政府は今月27日に経済財政運営の指針「骨太方針」の閣議決定を目指している。その方針案に、中長期の課題として人口減問題に対応するため「50年後に1億人程度の安定した人口を保持する」と初めて数値目標が明記された。
方針案は、平成32年をめどに「人口急減・超高齢化」への流れを変えると強調し、少子化に対応するため子どもを生み育てる環境を整え、第3子以降への重点的な支援を行うなど「これまでの延長線上にない」少子化対策を検討課題とする。少子化対策への予算配分を「大胆に拡充」するとしているほか、女性の活躍促進、出産や育児の両立などを目指すとしている。
これは政府の経済財政諮問会議の専門調査会の提案に基づくもので、同調査会は、日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通しを示した。50年後に人口1億人を維持するには、2030年までに合計特殊出生率を現在の1.3~1.4程度から人口維持が可能な2.07まで回復させ、安定させる必要があると指摘している。2030年までに2・07に回復することを想定している。
私は、平成18年(2006)に書いた拙稿「少子化・高齢化・人口減少の日本を建て直そう」で、人口目標1億人という政策案を紹介した。これは、北海道大学大学院教授の金子勇氏が提案しているものである。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion02g.htm
金子氏は、従来の政府の少子化対策を次のように批判する。「現今の少子化対策は、最終的な少子化阻止という具体的目標が不鮮明であり、同時に社会全体における世代内・世代間の協力方法が鮮明には描かれていない」。つまり、目標とその達成方法がともにあいまいだというのである。そして、「少子化・高齢化・人口減少という三位一体の人口変化が進む社会すなわち『少子化する高齢社会』を『適正人口社会』に質的に転換する」ことを、大方針として提示する。そして国家全体の目標値として、2040年における人口1億人を「適正人口」と位置づけ、「適正人口1億人」を実現すべき目標とする。「適正人口社会」を目指すために、金子氏は、少子化ではなく「増子化」を唱え、2035年に「合計特殊出生率1.80」を達成することを目標とした増子化を展望したいと述べている。
私は、金子氏の提案に賛同し、先の拙稿で少子化の原因、従来の政府の政策の欠陥、脱少子化に必要な考え方と具体的方策について書いた。
今回の政府の「骨太方針」が少子化の原因をどうとらえ、従来の政策をどう反省し、どういう考え方に立って、どういう方策を打ち出そうとしているのか、まだよくわからないが、最も重要なのは、社会のあり方についての根本的な考え方である。
脱少子化のためには、未婚率の低下と既婚者の出生率の上昇を達成しなければならない。未婚率を下げるには、結婚する人が増えなければならない。未婚者の結婚への意欲を高め、また結婚したいという希望を実現しやすくすることだろう。また既婚者の出生力が上がるには、既婚女性にもっと子供を産むようになってもらわなければならない。仕事中心の生活の人が、子供を生み育て、家庭で保育できるような条件を整えること。専業主婦が、もっと子供を多く産み育てやすい環境を提供することだろう。
これらを進めるには、生命に基づいたものの考え方、生き方を取り戻すことが、根本的に必要である。そういう考え方、生き方の実践をするには、家族を重視し、家庭の機能を回復・強化する方策が求められる。その方策の実行のために、憲法に家族条項を盛り、教育基本法を再改正し家庭教育・幼児教育を盛る。そのうえで、家庭の機能の回復・強化による脱少子化方策を実行することが必要である。
また、人口1億人を維持する方針は、脱少子化によって日本人の増加を図るものでなければならない。少子化対策に移民の大量受け入れを組み合わせるようなものであってはならない。移民問題については、平成24年(2012)の拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」に詳しく書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09i.htm
労働生産人口を確保するために移民を1000万人受け入れるという提案があるが、諸外国の失敗に学び、その道は絶対取ってはならない。特にわが国の場合、流入する外国人の大多数は、共産党支配下の中国人となることをよく認識する必要がある。
日本人は、民族の自滅となる移民大量受け入れ政策ではなく、家族の回復による脱少子化を進めて日本の人口を維持する道を進まねばならない。安倍政権には、人口問題で「国家百年の計」ならぬ「国家50年の計」を誤らぬようしっかり検討を行ってもらいたいものである。
以下は関連する報道記事。
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●産経新聞 平成26年6月9日
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140609/fnc14060921210014-n1.htm
骨太方針骨子案 人口減克服「1億人目標」少子化対策 大胆に拡充
2014.6.9 21:21
政府は9日、経済財政諮問会議を開き、27日の閣議決定を目指す経済財政運営の指針「骨太方針」の骨子案を示した。中長期の課題として人口減問題に対応するため「50年後に1億人程度の安定した人口を保持する」と初めて明記。少子化対策への予算配分を「大胆に拡充」するとした。
安倍晋三首相は同日、「人口急減、超高齢化への流れを変えるため、従来の枠組みにとらわれない抜本的な取り組みにより、継ぎ目ない支援を行っていくことが重要」として、具体化を急ぐよう指示した。
骨子案では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の進展で日本経済の現状は力強さがあると分析。デフレから脱却しつつある日本経済の今後の課題として、人口減への対応のほか、消費税率引き上げ後の反動減への対応、経済の好循環の拡大、経済再生と財政健全化の両立を挙げた。
人口減については、平成32年をめどに「人口急減・超高齢化」への流れを変えると強調。第3子以降への重点的な支援を行うなど「これまでの延長線上にない」少子化対策を検討課題とした。さらに、女性の活躍促進、出産や育児の両立などを目指すとした。
増税後の反動減への対応では「回復過程を注視し、引き続き『三本の矢』を一体的に推進する」とした。
経済の好循環を拡大させるための施策としては、医療や農業の成長産業化、規制改革の推進などを盛り込んだ。安価かつ安定的なエネルギーの確保のため、原子力規制委員会が安全と判断した原子力発電所の再稼働も求めた。
財政健全化では、国と地方の基礎的財政収支の赤字額を27年度に国内総生産(GDP)比で22年度から半減、32年度に黒字化する目標は堅持する。
個別分野では、医療費や生活保護の見直しなどの社会保障改革や社会資本整備における公共事業の優先順位を明確化することも求めた。
●産経新聞 平成26年5月13日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140513/plc14051312320010-n1.htm
日本の人口、50年後も1億人維持へ 政府が初の数値目標、経済財政諮問会議に提出
2014.5.13 12:32
政府の経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会は13日、日本経済の持続的な成長に向けた課題をまとめた中間整理案を公表した。少子化に対応するため子どもを生み育てる環境を整え、50年後に人口1億人程度の維持を目指すとの目標を盛り込んだ。
政府が人口に関して明確な数値目標を打ち出すのは初めて。
甘利明経済再生相は会議で、「日本発の新しい成長発展モデルを構築することが可能であるというメッセージを打ち出した」と強調した。中間整理案の内容は、近く行われる諮問会議に提出し、6月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させる。
中間整理案では、日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通しを示した。50年後に人口1億人を維持するには、2030年までに出生率が現在の1.3~1.4程度から人口維持が可能な2.07まで回復させ、安定させる必要があると指摘。「これまでの延長線上にない少子化対策が必要」と強調した。
また、当面は人口減少が続くことで、国民生活の悪化を避けるため「経済活動の担い手となる人口をある程度の規模で保持することが必要だ」とも指摘。女性や高齢者の労働力としての活用が必要として、高齢者の身体能力が過去10年あまりで若返っていることをふまえ、生産年齢人口を15歳以上65歳未満から、70歳未満と見直すことも選択肢としてあげた。
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関連掲示
・拙稿「少子化・高齢化・人口減少の日本を建て直そう」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion02g.htm
・拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09i.htm
方針案は、平成32年をめどに「人口急減・超高齢化」への流れを変えると強調し、少子化に対応するため子どもを生み育てる環境を整え、第3子以降への重点的な支援を行うなど「これまでの延長線上にない」少子化対策を検討課題とする。少子化対策への予算配分を「大胆に拡充」するとしているほか、女性の活躍促進、出産や育児の両立などを目指すとしている。
これは政府の経済財政諮問会議の専門調査会の提案に基づくもので、同調査会は、日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通しを示した。50年後に人口1億人を維持するには、2030年までに合計特殊出生率を現在の1.3~1.4程度から人口維持が可能な2.07まで回復させ、安定させる必要があると指摘している。2030年までに2・07に回復することを想定している。
私は、平成18年(2006)に書いた拙稿「少子化・高齢化・人口減少の日本を建て直そう」で、人口目標1億人という政策案を紹介した。これは、北海道大学大学院教授の金子勇氏が提案しているものである。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion02g.htm
金子氏は、従来の政府の少子化対策を次のように批判する。「現今の少子化対策は、最終的な少子化阻止という具体的目標が不鮮明であり、同時に社会全体における世代内・世代間の協力方法が鮮明には描かれていない」。つまり、目標とその達成方法がともにあいまいだというのである。そして、「少子化・高齢化・人口減少という三位一体の人口変化が進む社会すなわち『少子化する高齢社会』を『適正人口社会』に質的に転換する」ことを、大方針として提示する。そして国家全体の目標値として、2040年における人口1億人を「適正人口」と位置づけ、「適正人口1億人」を実現すべき目標とする。「適正人口社会」を目指すために、金子氏は、少子化ではなく「増子化」を唱え、2035年に「合計特殊出生率1.80」を達成することを目標とした増子化を展望したいと述べている。
私は、金子氏の提案に賛同し、先の拙稿で少子化の原因、従来の政府の政策の欠陥、脱少子化に必要な考え方と具体的方策について書いた。
今回の政府の「骨太方針」が少子化の原因をどうとらえ、従来の政策をどう反省し、どういう考え方に立って、どういう方策を打ち出そうとしているのか、まだよくわからないが、最も重要なのは、社会のあり方についての根本的な考え方である。
脱少子化のためには、未婚率の低下と既婚者の出生率の上昇を達成しなければならない。未婚率を下げるには、結婚する人が増えなければならない。未婚者の結婚への意欲を高め、また結婚したいという希望を実現しやすくすることだろう。また既婚者の出生力が上がるには、既婚女性にもっと子供を産むようになってもらわなければならない。仕事中心の生活の人が、子供を生み育て、家庭で保育できるような条件を整えること。専業主婦が、もっと子供を多く産み育てやすい環境を提供することだろう。
これらを進めるには、生命に基づいたものの考え方、生き方を取り戻すことが、根本的に必要である。そういう考え方、生き方の実践をするには、家族を重視し、家庭の機能を回復・強化する方策が求められる。その方策の実行のために、憲法に家族条項を盛り、教育基本法を再改正し家庭教育・幼児教育を盛る。そのうえで、家庭の機能の回復・強化による脱少子化方策を実行することが必要である。
また、人口1億人を維持する方針は、脱少子化によって日本人の増加を図るものでなければならない。少子化対策に移民の大量受け入れを組み合わせるようなものであってはならない。移民問題については、平成24年(2012)の拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」に詳しく書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09i.htm
労働生産人口を確保するために移民を1000万人受け入れるという提案があるが、諸外国の失敗に学び、その道は絶対取ってはならない。特にわが国の場合、流入する外国人の大多数は、共産党支配下の中国人となることをよく認識する必要がある。
日本人は、民族の自滅となる移民大量受け入れ政策ではなく、家族の回復による脱少子化を進めて日本の人口を維持する道を進まねばならない。安倍政権には、人口問題で「国家百年の計」ならぬ「国家50年の計」を誤らぬようしっかり検討を行ってもらいたいものである。
以下は関連する報道記事。
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●産経新聞 平成26年6月9日
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140609/fnc14060921210014-n1.htm
骨太方針骨子案 人口減克服「1億人目標」少子化対策 大胆に拡充
2014.6.9 21:21
政府は9日、経済財政諮問会議を開き、27日の閣議決定を目指す経済財政運営の指針「骨太方針」の骨子案を示した。中長期の課題として人口減問題に対応するため「50年後に1億人程度の安定した人口を保持する」と初めて明記。少子化対策への予算配分を「大胆に拡充」するとした。
安倍晋三首相は同日、「人口急減、超高齢化への流れを変えるため、従来の枠組みにとらわれない抜本的な取り組みにより、継ぎ目ない支援を行っていくことが重要」として、具体化を急ぐよう指示した。
骨子案では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の進展で日本経済の現状は力強さがあると分析。デフレから脱却しつつある日本経済の今後の課題として、人口減への対応のほか、消費税率引き上げ後の反動減への対応、経済の好循環の拡大、経済再生と財政健全化の両立を挙げた。
人口減については、平成32年をめどに「人口急減・超高齢化」への流れを変えると強調。第3子以降への重点的な支援を行うなど「これまでの延長線上にない」少子化対策を検討課題とした。さらに、女性の活躍促進、出産や育児の両立などを目指すとした。
増税後の反動減への対応では「回復過程を注視し、引き続き『三本の矢』を一体的に推進する」とした。
経済の好循環を拡大させるための施策としては、医療や農業の成長産業化、規制改革の推進などを盛り込んだ。安価かつ安定的なエネルギーの確保のため、原子力規制委員会が安全と判断した原子力発電所の再稼働も求めた。
財政健全化では、国と地方の基礎的財政収支の赤字額を27年度に国内総生産(GDP)比で22年度から半減、32年度に黒字化する目標は堅持する。
個別分野では、医療費や生活保護の見直しなどの社会保障改革や社会資本整備における公共事業の優先順位を明確化することも求めた。
●産経新聞 平成26年5月13日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140513/plc14051312320010-n1.htm
日本の人口、50年後も1億人維持へ 政府が初の数値目標、経済財政諮問会議に提出
2014.5.13 12:32
政府の経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会は13日、日本経済の持続的な成長に向けた課題をまとめた中間整理案を公表した。少子化に対応するため子どもを生み育てる環境を整え、50年後に人口1億人程度の維持を目指すとの目標を盛り込んだ。
政府が人口に関して明確な数値目標を打ち出すのは初めて。
甘利明経済再生相は会議で、「日本発の新しい成長発展モデルを構築することが可能であるというメッセージを打ち出した」と強調した。中間整理案の内容は、近く行われる諮問会議に提出し、6月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させる。
中間整理案では、日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通しを示した。50年後に人口1億人を維持するには、2030年までに出生率が現在の1.3~1.4程度から人口維持が可能な2.07まで回復させ、安定させる必要があると指摘。「これまでの延長線上にない少子化対策が必要」と強調した。
また、当面は人口減少が続くことで、国民生活の悪化を避けるため「経済活動の担い手となる人口をある程度の規模で保持することが必要だ」とも指摘。女性や高齢者の労働力としての活用が必要として、高齢者の身体能力が過去10年あまりで若返っていることをふまえ、生産年齢人口を15歳以上65歳未満から、70歳未満と見直すことも選択肢としてあげた。
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関連掲示
・拙稿「少子化・高齢化・人口減少の日本を建て直そう」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion02g.htm
・拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09i.htm