ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

食と健康と日本の再建8

2007-02-27 09:58:08 | 教育
●薬物依存をやめ、医食同源へ

 前回、西洋医学への過信について書いた。その続きを書く。
 病院に行けば、ほとんど必ず薬を与えられる。渡された人は、単純にそれが薬であり、薬を飲めば病気はよくなると信じている。しかし、薬とは本来、①病に適したものを、②適量に用い、③その病が治る瞬間だけが薬である。薬は病に効いてこそ薬であり、誤り用いる時は、毒に変ずるものである。
 市販されている薬について、①②③を考えてみよう。

①市販薬は鉱物性のものが多い
 西洋医学の薬は、鉱物性のものが多い。鉱物性の薬は、体内に残留しやすく、長期間の服用は、かえって体の働きを弱めたり、新たな病気の原因となる。薬には主作用と副作用があり、長く服用すると、副作用を生じる恐れがある。

②年齢による平均値で適量を決めている
 統計による平均値で使用量を決める仕方は、人それぞれ抵抗力や体質が異なっているので無理がある。アルコールでも、一笑飲んでも平気な人があれば、少量でも真っ赤になる人がいる。薬の特定成分に過剰に反応する人の場合、平均値による量を与えられると、ショックを起こすことがある。

③健康保険制度により過剰投与の傾向がある
 現在の健康保険制度では、薬や注射に応じて点数を決め、使用量による出来高払いとなっている。そのため、医者は病院経営のために、薬を多く出す傾向がある。昔、医学は仁術と言われた。人への愛を行う方法である。しかし、今、医は仁術から算術になったといわれる。

 さらに重要なことは、病気というものは、薬が治すのではなく、我々の体に自然治癒力があるから治るのである。
 薬は、その自然治癒力の働きを補助するものに過ぎない。自然治癒力が低下していたり、自然治癒力の働きを妨げるものがあったりすれば、それを取り除くことが必要である。それらの条件をそのままにして薬だけを用いても、効果には限界がある。薬もその他の治療方法もみな、その人の自然治癒力を補助するものであって、補助にすぎない。大切なことは、いかに自然治癒力を活発にするかである。
 逆に言うと、普段の生活において、自然治癒力、言い換えれば生命力が活発に働くような生活をしていれば、めったなことで病気にかからない。かかっても治りが早いということである。
 ここに重要な要素の一つとなるのが、食のあり方である。東洋では、医食同源という。病気を治すのも食事をするのも、生命を養い健康を保つためであり、その根源は同じだということである。私たちの先祖は、医食同源という知恵を持っていた。病気にならないように食生活に注意する。また、もし病気になったら、食事のあり方を正すということが行なわれていた。

 ところが、戦後の日本人は、西洋医学を過信し、薬物に依存することによって、病院や製薬会社のよいお得意さんになってしまっている。このことと、食の乱れによる国民の健康状態の悪化は、深い関係があると私は見ている。日本人は、薬物依存から医食同源へと生活の仕方を変える必要がある。

●病気の原因を把握し、健康に留意する

 病気の原因について、現代の私たちは大きく考え違いをしている点があると思う。真の日本精神を啓蒙されてきた大塚一先生は、多くの人を健康に導いてきた方でもある。先生は、病気の主な原因として三つ挙げておられる。
 一つは心の持ち方、二つ目は体の使い方、三つ目は環境である。この三つのどれかが自分の抵抗力以上に負荷がかかると病気が生じてくるということを、大塚先生は説かれている。

 心の持ち方とは、例えば、ものすごい心配事があると一晩で髪の毛が真っ白になってしまうということが現実にある。ひどい場合には、驚きのあまりショック死するということさえある。東洋では、病気とはその文字が示すように、気を病むことと考えられた。気持ちは、体に影響する。西洋医学では、ストレスの研究によって、この点が明らかにされている。ストレス学説を唱えるカナダの生理学者、ハンス・セリエは、病気の7割はストレスによるといい、「何事に対しても感謝すれば、病気は半減する」と説いている。
 次の体の使い方とは、どんなに丈夫な人でも、無理をすると病気になる。過労や睡眠不足、不規則な生活がそれである。運動不足も生理機能を低下させ、病気にかかりやすくなる。
 最後の環境には、健康によくない環境におかれると、心身ともに健康な人でも病気になる。四日市喘息等、環境汚染による病気がそれである。

 食については、東洋医学では、食は環境の中の一要素だと昔から考えられてきた。人間は、環境から必要なものを取り入れ、不必要なものを排出する。空気、水についで、食べ物がそれである。食は人間と自然のかかわりそのものだから、環境というとらえ方が、ふさわしいのかもしれない。

 これらに加えて、先天的な原因もある。先祖から受け継いだ体質、家系的な要素、遺伝的な要因である。先天的な原因は、しばしば後天的な条件と結合して、病気となって現れる。

 心の持ち方、体の使い方、環境の三つを、病気の主な原因に挙げたが、逆に健康な生活を送るためには、心の持ち方、体の使い方、環境に気をつければよいことになる。
 心を明るく、ゆったりとし、適度の運動と規則正しい生活を心がけ、健康によい環境に住む。そのうえで、食についても気をつけることが必要である。食事の在り方一つで、病気にもなれば、健康な生き方もできる。健康な生活を送る一つの鍵が、食である。知恵を働かせてうまく食生活を行っていくことが、私たちの健康を維持していく基本の一つだと思う。

 なお、本稿は、食育を主題としているので食に焦点を合わせているが、実は私は食を第一の要素と考えているわけではない。経験上、精神的な面と先天的な要因の重要性を認識しているが、本稿では立ち入らない。本稿の主題は、食育のことだからである。

 次回に続く。
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食と健康と日本の再建7

2007-02-26 13:26:19 | 教育
●アメリカの模倣で食源病に

 日本人の食事が欧米型に変化して行った1960年代(昭和30年代後半以降)、アメリカでは、突然死とガンが急増した。上院栄養問題特別委員会は、昭和52年(1977)に、マクガバン・レポートを発表し、アメリカ人に食事の改善を呼びかけた。
 ところが日本人は、こうしたレポートが出された時期に、アメリカの後を追うように、食生活が欧米型に大きく変化したのである。その結果は当然のこととして、ガン、心臓病、脳卒中などアメリカの6大死因となっている病気が、日本でも増えた。マクガバン・レポートは、食生活を改めて病気を予防する以外に先進国民が健康になる方法はないと警告したが、日本人はそれを無視するように、食源病の道を進んだ。

 戦後日本は、アメリカを模倣し、欧米に追従した。食生活においても、模倣・追従を続け、国民が健康を自ら損なうという事態にはまり込んでしまった。これには、食生活だけではなく、西洋医学への過信と関係していると思う。私は、戦後日本人の食の乱れと、西洋医学への過信は、一体のものと見ている。食から話が少し広がるが、重要なことなので、触れておきたい。

●西洋医学への過信

 現在、多くの人は、病気になれば、医者へ行き、薬を飲み、手術をすれば良いと考えている。医者といえば、西洋医学の医師のことだと理解している。戦後日本では、大病院が続々と建ち、新薬が薬局で売られ、新聞やテレビには薬のCMが氾濫している。しかし、西洋医学には、多くの欠陥のあることが、欧米においてもわかってきた。その欠陥を補うために、シナやインド等の伝統的な医学が研究され、今日では代替医療の発達を見ている。
 真の日本精神を伝える運動を唱道された大塚寛一先生は、西洋医学の特徴として、物質的であること、専門細分化されていること、細菌恐怖症に陥っていることを挙げておられる。

①物質的である
 西洋医学は人間を物質的に扱い、どこかが悪ければ、すぐ手術で切り取る傾向がある。その結果、手術の後遺症を抱えている人が多い。しかし、人体のどれ一つとってみても不必要なものはない。手術は万止むを得ない場合の非常手段である。人間は肉体と精神・生命の両面から成り立っている。人体を損なわず、生理機能を旺盛にして毒素のみを体外に出すことが最高の医学である。

②専門細分化されている
 西洋医学の病院では、内科、外科、小児科、婦人科、耳鼻科等の専門分野に分れている。それそれ専門家がいて、専門の立場から治療にあたっている。しかし、人間の身体はそれぞれの臓器が別々に働いているわけでなく、相互に関連して総合的に機能している。そうした人間の全体を、総合的に見る必要がある。

③細菌恐怖症に陥っている
 西洋医学は、病気の原因として細菌やウイルスを追求する。しかし、人類発生以来、人間はあらゆる病原菌に触れてきた。それでも絶滅せず、むしろ人口が増えているのは、人間が細菌に打ち勝っている証拠である。病気になる人とならない人との違いは、抵抗力の違いによる。生命力が活発に働いていれば、細菌に触れても病気にならない。

 大塚先生が指摘されるこれらの西洋医学の特徴は、同時に西洋医学の欠陥を示すものでもある。こうした欠陥を補うために、精神の身体への作用に注目したストレスの研究や、生命力を高め病気にならないように努める予防医学が発達してきた。
 こうした点は、東洋医学が重視してきたところであって、わが国の伝統的な医学では、「病は気から」と言って、精神面の影響を重視していたし、また食事や生活習慣に気をつけて、健康長寿を願う養生法が推賞されてきた。

 戦後の日本人は、伝統的なものは古いというだけで何でも否定したが、医学・健康法の分野でも、それが起こった。今なお、多くの人は、医学迷信、薬物迷信ともいうべき観念に陥っている。人体に内在する生命力・自然治癒力を軽視し、薬物や手術に頼りすぎている。食に関しても、安易な食生活を送って、病気になれば、薬を飲み、手術をすれば良いと考えている人が多い。それが大人だけの話しならどうか知らぬが、子どもたちまでが健康を損ない、健全な成長が出来なくなったら、取り返しがつかない。日本国全体としても、国が傾き、衰える。こんな状態は、早く脱却しなければならない。

 次回に続く。
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食と健康と日本の再建6

2007-02-25 10:01:58 | 教育
<食の危機のとらえ方>

 次に、一体どうして、わが国は食の危機に陥ったのか。次にその原因を検討し、改善・向上のための対策を考えたい。
 大東亜戦争の敗戦後、日本弱体化政策が行われた結果、日本人は自己の歴史を否定して、伝統・文化を軽視し、欧米模倣の思想・生活に陥った。それは、食に関しても同様だった。これに加えて、日本人は戦後、経済成長の中で、経済中心・もの中心の価値観に傾いた。健康や生命のことより、物欲や金儲けに走った。敗戦による日本弱体化と物質主義・拝金主義によって、祖先からの伝統や文化を失った日本人は、生命や精神を軽んじた生き方に陥っている。
 これが根本原因となって、日本の国家や家庭や青少年に、深刻な問題が噴出している。その一環として現れているのが、食の危機である。それゆえ、食の危機への対策は、その根本原因を踏まえたものでなければならない。日本人本来の考え方、生き方を取り戻すことなくして、日本人の食の危機は解決されない。

 私の見るところ、食の問題について、栄養学や医学の方から取り組んでいる人は、こうした国家的・歴史的な方面から考えない人が多い。一方、政治や歴史から日本の再建に取り組んでいる人で、食の危機を論じる人は少ない。
 この間の隔たりを埋めないと、どちらも片手落ちになると私は思う。日本の再建とは、日本の国家の再建であり、家庭の再建であり、また健康の再建でもある。その再建は、日本人の精神の建て直しから進めなければならない。このような問題意識から、私は、克服すべき課題のひとつとして食の危機もあると考える。それが、私の観点である。

 この観点に立って、以下、健康・家庭・伝統・自然・国家の5点に分けて、食の危機の原因と対策を考えてみたいと思う。

<健康面の原因と方策>

●欧米型の食生活に傾き、食源病を生む

 わが国の食生活は、伝統的に主食であるご飯を中心に、魚や野菜、大豆から作る豆腐や納豆などの副食の中心とするものだった。大東亜戦争の敗戦によって、日本はアメリカによる日本弱体化政策による改造をこうむった。改造は、国家体制・教育・宗教から家族制度・生活文化にまで及んだ。
 アメリカ型の自由・デモクラシーの移植とともに、セックス・スポーツ・スクリーンの3S政策が行われ、アメリカ的・西洋的な食文化が移入された。日本は、アメリカの食糧の市場となり、小麦を中心とする農産物が大量に輸入された。戦後日本人の食文化の変化は、ここに淵源を持つ。

 食事内容が大きく変わり、畜産物や油脂などの摂取が増加した。これは、一面では、食事内容の向上となった。栄養学的に見れば、昭和50年ごろには、日本人のカロリー摂取量はほぼ満足すべき基準に達し、たんぱく質、脂肪、炭水化物のエネルギー比率のバランスが取れているなど、いわゆる「日本型食生活」ともいうべき理想的な食生活を達成した。
 問題は、その後も脂質の消費が引き続き増加し、米の消費が減少し続けたことにより、脂質の取りすぎと炭水化物の摂取量の減少が顕著になったことである。日本人の食事は、伝統的な日本食から欧米型の食事へと変化した。その食事が、健康によいものであるならば、日本人は食も西洋化することで、一層の「進歩」を体験できたかもしれない。実際はそうではなかった。欧米型の食事をすることによって、食源病が社会問題となってきたのである。

●マクガバン・レポートが問題点を指摘

 経済成長を続け、豊かさが膨らんでいく日本で、日本人の食事が欧米型に変化して行った1960年代(昭和30年代後半以降)。アメリカでは、突然死とガンが急増していた。当時、世界は、米ソ冷戦の時代にあった。アメリカ政府は、国が滅びる可能性があるとすれば、他国の軍事的脅威より、自国にはびこっているこの原因不明の病気である、と危機感を持った。そして、徹底的な原因究明を国家プロジェクトとして立ち上げた。
 昭和50年(1975)、マクガバン上院議員を委員長とする上院栄養問題特別委員会が作られた。同委員会は、3千人もの医療チームを結成し、過去150年もさかのぼって、環境・医療・食事など、さまざまな角度から調査した。2年間にわたる調査を経て、昭和52年(1977)に、マクガバン・レポートを発表した。レポートは、「合衆国の食事の目標」と題した栄養的な指針とともに、5千ページ及ぶ膨大な調査記録として公刊された。

 「ガン、心臓病をはじめ、多くの病気が増え続けている。そして進歩したとされるアメリカの医学を活用し、しかも巨額の医療費が注ぎ込まれているのに、アメリカ国民は病気ばかり増えてますます不健康になるばかりである。この原因を解明し、根本的な対策をたてないことにはアメリカは病気で滅んでしまう」「われわれは何か重要なことを見落としていたのではないか。また現代の医学が進歩していると考えること自体も間違っているのではないか」
 これが、同委員会が熱心に調査・検討を行った理由である。レポートが出した結論のなかで、最も重要なのは、次の点だった。

・ガン、心臓病、脳卒中などアメリカの6大死因となっている病気は、現代の間違った食生活が原因となって起こる“食源病”である。この間違った食生活を改めることでこれらの病気を予防する以外に先進国民が健康になる方法はない。

・現代の医学は薬や手術といったことだけに偏りすぎた、栄養に盲目な片目の医学であった。栄養に盲目でない医学につくりかえる必要がある。

 そして、マクガバン・レポートは、「最も健康によい食事は日本食である」と結んでいる。

 次回に続く。
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食と健康と日本の再建5

2007-02-24 09:33:09 | 教育
<食育基本法の制定(続)>

●前文の内容(続)

 食育基本法は、続いて、「子どもたちに対する食育」について述べ、「子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である」とする。「食」が、「豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付け」るために重要としている。
 ここで食育について、次のように述べる。「今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける」ことが求められている。また、それとともに、「様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進すること」も求められている、と。
 知育・徳育・体育は、それぞれ知を育てる教育、徳を育てる教育、体を育てる教育である。それに対し、食育は、食についての教育であって、食を育てる教育ではない。そして、食育をもって「知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの」と位置付けるというのは、一つの思想である。これは、石塚左玄・村井弦斎らの思想を継承するものだろう。
 今から100年以上前に唱えられていた食育の思想を、教育の基本方針にすえ、そのもとに国家的な取り組みをしようという国家方針を打ち出しているのが、食育基本法である。

 続いて、同法は、食育について、次ぎのように述べる。「もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。」と。
 食育を全国民の生涯教育の教育内容とする中で、特に子どもたちに対する食育の重要性を強調している。子どもたちの「心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるもの」が食育だという。

 次に、同法は、「食」に関する問題を列挙し、課題を掲げる。この部分の文章は、よく整理されていない。冗長で意味が取りにくいところがあるので、整理してみよう。
 食育基本法は、現代日本の食に関して、繰り返しになるが、以下のような問題点を挙げている。

・栄養の偏り
・不規則な食事
・肥満や生活習慣病の増加
・過度の痩身志向
・「食」の安全上の問題
・「食」の海外への依存の問題
・地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機

 現代日本の「食」に関する課題としては、次ぎの諸点を挙げている。

・食生活の改善や「食」の安全の確保、日本の食文化の継承のために、「食」に関する考え方を育て、健全な食生活を実現する
・都市と農山漁村の共生・対流をし、消費者と生産者との信頼関係を構築する
・地域社会を活性化し、豊かな食文化の継承及び発展を行う
・環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進を行う
・食料自給率の向上を図る
・自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深める
・「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付ける

 そして、これらの課題への取り組みを実践する方法として、以下の点を挙げる。

・家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組む。
・さらに、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献する。

 具体的には、

・家庭や学校、保育所等における健全な食習慣の実現を図ること
・地域や各種団体の自主的な食育活動の展開
・生産者や農山漁村と消費者との信頼関係の構築
・伝統的な食文化の継承
・食品の安全性
・食生活に関する調査研究の国際的な交流など

を挙げている。

 次回に続く。
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食と健康と日本の再建4

2007-02-23 09:46:48 | 教育
<食育基本法の制定>

 日本人の食の乱れを正すために、食育は提唱され、基本法が制定された。

●法制定の必要性

 東アジアに発達した伝統的な医学は、食を重んじる。医食同源という言葉があるように、食のあり方に心がけることが健康に生き、長寿を得るために重要であり、病の治療においても食の改善が指導される。日本人の伝統的な食生活に変化が始まったのは、明治時代に西洋文明を摂取したことによる。
 西洋の食文化が流入すると、食のあり方が自覚されるようになった。食育という言葉は、明治の時代から用いられている。日本の食養医学の礎を築いた石塚左玄は、明治31年(1898)に、著書『通俗食物養生法』の中で、「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と書いている。また、明治36年(1903)には当時の人気作家・村井弦斎が、報知新聞に連載した小説『食(しょく)道楽』の中で、「小児には徳育よりも、智育よりも、体育よりも、食育がさき。体育、徳育の根元も食育にある」と記述している。

 しかし、大東亜戦争に敗戦するまでは、日本人は伝統的な食生活を保っていた。食生活に大きな変化が起こったのは、敗戦後のことである。占領下の日本で、国民は食うや食わずの生活をしていた。アメリカは日本に食糧援助をすることを通じて、日本人にパンを食べさせる政策を行なった。日本人は西洋の食文化を多く取り入れた。短期間のうちに、食事内容が大きく変わった。
 欧米型の食事への変化をもたらした原因の一つは、パン食の普及により、簡単に準備できるパン食を朝食として取り入れるようになったことにある。また、牛・豚等の哺乳類の肉を食べ、牛乳を飲むようになったことにより、日本人は動物性たんぱく質や脂質を多く摂取するようになった。その結果、身長が伸び体重は増えたが、その半面で血液が濁り、西洋人に多い病気を生じた。

 戦後約60年、食の乱れは進み、国民の健康、青少年の育成、農業生産等、重大な事態に立ち至った。ここにおいて、食の建て直しが急務となり、食育基本法の制定が行なわれた。
 食育基本法は、平成17年6月に成立した。同法は、食育について、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団体及び国民の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するために制定された。

 食育は、国民が、生涯を通じた健全な食生活の実現、健康の確保、食文化の継承等が図れるように行なうものである。子どもから高齢の世代までのあらゆる人たちに必要である。とりわけ子どもたちに対する食育は、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性を育む基礎となる。次世代の国民の育成おいて、食の乱れを正し、健全な食生活を確立することが求められている。

●前文の内容

 同法には、長い前文がついている。法律で前文があるものは、教育基本法以外なかった。食育基本法に前文がつけられたということは、立法府が同法を非常に重要なものとしていることを示している。
 食育基本法は、前文で冒頭、「二十一世紀における我が国の発展のために」大切なこととして、「子どもたちが健全な心と身体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにする」こととともに、「すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすること」の2点を挙げる。

 子どもたちについては、「健全な心と身体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにすること」、すべての国民については、「心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすること」を挙げている。

 私見を述べると、上記の考え方を推し進めれば、健康と生命に基礎を置いた国づくりという理念に発展するだろう。憲法改正の際には、健康と生命に関する条項を盛り込むべきである。新憲法私案では、以下のように提案しているところである。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20051125

 次回に続く。
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食と健康と日本の再建3

2007-02-22 10:18:21 | 教育
●自給率の低下

 わが国の食料の自給率は、熱量に換算して40%という低さである。40%ということは、毎日の食卓に並ぶ食料の60%は、外国から輸入しているということである。
 カロリーベースでの食料自給率は、昭和40年には73%だった。それが、約30年後の平成10年には、40%となった。その後は横ばいで推移している。40%というのは、先進国の中では最低水準である。
 特に食料の中心となる穀物の自給率を重量ベースでみると、昭和40年には62%だったのが、平成15年には27%に低下した。今や3割にも満たなくなっている。人口1億人以上の主な国での穀物自給率は、我が国が最低である。
 米は自給率99%だが、小麦は9%である。小麦はパン、スパゲッティ、パスタ等に使われる。主食の米の消費が減り、小麦を使った食品が多く食されていることが、自給率を下げている。
 大豆は、味噌・しょうゆ・豆腐など、日本食には欠かせない。その大豆の自給率は5%と驚くほど低い。ちなみに野菜の自給率は86%、魚介類72%、肉類56%である。

 自給率の低さを示すわかりやすい例が、月見とろろそばである。月見とろろそばは、純和風の食事と考えられる。ところが、食材を分析すると、月見とろろそばの自給率は、33%しかない。表形式にならないので、みにくいことをお詫びする。

食品名:自給率(%)、消費熱量(Kcal)、国産熱量(Kcal) 
-------------------------------------------------------
ゆでそば:自給率(%)18、消費熱量(Kcal)330、国産熱量(Kcal)59
大和芋:自給率(%)100、消費熱量(Kcal)60、国産熱量(Kcal)60
卵:自給率(%)10、消費熱量(Kcal)81、国産熱量(Kcal)8
ねぎ:自給率(%)98、消費熱量(Kcal)1、国産熱量(Kcal)1
みりん:自給率(%)99、消費熱量(Kcal)47、国産熱量(Kcal)47
しょうゆ:自給率(%)3、消費熱量(Kcal)12、国産熱量(Kcal)0
-------------------------------------------------------
合計 自給率(%)33、消費熱量(Kcal)531、国産熱量(Kcal)175

※自給率は食品の消費熱量内の国産熱量の割合。自給率=(国産熱量÷消費熱量)×100

 そば、卵、しょうゆの自給率の低さが目を引くだろう。

●食品の大量廃棄

 わが国の食料の自給率は、カロリーベースで40%しかなく、60%は外国から輸入している。日本人の飽食は、海外から食材を買い集めていることによって、もたらされている。
 その食材を十分利用しているかというとそうではない。わが国で1年間に排出される食品廃棄物は、約2千万トン(平成8年度度農水省推計)になる。これは、金額に換算すると11兆円にもなる。この金額は、平成12年度の農業総生産額に匹敵する。つまり日本で生産する農産物の総額とほぼ同じ金額の食料を、捨てていることになる。
 毎日食べている食材の60%をも外国から買っているのに、一方では食べずに大量に捨てている。これは尋常な状態ではない。「ありがたい」とか「もったいない」という感覚が薄れている。当然、日本人の食べ物に対する感覚は、麻痺しつつある。
 しかし、世界はこれから食糧危機を迎えようとしている。人口が爆発的に増え続けているとともに、発展途上国の食生活が欧米型に変化し、より多くの穀類・肉を消費するようになり、相対的な食料の不足を生じる。特に人口13億を抱える中国では、国民の食生活が急激に変化するとともに、環境破壊により食糧生産が低下しており、食材の輸入量が増えている。こうした諸条件が重なると、ある時点から地球的な飢餓の時代が始まると予測されている。
 こうした中で、飽食を続け、食の乱れによって病気になり、食糧の自給を怠り、食の恵みへの感謝を忘れた日本人は、大きく考え方を変えねばならないところにきている。

 次回に続く。
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食と健康と日本の再建2

2007-02-21 09:38:41 | 教育
<日本人の健康と食とのかかわり>

 現代日本の食の問題は、広範囲にわたって生じている。そのうち、数点にしぼって具体的に述べたい。以下は問題の例示であって、事の深刻さを確認するためのものである。

●食の乱れを表す「こ食」

 かつて日本の家庭では、毎日の食生活を通じて、親から子へ、祖父母から孫へ、食の基本を伝えることが自然にできていた。しかし、現代では、家庭で、食の知識・技術が伝承されなくなってきている。核家族化、女性の社会進出、共稼ぎ、家族それぞれの生活行動の多様化等により、食を介した家族のかかわりが減り、家族が食事をともにして、団欒の時を過ごす機会が少なくなっている。家族のあり方の変化、家族関係の変質が、食事の習慣や行動の乱れの大きな原因となっている。

 今日の日本人の食の乱れを表わす言葉に、「こ食」がある。「こ」のところに、いろいろな漢字を入れると、食の乱れ方がよくわかる。

【孤食】 朝食を一人で食べる子どもが増加している。子どもが一人ぼっちで夕食を食べることもある。しかもコンビニの弁当だったりする。
【小食】 食べる量が少ない。痩身願望の強い若い女性が、細くなりたいと願って、食べる量を極端に抑えて、健康を害している。
【個食】 家族がそれぞれ自分の好きなものを食べる。同じ献立をともに食べるのでなく、思い思いのものを食べる。同じ料理を一緒に味わう機会が減っている。
【粉食】 粉を使った主食を好んで食べる。御飯に味噌汁という、日本人の伝統的な食事ではなく、パンやスパゲッティ、パスタ等を食べることが増えている。
【固食】 自分の好きな決まった食べ物、固定したものしか食べない。家族で食事をともにすることが少ないので、子供は注意されないから、偏食になる。

●生活習慣病の増加

 今日の日本では、大病院が建ち、テレビに薬のCMがあふれ、製薬業界は潤っている。それなのに、いっこうに病気は減らない。世界的な長寿国である反面、病人が多く、「1億総病人時代」ともいわれる。
 病気の原因には、病原菌や有害物質、遺伝的な要素などが挙げられる。それとともに、食事、運動、休養、嗜好などの生活習慣も、病気の原因となる。かつて成人病と呼ばれていた病気は、今日、生活習慣病と呼ばれている。それは、生活習慣が原因となっている病気が多く、大人に限らず、子供にまで広がっているからである。糖尿病、高血圧、ガン等の低年齢化が進んでいる。

 生活習慣病には、糖尿病、高血圧、高脂血症、歯周病などが上げられる。我が国では現在、690万人が糖尿病と推計されている。予備軍を含めると1,400万人ともいわれる。10人に1人以上だ。また、高血圧、高脂血症の人々の数は3,000~4,000万人と推定される。こちらは、3~4人に1人だ。日本人の3大死因であるガン、脳卒中、心臓病の発症や進行にも深く関わっているのが、生活習慣病である。生活習慣病で死亡する割合は、全死亡率の約60%を占める。病気になるような生活をしているから、病気になるのである。
 病気を防ぐには、早期発見や早期治療だけでは、足りない。むしろ、生活習慣の改善を中心にした健康増進・発病予防が重要である。病気にならないような生活を心がけることである。
生活習慣病の原因には、栄養、運動、休養、たばこ、アルコールの5つがあげられる。本稿は、食育を主題としているので、食生活の問題点について触れたい。

 食生活のあり方によっては、健康で長生きができる。逆に、食生活のあり方が病気を生み出しもする。食が病気の原因になっている病気を 「食源病」ともいう。
 今日の日本人は、食の豊かさが、食の乱れを生み出し、食の乱れによる生活習慣病が深刻になっている。その一例として、大腸ガンの増加がある。日本人は欧米人より腸管が2メートルほど長い。古代から、繊維質が多い穀類や野菜といった植物性食品を主に食べてきたから、それに適した体のしくみになっている。そういう消化管の構造を持ちながら、肉食をすると、腸内菌の働きで発ガン性のものができ、それが長く腸に接触する。その結果、便秘やガンになりやすくなり、特に大腸ガンの主要原因になっていると見られている。

●生活習慣病の低年齢化

 生活習慣病の問題で重要なのは、生活習慣の乱れが子供に広がり、子供の心身の健康が損なわれていることである。近年子供に多い病気・症状を年齢別に挙げてみると以下のようになる。

【授乳期】 食物アレルギーや便秘、下痢
【幼児期】 偏食、食欲不振、肥満、瘠せ、貧血
【学童期】 肥満、瘠せ、虫歯
【思春期】 肥満・生活習慣病、貧血、摂食障害、骨粗しょう症、深刻な食物アレルギー

 こうした症状の多くが、生活習慣に原因を持つ。生活習慣の乱れによる症状を持った子供は、そのまま成長を続けると、心身の健全な発達ができなくなる。成人しても、健康な心身を持ち得ない。
 生活習慣病の低年齢化の原因には、生活のリズムの乱れ、不自然な生活環境、環境の汚染、親共々の夜更かし、野外での遊びをしないことによる運動不足、ゲームのやりすぎ等、いろいろな原因があるだろうが、食という点も重要である。日本の子供たちは、食べ物に恵まれすぎて、逆に病気になっているとも言える。

 私が懸念していることの一つは、母乳で子どもを育てられる女性が減っていることである。母乳で育児のできる人が、約30%になった。10人のうち3人しか、自然な仕方で子どもを育てられない。これは粉ミルクのない時代だったら、10人のうち7人の子どもは、お乳を与えられずに死んでいくことを意味する。
 ここには、食の乱れが、生命力の弱さを生じている点があるだろう。母親が不健康だったり、生命力が低下したりすると、心身ともに弱い子供が生まれる可能性が高くなる。その子供の世代が親になって同じ傾向が続くと、次の世代はさらに心身が劣化する。そういう悪循環が見えてきている。これは、それぞれの家の子ども、子孫が劣化するだけではない。国民・民族の全体が劣化してゆくことを意味する。
 国民の健康を重視し、健康を基盤においた国づくりをしないと、経済的にはいかに発展・繁栄しようとも、わが国は国民の心身から衰退していくことになる。
 
 次回に続く。
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食と健康と日本の再建1

2007-02-20 10:56:12 | 教育
 昨年11月25日、長野県松本文化会館で、「明けゆく世界セミナー2006 in 松本」が行われた。主題は、「『食』を通じて"日本の心"を考える」だった。その時の内容については、以前掲示した。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20070131

 このセミナーに臨むに当たり、私は、改めて食育について、調べたり考えたりする機会を得た。食の問題は、安易に考えられがちだが、奥が深い。健康・家庭・伝統・文化・財政・安全保障・自然環境など、さまざまな問題につながっている。現代日本の諸問題は、食に集約されているという見方さえできる。食を立て直すことは、日本の再建には欠かせない。
 わが国の食の危機を確認し、食育を通じて「日本の心」を取り戻すことは、今日重要な課題である。また連載の形で、このことについて書きたいと思う。

<食育とは>

●食育とは

 食育とは何か。平成17年7月に施行した食育基本法では、定義が明確ではない。前文には「『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」という表現がある。とりあえず、これに従って、食育とは「食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる教育」と理解しておこう。
 この食育について、食育基本法は、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける」とし、「家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいく」としている。
 同法のもと、内閣総理大臣を会長とする食育推進会議が設置され、都道府県・市町村には各レベルの食育推進会議が設置されている。そして、それぞれ食育基本計画を立て、実施することになっている。
 たかが食に大げさな、と思う人も多いかもしれないが、日本の食の危機を知れば、むしろ取り組みが遅すぎたことに愕然とするだろう。

●日本の再建に食育は不可欠

 私は、日本の再建のために、日本精神の復興を呼びかけているが、健全な精神は健全な身体に宿るとともに、健全な身体は健全な精神によって養われる。日本を立て直すには、精神面だけを考える唯心論ではいけない。もちろん身体面だけを考える唯物論はもっといけない。日本人のあり方は、精神面だけではなく、心身両面で改善されなければならないと思う。心身の調和、物心の調和こそ実現すべき目標である。

<食の危機>

●飽食の中での食の危機

 日本人は、戦後の焼け跡と飢餓から立ち上がって、経済を復興させ、高度経済成長を成し遂げた。豊かになった日本人は、「飽食」といわれるほど、贅沢な食生活を送っている。現在、世界の人口は約60億。そのうち、食べ物に困っている人が8億人。日本人の人口の7倍もいる。5歳になる前の子どもたちが、1日に1万1千人餓死しているという。
 ところが、日本列島では、豊かになった食が原因で、健康を損ない、子どもたちの心身がむしばまれている。今やわが国は、食の建て直しを国民的課題としなければならないような危機的状況に陥っている。その危機に対応するために、平成17年6月に、食育基本法が成立した。

 食育基本法は、前文の冒頭で、「二十一世紀における我が国の発展のために」大切なこととして、「子どもたちが健全な心と身体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにする」こととともに、「すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすること」の2点を挙げている。こうしたことを法律に謳わねばならないほどに、食の問題が深刻化している。
 食育基本法は、現代日本の食に関して、以下のような問題点を挙げている。

 ・栄養の偏り
 ・不規則な食事
 ・肥満や生活習慣病の増加
 ・過度の痩身志向
 ・「食」の安全上の問題
 ・「食」の海外への依存の問題
 ・地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機

 こうした問題に取り組むため、食育が提唱されているわけである。食は、健康、生活、精神にいたるまでの、生きるために必要な基盤である。食が乱れると、心身の働きが乱れ、生きる力が損なわれてしまう。食が乱れると、家庭が乱れ、社会も国も乱れる。わが国の危機の実態と対応について、以下、具体的に述べていきたい。

 次回に続く。
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教育再生は社会総がかりで9

2007-02-17 06:45:43 | 教育
 最終回。

●結びに

 教育再生会議は、第一次報告を「社会総がかりで教育再生を~公教育再生への第一歩~」と題し、提言の第7に「「社会総がかり」で子供の教育にあたる」を掲げている。そこで、本稿では、この報告書の言う「社会総がかり」とはどういうものかを確認し、「社会総がかり」についての具体的な提言内容を、家庭、地域社会、企業、社会全体という順に見てきた。
 この報告書は「社会総がかりで教育再生を」と呼びかけ、「「社会総がかり」で子供の教育にあたる」という提言をしている。それゆえ、この提言は報告書の多岐にわたる提案・要望を集約するものとして位置づけられるだろう。同時に、「社会総がかり」で子供の教育にあたることが、教育改革を底から支えることになると思う。

 「「社会総がかり」で子供の教育にあたる」という提言は、次のような文章を揚げていた。
 「子供たちは、地域の人と触れ合い、家族とともに生活する中で、社会性が育まれ、学校では学べないことも身に付けていきます。また、子供が学校以外の世界でも人とのつながりを持つことは、様々な悩みや挫折に直面した時に大きな救いともなるものです。教育再生を実現するためには、学校だけの問題ではなく、住民や家族、企業といった地域の関係者全てが当事者意識を持って社会総がかりで、「国の宝」である子供を育てていかなくてはなりません。」
 こうした説明文のもとに、報告書は、家庭、地域社会、企業、社会全体という四つの領域での対応を要望している。繰り返しになるが、以下のような対応である。

(1)家庭の対応 -家庭は教育の原点。保護者が率先し、子供にしっかりしつけをする-
(2)地域社会の対応 -学校を開放し、地域全体で子供を育てる-
(3)企業の対応 -企業も「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」を実現し、教育に参画する-
(4)社会全体の対応 -有害情報から子供を守る-

 私は、報告書が提案しているほかの六つの提言は、全国民が上記四つの対応に参加し、自分のできることを実行する時にこそ、大きな効果を生み出すものと思う。再度引くが、提言の全体は、以下の通りである。

1.「ゆとり教育」を見直し、学力を向上
2.学校を再生し、安心して学べる規律ある教室にする
3.すべての子供に規範を教え、社会人としての基本を徹底する
4.あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てる
5.保護者や地域の信頼に真に応える学校にする
6.教育委員会のあり方を抜本的に問い直す

 そして、最後が、

7.「社会総がかり」で子供の教育にあたる

である。
 
 全国民の参加、まさに「社会総がかり」で、こうした提言を実現したいものだと私は思う。
 安部首相は、教育再生会議の緊急対応の要望を受けて、いじめ問題対応のための通知等の見直しを始めた。また、教育三法の改正を国会に提案する意思も明らかにしている。教育再生会議は、5月に第2次報告、12月に最終報告を行なうという。是非さらなる熱意をもって検討がされ、一層踏み込んだ提案・要望が出されることを期待したい。

 教育の改革は、政府や教育の専門家がやっていればよいというものではない。私が強調するように、公教育の再生のためには、家庭の再生が不可欠であり、家庭の再生こそが、公教育の再生の要である。そして、家庭を中核として、社会全体で取り組み、国民みなが何かできることを実行してこそ、戦後教育の大改革は成し遂げられる。日本の再建のために、私たち一人一人が自覚と役割をもって、この大改革を推し進めたいものである。(了)
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教育再生は社会総がかりで8

2007-02-16 08:51:31 | 教育
●社会全体の取り組み

 教育再生会議が対応を求めている第四の領域は、社会全体である。社会全体の対応として、次のような対応を要望している。

――――――――――――――――――――――――――――――
(4)社会全体の対応 -有害情報から子供を守る-
【家庭自身がチェック、フィルタリングの活用、企業等の自主規制の一層の強化】

 テレビ、インターネット、ゲーム、出版物から送り出される不用意な有害情報が子供の心を傷つけて、犯罪を助長させる要因の一つにもなっています。その大きな悪影響を見過ごすことは断じてできません。家庭、メディア、企業、販売業者は、子供を有害情報から守る責任があります。
――――――――――――――――――――――――――――――

 社会全体の対応は、「有害情報から子供を守る」という一点に絞られている。それほどに、テレビ、インターネット、ゲーム、出版物等の情報が、子供たちに深刻な影響を与えているという認識に基づく要望だろう。具体的には、以下のような対応内容を求めている。

――――――――――――――――――――――――――――――
○ 子供が俗悪番組や、性・暴力などの有害情報に接しないよう、各家庭ではテレビの視聴、携帯電話の持たせ方、テレビゲームの遊び方、インターネット利用などについての家庭内のルール作りやフィルタリングの活用などにより、家庭自身で子供が何をしているかチェックする。特に、携帯電話については、フィルタリングを利用することと、親が直接契約の場に立ち会うことを基本とする。
○ 俗悪番組、コミックや成人雑誌などの出版物、ゲームやインターネット上の有害情報が子供に悪影響を与えないよう、特に、メディアやスポンサー企業には、自覚を促す。
有害情報や俗悪な番組に関して意見を通報する窓口(放送倫理・番組向上機構(注)など)やフィルタリングの活用を広く周知して積極的活用を図るとともに、有害情報から子供を守るために国民全体としての運動に早急に取り組む。
※「放送倫理・番組向上機構(略称 BPO)」の視聴者応対専用連絡先は、次のとおり。
TEL 03-5212-7333(平日10:00~12:00、13:00~17:00)
○ 上記に関係する企業や販売業者等は、子供が接することのできる有害情報を社会に氾濫させている当事者の一人であるとの自覚を持ち、子供の教育に悪影響を及ぼすような企業活動の自粛等、自主規制の一層の強化を行うべきである。
――――――――――――――――――――――――――――――

 今日の情報社会では、セックス、ホラー、殺人、政治家の汚職、官僚の過剰接待など、大人社会のことが、直接、洪水のごとく子供に押し寄せてくる。子供は情報をえり分けることができない。マスコミやスポンサーの企業は、そのことに対して責任を負おうとしない。無責任なまま、いいも悪いもごちゃまぜにして販売・発信している。

 テレビについては、暴力的な場面や露骨な性的描写などが盛り込まれた番組を子どもに視聴させない具体的な手立てを考えなければならない。イギリスやフランス等では、子どもに不適当な番組をあらかじめ画面上警告する事前表示が制度化されている。アメリカでは、親が子どもに不適切と判断する番組を見られないようにするVチップをテレビに内臓することが義務付けられている。VはViolenceのV。Vチップは「暴力遮断回路」とでもいった意味である。
 日本は、これらの諸外国に比べ、番組内容がさらにひどいと、海外の人々から驚かれている。性描写・暴力・猟奇。暴力的・破壊的・扇情的内容。大衆の欲望を煽り、それで儲ける産業が大人も子供も心を蝕んでいる。視聴率追求や利益優先の商業主義の害悪である。テレビの番組を制作する方も、スポンサーとなる方も、自分たちの利益ばかりを考えている。果たして自分たちの子供に見せられるものかどうかを考えてみればよい。こうした経済中心、お金中心の社会が、子供の心を荒廃させ、親も教師も手におえない子供たちを生み出していると私は思う。
 それとともに、わが国では、大人と子供も平等という誤った考えが悪しき事態を助長している。大人の文化と子供の文化の境目、区別がない。大人の社会全体に性の道徳や倫理が乱れて、大人の欲望を満たすためのものが世の中のあらゆるところに溢れ、子供たちはそれに接してしまう。コンビニ、レンタル・ショップ、本屋など、子供が出入りする場所に、有害な漫画やビデオやゲームなどが溢れている。親は子供の目に触れさせない、与えないという毅然とした態度が必要である。

 有害情報を規制しようと自治体が条例を厳しくしても、業界側はなかなか自主規制しようとしない。公共の福祉より個人の権利を優先する考え方や、表現の自由や児童の人権を極端に尊重する考え方も、妨げになっている。この社会を変えてゆかなければ、家庭や学校でいくら親・教師が努力しても間に合わない。国民全体が真剣に考え、決断しなければならない。教育再生会議が社会全体の対応として「有害情報から子供を守る」ことを要望していることは、非常に重要なことだと思う。

 次回に続く。
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