20年前に刊行された古い本だ。
しかも版元の荒地出版社は今はもうない。
でも、だからこそ貴重な本がある。
図書館の大きな存在意義のひとつだろう。
正直言って、文章もたどたどしく
それをカバーすべき編集も足りないと感じたが
それが逆にうまいこと登川氏のテーゲーさを表している😆
人となりを表現する手法だったとしたら脱帽だ。
まぁ、ただテーゲーな人ではないのだが。
過酷な沖縄での戦中、戦後を逞しく生き延び
琉球民謡の第一人者として知られる登川氏の評伝。
ヤンチャな生活と芸能へのひたむきさ。
酒とタバコと唄と三線(彼に言わせれば三味線)。
贅沢にも偉そうに見せることにも興味がなく、
ストイックに民謡を収集したり作ったりしながら
その他のことはテーゲー。
そして簡単にヤマトに尻尾を振らない。
そんなところが登川氏の魅力だったんだなぁ。
私自身は映画「ナビィの恋」でその存在を知ったけど
その後CDなどでその唄の滋味を味わってきた。
誰にも真似できない唄の節回し、声、抑揚、歌詞・・・
それを表現するのに「滋味」という言葉がぴったり。
いかにも登川氏の人生そのものが現れている。
ヤマトでは民謡といえば古いものだけど、
沖縄では古くからの音楽や芸能などを古典という。
民謡は言葉通り「民の謡」であり
古かろうが新しかろうが
生活や心情や滑稽や恋情を唄ったもの。
時には即興などもあるし、踊りとも結びつく。
登川誠仁氏は唄うのも、作るのも、演奏するのも
すべてにおいて第一人者だった。
2013年、80歳で没。
「島唄 オキナワラプソディ〜登川誠仁伝」
森田純一:著 荒地出版社