私が作家買いするひとりである著者が書いた
私にとって憧れの地、沖縄を舞台にした作品と知ったならば
これは「読みたい」では済まない。
「読まないければいけない」と急かされるように手に取った。
それまで生まれ育った北海道を舞台とした作品しかなかった著者。
しかしちゃーんとあの南国の空気感が最初から感じられる。
でも不思議なことに暑さは感じないんだなぁ。
本人も何かのエッセイで書いていたけど
沖縄が舞台なのにどこかひんやりとした空気感。
特に主人公が穏やかでいられた「暗い日曜日」での生活は
爽やかな高原の風が吹いて来そうな感じすらある。
奥武島でのお婆との時間も同じような雰囲気なのだが
ここが亜熱帯だと思い出させる暑く湿度があるのは
唯一、南原の存在だけだ。
それにしても、桜木さんの作品を読むと
どうしてこんなに体から力みが抜けるんだろう。
どの作品も全体的に暗く、どんよりしたイメージで
決して元気付けられるような内容でもないのだが
「あ、もしかしてこのままでいいのかな」
と思わせてくれる。
上ばかり見たり、走ったりするばかりが人生じゃない。
「金のやり取りがないと、金より面倒なものに踊らされる」
なるほど。
「光まで5分」桜木紫乃:著 光文社文庫
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