ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

8・30衆議院選挙後の日本

2009-08-31 13:15:05 | 時事
 8月30日の衆議院議員総選挙は、大方の予想通り、民主党が単独過半数で歴史的大勝、自民は結党以来の惨敗という結果となった。全480議席の内訳は、民主308、自民119、公明21、共産9、社民7、国民新3、みんなの党5、新党日本1、新党大地1、無所属6である。
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=945709&media_id=2

 民主党は、単独で269議席以上という絶対安定多数を獲得した。絶対安定多数とは、常任委員会の委員長ポストを独占した上、さらに委員数でも過半数を確保できる議席数である。しかし、民主党は社民党・国民新党と連立を組む方針なので、与党は318議席となる。これら少数党と連立を組むのは、参議院では民主単独で絶対安定多数を得ていないため、来年の参議院選挙に向けて、政権の安定・強化を諮る意味があるのだろう。
 こうした選挙結果を踏まえて、今後、日本を愛する日本人は、どのように考え、行動すべきか。私は、選挙前に私見を書いたし、それ以前からサイトやブログに拙稿を揚げているが、本日改めて私見を記したい。重複する点が多いことをお断りしておく。

●民主党政権の危険性

 わが国民の多数は、失政・失策の続く自公連立政権に厳しい評価を下し、民主党への政権交代を求めた。
 民主党は「国民の生活が第一」を掲げ、官僚主導の政治から政治家主導、国民が主役の政治への転換を国民に訴えた。政権を取った以上、民主党には、日本のため、国民のために努力してもらいたい。

 まず民主党が打ち出している政策のうち、私が評価できる点を挙げたい。私は、小泉―竹中政権が行なった従米売国的な郵政民営化には、当初から反対である。それゆえ、民主党政権が郵政民営化の見直しを行なうことに関しては、賛成する。ただし、これは本来、自民党が自ら誤りを認め、修正すべき課題である。真の国益を見失っているところに、自民党の迷妄がある。
 年金・医療・脱少子化など国民生活に直接関わる課題に関しては、自民党・民主党の政策は一長一短であると私は思う。民主党の社会政策は、財源を確保できるかどうかにかかっている。それが不調であれば、後々国民に負担が及ぶばら撒き政策に終わる。

 一方、私が民主党の政策を批判する最大の問題点は、国家安全保障である。友愛の理念では、日本を守れない。民主党には外交・軍事に種々の意見があり、政策がまとまらないだろう。国民生活に関わる内政を改善しえても、国際社会での日本の足場が危うくなれば、国民の生活と安全を守れなくなる。
 次に私が批判するのは、国家主権に関する考え方である。永住外国人に地方参政権を与えるという民主党の政策は、国家主権の否定であり、日本国の溶解を招く。また民主党は国立国会図書館に恒久平和局を設置、慰安婦への謝罪・補償等の政策を準備している。これも国家主権に関わる事柄であり、自虐的な歴史観は、国家主権を弱め、国民の誇りや愛国心を損なう。
 さらに民主党は、わが国の家庭や社会、国柄の伝統を断つ政策を推進しようとしている。選択的夫婦別姓の導入は、家族の一体性を大切にしてきた日本的な家族を解体するものとなる。また靖国神社に替わる国立追悼施設建設の計画は、国を守るという国民の団結を壊し、日本人を結ぶ絆を断ち切るものとなる。また日教組の掲げる教育政策を実現することは、日本人でありながら、日本を嫌い、日本を攻撃しようとする嫌日的・反日的な日本人を、これまで以上に量産することになる。当然、皇室への尊崇や先祖への感謝の念は、次世代に涵養されなくなる。
 民主党は、単独で衆議院にける絶対安定多数を獲得した。今後、新政権は、上記のような政策を実現しようとするだろう。もしこれらの政策の多くが強行された場合は、デモクラシーの合法的な手続きによって、日本の革命的な変造が進められることになる。
 自民党にお灸を据え、一度、民主党に任せて見ようと考えた人は、今後の民主党政権が暴走しないように、しっかり政治を監視すべきだろう。

 私は、これまで民主党政権は日本の自壊の道と懸念し、ささやかながら啓蒙に努めてきたが、今回の選挙でわが国は国民の圧倒的多数の選択によって、崩落への扉が開かれつつあると思う。デモクラシーは、民衆が政治に参加する制度であり、一般的な参加方法は選挙である。民衆が賢者の知恵を働かせれば、国家は平和と繁栄の道を行く。しかし民衆が愚民に堕すれば、国家は多数決によって自壊滅亡の道を行く。

 昭和44年12月の衆議院議員総選挙では、日本社会党が事前の予想に反して、大敗した。それによってわが国の社会主義化は防がれた。日本人の精神を持った人々の良識が、最後の段階で働いたのである。しかし、ちょうど40年後の本年、民主党による政権交代は実現した。民主党は社会主義を標榜する政党ではない。しかし、その思想・政策は、多分に社会民主主義的である。今回の選挙では、日本国民は、40年前より日本精神を失ってきている。自民党の政治家も支持者も同様である。私は、この度の政権交代の背景にあると思う。

●自民党の出直し

 自民党は今回の選挙で結党以来の大惨敗をした。この結果を猛省し、国民の支持を取り戻せるよう、自民党は一から出直すべきである。
 自民党は、長期的に腐敗・堕落を続け、単独では政権を維持できなくなり、公明党と連立を組んだ。この10年の間、自民党は権力維持のために、創価学会と一体化した政党に変質した。私は、自民党は、ここで公明党との連携をやめ、出直すべきだと思う。
 自民党は、公明党との連立のもと、小泉―竹中政権が、新自由主義、市場原理主義を導入した。それによって家庭や企業、社会におけるわが国のよき伝統が毀損され、利己主義が蔓延し、格差社会が出現した。また政府が、アメリカの圧力に屈し、郵政民営化を推進して、外資への売国を進めた。国民は、自民党から新自由主義、市場原理主義の勢力を駆逐すべきである。
 今後、自民党の建て直しは、相当困難な課題だろう。日本的保守が大切にしてきた大同団結の精神を失えば、些細な意見の違いから、四分五裂するかも知れない。かつての日本社会党の末路を後追いすべきではない。

●公明党の擦り寄り

 公明党は、選挙の結果、これまで同党を率いてきた幹部、太田昭宏氏、北側一雄氏、冬柴鉄三氏が三人揃って議席を失った。比例代表に重複立候補をしないという戦術の失敗だろう。自民党は、多くの有力政治家が比例に重複立候補することで、議席を確保した。これに比べ、公明党の傷はずっと深いだろう。
 もともと公明党は、自民党政権を批判する「中道政党」を売りにしていた。自・自・公連立で政権に就いてから、自民党との関係を深め、国家権力にあずかってきた。そして、この10年、自民党の延命装置の役割を果たすことで、小党でありながら、国家権力を掌中にしてきた。
 元公明党委員長だった矢野絢也氏は「黒い手帖 創価学会『日本占領計画』の全記録」(講談社)にて、公明党が権力に与し、与党であろうとする最大の理由は、池田大作氏の国家喚問を防ぐためであると述べている。氏の個人的なスキャンダルが国会の場で追及されるのを防ぐことは、創価学会の最重要課題だろう。民主党に政権が移ったことにより、公明党は自民党に距離を置き、池田氏擁護のため、与党・民主党に擦り寄り、連立政権に参加して権力への復帰を図るだろう。
 再来年には、都知事選を含む統一地方選挙が行われる。公明党は、以前から都知事選を重視している。創価学会の本部のある東京都の行政に影響力を持つことを、公明党は重要な目標としている。それゆえ、新政権の発足後、しばらくすると「民公連立」への動きが出てくる可能性があると思う。

●日本の再建

 私は、伝統尊重的保守を自認している。伝統尊重的とは、わが国の伝統を尊重する立場であり、皇室の崇敬、家族の絆、誇りある歴史観、道徳の涵養、自然との調和等を重要視する立場である。それゆえ民主党に対して、私は、厳しく批判的である。民主党の政治家の多数は、リベラルないし社会民主主義である。社民党・共産党は論外である。
 私は、自民党の中の経済優先的保守に対しても、批判的である。経済優先的とは、経済的自由主義をよしとし、物質的利益の追求を、わが国の伝統の保持よりも優先する立場である。また自民党には、保守系のリベラルもおり、私は彼らに対しても批判的である。
 伝統尊重的保守の政治家は、民主党、国民新党、無所属にもいる。今回の選挙後、そうした政治家が結集し、新たな勢力を作ることが、望ましいと私は考える。伝統尊重的な保守は、公明党への依存をやめ、自立すべきである。従米媚中の保守・リベラルへの迎合を改め、独立自尊の道を行くべきである。そして、国民の良識に訴え、日本の精神的伝統に基づいた国づくりを目指すべきだと思う。

 8・30衆議院選挙の結果、わが国は、本年かつてない混迷に陥ることとなった。折りしも天皇陛下御即位20年というこの年に。民主党中心の新政権は、御即位20年の記念事業にも消極的な対応をするだろう。
 混迷の中から、日本の伝統を守る勢力が復興しえるかどうか。わが国は精神的な意味で、真に存亡の危機に直面している。日本人が真の日本精神に目覚めない限り、日本の自壊の道を防ぐことはできない。
 日本を愛し、日本の伝統を大切に思う人々は、自らの魂を呼び覚まし、日本の再建に努めよう。

 以下、資料として、本日の新聞2紙の社説をクリップしておく。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
●読売新聞 平成21年8月31日号

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090831-OYT1T00195.htm
民主党政権実現 変化への期待と重責に応えよ

 自民党政治に対する不満と、民主党政権誕生による「変化」への期待が歴史的な政権交代をもたらした。
 30日投開票の衆院選で民主党が大勝し、自民党は結党以来の惨敗を喫した。
 野党が衆院選で単独過半数を獲得し、政権交代を果たしたのは戦後初めてのことである。
 近く召集される予定の特別国会で、首相に指名される民主党の鳩山代表が、国家経営の重責を担うことになる。

◆自民党への失望と飽き◆
 このような民意の大変動の要因は、自民党にある。
 小泉内閣の市場原理主義的な政策は、「格差社会」を助長し、医療・介護現場の荒廃や地方の疲弊を招いた。
 小泉後継の安倍、福田両首相は相次いで政権を投げ出した。
 麻生首相は、小泉路線の修正も中途半端なまま、首相としての資質を問われる言動を続けて、失点を重ねた。
 この間、自民党は、参院選敗北によって参院第1党の座を失い、従来の支持・業界団体も、自民離れを加速させた。
 構造改革路線の行き過ぎ、指導者の責任放棄と力量不足、支持団体の離反、長期政権への失望と飽きが、自民党の歴史的敗北につながったと言えよう。
 民主党は、こうした自民党の行き詰まりを批判し、子ども手当や高速道路無料化など家計支援策、多様な候補者を立てる選挙戦術で有権者の不満を吸い上げた。
 小泉政権下の前回衆院選では、「郵政民営化」と刺客騒動で、自民党に強い追い風が吹いた。
 今回、風向きは一転、「政権交代」を唱えた民主党側に変わり、圧勝への勢いを与えた。この結果、自民党だけでなく、連立与党の公明党も大きな打撃を受けた。
 民主党政権に「不安」は感じつつも、一度は政権交代を、との有権者の意識が、それだけ根強かったと見るべきだろう。
 しかし、300議席を超す勝利は、必ずしも、民主党への白紙委任を意味するものではない。

◆政権公約の見直しを◆
 鳩山新内閣は、政権公約(マニフェスト)で示した工程表に従って、政策を進めることになる。だが、“選挙用”政権公約にこだわるあまり、国民生活を不安定にさせてはならない。
 最大の課題は、大不況から立ち直りかけている日本経済を着実な回復軌道に乗せることだ。雇用情勢の悪化を考えれば、切れ目のない景気対策が欠かせない。
 来年度予算編成でも、景気浮揚に最大限の配慮が必要だ。
 外交・安全保障では、政権交代によって、国際公約を反故(ほご)にすることは許されない。外交の継続性に留意し、日米同盟を堅持しなければならない。
 民主党は、参院では単独過半数を持たないことから、社民、国民新両党と連立政権協議に入る。
 懸念されるのは、自衛隊の国際平和協力活動など、外交・安保の基本にかかわる政策をめぐって、民主、社民両党間に大きな隔たりがあることだ。
 少数党が多数党を振り回すキャスチングボート政治は、弊害が大きい。民主党は、基本政策で合意できなければ、連立を白紙に戻すこともあり得るとの強い決意で、協議に臨むべきだろう。
 民主党は、「官僚政治からの脱却」も目標に掲げている。だが、首相直属の「国家戦略局」を設けたり、多数の国会議員を各府省に配置しさえすれば、官僚を動かせるというものではない。
 官僚と敵対するのではなく、使いこなす力量が問われる。官僚の信頼を得て初めて、政策の遂行が可能になることを知るべきだ。
 自民党は1955年、左右の社会党の統一に対抗する保守合同によって誕生した。
 当時のイデオロギー対決はすでになく、かつての社会党も存在しない。今回の自民党の壊滅的な敗北は、自社主軸の「55年体制」の完全な終幕を告げるものだ。

◆自民党は立ち直れるか◆
 自民党は、これから野党時代が長くなることを覚悟しなければなるまい。民主党とともに2大政党制の一角を占め続けるには、解党的出直しが必要だ。
 93年、自民党は金権腐敗から一時期政権を退いた。その後、社会党や公明党などとの連立で政権を維持してきた。
 しかし、自己改革を怠り、結局、有権者の手によって、再出発を余儀なくされた。
 今後は、麻生首相に代わる新総裁の下、来年夏の参院選に向け、党の組織や政策、選挙体制など、すべての面にわたり徹底的な改革が迫られる。
 説得力のある政策を示し、民主党政権に対する批判勢力として、闘争力を高めねばならない。
(2009年8月31日05時28分 読売新聞)

●産経新聞 平成21年8月31日号

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090831/stt0908310524001-n1.htm
【主張】民主党政権 現実路線で国益を守れ 保守再生が自民生き残り策
2009.8.31 05:23

 第45回総選挙が投開票され、民主党は選挙区、比例代表ともに自民党を圧倒した。
 野党が単独で過半数を占め、政権を樹立するのは戦後初めてだ。自民党主導政治を終焉(しゅうえん)させるという歴史的な転換点になった。13年前の総選挙から導入された小選挙区制による政権交代を可能にする二大政党制が、ようやく機能した意味は大きい。民主党が自民党批判の受け皿になったのである。
 問題は、政権交代が目的化し、この国をどうするのかという選択肢がほとんど吟味されぬまま、結論が導かれたことだ。
 民主党主導の新たな政権により、これまでの内政・外交の基軸は大きく変わらざるを得ないだろう。自民党が曲がりなりにも担ってきた戦後秩序も変化を余儀なくされる。場合によっては、日本を混乱と混迷の世界に投げ込むことにもなりかねない。政権交代が日本を危うくすることもあるのだ。そうなることは民主党にとっても本意ではないだろう。
 国の統治を担う以上、民主党には国益や国民の利益を守る現実路線に踏み込んでほしい。マニフェスト(政権公約)で掲げた政策の修正を伴うケースも出てこようが、1億2千万の日本人の繁栄と安全を守り抜くことをなによりも優先させるべきだ。

≪危ういポピュリズム≫
 今回の選択で留意すべきは、民主党の政策が高く評価されたというより、自民党にお灸(きゅう)を据えることに重点が置かれたことだ。たとえば、民主党が掲げた「高速道路の原則無料化」に対し、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、反対が65%と賛成(30%)の倍以上となった。
 政権を担う民主党の力量に不安があることも事実だ。本来、政権交代のたびに基本政策が大きく変わることは好ましくない。とくに外交・安全保障政策の基軸が揺れ動いては対外的信用を失う。
 民主党はこれまで、インド洋での海上自衛隊による補給支援を一時的に撤退させ、在日米軍駐留経費の日本側負担に関する特別協定に反対してきた。小沢一郎前代表の政局至上主義のためだが、「党利党略は水際まで」の原則を否定したのでは信頼は高まらない。
 その意味で、維持されるべき日本政治の方向性とは、日米同盟を基軸とした外交・安保政策の継続であり、構造改革の推進により経済や社会に活力を取り戻すことにほかならない。民主党が現実的な判断に立ち、これらを継承することができないなら、何のための政権交代かということになる。
 また、国民の政治に対する判断はどうだったのだろう。4年前の総選挙では、小泉純一郎首相が掲げた郵政民営化を圧倒的に支持した。それが今回は、民主党の主張する「政権交代」というキャッチフレーズに熱狂的に共鳴したといえる。
 2年前の参院選でも民主党は勝利したが、振り子の激しさは政治を不安定にしかねない。とりわけ、単一イシュー(争点)に白黒をつけることが最大の選択肢となることは、単純明快かもしれないが、ポピュリズム傾倒の危うさがあると認識すべきだろう。
 一方で、多くの国民が民主党に閉塞(へいそく)感を払拭(ふっしょく)することを期待したのも間違いない。民主党が公約に掲げた首相直属の国家戦略局は、予算作りだけでなく、国家ビジョンを検討するという。

≪敗北を徹底検証せよ≫
 これまで、こうした外交・安保政策の司令塔はなかった。官僚主導から政治主導への成果を出すことができなければ、国民の失望感は大きくなるだろう。
 自民党は歴史的な惨敗になった。党幹部や閣僚らは相次いで選挙区で落選・敗退した。解党的出直しへの答えを見いだせないまま選挙に臨み、政権から退場を求められたといえる。自民党政治への不信や行き詰まり感が広がったことに加え、保守政党としての存在意義を十分発揮できなかった点も見過ごせない。
 新憲法草案の策定など、民主党に比べれば保守色をみせていたが、集団的自衛権行使の政治決断には至らず、国の守りに関しても不十分さが残った。
 公明党との連立下でもイラク自衛隊派遣などの業績は挙げたが、連立の常態化が何をもたらしたかを考えるべきだった。敗北を徹底的に検証してもらいたい。保守政党として民主党への対抗軸を早急に構築し、再生を果たして国民の期待に応える責務がある。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トッドの人口学・国際論7

2009-08-29 08:41:54 | 文明
●ハンチントンの「文明の衝突」への批判と誤解

 これまで何度か、ハンチントンの「文明の衝突」について触れた。ここで、トッドの理論と主張、ハンチントンの理論と主張の違いについて、重要な点を三つ述べておきたい。

 第一に、文明学について。
 トッドの「帝国以後」は、ハンチントンの「文明の衝突」説への批判に基づいている。ハンチントン批判の根底には、ハンチントンが拠って立つ文明学への批判がある。トッドは、文明学の理論を評価しない。トッドは、家族構造の違いによって社会を分類する。分類された社会は、国家より小さい集団となる。その一方、国際社会は文明を単位に動いてはいないという見方に立ち、国家を中心として国際関係を見る。
 私は、人類の歴史をとらえるには、国家や民族を単位とするのではなく、文明を単位としてとらえることが適切だと考える。これはトインビー以来の文明学の基本的な見方である。文明とは、一般に一つ以上の国家や、複数の人種・民族を含む大規模な社会であって、他とは異なる文化を持つものである。
 ハンチントンは「冷戦後の世界において、歴史上初めて世界政治が多極化し、多文明化した」という認識に立つ。冷戦時代の世界は、アメリカが主導する自由世界と、ソ連を中心とする共産圏、そして発展途上の第三世界に分かれていた。しかし、冷戦後の世界は、7または8の文明によって区分されるとした。西洋文明、東方正教文明、イスラム文明、ヒンズー文明、シナ文明、日本文明、ラテン・アメリカ文明。これら7つに、今後可能性のあるものとして、アフリカ文明を加えると8つになる。そして、ハンチントンは、人類の歴史で初めて、世界政治が真に多文明化すると説き、文明学に基づく国家間関係を分析する。
 これに比べ、トッドは個々の社会を分析する一方、文明という大きな枠組みを軽視していると私は思う。そのため、トッドの所論からは、人類の世界史や現代世界の全体像が浮かび上がってこない。またその結果、人類が目指すべき世界の将来像は、部分的に示唆されるのみである。

 第二に、文明の「衝突」について。
 トッドは、ハンチントンの主張は「文明の衝突」説だという理解に立つ。文明は衝突しない、接近するという反論を打ち上げる。しかし、ハンチントンは、もともと主著に「世界秩序の再生」という題名を考えていた。「文明の衝突」は編集者が考えた題名だった。その二つをつなぎ合わせて「文明の衝突と世界秩序の再生」という題がつけられた。
 「文明の衝突」という文言は強烈な衝撃を読者に与えたので、ハンチントンは「文明の衝突」を説き、アメリカが衝突に勝利する道を説いているという誤解が広がった。ハンチントン自身は、多極化・多文明化する世界で文明の衝突を防ぎ、世界秩序の再生を図ることを目的として、本書を書いた。そして、世界秩序再生のための具体的な方策を提示している。その姿勢は、世界政治の安定をめざすトッドに通じるものである。

 第三に、イスラム文明について。
 トッドとハンチントンの最大の違いと一般に見られているのが、イスラム文明の見方である。トッドは、ハンチントンはイスラム諸国が「文明の衝突」を起こすと説いていると理解し、これを強く批判する。イスラム諸国は近代化が進むにつれ、鎮静化し、西洋文明とイスラム文明の衝突は起こらないと強く反論する。
 しかし、ハンチントンは、人口の増加、特に若年層の増加がイスラム諸国の過激化を生み出しており、人口増加が収まれば、鎮静化するだろうと予測している。人口学の専門家であるトッドのように、精緻な理論と豊富なデータをもとに述べるものではないが、大意はトッドに通じるものである。

 それゆえ、トッドのハンチントン批判には、誤解に基づく点がある。トッドとハンチントンの所説の比較は、後にもしばしば行なうが、ここでは上記の三つを指摘するにとどめ、トッドの理論の検討に戻ろう。

 次回に続く。


衆議院選挙、日本変造を防げ!

2009-08-27 11:49:15 | 時事
 衆議院選挙まで、あと3日となった。私は今回の選挙は、昭和44年12月の衆議院選挙以来、最も重要な選挙だと思っている。日本の進路を決める選挙として、それくらい重要な選挙となる。
 44年12月の衆議院選挙は、70年安保の時期で、左翼革命運動が高揚し、騒然とした中で行われた。当時、日本社会党は日米安保破棄を主張し、ソ連との提携による社会主義政権の樹立を目指していた。選挙前、新聞各紙は、社会党の大勝を予想し、朝日新聞は連日、革命前夜のような空気を醸し出す記事を書いていた。
 幸いこの選挙は、予想を大きく覆し、社会党の大敗に終わった。逆に日米安保堅持の勢力が伸張し、政権は安定して、翌45年、日米安保条約は自動延長された。左翼革命運動の嵐は収まり、国内に平穏が戻った。その後、わが国は、70~80年代の経済成長の道を安定的に進んだのである。

 私は今回の8・30衆議院選挙は、44年12月以来、最も重要な選挙だと考える。状況は、40年前と大きく違う。左翼革命運動は雲散霧消し、ソ連は解体した。替わって中国が強大化し、韓国・北朝鮮とともに、わが国の政治・世論への影響力を強めている。また社会党は四分五裂し、政権を目指す政党は、民主党に替わっている。
 しかし、マスコミが偏った情報を流して国民を誘導し、国民の多くも国家根幹の問題をよく思慮できずにいる点は、共通している。

 3日後の選挙がどういう結果になるかは、わからない。大方の予測によれば、民主党が勝利する形勢は現状、変わっていない。仮に民主党政権になった場合、その勝ち方が、他党との連立で過半数を得る程度になるか、241議席以上の単独過半数になるか、269議席を超える絶対安定多数になるか、さらに3分の2を超える321議席以上というほぼ一党独裁状態になるかによって、その後の政治には違いが出てくる。
 民主党が大勝すれば、民主党は国民に公表・配布しているマニフェストに盛られた政策以外の、その裏にある政策をも実現しようとするだろう。
 その裏にある政策とは、巷間、「裏マニフェスト」と呼ばれているものである。動画「国民を騙す民主党の裏マニフェスト」を見れば、5分でそのポイントが理解できる。
http://www.youtube.com/watch?v=lpSAsJwemTY

 ちょうど1ヶ月前、産経新聞は、民主党のマニフェストが、同党の政策集「INDEX2009」の内容と大きく違っている点を指摘し、国民に注意を促した。本日、産経新聞は、同紙の社説に当たる「主張」において、再びこの問題について触れている。
 政策集にあって、マニフェストにないのは、永住外国人への参政権付与、選択的夫婦別姓の導入、国会図書館に恒久平和局を設置、慰安婦への謝罪・補償、靖国神社に替わる国立追悼施設建設等である。いずれも日本の主権、国家の独立に関わる問題ばかりである。

 民主党は、選挙で多数の票を獲得するために、こうした論争の多い政策を隠しているのだろう。いったん権力を奪取すれば、隠された政策の実現を試みるに違いない。私は、そのための司令塔となるのが、「国家戦略局」の構想ではないかと思う。この新設予定の機関は、首相を中心に、閣僚・有識者等が参加する。議長は、副総理格の閣僚ともなる民主党の政策調査会長が務めるという。選挙で大勝し、権力を得れば、こうした一元的な機関を通じて、民主党の政策の実現が推進されるだろう。

 あと3日。民主党による日本変造を少しでも防ぐために、国民の多くが、日本人としての良識を働かせることを期待したい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成21年8月27日号

http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090827/elc0908270243000-n1.htm
【主張】外国人参政権 隠された争点にも関心を
2009.8.27 02:43

 衆院選投票まであと3日だ。各紙世論調査によれば、年金や医療、介護などの生活に身近な問題に大きな関心が集まっているが、重要な争点はそれだけではない。
 永住外国人への地方参政権付与をめぐり、民主党は当初、党の政策集「INDEX2009」で、結党時の基本政策だとして早期実現をうたっていた。しかし、7月末に出されたマニフェスト(政権公約)では、このことに全く触れなかった。
 この問題で、民主党執行部はおおむね推進論だ。鳩山由紀夫代表は先の党首討論会で、「議論の最中だ」としながら、「前向きに考えるべきときがきているのではないか」と述べた。また、小沢一郎代表代行は代表だった昨年2月、就任を控えた韓国の李明博大統領との会談で、在日韓国人への地方参政権付与に向けて努力する意向を示している。
 これに対し、民主党の中堅・若手議員を中心に「永住外国人の地方参政権を慎重に考える勉強会」が開かれるなど、反対意見も根強い。マニフェストからこの問題が外されたのは、こうした複雑な党内事情のためとみられる。
 だが、民主党との連立を目指す社民党がマニフェストで外国人参政権付与に賛成の立場を示していることもあり、選挙後にこの問題が浮上してくる可能性がある。鳩山代表ら民主党執行部は、態度をはっきりさせておくべきだ。
 同じことは与党にも言える。自民党内は反対意見が強いが、公明党はマニフェストで、外国人参政権付与を重点政策に掲げている。自民党もあいまいにできない。
 選挙権は国民にのみ与えられた権利で、仮に外国人にも与えられることになれば、憲法に抵触する恐れがある。国のありようにかかわる重大な問題である。
 民主党の政策集にありながら、マニフェストに入っていないものには、選択的夫婦別姓の早期実現や国会図書館に恒久平和局を設置する法改正、慰安婦問題への取り組み、靖国神社に代わる国立追悼施設建設などもある。幅広い票を集めるため、これら左派色の強い主張をあえて封印した可能性も否定できない。
 夫婦別姓や靖国代替施設建設の問題では、自民党内にもさまざまな意見がある。
 有権者は、表面に現れた争点だけでなく、“隠された争点”にも関心を払ってほしい。

●産経新聞 平成21年7月27日号

http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090727/elc0907271814006-n1.htm
【09衆院選】民主マニフェスト 政策集に比べ“左派”色控えめ
2009.7.27 18:14

 民主党が発表したマニフェスト(報道用資料)の表紙 民主党が27日発表した衆院選のマニフェスト(政権公約)は、党の政策集「INDEX2009」で濃厚だった左派・リベラル的色彩が薄められている。これは政権奪取後を見据え、現実路線にかじを切った結果といえる。一方、永住外国人への地方参政権付与など有権者の反発が大きい政策は、選挙で争点化しないよう隠したいとの思惑も透けてみえており、慎重に見極める必要がありそうだ。(阿比留瑠比)

 「われわれが選挙で国民に示して約束するのはマニフェストであり、政策集は公約ではない」

 民主党の政調幹部はこう強調する。さしずめ、マニフェストは選挙で掲げる「旗印」で、政策集は表立っては主張しない「本音」という位置づけだろうか。
 今回のマニフェストでは、鳩山由紀夫代表が繰り返し意欲を表明してきた米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県外(海外)移設が盛り込まれていないなど、外交・安全保障面の現実路線ぶりが目立つ。米側の理解と協力が不可欠な「米軍再編や米軍基地のあり方の見直し」についても、政策集では「進める」と明言していたものを「見直しの方向で臨む」と柔らかい表現に改めた。
 また、外国人参政権に関しては、政策集で結党時の「基本政策」だとして早期実現をうたっているのにマニフェストでは全く触れていない。同じく早期実現を主張していた選択的夫婦別姓も抜け落ちた。

 国会図書館に過去の日本の「罪」を追及する恒久平和調査局を設置▽元慰安婦に謝罪と金銭支給を行うなど慰安婦問題への取り組み▽靖国神社に代わる国立追悼施設の建立-など論議を呼びそうな諸課題もマニフェストには入っていない。

 このほか、マニフェストでは表現がぼかされているものもある。例えば、「子育て・教育」の項には「教員免許制度を抜本的に見直す」とあるが、「これは日教組の運動方針に沿って安倍晋三内閣で成立した教員免許更新制を廃止するという意味」(元神奈川県教組委員長で元社会党参院議員の小林正氏)だという。
 ただ、人権侵害救済機関の創設はマニフェストに残った。内閣府の外局として人権侵害救済機関をつくるというもので、民主党の支持団体である解放同盟の主張と一致している。
 マニフェストに明記していなくても民主党政権誕生後には優先的に実行される政策もあるとみられる。マニフェストと政策集の双方を重ね合わせて実態を判断した方がよさそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

民主党の国旗切り裂き問題

2009-08-26 17:10:40 | 時事
 民主党のマークは、二つの赤い円を上下に重ね合わせたデザイン。8月8日、鹿児島県の民主党の衆院選立候補予定者が開催した集会で、民主党の登旗が壇上に掲げられた。その旗は、「日の丸」の国旗を切って、上下につなぎ合わせたものだった。集会には、小沢一郎代表代行が参加していた。
 現場の写真が民主党のホームページに載ったが、党の内外から問題視されると、削除された。幸いそのデータを保存していた人がおり、インターネットに掲載されている。私もMIXIの本日の日記にその写真を掲載している。
 多くの国では、自国の国旗を損壊することは、犯罪と定められている。日本人でありながら、国旗「日の丸」を毀損するとは、許しがたい行為である。
 鳩山代表は、国民に対し、誠意ある謝罪を行っていない。このような人物が首相になろうとしているわが国の現状は、不吉である。

 民主党の党大会では、わが国の国旗が掲揚されていない。地方自治体、企業、各種団体が主催する集会では、一般に、壇上向かって左に国旗、右にその団体の旗を掲げる。民主党の集会は、鹿児島での集会でもそうだが、自分の団体の党の旗のみを掲げる。これは、日本の国家及びその象徴である国旗への敬意を欠く行為である。
 こうした政党であるあるからこそ、今回のような国旗断裁・党旗変造という言語道断の行いが出てくるのである。このような政党が日本の権力を奪取しようとしている現状は、凶兆である。

 次に本件の報道記事を2件掲載し、その後に私見を述べる。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●読売新聞平成21年8月18日号

民主の国旗切り張り、首相「許し難い」

 17日の党首公開討論会で、麻生首相は、民主党が鹿児島県内で開いた集会に言及し、会場に掲げられた民主党のマークが「国旗を切り張りして作られたものだった」と指摘した。
 民主党の鳩山代表はその場で「そんなけしからんことをやった人間がいるとすれば、大変申し訳ない」と謝罪した。
 この集会は、今月8日に民主党の鹿児島県内の衆院選立候補予定者が開催し、小沢一郎・党代表代行らが出席。ステージの後ろに、二つの赤い円を上下に重ね合わせたデザインの同党のマークが掲げられたが、麻生首相は17日の討論会で「よく見ると、国旗を切り刻んで上下につなぎ合わせていた。民主党のホームページにも載っている。とても悲しい、許し難い行為」と追及した。
 鳩山代表は謝罪したうえで、「我々の神聖なマークなので、マークをきちんと作らなければならない話だ」とも述べた。民主党関係者は「(国旗は)党のマークを表すために支援者が持ち込んだものと聞いている」と説明。同党のホームページからは同日、この会場の模様が写った写真が削除された。
 同党のマークは下の円がゆがんだ形。「今は完全ではないが、雪だるまも転がしているうちに大きくきれいな球に育つ」(1998年の結党当時の菅代表)という思いを込めたためだ。しかし、問題の会場では、下の方もきれいな円になっていた。(読売新聞)

●産経新聞 平成21年8月22日号

鳩山氏「国旗切り張り」の現場入り見送り 首相を逆批判 謝罪はなし

 民主党の鳩山由紀夫代表は21日、遊説のため鹿児島県入りした。鹿児島1、3区で街頭演説を行ったが、新人候補陣営が日の丸を切り張りした「党旗」を掲げる問題を起こした鹿児島4区入りは見送った。
 日の丸切り張り問題では、自民党が徹底追及の構えを見せている。麻生太郎首相も20日、鹿児島入りし、「ふざけた話だ。民主党は日の丸すらきっちりできない」と猛批判した。
 これを受け、鳩山氏は鹿児島市内での街頭演説で「麻生首相が昨日(20日)、鹿児島でいろいろと民主党のことを批判したそうだが、私たちは誹謗(ひぼう)中傷合戦のためにこの場に立っているのではない。正々堂々と政策論争をしたい」と強気に抗弁。最後まで「おわび」の言葉はなかった。
 一方、首相は21日、福島県郡山市内での街頭演説でまたもこの問題に触れ、「われわれが守るべきは郷土であり、日本であり、日の丸だ。それを破って自分の党の党旗を作るというふざけたことを、われわれは絶対にする気はない」と語気を強めた。(産経新聞)
――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 私は、民主党の旗にもともと違和感を感じている。旗は、その集団の象徴である。そこに掲げる図案には、単なるデザイン的なものが多いが、その集団の思想や心理をよく表しているものもある。
 多少心理学を学んだ者の目で見ると、民主党のマークには、「日の丸」を拒否し、「日の丸」に象徴されるものを引き裂き、異なるものへと変えたいという潜在的な感情が表現されていると理解される。「日の丸」に象徴されるものとは、日本という国家であり、日本の国柄である。
 こうした理解をもって、民主党の政策を見ると、国家観・歴史観は嫌日的、自虐的であり、家庭観・社会観は分解的、分裂的である。党のマークに表現されるものと、政策が一致している。その点で、民主党のマークは、民主党にぴったりのマークだと思う。
 今回の国旗切り裂き問題は、私は、民主党のマークに表れている民主党の思想・心理が、具体的な行為として表現されたものと解釈する。この行為は、単なる思い付きではなく、心の深層から行為へと突き動かす動機があると推測する。
 それは、「日の丸」を拒否し、「日の丸」に象徴されるものを引き裂き、異なるものへと変えたいという潜在的な感情である。民主党の支持団体である日教組や社会主義的な労働組合、嫌日的な市民団体の人たちに、広く見られる思想とも一致する。
 鹿児島の集会の参加者は、国旗を切り裂いてつなぎ合わせた党旗に違和感を持たずに集会を行った。民主党員は、写真を党のホームページに掲載した。鳩山代表は、国民の批判を受けても、なお事の重大性を認識できていない。このことは、民主党員の多くが、国旗切り裂きを行った行為者と同じ複合感情の影響下にあることを示唆している。
 わが国の国民の多くは、日本の公党でありながら、日本国の象徴である国旗を拒否し、日本人でありながら、「日の丸」に象徴されるものを否定する政党に政権を委ねようとしている。非常に危険な社会心理的現象だと思う。

民主党、単独過半数の形勢2

2009-08-25 09:41:24 | 時事
●比例区を加えた全体の予想

 前回書いたのは、「週刊文春」の記事による小選挙区の当落予測である。わが国の現在の選挙制度は、小選挙区比例代表並立制である。立候補者は、小選挙区と比例代表の両方に重複立候補をすることができる。
 自民党は、今回の選挙では、小選挙区の立候補者を比例代表候補者名簿の上位にずらっと並べる方針を取った。それゆえ、上記の政治家のほとんどは、小選挙区で敗れても、比例代表で復活する可能性がある。
 比例で同じ順位の候補者のうち、小選挙区での落選者の中から誰を当選とするか決めるには、「惜敗率」という概念を使う。勝った候補者の得票に対し、負けた候補者が何パーセント得票したか、その得票率の高い者から比例での当選とする。どれだけ善戦したかを客観的な数字で表して、順位付けするわけである。
 自民党の有力政治家のうち、古賀誠は小選挙区のみの立候補とした。比例には重複立候補しない。公明党では、北側一雄幹事長が小選挙区単独である。ともに「文春」では「苦戦」と予想されている。小選挙区で敗れたら、それが両氏の結果となる。

 「文春」の予測は、政治広報センター・宮川隆義氏によるものである。記事に掲載された表を政党別に見ると、自民党・民主党の予想議席数は次のようになる。
 自民党は、小選挙区で78。比例区で50。合計は128。ただし、小選挙区は最小37、最大141の幅とされる。比例区は最小50、最大54。それゆえ、合計は最小87、最大195となる。
 一方、民主党、小選挙区で203。比例区で88。合計は291。ただし、小選挙区は最小139、最大243の幅とされる。比例区は最小82、最大88。それゆえ、合計は最小221、最大331となる。
 つまり、この予想では、自民党が大惨敗した場合は、自民が87、民主が331となる。民主の331は、定数の3分の2である320を超える。逆に自民党が劣勢を大きく押し返せば、自民が195、民主が221となる。過半数は241ゆえ、この場合、民主党が取っている社民党・国民新党との連立という方針が過半数確保に有効となる

●8・30衆院選後の日本

 宮川氏は、選挙後の公明党の動きを「不気味」と言い、衆院選後、民主党と公明党が接近する可能性を示唆している。公明党は、以前から都知事選を重視している。創価学会の本部のある東京都の行政に影響力を持つことを、公明党は重要な目標としている。再来年には、都知事選を含む統一地方選挙が行われる。その時に向けて、「民公連立」への動きが出てくる可能性があると宮川氏は見ている。
 もともと公明党は、自民党政権を批判する「中道政党」だった。自・自・公連立で政権に就いてから、自民党との関係を深め、国家権力にあずかってきた。この10年、自民党の延命装置の役割を果たすことで、小党でありながら、国家権力を掌中にしてきた。その公明党が下野した場合、自民党を見限って、与党に擦り寄る可能性があると私も思う。
 元公明党幹部だった矢野絢也氏は「黒い手帖 創価学会『日本占領計画』の全記録」(講談社)にて、公明党が権力に与し、与党であろうとする最大の理由は、池田大作氏の国家喚問を防ぐためであると述べている。氏の個人的なスキャンダルが国会の場で追及されるのを防ぐことは、創価学会の最重要課題だろうから、民主党政権になった場合、公明党は連立政権に参与しようと図るだろう。

 自民党は、長期的に腐敗・堕落を続け、単独では政権を維持できなくなり、公明党と連立を組んだ。この10年の間、自民党は権力維持のために、創価学会と一体化した政党に変質した。私は、今回の衆議院選挙後、自民党は、これまでの公明党との連携をやめ、出直すべきだと思っている。
 自民党は、公明党との連立のもと、小泉―竹中政権が、新自由主義、市場原理主義を導入した。それによって家庭や企業、社会におけるわが国のよき伝統が毀損され、利己主義が蔓延し、格差社会が出現した。また政府が、アメリカの圧力に屈し、郵政民営化を推進して、外資への売国を進めた。国民は、自民党から新自由主義、市場原理主義の勢力を駆逐すべきである。

 私は、伝統尊重的保守を自認している。伝統尊重的とは、わが国の伝統を尊重する立場であり、皇室の崇敬、家族の絆、誇りある歴史観、道徳の涵養、自然との調和等を重要視する立場である。それゆえ民主党に対して、私は、厳しく批判的である。民主党の政治家の多数は、リベラルないし社会民主主義である。社民党・共産党は論外である。私は、自民党の中の経済優先的保守に対しても、批判的である。経済優先的とは、経済的自由主義をよしとし、物質的利益の追求を、わが国の伝統の保持よりも優先する立場である。また自民党には、保守系のリベラルもおり、私は彼らに対しても批判的である。
 伝統尊重的保守の政治家は、民主党、国民新党、無所属にもいる。今回の選挙後、そうした政治家が結集し、新たな勢力を作ることが、望ましいと私は考える。伝統尊重的な保守は、公明党への依存をやめ、自立すべきである。従米媚中の保守・リベラルへの迎合を改め、独立自尊の道を行くべきである。そして、国民の良識に訴え、日本の精神的伝統に基づいた国づくりを目指すべきだと思う。(了)

民主党、単独過半数の形勢1

2009-08-24 13:29:52 | 時事
●「週刊文春」は自民128・民主291

 8月21日付けの読売新聞は、「民主党は小選挙区選、比例選ともに自民党を圧倒しており、単独で過半数を確保し、300議席を超す勢いだ」と報じた。全国の有権者約11万人を対象に世論調査を行い、全国総支局などの取材を加味した予想だという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090821-00000050-yom-pol
 22日付けの毎日新聞は、同社の世論調査により、「民主党は271人を擁立した小選挙区の大半で優位に戦いを進め、比例代表と合わせて320議席を超す勢い」「自民党は小選挙区、比例代表とも振るわず、100議席を割り込む可能性もある」と伝えた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090822-00000002-maip-pol

 私は、8月13日の日記に「週刊現代」の予想を載せた。それは、自民44、民主390という衝撃的なものだった。読売・毎日の予測は、これほど極端なものではないが、全国紙が、ともに民主300超と予想することには、重みがある。

 「週刊文春」は、8月27日号に「『300選挙区』衆院選最終予測」という記事を載せた。自民党128議席、民主党291議席というやはり大差の予測である。週刊誌ゆえ、この予測は、新聞に比べ、数日ないしそれより前の時点のものである。風は「文春」の予測より、読売・毎日の予測の方向に吹いているものと思う。

 さて、「文春」の記事は、全国紙の予測より詳細なので、これはこれで価値がある。記事は、政治広報センター・宮川隆義氏の寄稿である。同誌編集部によるものではない。政治広報センターは、選挙情報の専門会社で、これまでの選挙でかなり近似的な予測を出している。
 今回の記事では、どういう方法、規模で調査をし、どういうデータから結果を予測しているか、具体的に書いていない。「直近のマスコミ世論調査をパラメータ(媒介変数)にした最新の選挙予測結果」と書いているだけである。
 その点、「現代」の記事は、各選挙区100人、全300選挙区で3万人の投票行動を調べたとし、小選挙区ごとに各候補者の得票率を掲載していた。自民44、民主390という数字は、多くの読者にとって想像を絶するものだったろうが、各候補者の得票率をナマの数字で示している。単なる当落の予想ではなく、得票率の違いを数値で展示している。

 「文春」の記事の予測は、自民が128。初めて下野した平成5年衆院選の際の223議席を100議席近く下回る、結党以来の最低記録となる。一方、民主党は、291。衆議院定数は480で過半数が241、絶対安定多数は269だから、それをも超える圧倒的大勝である。読売・毎日の予測のように、選挙日に近づくに従って、民主党が一層多くの議席を獲得していく形勢にあると言えよう。

●小選挙区での候補者別の予測

 次に、「文春」の記事における政治広報センター・宮川隆義氏の小選挙区立候補予定者の当落予測を見てみよう。

 第一に、現職首相の麻生太郎氏。「現代」では民主党の候補者に劣勢とされたが、「文春」では「有力」とされている。「有力」は優勢と、ほぼ同義と理解される。

 第二に、「現代」では、民主党の候補にダブルスコアないしそれ以上の差で惨敗と予想された自民党の有力政治家が多かった。
そのうち、「文春」でも落選確実と予想されるのが、中川昭一元前財務相、武部勤元自民党幹事長、与謝野馨財務相、野田聖子元郵政相、伊吹文明元財務相ら。
 他の「有力」候補に対し「苦戦」とされるのは、森喜朗元首相、町村信孝前官房長官、小池百合子元防衛相、石原伸晃元行革等担当相、古賀誠自民党選対本部長代理、下村博文元副幹事長ら。
 こうした中で、唯一「当選確実」と予測されたのが、細田博之自民党幹事長である。

 第三に、「現代」では民主党の候補にダブルスコアほどではないが、やはり大差で敗北と予想された自民党の有力政治家も多かった。
そのうち「文春」では落選確実と予想されるのが、山崎拓元副総裁。
他の「有力」候補に対し「苦戦」とされるのは、中川秀直元自民党幹事長、谷垣禎一元国交相、塩崎恭久元官房長官ら。
 一方、「当選確実」とされたのは、加藤紘一元幹事長、石破茂農水相、高村正彦元外相ら。また、「有力」とされるのが、鳩山邦夫元法務相、平沢勝栄元政務官ら。

 第四に、「現代」では若手から中堅の議員にも、劣勢とされる議員が多かった。そのうち、「文春」では「苦戦」とされたのが、伊藤信太郎、武藤容治、井上信治、萩生田光一、稲田朋美、高市早苗ら。また、落選確実とされたのが、萩原誠司、大前繁雄らである。
 なお、安倍晋三元首相は「現代」では苦戦とされたが、「文春」では「当選確実」とされている。無所属の平沼赳夫は、「現代」では劣勢とされ、「文春」でも「苦戦」とされている。

 第五に、公明党は、太田昭宏代表が民主党の青木愛との戦いになっている。「文春」の予測では、太田が「有力」、青木が「苦戦」である。北側一雄幹事長は「苦戦」。冬芝鉄三元国交相は、落選確実と予測されている。
 
 次回に続く。

トッドの人口学・国際論6

2009-08-22 08:47:47 | 文明
●移行期の危機に、家族の伝統的価値を再確認

 伝統的社会から近代的社会への移行期の危機には、国内的側面と対外的側面がある。まず国内的側面から見ていこう。
 トッドは、先に書いた家族理論に基づき、近代化の過程で現れた西欧の様々な社会思想には、家族構造に特有な価値観が反映していると指摘する。そして、これらの社会思想は、近代的な社会への移行期のイデオロギーとして表われ、国内に政治的不安定をもたらす。
 移行期の危機への反応について、トッドは、次のように言う。
 「移行期危機は初期段階では人類学的価値をヒステリー化する。近代性の伝統離脱は、家族の伝統的価値をイデオロギー的形態で再確認するという反応を引き起こす。移行期イデオロギーがある意味ではいずれも原理主義的であるのはそのためである。どれもが自覚的もしくは無自覚的に、過去への執着を再確認する」
 伝統的価値をイデオロギー的形態で再確認するという反応は、近代化の発祥の地・イギリスに始まった。私見によると、イギリスでは、伝統的共同体が解体し、市民社会が形成される過程で、家族の伝統的価値が再確認された。イングランドでは、近代化する以前から核家族が家族型だった。核家族の中でも、絶対核家族と呼ばれる型である。
 絶対核家族では、親子は自立的であり、子供は成人すると親から独立する。遺産は、親の遺言に従って分配され、兄弟の平等には無関心である。社会における基本的価値は、自由である。平等には重きを置かない。その価値観をもとに、イギリスでは、自由主義や個人主義が発達したと説明される。

 私は、トッドの理論は、どうしてイギリスの自由主義が個人を尊重しながら身分制を否定せず、格差を固定したか。どうして先進国イギリスの自由主義がフランスに入ると、自由と平等をともに求める思想に急進化したのか。どうして後進国ドイツでは、英仏流の価値観に対抗する思想が発達したのか等の問いの解明に、有効なものと思っている。
 トッドは、家族の伝統的価値の再確認という反応は、共産主義においても同様だと言う。
 「たとえば共産主義のように激烈に近代的であると自称している場合も、それは変わらない。ロシアにおいては単一政党、中央集権化された経済、さらにはKGB(国家保安委員会)が、伝統的農民家族が果たしてきた全体主義的な役割を引き継いだのである」と。
 この点でもトッドの見方は、どうしてロシアで西欧的共産主義が一党独裁的・個人崇拝的な思想に変質したのかという問いの解明に有効だと私は思う。

●危機は一時的、その後、リベラル・デモクラシーが普及

 移行期の危機は、国内的側面とともに、対外的側面もある。トッドは、対外的側面について、次のように言う。
 「伝統的社会はいずれも、識字化という同一の歴史の動きに引きずられていく。しかし移行期は諸民族・諸国民間の対立を劇的に強調する。そこでフランス人とドイツ人、アングロ・サクソンとロシア人の間の敵対関係は最大限に達する。それぞれがイデオロギー的形式の下に、己の本来の人類学的特殊性を、こういって良ければ、がなり立てるからである」
 フランス人とドイツ人、アングロ・サクソン人とロシア人の間には、家族型や基本的価値観の違いがある。移行期の危機にある社会は、それぞれ自己の伝統に基づく価値観を強調し、他者の価値観を排斥する。普遍的人権思想とナチズム、自由主義と共産主義の対立は、移行期の危機における対外的反応の相互作用と考えられる。
 こうした対立が強く現れた場合は、戦争となる。ヨーロッパにおいては、ヨーロッパ全体が近代化される過程で、何度も戦争が繰り返された。戦争は拡大し、第1次世界大戦、次いで第2次世界大戦へと大規模化した。自由主義、社会主義、共産主義、ファシズム、ナチズム等が激しくぶつかり合った。それを経て初めてヨーロッパは、協調と統合への道に進んだ。

 トッドは、伝統的社会から近代的社会への移行期は、一時的な局面であり、移行期における社会現象は、「この局面が終わると、危機は鎮静化する」と説く。そして、移行期のイデオロギーが後退した後に普及するのは、デモクラシーだとする。
 トッドは言う。「どの人類学的システムも、時間的なずれはあっても並行的に、識字化に由来する個人主義の伸長という同じ動きによって手を加えられる、ということが徐々に分かって来ている。デモクラシーへの収斂の要素がついに出現するのである」と。
 トッドの言う「デモクラシー」とは、個人の意識が発達することによる自由主義的な民主主義、リベラル・デモクラシーのことである。社会主義、共産主義、ファシズム、ナチズム等の移行期イデオロギーは、やがて後退し、自由主義的民主主義が普及するというのが、トッドの主張である。

 次回に続く。


必見! 「英霊来世8.30」

2009-08-21 18:10:57 | 時事
 「英霊来世」というバンドがある。エーレイライズと読む。
 日本人の魂を歌うバンドだ。
 ファースト・アルバムの「矜持」は、マスメディアで取り上げられ、靖国神社でも販売された。

 来る8月30日衆議院選挙。民主党に政権が交代したら、日本に何が起こるのか。

 日本人に迫る危険をラップに込めた「英霊来世8.30」。若者の魂のメッセージがYoutubeに載せられている。多くの人にお勧めする。
http://www.youtube.com/watch?v=-77kO26eQGE


●追記~「英霊来世8.30」のメッセージ

【五穀豊穣】
「政権交代してみたらどうだい?」マスコミ煽る世論 飛ぶ号外
バカでも分かるキャッチフレーズ撒いた 民衆は傍観のはずがいつの間にか
「生活が第一」徐々に効果 自民下ろして上げる小沢
友愛の名の下に集う彼ら 欲しいのは国か力か金か?
自民の政策 良いか悪いか その前にお前らこの国のリーダー
持ち上げて責任取る気無いのか? 尻尾切りばっかり「踏襲」してんな
外交とは、基本「Fight!!!」武器チラつかせ挑む武道会よ
それ知らんとしか思えんハトの党 もし知ってたら完全な売国奴
一国二制度 外国人参政権を…何だと?
俺でも分かる危険な発想 宇宙人が平気なツラで吐く憎悪
さりげなく背後に日教組 日の丸・君が世燃やし埋葬
ジェンダーフリー自衛隊縮小 地方分権、学校、終わりそう
親中親韓さらにFTA 自分らだけ得する甘い関係
誘う平和な民の判定 言葉の裏、見え隠れ赤いピアノ線
靖国参拝イタシマセン 閣僚も自粛しろイカセマセン
「だってA級がいるんだもん」彼に歴史を教えてよドラえもん
どれが最良?これが最期?選ぶ国民気付かぬガイド 
内モンゴル、チワン、チベット、新疆ウイグル、寧夏、そして日本
悠久の歴史日本国 平成で分断 今じゃ簡単
「中華人民共和国日本自治区」誕生へのカウントダウン

【七生報国】
知ってるかヤツラの沖縄ビジョン 国を何元で売る気だ?マジ異常
悠久の歴史 奇跡の島 沖縄を一気に中国化
一国二制度 地域通貨 自衛隊解体 軍備縮小だ
米軍も追い出し経済特区 基地無しでやってく民主マジック
シナ様の目の上のタンコブ除去 同胞増やせるし一石二鳥
ビザ無し受け入れ三国人 犯罪は増加しより残酷に
国籍法変えて増える「自称日本人」たちが選ぶ
史上初のシナ人首長誕生 同胞の粗相は大目に見よう
外人無税 日本人増税 君が代なんて歌わせませんぜ
学校じゃシナ語が必須科目 島の安全はシナが守る
住み難くなったウチナンチューが本土移住すればもう手中
やりたい放題だすべてシナモード 沖縄の次はモチロン本土
先人が流した血、涙にまた背を向けるのか俺たちは
繰り返す何度目かの敗戦 一度取られたらもう取り返せん
報道されない裏マニフェスト もう時間無ぇぞ 本当に来るぞ
全て踏まえての賛成反対 意思を示せ 8.30


靖国神社での中央国民集会4

2009-08-21 09:28:02 | 靖国問題
●司会者よりの報告、黙祷

 集会に参加している国会議員・地方議員を紹介。国会議員で本人が来ていたのは、衆議院議員は松原仁、西村眞悟、参議院議員は衛藤晟一、有村治子、秋元司の5人。代理を含めても9人だったようだ。

 しばし休憩。

 正午の時報に合わせて、戦没者に黙祷を捧げる。
 日本武道館での政府主催式典の実況放送にて、今上陛下のお言葉を拝聴。深い、深い思いのこもったまことの言葉である。

●声明の採択
 
 続いて声明文朗読。学生による力強い朗読がされた。賛同の拍手をもって声明が採択された。次にその全文を掲載する。

―――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
声明

 日本国の首相が八月十五日という意義深い日に、国民を代表して靖国神社に参拝し、英霊に対して深甚なる追悼と感謝の意を表すのは、諸外国の例を見るまでもなく、至極当然のことである。
 にもかかわらず、わが国においては、首相の靖国神社参拝は久しく見送られてきた。小泉純一郎首相が十六年ぶりに参拝を復活したものの、以後参拝を行なっていない。
 それは中国から、いわゆる「A級戦犯」合祀を理由として、靖国神社参拝の中止を要求する執拗な圧力がかけられ、一方、国内でも、先の大戦を戦勝国の立場から一方的に裁いた東京裁判の後遺症による、戦前の歴史の一切を否定する風潮が根強く存するからである。
 しかも、八月三十日に予定されている衆議院議員総選挙では、民主党が優勢であると予測されている。同党は、公然と「A級戦犯」合祀を理由として首相の靖国神社参拝を拒否し、さらには靖国神社に代わる新たな国立追悼施設をも建設するように窺われる。誠に由々しい事態と言わねばならない。
 申すまでもなく、我々が享受している平和と繁栄は、明治維新以来の幾多の祖国存亡の危機に際会して、尊い一命を捧げられた英霊の尊い犠牲によって築かれたものである。靖国神社は、戦没者追悼の中心施設であり、首相参拝の否定は戦没者の思いを踏みにじることになることは明々白々である。
 麻生太郎首相は、本年一月の施政方針演説において、「真の保守政権を目指す」と明言した。「真の保守」であるならば、いかなる圧力が加えられようとも、毅然として靖國神社に参拝することによって、その真価を明らかにしなければならない。そのことによって首相の靖国神社参拝を定着させ、さらにはできるだけ近い将来の天皇陛下の靖國神社御親拝への道を開かねばならない。
 我々は、今後の政局がいかなる事態に立ち至ろうとも、首相の靖国神社参拝を強く要望するとともに、憲法改正の実現という戦後体制の根本課題の解決のための国民運動を力強く展開することをここにあらためて誓う。
 右、声明する。

 平成二十一年八月十五日

   第二十三回戦没者追悼中央国民集会
    英霊にこたえる会
    日本会議
―――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 恒例の全国縦断キャラバン隊によるアピールに続き、参集者全員で「海ゆかば」を斉唱し、戦没者追悼中央国民集会は納められた。
 参加者は、主催者より、2000人と発表された。参道中央の特設テントを囲んで、多数の人々がつめかけていた。

 今年も境内では若い人や子供づれの家族、外国人の姿を多く見かけた。8月15日に限らない。靖国神社に参拝したことのない人は、一度足を運んでみてほしい。そこには、日本人を結ぶ絆がある。その絆に触れた時に、自分の日本人としての自覚が高まるだろう。(了)

・関連掲示
拙稿「慰霊と靖国~日本人を結ぶ絆」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08f.htm

靖国神社での中央国民集会3

2009-08-20 08:49:56 | 靖国問題
 各界代表による提言の続き。

●山本卓眞氏(偕行社会長)
 「天皇・皇后両陛下がカナダからお帰りの途中、ハワイに立ち寄られ、パンチボウル(国立太平洋記念墓地)で献花をされた。安倍元首相は、訪米の際、アーリントン墓地で献花をされた。このように国の代表者が国立墓地に表敬されるのは、国際的な常識である。にほんはどうか。各地の軍人墓地の管理はばらばらで、年1回県知事が参列して墓参をしているところもあるが、民間が管理し荒れ果てたところが多い。
 福岡県西北沖地震の際、軍人墓地の石碑が壊れたが、県も市も対応しなかった。日本会議・福岡の人たちが動いたことで修復された。自民党の衛藤晟一参議院議員が、国会の決算委員会で舛添 要一厚生労働大臣に軍人墓地の管理はどうすべきか質問をした。大臣は、『大きな意味で戦後処理の一環であり、国の責任としてきちんと管理していきたい』と答弁した。
 GHQは、旧陸海軍を解体した際、軍人墓地の管理を軍から大蔵省に移した。自国の軍人墓地は大切にしていながら、日本に対してはこのようにしたのは、GHQの汚点である。
 日本は昭和27年以後、57年間何をしてきたのか。海外には、59万柱の遺骨が収集されないままになっている。それをどう進めるか。朽ち果てた海外の慰霊碑をどうするか。遺骨収集、軍人墓地、慰霊碑の管理は、普通の国では軍隊が行なっている。しかし、何と言っても、戦後処理の最大の課題は、首相の靖国神社参拝の定着である。
 電通総研のリサーチによると、戦争になった時、国を守るために戦うと答えた人は、15%だった。各国中、日本は最低だった。1991年の別の調査では、それがわずか10%になり、5ポイント減った。戦わないで逃げると答えた人は、18年前の40%から46.7%に増えた。6.7ポイント増えた。いざという時には国を守るという精神が、日本は世界最低である。戦後レジュームから脱却を急ぐべきである。
 自虐史観をマスコミが日々、人々に吹き込んでいる。マスコミとの内なる思想戦、情報戦が、日本の明日を決する。インターネットは、情報戦における新兵器である。インターネットを活用して、マスコミと戦おう。皆さんに渾身の力を振るって戦っていただきたい」

 山本卓眞氏は、富士通の社長・会長・名誉会長を歴任した。偕行社は旧陸軍将校及び陸上自衛隊・航空自衛隊幹部自衛官OBの親睦組織。山本氏のインターネットを活用して、マスコミと戦おうという呼びかけに、私も応えたい。

●金美齢氏(評論家)
 「私は、この日、この場でお話しするのは、3回目。外国人では一番多い。大変光栄に思っている。前回は、戦後60年の年だった。その時の私の話が今もYoutubeに掲載されている。私の言いたいことは、そこに言い尽くされている。まずその時に話したことを簡単に伝えたい。
 靖国神社に参拝する人も、参拝しない人も、百の理屈を述べている。どちらも、おかしい。靖国神社に参拝するのは、お国のために命を捧げた人に詣でるという、それだけのこと。靖国をどうこう言う人は、忘恩の徒である。今の日本の繁栄を享受する資格がない。靖国をとやかく言う外国人には、はっきり言ってやるべき。
 私が前回話をしていたときに、おそらくアメリカ人らしき外国人が、私の後ろでとやかく言った。私は、『Not your business!』『あなたの知ったことじゃない』と言った。すると、もう一人の外国人が寄ってきて、『これはworld business』だと大きな声で言った。私は振り返って、『世界平和のことならそうだが、靖国は日本のbusinessだ。Get out of Yasukuni! Get out of Japan!』と英語で言った。靖国は聖域である。土足で入って踏みにじってはいけない場所である。
 日本人は誰も反論しなかった。終わったあと、若い人がたくさん寄ってきて、『かっこいい』と言ってくれた。だから、その時の映像が、今もYoutubeに残っている。
 台湾人で、靖国に反対する高金素梅という立法委員がいる。毎年、パフォーマンスのためにやっている。一緒に連れてくるのは、台湾人ではない。中国人である。この聖域にこういう人を入れてはならない。私が日本の政治家、日本の政府なら、こういう狼藉を働く外国人は即刻、国外退去を命じる。自分の国と主権は、国民一人一人が守らねばならない。しかし、この体たらくを見ると、日本はますます衰退の一途をたどると言わざるを得ない。
 日本人は、マスコミの横暴を許している。『ジャパン・レヴュー』の番組についても一部の人は反論しているが、多くの人は反論しないか無視している。自虐史観が刷り込まれている。あの番組は、日本は加害者で悪いことばかりやっている国だという姿勢で作っている。日本が悪いことばかりやっていると刷り込まれれば、国に誇りが持てなくなる。あれを見逃している日本人は、全員責任がある。
 あの番組を作った人は、司馬遼太郎の『街道を行く』の台湾の部分を読んでいないのか。ずっと政治的な発言をしなかった司馬さんが、初めてはっきり書いたもの。それを読んでいないのか。それとも読んでいて無視しているのか。台湾と言えば、李登輝である。その李登輝の言葉をひと言藻入れずに番組を作っている。無知なのか、日本が嫌いなのか、私は悲しく思っている。
 都議選の結果には、涙が出た。民主党ならいい、若ければいい、女性ならいい、自転車に乗っていればいいのか。細田自民党幹事長は、『それが国民のレベル』と言った。そういうことは、政治家ではなく、国民が言わねばならない。
 戦後60年の時に私が言ったことが、Youtubeに載り、大勢の若者が感動したと言う。ネットで我々のメッセージを届けよう。
 台湾はいま中国のブラック・ホールに飲み込まれようとしている。一昨年の立法院選挙、続く総統選挙で、国民党が政権に戻った。国民党は中国国民党である。馬英九は『国民生活が第一』と言った。それに簡単に騙された。私は馬英九が総統になれば中国に飲み込まれると予言したが、こんなに早くそうなるとは思わなかった。
 いま日本で同じようなことが起ころうとしている。『生活第一』というのがそれだ。生活は大事だ。しかし、国の安全なくして、国の豊かさなくして、生活はなりたたない。台湾では多くの人が馬英九に入れたことを悔やんでいる。台湾はもう遅すぎる。もう台湾は救われない。いま最前線は日本になっている。日本を守ることが日本人の責任だ。それが英霊にこたえることになる」

 金美齢氏は、台湾人。11歳までは日本国民だった。日本に留学に来て、日本人が誰も日本精神を言わないので、日本精神を言うようになったという。私は、日本精神の講演会で、金氏と教育を語り合ったことがある。金氏が触れているYoutubeの映像は、必見の価値あり。
http://www.youtube.com/watch?v=ALfu0RWGG84

・追記
 本年の提言もYoutubeにアップされている。
http://www.youtube.com/watch?v=Hhns-Hve5Yg

 次回に続く。