
3/12日曜日に久し振りの新作西部劇ということで見に行った「ジャンゴ(繋がれざる者)」でした。
なんともおぞましい映画だった。 ”おぞましい ” と表現したのは暴力、残酷がいっぱいで 映画全体にドロドロした危険性みたいな雰囲気があるのです。 正直言って西部劇ではない-と感じました、強いて言うならマカロニ ウェスタン的要素が濃厚な劇画調映画とでも言った方がよさそう。やたらと人が撃たれて死ぬし、登場人物もほとんどが普通の人という感じがない者たちばかりで、見た後の爽快感とか情緒が全く残らない残酷趣味の”西部劇もどき”で、昔のジョン・フォード監督やジョン・ウェインが見たらさぞ憤慨して嘆くだろうな-というのが私の感想です。

南北戦争の2年前・・・・という時代設定。 主人公のジャンゴは鎖に繋がれた奴隷でしたが、ある時ドイツ人の歯医者あがりの賞金稼ぎキング・シュルツにお尋ね者の兄弟を知らないかとたずねられ、知っていると答えて解放されます。キングの助手として同行するようになり銃の手ほどきを受けて自らも賞金稼ぎになっていきます。ジャンゴには奴隷として別な場所に売り払われた妻がいてどうしても探し出したい-という望みがあったのでした。前半はキングと2人で賞金稼ぎで生きるテキサス州が舞台、後半は妻が捕らわれているというミシシッピ州の農園が舞台。大農園の主人ムッシュ・キャンデイは何とも偏屈なおぞましい人物でレオナルド・デカプリオが演じている。
ミシシッピ州というのは西部劇の舞台には似つかわしくないところで昔の西部劇にまず出てくることはないのですが、今回の映画では奴隷州としての舞台設定が必要だったのでしょう。キングとジャンゴには紆余曲折あってムッシュ・キャンディ一味に殺されかかったりするのですが(結局キングは撃たれて亡くなります)最後にはジャンゴは妻を取り返すことができて農園主の御殿を焼き払い2人して去っていきます
でも時代状況からすると黒人である2人にはこの先 どこにも安住の地はなくて、きっとまともには生きていけないのだろうな-という感覚が残ります。ハッピーエンドの感覚が残らないのは悲しいものです
<ちょっと気付いたこと>
・南北戦争の2年前というのにジャンゴは黒いサングラスをかけたりしている??・・・・・その当時にこんなものあったのかなあ
・主人公のジャンゴという名前だけでもマカロニウェスタン的です、昔の正統派アメリカ製西部劇にはない名前でしょう
・酒場のシーンでジャンゴの隣に居合わせた客と話すシーンがありますが、それが往年のマカロニ ウェスタンスター フランコ・ネロ(特別出演)だそうです
・ドイツ出身の元歯医者で賞金稼ぎのキング・シュルツはアメリカ西部で有名だった実在の gun man ドク・ホリデー(彼も歯医者だった)を意識しての役??
・映画ではずいぶんと汚い英語が使われているようで 、ニガー(黒人の蔑称)という語が当たり前のように出てきます。当時の黒人奴隷は虐げられているはずで ジャンゴにはもっとオドオドした感じがありそうなもので初めから堂々とした態度の黒人はいなかったと思われますが・・・・・・そこら辺は映画なんでしょう。 なんだか寝た子を起こすようでアメリカの恥部をさらけ出すような作りで 見る人によってはイヤな感覚になるでしょうね
・馬に乗ったジャンゴをみた街の人が ”黒人が馬に乗っているぞ!” と叫ぶ場面など見ると私達は初めて黒人が馬に乗ることは禁止されていたんだ-と気付きます
奴隷時代のアメリカ黒人の悲惨さなどは映画ではtaboo(触れてはいけないこと)だったでしょうからびっくりで、ちょっと危険性も感じます。
写真は本屋さんに置いてあったパンフレットからのもの
もう情緒豊かなアメリカ西部劇は期待する方が無理なんでしょう・・・・・・・ああ、昔のまともな西部劇が見たくなったなあ
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