風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「母の待つ里」

2024-09-08 | 読書

この春、実はこのドラマのロケにエキストラで参加した。
ドラマを見たらきれいにカットされていて
北上駅で中井貴一さんそばの私は映っていなかったけど😆
以前参加した映画撮影現場同様、やっぱりそういう現場は楽しい。
学生時代にテレビ局でADをやったり、
映画系映像編プロにいたころのことを思い出す。
(もちろん段取りも機材も現代は全く違うけど)
こういう、ある意味ものづくりの現場って好きなんだなぁ。
もちろん今の私の仕事も含めてだけど。

で、あえてドラマを見てから原作を買って読んでみた。
さすがは浅田次郎さん。
ドラマでは割愛されたり、よくわからなかったりした部分が
本を読むとすべてよくわかるし、
NHKには申し訳ないけど原作の方が心に沁みる。
現代ならありそうなシチュエーションに乗っかった
還暦過ぎの人間たちが、気づいていなかった心の奥底に気づく。
自分の地元が舞台だけに、余計に響いた。

「ええが、精一。何があっても母(かが)はおめの味方だがらの」
「おめだぢのほうが、おらよりずっとさみすいのではねが」

でもこれは、これから都会に出ようとする若い人には
たぶん身に沁みてはわからない世界ではなかろうか。
バリバリ第一線で走り回っている世代にも。
でもね、できれば少しでもこの世界を味わって感じて欲しい、
自らを顧みて欲しいと思うのは
年寄りならではのでしゃばりだろうか。
「きたが、きたが、けえってきたが」
の言葉は耳ではなく心に響く。
とにかく優しい物語。
たくさんの人に読んで欲しいなぁ。

浅田さんならではの表現にも舌を巻く。
「夜が広い。際限なく。心許ないほど」とか
「純潔の孤独」とか。
勉強になります。

「母の待つ里」浅田次郎:著 新潮文庫


 
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