”アメリカは歌う ” 歌に秘められたアメリカの謎 著者:東 理夫 2010(平成22)年 作品社 発刊
今回の入院中に読んだ本のひとつ。例によって発売になった時に買ってはいたものの積読(つんどく)状態になっていた・・・・・でも今回読んでよかった。まったく素晴らしい本で、これまで聴いてきたアメリカ民謡、ヒルビリー、カントリー&ウェスタンの曲が歌詞まで添えられて丁寧に考察されており、こうした解説を読むとその歌の背景や歴史がわかって改めてその曲を聴いてみたいと思わせる内容になっているんですね。恐らくこの方面の曲に興味を持っている人達には合っていると思うし、ブルーグラス音楽を演っている人達も読んでみた方がためになると思います(歌内容の背景がわかるという点で)。 これまでのカントリー関係の本の中でも歌詞の内容に踏み込んだものというのはほとんどなかったように思います、”こういうCDが出ている、バンジョーは誰れそれが弾いていてフィドルは00が弾いているので悪かろうはずがない ”・・・・・といったような解説にはもうあきあきしてしまっている人たちも多いのではないでしょうか・・・・・・この本は全く視点が違います、読むのにやや根気がいるけれど本格的。
私自身は最後の第4章「ドアマットからの脱出(カントリーの中の女性たち)」を読んでは ”なるほどなあ ”・・・という感想が多かったです。因みに、ドアマットというのはドアの外に敷かれる脚拭きマットのことで、”男のいいようになる ” という意味なんだそうです。 現代女性カントリー歌手達が歌う唄の内容がけっこうその時代を共有して生きるアメリカ女性たちの共感を呼ぶ内容であることに気付かされます。
私達日本人は歌を聴いてすぐには歌の内容が解からないので メロディだったり演奏スタイルであったりで評価するきらいがあると思うんですが、やはり本場アメリカでは歌の内容で勝負する・・・・・というのが本筋のようです。 実生活に即したようなことを歌にして共感を得られるというのは解かるような気もします(日本の歌にもそんなのがありますから)。 K.T.オズリンという歌手が1987(昭和62)年に ”80’s Ladies ” を歌ってグラミー賞の最優秀女性カントリー歌手賞をとったが、その曲がその後の女性歌手への計り知れないほどの影響を与えた・・・・・・と書いてありました。 私自身はその歌手とその曲のことを知らないのです、そんなに書かれると聴いてみたいと思いますね。 そんなこんなで食わず嫌いの現代女性カントリー歌手への認識を改めないといけないのかな-と考えさせられた次第です
第1章ジョン・ヘンリーと悲しみのナンバー・ナイン・・・・・”John Henry”を歌った歌手などがたくさん出てきます
1.伝説的なヒーロー、ジョン・ヘンリー
2.ジョン・ヘンリーのハンマーはなぜ9ポンドなのか?・・・”9 Pound Hammer ” とか”16 トン ”とかいった歌も出てきます
3.「9」という数字に秘められた謎
4.ジョン・ヘンリーとは何者か?
5.ジョン・ヘンリーと蒸気ドリルとの戦い
6.悲しみのナンバー・ナイン
第2章アパラチア生まれのマーダー・バラッド・・・・”オハイオ川の岸辺で”、”Omie Wise”、”Poor Ellen Smith”、”Down In The Willow Garden”等
1.川の流れる場所で
2.克明な殺人の描写
3.マーダー・バラッドの原点
4.旧世界の血塗られた歌たち
5.ダガーナイフを手にした女
6.アパラチアのロミオとジュリエット
7.アパラチアという名のバックカントリー
8.アメリカ移民の四つの潮流
9.ボーダラーたちの戦いの日々
10.女性憎悪(ミソジニー)の生まれる風土
第3章北行き列車に乗りたい(二グロスピリッチュアルに隠された暗号)
1.「聖者の行進」の聖者とは誰のことか?
2.「漕げよマイケル」の舟はどこを目ざすのか?
3.二グロ・スピリッチュアルの誕生
4.アフリカへの帰還運動
5.ジョン・ブラウンの奴隷制廃止運動
6.二人のハリエット
7.二グロ・スピリッチュアルに隠された暗号
第4章ドアマットからの脱出(カントリーの中の女性たち)
1.ヒラリー・クリントンの「スタンド・バイ・ユア・マン発言」・・・・”私は夫の帰りをじっと待つタミー・ウィネットのような女じゃないわ”・・・・
2.カントリー・アンド・ウェスタン・ミュージックの誕生
3.立ち上がる南部の女性たち
4.ジェンダーの問題を突きつけた「スーという名の少年」・・・・・ジョニー・キャッシュの歌でも異色作について
5.女たちの「独立記念日」