30日、最高裁は卒業式での国歌斉唱時の起立命令を合憲とする判断を示した。平成19年2月、国歌伴奏を命じた職務命令を合憲と判断したのに続いて、日本の司法の良識を表したものと思う。
これまで入学式や卒業式の国旗掲揚や国歌斉唱を巡って、起立や斉唱、ピアノ伴奏を拒否するなどして職務命令に違反して処分された教職員が、多数いる。その多くが各地の教育委員会を相手取り、訴訟を起こしてきた。公立学校の教職員は、教育公務員である。公務員は、法律を遵守し、職務命令に従う義務がある。公務員である以上、それに従わなければ、懲戒処分を受ける場合がある。その点が、公務員は民間人とは違う。どうしてもいやなら、公務員を辞めればよい。また、公務員を養っている納税者であり、子弟を公立学校に通わせてきた者としては、そんな公務員は要らないのである。
大阪府の橋下徹知事が代表を務める「大阪維新の会」の府議団は、府施設での国旗の常時掲揚と、府内公立学校の教職員に学校行事での国歌斉唱時に起立を義務づける条例の成立を目指している。私はこの動きを支持するともに、他の都道府県でもこれに呼応した積極的な動きを期待する。
関連する報道記事を掲載する。
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●産経新聞 平成23年5月30日
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110530/trl11053017440005-n1.htm
「国際常識を身につけるため、国旗、国歌に敬意を」 国歌斉唱時の起立命令は合憲 最高裁が初判断
2011.5.30 17:42
卒業式の国歌斉唱で起立しなかったことを理由に、退職後に嘱託教員として雇用しなかったのは違法として、東京都立高の元教諭が都に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(須藤正彦裁判長)は30日、起立を命じた校長の職務命令を合憲と判断し、元教諭側の上告を棄却した。都に賠償を命じた1審判決を取り消し、元教諭側の逆転敗訴となった2審判決が確定した。
最高裁は平成19年2月、国歌伴奏を命じた職務命令を合憲と初判断したが、国歌斉唱の起立命令に対する合憲判断は初めて。
1、2審判決などによると、元教諭は16年3月の都立高の卒業式で起立せず、東京都教育委員会から戒告処分を受けた。19年3月の退職前に再雇用を求めたが、不合格とされた。
同小法廷は判決理由で、卒業式などでの国歌斉唱の起立は「慣例上の儀礼的な所作」と定義。起立を命じた職務命令について「個人の歴史観や世界観を否定しない。特定の思想の強制や禁止、告白の強要ともいえず、思想、良心を直ちに制約するものとは認められない」と指摘した。
その上で、「『日の丸』や『君が代』が戦前の軍国主義との関係で一定の役割を果たしたとする教育上の信念を持つ者にとっては、思想、良心の自由が間接的に制約される面はあるが、教育上の行事にふさわしい秩序を確保するためには合理的だ」との判断を示した。
判決は4人の裁判官の全員一致の意見で、うち3人が補足意見を付けた。竹内行夫裁判官は「他国の国旗、国歌に対して敬意をもって接するという国際常識を身に付けるためにも、まず自分の国の国旗、国歌に対する敬意が必要」とした。
1審東京地裁判決は21年1月、職務命令の違憲性を否定したが、「起立しなかったのは1回だけで不採用は裁量権の乱用にあたる」として都に約210万円の賠償を命じた。2審東京高裁は同年10月、職務命令の合憲性を認め、命令がある以上、元教諭は従う職務上の義務があるとして、1審判決を取り消し、逆転判決を言い渡した。
●産経新聞 平成23年5月25日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110525/edc11052520180003-n1.htm
国旗国歌条例案を議長に提出 学校行事での国歌斉唱時の起立を義務付け
2011.5.25 20:14
大阪府の橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」(維新)の府議団は25日、府施設での国旗の常時掲揚と、府立学校や府内の市町村立学校の教職員に対し、学校行事での国歌斉唱時に起立を義務づける条例案をまとめ、議長に提出した。27日に開会中の5月府議会に提案する予定。維新は府議会で過半数を占めており、単独でも可決することができる。
条例案は4条で構成。目的に「府民、とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重する態度を養うこと」と、府立学校と府内の市町村立学校での「服務規律の厳格化」を掲げた。国旗は執務時間中、施設利用者に見やすい場所に常時掲げるよう定め、国歌斉唱では「教職員は起立により斉唱を行うものとする」と義務づけた。
条例案に罰則はないが、橋下知事は、職務命令に従わない教職員らの処分基準を定めた条例案を9月議会で提案する方針を表明。また、処分とは別に実名や所属学校名の公表も検討する考えを示している。
●産経新聞 平成23年5月31日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110531/lcl11053108210001-n1.htm
橋下知事「きちっとした判断だが条例も必要」 国歌起立で最高裁合憲判断
2011.5.31 08:19
卒業式での国歌斉唱時の起立命令を合憲とした30日の最高裁判決。国歌斉唱時に、教員に起立を義務付ける条例案を大阪府議会に提出した地域政党「大阪維新の会」(維新)の代表を務める橋下徹知事は、記者団に「入学式や卒業式で起立を求めるのは憲法違反にあたらないというきちっとした判断を最高裁が出した」と評価した。
■思想の自由に影響せぬ仕組み、考える
その一方で「判決が出たことで条例までは必要ないのではという有権者に対し、維新は条例の必要性を丁寧に説明しなければならない」と述べ、「先生は起立斉唱以外の命令に対しても組織として動くべきで、条例は必要だ」と持論を展開した。
橋下知事は、職務命令に繰り返し応じない教員ら職員の処分ルールを定めた条例案を、9月議会で提出する方針だが、今回の判決が職務命令について「思想、良心の自由が間接的に制約される面はある」と指摘したことについて、「そこは重い。思想、良心の自由に影響を及ぼさないような仕組みをしっかり考えたい」とも述べた。
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平成11年に施行された国旗国歌法は、国旗は「日の丸」、国歌は「君が代」とし、国旗は寸法と日章の位置、彩色、国歌は、歌詞と楽曲を定めている。これは最低限のことを定めたものにすぎない。これで十分な規定とはいえない。
というのは、同法には、第一に、国旗・国歌についての尊重規定がない。「国旗・国歌は尊重されなければならない」等が定められていない。第二に学校教育、公的機関等で国旗掲揚・国歌斉唱の実施を義務とする義務規定がない。第三に、刑罰規定がない。刑法には外国国旗破損罪のみ定められており、自国の国を破損等した場合については、何も定められていない。諸外国には、国旗侮辱罪を定めている国もある。
このように、現行の国旗国歌法は、中途半端な内容のものである。今後、国旗・国歌の重要性について、国民の意識を高め、尊重規定・義務規定・刑罰規定を定めていく必要がある。
関連掲示
・拙稿「君が代伴奏命令は合憲に」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20070302
・マイサイトの「君が代」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/j-mind04.htm
これまで入学式や卒業式の国旗掲揚や国歌斉唱を巡って、起立や斉唱、ピアノ伴奏を拒否するなどして職務命令に違反して処分された教職員が、多数いる。その多くが各地の教育委員会を相手取り、訴訟を起こしてきた。公立学校の教職員は、教育公務員である。公務員は、法律を遵守し、職務命令に従う義務がある。公務員である以上、それに従わなければ、懲戒処分を受ける場合がある。その点が、公務員は民間人とは違う。どうしてもいやなら、公務員を辞めればよい。また、公務員を養っている納税者であり、子弟を公立学校に通わせてきた者としては、そんな公務員は要らないのである。
大阪府の橋下徹知事が代表を務める「大阪維新の会」の府議団は、府施設での国旗の常時掲揚と、府内公立学校の教職員に学校行事での国歌斉唱時に起立を義務づける条例の成立を目指している。私はこの動きを支持するともに、他の都道府県でもこれに呼応した積極的な動きを期待する。
関連する報道記事を掲載する。
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●産経新聞 平成23年5月30日
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110530/trl11053017440005-n1.htm
「国際常識を身につけるため、国旗、国歌に敬意を」 国歌斉唱時の起立命令は合憲 最高裁が初判断
2011.5.30 17:42
卒業式の国歌斉唱で起立しなかったことを理由に、退職後に嘱託教員として雇用しなかったのは違法として、東京都立高の元教諭が都に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(須藤正彦裁判長)は30日、起立を命じた校長の職務命令を合憲と判断し、元教諭側の上告を棄却した。都に賠償を命じた1審判決を取り消し、元教諭側の逆転敗訴となった2審判決が確定した。
最高裁は平成19年2月、国歌伴奏を命じた職務命令を合憲と初判断したが、国歌斉唱の起立命令に対する合憲判断は初めて。
1、2審判決などによると、元教諭は16年3月の都立高の卒業式で起立せず、東京都教育委員会から戒告処分を受けた。19年3月の退職前に再雇用を求めたが、不合格とされた。
同小法廷は判決理由で、卒業式などでの国歌斉唱の起立は「慣例上の儀礼的な所作」と定義。起立を命じた職務命令について「個人の歴史観や世界観を否定しない。特定の思想の強制や禁止、告白の強要ともいえず、思想、良心を直ちに制約するものとは認められない」と指摘した。
その上で、「『日の丸』や『君が代』が戦前の軍国主義との関係で一定の役割を果たしたとする教育上の信念を持つ者にとっては、思想、良心の自由が間接的に制約される面はあるが、教育上の行事にふさわしい秩序を確保するためには合理的だ」との判断を示した。
判決は4人の裁判官の全員一致の意見で、うち3人が補足意見を付けた。竹内行夫裁判官は「他国の国旗、国歌に対して敬意をもって接するという国際常識を身に付けるためにも、まず自分の国の国旗、国歌に対する敬意が必要」とした。
1審東京地裁判決は21年1月、職務命令の違憲性を否定したが、「起立しなかったのは1回だけで不採用は裁量権の乱用にあたる」として都に約210万円の賠償を命じた。2審東京高裁は同年10月、職務命令の合憲性を認め、命令がある以上、元教諭は従う職務上の義務があるとして、1審判決を取り消し、逆転判決を言い渡した。
●産経新聞 平成23年5月25日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110525/edc11052520180003-n1.htm
国旗国歌条例案を議長に提出 学校行事での国歌斉唱時の起立を義務付け
2011.5.25 20:14
大阪府の橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」(維新)の府議団は25日、府施設での国旗の常時掲揚と、府立学校や府内の市町村立学校の教職員に対し、学校行事での国歌斉唱時に起立を義務づける条例案をまとめ、議長に提出した。27日に開会中の5月府議会に提案する予定。維新は府議会で過半数を占めており、単独でも可決することができる。
条例案は4条で構成。目的に「府民、とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重する態度を養うこと」と、府立学校と府内の市町村立学校での「服務規律の厳格化」を掲げた。国旗は執務時間中、施設利用者に見やすい場所に常時掲げるよう定め、国歌斉唱では「教職員は起立により斉唱を行うものとする」と義務づけた。
条例案に罰則はないが、橋下知事は、職務命令に従わない教職員らの処分基準を定めた条例案を9月議会で提案する方針を表明。また、処分とは別に実名や所属学校名の公表も検討する考えを示している。
●産経新聞 平成23年5月31日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110531/lcl11053108210001-n1.htm
橋下知事「きちっとした判断だが条例も必要」 国歌起立で最高裁合憲判断
2011.5.31 08:19
卒業式での国歌斉唱時の起立命令を合憲とした30日の最高裁判決。国歌斉唱時に、教員に起立を義務付ける条例案を大阪府議会に提出した地域政党「大阪維新の会」(維新)の代表を務める橋下徹知事は、記者団に「入学式や卒業式で起立を求めるのは憲法違反にあたらないというきちっとした判断を最高裁が出した」と評価した。
■思想の自由に影響せぬ仕組み、考える
その一方で「判決が出たことで条例までは必要ないのではという有権者に対し、維新は条例の必要性を丁寧に説明しなければならない」と述べ、「先生は起立斉唱以外の命令に対しても組織として動くべきで、条例は必要だ」と持論を展開した。
橋下知事は、職務命令に繰り返し応じない教員ら職員の処分ルールを定めた条例案を、9月議会で提出する方針だが、今回の判決が職務命令について「思想、良心の自由が間接的に制約される面はある」と指摘したことについて、「そこは重い。思想、良心の自由に影響を及ぼさないような仕組みをしっかり考えたい」とも述べた。
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平成11年に施行された国旗国歌法は、国旗は「日の丸」、国歌は「君が代」とし、国旗は寸法と日章の位置、彩色、国歌は、歌詞と楽曲を定めている。これは最低限のことを定めたものにすぎない。これで十分な規定とはいえない。
というのは、同法には、第一に、国旗・国歌についての尊重規定がない。「国旗・国歌は尊重されなければならない」等が定められていない。第二に学校教育、公的機関等で国旗掲揚・国歌斉唱の実施を義務とする義務規定がない。第三に、刑罰規定がない。刑法には外国国旗破損罪のみ定められており、自国の国を破損等した場合については、何も定められていない。諸外国には、国旗侮辱罪を定めている国もある。
このように、現行の国旗国歌法は、中途半端な内容のものである。今後、国旗・国歌の重要性について、国民の意識を高め、尊重規定・義務規定・刑罰規定を定めていく必要がある。
関連掲示
・拙稿「君が代伴奏命令は合憲に」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20070302
・マイサイトの「君が代」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/j-mind04.htm