ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

アフガン6~自衛隊の救出活動に憲法の壁

2021-08-31 09:39:11 | 国際関係
2021.8.23
 「駐留米軍の撤収を急ぐバイデン米政権への不満が欧州の同盟国でくすぶっている」と読売新聞の記事が伝えています。欧州の同盟国のうちどの国でそうなのか、不満はどれくらいなのかは、よく分かりません。というのは、北大西洋条約機構(NATO)は臨時外相会議を開いて対応を協議し、今後も連帯してテロと闘う意思を表明するなど、同盟の結束を強調したと記事は書いているからです。
 批判的な発言が引用されるのは、イギリスの政治家のものが多いです。ブレア元首相は、バイデンの行為を「白痴的」(imbecilic)と呼び、「悲劇的で危険かつ不必要」な撤収だったと公然と批判。ウォレス英国防相は、米国が撤収方針を決めたタリバンとの合意を「腐敗した取引」と批判し、「アフガン政府を弱体化させる」と警告。「欧米の決心が敵国に脆弱とみなされるのは不愉快だ」と述べたとのことです。また、英下院では緊急に行われた討議で与野党議員が「米軍撤収は完全な誤り」などと非難したと報じられます。
 イギリス以外について、記事は、ドイツで「米国の致命的な判断ミス」(レトゲン下院外交委員長)などの声が上がったと書いているのみ。イギリスでは、首相や前首相、国防相らが彼らにとって最大の同盟国であるアメリカのバイデン政権を強く批判していますが、ドイツやフランス等でも首脳・重要閣僚がそういう発言をしているのではなさそうです。
 それゆえ、欧州の同盟国の多くでバイデン政権への不満が上がっているかのような書き方は、実態と違うような気がします。

2021.8.23
 タリバンの報道官は、米軍部隊の駐留が8月末以降も続けば「占領の延長」とみなすと述べたとのことです。8月末を「レッドライン(越えてはならない一線)だ」と指摘し、「米英が退避継続のためにさらなる時間を求めるのであれば、答えはノーだ。何らかの結果を招くことになる」と述べ、対抗措置として攻撃に出る可能性を示唆したと伝えられます。
 これに対して相手にプレッシャーを投げ返すことが、バイデン政権に出来るだろうか。多数の人質を取られると、人権最優先の方針では有効な反撃が出来ないのではないか。

2021.8.25
 島田洋一氏によると、カマラ・ハリス米副大統領は、米国の保守派から「バフーン(buffoon、下卑た道化)」と呼ばれているそうな。
 アフガンから撤退する米国は、中国に対抗するため東南アジア諸国との連携を強化しようと、ハリス副大統領がシンガポール、ベトナム等を歴訪中ですが、彼女が回ることでプラスがあるのか。逆にマイナスを生みかねないのでは。

2021.8.25
 米軍は撤退前に約10兆円($85 Billion) の武器を破壊せずに置いて行ったとのことです。山中泉氏がそのリストを掲示しています。タリバンにとってはこれが戦利品となり、今後の戦闘で利用されるでしょう。這う這うの体で放り出して逃げたのか、それとも相手に武器を与えるために置き土産にしたのか。

 山中氏が掲げるリスト

- 2,000 台の武装車両(高機動多用途装輪車両)Humvees、 耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)を含む武装車両)
‑75,989 台の総車両: FMTV, M35, Ford Rangers, Ford F350, Ford Vans, Toyota Pickups, Armored Security Vehicles etc)
‑45機のブラックホーク・ヘリコプター(UH-60 Blachhawk Helicopters)
‑50 機の次世代攻撃用ヘリコプター(MD530G Scout Attack Choppers)
‑偵察用無人飛行機(ScanEagle Military Drones)
‑30機の軍用セスナ飛行機( Military Version Cessna’s)
-4機の戦術用輸送機(ロッキード社製4 C‑130’sハーキュリース)
‑29機の対地上戦スーパーツカノ攻撃機(29 Brazilian made A‑29 Super Tucano Ground Attack Aircraft 208+ Aircraft Total)
‑少なくとも600,000 丁のライフルと銃器(At least 600,000+ Small arms M16, M249 SAWs, M24 Sniper Systems, 50 Calibers, 1,394 M203 Grenade Launchers, M134 Mini Gun, 20mm Gatling Guns and Ammunition)
‑61,000 丁のM203 グレネードランチャー(M203 Rounds)
‑20,040発の手榴弾( Grenades)
‑榴弾砲(Howitzers)
‑1000砲の追撃砲(Mortars +1,000’s of Rounds)
‑162,000 台の暗号化された軍事通信機器(162,000 pieces of Encrypted Military Communications Gear)
‑16,000個のナイトビジョンゴーグル( Night Vision Goggles)
‑最新鋭ナイトビジョン・スコープ(Newest Technology Night Vision Scopes)
‑暗視スコープと暗視ゴーグル(Thermal Scopes and Thermal Mono Googles)
‑10,000発の 2.75インチの地対空ミサイル(10,000 2.75 inch Air to Ground Rockets)
‑偵察装置(Reconnaissance Equipment (ISR)
‑レーザー目標ユニット(Laser Aiming Units)
‑不発弾処理機器(Explosives Ordnance C‑4, Semtex, Detonators, Shaped Charges, Thermite, Incendiaries, AP/API/APIT)
‑2,520発の爆弾( Bombs)
‑暗号化処理済み通信機器(*Administration Encrypted Cell Phones and Laptops all operational)
‑数百万ドルの米ドル現金(Pallets with Millions of Dollars in US Currency)
‑2千万発以上の7.62mm砲銃弾、900万発の50カリバー砲銃弾(Millions of Rounds of Ammunition including but not limited to 20,150,600 rounds of 7.62mm, 9,000,000 rounds of 50.caliber)
‑数多く車両運搬車と身体防御用ボディアーマー(Large Stockpile of Plate Carriers and Body Armor)
‑軍用携帯用生体確認機器(US Military HIIDE, for Handheld Interagency Identity Detection Equipment Biometrics)
‑数多くのブルドーザー、掘削機つきブルドーザー、ダンプトラック、掘削機(Lots of Heavy Equipment Including Bull Dozers, Backhoes, Dump Trucks, Excavators)

2021.8.25
 アフガンを巡っても、G7と中ロの対立という構図が鮮明になりました。これに、インドとパキスタンの地域的な対立が加わります。

産経新聞 2021.8.25付より
 「中国の習近平国家主席は25日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、アフガニスタン情勢について意見交換した。中国国営新華社通信によると、習氏は『中国はアフガンの主権、独立、領土保全を尊重し、内政不干渉の政策を実行している』と強調。プーチン氏は、中国と協調して『外部勢力の干渉を防ぎ止めることを望む』」

2021.8.26
 アフガニスタンでは、米民間軍事会社ブラックウォーター社が、一人当たり6500ドル(約70万円)の料金でアフガンからの脱出の仕事を請け負っているとのことです。山中泉氏によると、大勢の取り残されたアメリカ人の中には、家やシェルターに隠れて一歩の外に出れない危険な状態の人も多く、それらの場合、家からチャーター機までの料金はさらに上がるとのことです。当然、自費です。
 山中氏曰く「バイデン始め米国務省は『全ての希望するアメリカ人の国外脱出をさせる』と言うが、国務省は具体的なアメリカ人の人数さえ把握しておらず、またその方法も明確に示していないため、それらアフガン国内に取り残されたアメリカ人たちは期限までの最後の脱出を自分たちでアレンジするしか道は残されていない」
 こういう状態でありながら、バイデン大統領は8月31日までの撤退期限を延長しないことを公言。タリバンから延長すれば攻撃すると脅されたからか。

2021.8.27
 第二次世界大戦終結期の各地の混乱以後、これほどの悲惨な混乱は、初めてではないか。山中泉氏のFBポスト2021.8.25ー26付けから。

記事1より
 「25日午前9時(アメリカ中西部時間)、カブール空港の外で自爆テロリストが2回自爆(3人の海兵隊が負傷)。長くタリバンと敵対してきたイスラム国による自爆テロと見られている。ここは、200ヤード空港から離れている。しかし、イスラム国からの脅迫は続いていた」

記事2より
 「先ほど書いた記事のカタール市内自爆テロで、『少なくとも10人の海兵隊が死亡』した。
 アフガンのローカル紙によると、『アフガン人は少なくとも60人が死亡し、200人以上負傷した』
 これによりアメリカ世論のバイデン政権弾劾の動きは大きく加速することになるだろう」

記事1より
 「オランダは自国民の救出を中止。『これは悲劇だ。オランダ人でも救出できない。』
 ポーランド政府は、900人の自国民を救出したが、これを停止した。全力を尽くしたが、現状でこれ以上は困難だ。
 イタリアは最後の救出フライトが木曜離れたと発表。
 フランスは金曜日以降は救出不可能だと発表。
デンマーク国防大臣は水曜日に最後のフライトが離れたと発表。
 英国国防長官は、木曜には11機の飛行機を飛ばす予定だが、その後の予定はないと発表」
 この悲惨な混乱は、明らかにバイデン米大統領の判断の誤りが生み出したものです。政治家としての能力の低さに加えて、選挙期間から懸念されてきた認知症によるものではないか。

2021.8.27
 自爆テロ。米海兵隊員ら少なくとも12人が死亡し、15人が負傷。アフガン人の死者は60人以上、負傷者は数百人。実行犯は、アフガンのIS系武装勢力「イスラーム国ホラサン州」。
 マッケンジー米中央軍司令官は、IS系武装勢力がロケット弾や自爆用車両による「さらなる攻撃を仕掛けてくる極めて可能性が高い」と指摘。次なる爆弾テロの阻止に向け警戒態勢を強化していくと表明したとのことです。
 タリバン政権は、IS系武装勢力と敵対的と伝えられるが、自国民を守るためにIS系武装勢力と戦う気があるか。逆に自爆テロによる混乱の拡大を対米に有利ゆえよしとしていないか。

2021.8.27
 トランプ前大統領は、次のように発言。
 「私なら決してこんな状態は許さなかった。アメリカ人や現地協力者を退避させる前に軍を引いてはならないことぐらい5歳の子供でも分かる」

2021.8.27
 「イスラーム国(IS)」は、2019年にイラクとシリアの支配地域をすべて失い、最高指導者アブバクル・バグダディは同年10月、米陸軍特殊部隊の急襲を受け、自爆ベルトを起動して死亡したとされます。以後、中枢の勢力は衰え、各組織は別々の指揮系統の下で活動しているとみられるとのことです。ISの現状について。

産経新聞の記事より
 「米議会調査局によると、米政府はISの関連組織として、アフガニスタンなどで活動する『ホラサン州』(IS-K)やエジプト北東部の『シナイ州』など計9組織を挙げている。アジアではフィリピンやバングラデシュに存在し、勢力拡大が伝えられるアフリカのサハラ砂漠以南には4つの組織がある」
 「ISは今年に入り、イラクのシーア派地区で複数の爆弾テロを行うなど勢力回復の兆しが出ている。親イランのシーア派民兵組織も米国関連施設への攻撃を継続している」

2021.8.28
 現代イスラム研究センター理事長の宮田律氏によると、氏が外務省に問い合わせたところ、8月27日現在でアフガニスタンに残っている日本人は国際機関に勤務している人などわずかに6人だったとのことです。その時点で、日本人大使館職員12人は17日に英軍機でドバイに脱出し、JICAの日本人職員たちも全員アフガニスタン国外に退去済みだったとのことです。
 その他のことも併せ考えて、宮田氏は、今回の自衛隊輸送機は3機も派遣する必要はなかったように思われると述べています。
 私は、これは結果論ではないかと思います。邦人だけでなく、友好的なアフガニスタン人を数百人輸送できるように3機派遣したが、IS系武装勢力の自爆テロで退避させられなくなったということではないか。カブール空港までは自力で来ることが条件であり、自衛隊は空港を出ないという方針ですから、強烈な妨害を受け、やむなく邦人1人のみの輸送になったということでしょう。

2021.8.28
 8月27日、アフガニスタンからの国外退避をめぐり、退避を希望している日本人1人が首都カブールの空港に到着し、自衛隊の輸送機でパキスタンに向かったと報じられました。これに伴い、今回の活動で現地に派遣されている外務省職員や自衛隊員もアフガニスタンを離れたとのことです。
 日本政府は、大使館や国際機関で働くアフガニスタン人のスタッフなども含めて最大で500人以上を退避の対象と想定していましたが、空港に到着できるメドはたっていないと伝えられます。
 輸送機を3機派遣し、500人以上を退避させる予定だったのに、実際に輸送したのは1人のみになったのは残念です。しかし、危険な任務を遂行した自衛隊員及び関係者は、ご苦労様です。

2021.8.28
 元自衛官、藤原道明氏(防衛省情報本部等に勤務)のFBポストを紹介します。

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 最終的にかどうかはわかりませんが、自力で空港までたどり着いた邦人一人を輸送、他は現地には留まることを選択したと言ってますが、本当かな?
 大使館員が我先に逃げたので、邦人、協力アフガン人の状況が一切分からないのが実態だと思います。
 中央即応連隊の隊員が100人派遣されている様ですが、自衛隊法84条の4(在外邦人の輸送)に基づく派遣なので、連隊員は銃を使うことができないですね。
 つまり、飛行場から市街まで前進し邦人や現地スタッフを保護しつつ空港まで運ぶことはできませんね。
 残念ですが自力でたどり着いた人を輸送するしかないようです。
 中央即応連隊の隊員は空挺団とと共に精鋭無比ですから、タリバンやISと銃撃戦をしながらでも、邦人等を空港まで連れてゆくことは出来ると思いますが、法の縛りで武器が使えないので戦うことはできません。
 どうしてでも救出しなければならない状況になり、銃撃戦になれば、超法規的行動を取らざるを得ません。
 その場合、自衛官は、殺人罪で日本の法定に立たされるかもしれません。
 皆さん、どう思われますから?
 一刻も早く憲法を改正し、自衛隊を改変し、いつでも戦える普通の国の軍隊にしなければならないと思いますが、いかがでしょう。
ーーーーー
 
 同感です。今回、他国の軍隊と自衛隊の違いが一層明確になりました。今のままでは、在外邦人は救える命も救えません。

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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日本の心2~「和」の精神は、宇宙法則の現われだ

2021-08-30 08:39:48 | 日本精神
●「和」の精神は、宇宙法則の現われだ

 日本人の精神は、しばしば「和」の精神といわれます。「和」というと、妥協やなれあいをイメージする人もいるでしょう。しかし、真の「和」の精神には、生命と宇宙の法則が現われているのです。
 聖徳太子は、十七条憲法の第1条で「和を以て貴しとなす」という趣旨を説きました。太子のいう「和」とは、単に仲間うちで仲良くやっていく事ではありません。太子の憲法の第1条は「上和らぎ、下睦びて事を論(あげつら)ふに諧(かな)ひぬるときは、則ち事理自ら通ふ。何事か成らざらむ」という言葉で結ばれます。すなわち、「和」の心をもって、お互いに話し合えば、そこに自ずから物事の「理」が通うのだ、できないことなどあろうか、というのです。「人の和」は「宇宙の理法」に通じるという信念を、太子は持っていたと思われます。
 「和」ということを、スポーツで考えてみると、グループで行うスポーツでは、チームワークが重要です。つまり、チームの調和です。チームがまとまっていると、メンバー個人個人の能力以上の力が出せます。メンバー各自が優秀でも、チームがばらばらでは、力は出せません。チームの呼吸が合っていると、1+1=2ではなく、3にも5にもなります。呼吸が合っていないと、2どころか、0.5にもなりません。つまり、「和」が大切なのです。チームが「和」をもって団結していると、想像できないほどの潜在能力が発揮されます。奇跡的なほど、絶妙なプレーが出てきます。信じられないほどのグッド・タイミングで、すべてがうまくいきます。言わば、集団による至高体験(peak experience)、高シナジー効果です。ここに、調和という状態が持つ不思議なパワーがあります。
 職場においても、「和」が大事です。一つの目的に向かって、職場のみんなが心を合わせて考えると、一人では思いもつかないような発想が、次々に湧き出てくるものです。何かの計画を実行するとき、互いを信じて取り組んでいると、初めは不可能かと思えたような課題でも、信じられないほどうまく解決できてしまうのです。調和は、集団を一体化し、単なる要素の総和を越えた、創造力を生み出すのです。
 こうした「和」が見られる見事な実例が、あなたです。自分の身体について考えてみて下さい。あなたの身体は、約60兆個もの細胞で成り立っています。60兆とは銀河系の星の数にも匹敵するといわれます。
 それらの細胞は、父母の結合による、たった一つの受精卵が分裂・分化したものです。その細胞は、脳・目・胃・腸・手・足など、それぞれの目的・役割に応じて成長します。そして、様々な器官・組織・細胞の働きによって、呼吸や血液循環や消化などの活動が、休むことなく営まれています。なんという、見事な調和でしょう! まるで60兆人ものメンバーによるオーケストラが、壮大なシンフォニーを奏でているようです。その指揮者のはずのあなたは、そんなことを何も意識せず、パソコンを打っています。呼吸もしています。心臓ももちろん、動いています。
 この驚くべき不思議が、あなたなのです。あなたという存在は、60兆個もの細胞の調和によって存在しているわけです。そのことに気づくなら、調和の原理とは、あなたを超えて、あなたをあらしめ、あなたを生かしている根本原理だと理解できるでしょう。
 日本人は、こうした生命や社会を貫く「調和」の大切さを、深く感じてきた民族だといえましょう。そして、自然の様々な現象に調和を見出し、自然と調和して生きるように心がけてきたのが、日本人の生き方だといえましょう。日本人が「和」を重んじるのは、生命や宇宙の法則に基づいて生きる、知恵の働きです。そして、「和」の精神には、生命と宇宙の法則が現われているのです。
 生命と宇宙に根ざす「和」の精神、真の日本精神を取り戻しましょう。

 次回に続く。

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マラソン9~中国は「クリントン・クーデター」を起こした

2021-08-29 08:34:51 | 国際関係
◆中国は「クリントン・クーデター」を起こした
 米中国交回復後、1980年代末から90年代初めにかけて、米中関係に影響する大きな出来事が起こった。言うまでもなく天安門事件と冷戦の終結である。
 それまでは、ソ連に対抗するために中国と連携するというのが米国の論理だった。米国の指導層は、中国は経済発展すればやがて民主化すると考えていた。だが、天安門事件で民主化への動きが弾圧された。その後に、ソ連が崩壊した。ソ連がなくなった後、中国と組み続ける必要があるかという疑問が上がった。
 1992年(平成14年)1月、現職のブッシュ父を破った民主党のビル・クリントンが大統領になった。クリントンは、中国の擁護者であるブッシュ父を痛烈に批判した。クリントンは、それまでのどの大統領よりも強硬な対中路線を打ち出した。
 ピルズベリーは、次のように書いている。「クリントンが大統領に就任するとすぐ、国務長官のウォーレン・クリストファーは、上院外交関係委員会でこう宣言した。『わたしたちの政策は、経済力の強化と政治の自由化を後押しして、中国における共産主義から民主主義への広範で平和的な移行を手助けすることだ』」
 しかし、鄧小平率いる中国共産党は、ここで強力な工作を行った。米国政府内に親中派のグループを組織し、クリントンの反中政策を転換させたのである。ピルズベリーによると、親中派のグループには、国家安全保障担当補佐官トニー・レイク、副補佐官サンディ・バーガー、国家経済会議議長ロバート・ルービン、財務次官ローレンス・サマーズなどが含まれていた。このうち大物は、ルービンとサマーズである。ルービンは、ゴールドマン・サックスの元会長で、後に財務長官になった。サマーズは、ハーバード大学の経済学者で、ルービンの後に財務長官になった。彼ら親中派グループは、政府内で味方を増やしていった。
 中国との経済関係を拡大することで大きな利益を獲得することを欲する親中派が主導権を握っていった。そして、ついに1993年末、共産中国が現在、「クリントン・クーデター」と呼ぶ出来事が起こった。「中国に同調する面々が大統領に反中姿勢の緩和を認めさせたのだ。クリントンがかつて約束したダライ・ラマとの新たな会談は実現しなかった。対中制裁は緩和され、後に解除された」とピルズベリーは書いている。
 中国共産党は、クリントン政権の対中政策を180度転換させることに成功した。以後、ビルとヒラリーのクリントン夫妻は中国との不正な関係を深めていった。その関係は、バラク・オバマ、ジョー・バイデンらの民主党幹部にも広がっていった。
 ピルズベリーの認識には、重要なことが全く欠けている。彼が政府関係者として献身した米国という国家は、20世紀の初めから巨大国際金融資本の支配下にある。ヨーロッパ各国に中央銀行を作り、各国の通貨の発行権を掌握した銀行家たちは、2013年に米国にも連邦準備制度という名の中央銀行を作った。これによって、通貨と金融を通じて米国を支配する体制を確立した。以後、第1次世界大戦への参戦、大戦後の国際秩序の形成、ニューディール政策、援蒋政策、第2次世界大戦への参戦、核開発等を通じて、彼らの意思が米国政府を背後から動かしている。第2次世界大戦後も同様であり、米ソ冷戦体制の固定化、ソ連への経済的・技術的支援、国共内戦で中国共産党を支援して中国を共産化、米中国交回復、中国への経済的・技術的支援等には、一貫して巨大国際金融資本を中心とする所有者集団の意思が強く働いている。
 ビル・クリントンは、そうした米国の対中政策を変えようとしたのだろうが、中国共産党によるクリントン・クーデターによって、従来の方針に戻された。この時、米国の政界・財界・官界に深く影響力を及ぼしている巨大国際金融資本は、中国共産党と同じ意思を持ってクリントン政権の対中政策を方向転換させた。中国を経済的に発展させることで巨利を得ようとする巨大国際金融資本と、米国の政権を親中的に変えて自国のために利用しようとする中国共産党との間で利害が一致していたからである。
 クリントン・クーデター後、共和党のブッシュ子政権、民主党のオバマ政権を通じて、この利害の一致は保たれ、2016年のトランプ政権の登場まで続いたのである。

 次回に続く。

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日本の心1~「日本の心」を表す言葉

2021-08-27 09:59:39 | 日本精神
はじめに

 私は、かつてニフティ・サーブの会員掲示板に平成10年(1998年)11月から約9年間にわたって「日本の心」シリーズを連載しました。その掲示文の一部を自選してブログに再掲します。再掲に当たっては、天皇の御代替わり、元号の変更などに伴う最小限の修正を行います。また、可能なものは歴史の時系列に沿って並べて掲示します。190回ほどの連載を予定しています。

●「日本の心」を表す言葉

 日本で心や霊魂を表す最も古い言葉は、「タマ」「チ」「ヒ」などです。それぞれ「コトダマ」「イノチ」「ムスビ」などと使われました。「ココロ」はもともと心臓の意味であったが、後にいわゆる心の意味に転じたものです。
 わが国は、古代から大陸のシナ文明の強い影響を受けました。しかし、7~8世紀に中華思想による華夷秩序から離れ、独立を維持し、日本独自の文化を生み出していきました。そして、シナとの対比において、日本的な精神が自覚されるようになりました。
 日本人は「和」の精神を重んじ、国の名称にも「大和(やまと)」という文字をあてました。そうした日本的な精神を表す言葉が、「やまとだましひ」です。「やまとだましひ」という言葉は、『源氏物語』が初出です。用例は、「才 (漢才 (からざえ)、漢学の素養)」と反対の概念をなしています。「大和魂」の属性は、「世に用ひらるゝ方」とされ、世才、良識、先天的にそなわった気ばたらき、融通のきく常識的政治判断、世渡りの才能、交際上手、如才なさ、実人生に対する理解力などと解釈されてきました。漢文的教養に対する、実生活上の知恵・才能といえましょう。
 その後、「やまとだましひ」の語は『大鏡』『今昔物語』『愚管抄』などに用例が見られます。注目すべきは、「やまとだましひ」は、「漢才 (からざえ)」という、外来のシナ文化の教養と対比されたことです。ほぼ同じ意味の言葉に「やまとごころ」があり、この言葉は「漢心」(からごころ)に対比されました。初出は『大鏡』です。「やまとだましひ」と「やまとごころ」に共通するのは、「日本(やまと)」と「シナ(から)」の精神の対比です。しかし、中世末から近世初頭にかけて、「やまとだましひ」について特に考察されることはありませんでした。
 江戸中期になって、賀茂真淵および本居宣長らが、「やまとだましひ」「やまとごころ」を初めて主題的に論じました。彼らは、『万葉集』や『古事記』『源氏物語』等の研究に基づき、シナ的な精神に対比して、日本的な精神を理解しました。幕藩体制の統治に儒教を採用した江戸時代は、シナ崇拝が高まった時代でした。これに対し、宣長は、徹底的に「からごころ」を排除し、日本古来の「やまとごころ」を明らかにしようとしました。それは、自然の心情のままに、素直で優しく、柔和でもある心といえましょう。宣長の「敷島の大和心を 人問はば 朝日ににほふ 山桜花」の歌は、そうした純真で素直な民族の心を詠んだものです。
 日本人は、古代から近世にかけて、しばしばシナ文明に対抗して、自己を認識し、また文明を形成しましたが、そうした自覚が、「大和魂」や「大和心」という言葉に込められているのです。
 幕末になると、黒船が来航し、西洋文明が東アジアに押し寄せてきました。わが国は、欧米の物質文明の圧倒的な威力によって、存亡の危機に直面したのです。その過程で、わが国の独自の国柄・伝統が強く自覚されました。また、尊王攘夷論が勢力を得ていきました。ここで、「大和魂」「大和心」に、文学的・思想的に再発見された「文」の側面だけでなく、外敵から国家・民族・文明を守ろうとする「武」の側面が加えられました。「大和魂」は潔く勇猛果敢な響きをもつようになり、吉田松陰は、辞世の句に「身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置まし 大和魂」と詠んでいます。明治維新は、この文武あいまった「大和魂」「大和心」の発動なくして、不可能だったでしょう。
 明治以後、シナ文明の位置に替わったのが、西洋近代文明です。わが国は文明開化・富国強兵を国是とし、積極的に欧米文化を採り入れました。そして、自己本来の精神性を保持しつつ、外来文明を摂取するという姿勢が、「和魂漢才」という言葉で表わされました。『源氏物語』の用例とは意味に異なる点があるが、異文化と固有文化を対比し、その精神性の違いを表わすという点では、見事な用い方です。「和魂洋才」ともいわれます。
 近代国家の建設が進むにつれ、国際社会における国民という意識が形成され、「国民精神」という言葉が使われるようになりました。諸国民の精神と対比して、日本の「国民精神」が論じられました。新渡戸稲造の名著『武士道』(明治32年、1899)では、「大和魂」とともに「国民精神」が使われています。
 その後、20世紀になって、新しい言葉として登場したのが、「日本精神」です。登場は、明治の末期です。大正6年(1917)、芳賀矢一がロンドンで「日本精神」という講演を行いました。大正10年代(1920s)には、「日本精神」を冠する本が多く表れました。また、モラエスやラフカディオ・ハーンの本の書名も『日本精神』と訳されています。
 昭和に入ると、広く「日本精神」が使われるようになりました。特に満州国を巡る昭和8年の国際連盟脱退の後、「日本精神論」のブームが起こりました。以後、「日本精神」という言葉が国家国民的な規模で使われました。しかし、その中身は排外的・独善的な傾向を強め、本来のおおらかな「和」の精神とは違っていきました。それは、軍部を中心とする時の為政者が日本固有の精神を見失い、独伊のファシズムの影響を受けたためです。当時、心ある人士は、日本の伝統に基づいて、こうした風潮を厳しく批判しました。
 戦後の社会では「日本精神」という言葉を避け、「日本の心」という言葉がよく使われます。これも柔らかくてよい言葉ですが、単独では神髄までを表わし得ない点があります。かえって台湾に「日本精神(リップンチェンシン)」が残っており、日本では「日本精神」が失われつつあります。いや心・精神そのものが失われているというべきでしょう。今や台湾の人たちから「日本人は日本精神を取り戻しなさい」と言われているほどです。
 今日、こうして失っているものを取り戻すために、「日本精神」という言葉には、生きた力があると思います。日本古来の「大和魂」「大和心」をよみがえらせる力が、この語にはあると思います。
 日本精神は、「やまとだましひ」に充てられた「大和魂」の文字がよく表すように、和を尊ぶ精神です。しかし、武を否定する反戦平和主義のようなものではありません。大和魂がそのようなものであれば、わが国に世界に比類ない武士道が発達するわけがありません。また外敵による元寇や黒船来航で、日本はとうに消滅しているでしょう。日本精神は大調和の精神であるとともに、国難にあっては国民が団結して国の中心を守る君民一体、国家と国民が一体の精神です。
 さて、大東亜戦争の敗戦後、米国は日本が再び米国および世界の脅威にならないようにすることを占領目的としました。日本の弱体化は、軍事的弱体化だけでなく、精神的弱体化を行うものでもありました。精神的弱体化とは、日本人から日本精神を骨抜きにすることです。
 日本人は精神的に骨抜きにされたことにより、日本人自ら日本を守るという国防意識を失い、押し付けられた憲法の改正も行えず、今日厳しい国際環境において国家存立の危機に直面しているのです。それゆえ、日本精神の復興なくして、国家の再建や国防の充実はできません。
 日本精神を説くと、昭和戦前期の軍部指導層が陥った科学的・合理的な思考を欠いた精神主義の復活のように思う人もいるでしょう。昭和戦前期の軍部指導層の主流は、欧米思想、特に独伊のファシズムの影響を受け、戦争政策の推進のために恣意的に解釈した日本精神を鼓吹しました。また彼らは、科学的合理的な分析ができなくなっていました。しかし、明治期のわが国の指導層は、天皇を中心として団結する伝統的な日本精神を発揮しつつ、政略的戦略的な思考と行動を見事に行いました。日本精神を発揮することと、冷静な分析や合理的態度は両立し得ることの実例です。
 日本精神の復興を進めることは、科学的合理的な思考を否定することではなく、自己本来の精神性を保持しつつ、経済成長と科学技術の発達を進め、物心調和の文明を建設する道を歩むことができるのです。

 次回に続く。

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アフガン5~稚拙を極める退避作戦

2021-08-26 09:55:58 | 国際関係
2021.8.21
 戦争では、攻め入る時よりも、不利で退却する時が難しいと聞きます。下手な退却は、追撃を受け、敗走・壊滅となるからです。もともと武力行使に極めて消極的なバイデンという政治家は、軍事的な判断力が弱く、彼が任命した国防長官や軍事スタッフも、生死を掛けた実戦で鍛えられた戦国時代の武将のような熟練を欠いているのでしょう。
 以下は、国際政治学者、島田洋一氏が伝える見方です。

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 バイデンが米軍撤退を急ぎ、アフガニスタンにおける拠点中の拠点、バグラム空軍基地を早々に放棄した事が批判の的になっている。
 同基地は滑走路を2本持ち(いま脱出用に使われているカブール国際空港は滑走路1本)、CIAの本拠地でもあった。
 ビンラディン殺害作戦を実行した海軍特殊部隊ネイビーシールズ・チーム6もここから発進した。
 早まった放棄は大失態、が米専門家らのほぼ一致した意見である。
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2021.8.21
 欧米各国が相次いで資産凍結や支援中止を表明したため、アフガン経済が苦境に陥ることは確実。タリバンは「麻薬ビジネス」の強化に踏み切るという懸念が上がっていると産経新聞2021.8.21付けが伝えています。
 麻薬ビジネスは重要な資金源だが、本格的な経済制裁を跳ね返すほどの収入増は難しいでしょう。アフガンに莫大な投資をし、希少金属などに巨大な利権を持つ共産中国が、タリバン政権をどこまで経済的に支えるかがポイントになると思います。

2021.8.21
 タリバンの指導部は、米軍協力者を含めた全ての国民に「恩赦を与える」と誓約しましたが、実際は誓約に反する動きがあると伝えられます。
 読売新聞2021.8.21付けの通信員の取材によると、タリバンは、米軍の協力者らに対して「召喚状」を出し、カブールの軍事委員会本部に出頭するよう要求。出頭に応じなければ「家族がイスラム法に基づいて」裁きを受けると書かれているとのことです。またタリバンは、アフガン政府の関係者や、米欧への渡航歴のある者についても把握している模様です。
 米国を含め、タリバン掃討を担ってきた外国軍部隊のほとんどが撤収し、政府治安部隊が武装解除される中、「タリバン戦闘員らは事実上の野放し状態だ」と読売の記事は書いています。
 指導部が国際社会を騙すために嘘をついているのか、指導部の意思が末端の戦闘員に徹底されていないのか、指導部の中が強硬派と穏健派に分かれているのか。
 タリバンは、イスラーム教に基づく政教一致、神政政治体制を目指しているようです。その点では、スンナ派とシーア派で宗派は異なりますが、かつてのイランを想起させます。
 イランでは1979年にイラン革命が起り、イスラーム教を国家原理とするイラン・イスラーム共和国が発足しました。法学者アーヤトッラー・ルーホッラー・ホメイニーが最高指導者となり、社会のイスラム化が推進されました。この時、ホメイニーは相当のカリスマ性を示し、強い求心力を発揮しました。
 タリバンが政権を確立し、安定させ、統制を取れるかどうかは、最高指導者のカリスマ性と求心力によるでしょう。その点、ハイバトゥラー・アクンザダ師については未知数です。ほとんど公の場に出ないようであり、直接国民や国際社会に訴える場面も今のところ見られません。数日内に表に出てくるのか。

2021.8.21
 バイデン大統領は、米政権がタリバン進撃のスピードを見誤り、米国人や米政府に協力してきたアフガン人の退避計画が不十分だったという批判への答えを記者団から求められ、「現在の作戦終了後に批判する時間は十分にある。責任は私にある」と回答。「アフガンからの退避は危険が伴い、米軍にもリスクがあり、困難な状況下で実施されている」とし、アフガニスタンで最終的にどのような結果になるのかを約束することはできないと言明。「史上最大規模かつ最も困難な空輸であり、これほどの動力を地球の裏側に正確に投入できる国は世界でも米国だけだ」と述べました。
 言葉は巧みだが、実効性のある行動の伴わない政治家がバイデン。アフガニスタンからの退避に失敗すれば、かつて1979年のイラン革命の際、民主党のカーター大統領がアメリカ大使館を占拠され、人質の救出に失敗した事件で信頼を失墜した時より、遥かに深刻な信頼失墜となるでしょう。

2021.8.22
 元防衛大臣、中谷元氏のFBポスト2021.8.21付けを紹介します。日本は何ができるかという点について具体策を提示しています。

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 今回、日本政府は自衛隊をアフガニスタンへ派遣していませんが、自衛隊法では自衛隊も海外で危険に瀕している日本人を国外に退避させるための措置を講じることができ、外国人を同乗させることもできます。「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)と「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)で、外務大臣から防衛大臣に対する依頼があれば、自衛隊が日本人と外国人を国外に退避させることができるという規定があります。
 まだ、アフガニスタンには、日本人や大使館に雇用されて出国を求めている人が取り残され、国外に避難を求めている人が殺到しています。アメリカ政府も、アフガニスタンにいる民間人の国外退避を支援するため、日本政府に対して自衛隊の派遣を含む協力を要請しています。それに対応するための法的根拠となる規定が平和安全法制の枠組みではないでしょうか。積極的な運用を検討し、国際協力や人道支援の枠組みを活用し、人材を派遣して、この問題をクリアしていかねばなりません。できないなら法律を改正する必要があります。
 日本は、これまでアフガニスタンに、2001年以降、武装解除や産業経済振興政策など7000億円の支援をしてきました。この事態を受け今後、日米は戦略を練り直し、この地域が平和で安定したものになるよう、欧州やインド、パキスタン、トルコ、中東諸国の人的パイプを活かして、長期的視野に立った戦略を練って対応していかなければなりません。その際、Natoや日米安保での外交官・大使のOB、学識者など、多くの人材を活用し、国家安全保障局でチームを編成し、情報収集と分析して、国際社会から評価できる実務的な行動できるようにしなければなりません。9.11の同時多発テロ事件から20年、外務省はアフガニスタン政策に何もしないでいるわけにはいけません。
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2021.8.22
 国際政治学者、島田洋一氏のFBポスト2021.8.22付けを紹介します。

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 トランプ政権とタリバンが暫定和平合意を結んだのが2020年2月。その1か月前にトランプは、イランの対外テロ責任者ソレイマニ司令官を傘下のテロ集団幹部9人と共にドローン攻撃で殺害していた。だから、タリバンが合意を破れば斬首作戦で応じるというトランプの脅しには充分信憑性があった。
 その時バイデン大統領候補(当時)は逆に「自分ならソレイマニ殺害命令を出さなかった。国際法、国内法に違反する」と公言した。この時点で、抑止力ゼロのバイデン政権になれば、タリバンが攻勢に出る流れは確定したと言える。
 「事態が急変」というのは間違い。アフガン崩落はバイデン当選の瞬間に決まった。
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2021.8.23
 山中泉氏のFBポスト2021.8.23付けを紹介します。

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 (略)以下は、就任直後から一度もバイデンと政権を非難することのなかった民主党バイデン一本槍メディアからのここ数日の報道だ。

内容は:
*米国人を人質の危機に陥れたバイデン政権
*ホワイトハウスは自力で空港まで行けと言っているが、実際は不可能
*バイデンは「同盟国からの信頼は全く揺らいでいない」と語ったが、過去二人の英首相、国会、同盟国から米国は信頼できないとの発言を始め、過去ないほど非難発言が続いている
*アフガン陥落を見て、中国は台湾の恫喝を始めた
*バイデンの外交政策が得意だという前評判はどこにいった?
*ABCインタビューでの幼い子供や赤ん坊が被害を受けている画像に対して一編の哀れみの態度を見せなかったバイデンに、一緒にいたレポーターも衝撃を受けた
*バイデンはすでに、「現実からの解離(Separation from Reality)」が起きている
*カブール空港から500数十名がすし詰めで避難してきた人の写真を見て、「それは5日前のことだろう」と何の痛痒もなく逆にインタビュアーに食ってかかった

 現在問題になっているのはいくつかあるが、
① カブール国際空港から40キロの近くにある「アフガン最大の米空軍基地アグラム空港を7月5日にバイデン政権は閉鎖」してしまった。もし、この空港が使用可能であれば、大勢のアメリカ人やアメリカへの協力してきたアフガン人の救出が可能だった
② すでに、今週月曜日から、英国やフランスは特殊部隊を派遣して、カブール「市内」にいる自国民の救出を進めていた。英国はすでに6000名に英国人とアフガン協力者たちを救出している。なぜ世界最大の軍事力を持つ米国軍隊がそれができないのかの突き上げが共和党、民主党の議員たちから巻き起こっている。
③ 7月5日には、アフガニスタン米国大使館の23人の大使館員が本国国務省に対して、実名で緊急電報を打っている。これをブリンケン国務長官は読んでいるはずだ。それが大統領にはどう伝わったのか?バイデンはいろいろな情報が交錯していたと言い訳をしていた。

 トランプ前大統領は、昨日のアラバマラリーで、「最初にアメリカ人を避難させ、その後軍人を撤退させる(American first, Solders last)が大統領として当たり前の行動だろう。バイデンは全くその逆をやった」と、語った。
 これに対して、民主党、共和党を問わず大勢のアメリカ人から帆同じ怒りが起きているのが現状だ。
 ポンペオ前国務長官は、バイデンは認識力の欠如があるのかとの質問に、間違いなく「現実からの遮断(disconnect from reality)」があるだろう。それでなくては、このような対応は考えられない。(略)
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2021.8.23
 国際政治学者、島田洋一氏のFBポストを紹介します。

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2021.8.20
 日頃の言動に照らし、タリバンによる女性やLGBT迫害に最も強く声を上げねばならないはずのカマラ・ハリスは沈黙し、姿を現さない。
 国境危機同様、「失敗の顔」にされたくないとの思惑が何より優先されるようだ。
2021.8.22
 タリバンが実権を掌握したアフガニスタンで女性に対する圧迫、暴力が報告されている。
 普段「女性の人権」を叫んでいる福島瑞穂、蓮舫、辻元清美、稲田朋美、野田聖子氏ら代表的な左派女性議員のツイッターをざっとチェックしてみたが、見事に何の発言もない。
 予想通りとはいえ、情けない、呆れた話だ。
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 以下随時掲載。

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アフガン4~バイデン米政権の大失態

2021-08-25 08:29:28 | 国際関係
2021.8.18
 タリバンは、全土掌握後、初めてとなる記者会見。読売新聞の記事2021.8.18付けは、タリバン会見のポイントを次のように挙げています。

▽イスラム的で包摂的な政権を構築する。
▽(米国協力者らへの)報復はしない。市民や外交団の安全を保証する。
▽教育や就労など女性の権利、報道の自由は、イスラム法の範囲で保障する。
▽アフガニスタンはもはや紛争地帯ではない。
 また「女性や人権状況に関する国際社会の懸念を意識し、融和姿勢をアピールした形だ」と読売の記事は書いています。

 20年前の過激な原理主義とは大きく変わった穏健な姿勢を打ち出していますが、タリバンの指導層はどうやってこの柔軟性を学習したのか。宗教的指導者が思想改革を行ったのか。中国共産党から政策の指導を受けたのか。
 言うことと実際がどの程度一致するか、欧米諸国は当面様子見でしょう。その間に、中国、ロシア、パキスタンなどがどう動くか。

2021.8.18
 ロイターの記事を紹介します。

――――――
 米国の1番長い戦争が終わろうとしている。20年前に倒した相手に敗北し、ずっと支えてきた政権と軍はあっけなく崩壊、そして土壇場の退避作戦は混迷を極めた。
 まもなく迎える9月11日の米同時多発攻撃20周年は、イスラム主義組織タリバンによる権力奪還に象徴されるものとなるだろう。(略)
 4つの米政権にわたる短期思考、度重なる失策、一貫性を欠いた戦略(略)
 結果的にアフガニスタン情勢安定化に向けた米国の努力は難航し、戦費は1兆ドル以上に上ったばかりか、2400人以上の米兵士と、多くは民間人である数万のアフガニスタン人の命が奪われた。
 この間2つの共和党政権と2つの民主党政権は、アフガニスタンで民主主義と法による支配を育み、強いアフガン軍を構築し、戦争に懐疑的な米国民の関心を維持しようと奮闘してきた。そのために汚職や人権侵害と闘ったが、これらの大半に目を閉ざしてきたのも事実だ。
 何世紀にもわたり部族による地方自治を続けてきたアフガニスタンで、米国は強力な中央政府の確立を押し進めた。米国による麻薬撲滅計画は、タリバンが支配する農村部でケシ栽培によって生計を立ててきた人々をさらに苦しめる結果になった。
 諜報活動の失敗も重なった。バイデン政権が先週、タリバンによる首都カブール進攻には数カ月を要すると予想したこともその1つだ。実際には数日しかかからなかった。(略)
 ブッシュ大統領は「テロとの戦い」を宣言。2001年の米同時多発攻撃を起こした国際テロ組織アルカイダを保護していたタリバン政権をカブールで転覆させた。しばらくの間、この戦略は功を奏していた。タリバンは追い払われ、アルカイダは逃走した。
 しかし元高官や専門家らによると、ブッシュ政権はアフガニスタンをタリバンの再蜂起から守ることに取り組むのではなく、資源と人員、時間をイラク戦争に振り向けた。これは、フセイン大統領率いる独裁政権が大量破壊兵器を保有しているという間違った主張に基づいたものだった。(略)
 現および元高官らは、ブッシュ政権によるイラクへの執着がアフガン戦略の迷走を招いたと指摘する。(略)
 米国はアフガンで安定政権の確立を求めるあまり、影響力はあるが腐敗と人権侵害にまみれたアフガン人と手を組んだ。(略)
 腐敗はアフガンの軍隊もむしばんでいた。米政府はこの20年間で同軍に880億ドルを提供している。
 例えば、腐敗した司令官が、実在しない兵士を名簿に載せて給与を横取りするという「幽霊兵士」問題を、米国は完全克服できなかった。このため帳簿上の兵力は30万人とされたアフガンの治安部隊も実数はずっと少ない。2016年の米政府機関による報告書には、ヘルマンド州の治安部隊だけでも兵力の約40─50%は存在しなかったと記されている。(略)
 現・元米高官らは、パキスタンと同国軍統合情報局(ISI)によるタリバンの保護その他の支援を歴代の米政権が終わらせていれば、タリバンは勝てなかったはずだと言う。(略)
――――――

2021.8.19
 国際政治学者の首藤信彦氏のFBポスト2021.8.19付けより。
 「周辺国で問題なのはパキスタン、タジキスタン、ウズベクスタン、イランでそれぞれがその影響力を行使している。そこにいるのが、パシュトウーン、タジク、ウズベク民族であり、それぞれが周辺国家と一体化している。そしてハザラ族だ」
 「シーア派であるハザラ族」は「チンギスカン率いるモンゴルの東征のあと、この地に残されたモンゴル人の子孫だということになっている」
 「その遊牧民としての出自から、女性の地位も行動力も高く、それが近代化そしてソ連の侵攻後の社会主義政権には多いに花咲いたのだ。アフガン社会で活躍する女性教師、女性医師、弁護士などは多くハザラ族であると言って過言ではない。
 その対極が、パキスタンの辺境地域すなわちタリバーンのハートランドに住むパシュトウン族だ。パシュトウンというのは、父を意味し英語のfatherの原型と50年前に教わったが、まさにハザラ族とは真反対の社会特性を持っていることが理解できるだろう。
 アメリカや西洋勢力はパシュトウンのタリバンを駆逐し、自由な社会で現代的な市場経済を推進しようとした。そこで重宝されるのはいうまでもなく、因習的な宗教観にとらわれないハザラ族だ。それが再び、脅威にさらされることになる」

2021.8.19
 山中泉氏のFBポスト2021.8.19付けを紹介します。
 「私の周りのアメリカ人の民主党、共和党支持者、無党派を問わずの今回のバイデン政権のとった性急稚拙なアフガニスタン撤退に対して、全員が言った唯一の質問がある。
 『何故、アメリカ政府は、全てのアメリカ人を安全な地帯に避難させた後に米軍の撤退を進めなかったのか?』だ」

――――――― 
Fox ニュースのショーン・ハニティ・ショー8月16日抜粋
(註 地の文と引用文の一部が区別されていません)
 理由はどうあれ、このバイデン政権の全くプランのない性急なアフガニスタンからの米軍撤退により、1万人単位のアメリカ人がアフガニスタンに取り残され、ひいてはこれらの人たちがタリバンの人質になる危険が懸念されている。
 これに対して、この国家危急の時期に、3日間休暇をとっていたバイデン大統領はつい3日経ってようやくホワイトハウスに戻った。(ホワイトハウス報道官のジェン・サキも1週間の休暇を取っていて3日間連絡が取れなかった)。
 ハニティーは「1万人から4万人のアメリカ人がアフガニスタンに閉じ込められた。バイデン政権はどのくらいの数のアメリカ人がどこにいるのか全く把握していない」
 「このアフガニスタン撤退の大失策に対して、バイデンがやっているのは他人のせいにすることだけだ」
 「バイデン国務省が言っているのは、『自分でシェルターを探して、我々が連絡するまでそこに隠れていろ』だ。一方、タリバンは空港への要所を全て制圧して人っ子一人入れない。
 「週末から信じられない数の人々が空港に向かって、なんとか米国はじめ西側が用意した輸送航空機に乗り込もうと命がけの行動を起こしていた。ハニティは、現在のそれは過去のことだという。「現在、それらほどんどの西側の輸送機はほぼ空でカブールを飛び立っている。何故なら、タリバンが空港への道を全て遮断して誰も入れないからだ」と語った。
 「現在、タリバンのテロリストは、一軒一軒家を回りながら、アメリカ人、その味方、アメリカに協力してきた通訳者たちを捜し出すためドアを叩いて捜し回っている。
 現在、これらアメリカ人は、一歩一歩タリバンの人質に近づいている。最悪は殺害される危機が迫っている。」
 ハニティは「バイデン政権の第一の優先順序はアメリカ人の救出だ。」
 「バイデンは、世界の中でのアメリカの信用を地に落とした。これだけの規模の最悪の事態にまだ終わりは見えない」と語った。

 バイデン米政権は、世紀の大失態をおかしましたね。アメリカの衰退を象徴するような出来事です。

2021.8.19
 タリバンのハシミ幹部がロイター通信のインタビューに応じ、新たな政治体制では「民主主義的な制度は全く存在しなくなるだろう」「どんな政治体制を採用するかは議論しない。イスラーム法に基づくことが明白だからだ」と強調しました。
 指導体制については、最高指導者のハイバトゥラー・アクンザダ師が率いる「統治評議会」が政権運営を担い、大統領は3人の副指導者から選出される可能性を示したとのことです。
 アクンザダ師は、律法学者出身で精神的指導者と見られます。副指導者は、タリバンの創始者オマル師の息子のヤクーブ師、中国などとの外交を行っているバラダル師、強硬な武装組織グループ「ハッカーニ・ネットワーク」の首領ハッカーニ師の3人。彼らが軍事、外交、財政などを分担しているようです。
 広報官が言うイスラーム法に基づく政治体制、イスラーム法の範囲内での女性の権利等が何を意味するかが問題。イスラーム法の解釈は、一義的ではなく、法を解釈する聖職者によって、大きく異なります。過激なオマル師を後継したアクンザダ師も極端な原理主義者と見られます。政権掌握後は、多少柔軟性のある解釈を示すのか。だが、従来と異なる解釈を打ち出せば、それへの反発が起こるでしょう。守旧派を心服させるほどのカリスマ性がアクンザダ師にあるのか。最高指導者の発する求心力の度合いが注目されます。

2021.8.19
 バイデン政権はアフガニスタンで世紀の大失態。ロイター通信とイプソス社が17日に発表した世論調査によると、バイデンの支持率は前週の53%から7ポイント下回って46%に落ち込み、1月の就任以来最低を記録。

トランプ前大統領
 「世界史でこれほど悲惨な扱いを受けた撤退作戦はない。多くの点で米国に大きな恥をもたらした」

共和党ブライアン・バビン下院議員
 「外交政策の失敗と無能なリーダーシップが招いた結果だ」

民主党ジャック・リード上院軍事委員会委員長
 「インテリジェンスに失敗があり、外交力と想像力が欠如していた」
ウォール・ストリート・ジャーナルの社説
 「(註 バイデン大統領は米同時テロ20年にあたる)9月11日の象徴的な期日に間に合うよう性急な全面撤退を命じた。敗北の代償は苦痛を伴うものとなるだろう」

 大規模で組織的な不正選挙で政権を奪ったバイデンは、アフガニスタンで地雷を踏みました。大統領がアメリカを恥辱の底に突き落としたのです。この世紀の大失態が世界にもたらす影響は、非常に大きなものになるでしょう。

2021.8.19
 山中泉氏が米国事情をFBポスト2021.8.19付けに書いています。
 昨年の大統領選で大統領選や各州の選挙結果をかなり正確に予測していたと山中氏が評価するのが、ラスムッセン・レポート。その最新のレポートが衝撃的だとして、山中氏は次のように書いています。
 「8月19日のバイデン大統領の支持率は46%で、不支持率が53%となった。さらに、バイデンを『強く支持する』は27%で、『強く不支持する』は45%。大統領支持率インデックスとしてはー18ポイントを記録した」
 また、ピープル・バンデット・デイリーのジャーナリスト、リチャード・バリスの発言を紹介しています。
 「意外に思うかもしれないが、オバマとトランプには共通点がある。二人とも熱狂的な支持者がいて、彼らは何があっても絶対に支持を止めない人たちだ。比較してバイデンにはそれがない。つまり支持率が落ちる時には、途中で支える支持層がないため、底無しに落ちると考えられる」

2021.8.20
 バイデンの大失態に、国際協調路線は欺瞞だったと欧州首脳が一斉に反発。山中泉氏のFBポストを紹介します。

元英国国際開発相、ローリー・スチュワート氏
 「バイデンは、米国のアフガニスタン政策の同盟国に屈辱を与えた。彼は自らの無能力をさらし出し、西側同盟国を恥ずかしめた」

前英国独立党党首、ナイジェル・ファラージ氏
 「英国は米国の次に大きな死傷者をアフガニスタンで出した最大の同盟国だ。その英国に対して何の相談もなくこの撤退は行われた。その英国に、このようなことをして今後アメリカを信頼しろと言うのか?」

2021.8.20
 ウイグル人イスラーム教徒が、中国共産党と連携するタリバンの欺瞞を批判。

日本ウイグル連盟会長、トゥール・ムハメット氏
 「タリバンは記者会見で『イスラム法シャリアに従って国を管理する』と語っていますが、聞きたいのは、タリバンのどの行動がシャリア法を守ってきたのか?タリバンのやってきたことは殆どシャリア法違反ではないのか?
 奴らはこのように嘘ばかり言って、世界を騙しています。
 彼らはもしシャリア法に従っているので有れば、まずはチャイナ共産党と組むことは違法な行為です!」

 次回に続く。

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アフガン3~タリバンの由来と現状

2021-08-24 12:19:01 | 国際関係
2021.8.17
 BBCがタリバンについて概説したものを紹介します。質の高い記事ですが、共産中国との関係には全く触れていません。その点には欠陥のある記事です。

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【解説】 タリバンとは何者か 米軍撤収のアフガニスタンで復権
BBC News 2021/08/16 21:58
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 アフガニスタンで政権を握っていたタリバンは2001年、アメリカ主導の軍によってその座を追われた。だがここ数カ月間、攻勢を続け、ついに権力を奪還したと宣言した。
アメリカは20年間にわたる戦争の末、9月11日までに完全撤収する方針でいる。その間、武装勢力のタリバンは主要都市を次々と制圧。首都カブールも支配下に置いた。
 タリバンは2018年にアメリカと直接交渉を開始した。2020年2月には、カタール・ドーハでの和平交渉で双方が合意。米軍が撤収する一方、タリバンは米軍への攻撃をやめるとした。タリバン支配地域において過激派組織アルカイダなど武装勢力の活動を認めないことや、国内での和平交渉を進展させることも盛り込まれた。
 しかしタリバンはその後、アフガニスタン治安部隊や一般市民への攻撃を続け、国内各地で急速に勢力を拡大した。

権力を掌握するまで
 パシュトー語で「学生」を意味するタリバンは、アフガニスタンから旧ソ連軍が撤退した後の1990年代前半に、パキスタン北部で出現した。パシュトゥーン族がメンバーの多数を占めている。イスラム教スンニ派の強硬路線を説く、サウジアラビアの資金を受けた神学校で最初に誕生したとみられている。
 パキスタンとアフガニスタンにまたがるこのパシュトゥーン地域でタリバンは、政権を握れば平和と治安を回復させ、独自の厳格なシャリア(イスラム法)を導入すると約束した。
 タリバンは影響力を、アフガニスタン南西部から急速に広げていった。1995年9月には、イランと接するヘラート州を占拠。そのちょうど1年後には、首都カブールを掌握し、当時のソ連の占拠に抵抗したアフガニスタンのムジャヒディーン創設者の1人、ブルハヌディン・ラバニ大統領の政権を追放した。1998年には、アフガニスタンの90%近くを支配下に置いた。
 ムジャヒディーンの横暴や内紛に嫌気が差していたアフガニスタン人は、タリバンが最初に登場した時、おおむね歓迎した。汚職を撲滅し、無法状態を改善させたほか、道路を作り、支配地域の安全を確保して商売を活発化させたことなどから、当初は支持された。
しかしタリバンは、独自の厳格なシャリア法の解釈に沿った罰則を導入、もしくは支持した。殺人や不貞の罪を犯した人を公開処刑し、窃盗で有罪となった人の手足を切断した。男性にひげを伸ばすよう命令し、女性には全身を覆うブルカの着用を義務付けた。
 タリバンはテレビや音楽、映画を禁止。10歳以上の少女が学校に通うことも認めなかった。こうしたことから、人権や文化を侵害していると、非難が集中した。2001年には、アフガニスタン中央部バーミヤンの有名な仏教遺跡を、国際的な非難の声が高まる中で爆破した。
 パキスタン政府は、自分たちがタリバンを創設したわけではないと繰り返し主張している。だが、初期のタリバンに加わった多くのアフガニスタン人が、パキスタンのマドラサ(宗教学校)で教育を受けたのはほぼ疑いない。
 パキスタンはまた、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)と並び、タリバンがアフガニスタンで政権を握っていた時期にそれを承認した3カ国の1つでもある。タリバンと外交関係を解消したのは、パキスタンが最も遅かった。
 タリバンはある時期、パキスタン北西部の支配地域から、同国を不安定な状態に陥れると脅したことがあった。パキスタンのタリバンによる攻撃の中でも、大きな注目と国際的な非難を集めたのが、2012年10月にミンゴラで帰宅途中だった女子生徒マララ・ユサフザイさんが襲われた事件だった。
 その2年後には、ペシャワールの学校で集団殺害を起こし、米軍などによる大規模な軍事攻撃が実施された。それにより、タリバンのパキスタンでの影響力は減少した。2013年にはパキスタンのタリバンの主要人物が少なくとも3人、米軍のドローン攻撃で殺された。うち1人はハキムラ・メスード指導者だった。

アルカイダの「保護区」
 2001年9月11日の米同時多発テロ事件で、世界の関心がアフガニスタンのタリバンに集まった。タリバンは、攻撃の首謀者とされた故オサマ・ビンラディン容疑者とアルカイダを保護していると非難された。
 2001年10月7日、米主導の有志連合軍がアフガニスタンへの攻撃を開始。12月の第1週にはタリバン政権は崩壊した。世界最大規模の捜索活動が行われたが、当時の指導者ムハンマド・オマル師や、故ビンラディン容疑者ら重要人物は捕捉を逃れた。
 多くのタリバン幹部はパキスタンのクエッタ市に避難し、そこからタリバンを指示していたとされる。「クエッタ評議会」と呼ばれたが、パキスタン政府はその存在を否定した。
 アフガニスタンでは外国部隊の規模が増大したにもかかわらず、タリバンが影響力を回復し、拡大していった。国内の大部分が不安定な状況に陥り、暴力も2001年以降で最悪のレベルに増えた。
 カブールでもタリバンによる攻撃が数多く発生。2012年9月には、北大西洋条約機構(NATO)のキャンプ・バスチョン基地を襲撃して大きく報じられた。
 タリバンは2013年、カタールに事務所を開設すると発表。交渉による和平への期待が高まった。しかし、すべての関係者が深い不信感を拭えず、暴力はやまなかった。
 2015年8月になって、タリバンはオマル師の死亡を2年以上隠していたと認めた。パキスタンの病院で健康上の問題から死去したとされた。その翌月、タリバンはしばらく続いていた内紛を終息させ、オマル師の右腕だった新指導者マンスール師を中心に組織としてまとまると表明した。
 ほぼ同時期、タリバンは2001年の敗北以降で初めて、州都を制圧。クンドゥズ州の州都で戦略上の要衝となっているクンドゥズ市を支配下に置いた。
 マンスール師は2016年5月、米軍のドローン攻撃で殺害された。ナンバー2だったマウラウイ・ハイバトゥラー・アクンザダ氏が最高指導者になり、現在もトップの座にある。

撤退へのカウントダウン
 2020年2月にトランプ米政権とタリバンが和平合意に至ると、タリバンは都市部や軍施設に対する複雑な攻撃から、標的を絞った暗殺へと戦術を変えた。アフガニスタンの人々は恐怖におののいた。
 標的となったのは、ジャーナリスト、裁判官、平和活動家、社会的地位のある女性だった。タリバンは過激思想を変えず、戦術だけ変えた様子がうかがえた。
 アフガニスタン政府関係者らからは、国際的な支援なしでは政府はタリバンに対してもろいとの深刻な懸念が出ていた。しかし、アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年4月、すべての米軍部隊が、世界貿易センター崩壊から20年に当たる9月11日までに撤退すると発表した。
 タリバンは20年にわたる戦争で超大国の攻撃に耐え抜き、広大な地域を掌握した。そして外国部隊が撤退を始めると、再び政権を倒したのだった。
 タリバンの現在の規模は、2001年に政権を失って以降最大で、最も人員が多いとみられている。フルタイムの戦闘員は最大8万5000人だとNATOは推定している。
 進攻のスピードは大方の懸念より速かった。米軍主導のアフガニスタン駐留部隊のオースティン・ミラー司令官は6月、アフガニスタンが混迷状態の内戦に向かいかねず、「世界にとっての懸念」だと話していた。
 だが多くの場合、タリバンは主要都市を戦闘せずに手に入れている。市民の犠牲を出さないよう、政府軍が投降したからだ。
 米情報機関は6月、アフガニスタン政府は米軍が去ってから6カ月以内に倒れると結論づけたと報じられていた。

アフガニスタン情勢の変化:アメリカの作戦展開とタリバンの進攻

2001年10月: 9月11日の米同時多発テロを受け、ブッシュ米政権主導によるアフガニスタン空爆開始
2009年2月: アメリカはさらに兵士1万7000人の増派を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束
2009年12月: バラク・オバマ米大統領(当時)は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始すると表明
2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了
2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退延期を発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの
2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた
2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した
2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けた増派表明
2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂
2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束
2021年4月: ジョー・バイデン大統領、9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明
5月: 米軍とNATO各国軍の撤退開始
5月: タリバン、南部ヘルマンド州でアフガニスタン軍へ大攻勢開始
6月: タリバン、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃開始
7月2日: カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍やNATO加盟各国軍の駐留部隊の撤収完了
7月21日: タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部
8月6日: 南部ザランジの州都をタリバン制圧。タリバンが新たに州都を奪還するのは1年ぶり
8月13日: 第2の都市カンダハールを含め4州都がタリバン支配下に
8月14日: タリバン、北部の要衝マザーリシャリーフを制圧
8月15日: タリバン、東部の要衝ジャララバードを無抵抗で制圧。首都カブール掌握
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2021.8.17
 バイデン米大統領が8月16日、国民向けに演説。タリバンが一気に実権を掌握したのは「アフガン政府首脳らが国外に逃れ、国軍部隊が戦うことを拒否しているためだ」とし、「アフガン国軍が戦う気のない戦争で米兵が戦死することがあってはならない」と訴えました。
 その国の首脳が政権を放棄し、国軍が反政府勢力と戦う意思がない状態であれば、外国(米国)が自国の兵士の血を流してまで支援する必要がないのは道理です。だが、見方を変えると、なぜ米国はこれほどまでアフガニスタンで信頼を得られなかったのか。タリバンの方が米国頼りの政権よりマシと考えるアフガン人が増えたからの結果ではないのか。
 アフガンからの撤退は、トランプ前大統領が決め、タリバンと合意も結びました。米軍の撤収も計画的に実施予定で、バイデンは基本的にそれを受け継いで撤収を進めています。トランプがもし再選していたら、今回の結果を避けられたか。否、結果に至るまでの時間の早い、遅いの違い程度でしょう。
 そもそもアメリカがアフガニスタンに侵攻したことが間違いだったのであり、その間違いのもとは、9・11にあります。私は、アメリカ同時多発テロ事件に米国政府がなんらかの関与をしたという見方を持ち続けています。事件後のイラクとアフガンへの侵攻は、事件の前からの計画的な行動だったとも見ています。共和党ブッシュ子から民主党オバマに政権が代わっても事件のなぞの解明はされず、共和党トランプも事件を封印したままにしました。しかし、9・11の真相を解明しないと、アメリカがなぜアフガンで失敗したかの総括も出来ないでしょう。

2021.8.18
 タリバンは「アフガニスタン・イスラーム首長国」という名称の国家の樹立を宣言しました。
 中谷元元防衛相のFBポスト2021.8.17付けから要所を抜粋します。タリバンと「イスラーム国」(IS)の連携の危険性を強調しています。
 「なぜ、こんなにタリバンの侵攻が早いのか、それは内政の不安定にあり、ガニ大統領とアブドラ国家和解高等評議会議長が勢力争いを繰り広げ、深刻な腐敗が横行し、アフガン政府が国を守り、国民を守る能力と意志を欠如させていたからです。アフガンの1人あたりGDPは世界最低であり、国家が国民の安全や生活に十分な保障を提供できず、忠誠心も、愛国心も育たないまま、部族や宗派に基づく分断や利益誘導が繰り返されました」
 「治安と統治の空白を埋める形でタリバンが復活し、過激派組織『イスラム国』(IS)が潜伏し、テロの温床となっており、中国やロシアへの影響力を拡大させ、民主主義の退潮が加速します」
 「問題は、タリバンと『イスラム国』(IS)が連携したテロ国家の再来となることであり、国際社会が再び、テロリストの恐怖におびえることです」
 「アフガニスタン国内には、5000人以上の武装したIS戦闘員が存在しており、隣国のタジキスタンとトルクメニスタンにも派兵を進め、中央アジア各国の国境警備隊と武力衝突が発生しています」 
 「日本は、中東の情報収集を強化し、タリバンと交渉できるルートを強化しておくべきです。そして、タリバンには、日本から、ISによる革命の輸出(国際テロリズム)を阻止するよう国連活動や『積極的平和主義』の理念と行動 を発揮することが 求められています」
 さて、タリバン政権が「イスラーム国」(IS)と連携し、アフガニスタンが IS のテロ活動の根拠地になることを、中国は赦さないはず。タリバンは、中国と結ぶか、IS と組むかの二者択一でしょう。新政府が IS と離反すれば、タリバン対 IS というイスラーム過激組織間の抗争になるのか。
 アフガニスタンでは、タリバン、IS 以外にもアルカーイダなど約20の武装組織が活動しているとのことゆえ、タリバン政権の統治が安定しなければ、これらの間の闘争が激化する可能性があります。

2021.8.18
 タリバンが権力を掌握したことで、同国が再びイスラム過激派の温床になるとの警戒感が広がっている。特にタリバンと関係が深い国際テロ組織アルカーイダの伸長が懸念されると産経新聞2021.8.18付けの記事は書いています。
 アフガンではアルカーイダも活動しています。
 「タリバンは1990年代、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン容疑者を『賓客』として迎え入れ、原理主義化が進んだ。2001年の米中枢同時テロ後、米国が求めた同容疑者の身柄引き渡しを拒んだことで、約20年続くアフガン戦争が始まった。
 アルカーイダの現指導者のアイマン・ザワヒリ容疑者は、16年にタリバンの指導者になったハイバトゥラ・アクンザダ師を祝福。ザワヒリ容疑者と個人的に関係を持つタリバン幹部もいるとされる」
 産経の記事はこのように書くとともに、ISについて次のように書いています。
 「ISはアルカーイダ系から分裂アフガンで過激派間の闘争が激化する恐れもある。ISはアルカーイダ系から分裂した組織で、ザワヒリ容疑者は14年、ISとの関係断絶を表明した。タリバンはISがタリバン構成員を勧誘して勢力を拡大したため、IS掃討作戦を展開したこともある。
 ISはタリバンとアルカーイダを『偽善者』と見なしている。インドのシンクタンク、オブザーバー研究財団の調査(今年1月発表)によると、ISは米国と和平協議を行ったタリバンを『ジハード(聖戦)から背教』したと見ており、アルカーイダにも批判を加えている」
 タリバン、アルカーイダ、ISの三つ巴の戦いもあり得るわけです。そして、記事は次のように書いています。
 「各組織が離合集散する可能性もあるが、動向把握は困難となりそうだ。欧米諸国がアフガンで各組織の実態を把握する際、アフガン政府の情報機関『国家保安局』が協力してきたが、タリバンにより解体か組織改編される可能性がある。タリバンは報道の自由にも制限を加える可能性が高い。外部による有効な監視体制の構築が求められている」
 タリバン政権のアフガンが国際社会の承認し得る対象になれば、大使館を置いたり、報道機関を置いたりして、情報を集め分析することが出来るでしょうが、到底承認出来るような状態でなければ、タリバン政権のアフガンは、欧米諸国にとって巨大なブラックボックスと化すかも知れません。その中が様々なテロ活動の温床になっているが、実態が全く分からないというようなブラックボックスになると面倒です。

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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アフガン2~タリバンがアフガンを電撃制圧

2021-08-23 09:49:10 | 国際関係
●ドキュメント タリバンがアフガンを電撃制圧

2021.8.6
 アフガニスタン情勢。タリバンが攻勢を強め、政府軍は劣勢。タリバンが国内全407地区のうち223地区を制圧。政府が管理下に置く地区は68にまで減少しているとのことです。

2021.8.9
 タリバンが今月6日から8日の間に、南西部1州、北東部1州、北中部2州の計4つの州都を「統制下に置いた」と表明しました。9日にはさらに2つの州都を支配下に置いたとの情報があります。34の州都のうちの6州都になります。米国の支援を受けた政府軍の劣勢が色濃くなっています。
 タリバンの背後には、共産中国がいます。タリバン=中共対米国という構図は、サミュエル・ハンチントンの警告を思い起こさせます。ハンチントンは、中国の台頭により、西洋文明対イスラーム=シナ文明連合の対立の時代が来ることを予想しました。重点は、台頭する中国がイスラーム勢力を取り込んで、米国との対立を強めることにあります。対立が激化する場所として、古代からの地政学的な要衝、アフガニスタンがその一つとなることは間違いないでしょう。
 中国共産党は、新疆ウイグル自治区でイスラーム教徒を迫害しているにも関わらず、イラン、パキスタン、上海協力機構加盟の中央アジア諸国などのイスラーム系国家との連携を拡大し得ています。アフガンを影響下に置くことに成功したら、その拡大は一層進むでしょう。米国は何をやっているのか。

2021.8.12
 タリバンが34州のうち9つの州都を支配下に。政府軍は戦意喪失して敗走しているのか、ドミノ倒しのような状態。

時事通信の記事2021.8.11付けより抜粋・編集
 「アフガンからの報道によると、タリバンは11日、北東部バダフシャン州の州都ファイザバードを制圧したと宣言した。タリバンは10日、北東部バグラン州の州都プリフムリや西部ファラー州の州都ファラーも押さえており、制圧した州都は計9カ所となった」
 「バイデン米大統領は10日、アフガニスタンで反政府勢力タリバンが攻勢を強める中でも、今月末に期限が迫った駐留米軍撤収を見直す考えはないと明言した。米国が引き続き事態解決に関与するとしつつ、撤収の決定自体は『後悔していない』と語った。
 バイデン氏は、アフガン軍事作戦で『20年間に1兆ドル(約110兆円)以上を費やし、多数の米国人が死傷した』と指摘。『彼ら(アフガン政府)は自分たちのため、自分たちの国のために戦わねばならない。(兵員の)数ではタリバンに勝っている』と述べ、米軍撤収後はアフガン政府軍が治安維持に全面的な責任を負うべきだと主張した」

産経新聞の記事2021.8.11付けより抜粋・編集
 「攻撃は都市部に迫っており、米紙ワシントン・ポストはカブールが3カ月以内に陥落する可能性があるとの分析を報じた」「首都カブールの陥落も懸念されている」
 「政府軍は30万人規模の兵力を抱えながら、汚職が蔓延し、士気低下も激しい。兵力6万人とも指摘されるタリバンに圧倒される展開だ」
 「米国は米中枢同時テロを首謀した国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者をかくまっているとしてアフガン攻撃に着手。当時のタリバン政権は崩壊した。ただ、タリバンが農村部を中心に勢力を保ち続けたことで、米軍の駐留は長期化し、支出も膨らんだ。米ブラウン大のまとめによると、米国の累計戦費は2兆2600億ドル(約250兆円)に達した」
 「トランプ前政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたボルトン元国連大使は10日、産経新聞の取材に『駐留米軍の全面撤収は重大な誤りだ』と指摘。『タリバンは近い将来に全土を掌握するだろう』との見通しを示し、アフガンが再び対米テロの拠点になりかねないと懸念を表明した。
 ボルトン氏はその上で、最悪の事態を食い止めるには『今が最後のチャンスだ』と語り、バイデン氏に対して米軍の全面撤収方針を早急に撤回し、小人数の米軍部隊の駐留を継続させるよう呼びかけた」
 「タリバンが全土を支配する事態となれば、アルカーイダなどテロ組織が活性化し、アフガンが再びテロリストの温床と化す可能性は拭えない。かつてのタリバン政権下ではイスラム法が厳格に解釈され、むち打ちや処刑が公然と行われており、人権弾圧の再来を懸念する声も上がっている」

2021.8.13
 黒木昭宏氏のFBポスト2021.8.13付けを紹介します。
 「ちょうど20年前の911事件の後アメリカがアフガニスタンに介入してタリバン政権を倒したが、20年経って元に戻ることになった」
 「数十万人の犠牲と膨大な戦費の浪費の末、結局事態は2001年の時点に逆戻りする。ただそのままではない。

①タリバンの過激化、もはや今のタリバンには「穏健派タリバンの」の影も形もない。長いアメリカとの戦いで先鋭化したタリバンしかいない。
②中国の影響の増大。もともとタリバンは中国は中国国内でイスラム教徒を弾圧しているとしてあまり中国へ良い感情は持っていなかったがアメリカとの紛争をへて、中国の一番の同盟国であるパキスタンとともに中国に前以上に接近しているし、中国も中東への足がかりとしてアフガニスタンを重視してくるだろう。
 ソ連はそのアフガン侵攻で結局瓦解した。万が一今後アメリカが中国との戦争(競争)に負けることがあれば同じ様にアフガン侵攻が原因と一つと必ず言われるだろう」

2021.8.13
 タリバンが第3の都市ヘラートに続いて第2の都市カンダハルを占拠。首都カブールも危うくなりつつあります。

産経新聞の記事2021.8.13付けより
 「米国は2001年10月、米中枢同時テロを首謀したウサマ・ビンラーディン容疑者をかくまっているとしてアフガン攻撃に着手し、当時のタリバン政権は崩壊した。メンバーは農村や山岳地帯に逃れ、ゲリラ戦で抵抗しつつ力を蓄えた。
 雌伏したタリバンを支援したのは隣国パキスタンとされる。宿敵インドと対峙する上で、戦略的後背地のアフガンに親パキスタン政権を有したいとの思惑があるようだ。ロシアもタリバン支援に乗り出していると報じられている。
 アフガンの政治評論家、ハキヤール氏は『タリバンは海外支援を受けながら、駐留米軍との闘いを約20年続け、統制のとれた軍事組織としての態勢を整えていった』と分析。そのことが『電撃的な侵攻を可能とした』と話した」
 確かに20年前に政権を追われた時のタリバンと、今のタリバンは全然違う。壊滅した「イスラーム国(IS)」を上回る勢力になりかねない。

2021.8.15
 タリバンは、全34州都のうち8割超の28カ所を押さえたと伝えられます。各種報道の予想より遥かに早く、首都カブールの間近に迫り、ガニ政権に政権移譲を迫っている模様。ミルザクワル内務相代行はビデオ声明を発表し、「暫定政府への権力移譲が平和的に行われる」との見通しを示しました。
 政府側が権力の移行に言及したのは初めてとのことですが、腰砕けが早すぎます。政府側には政権を守ろうという意思がもともと無くなっていたのではないでしょうか。

2021.8.16
 急展開がさらに加速。タリバンがカブールに入り、首都陥落。その前に、アシュラフ・ガニ大統領は隣国タジキスタンへ出国。副大統領も出国。タリバンが大統領府を掌握。
 米軍の撤収予定の8月末まで2週間残っていますが、激しい対米掃討戦が続けられるのか。米国政府は前政権残党の政権移譲を支援するのか。

2021.8.16
 ほぼ無血開城で首都陥落。大統領府に入ったタリバンは、戦争終結宣言。
 こうした結果になる数日前に書いた遠藤誉氏(中国問題グローバル研究所所長)の 記事が、Newsweek 2021.8.15付に「タリバンが米中の力関係を逆転させる」との題にて掲載されました。要所を抜粋します。多少つなぎを補います。

遠藤氏
 「米軍撤収宣言と同時に中国とタリバンは急接近。一帯一路強化だけでなく、ウイグル問題のため習近平はアルカイーダ復活を認めないだろう。となると、アメリカができなかったことを中国が成し遂げ、中国が世界の趨勢を握ることにつながる」
 中国の王毅国務委員兼外相は、7月下旬、天津市でタリバン幹部と会談。その際、タリバン政治委員会のバラダール議長は、次のように発言。
 「中国は常にアフガニスタン国民の信頼できる良き友人であり、アフガニスタンの平和と和解のプロセスにおいて中国が果たした公平で積極的な役割は大きい」
 「中国がアフガニスタンの将来の復興と経済発展に大きな役割を果たすことを期待している。そのための適切な投資環境を作っていきたい」

 そして、中国の後ろ盾を確認したタリバンは、8月に入って一気呵成の大攻勢をかけました。
 中国共産党とタリバンの連合は、タリバンは中国新疆ウイグル自治区のイスラーム教徒(同じスンナ派)への迫害を容認し、また反中的なアルカイーダの勢力拡大を防止するという盟約に基づいています。イスラーム教徒は、スンナ派とシーア派に分かれて対立するだけでなく、親米派と反米派、親中派と反中派等に分かれて抗争しており、タリバンは中国共産党と結ぶことでアフガニスタンにおける政権奪還を図りました。
遠藤氏
 「ここアフガニスタンが、中国寄りの、というより反米のタリバン勢力によって制圧されれば、『世界は中国のものになる』と中国は思っているだろう。
 米中覇権争いの天下分け目の戦いの最中に、アメリカは中国に巨大なプレゼントをしてあげたことになる」
 「中国がパキスタンとの関係を『パキスタン回廊』などと呼んで緊密化させ、一帯一路の西側への回廊をつなげてきたことは周知のことだが、イランを始めとした中東諸国とのつながりにおいて、一か所だけ『抜けている地域』があった。それは正に今般米軍が撤収する『アフガニスタン』で、ここは長きにわたって紛争が続いていたので、周辺国との交易などというゆとりはなかったのである。
 しかしアフガニスタンが中国寄りのタリバンによって支配されれば、アフガニスタンは完全に中国に取り込まれて、(略)『一帯一路』構想の中に入っていくことだろう」
 「ポコッと抜けていた地域を、アフガニスタンのタリバンがつないでくれれば、北京から西側は『中国のものだ』と習近平は喜んでいるだろう」
 「もし中国がテロ組織撲滅(註 アルカーイダ)をやり遂げてアフガニスタンの経済復興と国際社会への復帰を成し得たならば、世界は中国の方が統治能力を持っているとみなす可能性がある。すなわち、米中の力関係は、タリバンによって逆転するかもしれないという、もう一つの『恐るべき現実』が横たわっていることになるのかもしれない」

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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9・11から20年~タリバンがアフガンを制圧1

2021-08-22 10:35:08 | 国際関係
はじめに

 9・11から20年となる本年、アフガニスタン戦争は米軍が撤退し、タリバンが政権を奪還するという結果になった。その経緯と最近の展開を記す。

●9・11後、アメリカがアフガニスタンに侵攻した

 2001年(平成13年)9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が起こった。通称9・11と呼ばれるこの事件は、現代史を画する大事件である。だが、その真相はほとんど解明されていない。事件には不審な点が多くある。詳しくは、拙稿「9・11~欺かれた世界、日本の活路」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12g.htm
 事件が起こるや、共和党ブッシュ子米大統領は、「新しい十字軍戦争」を唱導し、国民に支持・協力を呼びかけた。超大国の最高指導者が、「十字軍」というキリスト教諸国とイスラーム教諸国の宗教戦争を宣言するという異常な事態となった。報復に沸騰する世論を後押しにして、アメリカは、アフガニスタンに進攻した。テロはイスラーム教原理主義勢力タリバンによるものとし、アメリカはタリバン政権を倒すとして、2001年10月7日イギリス等とともに、アフガニスタンへの空爆を開始した。
 ブッシュ子政権は、この戦争は従来のような国家と国家の戦争ではなく、テロリスト集団と国家が戦うという新しい戦争だとした。この規定は、従来の戦争の概念を変えた。
 戦争目的は、アルカーイダの指導者オサマ・ビンラディンを庇護するタリバンが活動の本拠としているアフガニスタンに侵攻して、テロの首領を捕らえ、テロリストの巣窟を撃つこととされた。侵攻後、連合軍は圧倒的な優勢のうちに作戦を進め、瞬く間にアフガニスタンを占領し、12月には作戦を終了した。反米的なタリバンを追い払い、親米的なハミド・カルザイを大統領の座につけた。これによって、戦争は12月に終結したことになっている。だが、これで戦争は終わらなかった。その後も米軍が駐留し、米国及びアフガニスタン政府とタリバンとの戦いは、20年に及んだ。
 アフガニスタンは、西アジアのイスラーム教国である。正式な国名を「アフガニスタン・イスラーム共和国」という。人口の85%がスンナ派、14%がシーア派、それ以外の宗教が1%という構成であり、イスラーム教徒が99%を占める。
 アフガニスタンは、ユーラシアにおける地政学的な要衝にある。中東にまさるほどの石油が埋蔵されているというカスピ海沿岸地方から石油を搬送する通路ともなっている。また世界最大のアヘンの生産地でもある。アメリカはここに重大な利権を持ってきた。アフガン侵攻には、利権の維持という理由もあった。
 9・11後、アメリカは、同時多発テロ事件を計画・実行したとして、オサマ・ビンラディンを主犯に名指した。だが、この人物についてはCIAとの関係など不可解な点がいろいろあり、アメリカの協力者説、替え玉説、死亡説などが飛び交った。
 アメリカは、アフガニスタン侵攻に続いて、2003年(平成15年)3月19日、イラクに侵攻した。サダム・フセインを除いて民主化を進めるためとした。ブッシュ子政権は、9・11の前に、イラクの石油目当てに、サダム・フセインを追放するための戦争を計画していた。イラクは、石油埋蔵量で世界第2位である。アメリカの計画を知ったフセインは、攻撃を受けないように、国連安全保障理事会常任理事国のフランス・ロシア・中国にイラクの石油を売っていた。安保理がイラク攻撃を決議しないように図ったのである。
 しかし、アメリカは、フセインはアルカーイダを支援しており、大量破壊兵器を渡すおそれがある。テロリストが核兵器を持てば、国家が相手と違って抑止力が働かず、防ぎようがない。だから、脅威が感じられる時点で先制攻撃をしなければならないーーこういう理屈で、自衛権の行使として先制攻撃を正当化した。これは、先制攻撃に関する新しい解釈だった。
 国連安保理でフランスが反対したので、アメリカは安保理決議なく、イギリスなどと共に空爆を開始した。湾岸戦争以来のイラク攻撃だった。第2次イラク戦争とも言われる。
 わが国に続いて、多くの国々が、アメリカを支持して参戦した。NATOは、結成後初めて集団的自衛権の行使として参戦した。集団的自衛権は、集団安全保障を補完するのではなく、集団安全保障体制の不在を埋めているという国際社会の実態が浮かび上がった。
 侵攻の翌月には米英連合軍が首都バクダードを占領し、フセイン政権は打倒された。これで正規軍同士の戦闘は終了し、2003年(平成15年)5月ブッシュ子大統領は「大規模戦闘終結宣言」を出した。だが、終戦宣言後もイラクの治安は回復せず、内戦状態が続いた。同年12月13日米軍はサダム・フセインを逮捕し、アメリカは囚われたフセインを世界の耳目にさらして勝利宣言を行った。
 ブッシュ子大統領は、開戦理由の第一をイラクの大量破壊兵器保有としていた。ところが、アメリカが派遣した調査団は、2004年10月、「イラクに大量破壊兵器は存在しない」という最終報告を提出した。大量破壊兵器を保有しているというのは、CIAの情報だった。それが誤っていたことが明らかになった。その結果、この戦争の正当性は、根底から揺らいだ。ブッシュ子政権は、誤情報を鵜呑みにしたのか。それとも、核兵器・生物兵器・化学兵器は存在しないことは分かっていて、戦争を始めたのか。真相は明らかではない。アメリカの議会も、国連安保理も、この点を徹底的に追及しなかった。
 イラク戦争の大義は、失われた。それにより、9・11同時多発テロ事件に関する疑問が、アメリカ国民の間に広がった。わが国においても、この事件を疑う人が増えた。イスラーム文明の諸国では、なおさらだろう。アメリカ同時多発テロ事件は、拙稿「9・11~欺かれた世界、日本の活路」に詳しく書いたように、非常に謎の多い事件で、真相は今もほとんど解明されていない。

●20年戦争を続けたアメリカが撤退へ

 2008年(平成20年)に民主党のオバマが米国大統領となった。オバマは、9・11の真相解明を行うことなく、共和党ブッシュ子政権の中東政策を引き継いだ。若干の政策変更は行いつつも、基本的な方針は変えることがなかった。アフガニスタン戦争、イラク戦争を引き継ぎ、その収拾を図ったが、戦争終結は容易でなかった。
 オバマ政権は、ブッシュ子政権によって9・11の主犯であるとされたオサマ・ビンラディンの追跡を継続した。ようやく2011年5月2日、オサマは、米国海軍特殊部隊が行った軍事作戦によって死亡したと報道された。だが、CIAが本物だと断定した2002年発表のオサマのテープは、スイスの専門機関が声紋分析し、「替え玉による録音」と報告した。本人は既に相当前に死亡しており、この時、死亡が発表されたのは替え玉だった可能性が指摘されている。オサマ・ビンラディンの死亡発表後も、アフガニスタンの政情は安定せず、タリバンは農村や山岳部で反政府武装闘争を続けた。
 タリバンは、1990年代前半に、パキスタン北部で出現した。1979年にアフガンに侵攻した旧ソ連が撤退した後のことである。メンバーは、パシュトゥーン族が多数を占めている。パキスタンがタリバンを育成・支援してきたと見られる。またパキスタンと連携している共産中国が背後にいて、アフガニスタンに触手を伸ばしてきた。習近平が「一帯一路」構想を打ち出すと、アフガニスタンの地政学的な重要性が増した。
 オバマ大統領は、2014年(平成26年)中にアフガニスタンからの米軍の完全撤退を行うと発表した。だが、タリバン側は停戦の意思を示さず、オバマ大統領は撤退を2016年末に延期した。ようやく2015年(平成27年)7月に、政府とタリバンによって、和平を目指す初の公式協議が行われた。だが、タリバンの最高指導者オマル師が2年以上前に死亡していたことが暴露され、話し合いは頓挫した。同年12月、首都カブール北方の米空軍基地近くで自爆テロが行われ、米兵6人が死亡し、タリバンが犯行を認めた。その事件により、不安定な情勢を踏まえて、米国は2016年末までの完全撤退を断念した。
 2016年(平成28年)1月11日、アフガニスタン和平に向けたアフガン、パキスタン、米国、中国による初の4者協議が、パキスタンの首都イスラマバードで行われた。協議では、アフガン政府とタリバンの公式和平協議再開を目指すことが強調された。だが、タリバンは交渉の席に戻る意思を示さなかった。そのうえ、アフガン政府側には、実在しないのに給料だけが支払われている「幽霊兵士」が4割ほどもいることが明らかになり、治安維持能力の不足を露呈した。自律的に国家を統治できる状態には、ほど遠い状態だった。以後もアフガニスタンは、和平実現への道筋が見えない状態が続いた。
 2016年(平成28年)11月の大統領選挙では、こうした中東政策を行ったオバマ政権の8年間が問われた。アメリカは2001年以降、この年までに15年間、海外での戦争を続けていた。最も多い時期には20万人の米国兵士が海外に派遣された。そして、この間に約7000人が戦死した。それだけの犠牲を払っても、中東は安定せず、むしろ情勢は悪化・拡大してきた。また、その中でイスラーム過激派によるテロリズムが拡散・激化してきた。ヨーロッパ各国やアジア諸国等でテロ事件が続発し、アメリカでもテロ事件による被害が続いた。
 大統領選挙では、民主党では、オバマ政権の政策を評価し継承する前国務長官ヒラリー・クリントンが候補者の指名を受けた。共和党では、全く政治経験のない実業家ドナルド・トランプが候補者に選ばれた。激戦の末、トランプが勝利を獲得した。
 トランプは、オバマ政権の政策とそれを継承しようとするヒラリー・クリントンの政策を激しく非難した。過激な表現を多発することで、民衆の不満を自分への支持に向けた。「アメリカ・ファースト」を訴え、ブッシュ子、ビル・クリントン、オバマの各政権で共和、民主両党の主流派が推進してきたグローバリズムから自国第一主義への転換を唱えた。それが、米国の多くの国民の心を強くとらえた。その結果、オバマ政権が行ってきた路線から、ほぼ正反対の路線への転換が行われた。だが、トランプは、9・11の真相解明をしようとはしなかった。そこに彼の限界があることを私は指摘して来た。
 トランプは、就任後、共産中国に対して、強い姿勢を打ち出し、世界は米中対決という歴史的な段階に入った。トランプは2018年から米中経済戦争を優勢に進めつつ、対中東重視から対中国重視へのシフトを図った。アフガニスタン戦争の終結は、そのシフトにおける重大課題となった。
 トランプは、2017年8月、タリバンの勢力拡大を受けて米軍の増派を表明した。その一方で、トランプ政権はタリバンとの和平交渉を行った。2019年9月には和平交渉が一旦決裂したが、その後も数カ月におよぶ交渉を続けた末、2020年2月タリバンとドーハで合意に至った。アメリカは駐留軍の撤退を約束した。
 だが、トランプは、2020年11月の大統領選挙で民主党ジョー・バイデンに敗れた。敗れたと言っても大規模で組織的な不正の結果である。政権は共和党から民主党に移ったが、バイデン大統領は、トランプのアフガン駐留軍の撤退の方針を引き継いだ。そして、本年4月、アメリカ同時多発テロ事件から丸20年となる本年9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明した。翌5月から米軍とNATO各国軍の撤退が開始された。すると、タリバンは、南部ヘルマンド州でアフガニスタン政府軍へ大攻勢を開始した。6月には、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃を開始した。7月21日には、タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部が語った。だが、バイデン政権は、安易に米軍の撤退を進めた。アフガニスタンの内情やタリバンの実力をまったく見誤ったのだろう。
 8月に入って、タリバンは怒涛の進撃を行った。
 以下、8月以降、私がSNSに書いたものをドキュメント形式で掲載する。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

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地球温暖化が加速~IPCCの警告と中国という核心的問題

2021-08-21 10:09:03 | 地球環境
 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会は8月9日、第6次評価報告書を公表。温室効果ガスを多く排出すると、2021~40年に産業革命前と比べた世界の平均気温の上昇幅が1・5度を超える可能性が非常に高いとしました。直近の分析よりも10年近く早まりました。温暖化が加速しているということです。
 同報告書は、世界の平均気温が2011~20年に約1・09度上昇したと指摘。向こう数十年の間に二酸化炭素などの排出を大幅に減少しない限り、21世紀中に上昇幅が1・5度か2度を超えるとの見方を示しました。さらに、今世紀末には最大3・3~5・7度上昇する可能性があると警告しました。
 同報告書について、ロイターの記事は、地球温暖化が手に負えなくなる状況に危険なほど近づいており、人類に責任があることは「疑う余地がない」と報告書は表明したと強調しました。地球の平均気温は「疑いなく人間の活動によって引き起こされた」排出によって、すでに産業革命前の平均から1.1度上昇しており、大気中の汚染の緩和効果がなければさらに0.5度上昇していたとみられるとも紹介しています。
 デイビッド・ウォレス・ウェルズが、2019年に出した著書『地球に住めなくなる日―「気候崩壊」の避けられない真実』(NHK出版)に書いた灼熱の地球の現実化が早まりそうな勢いです。私は本書の紹介文を下記に掲示しています。
 拙稿「『地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実』の衝撃」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09o.htm
 産経新聞は、8月11日の社説「主張」に、私の年来の主張に通じることを次のように書きました。
 「IPCCの今回の報告書に率先して対応すべきは中国である。中国の二酸化炭素排出量は世界全体の約3割を占め、世界1位であるだけでなく、2位の米国に倍する突出した規模だ。 
 にもかかわらず、中国は今後9年間、二酸化炭素の排出増を続けることを公言している。さらには中国から低効率の石炭火力発電が途上国に広まる可能性もある。
 中国が舵を切らないかぎり、大気中の二酸化炭素濃度の増加は止まらない。習近平国家主席が今回のIPCCの報告書の警鐘を馬耳東風で聞き流すことのないよう、COP26での先進各国による強い説得を期待する」
 地球温暖化の主な原因は人間の活動ではないという見方、化石燃料を大量に使う経済活動を規制する必要はないという意見がありますが、それらの論は論者の意図に関わらず、共産中国の政策を容認または側面支援する結果になります。
 中国は、二酸化炭素を出しまくって経済成長し、その経済力で猛烈な軍拡をし、その軍事力で世界覇権を獲得しようとしています。地球環境を破壊しながら世界支配を実現しようとしているわけです。温暖化問題は、こういう観点からも論じる必要があります。産経の社説はそこまで書いていませんが。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
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