風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「カフネ」

2024-09-03 | 読書

先週の木曜日、
母校である岩手県立花巻北高桜雲同窓会の盛岡支部総会があった。
かつて盛岡に勤務していた頃は副支部長を仰せつかっていたが
退職した時にその役目も辞めて以来、ほとんど参加していなかったのだが、
今回支部長が代わり、同時に代わった事務局長からのお誘いがあって
久々で参加してみた。
もう盛岡とは縁がなくなっていたので
なぜお誘いが来たのか疑問に思いながら出席したのだが、
会場で資料を渡されてわかった。
どうやら過去支部長や副支部長を務めた人間は
その後も顧問扱いになっていたらしい。
知らなかった・・・😅

ただ、誘われたほかに、行ってみようと思い立ったのは
記念講演会を聞きたかったからだ。
(実際は事務局長の岩手放送アナウンサーの神山くんとの対談)
今年はOGである作家の阿部暁子さんだった。
まだ若い作家さんで(ウチの長男の2学年上)、
高校時代に全国高文祭小説部門最優秀賞を獲得したことを知っていたし、
長いこと私が編集長を仰せつかっている同窓会報に
原稿依頼したこともあった人だったのだが、
実はまだ会ったことがなかったから。
いつか会ってみたいと思っていた人だった。
で、さっそく最新刊を受付で購入(サイン入り)。
ソッコーで読了した。

正直に言う。
若い人向けの青春小説家というイメージを持っていた。
確かに帯のあらすじを読んでもそんな雰囲気を感じたし、
1/3ほど読んだ段階では文体や表現に甘さも感じた。
手放せないほど没頭する感じでもなかった。
しかしさらに読み進めると、もう途中で中断できなくなった。
どんどん引き込まれていく。
大変失礼ながら、こんなに社会派の内容だと思わなかった。
神山くんの感想も出てくる料理の話が中心だったし
初めは反目しあっていた2人の女性の関係が縮まるあらすじは
いかにも青春小説っぽい感じだったから
社会派的ストーリー素材に驚いたのだった。
残念なのは、社会問題の重さとストーリーとのバランス。
この辺は作家の問題というよりも、
出版社の編集担当の責任なのではなかろうか。
特に「人道支援医療団体」に触れている部分については
もう少し掘り下げると、もっと読者層を広げられるのではなかろうか。

とはいえ、没頭できたことは間違いない。
それだけ中身も濃くて、他の人にもお勧めできる面白い作品だった。
阿部さんの今後の作品にも期待が膨らむ。

「カフネ」阿部暁子:著 講談社

 
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