【本の紹介】
●ユダとは誰か/荒井献/講談社学術文庫/2015年11月10日発行/\960
聖書に登場するイスカリオテのユダである。イエスの十二弟子の一人であり、イエスを「裏切った」ユダについて書かれている。
新約聖書のマルコ、マタイ、ルカ、ヨハネの四福音書、それに使徒行伝も含め、それぞれの作者が、ユダをどうとらえていたか、その表現から比較される。また、作られた年代が新しくなるほど、ユダが悪く表現される傾向も示されている。ユダの死因についても、同じ新約聖書といっても、首吊り自殺、転落死とされて、見なし方が異なる。改めて、聖書との対し方を考えさせられる。
いずれにしろ、「神の霊感によりて成り、キリストを証し、福音の真理を示し、教会の拠るべき唯一の正典なり」(日本基督教団)とされる聖書のことで、なんとも興味深い。
さらに、正典からはずされている「ユダの福音書」も取り上げられて、ユダ像が追いもとめられる。
ユダの所業は、神の意のうちにあったのか、悪魔に入り込まれてのものであったのか。神学的知識に乏しい私には、断定的なことは言えない、言って、識者から不審視されるのも不本意である。
ただ、神を全能とすれば、ユダの「裏切り」も、神の御業のうちととるのが、自然のように思う。また、人間ユダは、他の弟子に較べ、より思惟深く、知的で、誇り高かったのではとの印象を強くした。
【本の紹介ついでに】
ここのところ読書量が減っている。
読書後に本の内容をコンパクトにまとめておくこともやっていない。
なんだか、目先のことに追われすぎているようだ。
それでも、本を手に取らないわけではない。
●イタリア「色悪党」列伝/ファブリツィオ・グラッセッリ著/文春新書/2015年7月20日発行/\780
●2045年問題/松田卓也著/廣済堂新書/2013年1月1日発行/\800
●さらば、資本主義/佐伯啓思著/新潮新書/2015年10月20日発行/\740
以上は、それなりに読んだもの。その他、友人の本も読んだ。本棚を点検、手に取っただけのものは、まだまだあった。