ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国で反日デモが拡大、政府批判も

2010-10-25 11:08:11 | 時事
 私は昨日、一昨日と東京赤坂でセミナーを行った。日韓併合百年の菅首相談話、ロシアの対日戦勝記念日、尖閣沖中国漁船衝突事件を通じて、わが国の外交の根本的な問題点を述べ、憲法の改正と国防の整備の必要性を説くという内容である。参加者は老若男女さまざまだが、皆さん関心が高かった。

 わが国の政府の対応で、尖閣沖中国漁船衝突事件は収束しない。中国では反日デモが各地に広がりを見せている。従来、中国における反日デモは、共産党政府が指導する官製デモという性格が強かった。しかし、今回のデモは、政府の管理の枠を越えて拡大しているようである。
 陝西省宝鶏市のデモでは、参加者が反日スローガンを叫ぶ一方で、「官僚腐敗に反対」「住宅価格高騰を抑制しろ」などと政府批判の横断幕も掲げた。また、チベット族が中国語による授業を義務づける教育改革に対して反発し、青海省チベット族居住区で抗議行動が起こり、北京でも学生による抗議行動が行われた。
 民衆の政府への不満や少数民族の抗議が、一部とはいえ行動に現れてきたことは、重要な兆しだろう。これがただちに民主化に発展するとは思えない。逆に、民衆の不満を吸収したファッショ化が進むおそれがある。

 私は、約1年ほど前、拙稿「中国の『大逆流』と民主化のゆくえ」を書いた。シナ系日本人の評論家・石平氏の著書『中国大逆流』及び氏の講演をもとに、中国の現状と将来予想を書いたものである。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12h.htm
 そこに書いた石平氏の見解は、尖閣沖事件と中国反日デモという今日の状況で、いっそう重みを感じるものである。要点を以下に記し、参考に供したい。
 石氏は『中国大逆流』で、中国で「『毛沢東への先祖返り』としての『革命』」が起こる可能性に触れている。これは、社会主義の第二革命に相当する。しかし、石氏は、別の方向に進む可能性がもっと高いと見る。それは、中国共産党のファッショ化の可能性である。
 石氏は、中国共産党が国民に「ナショナリズム的情念」を煽り立て、「愛国主義の旗印」を掲げれば、その下に国民の大半は熱狂的に集結する。中国共産党はそれを操る「術と力」を持っている、と言う。今後、中国経済が崩壊して社会不安が高まり、未曾有の危機に突入したとき、共産党政権は「起死回生の賭け」に打って出る可能性があると石氏は予想する。
 すなわち、対外的な「戦時体制」を作り出す。その中で、経済に対する統制を強化する。「挙国一致団結して民族の敵に立ち向かう」という大義名分の下で、共産党政権の存在意義とその正当性を強く主張する。それによって、党の政権基盤を再び磐石なものとしようと図る。このような「乾坤一擲の賭け」に打って出ることによって、「『経済の成長と繁栄』の上に政権の基盤を置くという小平路線の破綻を補って、中国共産党はまったく別の政権維持戦略への転換を実現できるのである」と石氏は述べている。
 
 中国が、来るべき内部の危機を乗り越えていくために、「対外冒険的な軍国化」の道を歩むとすれば、「日本にとって安全保障上の大問題」である石氏は警告する。軍国主義化した中国の共産党政権が対外的な暴走を始めた場合、矛先は台湾海峡か東シナ海がターゲットになる。経済の崩壊、暴動の激発で、中国国内が収拾のつかない大混乱に陥ってしまった場合、「共産党政権は巨大な軍事力をバックにして一気に台湾併合に動き出す可能性が十分あるし、台湾併合の前哨戦として、尖閣諸島進攻を断行するかもしれない」と石氏は予想する。「国内がどれほどの危機的な状況に陥ったとしても、尖閣諸島か台湾を奪うことさえ出来れば、共産党政権は国民からの熱狂的な支持を受け、一気に局面を打開して危機を乗り越えられる」というのが、その理由である。
 今日、中国では反日デモが各地に拡大を見せているが、これが本格的に拡大し、国内の治安が困難な状況になれば、中国人民解放軍による尖閣侵攻は起こり得る。

 迫り来る危機に対し、日本はどう対応すべきか。石平氏は、次のように述べる。
 「今の日本は、中国国内の動向を左右できるほどの力を持たないから、できることはただ一つ、自らの守りを固めていざという時の『危機』に備えていくことではなかろうか」と石氏は言う。「そのためには、アメリカによって押し付けられた『平和憲法』なるものを一日も早く改正して、自衛隊に国防軍としての名誉と法的地位を与えて国防を強化させ、国家体制を固めておかなければならない。そして、国家と民族の存続を断固として守る意思を示した上で、中国共産党政権に対しては、台湾や尖閣諸島、および東シナ海にたいするいかなる侵略的冒険も、日本国としてけっして許さないという強くメッセージを送り続けるべきであろう」と。

 石氏は、「このような抑制力が十分働くことによって、わが国日本は来るべき中国の内乱や革命に巻き込まれずに済むわけであるが、場合によってはそれが、中国国内の変化によい影響を与える要素となるかもしれない。つまり、日本の抑制力に阻まれて対外的冒険の道を断念した場合、中国共産党政権は今度は、政治改革を含めた国内改革に政権維持の活路を求めるかもしれない。これによって中国の民主化につながる最後の可能性が開かれるのであろう」と。
 石氏は、日本の軍事的抑止力が中国の対外侵攻を阻止しえた場合、それが中国共産党を国内改革に向わせる可能性があることを指摘する。それを共産党による民主化とは言っていない。共産党の国内改革が、人民による民主化につながっていく希望を述べるものだろう。しかし、石氏はこの方向が「中国の正しい方向であり、中国の13億の民にとっての唯一の幸福の道であり、そして隣国日本にとっての最善の結果でもある」と言う。そして「わが国日本がより強くなること、きちんとした国家体制と断固とした国家意思を持つようになること。実はそれこそが何より肝要なのである」と著書『中国大逆流』の結論を述べている。
 上記を読んで関心のある方は、拙稿の全文を閲読願いたい。

 以下は報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年10月18日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101017/chn1010172247013-n1.htm
四川省のデモは社会不満がエスカレートか 政府、制止できず衝撃
2010.10.17 22:41

 中国四川省綿陽市で17日に起きた反日デモが暴徒化し、参加者が商店や車両を襲ったのは、日ごろからうっせきした社会不満が一気に爆発し、破壊行為にエスカレートしたためとみられる。中国政府は外務省の報道局長談話でデモ参加者に自制を呼び掛けて警備も強化したが、暴徒化を制止できず、不満の大きさに衝撃を受けているもようだ。
 綿陽のデモはインターネット上で「中継」されており、中には「学生はまだいいが、一般人が紛れ込んで不満の憂さ晴らしをしている」と警官が語った、との書き込みもある。
 中国で貧富の格差や就職難、官僚の汚職などが大きな社会問題となっており、デモや抗議行動にまざったやじ馬らが憂さ晴らしのため投石などの破壊行為に走り、当局も制止できなくなるのは北京や上海で2005年に起きた反日デモでも共通していた。(共同)

●産経新聞 平成22年10月25日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101024/chn1010241943011-n1.htm
「腐敗反対」「住宅高騰抑制しろ」中国反日デモに政府批判も
2010.10.24 19:39

中国の甘粛省蘭州市と陝西省宝鶏市で24日、それぞれ数百~1000人規模の反日デモがあり、若者らが「釣魚島(尖閣諸島)を守れ」「日本製品ボイコット」などと叫んで市内を行進した。両市ともインターネットで事前にデモが呼び掛けられていた。
 宝鶏のデモでは参加者が反日スローガンを叫ぶ一方で「官僚腐敗に反対」「住宅価格高騰を抑制しろ」などと政府批判の横断幕も掲げており、中国で深刻化している収入格差の拡大や汚職への不満が強いことをあらためて裏付けた。
 ネットで24日の反日デモが呼び掛けられていたのは蘭州、宝鶏のほか江蘇省南京市、湖南省長沙市、湖北省武漢市など。中国当局は反日デモが拡大すれば政府批判や社会不安が広がるのは必至とみて、呼び掛けがあった都市や北京の日本大使館、各地の日本総領事館周辺で引き続き警備を強化していた。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101024/chn1010242042014-n1.htm
中国でチベット族のデモも拡大 中国語教育の強制に反発
2010.10.24 20:40

 【北京=川越一】反日デモが続く中国で、少数民族による政府への抗議デモも広がりをみせている。中国語による授業を義務づける教育改革に対しチベット族が反発し、青海省チベット族居住区で火がついた学生による抗議行動が首都北京にも飛び火した。民族同化をもくろむ当局のいき過ぎた教育改革が、漢族への不信感を増幅させている。
 チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部・ロンドン)によると、青海省黄南チベット族自治州同仁県で19日、民族学校の高校生ら5000人以上がデモ行進し、「民族、言語の平等」を訴えた。20日には同省海南チベット族自治州共和県で学生が街頭に繰り出し、「チベット語を使う自由」を要求。22日には、北京の中央民族大学でも学生がデモを敢行した。
 英BBCによると、24日には黄南チベット族自治州尖扎県で民族学校の生徒に教師も加勢し、総勢1000人以上が教育改革の撤回を求めてデモを強行、治安部隊が出動する事態に発展した。
 発端は9月下旬、青海省が省内の民族学校に、チベット語と英語以外の全教科で中国語(標準語)による授業を行うよう通達したことだった。教科書も中国語で表記する徹底ぶりで、小学校も対象という。
 当局の中国語教育の強化の背景には、中国語が話せないため職に就けないチベット族が少なくないという現状がある。就職難はチベット族と漢族の格差をさらに広げ、それがチベット族の当局に対する不満につながっているのも事実だ。
 しかし、2008年3月、チベット自治区ラサで発生したチベット仏教の僧侶らによる大規模騒乱が示すように、中央政府のチベット政策に対するチベット族の不満、漢族に向けられる嫌悪感は根強い。
 今回の教育改革も、チベット族学生の目には「漢族文化の押しつけ」「民族同化の強要」と映っているようだ。「自由チベット」は中国当局がチベット語の“抹殺”を図っていると主張している。
 同省共産党委員会の強衛書記は21日、黄南チベット族自治州で学生代表と座談会を開き、「学生たちの願いは十分尊重する」と約束した。中国当局が反日デモ同様、教育改革に対するチベット族の抗議デモが、体制批判に転じることについて懸念している状況をうかがわせる。
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■追記

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●産経新聞 平成22年10月27日

http://sankei.jp.msn.com/world/china/101026/chn1010261950008-n1.htm
反日デモの本質は「反体制」 当局は危機感あらわ 重慶デモ抑止できず
2010.10.26 19:49

 (略)24日に陝西省宝鶏市で起きたデモでは、「貧富の格差を縮めよ」「報道の自由を実行せよ」といった政府批判を掲げた横断幕が登場した。さらに、同市では「(台湾総統の)馬英九兄さんを大陸は歓迎する」「多くの党との合作(協力関係)を進めよ」との横断幕も確認された。これは、中台関係改善が進む中で中国の学生が、台湾が戦後歩んだ民主化プロセスに関心をもち、馬政権を支える台湾の中国国民党などと協力し、共産党一党支配に終止符を打つ道に望みを託そうと訴えたものだといえる。(略)
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