●テロ対策のための課題(続)
私は、今回のISIL日本人人質殺害事件及びテロ攻撃宣言を機に、わが国は、世界的なテロの横行の時代における安全保障体制の強化を図るべきだと思う。そのためのポイントは、先に引いた有識者の意見に述べられているが、私は情報の収集・分析の能力の整備、安全保障法制の整備、根本的な国家再建のための憲法改正、移民政策の見直しが重要だと思う。
まずテロとの戦いにおいては、情報の収集・分析が極めて重要である。わが国の情報の収集・分析の能力の整備については、まず各国大使館に派遣する防衛駐在官を増やして配置する国を増やす動きがある。これは即実行すべきである。防衛駐在官は自衛官であり、各国の軍人とその立場で交際し、情報を収集することができる。ただし、専門の外交官ではない。幅広く情報を集めるには、語学、知識、技術等に限界がある。
海外の情報の収集・分析には、専門の機関を作る必要がある。わが国は国家安全保障会議(NSC)を作り、その事務局はあるが、NSCが政策判断できるような情報を自前で得られるような体制になっていない。専門の対外情報機関がないためである。国家間にいて、情報は情報との交換で得るものと聞く。その情報を収集する専門家が必要であり、またその情報を分析する専門家が必要である。情報部門と分析部門は車の両輪となる。これらを合わせ持つ海外情報局または対外情報庁の創設が急務である。
今後、ISILのテロリストが、中東等の海外にいる日本人を誘拐・拘束することが考えられる。だが、現在の安全保障法制では、海外にいる日本人を自衛隊が救出することができない。また国内でもテロが行われる可能性があるが、自衛隊は外国の武装集団に対抗する際、防衛出動以外では国際法や慣習に基づく軍隊としての実力行使を行えない。武器使用は、警察官職務執行法が準用され、正当防衛や緊急避難などに限られる。相手から攻撃を受けた後でなければ武器使用を許されないのでは、重武装のテロリストに立ち向かえない。武器使用基準を改善すべきである。また、防衛出動の発令は、「わが国に対する武力攻撃が発生した場合」かつ「他国による計画的、組織的な武力攻撃」という条件が付いている。国家ではない過激組織のテロには、防衛出動ができない。これも改める必要がある。また、普通の国では、軍隊が国民を守り、不法な主権侵害行為を排除する「平時の自衛権」を持っているが、日本はこの国際標準の権限を行使できない。「平時の自衛権」を行使できるように、自衛隊法に領域警備と排除規定を盛り込めばよい。テロから日本及び日本人を守るため、安全保障法制の整備が急務である。
次に、根本的な国家再建のために、憲法を改正する必要がある。この点については、様々機会に書いてきたので、ここでは簡単に書くが、そもそも独立主権国家として存立するためには、自分の国は自分で守るという体制が不可欠である。現行憲法は、その国防に規制を書ける内容となっている。これを改正しなければ、国家の独立と主権、国民の生命と財産を守ることができない。憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、わが国を取り巻く中国・北朝鮮・ロシア等の国々を「平和を愛する諸国民」ということはできない。
そのうえ、現行憲法が制定された時には想定されていなかった国際的なテロリズムが横行しているのが、今日の世界である。ISILのテロリストは、「どこであろうとおまえの国民が発見されれば殺戮を続けるだろう」と日本国民にテロ宣言をしている。テロから日本及び日本人を守るためには、憲法の前文を書き直し、第9条に自衛権は自然権であり、その行使のための自衛隊を軍隊として位置付けることが必要である。またテロによる非常事態の発生、例えば原子力発電所の占拠、科学兵器の散布等も想定して、緊急事態条項の新設が必要である。
次に、移民政策の見直しを行うべきである。私は、拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」に、次のように書いた。
「移民の隔離や排除でムスリムが原理主義化し、イスラム原理主義がヨーロッパ内部で活発化・増大化すれば、文明の『衝突』が各地で起こる。ハンチントンのいう地理的な文明の断層線(フォルトライン)ではなく、各地の都市の街頭や学校や住区で、「衝突」が起こる。集団と集団の接するところ、交わるところで起こる。こうして、ヨーロッパは混迷に陥るという将来像が浮かんでくる」「わが国には、少子高齢化、それによる人口減少への対応のために、移民を1000万人受け入れるべきだという主張がある。それをやったら悲惨な結果になることは、ドイツの例を見れば、明らかである。まして、地方参政権を与えれば、オランダの悲劇以上のことが起こるだろう。移民の多くが共産中国から流入し、移民の行動を中国共産党が指示するだろうからである。国家とは何か、国民とはどうあるべきものか、わが国はどういう外国人なら受け入れ、また国籍を与えるべきなのか。こうした問題を掘り下げて考えることなく、生産年齢人口、特に労働力人口の減少を、外国人労働者で埋め合わせようという発想は、安易かつ危険である」
詳しくは、下記の拙稿をご参照願いたい。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09i.htm
以上、テロに対応するための課題として、情報の収集・分析の能力の整備、安全保障法制の整備、根本的な国家再建のための憲法改正、移民政策の見直しの4点を書いた。一刻も早くこれらの課題を実行することが、国民の生命と安全を守ることになると思う。国民が安心して日々生活でき、また海外でも日本人が活躍できるようにするには、日本人自身が問題意識を高め、協力してテロに対応することが必要である。(了)
関連掲示
・拙稿「イラクが過激派武装組織の進撃で内戦状態に」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12.htm
目次から<中東>のE03へ
・拙稿「憲法第9条は改正すべし」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08m.htm
・拙稿「集団的自衛権は行使すべし」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08n.htm
・拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09i.htm
私は、今回のISIL日本人人質殺害事件及びテロ攻撃宣言を機に、わが国は、世界的なテロの横行の時代における安全保障体制の強化を図るべきだと思う。そのためのポイントは、先に引いた有識者の意見に述べられているが、私は情報の収集・分析の能力の整備、安全保障法制の整備、根本的な国家再建のための憲法改正、移民政策の見直しが重要だと思う。
まずテロとの戦いにおいては、情報の収集・分析が極めて重要である。わが国の情報の収集・分析の能力の整備については、まず各国大使館に派遣する防衛駐在官を増やして配置する国を増やす動きがある。これは即実行すべきである。防衛駐在官は自衛官であり、各国の軍人とその立場で交際し、情報を収集することができる。ただし、専門の外交官ではない。幅広く情報を集めるには、語学、知識、技術等に限界がある。
海外の情報の収集・分析には、専門の機関を作る必要がある。わが国は国家安全保障会議(NSC)を作り、その事務局はあるが、NSCが政策判断できるような情報を自前で得られるような体制になっていない。専門の対外情報機関がないためである。国家間にいて、情報は情報との交換で得るものと聞く。その情報を収集する専門家が必要であり、またその情報を分析する専門家が必要である。情報部門と分析部門は車の両輪となる。これらを合わせ持つ海外情報局または対外情報庁の創設が急務である。
今後、ISILのテロリストが、中東等の海外にいる日本人を誘拐・拘束することが考えられる。だが、現在の安全保障法制では、海外にいる日本人を自衛隊が救出することができない。また国内でもテロが行われる可能性があるが、自衛隊は外国の武装集団に対抗する際、防衛出動以外では国際法や慣習に基づく軍隊としての実力行使を行えない。武器使用は、警察官職務執行法が準用され、正当防衛や緊急避難などに限られる。相手から攻撃を受けた後でなければ武器使用を許されないのでは、重武装のテロリストに立ち向かえない。武器使用基準を改善すべきである。また、防衛出動の発令は、「わが国に対する武力攻撃が発生した場合」かつ「他国による計画的、組織的な武力攻撃」という条件が付いている。国家ではない過激組織のテロには、防衛出動ができない。これも改める必要がある。また、普通の国では、軍隊が国民を守り、不法な主権侵害行為を排除する「平時の自衛権」を持っているが、日本はこの国際標準の権限を行使できない。「平時の自衛権」を行使できるように、自衛隊法に領域警備と排除規定を盛り込めばよい。テロから日本及び日本人を守るため、安全保障法制の整備が急務である。
次に、根本的な国家再建のために、憲法を改正する必要がある。この点については、様々機会に書いてきたので、ここでは簡単に書くが、そもそも独立主権国家として存立するためには、自分の国は自分で守るという体制が不可欠である。現行憲法は、その国防に規制を書ける内容となっている。これを改正しなければ、国家の独立と主権、国民の生命と財産を守ることができない。憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、わが国を取り巻く中国・北朝鮮・ロシア等の国々を「平和を愛する諸国民」ということはできない。
そのうえ、現行憲法が制定された時には想定されていなかった国際的なテロリズムが横行しているのが、今日の世界である。ISILのテロリストは、「どこであろうとおまえの国民が発見されれば殺戮を続けるだろう」と日本国民にテロ宣言をしている。テロから日本及び日本人を守るためには、憲法の前文を書き直し、第9条に自衛権は自然権であり、その行使のための自衛隊を軍隊として位置付けることが必要である。またテロによる非常事態の発生、例えば原子力発電所の占拠、科学兵器の散布等も想定して、緊急事態条項の新設が必要である。
次に、移民政策の見直しを行うべきである。私は、拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」に、次のように書いた。
「移民の隔離や排除でムスリムが原理主義化し、イスラム原理主義がヨーロッパ内部で活発化・増大化すれば、文明の『衝突』が各地で起こる。ハンチントンのいう地理的な文明の断層線(フォルトライン)ではなく、各地の都市の街頭や学校や住区で、「衝突」が起こる。集団と集団の接するところ、交わるところで起こる。こうして、ヨーロッパは混迷に陥るという将来像が浮かんでくる」「わが国には、少子高齢化、それによる人口減少への対応のために、移民を1000万人受け入れるべきだという主張がある。それをやったら悲惨な結果になることは、ドイツの例を見れば、明らかである。まして、地方参政権を与えれば、オランダの悲劇以上のことが起こるだろう。移民の多くが共産中国から流入し、移民の行動を中国共産党が指示するだろうからである。国家とは何か、国民とはどうあるべきものか、わが国はどういう外国人なら受け入れ、また国籍を与えるべきなのか。こうした問題を掘り下げて考えることなく、生産年齢人口、特に労働力人口の減少を、外国人労働者で埋め合わせようという発想は、安易かつ危険である」
詳しくは、下記の拙稿をご参照願いたい。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09i.htm
以上、テロに対応するための課題として、情報の収集・分析の能力の整備、安全保障法制の整備、根本的な国家再建のための憲法改正、移民政策の見直しの4点を書いた。一刻も早くこれらの課題を実行することが、国民の生命と安全を守ることになると思う。国民が安心して日々生活でき、また海外でも日本人が活躍できるようにするには、日本人自身が問題意識を高め、協力してテロに対応することが必要である。(了)
関連掲示
・拙稿「イラクが過激派武装組織の進撃で内戦状態に」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12.htm
目次から<中東>のE03へ
・拙稿「憲法第9条は改正すべし」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08m.htm
・拙稿「集団的自衛権は行使すべし」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08n.htm
・拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09i.htm