謄本の開示も拒んでいます。公職にある身であまりにも不誠実な態度です。有権者も不信感を募らせています。私どもとしても納得がいきませんので、検察審査会に申し立てをするつもりです。以上、とりあえず御報告申し上げます。引き続き、この問題に関心を持っていただきたくお願い致します。」
http://www.hanadokei2010.com/kiji_detail.php?no=48

 東京地検の判断は、前例のないことはやりたくないという悪しき官僚主義によるものか、国会で追及しないことによる政治的な圧力を受けて深入りを差し控えたか、公人であっても戸籍・パスポート等の不公表を容認する人権思想の壁か。不満が募るところである。検察審査会の公正かつ賢明な判断を期待する。
 蓮舫二重国籍事件に関する拙稿は、下記に掲載しているので、ご参照下さい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13y.htm

ユダヤ16~ユダヤ人の優秀性

2017-02-23 08:55:34 | ユダヤ的価値観
●言語

 古代ユダヤ人は、ヘブライ語を話した。ヘブライ語はセム語族に属する。
 ユダヤ人は、ローマ帝国に神殿を破壊され、各地に離散すると、たどり着いた土地の言語を日常語として用いた。だが、自らの共同体の内部では、その土地の言葉をヘブライ文字で表記する独自の言語を創り出して使用した。ユダヤ・スペイン語、ユダヤ・アラビア語、イディッシュ語がその代表的なものである。
 アシュケナジムが使うイディッシュ語は、中世中欧でドイツ語文法を基礎にして生まれた。語彙の約85%はドイツ語に起源を持つとされる。それをヘブライ文字で表記する。
 離散後の長い歴史の中で、ヘブライ語は祈りと教典学習のためだけの書き言葉になっていた。これを生きた話し言葉として復活させたのが、エリエゼル・ベン・イェフダである。19世紀末から20世紀初めにかけて、シオニズムの運動が広がり、ユダヤ人が世界各地から続々とパレスチナに帰還した。彼らは、様々な出身地の言葉を話していた。ベン・イェフダは、故国再建のためにはユダヤ人を一つにまとめる共通の日常語が必要だと考えた。イスラエル建国の際、彼の創った言葉が公用語とされた。それが、現代ヘブライ語になっている。
 近代国家の国民(ネイション)の形成において、国語の創出は重要な役割を果たすことが多い。ユダヤ人はこの点において、国語・国民の創造に成功している。

(2)能力と活躍

●類まれな能力

 ユダヤ人は、経済的能力に極めて優れているが、それだけでなく学問、思想、科学、芸術等の分野で多数の天才を輩出し、優れた成果を生み出してきた。
 ユダヤ人は人類の人口のわずか0.20%を占めるに過ぎない。だが、ノーベル賞の受賞率は人類平均の150倍にも達する。1999年までの受賞者総数698人のうち、約20%に当たる136人がユダヤ人だった。20世紀後半から21世紀初めにかけての時期では、平和賞を除く同賞に占めるユダヤ人の割合は、30%前後を維持している。日本人は、1%程度に過ぎない。
 社会学者シーモア・リプセットの著書『ユダヤ人とアメリカの新舞台』によれば、1995年の同書刊行時点で、ユダヤ人は過去30年間にノーベル科学賞・経済学賞を受賞したアメリカ人の約40%を占めた。また全米のトップクラスの知識人200人の約50%を占めた。またリプセットは、別の論文で1990年度における全米のトップ30の大学の教授陣の約30%をユダヤ人が占めていると書いているという。
 アメリカ人の知能の平均を100とすると、ユダヤ人の平均は115という測定結果が発表されている。理論物理学や数学の分野で卓越した業績を上げられるのは、知能指数が140以上の人間といわれるが、その水準の知能を持つ人間をユダヤ人はアメリカ人の平均の約6倍も輩出しているという調査結果もあるという。

●ユダヤ人が優秀である理由
 
 ユダヤ人は、なぜこれほど群を抜いて優秀なのだろうか。人類の歴史の七不思議の一つともいえるこの現象について、いろいろな説が出されている。
 佐藤唯行は、著書『日本人が知らないユダヤの秘密』で、それらの説を紹介している。
 第1は、環境説である。ユダヤ人は学問・文化の中心である都市に集住し、高い教育を享受できる豊かさを得た。また、長い間疎外されたことで、世に認められたいと願う自己顕示欲が、人一倍高まったという説明である。佐藤は、この説明には説得力があるが、彼らの驚異的な知的偉業達成率は、環境説だけでは説明困難だと見る。
 第2は、遺伝説である。血統的優秀さで説明しようとする説である。その中の一つに、迫害が激しかった時代には賢い者だけが生き残り、愚かな者は淘汰されたという淘汰説がある。佐藤は、淘汰説は説得力に乏しいとして反証を挙げる。ロマ族(ジプシー)はユダヤ人と同様に迫害され続けたが、ユダヤ人ほど知力を発揮させることはなかった。また、ユダヤ人の中でも商売で成功し富を蓄えた商人は賢いわけだが、そういう者ほど迫害の際には真っ先に標的とされ、殺される確率が高かった。
 第3は、社会説である。ユダヤ教社会では学者が尊敬され、子孫を残せたという説である。それによると、ユダヤ教社会では、財産を持つ無学な者よりも貧しいユダヤ教学者のほうが、結婚相手獲得をめぐる競争で勝利を収め、学者が子孫を増やせた。これに対し、カトリックの社会では最も賢い子は司祭となり生涯を独身で過ごし、子孫を残さなかったとする。佐藤はこの説も信憑性に乏しいとして、富裕なユダヤ商人が一文無しの学者を自分の娘婿にする事例は少なかったと指摘する。
 これらの環境説、遺伝説、社会説は、どれも説得力を欠く。佐藤は、これらに代わって近年有力視されてきた説として、職業選択説と学習中心説を挙げる。
 第4となる職業選択説とは、金融業・商業を通じて知力が磨かれたという説である。9~10世紀にユダヤ人が西欧・中欧へ定住するようになると、彼らの就ける仕事は、金融業・商業に法的に限定されていった。それらでの成功には、非ユダヤ人が従事する農業などに比べ、高い知力が必要だった。庶民が慢性的飢餓にさらされていた中世において、高収入の家庭は栄養状態がよく、幼児死亡率が低下する。その結果、高収入のユダヤ人は子孫を増やせたと説明するものである。
 第5の学習中心説とは、ユダヤ教が学習中心の宗教に変容したことが、ユダヤ人を優秀化したという説である。この説は、古代にさかのぼって説明を行う。紀元後1世紀、ローマ帝国の支配により、それまで神殿での祭儀中心の宗教だったユダヤ教が、教典学習中心の宗教へ変容した。そのことが、ユダヤ人の知力底上げの契機となったという説である。それによると、64年、パレスチナのユダヤ教指導者ジョシュア・ベン・ガマラは、すべてのユダヤ人男子は、6歳になったらユダヤ人学校で学ばなければならないという布告を全ユダヤ人に通達した。この布告は遵守され、2世紀を経ずしてユダヤ人男子は世界の諸民族の中で、例外的ともいえる識字・計算能力をほぼ100%の割合で身につけた。この布告の追い風となったのが、70年、ローマ軍によるエルサレムの神殿破壊である。神殿での祭儀が不可能となったことで、シナゴーグでの教典学習中心主義が、ユダヤ教の主流になったからである。教典学習は中級・上級のタルムードへ進むとかなりの知力が要求される。そのためユダヤ人の中で知力の乏しい者は、学習が苦痛となり次々と脱落し、ユダヤ教徒であることをやめてしまった。そのため、ローマ帝政初期に帝国総人口の7~8%を占め、約800万人もいたユダヤ人口は、1~6世紀の間に次々とその姿を消し、多くはキリスト教徒の農民になった。第4の職業選択説のいう都市での職業選択が始まる以前に、学習不適格者を抱え込まなくなったユダヤ教社会では、知力の底上げが完成していた。こうして優秀な人材だけがユダヤ人として残ったというのである。
 佐藤が紹介する職業選択説と学習中心説は矛盾するものではなく、古代ローマ時代以降の優秀化は学習中心説で説明され、西洋での中世以降における優秀化は職業選択悦で説明できる。これらの説を総合すると、教典学習中心の信仰で優秀化したユダヤ人は、金融業・商業を通じてさらに知力が磨かれたと考えられる。ただし、ユダヤ人が生活する社会環境が、彼らが豊かな文化に触れ、高い教育を受けることを可能にしたという要因もあるだろうし、優秀な親が子供を育てることを千年単位で繰り返すことで、世代を重ねて優秀化が進んだという要因もあるだろう。
 なぜユダヤ人が抜群の優秀性を示すのかという問いは、様々な角度からの総合的な考察を必要とするのである。

 次回に続く。

ユダヤ15~ユダヤ人の定義・系統

2017-02-21 09:43:46 | ユダヤ的価値観
 前回でユダヤ教に関する記述を終えた。今回からユダヤ人について書く。

(1)ユダヤ人

●定義
 
 ユダヤ人の定義はユダヤ教徒の定義と一部重複するが、あらためて書くと、ユダヤ人は身体的特徴を有する人種ではない。またユダヤ人には宗教的定義と民族的定義がある。前者は狭義、後者は広義の規定となる。
 狭義のユダヤ人は、宗教的定義によるものであり、ユダヤ教徒のことである。これに対し、広義のユダヤ人は、民族的定義によるものであり、ユダヤ民族のことである。キリスト教等の他宗教に改宗した者や、ユダヤ教を棄教し宗教を否定する無神論者・唯物論者等も含む。前者はイスラエルの法律の規定に基づくものであり、後者は、社会科学的なとらえ方である。歴史的・文化的な記述の場合は、主に後者による。

●人口

 ユダヤ人の人口は、2010年現在の数字によると、全世界に約1358万人である。うちイスラエルに570.4万人、アメリカ合衆国に527.5万いる。これら2国のユダヤ人を合わせると、世界のユダヤ人の約81%を占める。第3位はフランスの48.4万人、第4位はカナダの37.5万人、第5位はイギリスの29.2万人、第6位はロシアで20.5万人とされる。
 ユダヤ人は、人類の人口のわずか0.20%を占めるに過ぎない。だが、世界の歴史を通じても、また現代の世界においても、際立った存在感を示している。このような比較的少数の民族が、これほど人類の文明や運命に大きな影響を与えている例は、他にない。

●ユダヤ人の系統
 
 ユダヤ人には、三つの系統がある。
 イベリア半島系のセファルディム、中東・北アフリカ系のミズラヒム、中欧・東欧系のアシュケナジムである。
 セファルディムは、セファルディともいう。紀元前1世紀にスペインに移り住んだ者たちである。ヘブライ語でスペインを意味するセファルドに由来する。15世紀末にイベリア半島を追放され、オランダ等の北海低地帯、北アフリカ、パレスチナを含むイスラーム文明のオスマン帝国領に移住した。特にオスマン帝国領への流入が多かった。さらに東に向かった者たちは、バグダード、シンガポール、香港、上海へ向かった。セファルディムは、商人、医者、哲学者、王やキリスト教司祭のアドバイザー等として活躍した。スペイン語を基本にしたラディノ語を創って共通語としている。
 ミズラヒムは、ミズラヒともいう。ヘブライ語で東を意味する。セファルディムがさらに中東・北アフリカに拡散したもので、アラブ諸国、イラン、トルコ等のイスラーム教圏に居住した。東洋系ユダヤ人、オリエント系ユダヤ人とも言われる。主に移住地の言語を使用した。イスラエル建国後、居住国で迫害を受け、多数がイスラエルに亡命した。ミズラヒムをセファルディムに含むこともある。
 アシュケナジムは、アシュケナジともいう。ヘブライ語でドイツを意味する。9~10世紀に大挙して西欧・中欧へ移住した。14世紀以降、東欧へ居住地を拡大し、ロシアにも移住した。19世紀半ば以降は北米に進出した。律法(トーラー)とタルムードを中心とした生活を送る。行商人、農奴、下層労働者が多い。言語はドイツ語を基本としたイディッシュ語を創り出した。シオニズムを推進し、イスラエルの建国では中心勢力となった。
 これら三つの系統の人口比では、アシュケナジムが多数を占め、ついでミズラヒム、セファルディムの順となる。第2次世界大戦前はアシュケナジムがユダヤ人の人口全体の約9割を占めたが、ナチスによるいわゆるホロコーストでアシュケナジムが多数殺害されたため、比率が変わったとされる。ただし、イスラエルでは、セファルディムとミズラヒムを合わせた人口とアシュケナジムの数は拮抗しているといわれる。
 パレスチナにはセファルディムが先住していたが、イスラエルの建国後に移住したアシュケナジムが指導的役割を担っている。アシュケナジムは一般に教育・文化の水準が高く、政治支配者や各界のエリートが多い。セファルディムはミズラヒムとともに社会の下層にある。
 アシュケナジムはアメリカでも活躍しており、ウォール街を牛耳っているのも、主にその末裔である。

●アシュケナジムのハザール起源説
 
 アシュケナジムは、ユダヤ教に集団改宗したハザール人の末裔だとする説がある。代表的なのは、ユダヤ人ジャーナリストのアーサー・ケストラーが著書『第13支族』に書いたものである。
 ハザール人は、7~10世紀にカスピ海の北部からコーカサス地方、黒海沿いに栄えた遊牧民族である。9世紀に支配者層がユダヤ教に改宗し、一部の一般住民もそれに続いた。改宗は、周囲の二大勢力、イスラーム教のアッバース朝とキリスト教東方正教会の東ローマ帝国の双方に等距離の関係を図るための選択だったと考えられる。
 アシュケナジムがハザール系ユダヤ教徒の子孫だとする説を推し進めると、彼らはパレスチナ出身のユダヤ人の子孫ではなく、パレスチナに移住する権利を持っていないということになる。
 だが、ハザール起源説には大きな疑問がある。中世のラビ文学にハザール人に関する記述が全くない。また、ハザール人の言語はトルコ語が属するテュルク諸語の系統と考えられるが、アシュケナジムのイディッシュ語にはテュルク諸語との類縁関係が全くないとされる。今日では、歴史遺伝学の発達によって、ハザール起源説は完全に否定されている。父系祖先をたどるY染色体と母系祖先をたどるミトコンドリアDNAに含まれる特定遺伝子の変異を調べて、約1000人のアシュケナジムの系譜をたどった調査では、全員が14世紀ドイツのラインラント地方と東欧に居住していた1500家族にたどり着いた。また、中東から各地に離散したユダヤ人は、ヨーロッパでも北アフリカでも中東でも遺伝子レベルでは大きな違いがないことがわかっている。それぞれの地域で周囲の非ユダヤ人集団から相対的に隔離されてきた証であるとともに、アシュケナジムがセファルディム、ミズラヒムと同じ先祖を持つことの裏付けとなっている。

 次回に続く。

安倍首相がアーリントン墓地で献花

2017-02-20 07:17:02 | 国際関係
 安倍首相は、2月10日、日米首脳会談に先立ち、ワシントン郊外にあるアーリントン国立墓地を訪れ、無名戦士の墓に献花した。首相は19発の礼砲と儀仗兵に迎えられ、日米の国歌が演奏された後、花輪を手向け、黙祷をささげた。その際、米国の海兵隊・陸軍・海軍・空軍がそろって日本の国歌「君が代」を演奏した。献花の様子をCNNがフェイスブックにて生放送で伝えた。
https://www.youtube.com/watch?v=hee2LxWU3d4
 (註 画像では両国国歌演奏は割愛されている)

 CNNニュースのコメント欄に米国人から多くの感謝の声が寄せられた。その一部を転載する。

  「ありがとう日本! 私たちのヒーローに敬意を表してくれたことに感謝します!」「これこそ他国やその国民に対する敬意の表し方だよ! 日本の首相に大きな拍手を送りたい!」「なんて感動的な光景なんでしょう……」「素晴らしくポジティブな行動だと思う。日本の首相は優しいね」「去年アベ首相は真珠湾を訪れて、オバマ前大統領に会った。その時にアメリカに対する敬意がこもったスピーチをしてくれたけど、心からの想いを口にしてくれていたのを感じた」「俺たちは歴史的な瞬間の目撃者だ」「平和と敬意。そう、それが日本という国なんだ!」「本当に気高く、勇気ある、そして心の傷を癒す力を持つ行動だ」「ただただ美しい光景だった。日本の首相に心からの敬意を抱いたね俺は」「日本という俺たちの友人は、本当に高潔で立派だねぇ」「日本に敬意を! アメリカと日本で団結していこう!」等々

 安倍首相は、敵を敬い、仇を許す大調和の精神、日本精神を行動で表したものと思う。

 トランプ大統領が本年、来日する時には、安倍首相とともに靖国神社に参拝してほしいものである。ブッシュ子大統領が、平成14年2月に来日した時、靖国神社の参拝を希望した。大統領側は小泉首相と一緒に参拝することを打診したが、わが国の方でこれを断り、参拝場所を明治神宮に変更した。そのうえ、18日ブッシュ子大統領が明治神宮に参拝した際、同行した小泉首相はその間、車を出ず車中で待っていた。この時、もし日米首脳がともに靖国神社に参拝していたら、靖国問題は劇的な変化を遂げていただろう。
 安倍首相は、トランプ大統領を誘い、そろって参拝してほしい。その時、日米の絆は真にゆるぎないものになる。また中国・韓国による靖国神社参拝への非難を、静かに斥けることになる。

ユダヤ14~性愛と結婚、教育、労働

2017-02-19 08:49:37 | ユダヤ的価値観
●性愛と結婚

 ユダヤ教では、重要な戒律として、家族を形成するために結婚することが定められている。神の創造の御業を讃え、生命を肯定し、現世を志向し、子孫繁栄を願うからである。性衝動や性行為は自然なものとし、キリスト教におけるように必要悪とは考えない。夫婦の性行為はそれを歪めることが罪であるとされる。快楽を伴わない性交もまた罪とされる。祭司にも預言者にも、一般的な戒律としては性愛を禁止していない。戒律を最も厳格に守る正統派では、多産を神の御心にかなうことと考え、避妊を一切行わない。
 ユダヤ民族は各地に離散し、迫害を受けてきた。苛酷な運命のもとで民族が生き残るためにも、結婚・出産が重視されてきたのだろう。性愛と結婚に関する戒律は、個々の家族が存続することより、民族の存続を目指すものと考えられる。

●教育

 ユダヤ教は啓典宗教であり、文字を読む能力を必須とする。そのため、ユダヤ人は近代以前から世界の諸民族の中で識字率が例外的に高く、教育に力を入れ、知性を尊重してきた。教育こそが民族を守る手段と考え、熱心に子供に教育を授けてきた。他の民族では大衆のほとんどが文盲だった紀元前から、ユダヤ人共同体では授業料のない公立学校が存在していた。紀元後1世紀には、すべてのユダヤ人男子は6歳になったらユダヤ人学校で学ばなければならないという布告が全ユダヤ人に通達された。その結果、ユダヤ人男子は識字・計算能力をほぼ100%の割合で身につけることになった。
 知的能力の高さは、祖国を失ったディアスポラ(離散民)である彼らが、諸民族の間で生き続けるために必要だった。諸民族間の通訳や商業は、彼らが古代から得意とした仕事である。とりわけ金融に関する知識・技術は、西欧でユダヤ人が生き延びる術となり、彼らはそれを用いて社会的地位を高め、各国で政治的・経済的な影響力を振るうまでになった。
 家庭教育では、父親が先導して子供にタルムードなどを教える。子供を立派なユダヤ人に育てた者は、永遠の魂を得ると信じられている。ユダヤ教徒は非常に教育熱心で、子供をよい学校に行かせるためには借金をすることも当然と考える。
 ユダヤ人社会の家族形態である直系家族は、伝統的な社会が近代化し、さらに脱工業化社会になっても、親子の結びつきが強く、家族の団結が強い。それが子供の勉学には有利に働き、社会的職業的な上昇を促す。ユダヤ人が、アメリカ社会で、大学に多数進学しているのは、そのためである、とトッドは指摘している。

●労働
 
 ユダヤ教は、原罪によって、男には食べ物を得るための労働が課せられたとする。神はアダムに向かって「お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ」(『創世記』)と言ったという。だが、またこれをより積極的に、人間は創造主の代わりに労働をする存在として作られたとも考える。労働は天地万物を創造した神の行いのひとつであり、神聖な行為とされている。労働により得た賃金や成果は、その一部を創造主に捧げなければならない。
 安息日にすべての労働を休むのは、神の恵みの業を思い起こすためである。安息日には、その主旨のもとに多くのタブーがある。決められた歩数を超える歩行、傘をさすこと、金銭についての話、買い物、書くこと、料理などである。現代生活で言えば、通信機器・電化製品・カメラの使用、自動車・バイクの運転なども禁じられている。

●食事と飲酒

 食事には、細かい戒律がある。カシュルート(適正食品規定)に従って、不潔と定められた豚肉などの食用、肉とミルクの混食などが禁じられている。こうした規定は、選民の身分を守るための戒律とされる。
 飲酒は禁じられていない。ワインは喜びの象徴であり、祭礼のたびに飲まれる。
 安息日と祝祭日の食事は、家庭で行わなければならないとされている。

●暦

 ユダヤ教では、天地の創造を紀元前3761年10月7日とし、この日を紀元元年1月1日とする。
 ユダヤ暦は太陰暦で、新年は太陽暦の9~10月に始まる。現在もこの暦が使用されている。いわゆる西暦はイエス=キリストの出現を基準としたキリスト教暦である。イエスをメシアと認めないユダヤ教が、ユダヤ暦を捨ててキリスト教暦に替えることは、教義上あり得ない。西方キリスト教による近代西洋文明が普及した社会において生活・活動するため、便宜上、ユダヤ暦と西暦の併用が行われている。

 次回に続く。

フリン米大統領補佐官の辞任とロシア・コネクション

2017-02-17 09:32:07 | 国際関係
 2月14日マイケル・フリン米大統領補佐官が突然の辞任。フリンが担っていた国家安全保障担当の大統領補佐官は、米政府の安保政策の方針を決める国家安全保障会議(NSC)の事実上の司令塔といわれる。政権発足3週間余りで、重要側近の辞任は、トランプ政権にとって大きなダメージとなる。

 フリンは、まだ政権が発足しておらず、一民間人だった昨年末、駐米ロシア大使と外交問題に関する政策を何度か協議したとのこと。米国では建国直後から民間人が外交活動を行うことは法律で禁止されている。バレれば罪に問われるというリスクをおかしてでもロシア大使と対露制裁について協議(解除か緩和のはず)したということは、よほど緊急の必要があったのだろう。

 昨年12月29日、オバマ大統領はロシアの選挙戦へのサイバー攻撃に怒って、駐米ロシア外交官35人を国外退去処分にした。その同じ日に、フリンは駐米ロシア大使に電話して、新政権が制裁を解除する方針を伝えたもの。当時のオバマ政権に対しては、反政府的な行動になる。この時、プーチンはオバマによる外交官追放処分に対抗せず、鷹揚に構えた。外交の常識から言っても、プーチンの行動パターンから見ても、通常考えられない態度だった。そうしたプーチンをトランプは、頭がいいと絶賛した。その背後に、フリンとロシア大使のやりとりがあったわけである。

 FBIは、フリンがロシア大使に電話した交信記録を証拠として持っているという。ロシア大使の動きは、米国の担当官が何人もついて常時監視している。その中で記録の残る手段で連絡したフリンは、如何に緊急の必要性があったとしても、情報のプロとしてあるまじき愚行をした。トランプがロシアに極めて不利な情報(破廉恥行為等)を握られているため、ロシアとの取引によほど焦っていたのではないかと推察される。

 フリンは、軍で30年以上、情報畑を中心に活躍した。個人的にプーチン露大統領と親しく、何度もロシアに行ってプーチンと食事をしたり、講演をして講演料をもらっていたりしたとのこと。2015年には、国営テレビの晩さん会に費用向こう持ちで参加し、会の間中、プーチンの隣に坐っていたと報じられる。こういう人物が選挙戦でトランプ陣営の主要スタッフとして活動し、その後、大統領補佐官に就任。ロシアとの関係改善に異常に積極的なトランプに、親ロシアのフリンが着いているわけだから、対ロシア強硬派の共和党主流派や諜報機関幹部にとっては、フリンは国の進路を誤らせる危険な存在だったことだろう。

 フリンが早期に辞任したのは、疑惑がトランプ大統領や他の側近等に及ばないようにしたのではないか。トランプ側については、選挙期間中、ロシアから金銭を受け取っていたのではないか、政権のスタッフに今も金銭をもらっている者がいるのではないかと、当局が捜査しているとの情報がある。フリンの辞任だけで収まるかどうか。さらに問題が拡大する可能性をはらんでいる。
 トランプ大統領及び側近・閣僚のロシア・コネクションは、政権の正統性を疑わせるだけでなく、米国の独立主権国家としてのあり方を根底から揺るがす恐れがある。

 フリンの辞任は、安倍=トランプ首脳会談の後だった。これは、日本にとってはタイミングが良かったと思う。これが首脳会談の前だったら、何らかの影響が出ただろう。安倍首相にとって、ひいては我が国にとって、運気の流れがよい方に向いていると感じる。

ユダヤ13~道徳的・経済的生活と家族形態

2017-02-16 09:38:58 | ユダヤ的価値観
(5)生活

●道徳的生活

 ユダヤ教は、信徒に律法・戒律を守る道徳的な生活を課す。紀元前9世紀ころから約400年続いた預言者時代に倫理的応報主義が確立し、その伝統が受け継がれている。
 ユダヤ教は、来世志向ではなく、また呪術を否定する。そのため、ユダヤ人の知恵は、現世における道徳的な実践に向けられた。そして、人間社会において正しく身を処するための方法が説かれた。
 それがよく表れているものの一つが、聖書の『箴言』である。『箴言』の作者は、紀元前10世紀の深い知恵を持つ王ソロモンに帰せられる。主な内容は、夫婦、親子、富者と貧者、主人と従僕などの人間関係に関する道徳的教訓である。特に繰り返されているのは、酒とみだらな女に対する注意や、平静と沈黙の勧めなどの教訓である。
 『箴言』に盛られたような知恵(ホクマー)は、律法に準じて神聖視される道徳的訓戒となっている。

●営利追求の肯定

 ユダヤ教は、営利欲求を肯定する。ポール・ジョンソンは、著書『ユダヤ人の歴史』に次のように書いている。「ユダヤ教は宗教心と経済的繁栄を切り離さない。貧しい者を讃え、強欲を戒める一方、実生活のためになるものと倫理的価値が切っても切れない関係にあることを示している」。ユダヤ教では、「正しく執り行われた商売は厳格な倫理に完全に即しているばかりか、徳の高い行いだと考えた」と。
 古代メソポタミア文明のバビロニア王国では、「ハンムラビ法典」に貸し付けの利子率が定められていた。ヒッタイト人、フェニキア人、エジプト人の間でも、利子は合法的だった。ユダヤ人は、こうした古代西アジアの諸文明の経済文化の影響を受けた。
 『申命記』に、「外国人には利子を付けて貸してもよいが、同胞には利子を付けて貸してはならない。」(23章21節)と定めている。また「外国人からは取り立ててもよいが、同胞である場合は負債を免除しなければならない。」(15章3節)としている。外国人からは利子を取ったり、取り立てをしたりしてよいという教えである。またユダヤ民族について、「あなたに告げたとおり、あなたの神、主はあなたを祝福されるから、多くの国民に貸すようになるが、借りることはないであろう。多くの国民を支配するようになるが、支配されることはないであろう。」(15章6節)とも書かれている。富の力による他民族への支配が予言されている。そして、タルムードには、「義人の目に麗しく、世間の目に麗しいものが七つある。その一つは富である」と記され、富は美徳とされている。
 仏教の開祖である釈迦やキリスト教の開祖イエスは、現世的な欲望を否定し清貧であることをよしとしたが、ユダヤ教は富を良いものとし、営利欲求を抑制して歯止めをかける教えを持たなかった。ユダヤ教の営利欲求を肯定する教えは、ユダヤ的価値観の根本にあるものの一つである。この価値観は、近代西欧の資本主義と結びついて発展し、キリスト教社会へ、さらに非ユダヤ=キリスト教社会へと広まって、今日に至っている。

●家族型の影響
 
 ユダヤ人の家族形態は、直系家族である。直系家族はヨーロッパでは広く見られ、ヨーロッパ以外ではユダヤの他、日本と朝鮮が直系家族である。直系家族は、子供のうち一人のみを跡取りとし、結婚後も親の家に同居させ、遺産を相続させる型である。その一人は年長の男子が多い。他の子供は遺産相続から排除され、成年に達すると家を出なければならない。こうした婚姻と相続の慣習によって、父子関係は権威主義的であり、兄弟関係は不平等主義的である。この型が生み出す基本的価値は、権威と不平等である。
 ユダヤ人の家族人類学者・歴史人口学者であるエマヌエル・トッドは、家族型における父性の権威の強弱と、ユダヤ=キリスト教における神のイメージには相関性があることを指摘する。権威の強い父からは厳格な神がイメージされ、全能の神のもとで人間の自由意思は否定される。直系家族を母体としたユダヤ教やルター・カルヴァン的なプロテスタントがこれであるとする。逆に権威の弱い父からは寛容な神がイメージされ、非全能の神のもとで人間の自由意思が肯定される。絶対核家族を母体としたアングロ・サクソン的なプロテスタントがこれであるとする。私は、ユダヤ教は単純に自由意思を否定していないと考えるので、その点には異論がある。
 また、トッドによると、直系家族は権威と不平等の価値から、人間は本質的に違うという差異主義の価値観を示す。それが他民族への態度の根底にある。加えて、私見によれば、直系家族は、絶対核家族や平等主義核家族と違って、個人主義的ではなく集団主義的である。個人の自由や権利より、集団の維持や繁栄を重視する。
 次に、ユダヤ社会の通婚制度は、族内婚である。族内婚は、配偶者を自己の所属する集団の内部で得る制度である。族内婚型直系家族は閉鎖的だが、族外婚型直系家族よりも温和な差異主義を示す。兄弟を不平等としながら、族内婚であることによって、兄弟関係に温かさを持つ。民族内における集団間の関係についての見方は穏和である。
 トッドは、直系家族を「父系への屈折を伴う双系制」と定義し、ユダヤ人社会は、父方・母方の親族に平等に重要性を与える双系制だとする。遺産相続は女性を対象から除外しており、この点は父系的だが、ユダヤ人はユダヤ人の母親から生まれた者をユダヤ人とするので、この点では母系的である。そのため、女性の地位はある程度高い。
 ユダヤ人社会の持つ直系家族・族内婚・双系制という要素が、ユダヤ教に影響を与えていると考えらえる。その限りで、ユダヤ教は直系家族の価値観に基づく権威主義的で差異主義的、また集団主義的な宗教である。
 ただし、こうした家族形態だけで、ユダヤ教の特徴が決まるわけではない。一個の宗教としての独自の人間観・世界観・実在観が形成されたのは、主体と環境の相互作用の中でなされた、と考えるべきだからである。ここで主体とは集団的主体であり、家族形態はその集団の構成に関わるものである。そうした主体が生きる環境には、自然環境と社会環境がある。ユダヤ教は、砂漠に発生した宗教としてその自然環境の影響を深く受けている。また、周辺諸民族から侵攻され、征服・支配されやすいという社会環境の影響も大きい。こうした自然及び社会の環境との相互作用の中で、家族形態に基づく価値観が反映する仕方で、ユダヤ教の人間観・世界観・実在観が形成された、と私は考える。

 次回に続く。